JP5771084B2 - 半導体チップ実装体の製造方法及び封止樹脂 - Google Patents

半導体チップ実装体の製造方法及び封止樹脂 Download PDF

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本発明は、ボイドの発生を抑制しながら、信頼性の高い半導体装置を効率よく製造することのできる半導体チップ実装体の製造方法に関する。また、本発明は、該半導体チップ実装体の製造方法に用いる封止樹脂に関する。
近年、ますます進展する半導体装置の小型化、高集積化に対応するために、ハンダ等からなる接続端子(バンプ)を有する半導体チップを用いたフリップチップ実装が多用されている。
フリップチップ実装においては、一般的に、複数のバンプを有する半導体チップを、バンプを介して基板又は他の半導体チップに接続した後、アンダーフィルを充填して封止する方法が用いられている。しかしながら、近年、半導体チップの小型化が進行するとともにバンプ間のピッチもますます狭くなっており、また、これらに伴って半導体チップ同士又は半導体チップと基板との間のギャップが狭くなっていることから、アンダーフィルの充填時に空気が巻き込まれ、ボイドが発生しやすくなっている。
ボイドの発生を抑制するために、例えば、アンダーフィルをバンプ接続後に注入するのではなく、基板又は半導体チップに封止樹脂層を予め設けておく方法が用いられている。
このような方法は一般的にフリップチップボンダを使用して行われ、図1に示すように、半導体チップをハンダの溶融温度より低い温度(温度T)に加熱しながら封止樹脂層を介して基板等に押圧し、その後、半導体チップのバンプが溶融する温度よりやや高い温度(温度T)にまで半導体チップを加熱して、バンプを基板等の電極部に接合する(加熱圧着工程)。そして更に、得られた半導体装置サンプルを200℃30分等の加熱条件に曝すことで、封止樹脂を硬化させる工程が行われることもある。しかしながら、このような方法は、加熱圧着工程ごとにフリップチップボンダのヘッド温度(チップ保持具の温度)をハンダの溶融温度より低い温度から高い温度にまで昇温させる工程と、再度ハンダの溶融温度より低い温度にまで冷却する工程とを有することから(図1参照)、昇温と冷却とに要する時間を短縮できず、生産効率が充分に上がらないという問題があった。
生産効率を向上させるために、例えば、フリップチップボンダを使わずに、量産可能なリフロー装置のみを使用してバンプ接続と樹脂封止とを同時に行う方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、無機基板または有機基板の回路形成面の半導体素子を搭載する位置に所定の液状封止樹脂組成物を塗布した後、前記半導体素子の電極と前記基板の回路を、リフロー炉内にてバンプを介して接合すると同時に前記液状封止樹脂組成物の硬化を行う半導体装置の製造方法が記載されている。
特許文献1に記載の方法においては、半田の融点よりも低い温度のリフロー予備加熱と、半田の融点よりも高い温度のリフロー本加熱とが行われる。そして、液状封止樹脂組成物の粘弾性測定における粘度が、リフロー予備加熱時の温度範囲で1Pa・s以下で、リフロー本加熱時のピーク温度でのゲルタイムが30s以下である。
このような液状封止樹脂組成物を用いることにより、特許文献1に記載の方法においては、予備加熱時には液状封止樹脂組成物が十分に低粘度を保持し、半導体素子の自重のみで半導体素子の接続用電極部と配線回路基板が接触する。そして、その後、本加熱により接続用電極部を溶融させて配線回路基板の電極に半田付けを行い、半田接合後に液状封止樹脂組成物が硬化する。
特許文献1には、同文献に記載の方法によれば、ボイドレスで高接続信頼性を有する半導体装置を製造することができる旨が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、予備加熱時の液状封止樹脂組成物の粘度が低いことから、基板にそりが生じた場合には液状封止樹脂組成物が流動することによって接続前の電極部にズレが生じることがあり、また、リフロー炉の振動又は風圧によっても、接続前の電極部にズレが生じることがあった。また、このような液状封止樹脂組成物の流動、電極部のズレ、加熱時の液状封止樹脂組成物の発泡等に起因して、ボイドが生じる可能性も充分には排除できていなかった。
特開2009−96886号公報
本発明は、ボイドの発生を抑制しながら、信頼性の高い半導体装置を効率よく製造することのできる半導体チップ実装体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体チップ実装体の製造方法に用いる封止樹脂を提供することを目的とする。
本発明は、フリップチップ実装による半導体チップ実装体の製造方法であって、ハンダからなるバンプを有する半導体チップを、封止樹脂が塗布又は貼付された基板又は他の半導体チップ上に、前記封止樹脂を介して位置合わせする工程と、前記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与して、前記封止樹脂の硬化率を70%以上に調整するとともに、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接触させて半導体チップ固定体を得る固定工程と、前記ハンダを溶融させて、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接続する電極接続工程とを有し、電極接続工程において、封止樹脂の硬化収縮率が、下記式(2)で表される値X(%)の2倍より大きいことを特徴とする半導体チップ実装体の製造方法である。
X=(A−B)×α2×10 −4 (2)
式(2)中、Aは電極接続工程を行う温度(℃)を表し、Bは固定工程を行う温度(℃)を表し、α2は温度BからAまでの間の封止樹脂の平均線膨張係数(ppm/℃)を表す。
以下、本発明を詳述する。

本発明者らは、フリップチップ実装による半導体チップ実装体の製造方法であって、ハンダからなるバンプを有する半導体チップを、封止樹脂が塗布又は貼付された基板又は他の半導体チップ上に、前記封止樹脂を介して位置合わせする工程と、前記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与して、前記封止樹脂の硬化率を70%以上に調整するとともに、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接触させて半導体チップ固定体を得る固定工程と、前記ハンダを溶融させて、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接続する電極接続工程とを有する方法によれば、ボイドの発生を抑制しながら、信頼性の高い半導体装置を効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
