JP6339889B2 - 金属酸化物中空粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属酸化物中空粒子の製造方法に関する。
近年、中空シリカ等の金属酸化物中空材料は、光学材料、低誘電率材料、断熱材料、医薬(DDS:ドラッグデリバリーシステム)、分子プローブ、触媒、吸着材料、センサー、塗料、インク等に新しく応用できる材料として期待されている。一般的に金属酸化物中空材料の製法としては炭酸カルシウム、ポリマービーズ等のハードテンプレートを用いる方法、エマルション、ベシクル等のソフトテンプレートを用いる方法等があるが、このような方法では粒径が小さく(100nm以下)かつ、粒度分布の狭い中空材料を得るのが難しい。特許文献1及び特許文献2には炭酸カルシウムの表面にシリカをコートし、その後炭酸カルシウムを溶解除去することにより中空シリカを得る方法が開示されている。しかしながら、この方法で得られた中空シリカは粒径が45〜90nmと粒度分布が大きく、炭酸カルシウムの結晶形を反映した立方体の粒子である。特許文献3には非水溶性ポリマー粒子を用いた中空粒子の製造方法が開示されている。
特開2005−263550号公報 特開2008−222459号公報 特開2014−009261号公報
しかしながら、特許文献3に記載の方法でシリカ層を形成するにはオートクレーブを用いた水熱反応工程が必要となり、特定の設備が必要となるため大量製造には不向きであった。
したがって、体積50%平均粒子径が10nm以上50nm以下である金属酸化物中空粒子を効率的に製造する方法の開発が望まれている。しかしながら、未だ十分に満足できる製造方法が開発されていない。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、体積50%平均粒子径が10nm以上50nm以下である金属酸化物中空粒子の製造方法を提供するものである。
即ち、本発明は以下に記載することができる。
[1]水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下である非水溶性ポリマー粒子(X)およびカチオン界面活性剤(Z)を含み、重量比(X):(Z)が10:1〜1:10である混合物を得る工程(1)と、
前記混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程(2)と、
前記有機無機複合体粒子から前記非水溶性ポリマー粒子(X)を除去する工程(3)を含む、体積50%平均粒子径が10nm以上50nm以下である金属酸化物中空粒子の製造方法。
[2]前記工程(1)の混合物がさらに酸性触媒を含む、[1]に記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
[3]前記工程(2)が、前記混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該混合物を超音波処理し、次いで該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程である、[1]または[2]に記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
[4]前記非水溶性ポリマー粒子が、下記一般式(1)で表され、数平均分子量が2.5×10以下である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体からなる粒子である、[1]または[2]に記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。XおよびXは、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。)
[5]前記一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体のXおよびXが、同一または相異なり、一般式(2)
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、Xはポリアルキレングリコール基、
または、一般式(3)
(式中、Rはm+1価の炭化水素基を表す。Gは同一または相異なり、−OX、−NX(X〜Xはポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表す。mは、RとGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
または、一般式(4)
(式中、X,Xは同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)で表されることを特徴とする[4]に記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
[6]前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が下記一般式(1a)または一般式(1b)で表されることを特徴とする[4]または[5]に金属酸化物中空粒子の製造方法。
(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
[7]前記カチオン界面活性剤(Z)がテトラアルキル第4級アンモニウム塩型界面活性剤である[1]〜[6]のいずれかに記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
[8]前記テトラアルキル第4級アンモニウム塩型界面活性剤が臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)または塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)である[7]に記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
本発明の金属酸化物中空粒子の製造方法においては、カチオン界面活性剤を用いることにより、比較的穏やかな反応条件にて有機無機複合体を調製することができる。
本発明によって得られる金属酸化物中空粒子は、平均粒子径が小さいため、様々な用途に用いることができ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば本発明の金属酸化物中空粒子はバインダー樹脂に均一に分散させることが容易であり、透明性の高い樹脂組成物を提供することができる。
