JP5943591B2 - 断熱管およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、断熱管およびその製造方法に関する。
従来、熱水、蒸気、冷媒等の流体輸送用配管に用いられる断熱管としては、この配管本体をグラスウールやロックウール等の通常マット状等の断熱材で被覆後、その断熱材の外周を紐状体や粘着テープで巻いて配管本体に固定した管が使用されてきた。このような断熱管を配設するためには、流体輸送用配管を配設した後、この配管の周囲に断熱材を被覆施工する作業を別途行う必要があるのでコストが高くなる。上記断熱管の構造は比較的簡単であるが、その断熱性が十分ではなく、また、断熱管内の水温が周りの空気の飽和水蒸気温度を下回ると、配管の外側に結露が生じる。その結露の水がグラスウールやロックウール等の隙間に溜まることによって、断熱性がさらに低下するという問題が発生する。
また、近年、発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン等のプラスチック発泡体が多用されるようになってきた。このようなプラスチックの発泡層を有する断熱管を製造する押出成形被覆法として、1)金属管の外面にプラスチックシートを巻き付けて、断熱層を形成させる方法(Tダイ法)や、2)環状のノズルを有するクロスヘッドダイを用いて成形した筒状のプラスチックフィルムを用いて金属管の外周に被覆して、断熱層を形成させる方法(丸ダイ法)等がある。
しかしながら、これらのプラスチック発泡体は、気泡が連通状になっているものが多く、強度、結露防止性、断熱性等において問題があった。
上記問題を解消するために、たとえば、特許文献1に開示されているように、下地処理を施した鋼管の外面に、変性ポリオレフィン樹脂層、発泡ポリオレフィン樹脂層と繊維強化変性ポリオレフィン樹脂層を順次積層した断熱ポリオレフィン樹脂被覆鋼管や、下地処理を施した鋼管の外面に、変性ポリオレフィン樹脂層、繊維強化発泡ポリオレフィン樹脂層とポリオレフィン樹脂層を順次積層した断熱ポリオレフィン樹脂被覆鋼管が提案されている。
しかし、これらの鋼管を用いて高温や低温の流体を輸送する場合は、依然として断熱性が劣るという問題があった。
特開平8−025561号公報
本発明の目的は、断熱性が高い断熱管およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、断熱層が特定の組成物から構成されると上記課題が達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明にかかる断熱管は、金属管と、前記金属管の外面を被覆する断熱層とから構成され、前記断熱層が中空微粒子を含有する非ポリオレフィン樹脂層であり、
前記中空微粒子が、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球を膨張させてなるものであり、前記熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、
前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理されてなり、
前記金属含有有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物である。
M−O−C(1)
(但し、Mは周期表3〜12族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
前記中空微粒子が、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球を加熱膨張させてなるものであり、前記熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成されると好ましい。
前記重合性成分がニトリル系単量体をさらに含有すると好ましい。
前記熱膨張性微小球の膨張開始温度をTs1(℃)とし、下記数式(A)を満足するT(℃)で前記熱膨張性微小球を5分間加熱処理後の膨張開始温度をTs2(℃)としたとき、下記計算式(B)で定義される膨張開始温度の低下率(ΔTs)が3%超であると好ましい。
170≦T<Ts1 (A)
ΔTs=〔(Ts1−Ts2)/Ts1〕×100(%) (B)
前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理されてなると好ましい。
前記断熱層の内部に空隙があると好ましい。
前記金属管と断熱層との間に位置する中間層をさらに含むと好ましい。
本発明の断熱管の製造方法は、上記断熱管を製造する方法であって、前記金属管の外面に、熱膨張性微小球を含有する非ポリオレフィン樹脂組成物を押出成形し、前記断熱層を形成する成形工程を含む方法である。
本発明の断熱管は、断熱性が高い。また、本発明の製造方法は、断熱性に優れる断熱管を効率よく製造できる方法である。
本発明の断熱管を示す断面図である。 本発明の断熱管を示す別の断面図である。 本発明の断熱管を示すさらに別の断面図である。 本発明の断熱管の製造方法を示す概略図である。
〔断熱管〕
本発明にかかる断熱管1は、たとえば図1に示すように、金属管4と、金属管4の外面を被覆する断熱層5とから構成される。この断熱層は、中空微粒子を含有する非ポリオレフィン樹脂層である。
本発明にかかる断熱管2は、たとえば図2に示すように、金属管4と、金属管4の外面を被覆する断熱層5とから構成され、断熱層5の内部に空隙6があってもよい。空隙を構成する気体については、特に限定はなく、たとえば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等が好ましい。断熱層内部の空隙の断面形状については、特に限定はなく、たとえば、多角形、円形等を挙げることができる。断熱層内部の空隙の断熱管方向の形状についても、特に限定はなく、図2に示すトンネル状に空隙が長く続くものであってもよく、トンネル状の空隙がほとんど続かない、いわゆる気泡であってもよい。
断熱層は金属管の外面を被覆するが、この被覆は、金属管を断熱層で被覆するものであれば、断熱層の被覆が直接または間接のどちらであってもよい。図1および図2では、金属管を断熱層で直接に被覆するものである。それに対して、たとえば図3に示す断熱管3のように、金属管4と断熱層5との間に位置する中間層7をさらに配して、断熱層5による金属管1の被覆が中間層7を介した間接的なものでもよい。このような中間層としては、たとえば、密着性向上を目的とした表面処理剤をブラスト処理等して金属管表面に塗布することによって形成される接着層や、JIS G3469記載のP1H、P1SまたはP2S等の一般的な防食層等を挙げることができる。これらの中間層が複数あってもよい。
(金属管)
金属管は、金属からできた管であれば、特に限定はなく、鉄管(鋼管)、銅管等を挙げることができる。鋼管としては、炭素鋼や、ステンレス鋼等の合金鋼からできた管を挙げることができる。鋼管は、その内面、外面または両面に、ステンレス、Ti、Al、Ni、Cu、Ni−Cr−Mo合金、Ni−Cr−Mo−W合金等の金属を積層したクラッド鋼管でもよく、また、その内面または両面に、Zn、Al、Cr等でめっきを施しためっき鋼管でもよい。
(断熱層)
断熱層は、金属管の外面を被覆して、断熱性を付与する層である。断熱層は、通常、非ポリオレフィン樹脂等を主体とする成分から構成される層である。断熱層の厚みについては特に限定はないが、樹脂比重や断熱性能等によって適宜決められるが、好ましくは1〜100mm、さらに好ましくは3〜50mm、特に好ましくは5〜30mmである。厚みが1mmより小さい場合は、断熱性が低くなることがある。一方、厚みが100mmより大きくなると製造工程中の不具合が多発する可能性がある。
断熱層の密度としては、好ましくは0.1〜0.9g/cm、さらに好ましくは0.2〜0.8g/cm、特に好ましくは0.3〜0.7g/cmである。断熱層の密度が0.1g/cmより小さい場合は、断熱性は十分であるが強度が低くなる可能性がある。一方、断熱層の密度が0.9g/cmより大きい場合は、断熱性が低くなり、所定の断熱性能を満足するには断熱層厚みが非常に大きくなり非効率となることがある。
断熱層を形成する非ポリオレフィン樹脂層に含まれる中空微粒子が、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球を加熱膨張させてなるものであるとよい。そして、この熱膨張性微小球において、熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成されるとよい。まず、熱膨張性微小球について詳しく説明する。
<熱膨張性微小球>
熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球である。そして、熱可塑性樹脂は、カルボキシル基含有単量体を必須として含有する単量体成分を含む重合性成分(すなわち、カルボキシル基含有単量体を含む重合性成分)を重合して得られる共重合体から構成される。
熱膨張性微小球が、周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物(以下では、金属含有有機化合物ということがある。)で表面処理されており、それによって、熱可塑性樹脂からなる外殻の外表面近傍に金属による架橋構造が形成されていたりすると、耐熱性が向上する。
熱膨張性微小球の平均粒子径については特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。平均粒子径が1μmより小さい場合、膨張性能が低くなり断熱性が低くなることがある。平均粒子径が100μmより大きい場合、断熱層中における気泡径が大きくなり圧縮強度が低くなり、積載時などにおいて断熱層がつぶれて断熱性が低下する可能性がある。
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
Figure 0005943591
