JP2590789B2 - 有機無機複合体および無機質中空体の製造方法 - Google Patents

有機無機複合体および無機質中空体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、有機無機複合体および無機質中空体の製造
方法に関し、さらに詳細には有機化合物からなる有形物
の表面に無機質化合物が密着して存在する有機無機複合
体の製造方法、およびこの有機無機複合体より有機化合
物からなる有形物を除去してなる無機質中空体の製造方
法に関する。
〔従来の技術〕
近年、新しい機能発現の見地から有機高分子材料の表
面に膜厚が制御され、均一な無機質化合物が存在するよ
うな複合体が求められている。
このような要求の一部を満たす複合体を機械的衝撃を
用いて製造する方法が、例えば化学技術誌MOL、昭和62
年8月号に提案されている。
しかしながら、前記方法において生成する複合体は、
表面に形成された無機質化合物の膜厚が不均一であると
いう問題点がある。
また、近年、防紫外線、防水、防バクテリア、耐熱、
耐水、耐酸、耐アルカリ、耐有機溶剤などの性質が要求
される無機質中空体が求められている。このような要求
の一部を満たす中空体を、無機質化合物の溶解物から製
造する方法が、例えば学会誌セラミックス,,893(19
71)に提案されている。しかしながら、この方法の工程
では、2,200℃という高温を使用するうえ、無機質化合
物の種類が限定されるという問題点がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、前記従来の技術的課題を背景になされたも
ので、有機化合物からなる有形物の表面に膜厚が均一な
無機質化合物を有する有機無機複合体の製造方法を提供
することを目的とする。
また、本発明は、化学的に均質でかつ材質が自由に選
択できる無機質中空体の製造方法を提供することを目的
とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、(a)親水性有機高分子を含有する有機化
合物からなり、水を保持する有形物(以下単に「(a)
有形物」という)と、(b)加水分解性基を有する有機
金属化合物(以下、単に「(b)有機金属化合物」とい
う)とを反応させることを特徴とする、該有形物の表面
に無機質化合物が存在する有機無機複合体の製造方法
(以下「(I)工程」という)を提供するものである。
また、本発明は、前記(I)工程により有機無機複合
体を製造し、この有機無機複合体から、前記有形物を除
去することを特徴とする無機質中空体の製造方法(以下
「(II)工程」という)を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)工程 本発明の(I)工程で用いる(a)有形物の形状は、
特に限定する必要はないが、例えばその平均長径は、0.
05〜500μm、平均短径は0.01〜400μm程度、好ましく
は平均粒径0.05〜500μm程度の球形である。
また、この(a)有形物の大きさを変えることによ
り、後記(II)工程において無機質中空体の空孔の大き
さを変えることができる。
本発明に用いられる親水性有機高分子を含有する有機
化合物(以下、単に「有機化合物」という)は、該有機
化合物が水を吸収すること、または水を該有機化合物の
表面に維持することが可能であればよい。
なお、水の吸収量または維持量は、例えば該有機化合
物の0.01〜10重量倍程度である。
この有機化合物中に含まれる親水性有機高分子の具体
例としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミ
ド、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリ
N−ビニルホルムアミド、ポリN−ビニルアセトアミ
ド、ポリN−ビニルピロリドン、ポリN−ビニルサクシ
ンイミド、ポリオキサゾリン、ポリビニルオキサゾリド
ンなどのノニオン系高分子;ポリジメチルアミノプロピ
ルメタクリルアミド、ポリ3−アクリルアミド−3−メ
チルブチルジメチルアミンなどのカチオン系高分子;ポ
リ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン
酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン
酸、ポリ(アクリロイルアミノメチル)イミノジ酢酸、
ポリN,N−ビス(カルボキシメチル)アクリルアミドな
どのアニオン系高分子のほか、これらの親水性有機高分
子のアンモニウム塩、カルボン酸塩などの誘導体を挙げ
ることができる。
これらの親水性有機高分子のうちでも、特にポリアク
リル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸およびこれ
らのカルボン酸塩が好ましい。
これらの親水性有機高分子は、単独でまたは2種以上
組み合わせて使用することができる。
これらの親水性有機高分子は、本発明で使用される有
機化合物中にどのような状態で存在していてもよく、例
えば親水性有機高分子が混合、ブロック共重合、グラフ
ト共重合、ポリマーコンプレックス、相互侵入高分子網
目構造などの状態で該化合物中に存在すればよい。
また、市販品の有機化合物を用いることもでき、例え
ばスミカゲル(住友化学工業(株)製)、ワンダーゲン
(花王(株)製)、ドライテック(ダウケミカル社
製)、ランシール(日本エクスラン工業(株)製)、サ
ンウエット(三洋化成工業(株)製)などが挙げられ
る。
(a)有形物を得る方法としては、直接、水と有機化
合物とを接触させることも可能であるが、水を有機化合
物中に均一に吸収させ、あるいは水を(a)有機化合物
の表面に均一に維持させるためには、水と有機溶媒の混
