JP5387331B2 - 中空状無機粒子の前駆体、中空状無機粒子及びこの製造方法、並びに中空状無機粒子を用いた光学部材及び光学部材体 - Google Patents
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Description
また、光学分野では、フッ化カルシウムに代わる低屈折率材料として用いられ、反射防止膜等に応用されている。
非特許文献1に記載される超分子鋳型法においては、鋳型分子ごと大きな塊として溶液を硬化させるため100nm以下の粒子を得るためには物理的粉砕が必要となる。
即ち、本発明は以下の通りである。
前記溶解性コア体が、表面の少なくとも一部に前記加水分解促進触媒と親和性がある極性基を有し、該極性基に前記加水分解促進触媒が吸着又は結合されている中空状無機粒子の前駆体。
前記溶解性コア体が、表面の少なくとも一部に前記加水分解促進触媒と親和性がある極性基を有する化合物を有し、該極性基を有する化合物に前記加水分解促進触媒が吸着又は結合されている中空状無機粒子の前駆体。
(但し、式(1)中、R1は、H原子、F原子及び炭素数1〜12の1価の有機基からなる群から選ばれ、Mは、IVa、Vb、Ib、IIb、IIIa、IIIb、Va及びIVb族に属する原子からなる群より選ばれる原子であってC原子を除く原子を示し、Xは、加水分解性基を示し、mは2以上の整数を示し、nは0〜2の整数を示し、m−n≧1であり、nが2のとき、各R1は互いに同一でも異なっていてもよく、m−n≧2のとき、各Xは互いに同一でも異なっていてもよい。また、R1とXは同一でも異なっていても良い。)
(7)前記溶解性コア体のゼータ電位の絶対値が、1〜80mVである上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の中空状無機粒子の前駆体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の中空状無機粒子の前駆体から、前記溶解性コア体を溶解除去して得られる中空状無機粒子。
(9)前記中空状無機粒子の平均粒子径が、動的光散乱法による測定で5〜90nmである上記(8)に記載の中空状無機粒子。
前記加水分解促進触媒が吸着又は結合した溶解性コア体を、一般式(I)で表される化合物の加水分解生成物でコーティングし、無機膜を形成し、中空状無機粒子の前駆体を得る第2工程と、
前記中空状無機粒子の前駆体を溶解処理することで、前記溶解性コア体を除去して中空状無機粒子を得る第3工程と、を含むことを特徴とする上記(8)又は(9)記載の中空状無機粒子の製造方法。
(12)上記(8)又は(9)に記載の中空状無機粒子を含む光学部材。
(13)上記(12)記載の光学部材に反射防止機能を有する光学部材体。
本発明によれば、極めて簡易な製造工程により中空状無機粒子を得ることができ、また製造再現性や生産性の点でも優れている。
さらに、上記の中空状無機粒子を樹脂へ混合、塗布することにより透明性の高い反射防止膜を作製することが可能となる。
本発明の中空状無機粒子の前駆体は、溶解性コア体と、該溶解性コア体の表面の少なくとも一部に吸着又は結合された加水分解促進触媒と、最外層として無機膜と、を有し、且つ前記溶解性コア体が、表面の少なくとも一部に前記加水分解促進触媒と親和性がある極性基又は該極性基を有する化合物を有し、該極性基に前記加水分解促進触媒が吸着又は結合されていることが重要である。
また、前記加水分解促進触媒と親和性がある極性基は、加水分解促進触媒をより吸着又は結合させ易くすることができる。
本発明において「溶解性コア体」とは、特定の溶剤、酸、アルカリ等の溶解用媒体によって溶解し、液体又は気体となって消失する物質であり、その溶解用媒体が本発明における無機膜を溶解せず、溶解性コア体が一次粒子に近い状態で分散できる分散用媒体を用いることが好ましい。溶解性コア体の具体例としては、炭酸カルシウムや金属粒子のように塩酸等の溶解用媒体で溶解する物質、未架橋ポリマー粒子のようなメチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の有機溶剤に溶解する物質、シリカアルミナ複合体のような塩酸等の溶解用媒体に溶解する物質等が挙げられる。
分散用媒体中における、動的光散乱法による測定で、平均粒子径が4〜80nmであることが望ましい。平均粒子径が4〜80nmであることで、無機膜を形成した際の粒子径を100nm以下にすることが可能となり、粒子の透明性を向上させることが可能となる。
動的光散乱法による測定で平均粒子径が4〜80nmであるものを適宜選択して使用すればよい。
動的光散乱法による測定とは、具体的には以下の通りである。溶解性コア体濃度を調整した分散液の粒度分布をベックマンコールター社製のN−5サブミクロン粒子アナライザーを用いて測定する。