さらに、本発明によって得られる金属酸化物中空粒子は、水、有機溶媒等の液状分子、水蒸気、メタン、酸素、窒素等の気体分子の吸着性に優れ、内部の空孔に所望の物質を内包保持、さらに徐放することができる。また、粒子内部に空気を備えるため、軽量化、断熱性、低屈折率、低誘電率などの特性に寄与することもできる。また、このような特性を備えるため、様々な用途に用いることができる。
実施の形態に係るコア−シェル型有機無機複合体粒子を示す模式断面図である。 実施の形態に係る中空粒子を示す模式断面図である。 実施例1で得られた中空粒子のTEM像である。 実施例2で得られた中空粒子のTEM像である。 比較例1で得られた中空粒子のTEM像である。
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を用いて詳しく説明する。
本実施形態の金属酸化物中空粒子の製造方法は、
水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下である非水溶性ポリマー粒子(X)およびカチオン界面活性剤(Z)を含み、重量比(X):(Z)が10:1〜1:10である混合物を得る工程(1)と、
前記混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程(2)と、
前記有機無機複合体粒子から前記非水溶性ポリマー粒子(X)を除去する工程(3)を含む、体積50%平均粒子径が10nm以上50nm以下である金属酸化物中空粒子の製造方法である。
<金属酸化物中空粒子>
本実施形態の金属酸化物中空粒子は、大きさが略均一で、かつ分散性が高い、いわゆる単分散粒子である。
図2は本実施形態に係る中空粒子の断面を模式的に表した図である。
図2に示すように、金属酸化物中空粒子は内部に略均一な空孔を有している。本実施形態の金属酸化物中空粒子の体積50%平均粒子径(外径)は10nm以上50nm以下であり、好ましくは、20nm以上40nm以下である。
また、本実施形態の金属酸化物中空粒子の内径は、外径に応じて変化するが、たとえば5nm以上30nm以下であり、好ましくは10nm以上25nm以下である。
金属酸化物中空粒子の外径と内径が、この範囲であると粒子の光散乱が小さく、かつ、様々な用途に用いることができ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば、後述する樹脂組成物として用いる場合、バインダー樹脂中に均一に分散させることができ、透明性が高い樹脂組成物を得ることができる。
また、本実施形態の金属酸化物中空粒子の体積90%平均粒子径と体積50%平均粒子径との比(D90/D50)は1.5以下とすることが好ましく、さらに好ましくは1.0以上1.4以下である。この範囲であると、粒子径分布が狭く、粗大粒子が少ないため、取扱性に優れ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば、後述する樹脂組成物として用いる場合、バインダー樹脂への均一分散性、得られる樹脂の透明性の点で好ましい。
また、本実施形態の金属酸化物中空粒子は内部に中空を有し、BET比表面積は、たとえば300m/g以上であり、好ましくは400m/g以上である。また、熱伝導性は形状に起因した異方性が無い方が好ましいという観点から、球形の形状を有し、均一なメソ孔を有することが好ましい。
このBET比表面積は、たとえば窒素吸着法にて測定することができる。
金属酸化物中空粒子の外径は、水に分散したサンプルを動的光散乱による粒度分布計(DLS)で確認することができる。また、内径はTEMの画像写真から観察できる。
また本実施形態において、金属とは、典型的な金属だけでなく、Siなどの半金属をも意味する。
本実施形態の金属酸化物としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ハフニウム(Hf)、コバルト(Co)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)から選ばれる金属の酸化物が好ましく、物質自身の屈折率、熱伝導率が金属酸化物の中で比較的低いという観点から、ケイ素酸化物(シリカ)が特に好ましい。
また金属酸化物は複数の金属を含む複合酸化物であってもよい。
<金属酸化物中空粒子の製造方法>
本実施形態の金属酸化物中空粒子の製造方法は、以下の工程(1)、工程(2)、および工程(3)を含む。
工程(1):水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下である非水溶性ポリマー粒子(X)およびカチオン界面活性剤(Z)を含み、重量比(X):(Z)が10:1〜1:10である混合物を得る工程。
工程(2):工程(1)で得られた混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程。
工程(3):工程(2)で得られた有機無機複合体粒子から非水溶性ポリマー粒子(X)を除去する工程。
本実施形態においては、非水溶性ポリマー粒子、カチオン界面活性剤の存在下で、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行う必要がある。非水溶性ポリマー粒子とカチオン界面活性剤に加え、酸性触媒(V)を混合物に含ませることで、ゾル−ゲル反応が早く進行し、さらに非水溶性ポリマー粒子を内包するように金属酸化物前駆体が3次元的に緻密なゲルを形成するため、有機無機複合体粒子を好適に得ることができる。また、超音波処理によりゾル−ゲル反応の進行を早めることもできる。
以下、各工程を順に説明する。
[工程(1)]
工程(1)においては、具体的に、非水溶性ポリマー粒子(X)(以下、適宜「成分(X)」とする)、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)(以下、適宜「成分(Y)」とする)、カチオン界面活性剤(Z)(以下、適宜「成分(Z)」とする)、必要に応じて酸性触媒(V)(以下、適宜「成分(V)」とする)を混合して混合物を調製する。
工程(1)において、後述の非水溶性ポリマー粒子(X)の水分散体、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)およびカチオン界面活性剤(Z)、必要に応じて酸性触媒(V)を混合することにより混合物を得るのが好ましい。
非水溶性ポリマー粒子(X)について詳細に説明する。
非水溶性ポリマー粒子は、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下であることが好ましい。このような非水溶性ポリマー粒子から得られた金属酸化物中空粒子を用いることにより、高断熱で透明なフィルム、塗膜を実現することもできる。体積50%平均粒子径は粒度分布計(DLS)を用いて測定することができる。
