JP5746486B2 - 熱膨張性微小球、その製造方法および用途 - Google Patents

熱膨張性微小球、その製造方法および用途 Download PDF

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Description

本発明は、熱膨張性微小球、その製造方法および用途に関する。さらに詳しくは、耐熱性および耐溶剤性が高い熱膨張性微小球、その製造方法および用途に関する。
熱可塑性樹脂を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性微小球は、一般に熱膨張性マイクロカプセルと呼ばれている。熱可塑性樹脂としては、通常、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル酸エステル系共重合体等が用いられている。また、発泡剤としてはイソブタンやイソペンタン等の炭化水素が主に使用されている(特許文献1参照)。
熱膨張性マイクロカプセルとして、たとえば、ニトリル系単量体(I)およびカルボキシル基を含有する単量体(II)を重合して得られた共重合体を外殻とする熱膨張性微小球が提案されている(特許文献2参照)。この熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性は良好である。しかし、近年、要求物性が高くなっているので、さらなる耐熱性向上が求められている。
同様の熱膨張性マイクロカプセルとして、アクリロニトリル(I)、カルボキシル基を含有する単量体(II)、この単量体のカルボキシル基と反応する基を持つ単量体(III)を重合して得られた共重合体を外殻とする熱膨張性微小球が提案されている(特許文献3参照)。この熱膨張性微小球は耐熱性に優れる。しかしながら、カルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基とが、外殻を構成する共重合体中に均一に存在するので、加熱膨張させると架橋度が高くなり過ぎることがある。また、加熱膨張時に架橋反応が進行するため加熱膨張させた中空微粒子の耐溶剤性は良好であるが、さらなる耐溶剤性の向上が求められている。
特許文献4には、メタクリロニトリルおよびメタクリル酸から得られるポリメタクリルイミド構造を有する共重合体を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性マイクロカプセルが記載されている。この熱膨張性マイクロカプセルも耐熱性は高い。しかしながら、メタクリロニトリルの含有割合が高いので、外殻を構成する樹脂の結晶化度が下がり、外殻のガスバリア性および耐溶剤性が低下する。ガスバリア性が低下すると、樹脂成形に用いて高温環境下に長時間滞留した場合に、耐熱性および膨張性の低下が顕著になる。
米国特許第3615972号明細書 国際公開第03/099955号パンフレット 国際公開第99/43758号パンフレット 国際公開第2007/072769号パンフレット
本発明の目的は、耐熱性および耐溶剤性が高い熱膨張性微小球、その製造方法および用途を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の1)および/または2)に示す熱膨張性微小球によって、上記課題が達成できることを見出し、本発明に到達した。
1)カルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂を外殻とする原料微小球に対して、周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理して得られる熱膨張性微小球
2)カルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂を外殻とし、水に触れることに起因する膨張開始温度および最大膨張温度の変動(通常は低下)が小さい熱膨張性微小球
すなわち、本発明にかかる熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理されてなる。
前記金属を含有する有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物であると好ましい。
M−O−C (1)
(但し、Mは周期表3〜12族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
前記金属を含有する有機化合物が水溶性であると好ましい。
前記金属の重量割合が前記熱膨張性微小球の0.05〜15重量%であると好ましい。
前記金属が周期表4〜5族に属すると好ましい。
前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が前記重合性成分の50重量%超であると好ましい。
前記重合性成分がニトリル系単量体をさらに含有すると好ましい。
イオン交換水100重量部に5重量部の熱膨張性微小球を分散させ、分散前後の膨張開始温度および最大膨張温度の変動率がそれぞれ分散前の10%以下であると好ましい。
本発明にかかる別の熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、最大膨張倍率が30倍以上であり、イオン交換水100重量部に5重量部の熱膨張性微小球を分散させ、分散前後の膨張開始温度および最大膨張温度の変動率がそれぞれ分散前の10%以下である。
これらの熱膨張性微小球が、以下の(1)〜(4)のうちの少なくとも1つを満足すると好ましい。
(1)発泡剤が沸点−20℃以上170℃未満の炭化水素および沸点170℃以上360℃以下の炭化水素を含む。
(2)熱膨張性微小球のDMF不溶解率が75重量%以上である。
(3)熱膨張性微小球の最大膨張温度が240℃以上で最大膨張倍率が30倍以上である。
(4)熱膨張性微小球が液体で湿化させてなる。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、カルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される原料微小球に対して、周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理する工程を含む製造方法である。
前記表面処理工程を、前記原料微小球および金属含有有機化合物を水性分散媒に混合して行うと好ましい。
前記表面処理工程に先立ち、前記重合性成分および発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、前記重合性成分を重合させて、前記原料微小球を調製する工程をさらに含み、前記原料微小球を含む重合液中で前記表面処理工程を行うと好ましい。
前記表面処理工程を、前記原料微小球に前記金属含有有機化合物を含む液を噴霧添加して行うと好ましい。
前記表面処理工程後に得られた熱膨張性微小球を液体で湿化させる工程をさらに含むと好ましい。
本発明の中空微粒子は、上記熱膨張性微小球および/または上記製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記製造方法で得られる熱膨張性微小球、および、上記中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。
本発明の成形物は、上記組成物を成形してなる。
本発明の熱膨張性微小球は、耐溶剤性および耐熱性が高い。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、耐溶剤性および耐熱性が高い熱膨張性微小球を、効率よく製造することができる。
本発明の中空微粒子は、上記熱膨張性微小球を原料として得られるので、優れた耐溶剤性および耐熱性を有する。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球および/または中空微粒子を含有するので、優れた耐溶剤性および耐熱性を有する。
本発明の成形物は、上記組成物を成形して得られるので、軽量で優れた耐溶剤性を有する。
原料微小球および熱膨張性微小球の一例を示す概略図である。 熱膨張性微小球を加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を模式的に示すグラフである。 表面処理のある微小球(5)および表面処理なしの原料微小球(3)について、加熱温度と真比重の測定結果を示すグラフである。 微小球(5)および原料微小球(3)について、加熱温度と膨張倍率の測定結果を示すグラフである。 微小球(5)および原料微小球(3)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフである。 微小球(6)〜(7)および原料微小球(3)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフである。 微小球(8)〜(10)および原料微小球(4)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフである。 微小球(11)および原料微小球(5)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフである。 微小球(12)および原料微小球(6)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフである。 微小球(13)および原料微小球(7)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフである。 微小球(14)および原料微小球(8)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフである。 実施例A1および比較例A1における可使時間域を比較したグラフである。 熱膨張性微小球を膨張開始温度および最大膨張温度の平均値の温度で加熱膨張させた際の加熱時間と重量減少率との関係を模式的に示すグラフである。 微小球(9)および原料微小球(4)を234℃でそれぞれ加熱膨張させた際の加熱時間と重量減少率との関係を示すグラフである。 実施例B1およびB2と比較例B1およびB2とにおいて得られた成形品の比重を比較するグラフである。
〔熱膨張性微小球の製造方法〕
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、原料微小球に対して、周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理する工程(表面処理工程)を含む。以下では、「周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物」を簡単のために「金属含有有機化合物」と表現することがある。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、前記表面処理工程に先立ち、前記原料微小球を調製する工程(原料微小球調製工程)をさらに含むと好ましい。本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、前記表面処理工程後に得られた熱膨張性微小球を液体で湿化させる工程(湿化工程)をさらに含んでいてもよい。
以下では、まず、原料微小球およびその調製工程について説明した上で、上記表面処理工程を詳しく説明する。最後に湿化工程を説明する。
(原料微小球およびその調製工程)
原料微小球は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻1と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤2とから構成される。熱可塑性樹脂は、カルボキシル基含有単量体を必須として含有する単量体成分を含む重合性成分(すなわち、カルボキシル基含有単量体を含む重合性成分)を重合して得られる。
原料微小球調製工程は、前記重合性成分および発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、前記重合性成分を重合させる工程である。
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であれば特に限定はないが、たとえば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3〜13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150〜260℃および/または蒸留範囲70〜360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等を挙げることができる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。上記発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であるが、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質を内包すると、熱膨張性微小球の膨張温度において膨張に十分な蒸気圧を発生させることが可能で、高い膨張倍率を付与することが可能であるために好ましい。この場合、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質と共に、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包していても良い。