金属炭酸塩粒子としては、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸銅、炭酸鉄、炭酸銀等の粒子が挙げられ、炭酸カルシウム粒子を溶解性コア体として用いることが好ましい。
金属炭酸塩粒子を溶解性コア体に用いた場合、溶解処理に用いる溶解用媒体としては、金属炭酸塩粒子を溶解し且つ無機膜を溶解しない酸、アルカリ等を用いる。溶解用媒体の選定については、具体的には中空状無機粒子の製造方法において説明する。
金属炭酸塩粒子は中空状無機粒子の前駆体を溶解処理する際に、酸、アルカリ等の溶解用媒体によってイオン化し、溶解された溶解性コア体成分は無機膜の外の媒体中に溶解させることができる。
ポリマー粒子は中空状無機粒子の前駆体を溶解処理する際に、溶解用媒体によって高分子鎖が溶媒和され、溶解された溶解性コア体成分は無機膜の外の溶解用媒体中に溶出することができる。
金属粒子は中空状無機粒子の前駆体を溶解処理する際に、酸、アルカリによってイオン化し、溶解された溶解性コア体成分は無機膜の外に溶出する。
ゼータ電位は、粒子の分散性を示すパラメータであり、絶対値の値が高いほど溶解性コア体の分散性が高く、分散している溶解性コア体同士には静電的な斥力が強く働き凝集を防ぐことができる。本発明においても溶解性コア体のゼータ電位が高い状態で無機膜を形成させることによって、安定に中空状無機粒子の前駆体を合成することができる。
そのために、溶解性コア体のゼータ電位の絶対値は、1〜80mVであることが望ましい。なお、100nm未満の中空状無機粒子を得るためには、ゼータ電位の絶対値を1〜80mVとするだけでなく、溶解性コア体表面の少なくとも一部に加水分解促進触媒が吸着又は結合されていることが重要である。
溶解性コア体のゼータ電位は、溶解性コア体濃度1質量%に調整した水溶液をベックマンコールター社製のDELSA440SXを用いて測定できる。
ここでいう「極性基」とは、前記加水分解促進触媒と親和性があるものであり、非イオン性基、カチオン性基、アニオン性基が挙げられるが、例えば、イオン性基又はイオン化可能基で置換された有機基も含まれる。イオン化可能基は、中空状無機粒子の前駆体を生成するために使用する媒体中でイオン性基を作ることができる基である。イオン性基は、アニオン性基又はカチオン性基でよく、イオン化可能基はアニオン又はカチオンを作ることができる。
酸性基は、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基、スルホニウム基等である。
塩とする場合は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
アミン置換基を有する有機基もカチオン性基を作るイオン化可能極性基として使用することが可能である。
第4級アンモニウム基(−NR3 +)及び第4級ホスホニウム基(−PR3 +)も、カチオン性基の例である(Rは、1価の基)。
水酸基、シラノール基、ホルムアミド基等、非イオン性の極性の大きな親水基も含まれる。
これらの組み合わせで、中でもカルボキシル基、アミノ基、シラノール基が好ましく用いられる。
極性基を有する化合物とは、上記極性基を分子内に少なくとも一種類以上含む化合物の中で、特に、溶解性コア体と、分子間力、静電的引力、水素結合等により、物理的、化学的に吸着又は結合するものが望ましい。その中で、低分子界面活性剤、高分子分散剤を用いることが望ましい。
低分子界面活性剤としては、各種アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
以下、界面活性剤の具体例を列挙する。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物が用いられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
高分子分散剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、完全けん化PVA、部分けん化PVA、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチル、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチル四級塩、ポリアクリル酸ジメチルアミノエチル、ポリアクリル酸ジメチル四級塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリスルホン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムとポリアリルアミン共重合ポリマー、水溶性天然高分子等が挙げられ、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸ナトリウムを用いることが望ましい。