本実施形態で用いる非水溶性ポリマー粒子(X)としては、ポリオレフィン系の非水溶性ポリマー粒子が、外径30nm以下の非水溶性ポリマー粒子を形成しやすく好適に用いられる。より好ましくは、下記一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子である。
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子であり、XおよびXは、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。)
一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の数平均分子量は2.5×10以下、好ましくは1.5×10以下、より好ましくは4.0×10以下である。また、好ましくは5.5×10以上、より好ましくは8×10以上である。その数平均分子量は、Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量とXおよびXで表されるポリアルキレングリコール基を含む基の数平均分子量とR,RおよびCH分の分子量の和で表される。
末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の数平均分子量が上記範囲にあると、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子を分散質とした際の分散液中の粒子の安定性、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒への分散性が良好となる傾向があり、かつ分散液の調製が容易になるため好ましい。
一般式(1)のAであるポリオレフィン鎖は、炭素数2〜20のオレフィンを重合したものである。炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。本実施形態においては、これらのオレフィンの単独重合体又は共重合体であってもよく、特性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであってもよい。これらのオレフィンの中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
一般式(1)中、Aで表されるポリオレフィン鎖の、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)により測定された数平均分子量は、400〜8000であり、好ましくは500〜4000、さらに好ましくは500〜2000である。ここで数平均分子量はポリスチレン換算の値である。
Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン部分の結晶性が高く、分散液の安定性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になる傾向があるため好ましい。
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、通常1.0〜数十であるが、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、分散液中の粒子の形状や粒子径の均一性などの点で好ましい。
GPCによる、Aで表されるポリオレフィン鎖の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
なお、Aで表されるポリオレフィン鎖の分子量は、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
,Rとしては、Aを構成するポリオレフィンの2重結合に結合した置換基である水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
一般式(1)において、X,Xは同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜10000のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。分岐ポリアルキレングリコール基の分岐態様は、多価の炭価水素基あるいは窒素原子を介した分岐等である。例えば、主骨格の他に2つ以上の窒素原子または酸素原子または硫黄原子に結合した炭化水素基による分岐や、主骨格の他に2つのアルキレン基と結合した窒素原子による分岐等が挙げられる。
ポリアルキレングリコール基を含む基の数平均分子量が上記範囲にあると、分散液の分散性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になるため好ましい。
一般式(1)のX,Xが上記の構造を有することにより、界面活性剤を用いることなく、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下の粒子径を有する、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体からなる重合体粒子が得られる。
一般式(1)において、XおよびXの好ましい例としては、それぞれ同一または相異なり、一般式(2)、
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、Xはポリアルキレングリコール基、または一般式(3)
(式中、Rはm+1価の炭化水素基を表し、Gは同一または相異なり、−OX、−NX(X〜Xはポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表し、mはRとGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
または、一般式(4)
(式中、X,Xは同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)で表される基である。
一般式(3)において、Rで表される基としては、炭素数1〜20のm+1価の炭化水素基である。mは1〜10の整数であり、1〜6の整数が好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。
一般式(1)の好ましい例としては、一般式(1)中、X、Xのどちらか一方が、一般式(4)で表される基である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。さらに好ましい例としては、X、Xのどちらか一方が一般式(4)で表され、他方が、一般式(2)で表される基である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。