このような半導体チップ実装体の製造方法では、固定工程において、半導体チップ、封止樹脂、及び、基板又は他の半導体チップが一定以上の硬化率で固定され、半導体チップ固定体が得られる。従って、このような半導体チップ固定体を搬送し、電極接続工程を固定工程とは異なる装置を用いて行うことで、従来必要であった昇温と冷却とに要する時間を短縮し、生産効率を極めて大きく向上させることができる。更に、電極接続工程を複数の半導体チップに対して一括して行うことで、生産効率をより一層向上させることができる。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法は、フリップチップ実装による半導体チップ実装体の製造方法である。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、まず、ハンダからなるバンプを有する半導体チップを、封止樹脂が塗布又は貼付された基板又は他の半導体チップ上に、前記封止樹脂を介して位置合わせする工程を行う。
上記封止樹脂は、後述する工程において上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱されるとともに荷重を付与されたとき、硬化率が70%以上に調整されるとともに、硬化率が70%以上になるまでの間に、上記バンプが上記封止樹脂を排除しながら上記基板又は他の半導体チップの電極部に接触できるように設計される。
上記封止樹脂は、上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で硬化することができ、かつ、速硬化性であることが好ましい。これにより、上記封止樹脂は、後述する工程において上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱されるとともに荷重を付与されると、溶融粘度が一旦急激に低下し、上記バンプが上記封止樹脂を排除しながら上記基板又は他の半導体チップの電極部に接触することができ、その後、上記封止樹脂は速やかに硬化して、硬化率が70%以上に調整される。
上記封止樹脂は、シート状であってもよく、ペースト状であってもよい。上記封止樹脂がシート状の場合は、後述する硬化収縮率を調整しやすいという利点があり、ペースト状の場合は、塗布領域の緻密な制御、フィレット形成の制御等がしやすくなるという利点がある。
上記封止樹脂は、硬化剤と硬化性化合物とを含有することが好ましく、硬化剤と硬化性化合物との組み合わせによって上記封止樹脂の硬化性を制御することができる。
上記硬化性化合物として、例えば、ユリア化合物、メラミン化合物、フェノール化合物、レゾルシノール化合物、エポキシ化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、ポリアミド化合物、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート化合物、キシレン化合物、アルキル−ベンゼン化合物、エポキシアクリレート化合物、珪素樹脂、ウレタン化合物、エピスルフィド化合物等の熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、得られる半導体装置が信頼性及び接合強度に優れることから、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物が好ましい。
上記エポキシ化合物として、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ポリエーテル変性エポキシ化合物、ベンゾフェノン型エポキシ化合物、アニリン型エポキシ化合物、NBR変性エポキシ化合物、CTBN変性エポキシ化合物、及び、これらの水添化物等が挙げられる。なかでも、速硬化性が得られやすいことから、上記エポキシ化合物はベンゾフェノン型エポキシ化合物を含有することが好ましい。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EXA−830−LVP、EXA−830−CRP(以上、DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ポリエーテル変性エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−931(ナガセケムテックス社製)、EXA−4850−150(DIC社製)、EP−4005(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記エピスルフィド化合物は、エピスルフィド基を有していればよく、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
上記エピスルフィド化合物として、具体的には例えば、ビスフェノール型エピスルフィド化合物(ビスフェノール型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物、レゾルシノール型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、ナフタレン型エピスルフィド化合物が好ましい。これらのエピスルフィド化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、酸素原子から硫黄原子への置換は、エポキシ基の少なくとも一部におけるものであってもよく、すべてのエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよい。
上記エピスルフィド化合物のうち、市販品として、例えば、YL−7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。また、上記エピスルフィド化合物は、例えば、チオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ化合物から容易に合成される。
上記封止樹脂が上記エピスルフィド化合物を含有する場合、上記エピスルフィド化合物の配合量は、上記封止樹脂中における好ましい下限が3重量%、好ましい上限が12重量%であり、より好ましい下限が6重量%、より好ましい上限が9重量%である。
上記封止樹脂は、上記硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)を含有することが好ましい。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することにより、得られる封止樹脂は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が向上する。