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts1)は、特に限定されないが、好ましくは160℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは220℃以上、特に好ましくは230℃以上、最も好ましくは240℃以上である。一方、膨張開始温度の上限値は、好ましくは300℃である。膨張開始温度が160℃未満であると、耐熱性が低く、断熱層の発泡剤として用いた場合十分な膨張性能が得られず、断熱性が低くなることがある。膨張開始温度が300℃超であると、耐熱性が高すぎて、断熱層の発泡剤として用いた場合十分な膨張性能が得られず、断熱性が低くなることがある。
熱膨張性微小球では、その膨張開始温度をTs1(℃)とし、下記数式(A)を満足するT(℃)で熱膨張性微小球を5分間加熱処理後の膨張開始温度をTs2(℃)としたとき、下記計算式(B)で定義される膨張開始温度の低下率(ΔTs)が、好ましくは3%超、さらに好ましくは5%超、より好ましくは7%超、特に好ましくは9%超、最も好ましくは10%超である。ΔTsの上限値は、好ましくは50%である。
170≦T<Ts1 (A)
ΔTs=〔(Ts1−Ts2)/Ts1〕×100(%) (B)
断熱層を形成するために、非ポリオレフィン樹脂および熱膨張性微小球を含有する後述の非ポリオレフィン樹脂組成物を調製するに当たって、そのマスターバッチを調製する際、膨張開始温度未満の温度で行わなければ、熱膨張性微小球が膨張してしまう。そのため、用いる熱膨張性微小球は、膨張開始温度が高いものが望ましく、通常、熱膨張性微小球が膨張しないように、膨張開始温度よりも30℃以上低い温度でマスターバッチの調製を行うことが多い。一方、以下の製造方法で詳しく説明する非ポリオレフィン樹脂組成物の押出成形は最大膨張温度前後の温度で行うことが多いので、マスターバッチ調製時の温度と、非ポリオレフィン樹脂組成物の押出成形時の温度との差は非常に大きい。そのため、非ポリオレフィン樹脂組成物の押出成形時に使用する樹脂はマスターバッチ調製時に使用する樹脂と種類が異なることが多い。通常はマスターバッチ調整時に使用する樹脂が押出成形時に使用する樹脂より軟化温度が低い。十分な断熱性を得るために押出成形時に多量のマスターバッチを使用する必要がある場合に、断熱層の耐熱性および強度の低下が発生することがある。その結果、積載時やマスターバッチ調整時使用樹脂の軟化温度より高温の流体を移送する場合、断熱層のつぶれ、収縮が発生し、断熱性が低下することがある。
国際公開第2007/072769号パンフレットに記載されるような、マスターバッチ調製時の加熱によって膨張開始温度が低温化しにくい熱膨張性微小球の場合では、マスターバッチ調製時には膨張開始温度より十分低い軟化温度を有する樹脂を使用する必要があり、十分な断熱性を得るために押出成形時に多量のマスターバッチを使用する必要がある場合には、断熱層の耐熱性および強度不足によって断熱性が低下する可能性がある。また、断熱層を形成する樹脂と同程度に軟化温度が高い樹脂を用いてマスターバッチを作成する場合、熱膨張性微小球の膨張開始温度を十分高くする必要があり、最大膨張温度も必要以上に高くなり、それに伴い押出成形温度も必要以上に高くなる。そのため樹脂の保形性が低下し、安定に断熱配管を製造することができなくなるおそれがある。
これに対して、上記で説明したΔTsが3%超である熱膨張性微小球では、マスターバッチの調製後、膨張開始温度が低下する。そのため、マスターバッチ調製時の温度で非ポリオレフィン樹脂組成物の押出成形を行った場合、十分な膨張倍率が得られる。さらに、マスターバッチ調製時とその押出成形時との温度が同一であるため、マスターバッチ調製時において使用する樹脂と、非ポリオレフィン樹脂組成物の押出成形時において使用する樹脂とを同一にすることが可能となる。そして、押出成形で得られる断熱層には、マスターバッチ作製時に使用した樹脂による耐熱性および強度の低下がない、つまり断熱性の低下が発生しないといった利点がある。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax1)は、特に限定されないが、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃超、さらに好ましくは240℃以上、特に好ましくは260℃以上、最も好ましくは270℃以上である。一方、最大膨張温度の上限値は、好ましくは350℃である。最大膨張温度が200℃未満であると、耐熱性が低く、十分な膨張性能が得られないことがある。また、最大膨張温度が350℃超であると、押出成形温度が必要以上に高くなり、樹脂の保形性が低下し、安定に断熱配管を製造することができなくなるおそれがある。
熱膨張性微小球では、その最大膨張温度をTmax1(℃)とし、上記数式(A)を満足するT(℃)で熱膨張性微小球を5分間加熱処理後の最大膨張温度をTmax2(℃)としたとき、下記計算式(C)で定義される最大膨張温度の低下率(ΔTmax)が、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは7%以下である。ΔTmaxの下限値は、好ましくは0%である。最大膨張温度の低下率が20%超であると、大幅な耐熱性の低下によって十分な膨張倍率が得られず、断熱性が低下することがある。
ΔTmax=〔(Tmax1−Tmax2)/Tmax1〕×100(%) (C)
熱膨張性微小球の最大膨張倍率は、特に限定されないが、好ましくは30倍以上、より好ましくは45倍以上、さらにより好ましくは56倍以上、特に好ましくは59倍以上、さらに好ましくは62倍以上、最も好ましくは65倍以上、特に最も好ましくは80倍以上である。一方、最大膨張倍率の上限値は、好ましくは200倍である。最大膨張倍率が30倍未満であると、十分な膨張倍率が断熱層では得られず、断熱性が低下することがある。
熱膨張性微小球を構成する発泡剤は、加熱することによって気化する物質であれば特に限定はない。発泡剤としては、たとえば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3〜13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150〜260℃および/または蒸留範囲70〜360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等を挙げることができる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。上記発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であるが、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質を内包すると、熱膨張性微小球の膨張温度において膨張に十分な蒸気圧を発生させることが可能で、高い膨張倍率を付与することが可能であるために好ましい。この場合、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質と共に、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包していても良い。
また、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包する場合、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質が発泡剤に占める割合については、特に限定はないが、好ましくは95重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは65重量%、特により好ましくは50重量%以下、最も好ましくは30重量%未満である。熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質の割合が、95重量%を超えると最大膨張温度は高くなるが膨張倍率が低下し、断熱層の発泡剤として用いた場合に断熱性が低下することがある。
発泡剤については、別の考え方があり、炭素数12以上の炭化水素(以下、炭化水素aということがある。)を必須としていてもよい。熱膨張性微小球が、特に、金属含有有機化合物で表面処理されていたり、熱可塑性樹脂からなる外殻の外表面近傍に金属による架橋構造が形成されていたりする場合は、炭化水素aを必須とすることが好ましい。
炭化水素aの炭素数は、好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上である。また、炭化水素aの炭素数の上限値は、好ましくは25である。炭化水素aは、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。炭化水素aとしては、たとえば、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン等の直鎖状炭化水素;イソドデカン、3−メチルウンデカン、イソトリデカン、4−メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、イソエイコサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10−ノナメチルウンデカン、イソヘンエイコサン、イソドコサン、イソトリコサン、イソテトラコサン、イソペンタコサン等の分岐状炭化水素;シクロドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、ヘプチルシクロヘキサン、n−オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等の脂環状炭化水素等を挙げることができる。これらの炭化水素aは、1種または2種以上を併用してもよい。
発泡剤として用いる炭化水素aが2種類以上からなると、十分な膨張倍率を有する熱膨張性微小球となるために好ましい。
発泡剤は、炭化水素aとともに、炭素数3〜11の炭化水素(以下、炭化水素bということがある。)をさらに含有すると、熱膨張性微小球を膨張開始温度未満の温度で加熱しても、膨張倍率を低下することなく、膨張開始温度の低温化が可能になるために好ましい。