親水基と疎水基とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用できる。
また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体も用いることができる。
なお、溶解性コア体の表面の一部に、極性基を有する化合物を有するようにするには、溶解性コア体スラリーに直接添加することで行う。
なお、極性基を有する化合物と共に珪酸ナトリウム等の分散助剤を用いることも好ましい。
加水分解促進触媒としては、酸触媒、アルカリ触媒がある。アルカリ触媒としては、アンモニア、アミン化合物、アミノ基を分子内に有する化合物、アルカリ金属の水酸化物等を用いることができる。
加水分解促進触媒としての酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
特に、アンモニア、第一級又は第二級アミンから水素を除去した1価の官能基を含むアミン化合物を用いることができる。具体的には、メチルアミン、エーテルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、カテコールアミン、フェネチルアミン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(プロトンスポンジ)、アミノ酸、アマンタジン、スペルミジン、スペルミン等が挙げられる。
また、図2に、極性基を介して溶解性コア体への加水分解促進触媒(アンモニア)の結合の様子を示す概念図を示す。
無機膜は、溶解性コア体表面に直接、若しくは、極性基又は極性基を有する化合物を表面に有する溶解性コア体に加水分解促進触媒を吸着又は結合させた後、形成させる膜のことを指す。この無機膜を形成後、溶解性コア体を溶解除去することによって中空状無機粒子を得ることができる。なお、無機膜は、溶解性コア体を溶解する溶解用媒体には溶解しない材質であることが必須である。その選定は用いられる溶解性コア体、溶解用媒体によるが、無機膜を形成している素材を溶解用媒体に浸漬し、溶解するかどうかを確認すればよい。
具体的には、中空状無機粒子の前駆体を被覆する無機膜としては、下記一般式(1)
金属アルコキシドとしては、ケイ素、チタン、アルミニウムのアルコキシドを用いることが好ましい。
その中でも特にシリコンアルコキシドを用いることが屈折率が低い点からより好ましい。
無機膜の形成は、具体的には以下のように行う。
ここで分散用媒体として使用するアルコールについては、溶解性コア体を溶解しないものであれば特段の制約はないが、無機膜を金属アルコキシドの加水分解生成物を用いる場合、分散媒溶媒としては、金属アルコキシドに対して溶解性の高いメタノール、エタノール、プロパノール等が利用可能である。
加水分解反応は、通常の方法で行えばよく、例えば、金属アルコキシドの場合は、酸、アンモニア等の触媒を用いることも好ましい。
無機膜の厚さを上記範囲とするには、溶解性コア体表面に形成させる物質の量を調整すればよい。
次に、主に無機膜形成に好ましく用いられるシリコンアルコキシドを下記一般式(2)に示し、その種類を以下に示す。
無機膜の形成工程において各物質を添加した後は、シリコンアルコキシドの加水分解によるシリカの析出が完了するまで撹拌を続けることが望ましい。
そのようになると、最終的に得られる中空状無機粒子も凝集体となって、本発明の課題のひとつである高分散状態が達成できなくなることもある。
次に、本発明の中空状無機粒子の製造方法について説明する。
本発明の中空状無機粒子の製造方法は、前記した通り溶解性コア体に加水分解促進触媒を吸着又は結合させる第1工程と、
前記加水分解促進触媒が吸着又は結合した溶解性コア体を、一般式(I)で表される化合物の加水分解生成物でコーティングし、無機膜を形成し、中空状無機粒子の前駆体を得る第2工程と、
前記中空状無機粒子の前駆体を溶解処理することで、前記溶解性コア体を除去して中空状無機粒子を得る第3工程と、を含み、
前記第1工程における前記溶解性コア体の平均粒子径が、動的光散乱法による測定で4〜80nmであることを特徴とする。
第1工程は、溶解性コア体に加水分解促進触媒を吸着又は結合させる。
第1工程において用いられる溶解性コア体は前述したものが用いられる。なお、溶解性コア体が前記加水分解促進触媒と親和性がある極性基を有さない場合は、加水分解促進触媒を処理する前に、該極性基を有する化合物を溶解性コア体に吸着又は結合させる工程を追加する。
溶解性コア体は、動的光散乱法による測定で4〜80nmの粒子径であることが好ましい。