また、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包する場合、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質が発泡剤に占める割合については、特に限定はないが、好ましくは95重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは65重量%、特により好ましくは50重量%以下、最も好ましくは30重量%未満である。熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質の割合が、95重量%を超えると最大膨張温度は高くなるが膨張倍率が低下することがある。
発泡剤については別の考え方がある。すなわち、発泡剤が低沸点炭化水素(A)と高沸点炭化水素(B)とを含むと、膨張倍率が低下することなく、膨張開始温度をたとえば220℃以上に高めることが可能であるため好ましい。低沸点炭化水素(A)および高沸点炭化水素(B)は、両方または一方が炭化水素の混合物であっても良い。
低沸点炭化水素(A)と高沸点炭化水素(B)との重量比率(A/B)は、特に限定はないが、好ましくは90/10〜5/95、より好ましくは80/20〜10/90、特に好ましくは70/30〜15/85、最も好ましくは65/35〜20/80である。上記重量比率が90/10より大きい場合は、膨張開始温度が十分に高くならないことがある。上記重量比率が5/95より小さい場合は、膨張倍率が低下することがある。
低沸点炭化水素(A)の沸点は、通常−20℃以上170℃未満、好ましくは25〜140℃、さらに好ましくは50〜130℃、特に好ましくは55〜110℃である。
低沸点炭化水素(A)としては、たとえば、イソブタン、シクロブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、イソヘキサン(2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン)、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン(2,2,3−トリメチルブタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、2−メチルヘキサン)、3−エチルペンタン、3−メチルヘキサン、1,1,2,2−テトラメチルシクロプロパン、オクタン、イソオクタン(2,2,3,3−テトラメチルブタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン)、ノナン、イソノナン(2,2,4,4−テトラメチルペンタン、2,2,4−トリメチルヘキサン、2,2,5−トリメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘプタン、2,4−ジメチルヘプタン、2,5−ジメチルヘプタン、2−メチルオクタン)、3,3−ジメチルヘプタン、3,4−ジメチルヘプタン、3,5−ジメチルヘプタン、1,1,3−トリメチルシクロヘキサン、1,1,4−トリメチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1−エチル−2−メチルシクロヘキサン等の炭素数4〜9の炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。低沸点炭化水素(A)は、蒸留範囲が70〜170℃未満のノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等でもよい。
これらの低沸点炭化水素(A)のうちでも、沸点が55〜110℃である炭化水素(たとえば、イソヘキサン、イソオクタン等)が好ましい。低沸点炭化水素(A)に占める沸点が55〜110℃である炭化水素の割合については、特に限定はないが、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%である。上記割合が50重量%未満の場合は、膨張開始温度が十分に高くならないことがある。
高沸点炭化水素(B)の沸点は、通常170〜360℃(沸点170℃以上360℃以下)、好ましくは185〜300℃、さらに好ましくは200〜270℃、特に好ましくは210〜265℃である。
高沸点炭化水素(B)としては、たとえば、デカン、イソブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、シクロデカン、ノルマルペンチルシクロペンタン、tert−ブチルシクロヘキサン、trans−1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサン、ウンデカン、アミルシクロヘキサン、ドデカン、イソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、2−メチルウンデカン)、3−メチルウンデカン、シクロドデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、4−メチルドデカン、ペンチルシクロヘキサン、テトラデカン、ノルマルオクチルシクロヘキサン、ペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン(2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナンヘキサデカン)、デシルシクロヘキサン、ヘプタデカン、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、イソエイコサン等の炭素数10〜20の炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。高沸点炭化水素(B)は、蒸留範囲が170〜360℃のノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等でもよい。
これらの高沸点炭化水素(B)のうちでも、沸点が210〜265℃である炭化水素(たとえば、イソヘキサデカン等)が好ましい。高沸点炭化水素(B)に占める沸点が210〜265℃である炭化水素の割合については、特に限定はないが、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%である。上記割合が50重量%未満の場合は、膨張倍率が低下することがある。
重合性成分は、(好ましくは重合開始剤存在下で)重合することによって、熱膨張性微小球(原料微小球)の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。
単量体成分は、一般には、重合性二重結合を1個有する(ラジカル)重合性単量体と呼ばれている成分を含む。単量体成分は、カルボキシル基含有単量体を必須とする。
カルボキシル基含有単量体は、遊離カルボキシル基を1分子当たり1個以上有するものであれば特に限定はないが、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。上記カルボキシル基含有単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がさらに好ましく、ガスバリア性が高いためメタクリル酸が特に好ましい。
単量体成分は、カルボキシル基含有単量体を必須成分とし、その他の単量体成分を1種または2種以上併用してもよい。その他の単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
単量体成分は、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリルアミド系単量体およびハロゲン化ビニリデン系単量体から選ばれる少なくとも1種をさらに含むと好ましい。
カルボキシル基含有単量体の重量割合は、得られる熱膨張性微小球の耐熱性や耐溶剤性を高め、可使温度域や可使時間域を広くする観点からは、単量体成分に対して、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜90重量%であり、さらに好ましくは40〜90重量%であり、特に好ましくは51.2重量%超90重量%以下であり、最も好ましくは53〜90重量%である。カルボキシル基含有単量体が10重量%未満の場合は、耐熱性が不十分であり、高温の広い温度域や時間域で安定した膨張性能が得られないことがある。また、カルボキシル基含有単量体が90重量%超の場合は、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。
単量体成分がニトリル系単量体をさらに含むと、外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上するために好ましい。
ニトリル系単量体を必須成分として含む場合、カルボキシル基含有単量体とニトリル系単量体の混合物の重量割合は単量体成分に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上である。
このとき、カルボキシル基含有単量体とニトリル系単量体の混合物中におけるカルボキシル基含有単量体の混合比率は、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは51.2重量%超90重量%以下、最も好ましくは53〜90重量%である。混合比率が10重量%未満であると耐熱性、耐溶剤性の向上が不十分で、高温の広い温度域や時間域で安定した膨張性能が得られないことがある。また、カルボキシル基含有単量体が90重量%超の場合は、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。
単量体成分が塩化ビニリデン系単量体を含むとガスバリア性が向上する。また、単量体成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体および/またはスチレン系単量体を含むと熱膨張特性をコントロールし易くなる。単量体成分が(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上する。
塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体およびスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種の重量割合は単量体成分に対して、好ましくは50重量%未満、さらに好ましくは30重量%未満、特に好ましくは10重量%未満である。50重量%以上含有すると耐熱性が低下することがある。
単量体成分は、カルボキシル基含有単量体のカルボキシル基と反応する単量体を含有していてもよい。単量体成分がカルボキシル基と反応する単量体をさらに含む場合は、耐熱性がさらに向上し、高温における膨張性能が向上する。カルボキシル基と反応する単量体としては、たとえば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。カルボキシル基と反応する単量体の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは3〜5重量%である。
重合性成分は、上記単量体成分以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、熱膨張時の内包された発泡剤の保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
架橋剤の量については、特に限定はないが、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部、特に好ましくは0.2重量部超1重量部未満である。架橋剤の量は、単量体成分100重量部に対して0重量部以上0.1重量部未満でもよい。その理由は、最終的に得られる熱膨張性微小球は、後述する表面処理工程で原料微小球の外表面を表面処理することによって、最外表面に高架橋度の樹脂層が形成されると考えられるからである。この高架橋度の樹脂層によって、発泡剤が加熱され気化する際に外殻を構成する熱可塑性樹脂を透過して外部に抜け出ることを防止すること、いわゆるガス抜けを防止する性質(ガスバリア性)が付与されると考えられる。したがって、得られた熱膨張性微小球は、架橋剤の量が0重量部以上0.1重量部未満の場合でも、良好な膨張性能を示す。
重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、得られる熱膨張性微小球の耐熱性や耐溶剤性を高め、可使温度域や可使時間域を広くする観点からは、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%超、最も好ましくは53重量%以上である。好ましい上限は90重量%である。10重量%未満であると耐熱性、耐溶剤性が不十分で、高温の広い温度域や時間域で安定した膨張性能が得られないことがある。90重量%超であると膨張倍率が低下することがある。
原料微粒子調製工程においては、重合開始剤を含有する油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。