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合には、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、得られる封止樹脂の硬化物は、優れた可撓性を発現する。即ち、上記封止樹脂の硬化物は、上記硬化性化合物としてのエポキシ化合物に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを兼備することができ、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性及び寸法安定性等に優れ、高い接着信頼性及び高い導通信頼性を発現する。
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であればよく、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ化合物、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含有することができ、得られる封止樹脂の硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万である。上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量が1万未満であると、得られる封止樹脂の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が200未満であると、得られる封止樹脂の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が1000を超えると、得られる封止樹脂の硬化物の機械的強度及び耐熱性が低下することがある。
上記封止樹脂が上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有する場合、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が1重量部未満であると、得られる封止樹脂は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が低下することがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が30重量部を超えると、得られる封止樹脂の硬化物は、機械的強度、耐熱性及び耐湿性が低下することがある。
上記硬化剤は、従来公知の硬化剤を上記硬化性化合物に合わせて適宜選択することができる。上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合、上記硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、チオール系硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記封止樹脂が上記硬化剤を含有する場合、上記硬化剤の配合量は、上記硬化性化合物の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合、上記硬化性化合物の官能基量に対して、60〜100当量であることが好ましい。また、触媒として機能する硬化剤を用いる場合、上記硬化剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
上記封止樹脂は、硬化速度又は硬化温度を調整する目的で、上記硬化剤に加えて硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤として、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記イミダゾール系硬化促進剤として、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)、その他、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MA−OK、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。
上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用い、かつ、上記硬化剤と上記硬化促進剤とを併用する場合、用いる硬化剤の配合量は、用いるエポキシ化合物中のエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。上記硬化剤の配合量が理論的に必要な当量を超えると、得られる封止樹脂を硬化して得られる硬化物から、水分によって塩素イオンが溶出しやすくなることがある。即ち、硬化剤が過剰であると、例えば、得られる封止樹脂の硬化物から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度となるため、エポキシ化合物から塩素イオンが多量溶出することがある。従って、得られる封止樹脂の硬化物1gを、100℃の純水10gで2時間浸した後の純水のpHが6〜8であることが好ましく、pHが6.5〜7.5であることがより好ましい。
上記封止樹脂は、粘度を低減させるために希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は、エポキシ基を有することが好ましく、1分子中のエポキシ基数の好ましい下限が2、好ましい上限が4である。1分子中のエポキシ基数が2未満であると、封止樹脂の硬化後に充分な耐熱性が発現しないことがある。1分子中のエポキシ基数が4を超えると、硬化によるひずみが発生したり、未硬化のエポキシ基が残存したりすることがあり、これにより、接合強度の低下又は繰り返しの熱応力による接合不良が発生することがある。上記希釈剤の1分子中のエポキシ基数のより好ましい上限は3である。
また、上記希釈剤は、芳香環及び/又はジシクロペンタジエン構造を有することが好ましい。
上記希釈剤は、120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量の好ましい上限が1%である。120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量が1%を超えると、得られる封止樹脂の硬化中又は硬化後に未反応物が揮発してしまい、生産性又は得られる半導体装置の性能に悪影響を与えることがある。
また、上記希釈剤は、上記硬化性化合物よりも硬化開始温度が低く、硬化速度が大きいことが好ましい。
上記封止樹脂が上記希釈剤を含有する場合、上記封止樹脂における上記希釈剤の配合量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記希釈剤の配合量が上記範囲外であると、得られる封止樹脂の粘度を充分に低減できないことがある。
上記封止樹脂は、更に、チキソトロピー付与剤を含有してもよい。