溶解性コア体がポリマー粒子の場合は、ポリマーの原料となるモノマー等を用い、マイクロエマルション重合、ミニエマルション重合、ソープフリー乳化重合、乳化重合等の重合法により、動的光散乱法による測定で4〜80nmの粒子径の溶解性コア体を得ることができる。それによって100nm以下の粒子を得ることができる。金属粒子の場合、分散剤存在下での酸化還元反応によって合成することが可能である。
第2工程は、前記加水分解促進触媒が吸着又は結合した溶解性コア体を、上記一般式(1)で表される化合物の加水分解生成物でコーティングし、無機膜を形成し、中空状無機粒子の前駆体を得る。
第3工程は、中空状無機粒子前駆体を溶剤、酸、アルカリ等の溶解用媒体で溶解処理することで、前記溶解性コア体を除去し、中空状無機粒子を得る。
また、ポリマー粒子を溶解性コア体に用いる場合は、ポリマーが溶解する有機溶剤を溶解用媒体に用いる。
溶解性コア体を溶解するための酸としては、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、酒石酸、トリフルオロメタンスルフォン酸等の有機酸、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等の無機酸等を用いることができる。
第3工程の溶解処理に用いる溶解性コア体を溶解する有機溶剤としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n
−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢
酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢
酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセ
ト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エ
チレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、
酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブ
チルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコー
ルモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸ジプロピ
レングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、
ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n
−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸
メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
そして中空状無機粒子の前駆体に対し、溶解用媒体を過剰量用意し、その媒体中に中空状無機粒子の前駆体を添加して行う。必要により、加熱、攪拌等を行う。
なお、図3に本発明の中空状無機粒子の製造方法の一部の工程をイメージで示す。
なお、洗浄用の溶剤については、無機膜の原料成分により変える必要がある。具体的にはアルキル基を有さない金属アルコキシドを無機膜の原料成分とした場合、中空状無機粒子を分散させる場合には無機膜表面にOHを有するため、アルコール等の極性溶媒を洗浄用溶剤とすることが好ましい。逆に無機膜の原料成分がアルキル基を有している場合(無機膜の表面が疎水性の場合)は有機溶剤(例:トルエン、メチルエチルケトン)を洗浄用溶剤とする。
本発明において「動的光散乱法による平均粒子径」は、液相中に分散させた際の分散粒子径をさす。
中空状無機粒子の粒子径を上記範囲とするには、4〜80nmの粒子径を有するコア体粒子を使用すればよい。
また、ナノサイズのカプセル粒子として、リリースコントロール素材、選択吸着剤等としての利用も期待されるものである。
本発明の中空状無機粒子は、薄膜化することにより、反射防止膜等の光学部材とすることができる。
また、上記光学部材に反射防止機能を設けることで光学部材体とすることができる。反射防止機能の設け方としては、中空状無機粒子分散液をフィルムに塗布または、ディップする方法穂などが挙げられる。
(実施例1)
<合成方法>
・溶解性コア体の調整
テトラクロロ金酸四水和物0.048質量%100mLにクエン酸三ナトリウム1質量%20mLを添加し、120℃で1時間撹拌を続け、溶解性コア体として金ナノ粒子を合成した。動的光散乱の平均粒子径は20nmであった。
なお、溶解性コア体はカルボキシル基を極性基として有している。