重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。
過酸化物としては、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートおよびジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−オクチルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、たとえば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。上記重合開始剤のなかでも、パーオキシジカーボネートが好ましい。重合開始剤がパーオキシジカーボネートと共に他の開始剤を含む場合、パーオキシジカーボネートが重合開始剤に占める割合は、60重量%以上が好ましい。
重合開始剤の量については、特に限定はないが、前記単量体成分100重量部に対して0.3〜8.0重量部であると好ましい。
原料微小球調製工程では、油性混合物は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1−置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加することがある。
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
水性分散媒は、たとえば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤および/または分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
原料微小球調製工程では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
原料微小球調製工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に乳化分散させる。
油性混合物を乳化分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、特殊機化工業株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPaの範囲である。
原料微小球調製工程では、以下に詳しく述べる金属含有有機化合物を存在させずに行うことが好ましい。
原料微小球は、以上説明した原料微小球調製工程で得られると好ましいが、その調製方法を限定するわけではない。
原料微小球の諸物性のうちで、平均粒子径、粒度分布の変動係数CV等については、後述する熱膨張性微小球の諸物性とほぼ同じ数値範囲の物性を有する。しかし、後述するように、表面処理工程前の原料微小球と表面処理工程後に得られる熱膨張性微小球とでは、真比重、発泡剤の内包率、可使温度域、可使時間域、最大膨張温度、DMF不溶解率等の諸物性は相違することがある。特に、可使温度域、可使時間域、最大膨張温度、DMF不溶解率については大幅に相違することがある。
(表面処理工程)
表面処理工程は、原料微小球に対して金属含有有機化合物で表面処理する工程である。金属含有有機化合物については、特に限定はないが、表面処理効率の見地からは、金属含有有機化合物が水溶性であると好ましい。
金属含有有機化合物に含まれる金属は、周期表3〜12族に属する金属であれば特に限定はなく、たとえば、スカンジウム、イッテルビウム、セリウム等の3族金属;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の4族金属;バナジウム、ニオビウム、タンタル等の5族金属;クロム、モリブデン、タングステン等の6族金属;マンガン、レニウム等の7族金属;鉄、ルテニウム、オスミウム等の8族金属;コバルト、ロジウム等の9族金属;ニッケル、パラジウム等の10族金属;銅、銀、金等の11族金属;亜鉛、カドミウム等の12族金属等を挙げることができる。これらの金属は1種または2種以上を併用してもよい。上記金属の分類は、社団法人日本化学会発行の「化学と教育」、54巻、4号(2006年)の末尾に綴じこまれた「元素の周期表(2005)」(2006日本化学会原子量小委員会)に基づいている。
これらの金属のうちでも、遷移金属(3〜11族に属する金属)が好ましく、4〜5族に属する金属がさらに好ましい。
遷移金属としては、たとえば、スカンジウム、イッテルビウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、金等が挙げられる。その中でも、スカンジウム、イッテルビウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオビウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀等の周期表4〜5周期に属する遷移金属が好ましく、チタン、ジルコニウムおよびバナジウム等が耐熱性向上の観点でさらに好ましい。遷移金属でない場合は、耐熱性の向上が不十分になることがある。
上記金属の原子価数については、特に限定はないが、1金属原子当りの架橋効率という点で、2〜5価が好ましく、3〜5価がさらに好ましく、4〜5価が特に好ましい。原子価数が1価であると、熱膨張性微小球の耐溶剤性および耐水性が低くなることがある。また、6価以上であると架橋効率が下がることがある。
金属含有有機化合物を構成する金属種およびその原子価数の組合せとしては、耐熱性向上の観点からは、亜鉛(II)、カドミウム(II)、アルミニウム(III)、バナジウム(III)、イッテルビウム(III)、チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、鉛(IV)、セリウム(IV)、バナジウム(V)、ニオビウム(V)、タンタル(V)等が好ましい。
前記金属含有有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物であると好ましい。
M−O−C (1)
(但し、Mは周期表3〜12族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
まず、一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物を詳しく説明する。
−一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物−
一般式(1)で示される金属原子−酸素原子間の結合(M−O間の結合)は、イオン結合、共有結合(配位結合を含む)のいずれであってもよいが、共有結合が好ましい。
上記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物が、金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物であると、高い耐溶剤性と、高温の広い温度域で安定した膨張性能とを熱膨張性微小球に付与することができる。以下では、簡単のために、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合」を「MO結合」と記載し、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物」を「MO化合物」と記載することがある。
MO化合物は、金属−アルコキシド結合または金属−アリールオキシド結合を少なくとも1つ有する化合物である。MO化合物は、金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)、金属−OCON結合(金属−カーバメート結合)、金属=O結合(金属オキシ結合)や、以下の一般式(2)(式中、R、Rは互いに同一であっても、相異していても良い有機基である。)に示した金属−アセチルアセトナート結合等の、MO結合ではない金属に対する結合をさらに有していてもよい。Mは金属を示す。
Figure 0005746486
上記でも明らかであるが、MO結合と金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)とは相違する概念であって、金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)にはMO結合はない。
MO化合物は、たとえば、以下に示す化合物(1)〜化合物(4)の4つに分類される。
化合物(1):
化合物(1)は、金属アルコキシドおよび金属アリールオキシドであり、たとえば、以下の化学式(A)で示される化合物である。
M(OR) (A)
(但し、Mは金属を示し;nは金属Mの原子価数であり;Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、n個あるそれぞれの炭化水素基は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。)
化合物(1)において、M(金属)およびn(原子価数)は上記で説明したとおりである。
また、Rは、脂肪族であっても芳香族であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、アリル基、n−デシル基、トリデシル基、ステアリル基、シクロペンチル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
化合物(1)としては、たとえば、ジエトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛等の亜鉛(II)アルコキシド;カドミウムジメトキシド、カドミウムジエトキシド等のカドミウム(II)アルコキシド;アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウム(III)アルコキシド;バナジウムトリエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシド等のバナジウム(III)アルコキシド;イッテルビウムトリエトキシド、イッテルビウムトリイソプロポキシド等のイッテルビウム(III)アルコキシド;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシドチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラフェノキシチタン等のチタン(IV)アルコキシド;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)ジルコニウム、テトラフェノラートジルコニウム等のジルコニウム(IV)アルコキシド;テトラノルマルプロポキシ鉛、テトラノルマルブトキシ鉛等の鉛(IV)アルコキシド;テトラメトキシセリウム、テトラエトキシセリウム、テトライソプロポキシセリウム、テトラノルマルプロポキシセリウム、テトラノルマルブトキシセリウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)セリウム、テトラフェノラートセリウム等のセリウム(IV)アルコキシド;ニオビウムペンタメトキシド、ニオビウムペンタエトキシド、ニオビウムペンタブトキシド等のニオビウム(V)アルコキシド;トリメトキシオキシバナジウム、トリエトキシオキシバナジウム、トリ(n−プロポキシ)オキシバナジウム、イソプロポキシオキシバナジウム、トリ(n−ブトキシド)オキシバナジウム、イソブトキシオキシバナジウム等のアルコキシオキシバナジウム(V);その他、タンタル、マンガン、コバルト、銅等の金属の金属アルコキシド等が挙げられる。
化合物(2):
化合物(2)は上記化合物(1)のオリゴマーおよびポリマーであり、一般には化合物(1)を縮合して得られるものである。化合物(2)は、たとえば、以下の化学式(B)で示される化合物である。化学式(B)では、部分的に加水分解した構造を示している。
RO[−M(OR)O−]x−1R (B)
(但し、MおよびRは化学式(A)と同じ;xが2以上の整数である。)
化合物(2)の分子量については、特に限定はないが、数平均分子量が好ましくは200〜5000、特に好ましくは300〜3000である。数平均分子量が200未満は架橋効率が低くなることがある。一方、数平均分子量が5000超では架橋度合いのコントロールが難しくなることがある。
化合物(2)としては、たとえば、化学式(B)でx=2〜15を満足するチタンアルコキシポリマーやチタンアルコキシダイマー等が挙げられる。
化合物(2)の具体例としては、たとえば、ヘキサメチルジチタネート、オクタメチルトリチタネート等のチタンメトキシポリマー;ヘキサエチルジチタネート、オクタエチルトリチタネート等のチタンエトキシポリマー;ヘキサイソプロピルジチタネート、オクタイソプロピルトリチタネート、ヘキサノルマルプロピルジチタネート、オクタノルマルプロピルトリチタネート等のチタンプロポキシポリマー;ヘキサブチルジチタネート、オクタブチルトリチタネート等のチタンブトキシポリマー;ヘキサフェニルジチタネート、オクタフェニルトリチタネート等のチタンフェノキシポリマー;ポリヒドロキシチタンステアレート(化学式:i−CO〔Ti(OH)(OCOC1735)O〕−i−C)等のアルコキシチタン−アシレートポリマー;チタンメトキシダイマー、チタンエトキシダイマー、チタンブトキシダイマー、チタンフェノキシダイマー等のチタンアルコキシダイマー等が挙げられる。