一般式(1)の別の好ましい例としては、一般式(1)中、XおよびXの一方が、一般式(2)で表される基であり、さらに好ましくはXおよびXの両方が一般式(2)で表される基である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。
一般式(4)のさらに好ましい構造としては、一般式(5)
(式中、X、X10は同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基を表し、Q、Qは同一または相異なり、それぞれ2価の炭化水素基を表す。)で表される基である。
一般式(5)においてQ,Qで表される2価の炭化水素基は、2価のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜20のアルキレン基であることがより好ましい。炭素数2〜20のアルキレン基は、置換基を有していてもいなくてもよく、例えば、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、ジメチルエチレン基、フェニルエチレン基、クロロメチルエチレン基、ブロモメチルエチレン基、メトキシメチルエチレン基、アリールオキシメチルエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、炭化水素系のアルキレン基であり、特に好ましくは、エチレン基、メチルエチレン基であり、さらに好ましくは、エチレン基である。Q,Qは1種類のアルキレン基でもよく2種以上のアルキレン基が混在していてもよい。
一般式(1)で表されるXおよびXのさらに好ましい構造としては、一般式(6)
(式中、X11はポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基である。
〜X11で表されるポリアルキレングリコール基とは、アルキレンオキシドを付加重合することによって得られる基である。X〜X11で表されるポリアルキレングリコール基を構成するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドであり、特に好ましくは、エチレンオキシドである。X〜X11で表されるポリアルキレングリコール基としては、これらのアルキレンオキシドの単独重合により得られる基でもよいし、もしくは2種以上の共重合により得られる基でもよい。好ましいポリアルキレングリコール基の例としては、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、またはポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合により得られる基であり、特に好ましい基としては、ポリエチレングリコール基である。
一般式(1)においてX、Xが上記構造を有すると、本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子を分散質とした際の水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒への分散性が良好となるため好ましい。
本実施形態で用いることができる末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子としては、下記一般式(1a)または(1b)で表される重合体を用いることが好ましい。
(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+mは2以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す。)
(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
およびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+m+oは3以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す。)
一般式(1b)で表される重合体としては、下記一般式(1c)で表される重合体を用いることがさらに好ましい。
(式中、l+m+o、nは一般式(1b)と同様である。)
ポリエチレン鎖のエチレンユニット数(n)は、一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量(Mn)をエチレンユニットの分子量で割ることにより算出した。また、ポリエチレングリコール鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)は、ポリエチレングリコール基付加反応時の重合体原料と使用したエチレンオキシドとの重量比が、重合体原料とポリエチレングリコール基の数平均分子量(Mn)との比に同じであると仮定して算出できる。
また、n、l+mもしくはl+m+oはH−NMRによっても測定することができる。例えば、実施例で用いた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)およびそれを含む分散系粒子においては、一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の末端メチル基(シフト値:0.88ppm)の積分値を3プロトン分とした際の、Aで表されるポリオレフィン鎖のメチレン基(シフト値:1.06−1.50ppm)の積分値およびポリエチレングリコール(PEG)のアルキレン基(シフト値:3.33−3.72ppm)の積分値から算出することができる。
具体的には、メチル基の分子量は15、メチレン基の分子量は14、エチレンオキサイド基の分子量は44であることから、各積分値の値よりAで表されるポリオレフィン鎖およびアルキレン基の数平均分子量が計算できる。ここで得られたAで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量をエチレンユニットの分子量で割ることによりnを、アルキレン基の数平均分子量をエチレングリコールユニットの分子量で割ることで、PEG鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)を算出することができる。