得られたスラリーに加水分解促進触媒として28質量%アンモニア水を2mL添加した。このスラリーを限外ろ過によって水で洗浄し、乾燥後にエネルギー分散型X線により化学分析を行った所、窒素が検出され、アンモニウムイオンが粒子表面に吸着していることを確認した。
続いて、上記で得られた金ナノ粒子スラリーに触媒(28質量%アンモニア)2mLを添加したスラリーを35℃に昇温し、テトラエトキシシランのエタノール溶液0.15質量%60gを1時間にわたって添加し、そのまま5時間撹拌した。
無機膜の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM、(株)日立製作所製のH−800)で測定したところ8nmだった。
その後、限外ろ過により純水で洗浄してから、金コロイドスラリー(溶解性コア体として0.1質量部)に王水40質量部を添加し、室温で24時間撹拌し、溶解性コア体としての金コロイドを溶解させた。さらに、再び限外ろ過によって純水で溶液を洗浄し、中空状無機粒子を得た。
得られた中空状無機粒子をTEM及び走査型電子顕微鏡(SEM、(株)フィリップスエレクトロニクス製のXL30 ESEM)で観察したところ、無機膜としてのシリカ殻(厚さ8nm)からなる動的光散乱による平均粒子径65nmの中空状無機粒子であった。さらに、エネルギー分散型X線検出器により化学分析を行ったところ、Si元素及び酸素のみが検出され、高純度のシリカ中空状無機粒子であることが確認された。
・溶解性コア体の調整及び極性基を有する化合物の吸着
溶解性コア体として一次粒子径20nmの炭酸カルシウム粒子50g、及びイソプロピルアルコール50gを混合後、水656g、及び極性基を有する化合物としてポリアクリル酸ナトリウム(東亜合成(株)製、商品名:T−40)7.5gと分散助剤として珪酸ナトリウム2.5gを添加し、ナノマイザー分散装置(吉田精機(株)製、流速280m/秒、圧力200MPa)で分散を行った。
ナノマイザーを3回通すことで得られたスラリーを、動的光散乱を用いて粒度分布を測定したところ平均粒子径が50nmであった。
次に、上記で得た炭酸カルシウムスラリーを0.5質量%20gに調整し、加水分解促進触媒として28質量%アンモニア水を2mL添加した。このスラリーを限外ろ過によって水で洗浄し、乾燥後にエネルギー分散型X線により化学分析を行った所、窒素が検出され、アンモニウムイオンが粒子表面に吸着していることを確認した。
続いて、触媒(28質量%アンモニア)2mLを添加したスラリーを35℃に昇温し、テトラエトキシシランのエタノール溶液1.49質量%60gを1時間にわたって添加し、そのまま5時間撹拌した。
無機膜の厚さは、TEMで測定したところ13nmだった。
その後、限外ろ過により純水で洗浄してから、溶解性コア体として1.5質量部に対して1M塩酸を1mL/分で2mL添加し、室温で24時間撹拌し、炭酸カルシウムを溶解させた。さらに、再び限外ろ過によって純水で溶液を洗浄し、中空状無機粒子を得た。
得られた中空状無機粒子を透過型電子顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、無機膜としてのシリカ殻(厚さ13nm)からなる動的光散乱による平均粒子径81nmの中空状無機粒子であった。さらに、エネルギー分散型X線検出器により化学分析を行ったところ、Si元素及び酸素のみが検出され、高純度のシリカ中空状無機粒子であることが確認された(得られたシリカ中空状無機粒子を図1に示す)。
実施例2において、加水分解触媒としてトリエタノールアミンを1mL、無機膜形成物質としてチタンテトライソプロポキシドのエタノール溶液2質量%60gを用いた以外は同様にして行った。
トリエタノールアミン添加前後の溶解性コア体のゼータ電位はそれぞれ−52mV、−35mVであった。また、溶解性コア体に形成させた無機膜の厚さはTEM観察から12nmであり、溶解性コア体溶出後も12nmであった。
さらに、中空状無機粒子の平均粒子径は75nmであり、エネルギー分散型X線検出器により化学分析を行ったところ、Ti元素及び酸素のみが検出され、高純度の酸化チタン中空状無機粒子であることが確認された。
実施例2において、加水分解触媒としてトリエタノールアミンを1mL、無機膜形成物質としてアルミニウムプロポキシドのイソプロパノール溶液1.5質量%60gを用いた以外は同様にして行った。
トリエタノールアミン添加前後の溶解性コア体のゼータ電位はそれぞれ−52mV、−36mVであった。
また、溶解性コア体に形成させた無機膜の厚さはTEM観察から10nmであり、溶解性コア体溶出後も10nmであった。
さらに、中空状無機粒子の平均粒子径は78nmであり、エネルギー分散型X線検出器により化学分析を行ったところ、Al元素及び酸素のみが検出され、高純度の酸化アルミニウム中空状無機粒子であることが確認された。
・溶解性コア体の調整