化合物(3):
化合物(3)は、MO結合を有する金属キレート化合物である。化合物(3)は、MO結合を少なくとも1つ有し、且つ、ヒドロキシル基、ケト基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の電子供与性基を有する配位子化合物がMに配位した金属キレート化合物である。配位子化合物には、電子供与性基が1個以上あればよいが、2〜4個あるものが好ましい。化合物(3)には、MO結合、Mおよび配位子化合物が複数個あってもよい。
配位子化合物としては、特に限定はないが、たとえば、アルカノールアミン類、カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸(塩)類、β−ジケトン、β−ケトエステル、ジオール類およびアミノ酸類等が挙げられる。
アルカノールアミン類としては、たとえば、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等が挙げられる。
カルボン酸類としては、たとえば、酢酸等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸(塩)類としては、たとえば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸およびそれらの塩等が挙げられる。
β−ジケトンとしては、たとえば、アセチルアセトン等が挙げられる。
β−ケトエステルとしては、たとえば、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
ジオール類としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
配位子化合物がアルカノールアミン類である化合物(3)としては、たとえば、チタンテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシチタントリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、チタンテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシチタントリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシチタンキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;セリウムテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシセリウムトリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシセリウムビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシセリウムモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシセリウムビス(ジエタノールアミネート)、セリウムテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシセリウムトリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシセリウムモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がヒドロキシカルボン酸(塩)類である化合物(3)としては、たとえば、チタンラクテート、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシチタンビス(グリコレート)、チタンラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシチタンキレート化合物;ジルコニウムラクテート、モノヒドロキシジルコニウムトリス(ラクテート)、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシジルコニウムビス(グリコレート)、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシジルコニウムキレート化合物;セリウムラクテート、モノヒドロキシセリウムトリス(ラクテート)、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシセリウムビス(グリコレート)、セリウムラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ジケトンである化合物(3)としては、たとえば、亜鉛アセチルアセトネート等のアルコキシ亜鉛−β−ジケトンキレート化合物;アルミニウムアセチルアセトナート等のβ−ジケトン−アルコキシアルミニウムキレート化合物;バナジウムアセチルアセトナート等のβ−ジケトン−アルコキシバナジウムキレート化合物;チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジメトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジエトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジノルマルプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジブトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)等のβ−ジケトンキレート−アルコキシチタン化合物;ジヒドロキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、トリブトキシジルコニウムモノ(アセチルアセトネート)、ジブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、モノブトキシジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)等のβ−ジケトン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;ジヒドロキシセリウムビス(アセチルアセトネート)、セリウムテトラキス(アセチルアセトネート)、トリブトキシセリウムモノ(アセチルアセトネート)、ジブトキシセリウムビス(アセチルアセトネート)、モノブトキシセリウムトリス(アセチルアセトネート)等のβ−ジケトン−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ケトエステルである化合物(3)としては、たとえば、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシチタンキレート化合物;ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ジケトンおよびβ−ケトエステルである化合物(3)としては、たとえば、モノブトキシチタンモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のアルコキシチタン−β−ジケトンおよびβ−ケトエステルキレート化合物;モノブトキシジルコニウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ジケトンおよびβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物;モノブトキシセリウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ジケトンおよびβ−ケトエステル−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がジオール類である化合物(3)としては、たとえば、ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)等のアルコキシチタン−ジオールキレート化合物等が挙げられる。
化合物(3)は、タンタル、マンガン、コバルト、銅等の金属原子に上記配位子化合物が配位した金属キレート化合物およびその誘導体であってもよい。
化合物(4):
化合物(4)はMO結合および金属−アシレート結合をそれぞれ少なくとも1つ有する化合物である。
化合物(4)は、たとえば、以下の化学式(C)で示される化合物である。
M(OCORn−m(OR) (C)
(但し、M、nおよびRは、化学式(A)と同じ;RはRと同じであるが、同一であっても異なっていてもよい。;mは1≦m≦(n−1)を満足する正の整数である。)
化合物(4)は、化学式(C)で示される化合物が縮合して得られるものでもよい。
化合物(4)としては、たとえば、トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシチタン−アシレート化合物;トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシジルコニウム−アシレート化合物;トリブトキシセリウムモノステアレート等のアルコキシセリウム−アシレート化合物等が挙げられる。
−金属アミノ酸化合物−
金属含有有機化合物は、金属アミノ酸化合物であってもよい。金属アミノ酸化合物は、周期表3〜12族に属する金属の塩と、以下に示すアミノ酸類との反応で得られるアミノ酸キレート金属化合物である。
アミノ酸類とは、アミノ基(−NH)とカルボキシル基(−COOH)を同一分子内に有するアミノ酸のみならず、アミノ基の代りにイミノ基(−NH)を有するプロリンやヒドロキシプロリン等のイミノ酸をも包含する。アミノ酸は、通常α−アミノ酸であるが、β、γ、δまたはω−アミノ酸であってもよい。
アミノ酸類は、アミノ酸のアミノ基の水素原子の1つまたは2つが置換されたものや、アミノ酸のアミノ基の窒素とカルボキシル基の酸素でキレート化した錯体等のアミノ酸誘導体をも包含する。
アミノ酸類のpHは、好ましくは1〜7である。
アミノ酸類としては、たとえば、ジヒドロキシメチルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、ジヒドロキシプロピルグリシン、ジヒドロキシブチルグリシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、ヒスチジン、トレオニン、グリシルグリシン、1−アミノシクロプロパンカルボン酸、1−アミノシクロへキサンカルボン酸、2−アミノシクロヘキサンヒドロカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ジヒドロキシエチルグリシン、グリシン、セリン、トレオニン、グリシルグリシンが架橋効率という観点において好ましい。
上記アミノ酸類と反応する周期表3〜12族に属する金属の塩としては、塩基性塩化ジルコニルが好ましい。金属アミノ酸化合物の市販品としては、たとえば、オルガチックスZB−126(松本製薬工業社製)等が挙げられる。
上記金属含有有機化合物の中でも、ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)、チタンブトキシダイマー、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)ジアンモニウム塩や、トリイソプロポキシオキシバナジウム、塩化ジルコニウムとアミノカルボン酸の反応物(オルガチックスZB−126)等が、耐熱性向上効率およびハンドリング性の面において好ましい。
表面処理工程において、金属含有有機化合物のモル比(金属含有有機化合物のモル数/原料微小球の原料となるカルボキシル基含有単量体のモル数)については、特に限定はないが、好ましくは0.001〜1.0、より好ましくは0.005〜0.5、さらに好ましくは0.007〜0.3、特に好ましくは0.009〜0.15、最も好ましくは0.009〜0.06である。金属含有有機化合物のモル比が0.001未満では、耐熱性の向上効果が少なく高温環境下に長時間さらされると膨張性能が低下することがある。一方、金属含有有機化合物のモル比が1.0を超えると熱膨張性微小球の外殻が強固になりすぎて膨張性能が低下することがある。
表面処理工程は、原料微小球と金属含有有機化合物とを接触させる処理工程であれば、特に限定はないが、原料微小球および金属含有有機化合物を前述の水性分散媒に混合して行うと好ましい。したがって、金属含有有機化合物が水溶性であると好ましい。
表面処理工程を水性分散媒中で行う場合、原料微小球、金属含有有機化合物および水性分散媒等を含む分散混合物に対する原料微小球の重量割合は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜35重量%である。原料微小球の重量割合が1重量%未満では、処理効率が低くなることがある。一方、原料微小球の重量割合が50重量%超では、処理の不均一化が発生することがある。
分散混合物中の金属含有有機化合物の重量割合は、均一に処理が行えれば特に限定はないが、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。金属含有有機化合物の重量割合が0.1重量%未満では、処理効率が低くなることがある。一方、金属含有有機化合物の重量割合が20重量%超では、処理の不均一化が発生することがある。