Aで表されるポリオレフィン鎖がエチレン−プロピレン共重合体よりなる場合は、IR、13C−NMRなどで測定できるプロピレンの含有率と、H−NMRにおける積分値の両者を用いることでnおよびl+mもしくはl+m+oを算出することができる。H−NMRにおいて、内部標準を用いる方法も有効である。
前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、例えばWO2010/103856に記載の方法により製造することができる。
このような末端分岐型ポリオレフィン系共重合体からなる本実施形態の重合体粒子は、一般式(1)のAで表されるポリオレフィン鎖部分が、内方向に配向した構造を有し、このポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するリジットな粒子である。
本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、ポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するため、分散液の乾燥による粒子の取り出し後も再度溶媒等の液体中に分散することが可能である。本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、粒子が含むポリオレフィン鎖部分の融点が好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上のリジッドな粒子である。
ポリオレフィン鎖部分の融点が上記の温度以上にあると、結晶性が良好なリジッドな粒子になり、より高温で加熱した場合においても粒子の崩壊が抑制される。
このため、後述する各種用途における製造工程や使用場面において、粒子の崩壊が抑制されるので、本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子が有する特性を失うことがなく、製品の歩留まりや製品の品質がより安定する。
本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、溶媒等に分散させたとしても、希釈濃度によらず粒子径が一定である。つまり、再分散性および均一な分散粒子径を有することから、液体中に分散しているミセル粒子とは異なるものである。
[非水溶性ポリマー粒子分散液]
本実施形態の分散液は前記の非水溶性ポリマー粒子、好ましくは前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子を分散質に含み、該分散質が水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒に粒子として分散している。
本実施形態において、非水溶性ポリマー粒子が分散されてなる分散液は、例えば、
(1)非水溶性ポリマー粒子を製造する際に得られた、該重合体粒子を含む分散液、
(2)非水溶性ポリマー粒子を製造する際に得られた該重合体粒子を含む分散液に、さらに他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
(3)非水溶性ポリマー粒子を水や水と親和性を有する有機溶媒に分散させるとともに、他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
の何れをも含む。
本実施形態の分散液における前記非水溶性ポリマー粒子の含有割合は、全分散液を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。
非水溶性ポリマー粒子の含有割合が上記範囲にあると、分散液の実用性が良好であり、かつ粘度を適正に保つことができ、取り扱いが容易になるため好ましい。
また、本実施形態の分散液中の粒子の体積50%平均粒子径は好ましくは5nm以上30nm以下である。
粒子の体積50%平均粒子径は、非水溶性ポリマーの分子量、親水性基と親油性基の比率、分岐の度合いなどを変更することにより制御することが可能である。
例えば前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体のポリオレフィン部分の構造および末端分岐部分の構造を変えることにより調節可能である。
なお、本実施形態における体積50%平均粒子径とは、全体積を100%としたときの累積体積が50%時の粒子の直径を指し、動的光散乱式粒子径分布測定装置やマイクロトラック粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
また、その形状は、例えばリンタングステン酸によりネガティブ染色を施した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することができる。
本実施形態における分散液は、非水溶性ポリマー粒子を水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒に分散化することにより得られる。
本実施形態における分散化は、機械的せん断力により非水溶性ポリマー粒子を水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒に物理的に分散化する方法で行なうことができる。
分散化方法としては特に限定されるものではないが、各種の分散化方法を利用することができる。具体的に言えば、非水溶性ポリマー粒子と水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒とを混合した後、溶融状態にして高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー、押出混練機、オートクレーブ等で分散化する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法等が挙げられる。また、前記非水溶性ポリマー粒子を水以外の溶媒に予め溶解した後、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒とを混合して高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー等により分散化する方法も可能である。この際、非水溶性ポリマー粒子の溶解に使用する溶媒は、非水溶性ポリマー粒子が溶解するのであれば特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサンや水と親和性を有する有機溶媒などが挙げられる。水以外の有機溶媒が分散液に混入することが好ましくない場合には、蒸留等の操作により除去することが可能である。