上記チキソトロピー付与剤を含有することで、得られる封止樹脂の粘度挙動を、フリップチップ実装に最適となるように調整することができる。
上記チキソトロピー付与剤として、例えば、金属微粒子、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム、硼酸アルミ等の無機微粒子等が挙げられる。なかでも、ヒュームドシリカが好ましい。
また、上記チキソトロピー付与剤は、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理が施されたチキソトロピー付与剤として、表面に疎水基を有する粒子が好ましく、具体的には、例えば、表面を疎水化したヒュームドシリカ等が挙げられる。
上記チキソトロピー付与剤が粒子状である場合、該粒子状チキソトロピー付与剤の平均粒子径の好ましい上限は1μmである。上記粒子状チキソトロピー付与剤の平均粒子径が1μmを超えると、得られる封止樹脂が所望のチキソトロピー性を発現できないことがある。
上記封止樹脂における上記チキソトロピー付与剤の配合量は、上記チキソトロピー付与剤に表面処理がなされていない場合には、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が20重量%である。上記チキソトロピー付与剤の配合量が0.5重量%未満であると、得られる封止樹脂に充分なチキソトロピー性を付与することができないことがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量が20重量%を超えると、半導体装置を製造する際に上記封止樹脂の排除性が低下することがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
上記封止樹脂は、無機フィラーを含有することが好ましい。
上記無機フィラーは、表面処理されたシリカフィラーであることが好ましい。上記表面処理されたシリカフィラーは、フェニルシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラーが好ましい。
上記表面処理されたシリカフィラーの平均粒子径は、特に、後述する硬化収縮率と平均線膨張係数との関係を調整する観点から、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が3μmである。上記平均粒子径が0.1μm未満であると、平均線膨張係数を下げる目的で所望の量を配合した場合に、得られる封止樹脂の粘度が高くなりすぎて、塗工性が低下することがある。上記平均粒子径が3μmを超えると、上記バンプと上記基板又は他の半導体チップの電極部との間に上記表面処理されたシリカフィラーをかみ込むことがある。上記表面処理されたシリカフィラーの平均粒子径のより好ましい下限は0.3μm、より好ましい上限は1μmである。
上記封止樹脂が上記表面処理されたシリカフィラーを含有する場合、上記封止樹脂における上記表面処理されたシリカフィラーの配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が400重量部である。上記表面処理されたシリカフィラーの配合量が30重量部未満であると、得られる封止樹脂が充分な信頼性を保持することができないことがある。上記表面処理されたシリカフィラーの配合量が400重量部を超えると、得られる封止樹脂の粘度が高くなりすぎて、塗布安定性が低下したり、上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱される際の流動性が低下したりすることがある。上記表面処理されたシリカフィラーの配合量は、後述する硬化収縮率と平均線膨張係数との関係を調整する観点から、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい下限は100重量部、より好ましい上限は240重量部であり、更に好ましい下限は120重量部、更に好ましい上限は190重量部である。
上記封止樹脂は、必要に応じて、溶媒を含有してもよい。
上記溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類、塩化芳香族炭化水素類、塩化脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル(セロソルブ)類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
上記封止樹脂は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。
上記無機イオン交換体のうち、市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。上記封止樹脂が上記無機イオン交換体を含有する場合、上記無機イオン交換体の配合量は、好ましい上限が10重量%、好ましい下限が1重量%である。
上記封止樹脂は、必要に応じて、ゴム粒子等の応力緩和剤、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
上記封止樹脂は、140℃で30秒加熱した場合の硬化率が40%以上となることが好ましい。このような硬化挙動を示す封止樹脂を用いることにより、後述する固定工程において硬化率を70%以上に調整しやすくなる。
例えば、上述した各種配合物の種類及び量を調整することで、140℃で30秒加熱した場合の硬化率が40%以上となる封止樹脂を得ることができる。なかでも、140℃で30秒加熱した場合の硬化率が40%以上となる封止樹脂を得るためには、上記エピスルフィド化合物を配合したり、上記エポキシ化合物と、上記エピスルフィド化合物と、上記イミダゾール系硬化促進剤又はアミン系硬化促進剤とを配合したりすることが好ましい。
上記封止樹脂を上記基板又は他の半導体チップに塗布又は貼付する方法として、例えば、上記封止樹脂をシリンジに充填し、シリンジ先端に精密ノズルを取り付けて、ディスペンサ装置を用いて吐出する方法等が挙げられる。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、次いで、前記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与して、前記封止樹脂の硬化率を70%以上に調整するとともに、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接触させて半導体チップ固定体を得る固定工程を行う。上記固定工程は、例えば、フリップチップボンダ等の実装用装置を用いて行うことができる。
上記固定工程においては、上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与することにより、上記封止樹脂の溶融粘度が一旦低下し、上記バンプが上記封止樹脂を排除しながら上記基板又は他の半導体チップの電極部に接触することができ、その後、上記封止樹脂が硬化して、硬化率が70%以上に調整される。