また、表面処理に用いられる水性分散媒は、通常、原料微小球の調製に用いた水性分散媒や、新たに調製した水を含む水性分散媒であればよいが、必要により、メタノール、エタノールおよびプロパノール等のアルコール;ヘキサン、イソオクタンおよびデカン等の脂肪族炭化水素;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸およびその塩(たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等);テトラヒドロフラン、ジアルキルエーテルおよびジエチルエーテル等のエーテル;界面活性剤;帯電防止剤等のその他成分を含有していてもよい。
表面処理工程では、原料微小球調製工程で得られた原料微小球を含む重合液をそのまま使用して、熱膨張性微小球を製造してもよい。また、原料微小球調製工程で得られた重合液に対して、ろ過、水洗等の一連の単離操作を行い、必要により乾燥して原料微小球を重合液から一旦分離し、その後に表面処理工程を行って、熱膨張性微小球を製造してもよい。
水性分散媒がその他の成分を含む場合、たとえば、以下に示すA)〜D)の方法で、表面処理工程を行うことができる。
A)その他の成分および原料微小球を含む成分1と、金属含有有機化合物を含む成分2とを混合する方法
B)金属含有有機化合物および原料微小球を含む成分1と、その他の成分を含む成分2とを混合する方法
C)その他の成分および金属含有有機化合物を含む成分1と、原料微小球を含む成分2とを混合する方法
D)原料微小球を含む成分1と、その他の成分を含む成分2と、金属含有有機化合物を含む成分3とを同時に混合する方法
(上記成分1〜3のうちの少なくとも1つの成分は水を含む。2つまたは3つの成分が水を含んでいてもよい。)
表面処理工程は、上記で説明した以外の方法で行ってもよく、たとえば、以下に示す1)および2)の方法がある。
1)湿化した原料微小球(wetケーキ状の原料微小球)に表面処理
原料微小球と、金属含有有機化合物と、水性分散媒とを(均一に)含み、原料微小球の重量割合が、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である混合物を準備し、気流乾燥、減圧加熱乾燥等の操作を行って水性分散媒を除去して熱膨張性微小球を得る方法。
2)(ほぼ)乾燥した原料微小球に表面処理
原料微小球と、金属含有有機化合物と、水性分散媒とを(均一に)含み、原料微小球の重量割合が、好ましくは90重量%以上、好ましくは95重量%以上である乾燥した原料微小球に、金属含有有機化合物を添加し、均一混合した後に、膨張しない程度に加熱することによって揮発分を除去して熱膨張性微小球を得てもよい。このとき、原料微小球は静置した状態でも、攪拌させた状態でも、流動層等を利用して空気中に流動化させた状態でも良い。金属含有有機化合物の添加は、金属含有有機化合物または金属含有有機化合物を含む液をスプレー等で均一に噴霧添加するのが好ましい。
表面処理工程における処理温度については特に限定はないが、好ましくは30〜180℃、さらに好ましくは40〜150℃、特に好ましくは50〜120℃の範囲である。この処理温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。
表面処理工程における圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPa、特に好ましくは0.2〜2.0MPaの範囲である。
表面処理工程では、通常、吸引濾過、遠心分離、遠心濾過等の操作により、表面処理で得られた熱膨張性微小球を水性分散媒から分離する。さらに、分離後に得られた熱膨張性微小球の含液ケーキを気流乾燥、減圧加熱乾燥等の操作により、熱膨張性微小球を乾燥状態で得ることができる。なお、上記1)および2)の方法で表面処理する場合は、適宜操作を省略することもある。
熱膨張性微小球に含まれる周期表3〜12族に属する金属量は表面処理工程の前後で増加する。表面処理工程後の熱膨張性微小球に含まれる周期表3〜12族に属する金属量に対して表面処理工程によって増加した周期表3〜12族に属する金属量が占める重量割合は、通常10重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。10重量%未満であると外殻全体が剛直になり良好な膨張性能を示さなくなることがある。
(湿化工程)
湿化工程は、表面処理工程後に得られた熱膨張性微小球を液体で湿化させる工程である。湿化工程を行うことによって、得られた熱膨張性微小球が取扱いやすくなり、各種用途に用いるために混合する際に分散性が向上する。
湿化工程で用いる液体については、特に限定はないが、熱膨張性微小球の発泡剤よりも高い沸点を有することや、熱膨張性微小球の外殻の熱可塑性樹脂を溶解または膨潤しないことを満足すると好ましい。
湿化工程で用いる液体の沸点は、好ましくは80〜270℃、さらに好ましくは90〜260℃、特に好ましくは100〜250℃である。
湿化工程で用いる液体の種類については特に限定はない。液体としては、たとえば、湿化させて得られる組成物を、プラスチック、エラストマー、シーラント、塗料等に用いる場合は、ジブチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジオクチルアジベート、トリクレジルホスフェート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、オクチルアルコール等の可塑剤;湿化させて得られる組成物を軽量発泡成形体や接着剤用に用いる場合は、ジシクロペンタジエンやスチレン等の単量体等を挙げることができる。
また、上記以外の液体としては、たとえば、水、非イオン界面活性剤、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、シリコーンオイル、流動パラフィン、プロセスオイル、油脂類等を挙げることができる。これらの液体は2種以上を混合して用いてもよい。
湿化工程で得られる液体で湿化された熱膨張性微小球に含まれる液体の量については、特に限定はなく、熱膨張性微小球の発塵具合や取扱性を考慮して決定される。
湿化工程は、一般的な粉体混合機や、副軸ローター型混合機等を用いて、熱膨張性微小球を液体とともに揺動および/または攪拌することによって行われる。
〔熱膨張性微小球およびその用途〕
本発明の熱膨張性微小球は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻1と、それに内包され且つ前記加熱することによって気化する発泡剤2とから構成される熱膨張性微小球である。本発明の熱膨張性微小球の構造は、前述の原料微小球の構造と比較して、外見上、大差はない。しかし、諸物性は前述のとおり大差がある場合がある。
本発明の熱膨張性微小球では、外殻の熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を必須として含有する単量体成分を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成されている。
本発明の熱膨張性微小球は、たとえば、上記で説明した表面処理工程を含む製造方法によって製造することができるが、この製造方法に限定されない。上記製造方法で既に説明した事項であって、熱膨張性微小球および用途の説明にも関する事項については、冗長を避けるために以下では特段説明しないこともある。その場合は、製造方法の説明をそのまま援用するものとする。
熱膨張性微小球に含まれる周期表3〜12族に属する金属の重量割合は、好ましくは熱膨張性微小球の0.05〜15重量%であり、より好ましくは0.10〜7重量%、さらに好ましくは0.13〜5重量%、さらに好ましくは0.14〜3重量%、さらに好ましくは0.15〜1.5重量%、特に好ましくは0.16〜0.8重量%、最も好ましくは0.20〜0.54重量%である。周期表3〜12族に属する金属の重量割合が0.05重量%未満では耐熱性の向上が不十分になることがある。一方、周期表3〜12族に属する金属の重量割合が15重量%超の場合は外殻が剛直になり最大膨張倍率が低くなることがある。周期表3〜12族に属する金属は、好ましくは遷移金属であり、さらに好ましくは周期表4〜5族に属する金属である。なお、熱膨張性微小球に含まれる金属の詳しい説明は、金属含有有機化合物を構成する金属の説明と同じである。
本発明の熱膨張性微小球のDMF不溶解率が高いほど好ましい。本発明において、DMF不溶解率は、熱膨張性微小球をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)に添加、振とうさせた際、DMFに溶解しない成分の割合と定義される(実施例参照)。DMF不溶解率が高ければ、熱可塑性樹脂からなる外殻が、架橋剤および/または金属含有有機化合物による架橋等によって緻密な構造となって、耐溶剤性が高いことを示す。DMF不溶解率が高ければ、また、熱膨張時に外殻の厚みが薄くなっても内包している発泡剤の抜けを抑制することができ、良好な膨張性能が得られる。
DMF不溶解率は、以下に示す1)〜6)の順で後になるほどより好ましく、上限値は100重量%である。DMF不溶解率が75%未満であると、発泡剤の保持性が不十分になり、高温環境下に長時間さらされた場合に膨張性能が低下することがある。
1)75重量%以上、2)80重量%以上、3)85重量%以上、4)89重量%以上、5)93重量%以上、6)96重量%以上
従来の熱膨張性微小球では、DMF不溶解率が高くても、熱可塑性樹脂からなる外殻の外表面から内部に至るまで緻密な構造を有しているものがある。この場合は、膨張倍率が低下し、膨張性能が満足できないことがあった(以下の比較例2および3を参照)。しかし、本発明の熱膨張性微小球では、外殻を構成する熱可塑性樹脂が柔軟性を損なうことなく、外殻表面近傍が緻密な架橋構造となっていると考えられるため、DMF不溶解度が高い。そのため、内包している発泡剤の保持性が高く、ガス漏れしにくい。特に高温領域において、高い膨張倍率を発揮することができる。
従来の熱膨張性微小球を含有するDMF分散型ポリウレタン組成物では、経時的な膨張性の低下が著しかった。しかし、従来の熱膨張性微小球を本発明の耐溶剤性が高い熱膨張性微小球に変更することによって、経時的な膨張性の低下を大幅に抑制できる。
本発明の熱膨張性微小球5重量部をイオン交換水100重量部に分散させ、分散前後における膨張開始温度変動率(ΔTs)および最大膨張温度の変動率(ΔTmax)が、それぞれ好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。ここで、ΔTsおよびΔTmaxの測定方法は、以下で詳しく説明する。ΔTsおよびΔTmaxの下限値は、測定誤差等と思われる原因によって−5%程度になることもあるが、常識的には0%である。
熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体由来の共重合体の場合、ΔTsおよびΔTmaxの両方が10%以下であることによって、熱膨張性微小球の耐溶剤性が高いことが本発明において見いだされた。ΔTsおよびΔTmaxの少なくとも1つが10%超の場合は、耐溶剤性が低い。
カルボキシル基含有単量体を原料とする熱膨張性微小球は、一般には親水性が高い。そのために、これを水に分散させることによって外殻を構成する熱可塑性樹脂に水が浸透し、ひいては熱膨張性微小球の基本物性である膨張開始温度および最大膨張温度が変動(ほとんどの場合は低下)することになる。しかし、ΔTsおよびΔTmaxの両方が小さい場合は、水が熱可塑性樹脂に浸透しないことを意味する。そして、水の浸透がほとんどないことは、熱可塑性樹脂からなる外殻の少なくとも外表面近傍において緻密な構造が形成されているものと考えられ、その結果、高い耐溶剤性が発現すると理解される。
それに対して、カルボキシル基含有単量体等の親水性単量体を原料としない疎水性の熱膨張性微小球では、水に分散させても、そもそも外殻を構成する熱可塑性樹脂に水が浸透しにくい。そのために、ΔTsおよびΔTmaxの変動は常識的にはほとんどなく、耐溶剤性の指標とすることは考えられない。
ΔTsおよびΔTmaxの少なくとも1つが10%を超える場合は、上記のとおり、耐溶剤性が低下するが、これ以外にも、水に分散させる前後で熱膨張性微小球の膨張特性が低下するわけであるから、水系における熱膨張性微小球の加工安定性に悪影響を及ぼすことがある。特に、水を使用した湿式抄造工程で熱膨張性微小球を使用するときに、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂中のカルボキシル基にアルカリ金属がイオン結合すると、ΔTmaxが大きくなり、最大膨張温度が顕著に低下する。
熱膨張性微小球の平均粒子径については特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
Figure 0005746486
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率については特に限定されないが、熱膨張性微小球の重量に対して、好ましくは2〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは8〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
熱膨張性微小球の最大膨張倍率は、特に限定されないが、好ましくは30倍以上、より好ましくは45倍以上、さらにより好ましくは56倍以上、特に好ましくは59倍以上、さらに好ましくは62倍以上、特に最も好ましくは65倍以上、最も好ましくは80倍以上である。熱膨張性微小球の最大膨張倍率の上限値は、200倍である。
熱膨張性微小球の最大膨張温度は、特に限定されないが、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは270℃以上、最も好ましくは280℃以上である。熱膨張性微小球の最大膨張温度の上限値は、350℃である。
本発明の熱膨張性微小球は、その可使温度域が広い。このことは、図2に示す曲線グラフから理解される。その作成方法を以下に詳しく説明する。
まず、熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts1)を測定し(実施例の膨張開始温度の測定参照)、Ts1よりも10〜20℃低い温度(T)を任意に設定する。Tから加熱温度を上昇させて、それぞれ所定の加熱温度(T)にて4分間加熱したときの微小球の真比重(d)を測定する。ここで、Tの設定は任意であるが、Tからたとえば10℃毎のように等間隔でTをそれぞれ設定してもよい。
次に、熱膨張性微小球の加熱前の真比重をdとして、微小球の加熱温度(T)における膨張倍率(E)を次式で算出する(実施例の膨張倍率の測定参照)。
E=d/d(倍)
x軸方向に微小球の加熱温度(T)、y軸方向に膨張倍率(E)をプロットして、Eの最大値を読取り最大膨張倍率(Emax)とした。なお、Emaxは、x軸方向に微小球の加熱温度(T)、y軸方向に微小球の真比重(d)をプロットして、その中で最小の真比重(dmin)を読み取り、最大膨張倍率(Emax)を次式で算出してもよい(実施例の膨張倍率の測定参照)。
max=d/dmin(倍)
さらに、x軸方向に微小球の加熱温度(T)、y軸方向に(E/Emax)×100で定義される膨張率(%)をプロットし、各プロットを結ぶと曲線グラフ(図2)が得られる。この曲線グラフは、熱膨張性微小球を加熱膨張させた際の加熱温度(T)とその膨張率(E/Emax×100)との関係を表現する。
本発明の熱膨張性微小球では、4分間加熱したときの最大膨張倍率を膨張率100%とした場合、所定温度で4分間加熱したときに膨張率が50%以上を示す温度域(δT)が、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上である。δTを図2で説明すると、所定温度で4分間加熱したときに膨張率が50%以上を示す温度のうちで、最高温度をT2とし、最低温度をT1とすると、δT=T2−T1と定義される。δTは、広い温度域で安定した膨張物性を示す指標である。本発明の熱膨張性微小球を含む組成物を成形加工等に用いた場合には、δTが大きいと可使温度域が広く、成形温度にバラツキが生じた場合においても、安定な膨張性能を発揮することができる。δTの上限値は100℃である。δTが30℃未満では、樹脂成形などに使用した場合に、膨張状態が安定しないことがある。
上記T1の温度範囲については、特に限定はないが、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上、特に好ましくは260℃以上である。T1の上限は350℃である。
上記T2の温度範囲については、特に限定はないが、好ましくは240℃以上、より好ましくは260℃以上、さらに好ましくは280℃以上、特に好ましくは300℃以上である。T2の上限は400℃である。
本発明の熱膨張性微小球は、その可使時間域も広い。たとえば、本発明の熱膨張性微小球を樹脂成形に使用した場合、従来の熱膨張性微小球と比較して、可使時間域が広いために成形機のシリンダー内での滞留時間の影響を受けることなく、高温下でも安定に良好な膨張性能を示す(図12参照)。
ここで、可使時間域とは、膨張開始温度と最大膨張温度との間にある温度のような高温で加熱する際に、熱膨張性微小球が高温下で使用に耐える状態を維持できる時間の範囲を意味する。高温下での熱膨張性微小球は、熱膨張性微小球に内包された発泡剤のガス抜けによって、その使用が阻害される。このようなことから、可使時間域は、膨張開始温度と最大膨張温度との間にある温度による加熱下において、熱膨張性微小球の重量減少を経時的に測定して評価できる。
熱膨張性微小球には、一般に、それを製造する工程等に由来した水分が含まれていることは周知である。したがって、上記熱膨張性微小球の重量減少の測定では、加熱初期の時間において、水の蒸発が観察されるので、発泡剤ではない水による重量減少を無視することはできず、水分蒸発による重量減少を考慮して評価する必要がある。このことを踏まえて、上記熱膨張性微小球の重量減少に関する評価方法を以下に詳しく説明する。
まず、熱膨張性微小球の重量減少率を説明する。最初に、熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts1)、最大膨張温度(Tmax1)を測定する(実施例の該当項目を参照)。熱膨張性微小球は、一般に、膨張開始温度(Ts1)と最大膨張温度(Tmax1)との間の温度域で使用されるため、Ts1およびTmax1の平均値の温度(Th)で、熱膨張性微小球の重量減少率を測定する。
Th=(Ts1+Tmax1)/2
Thの温度範囲については、特に限定はないが、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃以上であり、特に好ましくは200℃以上である。好ましいThの上限は350℃である。Thが150℃未満の場合は、水分の蒸発の影響が大きくなることがある。
加熱前の微小球(熱膨張性微小球)の重量をWとし、加熱温度(Th)でt分間加熱したときの微小球の重量をWとして、加熱温度(Th)でt分間加熱した際の熱膨張性微小球の重量減少率LW(%)を次式により算出する(実施例の重量減少係数(WL)および30分後加熱減量率の計算を参照)。
LW=(W−W)/W×100(%)
x軸方向に微小球の加熱時間(t分間)、y軸方向に重量減少率(LW)をプロットし、各プロットを結ぶと曲線グラフ(図13)が得られる。この曲線グラフは、熱膨張性微小球を加熱膨張させた際の加熱時間(t分間)と重量減少率(LW)との関係を表現する。ここで、加熱時間の設定は任意であるが、加熱初期において水分蒸発が顕著であることを考慮して、5分後から5分毎というように設定しても良い。
次に、熱膨張性微小球の重量減少係数(WL)を以下の式で定義し、可使時間域の広さを評価する。
WL=(LW30−LW)/CR
(上記式で、LWは5分後の重量減少率(%)であり;LW30は30分後の重量減少率(%)であり;CRは熱膨張性微小球に内包された発泡剤の内包率(%)である。)
水の沸点が100℃であるの対して、Thは通常100℃を超える高い温度であるので、熱膨張性微小球をThで5分間加熱した時点では、水分はほぼ蒸発していると考えられる。したがって、30分後の重量減少率と5分後の重量減少率との差は、微小球外部への発泡剤の抜け出しに相当するものと考えられる。さらに、上記重量減少率の差に対する熱膨張性微小球の内包率の影響を補正するために、上記重量減少率の差を熱膨張性微小球の内包率で割って得られた値を、重量減少係数(WL)と定義した。
熱膨張性微小球の重量減少係数(WL)は、特に限定はないが、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.35以下、特に好ましくは
0.30以下、最も好ましくは0.25以下である。熱膨張性微小球の重量減少係数の下限は0である。熱膨張性微小球の重量減少係数が上記範囲を満足すると、熱膨張性微小球の可使時間域が広く、熱膨張性微小球を含む組成物を成形加工等に用いた場合に、成形時間にバラツキが生じた場合であっても、安定な膨張性能を発揮することができる。熱膨張性微小球の重量減少係数が0.45よりも大きい場合は、樹脂成形等に使用した場合に、膨張状態が安定しないことがある。
熱膨張性微小球の可使時間域は、下記で定義される30分後加熱減量率(%)で評価することもできる。
30分後加熱減量率(%)=(LW30/WG)×100
(上記式で、LW30は30分後の重量減少率(%)であり、WGは熱膨張性微小球の含水率(%)および発泡剤の内包率(%)の和である。)
熱膨張性微小球の30分後加熱減量率については、特に限定はないが、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下、特に好ましくは80%以下、最も好ましくは75%以下である。30分後加熱減量率の下限は5%である。
本発明の熱膨張性微小球は液体で湿化されていると好ましい。湿化については、前述のとおりである。
本発明の中空微粒子は、以上説明した熱膨張性微小球および/または熱膨張性微小球の製造方法で得られた熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって製造できる。加熱膨張の方法については、特に限定はなく、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法のいずれでもよい。
乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法を挙げることができる。また、別の乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−96963号公報に記載の方法等がある。湿式加熱膨張法としては、日本国特開昭62−201231号公報に記載の方法等がある。
中空微粒子の平均粒子径については特に限定はないが、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。また、中空微粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、30%以下が好ましく、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。
本発明の組成物は、本発明の熱膨張性微小球、本発明の熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球、および、本発明の中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。
基材成分としては特に限定はないが、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;変性シリコン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、シリコン系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらの基材成分と熱膨張性微小球および/また中空微粒子とを混合することによって調製することができる。
本発明の組成物の用途としては、たとえば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
本発明の組成物が、特に、熱膨張性微小球とともに、基材成分として、熱膨張性微小球の膨張開始温度より低い融点を有する化合物および/または熱可塑性樹脂(たとえば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー)を含む場合は、樹脂成形用マスターバッチとして用いることができる。この場合、この樹脂成形用マスターバッチ組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形等に利用され、樹脂成形時の気泡導入に好適に用いられる。樹脂成形時に用いられる樹脂としては、上記基材成分から選択されれば特に限定はないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等、およびそれらの混合物などが挙げられる。また、ガラス繊維やカーボンファイバーなどの補強繊維を含有していてもよい。
本発明の成形物は、この組成物を成形して得られる。本発明の成形物としては、たとえば、成形品や塗膜等の成形物等を挙げることができる。本発明の成形物では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上している。
基材成分として無機物を含む成形物は、さらに焼成することによって、セラミックフィルタ等が得られる。
以下に、本発明の熱膨張性微小球の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味するものとする。
以下の製造例、実施例および比較例で挙げた原料微小球および熱膨張性微小球について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。以下では、原料微小球および熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 HEROS&RODOS)を使用した。乾式分散ユニットの分散圧は5.0bar、真空度は5.0mbarで乾式測定法により測定し、D50値を平均粒子径とした。
〔微小球の含水率の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
〔微小球に封入された発泡剤の内包率の測定〕