合物中で有機化合物を接触させることが好ましい。
この際に用いられる水としては、一般の水道水、蒸留
水、イオン交換水などを用いることができるが、これら
のうち蒸留水またはイオン交換水が好ましい。
また、この際に用いられる有機溶媒としては、有機金
属化合物との反応性を有しないもの、例えばアルコール
類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化
炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類などを
挙げることができる。
これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エ
タノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、
ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノー
ル、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、
エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、
ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレン
グリコール、ヘキサトリオール、3,5,5−トリメチル−
1−ヘキサノール、ギ酸ブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メ
チル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペ
ンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、3−メトキシブ
チルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エ
チルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピ
オン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペン
チル、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノ
ン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ヘプタノ
ン、ジイソブチルケトン、アセトニトリル、ジエチルエ
ーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテ
ル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソー
ル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメト
キシエタン、ジエトキシエタン、ジブトキシエタン、ジ
エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリ
コールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチ
ルエーテル、メチラール、アセタール、ペンタン、ヘキ
サン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカ
ン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、ミ
シチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、ジエ
チルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼ
ン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘ
キサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、クロロメタ
ン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロ
メタン、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエ
タン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロ
ロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、
クロロブタン、クロロペンタン、クロロベンゼン、ジク
ロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモメタン、ブロモ
エタン、ブロモプロパン、ブロモベンゼン、クロロブロ
モメタンなどを挙げることができる。これらのうち、ア
ルコール類、エステル類および炭化水素類が好ましく、
特にブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、トリメ
チルヘキサノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブ
チル、ペンタン、ヘキサン、キシレンなどが好ましい。
また、前記有機溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わ
せて使用することができる。
水と有機溶媒とが均一に溶解混合する場合には、混合
物をそのまま使用する。
また、水と有機溶媒とが均一に混合しない場合には、
例えば1,2−ビス−(2−エチルヘキシルオキシカルボ
ニル)−1−エタンスルホン酸ナトリウムなどのアニオ