炭化水素bの炭素数は、好ましくは4〜10、さらに好ましくは5〜8である。炭化水素bは、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。炭化水素bとしては、たとえば、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン等の炭化水素を挙げることができる。これらの炭化水素bは、1種または2種以上を併用してもよい。
発泡剤は、炭化水素aおよび炭化水素b以外にも、炭化水素aおよび炭化水素bのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン等のその他の発泡剤を含有していてもよい。これらの発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよい
発泡剤中の炭化水素aの重量割合については、特に限定はないが、好ましくは発泡剤の5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは60重量%以上である。炭化水素aの重量割合が発泡剤に対して5重量%未満であると、熱膨張性微小球の膨張倍率は高いが、最大膨張温度が低下することがある。
発泡剤が炭化水素bをさらに含む場合、炭化水素bの重量割合については、特に限定はないが、好ましくは発泡剤の15重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上である。炭化水素bの重量割合の上限値は、好ましくは95重量%である。炭化水素bの重量割合が発泡剤に対して95重量%超であると、熱膨張性微小球の膨張倍率は高いが、最大膨張温度が低下することがある。
熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率については特に限定されないが、熱膨張性微小球の重量に対して、好ましくは1〜60重量%、好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは8〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
次に、熱可塑性樹脂は、熱膨張性微小球の外殻を形成し、重合性成分を重合して得られる共重合体から構成される。
重合性成分は、重合することによって外殻を形成する熱可塑性樹脂である共重合体となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分であり、単量体成分としてのカルボキシル基含有単量体を必須として含有する。
単量体成分は、一般には、重合性二重結合を1個有する(ラジカル)重合性単量体と呼ばれている成分を含む。単量体成分は、カルボキシル基含有単量体を必須とする。
カルボキシル基含有単量体は、遊離カルボキシル基を1分子当たり1個以上有するものであれば特に限定はないが、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。上記カルボキシル基含有単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がさらに好ましく、ガスバリア性が高いためメタクリル酸が特に好ましい。以下では、アクリル酸またはメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸ということもあり、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。
単量体成分は、カルボキシル基含有単量体を必須成分とし、その他の単量体成分を1種または2種以上併用してもよい。その他の単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。
単量体成分は、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリルアミド系単量体およびハロゲン化ビニリデン系単量体から選ばれる少なくとも1種をさらに含むと好ましい。
カルボキシル基含有単量体の重量割合は、熱膨張性微小球の耐熱性や耐溶剤性を高め、膨張開始温度未満の温度で熱処理を行った場合に膨張開始温度を低下させるという観点からは、単量体成分に対して、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜90重量%であり、さらに好ましくは40〜90重量%であり、特に好ましくは51.2重量%超90重量%以下であり、最も好ましくは53〜90重量%である。カルボキシル基含有単量体が10重量%未満の場合は、耐熱性や耐溶剤性が不十分であり、膨張開始温度および最大膨張温度が低くなる。さらに、膨張開始温度未満の温度で熱処理を行った場合に膨張開始温度の低下が不十分となることがある。また、カルボキシル基含有単量体が90重量%超の場合は、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。
単量体成分がニトリル系単量体をさらに含むと、外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上するために好ましい。
ニトリル系単量体を必須成分として含む場合、カルボキシル基含有単量体とニトリル系単量体の混合物の重量割合は単量体成分に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上である。
このとき、カルボキシル基含有単量体とニトリル系単量体の混合物中におけるカルボキシル基含有単量体の混合比率は、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは51.2重量%超90重量%以下、最も好ましくは53〜90重量%である。混合比率が10重量%未満であると耐熱性、耐溶剤性の向上が不十分であり、膨張開始温度および最大膨張温度が低くなる。さらに、膨張開始温度未満の温度で熱処理を行った場合に膨張開始温度の低下が不十分となることがある。また、カルボキシル基含有単量体が90重量%超の場合は、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。
単量体成分が塩化ビニリデン系単量体を含むとガスバリア性が向上する。また、単量体成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体および/またはスチレン系単量体を含むと熱膨張特性をコントロールし易くなる。単量体成分が(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上する。
塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体およびスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種の重量割合は単量体成分に対して、好ましくは50重量%未満、さらに好ましくは30重量%未満、特に好ましくは10重量%未満である。50重量%以上含有すると耐熱性が低下することがある。
単量体成分は、カルボキシル基含有単量体のカルボキシル基と反応する単量体を含有していてもよい。単量体成分がカルボキシル基と反応する単量体をさらに含む場合は、耐熱性がさらに向上し、高温における膨張性能が向上する。カルボキシル基と反応する単量体としては、たとえば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。カルボキシル基と反応する単量体の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは3〜5重量%である。
重合性成分は、上記単量体成分以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、熱膨張時の内包された発泡剤の保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
架橋剤の量については、特に限定はないが、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部、特に好ましくは0.2重量部超1重量部未満である。架橋剤の量は、単量体成分100重量部に対して0重量部以上0.1重量部未満でもよい。
重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、得られる熱膨張性微小球の耐熱性や耐溶剤性を高め、膨張開始温度未満の温度で熱処理を行った場合に膨張開始温度を低下させるという観点からは、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%超、最も好ましくは53重量%以上である。重量割合の上限値は、好ましくは90重量%である。重量割合が10重量%未満であると耐熱性、耐溶剤性が不十分で、膨張開始温度および最大膨張温度が低くなる。さらに、膨張開始温度未満の温度で熱処理を行った場合に膨張開始温度の低下が不十分となることがある。カルボキシル基含有単量体の重量割合が90重量%超であると膨張倍率が低下することがある。
熱膨張性微小球は、金属含有有機化合物で表面処理されていると好ましい。この表面処理によって、熱可塑性樹脂からなる外殻の外表面近傍に金属による架橋構造が形成されることになる。この金属による架橋構造は、カルボキシル基含有単量体に由来して熱可塑性樹脂に含まれているアニオン性のカルボキシレート基と、金属とが、共有結合(配位結合を含む)等の化学結合によって形成される構造であると考えられる。この構造は、複数のカルボキシレート基が金属を介して結び付けられる架橋の構造(金属架橋の構造)であると好ましい。金属をAとし、その電子価数をpとした場合、架橋構造は、たとえば(−COO)Aと示される。ここで、pが2の場合には、(−COO)A、すなわち、−COO−A−OCOC−と示される。上記金属による架橋構造は、熱膨張性微小球を水洗等することによって容易に破壊されるものではない。