微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W)を測定した。DMFを30ml加え均一に分散させ、24時間室温で放置した後に、130℃で2時間減圧乾燥後の重量(W)を測定した。発泡剤の内包率(CR)は、下記の式により計算される。
CR(重量%)=(W−W)(g)/1.0(g)×100−(含水率)(重量%)
(式中、含水率は、上記方法で測定される。)
〔真比重の測定〕
微小球およびこれを熱膨張させた中空微粒子の真比重は、以下の測定方法で測定した。
真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100mlのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100mlの充満されたメスフラスコの重量(WB)を秤量した。
また、容量100mlのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50mlの粒子を充填し、粒子の充填されたメスフラスコの重量(WS)を秤量した。そして、粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS)を秤量した。そして、得られたWB、WB、WS、WSおよびWSを下式に導入して、粒子の真比重(d)を計算した。
d={(WS−WS)×(WB−WB)/100}/{(WB−WB)−(WS−WS)}
上記で、粒子として微小球または中空微粒子を用いて、それぞれの真比重を計算した。
〔膨張倍率の測定〕
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作成し、その中に微小球1.0gを均一になるように入れ、ギア式オーブン中に入れ、所定温度で4分間加熱膨張した後、微小球の真比重を測定した。加熱後の微小球の真比重(d)で加熱前の微小球の真比重(d)を割ることにより膨張倍率(E)を算出した。最大膨張倍率(Emax)は、最大膨張時の膨張倍率に相当する。
〔微小球中の周期表3〜12族金属の重量割合〕
微小球0.1gと硝酸(有害金属測定用、和光純薬工業株式会社製)5mlを石英製容器に加えて、マイクロウェーブ湿式分解装置(Anton Paar社製、Multiwave)を用いて、以下に示す条件で工程1〜4を順に実施してマイクロウェーブ湿式分解処理を行った。
工程1:出力300Wで4分間処理
工程2:出力400Wで処理を開始し、出力を6分間かけて600Wまで上昇(出力上昇率:33.3W/分)させて処理
工程3:出力700Wで処理を開始し、出力を30分間かけて800Wまで上昇(出力上昇率:3.3W/分)させて処理
工程4:出力をかけず、20分間冷却処理
次いで、上記分解処理で得られた試料を用いてICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS−8100)により試料中の周期表3〜12族金属の含有量測定を行い、その測定結果から微小球全体に含まれる周期表3〜12族金属の重量割合(重量%)を算出した。周期表12族金属の重量割合も別途算出した。以下の表で検出限界以下(通常、約100ppm未満)の場合は、NDと記載した。また、実施例および比較例において、は、使用した金属含有有機化合物または金属化合物に由来した金属種のみが検出された。
〔DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)不溶解率の測定〕
恒量(WP)としたガラス容器(内径36mm)に微小球1gとDMF29gを加えて、25℃にて24時間振とう(卓上振とう機NR−30、タイテック(株)社製、振とう速度15min−1)した後、冷却卓上遠心機(株式会社コクサン製:H−3R、使用ローター:RF−110、バケットケース:MC−110、設定温度:15℃、回転数:3500rpm、処理時間:1時間)にて上澄み液を除いたゲル分について真空乾燥機を用い、130℃にて1時間蒸発乾固した。その後シリカゲルの入ったデシケーター内に移し、室温まで放冷後蒸発乾固した試料の入ったガラス容器の重量(WP)を測定し、下式より不溶解成分量(WP)を算出した。
WP=WP−WP
また、上述の方法で測定した内包率(%)、含水率(%)を用いて微小球1g中のポリマー重量(WP)を下式により算出した。
WP=1−(内包率+含水率)/100
つづいて、微小球1g中のポリマー重量(WP)と不溶解成分量(WP)を用いてDMF不溶解率(重量%)を下式により算出した。
DMF不溶解率(重量%)=(WP/WP)×100
〔膨張開始温度(Ts1)および最大膨張温度(Tmax1)の測定〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts1)とし、最大変位量を示したときの温度を最大膨張温度(Tmax1)とした。
〔イオン交換水へ分散後の膨張開始温度(Ts2)、最大膨張温度(Tmax2)の測定〕
イオン交換水100重量部に対して微小球5重量部を添加後、室温で30分間攪拌分散後、ろ過、乾燥した。イオン交換水に分散後の微小球について、上記測定方法で膨張開始温度(Ts2)および最大膨張温度(Tmax2)を測定した。
〔膨張開始温度の変動率(ΔTs)および最大膨張温度の変動率(ΔTmax)の計算〕
上記の方法で得られたTs1およびTs2と、Tmax1およびTmax2とを用いて、イオン交換水に分散する前後の膨張開始温度の変動率(ΔTs)および最大膨張温度の変動率(ΔTmax)を下式により算出した。
ΔTs=(Ts1−Ts2)/Ts1×100
ΔTmax=(Tmax1−Tmax2)/Tmax1×100
以下の製造例および実施例において、「有効成分○○%の△△含有液」とある記載は、「△△の含有率が○○%である△△を含有する液」を意味する。
〔樹脂成形品の比重の測定〕
島津製作所社製、精密比重計AX200を用いた液侵法にて樹脂成形品の比重を測定した。
〔重量減少係数(WL)および30分後加熱減量率の計算〕
上記「膨張倍率の測定」で使用した箱に微小球1.0g(W)を均一になるように入れ、ギア式オーブン中に入れ、膨張開始温度Ts1と最大膨張温度Tmax1との平均値の温度(Th)でt分間加熱したときの微小球の重量(W)を測定し、熱膨張性微小球の重量減少率LW(%)を次式により算出した。t=5およびt=30のときの重量減少率LWおよびLW30を計算し、次いで、熱膨張性微小球の重量減少係数(WL)も計算した。なお、CRは熱膨張性微小球に内包された発泡剤の内包率(%)である。
LW=(W−W)/W×100(%)
WL=(LW30−LW)/CR
上記で求められるLW30と、熱膨張性微小球の含水率(%)および発泡剤の内包率(%)の和(WG)とから、30分後加熱減量率(%)を次式により算出した。
30分後加熱減量率(%)=(LW30/WG)×100
〔製造例1〕
イオン交換水600gに、塩化ナトリウム150g、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ70g、ポリビニルピロリドン1.0gおよびエチレンジアミン四酢酸・4Na塩の0.5gを加えた後、得られた混合物のpHを2.8〜3.2に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル120g、メタクリロニトリル115g、メタクリル酸65g、1,9−ノナンジオールジアクリレート1.0g、イソオクタン90gおよび有効成分50%のジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート含有液8gを混合して油性混合物を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(特殊機化工業社製、TKホモミキサー)により分散して、縣濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で20時間重合した。重合後に得られた重合液を濾過、乾燥して、原料微小球を得た。得られた原料微小球の物性を表1に示す。
〔製造例2〜10〕
製造例1で用いた各種成分および量を、表1に示すものに変更する以外は製造例1と同様にして原料微小球をそれぞれ得た。得られた原料微小球の物性を表1に示す。
製造例1〜10で得られた原料微小球をそれぞれ原料微小球(1)〜(10)とする。
Figure 0005746486
〔実施例1〕
製造例1の重合後に得られた重合液に、室温で攪拌しながら、金属含有有機化合物としての有効成分80%のジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)含有液を55g添加した。得られた分散混合物を加圧反応器(容量1.5リットル)に移して窒素置換を行い、処理初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ、80℃で5時間処理した。得られた処理生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。その物性を表2に示す。
〔実施例2〜9および17、比較例4および6〕
実施例1で、使用する重合液、金属含有有機化合物(比較例4および6では金属化合物)の種類および添加量を表2〜4に示すものに変更する以外は実施例1と同様にして熱膨張性微小球をそれぞれ得た。その物性を表2〜4に示す。
〔実施例10〕
製造例4の重合後に得られた重合液を、濾過、乾燥して、原料微小球を単離した。この原料微小球400gをイオン交換水800gに均一に再分散させた後、室温で攪拌しながら、金属含有有機化合物としての有効成分80%のジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)含有液15gを添加した。得られた分散混合物を加圧反応器(容量1.5リットル)に移して窒素置換を行い、処理初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ、80℃で5時間処理した。得られた処理生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。その物性を表2に示す。
〔実施例11〜14および18〕
実施例10で、使用する原料微小球、金属含有有機化合物の種類および添加量を表2および4に示すものに変更する以外は実施例10と同様にして熱膨張性微小球をそれぞれ得た。その物性を表2および4に示す。
〔比較例1〕
製造例1で、水性分散媒および油性混合物を混合して得られた混合液に、金属含有有機化合物としての有効濃度80%のジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)を55g添加した以外は製造例1と同様にして重合を行った。しかしながら、重合途中で固化し熱膨張性微小球は得られなかった。
〔比較例2〜3および5〕
比較例1で、重合に使用する混合液、金属化合物の種類および添加量を表3に示すものに変更する以外は比較例1と同様にして重合を行った。比較例1では熱膨張性微小球は得られなかったが、比較例2〜3および5では、熱膨張性微小球をそれぞれ得た。その物性を表3に示す。
比較例1〜3および5では、いずれも、原料微小球に対する表面処理はなく、重合時に金属化合物を共存させて熱膨張性微小球を製造する比較例である。
〔実施例15〕
製造例4で得られた原料微小球400g(含水率2.6%)を攪拌しながら、有効成分67%のジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)含有液50gをスプレーにより噴霧添加し、30分間混合した。その後、80℃にて3時間加熱し、80℃で減圧乾燥機にて乾燥して熱膨張性微小球を得た。その物性を表4に示す。
〔実施例16〕
製造例4で得られた原料微小球400g(含水率2.6%)を容量10Lの流動層中で流動攪拌しながら、有効成分50%のチタンブトキシダイマー含有液47.5gをスプレーにより噴霧添加し、30分間流動攪拌した。その後、80℃の熱風により1時間加熱し、80℃で減圧乾燥機にて乾燥して熱膨張性微小球を得た。その物性を表4に示す。
製造例1〜10で得られた原料微小球をそれぞれ原料微小球(1)〜(10)とし、実施例1〜18で得られた熱膨張性微小球をそれぞれ微小球(1)〜(18)とし、比較例1〜6で得られた熱膨張性微小球をそれぞれ比較微小球(1)〜(6)とする。
Figure 0005746486
Figure 0005746486
Figure 0005746486
表2〜4の「原料微小球」の項目は、実施例1〜9および17、および、比較例4および6では、使用する重合液を製造した製造例を特定する。実施例10〜14および18では、使用する原料微小球を製造した製造例を特定する。比較例1〜3および5では、重合に使用する混合液を用いた製造例を特定する。
表2〜4の「添加時期」の項目は、「重合後連続」と記載されている場合は、それぞれの製造例の重合後に得られた重合液に金属含有有機化合物(比較例4および6では金属化合物)を添加することを意味する。「再分散後」と記載されている場合は、それぞれの製造例の重合後に得られた原料微小球を一旦単離後にイオン交換水に再分散させ、金属含有有機化合物をさらに添加することを意味する。「重合前」と記載されている場合は、それぞれの製造例で、水性分散媒および油性混合物を混合して得られた混合液に金属化合物を添加することを意味する。「乾燥後」では原料微小球を乾燥後に添加することを意味する。「流動層」では乾燥した原料微小球を流動層にて添加することを意味する。