なお、本明細書中、封止樹脂の硬化率(%)とは、下記式(1)により求められる値を意味する。
封止樹脂の硬化率(%)=(1−Dh/Di)×100 (1)
式(1)中、Diは示差走査熱量計にて算出される封止樹脂の初期状態の発熱量を表し、Dhは示差走査熱量計にて算出される封止樹脂の加熱処理後の発熱量を表す。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、上記固定工程において上記封止樹脂の硬化率を70%以上に調整することにより、上記ハンダを溶融させて電極接続を行うまで上記封止樹脂が硬化していない場合と比べて、接続前の未溶融のバンプ又は電極部にズレを生じることなく、バンプ又は電極部のズレ等に起因するボイドの発生を抑制して、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
また、一般に、フリップチップ実装においてハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱する場合には、封止樹脂を充分に低粘度化して、半導体チップの自重により電極部同士の接触を行うと同時にボイドの発生を抑制することが目的であり、通常、封止樹脂の硬化はほとんど進行していない。
これに対し、上記固定工程では、上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱し、上記封止樹脂の硬化率を70%以上に調整する。これにより、上記半導体チップ、上記封止樹脂、及び、上記基板又は他の半導体チップが一定以上の硬化率で固定されることから、このような半導体チップ固定体を搬送し、後述する電極接続工程を上記固定工程とは異なる装置を用いて行うことで、生産効率を極めて大きく向上させることができる。即ち、一般的には、半導体チップと基板又は他の半導体チップとの位置合わせから電極接続までを、フリップチップボンダ等の1種類の実装用装置を用いて行う。この場合、図1に示すように、半導体チップを1つ実装するたびに、実装用装置のヘッド温度(チップ保持具の温度)をハンダの溶融温度より低い温度(温度T)から高い温度(温度T)にまで昇温させる工程と、再度ハンダの溶融温度より低い温度(温度T)にまで冷却する工程とが必要となる。これに対し、電極接続工程を上記固定工程とは異なる装置を用いて行う場合には、図2に示すように、各工程を行う温度(温度T及びT)に各装置の温度を設定すればよく、従来のような昇温と冷却とを必要としない。例えば、冷却には通常3秒以上の時間を要することから、昇温と冷却とに要する時間を短縮できることは、生産効率の面で重要な技術的意義を有する。
上記固定工程において、上記封止樹脂の硬化率が70%未満であると、バンプ又は電極部のズレ及びボイドの発生を充分に抑制して信頼性の高い半導体装置を効率よく製造することができず、また、得られた半導体チップ固定体を搬送する際に、バンプ又は電極部にズレが生じやすい。上記固定工程においては、上記封止樹脂の硬化率を75%以上に調整することが好ましく、80%以上に調整することがより好ましい。
また、上記固定工程において、上記封止樹脂の硬化率の上限は特に限定されないが、上記封止樹脂の硬化率を90%以下に調整することが好ましい。上記封止樹脂の硬化率が90%を超えると、例えば、上記半導体チップのバンプの高さにばらつきがある場合には、上記固定工程において高さの低いバンプと上記基板又は他の半導体チップの電極部とが接触することができず、接続不良が生じることがあり、また、ボイドが発生した場合には排除できないことがある。
ただし、加圧雰囲気下で上記封止樹脂を硬化する、いわゆる加圧硬化を行う場合には、上記固定工程において、上記封止樹脂を完全に硬化させてもよい(硬化率100%)。加圧硬化により上記封止樹脂を完全に硬化させることにより、ボイドの発生を抑制することができる。加圧硬化により上記封止樹脂を完全に硬化させる方法としては、加圧容器内に組み込まれたフリップチップボンダ等の実装用装置を用いて、上記位置合わせする工程から上記固定工程までを加圧雰囲気下で行う方法が好ましい。この場合には、加圧硬化を行うために別の装置に搬送する必要がなく、また、圧力の調整が少なくて済むことから、生産効率を低下させることがない。
なお、上記固定工程において、上記封止樹脂の硬化率を70%以上に調整した後、別の装置にて加圧硬化を行い、上記封止樹脂を完全に硬化させてもよい。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、半導体装置の生産効率が向上することから、上記固定工程をフリップチップボンダを用いて行い、その後、得られた半導体チップ固定体をフリップチップボンダから取り出し、リフロー装置に投入して、後述する電極接続工程をリフロー装置において行うことが好ましい。
また、上記固定工程をフリップチップボンダを用いて行い、電極接続工程をリフロー装置において行う場合には、上記半導体チップ固定体を一時的に保管した後、複数の上記半導体チップ固定体をまとめて搬送し、リフロー装置に投入してもよい。これにより、電極接続工程を複数の半導体チップに対して一括して行うことができ、生産効率をより一層向上させることができる。具体的には、例えば、上記半導体チップ固定体を一時的にトレイ等に保管し、一定以上の数、例えば64以上の数の上記半導体チップ固定体が作製された時点で、複数の上記半導体チップ固定体をまとめて搬送し、リフロー装置に投入することができる。
上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与する際、加熱温度は、好ましくは140〜220℃、より好ましくは180〜210℃である。なお、加熱温度とは、上記固定工程における、フリップチップボンダ等の実装用装置のヘッド温度を意味する。また、通常、ハンダの溶融温度は225〜235℃程度である。
また、荷重を付与する際の圧力の好ましい下限は5N、好ましい上限は30Nであり、より好ましい下限は10N、より好ましい上限は20Nであり、1バンプあたりのヘッド圧の好ましい下限は0.009N、好ましい上限は0.05Nであり、より好ましい下限は0.018N、より好ましい上限は0.036Nである。なお、1バンプあたりのヘッド圧は、半導体チップのバンプ数と、荷重を付与する際の圧力から計算することができる。
また、上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与する時間は、好ましくは0.5〜30秒、より好ましくは1〜10秒、更に好ましくは1〜5秒である。上記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与する時間は、生産効率を向上させる観点からも上記範囲内であることが好ましい。