上記架橋の構造を形成する金属としては、たとえば、スカンジウム、イッテルビウム、セリウム等の3族金属;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の4族金属;バナジウム、ニオビウム、タンタル等の5族金属;クロム、モリブデン、タングステン等の6族金属;マンガン、レニウム等の7族金属;鉄、ルテニウム、オスミウム等の8族金属;コバルト、ロジウム等の9族金属;ニッケル、パラジウム等の10族金属;銅、銀、金等の11族金属;亜鉛、カドミウム等の12族金属等を挙げることができる。これらの金属は1種または2種以上を併用してもよい。上記金属の分類は、社団法人日本化学会発行の「化学と教育」、54巻、4号(2006年)の末尾に綴じこまれた「元素の周期表(2005)」(2006日本化学会原子量小委員会)に基づいている。
これらの金属のうちでも、遷移金属(3〜11族に属する金属)が好ましく、4〜10族に属する金属がさらに好ましく、4〜5族に属する金属が特に好ましい。
遷移金属としては、たとえば、スカンジウム、イッテルビウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、金等が挙げられる。その中でも、スカンジウム、イッテルビウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオビウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀等が好ましく、チタン、ジルコニウムおよびバナジウム等の周期表4〜5周期に属する遷移金属が耐熱性向上の観点でさらに好ましい。遷移金属でない場合は、耐熱性の向上が不十分になることがある。
上記金属の原子価数については、特に限定はないが、1金属原子当りの架橋効率という点で、2〜5価が好ましく、3〜5価がさらに好ましく、4〜5価が特に好ましい。原子価数が1価であると、熱膨張性微小球の耐溶剤性および耐水性が低くなることがある。また、6価以上であると架橋効率が下がることがある。
上記金属について、金属種およびその原子価数の組合せとしては、耐熱性向上の観点からは、亜鉛(II)、カドミウム(II)、アルミニウム(III)、バナジウム(III)、イッテルビウム(III)、チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、鉛(IV)、セリウム(IV)、バナジウム(V)、ニオビウム(V)、タンタル(V)等が好ましい。
熱膨張性微小球に含まれる金属が周期表3〜12族に属する金属を含む場合、その重量割合は、好ましくは熱膨張性微小球の0.05〜15重量%であり、より好ましくは0.10〜7重量%、さらに好ましくは0.13〜5重量%、さらに好ましくは0.14〜3重量%、さらに好ましくは0.15〜1.5重量%、特に好ましくは0.16〜0.8重量%、最も好ましくは0.20〜0.54重量%である。周期表3〜12族に属する金属の重量割合が0.05重量%未満では耐熱性の向上が不十分になることがある。一方、金属の重量割合が15重量%超の場合は外殻が剛直になり最大膨張倍率が低くなることがある。熱膨張性微小球に含まれる金属が、周期表3〜11族に属する金属を含む場合、周期表4〜10族に属する金属を含む場合、周期表4〜5族に属する金属を含む場合等でも、それらの重量割合が、上記に示す重量割合であると好ましい。
金属含有有機化合物の表面処理については、以下に説明する熱膨張性微小球の製
造方法で詳しく説明するが、以下の製造方法に限定されない。
<熱膨張性微小球の製造方法>
熱膨張性微小球の製造方法は、上記で説明した重合性成分および発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、重合性成分を重合させる工程(以下、重合工程ということがある)を含む製造方法である。
重合工程では、重合開始剤を含有する油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。
重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。
過酸化物としては、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−オクチルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、たとえば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。上記重合開始剤のなかでも、パーオキシジカーボネートが好ましい。重合開始剤がパーオキシジカーボネートと共に他の開始剤を含む場合、パーオキシジカーボネートが重合開始剤に占める割合は、60重量%以上が好ましい。
重合開始剤の量については、特に限定はないが、前記単量体成分100重量部に対して0.3〜8.0重量部であると好ましい。
重合工程では、油性混合物は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体である。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1−置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加したりすることがある。
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
水性分散媒は、たとえば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤および/または分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
重合工程では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に乳化分散させる。
油性混合物を乳化分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、特殊機化工業株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPaの範囲である。
次に、中空微粒子の原料となる熱膨張性微小球であって、金属含有有機化合物で表面処理されていたり、熱可塑性樹脂からなる外殻の外表面近傍に金属による架橋構造が形成されていたりするものは、たとえば、外殻である熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成される熱膨張性微小球(たとえば、重合工程で得られる熱膨張性微小球)を原料微小球として、以下の表面処理工程を行うことによって得られる。以下の表面処理工程の説明において、原料微小球とは、たとえば、上記重合工程で得られた熱膨張性微小球が挙げられる。
表面処理工程は、原料微小球に対して金属含有有機化合物で表面処理する工程である。表面処理とは、操作としては、原料微小球と金属含有有機化合物とを接触させる処理である。ここでいう表面処理は、原料微小球の外殻の外表面に金属含有有機化合物を物理的に単に付着させることを本来的に意図するものではない。表面処理の目的は、たとえば、原料微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂に含まれているアニオン性のカルボキシレート基同士を、金属を介して結び付けることによって架橋の構造(金属架橋の構造)を化学的に形成すること等が挙げられる。金属架橋の構造が外殻の外表面近傍に形成されることによって、耐熱性が向上する。また、架橋効率とは、金属架橋の形成効率を意味する。
金属含有有機化合物については、特に限定はないが、表面処理効率の見地からは、水溶性であると好ましい。金属含有有機化合物に含まれる金属については、上記で説明したとおりである。
金属含有有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物であると好ましい。
M−O−C (1)
(但し、Mは周期表3〜12族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
まず、一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物を詳しく説明する。
−一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物−
一般式(1)で示される金属原子−酸素原子間の結合(M−O間の結合)は、イオン結合、共有結合(配位結合を含む)のいずれであってもよいが、共有結合が好ましい。
上記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物が、金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物であると、高い耐溶剤性と、高温の広い温度域で安定した膨張性能とを熱膨張性微小球に付与することができる。以下では、簡単のために、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合」を「MO結合」と記載し、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物」を「MO化合物」と記載することがある。
MO化合物は、金属−アルコキシド結合または金属−アリールオキシド結合を少なくとも1つ有する化合物である。MO化合物は、金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)、金属−OCON結合(金属−カーバメート結合)、金属=O結合(金属オキシ結合)や、以下の一般式(2)(式中、R、Rは互いに同一であっても、相異していても良い有機基である。)に示した金属−アセチルアセトナート結合等の、MO結合ではない金属に対する結合をさらに有していてもよい。Mは金属を示す。
Figure 0005943591
上記でも明らかであるが、MO結合と金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)とは相違する概念であって、金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)にはMO結合はない。