〔熱膨張性微小球の可使温度域〕
実施例5で得られた微小球(5)を1.0g秤取し、上記「膨張倍率の測定」で用いた箱に均一になるように入れた。この箱を8つ用意し、ギア式オーブンに入れ、表5に示したそれぞれ所定温度で4分間加熱した。得られた中空微粒子(熱膨張した熱膨張性微小球)の真比重および膨張倍率を測定した。
製造例3で得られた原料微小球(3)について、上記と同様に得られた中空微粒子の真比重および膨張倍率を測定した。
微小球(5)と原料微小球(3)とは、表面処理の有無の点のみが相違点である。原料微小球(3)は本発明の見地からは比較例に相当する。それぞれの結果を表5に示す。
Figure 0005746486
図3は、表面処理のある微小球(5)および表面処理なしの原料微小球(3)について、加熱温度と真比重の測定結果を示すグラフである。このグラフからは、ほとんど全ての温度域で、微小球(5)が原料微小球(3)より軽量である。しかも、原料微小球(3)では、240℃を超えた高温になればなるほどガス抜けによって真比重が大きくなるのに対して、微小球(5)では、240℃を超えた高温になっても真比重は小さく、変動もわずかである。
図4は、微小球(5)および原料微小球(3)について、加熱温度と膨張倍率の測定結果を示すグラフである。表面処理を行うことによって、高温域で安定した膨張物性が得られることがわかる。
図5は、微小球(5)および原料微小球(3)をそれぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係を示すグラフであり、上記図2に示す曲線グラフの作成方法にしたがって作成したものである。ここで、原料微小球(3)のδTをδTとし、微小球(5)のδTをδTとすると、図5のグラフの読み取りから、δT=26℃で、δT=48℃であった。微小球(5)の可使温度域が原料微小球(3)のそれと比較して、非常に広いことがわかる。
上記で得られた微小球および原料微小球について、図5と同様にして、それぞれ加熱膨張させた際の加熱温度と膨張率との関係をプロットし、作成したグラフを図6〜11に示す。それぞれの図から読み取られるδTを表1〜2にも示した。以上から、実施例で得られる熱膨張性微小球のδTは大きく、可使温度域は広いことが分かる。
〔実施例A1〕
実施例9で得られた熱膨張性微小球500gおよびプロセスオイル(共石プロセスP−200、日鉱共石社製)25gを均一混合し、湿化された熱膨張性微小球を得た。
次に、湿化された熱膨張性微小球52.5gとポリスチレン(PSジャパン社製、AGI02、密度1.04g/ml、MFR=15g/10min(200℃ 5kgf))2447.5gを均一に混合した後、ラボプラストミル(東洋精機社製、ME−25、2軸押出成形機)、T−ダイ(リップ幅1.8mm)を用いて、シリンダー温度C1:230℃−C2:230℃−C3:230℃−T−ダイ:230℃に設定し、スクリュー回転数を25rpm(滞留時間12分)に設定して、シリンダー内に熱膨張性微小球とポリスチレン樹脂の混合物を充填した。その後スクリューを停止させ、シリンダー内にて5分間、15分間、30分間のそれぞれの時間停止させた後にスクリュー回転数25rpmで押出成形し発泡シートを得た。それぞれの停止時間後に得られた発泡シートの比重を表6に示す。
表6に示す結果からは、高温下でスクリュー停止時間にかかわらず、比重の安定した発泡シートが得られている。これは、可使時間域が広いことを意味する。したがって、押出成形に用いた場合に滞留時間の長短にかかわらず安定な発泡した成形物を得ることができる。
〔比較例A1〕
実施例A1で、熱膨張性微小球を製造例4で得られた熱膨張性微小球に変更した以外は同様にして発泡シートを得た。その物性を表6に示す。
図12では、実施例A1および比較例A1における可使時間域を比較した。実施例A1ではスクリュー停止時間が0〜30分間の範囲で発泡シートの比重に変化はなく、可使時間は長い。それに対して、比較例A1ではスクリュー停止時間が0〜30分間の範囲で発泡シートの比重が徐々に増加し、熱膨張性微小球の膨張物性の低下は顕著であり、可使時間は短い。
Figure 0005746486
〔熱膨張性微小球の可使時間域〕
図14は、実施例A1で使用した微小球(9)および比較例A1で使用した熱膨張性微小球(微小球9の原料微小球(4))を、微小球(9)のThである234℃でそれぞれ加熱膨張させた際の加熱時間と重量減少率との関係を示すグラフであり、図13に示す曲線グラフと同様に作成したものである。
図14からも、表面処理の有無による可使時間域の広さを比較することができる。すなわち、微小球(9)と原料微小球(4)は、発泡剤の内包率は同一であるのに、原料微小球(4)ではわずか10分間で重量減少率は17.5重量%にもなるのに対して、微小球(9)では30分間経っても、重量減少率は17重量%程度である。つまり、表面処理の有る熱膨張性微小球では、長時間加熱した状態であっても、表面処理のない微小球よりも重量減少率が小さく、可使時間域が非常に広いことがわかる。
上記で得られた微小球および原料微小球について、重量減少係数および30分後加熱減量率を計算し、表1〜3に示した。以上から、実施例で得られる熱膨張性微小球では、重量減少係数が0〜0.45の範囲にあり、30分後加熱減量率が5〜95%の範囲にあるので、可使時間域は広いことが分かる。
〔実施例A2〕
実施例15で得られた熱膨張性微小球1.0gを、上記「膨張倍率の測定」で用いた箱に入れた。この箱をギア式オーブンに入れ、240℃で4分間加熱した。得られた中空微粒子の真比重は0.025g/mlであった。
この中空微粒子0.5gをアセトニトリル30gに加えて環境温度25℃で60分間浸漬後、中空微粒子を取り出して、ノルマルヘキサンで洗浄し乾燥した後に真比重を測定すると0.026g/mlであった。浸漬前後で真比重にほとんど差がないことから、この中空微粒子は、実施例15と同様に優れた耐溶剤性を示すことがわかる。
〔実施例B1〕
(マスターバッチの調製)
実施例17で得られた熱膨張性微小球500gおよびプロセスオイル(共石プロセスP−200、日鉱共石社製)25gを均一混合した後、ポリエチレンペレット(ダウケミカル社製、DNDV0405R)475gを加えて均一に混合し樹脂混合物を調製した。
次に、ラボプラストミル(東洋精機社製、ME−25、2軸押出成形機)、ストランド−ダイ(口径1.5mm)を用いて、シリンダー温度C1:150℃−C2:160℃−C3:150℃−ストランド−ダイ:150℃に設定し、スクリュー回転数を40rpmに設定して、樹脂混合物をラボプラストミルの原料ホッパーから投入し、混練押出後、ペレタイザーによりペレット化して、マスターバッチペレットB1(熱膨張性微小球含有量50wt%)を調製した。
(射出成形)
マスターバッチペレットB1の6重量部と、ポリカーボネート樹脂(出光興産社製、タフロンR2200、比重1.2)100重量部とを混合し、得られた混合ペレットをスクリュープリプラ式の射出成形機(ソディック社製、ツパールTR80S2A、型締力80トン)のホッパーに供給して溶融混練し、射出成形を行い、板状の成形体を得た。なお、成形条件は、可塑化部温度:260℃、射出速度:70mm/sec、金型温度:80℃に設定し、射出温度:260〜320℃にて射出成形を実施した。得られた成形品の比重を測定することによって膨張性能の評価を行った。それぞれの温度で得られた成形品の比重を表7に示す。
〔実施例B2、比較例B1およびB2〕
実施例B1で、熱膨張性微小球をそれぞれ表7に示すものに変更する以外は実施例B1と同様にして射出成形を行った。それぞれの温度で得られた成形品の比重を表7に示す。
Figure 0005746486
図15は、表7の比重データをプロットし、射出成形で得られた成形品について、比較例B1およびB2に対する実施例B1およびB2の膨張特性を比較したものである。
図15からも、表面処理の有無による膨張特性の差は明確である。
実施例B1およびB2では、イソヘキサデカンを発泡剤として使用した原料微小球を表面処理することによって膨張開始温度の高温化、可使温度の広域化が達成されている。それに対して、比較例B1およびB2では、イソヘキサデカンを発泡剤として使用することで膨張開始温度の向上は確認できるが、微小球が表面処理されていないため、発泡剤の保持性が悪く、膨張倍率が低く、可使温度域も低い。
上記表1〜7では表8に示す略号が使用されている。
Figure 0005746486
本発明の熱膨張性微小球は、耐熱性が非常に高いので、高融点樹脂の成形に幅広く応用できる。また、本発明の熱膨張性微小球は、耐溶剤性も非常に高いので、塗料、シーリング材、接着剤等に配合しても長期間安定した性能を発揮する。
1 熱可塑性樹脂からなる外殻
2 発泡剤

Claims (16)

  1. 熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、
    前記熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、
    前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で水性分散媒中にて表面処理されてなり、
    前記金属を含有する有機化合物が水溶性であり、
    下記式で定義される30分後加熱減量率が95%以下である、
    熱膨張性微小球。
    30分後加熱減量率=(LW30/WG)×100(%)
    (但し、LW30は下記式で定義される30分後の重量減少率(%)であり、WGは熱膨張性微小球の含水率(%)および発泡剤の内包率(%)の和である。)
    LW30=(W0−W30)/W0×100(%)
    (但し、W0は加熱前の熱膨張性微小球の重量であり、W30は、熱膨張性微小球の膨張開始温度および最大膨張温度の平均値の温度で30分間加熱したときの微小球の重量である。)
  2. 前記熱膨張性微小球を4分間加熱したときの最大膨張倍率を膨張率100%とした場合、4分間加熱したときに膨張率が50%以上を示す温度域(δT)が30℃以上である、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
  3. 前記金属を含有する有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物である、請求項1または2に記載の熱膨張性微小球。
    M−O−C (1)
    (但し、Mは周期表3〜12族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
  4. 前記金属の重量割合が前記熱膨張性微小球の0.05〜15重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  5. 前記金属が周期表4〜5族に属する、請求項1〜4のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  6. 前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が前記重合性成分の50重量%超である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  7. 前記重合性成分がニトリル系単量体をさらに含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  8. イオン交換水100重量部に5重量部の熱膨張性微小球を分散させ、分散前後の膨張開始温度および最大膨張温度の変動率がそれぞれ分散前の10%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  9. 前記発泡剤が沸点−20℃以上170℃未満の炭化水素および沸点170℃以上360℃以下の炭化水素を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  10. DMF不溶解率が75重量%以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  11. 最大膨張温度が240℃以上で最大膨張倍率が30倍以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  12. 液体で湿化させてなる、請求項1〜11のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
  13. 請求項1〜1のいずれかに記載の熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる、中空微粒子。
  14. 熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で水性分散媒中にて表面処理されてなり、前記金属を含有する有機化合物が水溶性である熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる、中空微粒子。
  15. 請求項1〜1のいずれかに記載の熱膨張性微小球、および、請求項1または1に記載の中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む、組成物。
  16. 請求項1に記載の組成物を成形してなる、成形物。
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