ン系界面活性剤、ラウリルトリメチルアンモニウムクロ
ライドなどのカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレ
ン(6)ノニルフェニルエーテルなどのノニオン系界面
活性剤を利用したり、撹拌処理、超音波処理などの方法
で均一に分散して使用する。
有機化合物に水を保持させる際の水の使用量は、有機
化合物100重量部に対して好ましくは0.5〜400重量部、
さらに好ましくは1〜300重量部、特に好ましくは1〜2
00重量部であり、400重量部を超えると形成した無機質
化合物の密着性が悪化することがある。
また、有機溶媒の使用量は、有機化合物と水が充分に
接触できれば特に限定する必要はないが、例えば(a)
有形物100重量部に対して100〜400重量部程度である。
このようにして水と接触して混合させられた有機化合
物ならびに必要に応じて使用される有機溶媒との混合物
を、以下混合物(a)という。
次に、本発明の(I)工程に用いられる(b)有機金
属化合物は、例えば一般式RaMXb(式中、Mは金属原
子、Rは水素原子または有機基、Xは加水分解性基であ
り、a、bはそれぞれMの原子価によって定まる整数で
ある)で表される。
前記一般式のMは、好ましくは金属アルコキシドまた
は金属カルボキシレートが合成可能な金属原子、すなわ
ち周期律表第III、IVあるいはV族の3〜5価の金属原
子であり、具体的にはケイ素、ゲルマニウム、スズ、
鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ホウ素、アル
ミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジ
ウム、イットリウム、ランタン、アンチモン、ビスマ
ス、バナジウム、ニオブ、タンタル、ランタノイド、ア
クチノイドなどの金属原子が挙げられ、好ましくはケイ
素、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、またはアル
ミニウムである。
Rは、水素原子または有機基、好ましくは炭素数1〜
12の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピ
ル基などのアルキル基;クロロメチル基、クロロエチル
基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基、ブロモオク
チル基、トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキ
ル基;グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシ
ルエチル基などのエポキシアルキル基;アミノプロピル
基、アミノブチル基などのアミノアルキル基;フェニル
基、ベンジル基などのアリール基;ビニル基、アリル
基、アクリルオキシプロピル基、メタクリルオキシプロ
ピル基などのアルケニル基が挙げられる。
Xは、金属原子Mに結合した加水分解性基であり、例
えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ
基、ペントキシ基などのアルコキシ基;ヒドロカルボキ
シレート基、メチルカルボキシレート基、エチルカルボ
キシレート基、プロピルカルボキシレート基、2−エチ
ルヘキサノエート基、ラウリエート基、ステアリエート
基などのカルボン酸残基;イミノヒドロキシ基、アミノ
ヒドロキシ基、エノキシ基、アミノ基、カルバモイル基
など、また塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子も加
水分解性基として挙げられる。
このような(b)有機金属化合物の具体例としては、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラ
ン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシ
ラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエト
キシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシ
ラン、テトラプロポキシシラン、ゲルマニウムテトラメ
トキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、チタニウム
テトラプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、ジ
ルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブ
トキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウム
トリプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、テト
ラクロロシラン、テトラブロモシラン、ジメチルジクロ
ロシラン、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン、4−
アミノブチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピル
トリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシ
シラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルトリエト
キシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、2−
クロロエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピル
トリクロロシラン、8−ブロモオクチルトリクロロシラ
ン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、(3,3,3−
トリフルオロプロピル)ジクロロシラン、(3,3,3−ト
リフルオロプロピル)トリクロロシラン、クロロメチル
トリクロロシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシ
ル)エチルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプ
ロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプ
ロピルトリメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、
アリルトリエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシ
シラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミ
ン)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラ
ン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−
アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジステアリ
ン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、2−エチルヘキサ
ン酸鉛などを挙げることができ、特にテトラメトキシシ
ラン、テトラエトキシシラン、チタニウムテトラプロポ
キシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウ
ムテトラブトキシドが好ましい。
これらの(b)有機金属化合物は、単独であるいは2
種以上組み合わせて使用することができる。
(b)有機金属化合物は、そのままでもあるいは有機
溶媒に均一に溶解混合または分散混合して用いられる。
(b)有機金属化合物を均一に溶解混合または分散混合
する場合に用いる有機溶媒としては、前記混合物(a)
を得るときの有機溶媒を使用することができる。
有機溶媒の使用量は、(b)有機金属化合物100重量
部に対し、好ましくは5,000重量部以下、さらに好まし
くは100〜3,000重量部であり、5,000重量部を超えると
溶液が希薄すぎて無機質化合物の形成が非常に長くな
り、作業上効率が悪化する場合がある。
本発明における(b)有機金属化合物の使用割合は、
混合物(a)100重量部に対して、好ましくは10〜800重
量部、さらに好ましくは20〜400重量部である。
本発明における混合物(a)と(b)有機金属化合物
とは、好ましくは混合物(a)に(b)有機金属化合物
を混合した有機溶媒をゆっくりと添加して反応させ、
(b)有機金属化合物を加水分解させる。
この反応させるときの温度は、通常、−20〜30℃であ
り、無機質化合物の形成速度を制御するために加熱する
ことも冷却することもできる。
また、混合物(a)と(b)有機金属化合物とからな
る混合物には、低温における(b)有機金属化合物の加
水分解を促進させるため、触媒として酸、炭酸アンモニ
ウム、シュウ酸アンモニウムなどを添加することができ
る。
この反応において、(b)有機金属化合物が、混合物
(a)の水と接触することによって、加水分解を生起
し、その結果、(b)有機金属化合物に由来する無機化
合物が(a)有形物上に生成される。
このようにして得られる無機質化合物は、通常、金属
酸化物、金属水酸化物などの金属化合物からなる。
この無機質化合物の膜厚は、反応温度、反応時間、
(b)有機金属化合物の濃度などを制御することによっ
て調整することができ、通常、0.02〜10μm、好ましく
は0.5〜5μm程度のものとして得られる。
また、(II)工程においては、異種類の(b)有機金
属化合物を、順次、混合物(a)に添加して反応させる
ことにより、(a)有形物上に、異種類の無機質化合物
を積層することもできる。この場合、後記(II)工程に
よって得られる無機質中空体に、複合材としての特性を
持たせることもできる。
(II)工程によって生成する有機無機複合体は、ろ
過、遠心分離などにより反応生成液から分離し、常温乾
燥、熱風乾燥、赤外線乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥などに
より乾燥する。
このようにして得られる有機無機複合体は、有機無機
複合材料としてそのまま使用することができる。
(II)工程 (II)工程は、(I)工程で得られる有機無機複合体
から、(a)有形物を除去し、無機質中空体にする工程
である。
(a)有形物を除去する方法としては、好ましくは有
機溶媒による(a)有形物の溶出および加熱による
(a)有形物の分解を挙げることができる。
この(a)有形物の溶出に使用される有機溶媒として
は、(a)有形物を得るために用いられる溶媒と同様な
溶媒が挙げられるが、(a)有形物を構成する親水性有
機高分子、あるいは該高分子を含有する有機化合物の良
溶媒で、かつ(a)有形物に対する溶解力が一段と高い
ものが用いられる。親水性有機高分子と該高分子を含有
する有機化合物の良溶媒が異なる場合には、2種以上の
有機溶媒を同時に使用、あるいは順次に使用することに
よって、(a)有形物に溶出すればよい。
この(a)有形物が溶出によって除去される場合、
(a)有形物の易溶解性が重要であるので、(a)有形
物は、架橋しないもの、あるいは架橋密度が低い材料で
形成されるのが好ましい。
一方、(a)有形物の加熱による分解では、加熱温度