さらに具体的には、例えば、せん断力をかけることが可能な撹拌機付きのオートクレーブ中、非水溶性ポリマー粒子が溶融状態にあり、かつ加熱により劣化しにくい温度で、例えば非水溶性ポリマー粒子が前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の場合、100℃以上、好ましくは120〜200℃の温度でせん断力をかけながら加熱撹拌することによって分散液を得ることができる。
分散化に要する時間は、分散化温度やその他の分散化条件によっても異なるが、1〜300分程度である。
上記の撹拌時間では分散化を十分に行うことができ、かつ非水溶性ポリマー粒子が劣化しにくいため好ましい。反応後は、分散液中の温度が100℃以下になるまで、好ましくは60℃以下になるまでせん断力をかけた状態を保つことが好ましい。
本実施形態に用いる分散液の製造にあたっては、異物などを除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、たとえば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)を行えばよい。
上記方法における水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
また、上記方法における水と親和性を有する有機溶媒は、非水溶性ポリマー粒子、界面活性剤等の分散質が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。分散液中への有機溶媒の混入が好ましくない場合には、該分散質を含有した分散液を調製した後、蒸留等により、前記有機溶媒を除去することが可能である。
[水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)]
本実施形態における成分(Y)は、金属酸化物前駆体(W)(以下、適宜「成分(W)」とする)を、さらに加水分解させる目的で添加される。
また、成分(Y)は、非水溶性ポリマーを用いて水分散液を得るときに使用する溶媒と、該水分散液、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物および後述するゾル−ゲル反応用触媒の成分(Z)を混合するときに使用する溶媒、後述の金属酸化物前駆体(W)を混合するときに使用する溶媒を含む。
水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
水の一部または全部を溶解する有機溶媒としては、水と親和性を有する有機溶媒であって、非水溶性ポリマーが分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−メトキシエタノール(メチルセルソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセルソルブ)、酢酸エチルなどが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンは、水との親和性が高いため、好ましい。混合物にこれらの有機溶媒が含まれていると、金属酸化物前駆体が縮合する際に、粒子径や形状を制御することができ、大きさの揃った球状の微粒子に近づけることができる。さらに後述する成分(W)として、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)が好ましいため、エタノール、メタノール等のアルコール類が、特に好ましい。
[カチオン界面活性剤(Z)]
本実施形態の工程(1)においては、カチオン界面活性剤(Z)が添加される。
カチオン界面活性剤(Z)として、例えば、単純アミン塩、変性アミン塩、テトラアルキル第4級アンモニウム塩、変性テトラアルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、アルキル・ピリジニウム塩、変性アルキル・ピリジニウム塩、アルキル・キノリニウム塩、アルキル・フォスフォニウム塩、アルキル・スルフォニウム塩などが挙げられる。特にテトラアルキル第4級アンモニウム塩型界面活性剤が好ましく、さらに好ましい物としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)または塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)である。
テトラアルキル第4級アンモニウム塩型界面活性剤は、アニオン化された後述の金属酸化物前駆体(シラノールアニオン等)を引き付け、非水溶性ポリマー粒子の表面上に金属酸化物層構造の形成を補助し、非水溶性ポリマー(コア)−金属酸化物(シェル)によるコアーシェル構造を穏やかな条件で形成することができるため、金属酸化物中空粒子の形成に有用である。
本実施形態の工程(1)において、カチオン界面活性剤(Z)の用いられる量としては、非水溶性ポリマー粒子(X)とカチオン界面活性剤(Z)との重量比(X):(Z)として、10:1〜1:10の範囲であり、さらに好ましくは8:1〜1:8の範囲である。
この範囲に調整することで、続く工程(2)にて効率的に有機無機複合体粒子を調製することができる。
[酸性触媒(V)]
本実施形態で用いる混合組成物において、金属酸化物前駆体の縮合速度を制御し、球状体の金属酸化物中空粒子を形成させる点において、必要に応じて酸性触媒を使用される。具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機および有機酸類などが挙げられる。反応性の観点から、比較的穏やかに反応が進行する塩酸、硝酸等の酸触媒を使用することが好ましい。
酸性触媒(V)を添加する際は混合物のpHを確認しながら添加することができる。この混合物のpHとしては、1〜5の範囲に調整することが好ましく、2〜4の範囲に調整することがさらに好ましい。
このようなpH範囲に調整することで、効果的に金属酸化物前駆体の縮合速度をコントロールすることができる。
[その他の成分]
本実施形態の工程(1)においては、カチオン界面活性剤(Z)を混合物に含ませることが必須であるが、本発明の目的を損なわない限りにおいては、他の添加剤を混在させることもできる。
[工程(2)]
工程(2)においては前記工程(1)において得られた混合物中に、金属酸化物前駆体(W)を混合しゾル−ゲル反応を行い、有機無機複合体粒子を得る。
[金属酸化物前駆体(W)]
金属酸化物前駆体としては、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硝酸塩、金属硫酸塩等が挙げられる。
本実施形態における金属アルコキシドは、下記式(12)で表されるものを指す。
(R12)xM(OR13)y (12)