MO化合物は、たとえば、以下に示す化合物(1)〜化合物(4)の4つに分類される。
化合物(1):
化合物(1)は、金属アルコキシドおよび金属アリールオキシドであり、たとえば、以下の化学式(A)で示される化合物である。
M(OR) (A)
(但し、Mは金属を示し;nは金属Mの原子価数であり;Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、n個あるそれぞれの炭化水素基は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。)
化合物(1)において、M(金属)およびn(原子価数)は上記で説明したとおりである。
また、Rは、脂肪族であっても芳香族であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、アリル基、n−デシル基、トリデシル基、ステアリル基、シクロペンチル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
化合物(1)としては、たとえば、ジエトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛等の亜鉛(II)アルコキシド;アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウム(III)アルコキシド;バナジウムトリエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシド等のバナジウム(III)アルコキシド;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシドチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラフェノキシチタン等のチタン(IV)アルコキシド;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)ジルコニウム、テトラフェノラートジルコニウム等のジルコニウム(IV)アルコキシド;テトラメトキシセリウム、テトラエトキシセリウム、テトライソプロポキシセリウム、テトラノルマルプロポキシセリウム、テトラノルマルブトキシセリウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)セリウム、テトラフェノラートセリウム等のセリウム(IV)アルコキシド;トリメトキシオキシバナジウム、トリエトキシオキシバナジウム、トリ(n−プロポキシ)オキシバナジウム、イソプロポキシオキシバナジウム、トリ(n−ブトキシド)オキシバナジウム、イソブトキシオキシバナジウム等のアルコキシオキシバナジウム(V);その他、タンタル、マンガン、コバルト、銅等の金属の金属アルコキシド等が挙げられる。
化合物(2):
化合物(2)は上記化合物(1)のオリゴマーおよびポリマーであり、一般には化合物(1)を縮合して得られるものである。化合物(2)は、たとえば、以下の化学式(B)で示される化合物である。化学式(B)では、部分的に加水分解した構造を示している。
RO[−M(OR)O−]x−1R (B)
(但し、MおよびRは化学式(A)と同じ;xが2以上の整数である。)
化合物(2)の分子量については、特に限定はないが、数平均分子量が好ましくは200〜5000、特に好ましくは300〜3000である。数平均分子量が200未満は架橋効率が低くなることがある。一方、数平均分子量が5000超では架橋度合いのコントロールが難しくなることがある。
化合物(2)としては、たとえば、化学式(B)でx=2〜15を満足するチタンアルコキシポリマーやチタンアルコキシダイマー等が挙げられる。
化合物(2)の具体例としては、たとえば、ヘキサメチルジチタネート、オクタメチルトリチタネート等のチタンメトキシポリマー;ヘキサエチルジチタネート、オクタエチルトリチタネート等のチタンエトキシポリマー;ヘキサイソプロピルジチタネート、オクタイソプロピルトリチタネート、ヘキサノルマルプロピルジチタネート、オクタノルマルプロピルトリチタネート等のチタンプロポキシポリマー;ヘキサブチルジチタネート、オクタブチルトリチタネート等のチタンブトキシポリマー;ヘキサフェニルジチタネート、オクタフェニルトリチタネート等のチタンフェノキシポリマー;ポリヒドロキシチタンステアレート(化学式:i−CO〔Ti(OH)(OCOC1735)O〕−i−C)等のアルコキシチタン−アシレートポリマー;チタンメトキシダイマー、チタンエトキシダイマー、チタンブトキシダイマー、チタンフェノキシダイマー等のチタンアルコキシダイマー等が挙げられる。
化合物(3):
化合物(3)は、MO結合を有する金属キレート化合物である。化合物(3)は、MO結合を少なくとも1つ有し、且つ、ヒドロキシル基、ケト基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の電子供与性基を有する配位子化合物がMに配位した金属キレート化合物である。配位子化合物には、電子供与性基が1個以上あればよいが、2〜4個あるものが好ましい。化合物(3)には、MO結合、Mおよび配位子化合物が複数個あってもよい。
配位子化合物としては、特に限定はないが、たとえば、アルカノールアミン類、カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸(塩)類、β−ジケトン、β−ケトエステル、ジオール類およびアミノ酸類等が挙げられる。
アルカノールアミン類としては、たとえば、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等が挙げられる。
カルボン酸類としては、たとえば、酢酸等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸(塩)類としては、たとえば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸およびそれらの塩等が挙げられる。
β−ジケトンとしては、たとえば、アセチルアセトン等が挙げられる。
β−ケトエステルとしては、たとえば、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
ジオール類としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
配位子化合物がアルカノールアミン類である化合物(3)としては、たとえば、チタンテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシチタントリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、チタンテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシチタントリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシチタンキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;セリウムテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシセリウムトリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシセリウムビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシセリウムモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシセリウムビス(ジエタノールアミネート)、セリウムテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシセリウムトリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシセリウムモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がヒドロキシカルボン酸(塩)類である化合物(3)としては、たとえば、チタンラクテート、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシチタンビス(グリコレート)、チタンラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシチタンキレート化合物;ジルコニウムラクテート、モノヒドロキシジルコニウムトリス(ラクテート)、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシジルコニウムビス(グリコレート)、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシジルコニウムキレート化合物;セリウムラクテート、モノヒドロキシセリウムトリス(ラクテート)、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシセリウムビス(グリコレート)、セリウムラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ジケトンである化合物(3)としては、たとえば、亜鉛アセチルアセトネート等のアルコキシ亜鉛−β−ジケトンキレート化合物;アルミニウムアセチルアセトナート等のβ−ジケトン−アルコキシアルミニウムキレート化合物;バナジウムアセチルアセトナート等のβ−ジケトン−アルコキシバナジウムキレート化合物;チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジメトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジエトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジノルマルプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジブトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)等のβ−ジケトンキレート−アルコキシチタン化合物;ジヒドロキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、トリブトキシジルコニウムモノ(アセチルアセトネート)、ジブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、モノブトキシジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)等のβ−ジケトン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;ジヒドロキシセリウムビス(アセチルアセトネート)、セリウムテトラキス(アセチルアセトネート)、トリブトキシセリウムモノ(アセチルアセトネート)、ジブトキシセリウムビス(アセチルアセトネート)、モノブトキシセリウムトリス(アセチルアセトネート)等のβ−ジケトン−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ケトエステルである化合物(3)としては、たとえば、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシチタンキレート化合物;ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ジケトンおよびβ−ケトエステルである化合物(3)としては、たとえば、モノブトキシチタンモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のアルコキシチタン−β−ジケトンおよびβ−ケトエステルキレート化合物;モノブトキシジルコニウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ジケトンおよびβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物;モノブトキシセリウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ジケトンおよびβ−ケトエステル−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がジオール類である化合物(3)としては、たとえば、ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)等のアルコキシチタン−ジオールキレート化合物等が挙げられる。
化合物(3)は、タンタル、マンガン、コバルト、銅等の金属原子に上記配位子化合物が配位した金属キレート化合物およびその誘導体であってもよい。
化合物(4):
化合物(4)はMO結合および金属−アシレート結合をそれぞれ少なくとも1つ有する化合物である。
化合物(4)は、たとえば、以下の化学式(C)で示される化合物である。
M(OCORn−m(OR) (C)
(但し、M、nおよびRは、化学式(A)と同じ;RはRと同じであるが、同一であっても異なっていてもよい。;mは1≦m≦(n−1)を満足する正の整数である。)
化合物(4)は、化学式(C)で示される化合物が縮合して得られるものでもよい。
化合物(4)としては、たとえば、トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシチタン−アシレート化合物;トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシジルコニウム−アシレート化合物;トリブトキシセリウムモノステアレート等のアルコキシセリウム−アシレート化合物等が挙げられる。
−金属アミノ酸化合物−
金属含有有機化合物は、金属アミノ酸化合物であってもよい。金属アミノ酸化合物は、周期表3〜12族に属する金属の塩と、以下に示すアミノ酸類との反応で得られるアミノ酸キレート金属化合物である。
アミノ酸類とは、アミノ基(−NH)とカルボキシル基(−COOH)を同一分子内に有するアミノ酸のみならず、アミノ基の代りにイミノ基(−NH)を有するプロリンやヒドロキシプロリン等のイミノ酸をも包含する。アミノ酸は、通常α−アミノ酸であるが、β、γ、δまたはω−アミノ酸であってもよい。
アミノ酸類は、アミノ酸のアミノ基の水素原子の1つまたは2つが置換されたものや、アミノ酸のアミノ基の窒素とカルボキシル基の酸素でキレート化した錯体等のアミノ酸誘導体をも包含する。
アミノ酸類のpHは、好ましくは1〜7である。
アミノ酸類としては、たとえば、ジヒドロキシメチルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、ジヒドロキシプロピルグリシン、ジヒドロキシブチルグリシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、ヒスチジン、トレオニン、グリシルグリシン、1−アミノシクロプロパンカルボン酸、1−アミノシクロへキサンカルボン酸、2−アミノシクロヘキサンヒドロカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ジヒドロキシエチルグリシン、グリシン、セリン、トレオニン、グリシルグリシンが架橋効率という観点において好ましい。
上記アミノ酸類と反応する周期表3〜12族に属する金属の塩としては、塩基性塩化ジルコニルが好ましい。金属アミノ酸化合物の市販品としては、たとえば、オルガチックスZB−126(松本製薬工業社製)等が挙げられる。
上記金属含有有機化合物の中でも、ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)、チタンブトキシダイマー、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)ジアンモニウム塩や、トリイソプロポキシオキシバナジウム、塩化ジルコニウムとアミノカルボン酸の反応物(オルガチックスZB−126)等が、耐熱性向上効率およびハンドリング性の面において好ましい。
表面処理工程において、金属含有有機化合物のモル比(金属含有有機化合物のモル数/原料微小球の原料となるカルボキシル基含有単量体のモル数)については、特に限定はないが、好ましくは0.001〜1.0、より好ましくは0.005〜0.5、さらに好ましくは0.007〜0.3、特に好ましくは0.009〜0.15、最も好ましくは0.009〜0.06である。金属含有有機化合物のモル比が0.001未満では、耐熱性の向上効果が少なく高温環境下に長時間さらされると膨張性能が低下することがある。一方、金属含有有機化合物のモル比が1.0を超えると熱膨張性微小球の外殻が強固になりすぎて膨張性能が低下し、断熱層の発泡剤として用いた場合に断熱性が低下することがある。
表面処理工程は、原料微小球と金属含有有機化合物とを接触させる処理工程であれば、特に限定はないが、原料微小球および金属含有有機化合物を前述の水性分散媒に混合して行うと好ましい。したがって、金属含有有機化合物が水溶性であると好ましい。
表面処理工程を水性分散媒中で行う場合、原料微小球、金属含有有機化合物および水性分散媒等を含む分散混合物に対する原料微小球の重量割合は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜35重量%である。原料微小球の重量割合が1重量%未満では、処理効率が低くなることがある。一方、原料微小球の重量割合が50重量%超では、処理の不均一化が発生することがある。
分散混合物中の金属含有有機化合物の重量割合は、均一に処理が行えれば特に限定はないが、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。金属含有有機化合物の重量割合が0.1重量%未満では、処理効率が低くなることがある。一方、金属含有有機化合物の重量割合が20重量%超では、処理の不均一化が発生することがある。
また、表面処理に用いられる水性分散媒は、通常、原料微小球の調製に用いた水性分散媒や、新たに調製した水を含む水性分散媒であればよいが、必要により、メタノール、エタノールおよびプロパノール等のアルコール;ヘキサン、イソオクタンおよびデカン等の脂肪族炭化水素;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸およびその塩(たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等);テトラヒドロフラン、ジアルキルエーテルおよびジエチルエーテル等のエーテル;界面活性剤;帯電防止剤等のその他成分を含有していてもよい。
表面処理工程では、重合工程で得られた原料微小球を含む重合液をそのまま使用して、熱膨張性微小球を製造してもよい。また、重合工程で得られた重合液に対して、ろ過、水洗等の一連の単離操作を行い、必要により乾燥して原料微小球を重合液から一旦分離し、その後に表面処理工程を行って、熱膨張性微小球を製造してもよい。
水性分散媒がその他の成分を含む場合、たとえば、以下に示すA)〜D)の方法で、表面処理工程を行うことができる。
A)その他の成分および原料微小球を含む成分1と、金属含有有機化合物を含む成分2とを混合する方法
B)金属含有有機化合物および原料微小球を含む成分1と、その他の成分を含む成分2とを混合する方法
C)その他の成分および金属含有有機化合物を含む成分1と、原料微小球を含む成分2とを混合する方法
D)原料微小球を含む成分1と、その他の成分を含む成分2と、金属含有有機化合物を含む成分3とを同時に混合する方法
(上記成分1〜3のうちの少なくとも1つの成分は水を含む。2つまたは3つの成分が水を含んでいてもよい。)
表面処理工程は、上記で説明した以外の方法で行ってもよく、たとえば、以下に示す1)および2)の方法がある。
1)湿化した原料微小球(wetケーキ状の原料微小球)に表面処理