上記半導体チップ固定体は、上記基板又は半導体チップの1つの面上に1つの半導体チップが固定された固定体であってもよく、上記基板又は他の半導体チップの1つの面上に複数の半導体チップが固定された固定体であってもよい。具体的には、例えば、図3に示すように、基板2の1つの面上に、複数の半導体チップ3が封止樹脂4を介して固定された固定体であってもよい。なお、本明細書中、1つの面上に複数の半導体チップが固定されるとは、1つの面上に、複数の半導体チップが平面的(二次元的)に配置した状態で固定されることを意味する。
特に、上記半導体チップ固定体が、上記基板又は他の半導体チップの1つの面上に複数の半導体チップが固定された固定体であり、かつ、上記固定工程をフリップチップボンダを用いて行い、電極接続工程をリフロー装置において行う場合には、電極接続工程を複数の半導体チップに対して一括して行うことができ、生産効率をより一層向上させることができる。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、次いで、前記ハンダを溶融させて、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接続する電極接続工程を行う。これにより、上記ハンダが溶融して電極接続が行われるとともに、上記固定工程において上記封止樹脂が完全に硬化していない場合には上記封止樹脂が完全に硬化し、上記ハンダからなるバンプを有する半導体チップを上記基板又は他の半導体チップに実装することができる。
また、上述のように、半導体装置の生産効率が向上することから、本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、上記電極接続工程をリフロー装置において行うことが好ましい。更に、上述のように、上記半導体チップ固定体を一時的に保管した後、複数の上記半導体チップ固定体をまとめて搬送し、リフロー装置に投入したり、上記基板又は他の半導体チップの1つの面上に複数の半導体チップが固定された固定体を用いたりすることにより、上記電極接続工程を複数の半導体チップに対して一括して行うことがより好ましい。
上記固定工程において上記封止樹脂が完全に硬化していない場合には、上記電極接続工程において、上記封止樹脂の硬化収縮率は、下記式(2)で表される値X(%)の2倍より大きいことが好ましい。
X=(A−B)×α2×10−4 (2)
式(2)中、Aは電極接続工程を行う温度(℃)を表し、Bは固定工程を行う温度(℃)を表し、α2は温度BからAまでの間の封止樹脂の平均線膨張係数(ppm/℃)を表す。
なお、本明細書中、電極接続工程における封止樹脂の硬化収縮率は、例えば、Minidens(Grabner Instruments社製)等の比重計を用いて、電極接続工程前後の封止樹脂の体積の比を測定することにより求めることができる。
また、封止樹脂の平均線膨張係数は、熱機械分析(TMA)の測定により得られた曲線から求めることができ、より具体的には、例えば、TMA/SS6000(Seiko Instruments社製)を用い、引張りモードにて30〜300℃(10℃昇温)伸縮を2サイクル行い、2サイクル目の曲線から求めることができる。
上記式(2)で表される値X(%)は、温度BからAまでの間に上記封止樹脂が外向きに膨張する割合であると擬似的にみなすことができる。
上記電極接続工程において、上記封止樹脂の硬化収縮率が上記式(2)で表される値X(%)の2倍より大きいことにより、上記封止樹脂は外向きに膨張する割合に対して収縮する割合が充分高いことになり、上記封止樹脂の界面が基板又は半導体チップにより密着するような方向に力が発生する。これにより、仮に、接続後に理想的な接合状態とならなかった電極があった場合でも、該電極の周りに上記封止樹脂が強固に密着し、該電極の破壊等を抑制することができる。
上記電極接続工程における上記封止樹脂の硬化収縮率が上記式(2)で表される値X(%)の2倍以下であると、熱によるひずみが発生する際、上記バンプと上記基板又は他の半導体チップの電極部との接触状態を保つことができず、得られる半導体装置の接合信頼性が低下することがある。
上記電極接続工程における上記封止樹脂の硬化収縮率を上記式(2)で表される値X(%)の2倍より大きくする方法として、平均線膨張係数α2の値が小さくなるように配合を調整する方法、硬化収縮率が大きくなるように配合を調整する方法が挙げられる。平均線膨張係数α2の値が小さくなるような上記封止樹脂の配合としては、特に、上記無機フィラーを高充填した配合、硬化後に架橋密度が高くなるような配合等が好ましい。
上記電極接続工程において、上記ハンダを溶融させて、上記バンプと上記基板又は他の半導体チップの電極部とを接続する方法としては、具体的には、例えば、240〜280℃程度の温度に1〜10秒間加熱する方法等が挙げられる。
なお、上述の説明においては、上記固定工程において上記封止樹脂が完全に硬化していない場合には上記電極接続工程にて上記封止樹脂が完全に硬化することを記載したが、本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、上記電極接続工程の後、上記封止樹脂を完全に硬化させる工程を別途設けてもよい。
上記封止樹脂を完全に硬化させる工程では、ボイドの発生をより一層抑制できることから、加圧硬化により上記封止樹脂を完全に硬化させることが好ましい。加圧硬化により上記封止樹脂を完全に硬化させる場合には、加圧容器内に組み込まれた硬化用装置を用いればよい。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法に用いる封止樹脂であって、上記硬化性化合物と上記硬化剤と上記無機フィラーとを含有し、140℃で30秒加熱した場合の硬化率が40%以上であり、かつ、上記電極接続工程における硬化収縮率が、上述した式(2)で表される値X(%)の2倍より大きい封止樹脂もまた、本発明の1つである。
本発明によれば、ボイドの発生を抑制しながら、信頼性の高い半導体装置を効率よく製造することのできる半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ実装体の製造方法に用いる封止樹脂を提供することができる。
従来の加熱圧着工程の温度プロファイルを模式的に示す図である。 本発明の半導体チップ実装体の製造方法における固定工程及び電極接続工程の温度プロファイルを模式的に示す図である。 本発明の半導体チップ実装体の製造方法における半導体チップ固定体の一例を模式的に示す上面図である。
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)封止樹脂の製造
表1に示す組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料(重量部)を攪拌混合し、封止樹脂を調製した。
1.エポキシ化合物
アニリン型エポキシ化合物(EP−3900S、ADEKA社製)
ベンゾフェノン型エポキシ化合物(EP−3300S、ADEKA社製)