溶解性コア体としてメタクリル酸メチル(MMA)2.0g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.4g、1−ペンタノール0.2g及び水72.4gを混合し、40℃に昇温した後、N,N,N’,N’−テトラエチレンジアミン0.46質量%水溶液を5g及び過硫酸アンモニウム0.91質量%水溶液5gを添加し重合を始めた。
得られたスラリーの動的光散乱を測定したところ平均粒子径は21nmであった。
このスラリー(溶解性コア体として0.5質量部)を用いて実施例2と同様に加水分解促進触媒として28質量%アンモニア水を2mL添加した。分散型X線により化学分析を行った所、窒素が検出され、アンモニウムイオンが粒子表面に吸着していることを確認した。
また、アンモニア水添加前後のゼータ電位を測定したところ、それぞれ−45mV、−34mVであった。
続いて、実施例2と同条件で無機膜としてシリカの殻を形成した後、メタノールとメチルエチルケトン混合溶液(7/3質量比)50質量部を添加し、室温で24時間撹拌を行い、コア体を溶解させた。水を用いた限外ろ過にて洗浄し、中空状無機粒子を得た。
得られた中空状無機粒子をTEM及びSEMで観察したところ、無機膜としてのシリカ殻(厚さ6nm)からなる動的光散乱による平均粒子径52nmの中空状無機粒子であった。さらに、エネルギー分散型X線検出器により化学分析を行ったところ、Si元素及び酸素のみが検出され、高純度のシリカ中空状無機粒子であることが確認された。
加水分解促進触媒としてのアンモニア水を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして中空状無機粒子の前駆体を得た後に溶解性コア体を溶解した。TEMを用いて観察したところ、粒子は観察されなかった。
ポリアクリル酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例2と同様に行い、中空状無機粒子の前駆体を得た後に溶解性コア体を溶解した。動的光散乱法では粒子径3μm以上(計測範囲外)であり、ミクロンオーダーの凝集粒子となっていることが確認された。
得られた凝集粒子を透過型電子顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、シリカの凝集粒子であった。
なお、図4に比較例2における製造方法の工程の一部をイメージで示す。
比較例2の溶解性コア体は分散型X線により化学分析を行った所、窒素が検出されず、アンモニウムイオンの粒子表面に吸着を確認できなかった。
・溶解性コア体の調整
走査型電子顕微鏡法による一次粒子径100〜200nmの丸尾カルシウム(株)製の炭酸カルシウム粒子(ルミナス)を溶解性コア体として0.5g用い、これを水19.5g中に投入し超音波分散を行った(動的光散乱平均粒子径440nm)。
・加水分解促進触媒の吸着及び無機膜のコーティング
その後、エタノール17.5g及び28質量%アンモニア水を2mL添加した混合溶液を35℃に昇温し、テトラエトキシシランのエタノール溶液4質量%60gを1時間にわたって添加し、そのまま5時間撹拌した。
分散型X線により化学分析を行った所、窒素が検出され、アンモニウムイオンが粒子表面に吸着していることを確認した。
また、アンモニア水添加前後のゼータ電位を測定したところ、それぞれ−42mV、−30mVであった。
その後、限外ろ過により洗浄してから、1M塩酸を1mL/分で2mL添加し、炭酸カルシウムを溶解させた。さらに、再び限外ろ過によって溶液を洗浄し、中空状無機粒子を得た。
得られた中空状無機粒子を透過型電子顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、無機膜としてのシリカ殻(厚さ10nm)からなる動的光散乱による平均粒子径744nmの粒子であった。
実施例1〜5、比較例1〜3で得られた粒子の水分散液0.1質量%を微粒子分散液として用い、シグマアルドリッチジャパン(株)製ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)を高分子電解質として用いた。
溶液としては0.3質量%のPDDA水溶液と1.0質量%の微粒子分散液を調製した。微粒子分散液のpHは7に調整し、PDDA水溶液のpHは9に調製した。片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルム(A4100、東洋紡績(株)製、屈折率1.65、100mm×100mm×125μm厚)を仮支持体として用い、PDDA水溶液に1分間浸漬し、リンス用の超純水に3分間浸漬する工程(ア)、微粒子分散液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水に3分間浸漬する工程(イ)をこの順に施した。この工程(ア)1回と工程(イ)1回を順に行うのを1サイクルとし、このサイクルを7回(微粒子交互積層回数)行い、仮支持体表面に中空状無機粒子含有積層膜を約100nmで形成し、これを無機薄膜転写材(A)とした。