原料微小球と、金属含有有機化合物と、水性分散媒とを(均一に)含み、原料微小球の重量割合が、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である混合物を準備し、気流乾燥、減圧加熱乾燥等の操作を行って水性分散媒を除去して熱膨張性微小球を得る方法。
2)(ほぼ)乾燥した原料微小球に表面処理
原料微小球の重量割合が、好ましくは90重量%以上、好ましくは95重量%以上である乾燥した原料微小球に、金属含有有機化合物を添加し、均一混合した後に、膨張しない程度に加熱することによって揮発分を除去して熱膨張性微小球を得てもよい。このとき、原料微小球は静置した状態でも、攪拌させた状態でも、流動層等を利用して空気中に流動化させた状態でも良い。金属含有有機化合物の添加は、金属含有有機化合物または金属含有有機化合物を含む液をスプレー等で均一に噴霧添加するのが好ましい。
表面処理工程における処理温度については特に限定はないが、好ましくは40〜150℃の範囲である。この処理温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。
表面処理工程における圧力については特に限定はないが、好ましくはゲージ圧で0〜5.0MPaの範囲である。
表面処理工程では、通常、吸引濾過、遠心分離、遠心濾過等の操作により、表面処理で得られた熱膨張性微小球を水性分散媒から分離する。さらに、分離後に得られた熱膨張性微小球の含液ケーキを気流乾燥、減圧加熱乾燥等の操作により、熱膨張性微小球を乾燥状態で得ることができる。なお、上記1)および2)の方法で表面処理する場合は、適宜操作を省略することもある。
熱膨張性微小球に含まれる金属(たとえば、周期表3〜12族に属する金属)の量は表面処理工程の前後で増加する。表面処理工程後の熱膨張性微小球に含まれる金属量に対して表面処理工程によって増加した金属量が占める重量割合は、通常10重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。10重量%未満であると外殻全体が剛直になり良好な膨張性能を示さなくなり、断熱層の発泡剤として用いた場合に断熱性が低下することがある。
<中空微粒子>
断熱層に含まれる中空微粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球を加熱膨張させたものである。中空微粒子の平均粒子径については特に限定はないが、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。また、中空微粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、30%以下が好ましく、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。
<非ポリオレフィン樹脂>
断熱層は、非ポリオレフィン樹脂層であり、中空微粒子と非ポリオレフィン樹脂とを含有する。
断熱層中の中空微粒子の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは断熱層の0.01〜60重量%、さらに好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは3〜10重量%である。中空微粒子の重量割合が0.01質量%未満の場合には、断熱性が低下するおそれがある。一方、中空微粒子の重量割合が60質量%超の場合には、後述の押出成形で非ポリオレフィン樹脂組成物の溶融粘度が高くなるため、溶融温度を上げざるを得なくなり、その結果、中空微粒子の破損等が発生し、断熱性が低下することがある。
非ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂を除く樹脂であれば、特に限定はない。ポリオレフィン樹脂としては、一般的には、炭素原子と水素原子から構成される樹脂であり、エチレンや、1−ブテン、プロピレン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン等から選ばれる少なくとも1種を重合したものである。ポリオレフィン樹脂の代表的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリテルペン等を挙げることができる。
非ポリオレフィン樹脂としては、たとえば、ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体樹脂;ポリアセタール;ポリメチルメタクリレート;酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;熱可塑性ポリウレタン;4フッ化エチレン等の熱可塑性樹脂;スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性樹脂エラストマー等が挙げられる。
非ポリオレフィン樹脂の熱変形温度(ASTM D648 18.6kgf/cm)については、特に限定はないが、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、特に好ましくは70℃以上である。熱変形温度の好ましい上限は250℃である。熱変形温度が60℃より低い場合は、断熱材の耐熱性が低くなることがある。一方、熱変形温度が250℃より高い場合は、十分な発泡が得られず密度が高くなり十分な断熱性が得られないことがある。
熱変形温度の観点で好ましい非ポリオレフィン樹脂として、ポリ塩化ビニル;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体樹脂;ポリアセタール;ポリメチルメタクリレート;酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;熱可塑性ポリウレタン;4フッ化エチレン等が挙げられる。
これらの非ポリオレフィン樹脂の中でも、難燃性の観点からは、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン66、4フッ化エチレンが好ましい。
非ポリオレフィン樹脂は、必要に応じて難燃剤、着色剤、強度向上材、無機物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を含有してもよい。
〔断熱管の製造方法〕
本発明の断熱管の製造方法は、上記で説明した断熱管を製造する方法であり、成形工程を含む方法である。成形工程は、図4に概略を示した押出成形機を用いて、金属管4の外面に、熱膨張性微小球を含有する非ポリオレフィン樹脂組成物8を押出成形し、前記断熱層5を金属管4の外面に形成する工程である。図4では、非ポリオレフィン樹脂組成物8は1つまたは複数のダイ9から溶融状態で押出され、金属管4が右方向に移動することによって断熱層5が金属管4の外面に形成される。ダイ9としては、環状のノズルを有するクロスヘッドダイが好ましく、金属管の外周に断熱層5を均一に被覆形成することができる。また、成形工程では、加圧冷却装置をさらに用いて、断熱層を金属管に密着させてもよい。
成形工程では、非ポリオレフィン樹脂組成物を金属管の外面に押出成形するが、金属管は、その外面に上記で説明した中間層で被覆されているものでもよい。
熱膨張性微小球を含有する非ポリオレフィン樹脂組成物は、上記で説明した熱膨張性微小球および非ポリオレフィン樹脂を含む組成物である。
非ポリオレフィン樹脂組成物中の熱膨張性微小球の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは断熱層の0.01〜60重量%、さらに好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは3〜10重量%である。熱膨張性微小球の重量割合が0.01質量%未満の場合には、断熱管の断熱性が低下するおそれがある。一方、熱膨張性微小球の重量割合が60質量%超の場合には、非ポリオレフィン樹脂組成物の溶融粘度が高くなるため、溶融温度を上げざるを得なくなり、その結果、熱膨張性微小球が加熱膨張して得られる中空微粒子の破損等が発生し、断熱管の断熱性が低下することがある。
非ポリオレフィン樹脂組成物は、ダイ9を備えた少なくとも1台の押出成形機から押出されればよく、押出効率の観点からは、一軸押出成形機を使用することが好ましい。ダイ9中の非ポリオレフィン樹脂組成物の溶融温度は、非ポリオレフィン樹脂組成物が十分溶融する温度以上であれば特に限定はないが、好ましくは170℃以上、さらに好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、特に好ましくは250℃以上である。溶融温度の好ましい上限は350℃である。溶融温度が170℃より低い場合、熱膨張性微小球の十分な膨脹が得られず十分な断熱性得られないことがあり好ましくない。溶融樹脂温度が350℃より高い場合、被覆断熱層の保形性が著しく低くなることがあり好ましくない。
非ポリオレフィン樹脂組成物を溶融するのに要する時間(溶融時間)については、非ポリオレフィン樹脂組成物が十分に溶融される時間であれば特に限定はないが、通常は1〜120分になるように調整される。溶融時間が1分より短い場合は、非ポリオレフィン樹脂の溶融が不十分になることがある。一方、溶融時間が120分より長い場合は、熱膨張性微小球のへたりが発生することがある。
押出成形機内での樹脂圧力については、特に限定はないが、通常は0.1〜50MPaの範囲になるように設定される。樹脂圧力が0.1MPaより小さい場合は溶融樹脂の押出安定性が不安定になることがある。50MPaより高い場合は、溶融樹脂を押し出すことができなくなることがある。
以下に、本発明の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味するものとする。実施例に先立って、中空微粒子の原料となる各種の熱膨張性微小球の製造例を示す。以下では、原料微小球および熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 HEROS&RODOS)を使用した。乾式分散ユニットの分散圧は5.0bar、真空度は5.0mbarで乾式測定法により測定し、D50値を平均粒子径とした。