ナフタレン型エポキシ化合物(EXA−4710、DIC社製)
ビスフェノールF型エポキシ化合物(EXA−830−CRP、DIC社製)
ビスフェノールA型エポキシ化合物(EXA−850−CRP、DIC社製)
2.エピスルフィド化合物
ナフタレン型エピスルフィド化合物(フラスコ内に、ナフタレン型エポキシ(DIC社製HP−4032D、エポキシ当量=140)を100g及びテトラヒドロフランを200g仕込み、室温にて攪拌してエポキシ化合物を溶解させた。溶解後、チオ尿素を100g及びメタノールを200g添加し、温度30〜35℃で、攪拌しながら5時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトンを300g添加した後、純水250gで5回水洗した。水洗後、ロータリーエバポレーターにて減圧下、温度90℃でメチルイソブチルケトンを留去して、無色透明液体の目的物を101.2g得た。)
レゾルシノール型エピスルフィド化合物(フラスコ内に、レゾルシノール型エポキシ(ナガセケムテックス社製EX−201P、エポキシ当量=140)を100g及びテトラヒドロフランを200g仕込み、室温にて攪拌してエポキシ化合物を溶解させた。溶解後、チオ尿素を100g及びメタノールを200g添加し、温度30〜35℃で、攪拌しながら5時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトンを300g添加した後、純水250gで5回水洗した。水洗後、ロータリーエバポレーターにて減圧下、温度90℃でメチルイソブチルケトンを留去して、無色透明液体の目的物を102.5g得た。)
3.ポリビニルフェノール
ポリビニルフェノール(マルカリンカー MS−1P、丸善化学社製)
4.硬化剤
フェノール(Matrimid 5292B、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
ベンゾオキサジン(RLV−100、エア・ウォーター社製)
トリアジンチオール(ジスネットDB、三協化成社製)
酸無水物(YH−307、ジャパンエポキシレジン社製)
5.硬化促進剤
イミダゾール化合物1(TEP−2E4MZ、日本曹達社製)
イミダゾール化合物2(P−0505、四国化成工業社製)
イミダゾール化合物3(2MZ−A、四国化成工業社製)
6.接着性付与剤
イミダゾールシランカップリング剤(SP−1000、日鉱マテリアル社製)
7.無機フィラー
球状シリカ(SE−4050−SPE、アドマテックス社製、フェニル処理シリカフィラー、平均粒子径1μm、最大粒子径5μm)
球状シリカ(SE−4050−SEE、アドマテックス社製、フェニル処理以外のシリカフィラー、平均粒子径1μm、最大粒子径5μm)
8.ゴム粒子
ゴム粒子(X−52−7030、信越化学工業社製)
(2)半導体チップの実装
(2−1)位置合わせする工程及び固定工程
得られた封止樹脂を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、基板とニードルとのギャップ200μm、塗布量3.3μLにて基板(WALTS−KIT MB50−0101JY、ウォルツ社製)上に塗布した。
塗布した封止樹脂を介して、ハンダからなるバンプを有する半導体チップ(WALTS−TEG MB50−0101JY、ハンダの溶融温度235℃、ウォルツ社製)をフリップチップボンダ(FC3000S、東レエンジニアリング社製)を用いて基板上に位置合わせし、200℃(温度B)、10Nで5秒間押圧することにより、封止樹脂の硬化率を80%に調整した。
なお、封止樹脂の硬化率(%)は、封止樹脂の一部を採取し、DSC6220(Seiko Instruments社製)により測定した発熱量から、式(1)により求めた。
(2−2)電極接続工程
その後、得られた半導体チップ固定体を10個まとめてリフロー装置に投入し、リフロー装置(UNI−50166F、日本アントム社製)において260℃(温度A)で30秒間加熱することにより、ハンダを溶融させて、半導体チップのバンプと基板の電極部との電極接続を行い、半導体チップ実装体を得た。これを3回繰り返して、合計30個の半導体チップ実装体を得た。
また、電極接続工程における封止樹脂の硬化収縮率(%)を、比重計(「Minidens」、Grabner Instruments社製)を用いて、電極接続工程前後の封止樹脂の体積の比を測定することにより求めた。
また、温度BからAまでの間の封止樹脂の平均線膨張係数α2(ppm/℃)から、式(2)で表される値X(%)を求めた。なお、温度BからAまでの間の封止樹脂の平均線膨張係数α2(ppm/℃)は、TMA/SS6000(Seiko Instruments社製)を用い、引張りモードにて30〜300℃(10℃昇温)伸縮を2サイクル行い、2サイクル目の曲線から求めた。
(実施例2)
固定工程において、140℃、10Nで30秒間押圧することにより、封止樹脂の硬化率を75%に調整したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
(実施例3〜9)
封止樹脂の組成、固定工程における条件(固定条件)、及び/又は、電極接続工程における条件(電極接続条件)を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
(実施例10)
固定工程を加圧雰囲気下で行ったこと以外は実施例9と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
(実施例11)
固定工程においてフリップチップボンダを用いて封止樹脂の硬化率を80%に調整した後、加圧オーブン(HP−5050、協真エンジニアリング社製)を用いて加圧雰囲気0.9MPa、温度120℃、加圧加熱時間5分で封止樹脂を硬化させたこと以外は実施例9と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
(実施例12〜17)
封止樹脂の組成、固定工程における条件(固定条件)、及び/又は、電極接続工程における条件(電極接続条件)を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
(比較例1)
固定工程において、140℃、10Nで10秒間押圧することにより、封止樹脂の硬化率を30%に調整したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
(比較例2〜4)
封止樹脂の組成、固定工程における条件(固定条件)、及び/又は、電極接続工程における条件(電極接続条件)を表3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
(比較例5及び6)
固定工程と電極接続工程とを分離して行わず、下記のような操作を行った。