の選択が重要であり、(a)有形物の熱分解温度以上で
該温度より10℃を超えない温度、好ましくは5℃を超え
ない温度に設定する。加熱温度が、熱分解温度より低い
と(a)有形物が分解しないため除去できず、目的とす
る無機質中空体が得られず、一方熱分解温度より10℃を
超えて高く設定すると、(a)有形物の熱分解が急激に
生じ、発生する熱分解ガスの膨張により無機質中空体が
崩壊される場合がある。
この分解における加熱方法としては、一定温度による
加熱でも、多段温度による加熱でもよい。
この多段温度による加熱は、まず(a)有形物の融点
以上の温度で加熱し、(a)有形物を溶融させて無機質
化合物に浸透させ、内部に空孔を有する中空体となし、
その後(a)有形物の熱分解温度以上で該温度を10℃を
超えない温度で有機化合物を熱分解し除去する。
加熱時の炉内雰囲気は、中空体を形成する無機化合物
の種類に応じて、酸素、空気のような酸化的雰囲気、も
しくは窒素、アルゴンのような不活性雰囲気、または水
素のような還元雰囲気に設定することができる。また、
真空中で加熱することもできる。
このようにして(I)工程および(II)工程を経て得
られる無機質中空体は、充填素材として各種樹脂、金
属、カーボン、セラミックスなどのマトリックス材料、
あるいは各種複合材料の原料として有用である。また、
この無機質中空体は、マイクロカプセルとしての利用も
期待される。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらの実施例によって制約されるもので
はない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない
限り、重量基準である。
また、実施例中の無機質化合物の形状および膜厚は、
得られた有機無機複合体の断面を、日本電子(株)製、
走査型電子顕微鏡JSM−840を用いて撮影(倍率;5,000
倍)した写真により決定した。
調製例1 混合物(a)−1の調製 反応器内にブタノール100部と水2部とを仕込み、室
温で10分間撹拌した。
次いで、撹拌しながらポリアクリル酸系架橋物(分解
開始温度=271℃)からなる平均粒径100μmの球形粒子
2部を加え、1時間撹拌し、混合物(a)−1を調製し
た。
なお、前記分解開始温度は、熱重量分析法で測定した
温度である。
混合物(a)−2の調製 反応器内に、ブタノール100部と水5部とを仕込み、
以下前記と同様にして混合物(a)−2を調製した。
混合物(a)−3の調製 反応器内に、イソプロパノール100部と水3部とを仕
込み、室温で10分間撹拌した。
次いで、撹拌しながらポリマレイン酸架橋物(分解開
始温度=262℃)からなる平均粒径100μmの球形粒子3
部を加え、1時間撹拌し、混合物(a)−3を調製し
た。
溶液(b)−1の調製 反応器内に、ブタノール100部とジルコニウムテトラ
ブトキシド10部とを仕込み、室温で10分間撹拌して溶液
(b)−1を調製した。
溶液(b)−2の調製 反応器内に、ブタノール100部とジルコニウムテトラ
ブトキシド20部とを仕込み、以下前記と同様にして溶
液(b)−2を調製した。
溶液(b)−3の調製 反応器内に、イソプロパノール100部とチタニウムテ
トラプロポキシド5部とを仕込み、以下前記と同様に
して溶液(b)−3を調製した。
実施例1 調製例1で得られた混合物(a)−1の100部と溶液
(b)−1の100部とを、25℃で混合し、10時間撹拌し
反応させ、分散液(イ)を得た。
その後、この分散液(イ)をろ過し真空乾燥して有機
無機複合粒子を得た。
結果を第1表に示す。
実施例2〜5 第1表に示す処方および反応条件を用いた以外は、実
施例1と同様にして分散液(ロ)〜(ホ)を得、ろ過し
真空乾燥して、それぞれから対応する有機無機複合粒子
〜を得た。結果を第1表に示す。
実施例6 実施例1で得られた有機無機複合粒子を、炉内温度
が280℃の電気炉で30分間加熱し、無機質中空体を得
た。結果を第2表に示す。
実施例7〜10 実施例2〜5で得られた有機無機複合粒子〜を、
第2表に示す条件で加熱処理し、それぞれ対応する無機
質中空体を得た。
結果を第2表に示す。
〔発明の効果〕 本発明の有機無機複合粒子の製造方法によれば、有形
物の表面に膜厚が均一な無機質化合物を有する有機無機
複合体が得られ、粉体塗料などとして複合機能性材料の
分野において有用である。
また、本発明の無機質中空体の製造方法によれば、高
温を使用せずに、化学的に均質かつ材質が自由に選択で
きる無機質中空体を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 別所 信夫 東京都中央区築地2丁目11番24号 日本 合成ゴム株式会社内 (72)発明者 西田 晶三 東京都中央区築地2丁目11番24号 日本 合成ゴム株式会社内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)親水性有機高分子を含有する有機化
    合物からなり、水を保持する有形物と、(b)加水分解
    性基を有する有機金属化合物とを反応させることを特徴
    とする、該有形物の表面に無機質化合物が存在する有機
    無機複合体の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の製造方法により有機無機複
    合体を製造し、この有機無機複合体から、前記有形物を
    除去することを特徴とする無機質中空体の製造方法。
JP29617188A 1988-03-22 1988-11-25 有機無機複合体および無機質中空体の製造方法 Expired - Lifetime JP2590789B2 (ja)

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