〔微小球の含水率の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
〔微小球に封入された発泡剤の内包率の測定〕
微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W)を測定した。DMFを30ml加え均一に分散させ、24時間室温で放置した後に、130℃で2時間減圧乾燥後の重量(W)を測定した。発泡剤の内包率(CR)は、下記の式により計算される。
CR(重量%)=(W−W)(g)/1.0(g)×100−(含水率)(重量%)
(式中、含水率は、上記方法で測定される。)
〔微小球中の周期表3〜12族金属の重量割合〕
微小球0.1gと硝酸(有害金属測定用 和光純薬工業株式会社製)5mlを石英製容器に加えて、マイクロウェーブ湿式分解装置(Anton Paar社製 Multiwave)を用いて、以下に示す条件で工程1〜4を順に実施してマイクロウェーブ湿式分解処理を行った。
工程1:出力300Wで4分間処理
工程2:出力400Wで処理を開始し、出力を6分間かけて600Wまで上昇(出力上昇率:33.3W/分)させて処理
工程3:出力700Wで処理を開始し、出力を30分間かけて800Wまで上昇(出力上昇率:3.3W/分)させて処理
工程4:出力をかけず、20分間冷却処理
次いで、上記分解処理で得られた試料を用いてICP発光分析装置(島津製作所社製 ICPS−8100)により試料中の周期表3〜12族金属の含有量測定を行い、その測定結果から微小球全体に含まれる周期表3〜12族金属の重量割合(重量%)を算出した。周期表12族金属の重量割合も別途算出した。以下の表で検出限界以下(通常、約100ppm未満)の場合は、NDと記載した。また、実施例および比較例においては、使用した金属含有有機化合物または金属化合物に由来した金属種のみが検出された。
〔膨張開始温度(Ts1)および最大膨張温度(Tmax1)の測定〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts1)とし、最大変位量を示したときの温度を最大膨張温度(Tmax1)とした。
〔加熱処理後の膨張開始温度(Ts2)および最大膨張温度(Tmax2)の測定〕
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作成し、その中に微小球1.0gを均一になるように入れ、ギア式オーブン中に入れ、所定の加熱温度(T)で5分間加熱した微小球について、上記測定方法で膨張開始温度(Ts2)および最大膨張温度(Tmax2)を測定した。
〔膨張開始温度の変動率(ΔTs)および最大膨張温度の変動率(ΔTmax)の計算〕
上記の方法で得られたTs1およびTs2と、Tmax1およびTmax2とを用いて、加熱処理前後の膨張開始温度の変動率(ΔTs)および最大膨張温度の変動率(ΔTmax)を下式により算出した。
ΔTs=〔(Ts1−Ts2)/Ts1〕×100
ΔTmax=〔(Tmax1−Tmax2)/Tmax1〕×100
〔製造例1〕
イオン交換水600gに、塩化ナトリウム150g、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ60g、ポリビニルピロリドン1.0gおよびエチレンジアミン四酢酸・4Na塩の0.5gを加えた後、得られた混合物のpHを2.8〜3.2に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル75g、メタクリロニトリル135g、メタクリル酸90g、1,9−ノナンジオールジアクリレート1.0g、イソペンタン35g、イソオクタン35gおよび有効成分50%のジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート含有液8gを混合して油性混合物を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(特殊機化工業社製、TKホモミキサー)により分散して、縣濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で20時間重合した。重合後に得られた重合液を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の物性を表1に示す。
〔製造例2〜4〕
製造例1で用いた各種成分および量を、表1に示すものに変更する以外は製造例1と同様にして熱膨張性微小球をそれぞれ得た。得られた原料微小球の物性を表1に示す。
製造例1〜4で得られた熱膨張性微小球をそれぞれ微小球(1)〜(4)とする。
Figure 0005943591
〔製造例5〕
製造例1の重合後に得られた重合液に、室温で攪拌しながら、金属含有有機化合物としての有効成分44%のジヒドロキシチタンビス(ラクテート)含有液を30g添加した。得られた分散混合物を加圧反応器(容量1.5リットル)に移して窒素置換を行い、処理初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ、80℃で5時間処理した。得られた処理生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。その物性を表2に示す。
〔製造例6〜8〕
製造例5で、使用する重合液、金属含有有機化合物の種類および添加量を表2に示すものに変更する以外は製造例1と同様にして熱膨張性微小球をそれぞれ得た。その物性を表2に示す。
製造例5〜8で得られた熱膨張性微小球をそれぞれ微小球(5)〜(8)とする。
Figure 0005943591
〔実施例1〕
(鋼管外面のプライマー処理)
鋼管(SGP配管;呼び径200A;長さ5500;厚み5.8mm)の外面をグリッドブラスト処理して防錆し、表面処理剤を塗布した後、乾燥した。次いで、表面処理した鋼管外面に、さらにエポキシプライマーを静電塗装し、鋼管を高周波誘導加熱で表面温度が200℃になるように加熱し硬化させて、プライマー処理鋼管を作製した。
(成形工程)
上記製造例1で得た微小球(1)を5wt%含有する塩化ビニル樹脂組成物を加熱溶融し、図4に示す押出成形機のダイ9に導入した。次いで、溶融した塩化ビニル樹脂組成物をダイ9から溶融樹脂温度200℃で発泡させながら押出して、プライマー処理鋼管4の外面に厚み10mmの断熱層が形成された断熱鋼管を製造した。
得られた断熱鋼管について、以下に示す方法で、断熱層密度の測定および断熱性を行った。その結果を表3に示す。
〔断熱層密度の測定〕
断熱鋼管から断熱層のみを採取し、島津製作所社製 精密比重計AX200を用いた液侵法により、断熱層密度を測定した。
〔断熱性評価〕
断熱性評価は、温度30℃、湿度40%RHの環境下で断熱鋼管に5℃の冷水を30分間通水し、断熱鋼管外面の結露有無を感水試験紙(スプレーイングシステムスジャパン株式会社製、サイズ52mm×76mm)を用いて調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
○:感水試験紙が着色することなく結露が確認されなかった。
×:感水試験紙が着色し結露が確認された。
〔実施例2〜10、比較例1〜5〕
実施例1で用いた熱膨張性微小球および添加量、断熱層に使用する非ポリオレフィン樹脂の種類等を、それぞれ表3に示すものに変更する以外は実施例1と同様にして、断熱鋼管をそれぞれ得た。得られた断熱鋼管の物性を表3に示す。なお、実施例1、3、5、7及び9は、参考例1、3、5、7及び9とする。
また、実施例に示した表では、表4に示す略号が使用されている。
Figure 0005943591
Figure 0005943591
1 断熱管
2 断熱管(断熱層に空隙あり)
3 断熱管(金属管と断熱層との間に中間層あり)
4 金属管
5 断熱層
6 空隙
7 中間層
8 熱膨張性微小球を含有する非ポリオレフィン樹脂組成物
9 ダイ

Claims (6)

  1. 金属管と、前記金属管の外面を被覆する断熱層とから構成され、前記断熱層が中空微粒子を含有する非ポリオレフィン樹脂層であり、
    前記中空微粒子が、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球を膨張させてなるものであり、前記熱可塑性樹脂がカルボキシル基含有単量体を含む重合性成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、
    前記熱膨張性微小球が周期表3〜12族に属する金属を含有する有機化合物で表面処理されてなり、
    前記金属含有有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物である、断熱管。
    M−O−C(1)
    (但し、Mは周期表3〜12族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
    断熱管。
  2. 前記重合性成分がニトリル系単量体をさらに含有する、請求項1に記載の断熱管。
  3. 前記熱膨張性微小球の膨張開始温度をTs1(℃)とし、下記数式(A)を満足するT(℃)で前記熱膨張性微小球を5分間加熱処理後の膨張開始温度をTs2(℃)としたとき、下記計算式(B)で定義される膨張開始温度の低下率(ΔTs)が3%超である、請求項1又は2に記載の断熱管。
    170≦T<Ts1 (A)
    ΔTs=〔(Ts1−Ts2)/Ts1〕×100(%) (B)
  4. 前記断熱層の内部に空隙がある、請求項1〜3のいずれかに記載の断熱管。
  5. 前記金属管と断熱層との間に位置する中間層をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の断熱管。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の断熱管を製造する方法であって、
    前記金属管の外面に、熱膨張性微小球を含有する非ポリオレフィン樹脂組成物を押出成形し、前記断熱層を形成する成形工程を含む、断熱管の製造方法。
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