表3に示す組成の封止樹脂を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、基板とニードルとのギャップ200μm、塗布量3.3μLにて基板(WALTS−KIT MB50−0101JY、ウォルツ社製)上に塗布した。
塗布した封止樹脂を介して、ハンダからなるバンプを有する半導体チップ(WALTS−TEG MB50−0101JY、ハンダの溶融温度235℃、ウォルツ社製)をフリップチップボンダ(FC3000S、東レエンジニアリング社製)を用いて基板上に位置合わせし、140℃、20Nで1秒間押圧して電極部同士を接触させた。更に、3秒間で温度を260℃に上昇させるとともに、20Nで押圧することにより、半導体チップのバンプと基板の電極部との電極接続を行うとともに封止樹脂の硬化を行い、半導体チップ実装体を得た。なお、続いて半導体チップ実装体を作製するために、4秒間で温度を140℃まで冷却した。これを30回繰り返して、合計30個の半導体チップ実装体を得た。
(比較例7)
固定工程と電極接続工程とを分離して行わず、下記のような操作を行った。
表3に示す組成の封止樹脂を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、基板とニードルとのギャップ200μm、塗布量3.3μLにて基板(WALTS−KIT MB50−0101JY、ウォルツ社製)上に塗布した。
塗布した封止樹脂を介して、ハンダからなるバンプを有する半導体チップ(WALTS−TEG MB50−0101JY、ハンダの溶融温度235℃、ウォルツ社製)をフリップチップボンダ(FC3000S、東レエンジニアリング社製)を用いて基板上に位置合わせした。得られた積層体を10個まとめてリフロー装置に投入し、リフロー装置(UNI−50166F、日本アントム社製)において170℃で120秒間ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱した後、260℃で60秒間ハンダの溶融温度よりも高い温度で加熱することにより、半導体チップのバンプと基板の電極部との電極接続を行うとともに封止樹脂の硬化を行い、半導体チップ実装体を得た。これを3回繰り返して、合計30個の半導体チップ実装体を得た。
(評価)
実施例及び比較例で得られた半導体チップ実装体について、以下の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
(1)ボイド発生の有無
超音波探査映像装置(mi−scope hyper II、日立建機ファインテック社製)を用いて、得られた半導体チップ実装体のボイドを観察し、下記の基準で評価した。
○ ボイドがほとんど観察されなかった。
△ ボイドがわずかに観察された。
× ボイドによる目立った剥離が観察された。
(2)耐リフロー試験
得られた半導体チップ実装体を125℃で6時間乾燥し、続いて85℃、85%の湿潤条件で48時間処理した後、ハンダリフロー時と同様の260℃、30秒の条件で加熱処理を行った。そして、このような加熱処理を3回行った後の半導体チップ実装体について、層間剥離が発生しているか否かを観察した。層間剥離の観察は、超音波探査映像装置(mi−scope hyper II、日立建機ファインテック社製)を用いて行い、下記の基準で評価した。
○ 層間剥離がほとんど観察されなかった。
△ 層間剥離がわずかに観察された。
× 層間の目立った剥離が観察された。
(3)接続信頼性
デジタルマルチメーター(KT−2002、カイセ社製)を用いて、得られた半導体チップ実装体の断線箇所を測定し、下記の基準で評価した。
○ 断線箇所が無かった。
△ 断線箇所が1〜10箇所あった。
× 断線箇所が10箇所を超えていた。
(4)生産効率
半導体チップ実装体1個の作製に要した平均時間を、下記の基準で評価した。
◎ 平均所要時間が1秒以下であった。
○ 平均所要時間が1秒を超えたが3秒以下であった。
△ 平均所要時間が3秒を超えたが5秒以下であった。
× 平均所要時間が5秒を超えた。
Figure 0005771084
Figure 0005771084
Figure 0005771084
本発明によれば、ボイドの発生を抑制しながら、信頼性の高い半導体装置を効率よく製造することのできる半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ実装体の製造方法に用いる封止樹脂を提供することができる。
1 半導体チップ固定体
2 基板
3 半導体チップ
4 封止樹脂

Claims (5)

  1. フリップチップ実装による半導体チップ実装体の製造方法であって、
    ハンダからなるバンプを有する半導体チップを、封止樹脂が塗布又は貼付された基板又は他の半導体チップ上に、前記封止樹脂を介して位置合わせする工程と、
    前記ハンダの溶融温度よりも低い温度で加熱するとともに荷重を付与して、前記封止樹脂の硬化率を70%以上に調整するとともに、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接触させて半導体チップ固定体を得る固定工程と、
    前記ハンダを溶融させて、前記バンプと前記基板又は他の半導体チップの電極部とを接続する電極接続工程とを有し、
    電極接続工程において、封止樹脂の硬化収縮率が、下記式(2)で表される値X(%)の2倍より大きいことを特徴とする導体チップ実装体の製造方法。
    X=(A−B)×α2×10−4 (2)
    式(2)中、Aは電極接続工程を行う温度(℃)を表し、Bは固定工程を行う温度(℃)を表し、α2は温度BからAまでの間の封止樹脂の平均線膨張係数(ppm/℃)を表す。
  2. 固定工程をフリップチップボンダを用いて行い、電極接続工程をリフロー装置において行うことを特徴とする請求項1記載の半導体チップ実装体の製造方法。
  3. 半導体チップ固定体を一時的に保管した後、複数の前記半導体チップ固定体をまとめて搬送し、リフロー装置に投入することを特徴とする請求項2記載の半導体チップ実装体の製造方法。
  4. 半導体チップ固定体は、基板又は他の半導体チップの1つの面上に複数の半導体チップが固定された固定体であることを特徴とする請求項2記載の半導体チップ実装体の製造方法。
  5. 請求項1、2、3記載の半導体チップ実装体の製造方法に用いる封止樹脂であって、
    硬化性化合物と硬化剤と無機フィラーとを含有し、
    140℃で30秒加熱した場合の硬化率が40%以上であり、かつ、
    電極接続工程における硬化収縮率が、下記式(2)で表される値X(%)の2倍より大きい
    ことを特徴とする封止樹脂。
    X=(A−B)×α2×10−4 (2)
    式(2)中、Aは電極接続工程を行う温度(℃)を表し、Bは固定工程を行う温度(℃)を表し、α2は温度BからAまでの間の封止樹脂の平均線膨張係数(ppm/℃)を表す。
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