永久支持層の材料として光硬化性のハードコート樹脂(日立化成工業(株)製、ヒタロイド)を用いた。このハードコート樹脂97質量部と光重合開始剤(長瀬産業(株)製、イルガキュア184)3質量部とを混ぜた光硬化性樹脂を用いた。別のPETフィルムの易接着層がある面上にアプリケータを用いて光硬化性樹脂を厚さ30μmに塗工した(B)。
光硬化性樹脂の塗膜を有する成形品(B)と上記の無機薄膜転写材(A)とを、光硬化性樹脂の塗膜面と(A)の易接着層のない面上に形成された中空状無機粒子含有積層膜とが向かい合わせになるように配置して、貼り合わせた。
貼り合わせはロールラミネータ(ラミーコーポレーション社製LMP−350EX)を用いて、ロール荷重3kg/cm2、送り速度0.5m/min、温度20℃の条件で行なった。この温度における、ハードコート樹脂の粘度は、9,000mP・sであった。(粘度は、E形粘度計(たとえば、東京計器(株)製TV−33が使用できる)により測定した、温度25℃における粘度。以下同様)
この貼り合わせ物に紫外線露光装置(オーク(株)製、HMW−6N−4)を用いて2000mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化性樹脂層を硬化させ転写膜を作製した。
前記で得た中空状無機粒子含有積層膜が形成されたPETフィルムと中空状無機粒子含有積層膜をハードコート樹脂に転写した膜のヘイズ値を、濁度計(日本電色工業(株)製)にてJIS K 7361−1−1997に準拠して測定した結果を表2に示す。
この結果から、実施例で合成した中空状無機粒子は非常に透明性が高い状態で中空状無機粒子を樹脂中に転写できたことが分かった。
Claims (9)
- 溶解性コア体と、該溶解性コア体の表面の少なくとも一部に吸着又は結合された加水分解促進触媒と、最外層として無機膜と、を有し、
前記溶解性コア体が、表面の少なくとも一部に前記加水分解促進触媒と親和性がある極性基を有し、該極性基に前記加水分解促進触媒が吸着又は結合されている中空状無機粒子の前駆体。 - 溶解性コア体と、該溶解性コア体の表面の少なくとも一部に吸着又は結合された加水分解促進触媒と、最外層として無機膜と、を有し、
前記溶解性コア体が、表面の少なくとも一部に前記加水分解促進触媒と親和性がある極性基を有する化合物を有し、該極性基を有する化合物に前記加水分解促進触媒が吸着又は結合されている中空状無機粒子の前駆体。 - 前記溶解性コア体は、金属炭酸塩粒子、ポリマー粒子、金属粒子、シリカアルミナ複合物粒子のいずれかである請求項1又は2に記載の中空状無機粒子の前駆体。
- 前記加水分解促進触媒が、アンモニア、アミン化合物又はアミノ基を分子内に有する化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空状無機粒子の前駆体。
- 前記無機膜が、下記一般式(1)
(但し、式(1)中、R1は、H原子、F原子及び炭素数1〜12の1価の有機基からなる群から選ばれ、Mは、IVa、Vb、Ib、IIb、IIIa、IIIb、Va及びIVb族に属する原子からなる群より選ばれる原子であってC原子を除く原子を示し、Xは、加水分解性基を示し、mは2以上の整数を示し、nは0〜2の整数を示し、m−n≧1であり、nが2のとき、各R1は互いに同一でも異なっていてもよく、m−n≧2のとき、各Xは互いに同一でも異なっていてもよい。また、R1とXは同一でも異なっていても良い。) - 前記溶解性コア体の平均粒子径が、動的光散乱法による測定で4〜80nmである請求項1〜5のいずれか一項に記載の中空状無機粒子の前駆体。
- 前記溶解性コア体のゼータ電位の絶対値が、1〜80mVである請求項1〜6のいずれか一項に記載の中空状無機粒子の前駆体。
- 溶解性コア体に、加水分解促進触媒を吸着又は結合させる第1工程と、
前記加水分解促進触媒が吸着又は結合した溶解性コア体を、一般式(I)で表される化合物の加水分解生成物でコーティングし、無機膜を形成し、中空状無機粒子の前駆体を得る第2工程と、
前記中空状無機粒子の前駆体を溶解処理することで、前記溶解性コア体を除去して中空状無機粒子を得る第3工程と、を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の中空状無機粒子の前駆体を用いた中空状無機粒子の製造方法。 - 前記溶解性コア体の平均粒子径が、動的光散乱法による測定で4〜80nmである請求項8に記載の中空状無機粒子の製造方法。
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