式中、R12は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。R13は、炭素数1以上6以下、好ましくは炭素数1以上4以下の低級アルキル基を表す。xおよびyは、x+y=4かつ、xは2以下となる整数を表す。Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、光学材料等として利用する観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。中でも珪素化合物は、比較的安価で入手しやすく、反応が緩やかに進行するため、工業的な利用価値が高い。また、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物は、水および触媒の添加により、ゾル−ゲル反応することで、後述する金属酸化物となる化合物であってもよい。
具体例を挙げると、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、これらに対応するアルコキシアルミニウム、アルコキシジルコニウム、アルコキシチタンが挙げられる。
さらに、これらの金属アルコキシドに加えて、以下1)〜4)に示すようなR12に各種官能基をもつ金属アルコキシドを使用することもできる。
1)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物
2)3−グリシドキシプロピルプロピルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルプロピルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基とアルコキシシリル基とを有する化合物
3)3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基とアルコキシシリル基とを有する化合物
4)3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基とアルコキシシリル基とを有する化合物
本実施形態において、金属アルコキシドとしては、上記式(12)において、Mが珪素(Si)であるアルコキシシラン、Mがジルコニウム(Zr)であるアルコキシジルコニウム、Mがアルミニウム(Al)であるアルコキシアルミニウムおよびMがチタン(Ti)であるアルコキシチタンが好ましい。
金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、これらの1種以上の金属アルコキシドに酸性触媒(V)を用いて部分的に加水分解されたものが、重縮合することにより得られる化合物であり、たとえば金属アルコキシドの部分加水分解重縮合化合物である。
本実施形態において、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物としては、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物、およびアルコキシチタンの縮合物が好ましい。
本実施形態における金属ハロゲン化物としては、下記式(13)で表されるものを用いることができる。
(R14)xMZy (13)
式中、R14は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。ZはF、Cl、Br、Iを表す。xおよびyは、x+y≦4かつ、xは2以下となる整数を表す。Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、光学材料等の幅広い用途に利用することができる観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。
具体例を挙げると、テトラクロロ−ジメチルジシラン、クロロプロピルジクロロメチルシラン、クロロメチル(ジクロロ)メチルシラン、ジ−tert−ブチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジクロロ(メチル)−n−オクチルシラン、ジクロロ(メチル)フェニルシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジヘキシルシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロエチルシラン、ジクロロヘキシルメチルシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、テトラクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、フェニルトリクロロシラン、テキシルトリクロロシラン、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロ(プロピル)シラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロシラン、トリクロロビニルシラン、これらに対応するフロロシラン類、ブロモシラン類、ヨードシラン類、および、これらに対応するハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化バリウム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化マンガン及びそれらの水和物が挙げられる。
本実施形態において、金属アセテートとしては、酢酸コバルト、アセト酢酸コバルト、酢酸リチウム、アセト酢酸リチウム、酢酸鉄、アセト酢酸鉄、酢酸マンガン、アセト酢酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。金属硝酸塩としては、硝酸コバルト、硝酸リチウム、硝酸鉄、硝酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。金属硫酸塩としては、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸インジウム、硫酸亜鉛、硫酸セレン、硫酸アンチモン、硫酸スズ、硫酸イットリウムあるいはそれらの水和物が挙げられる。
成分(W)として、本実施形態の用途において金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物が好ましく、金属アルコキシドとしてはアルコキシシランがより好ましく、特に取り扱いが容易であることから、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)が特に好ましい。
[成分(X)〜成分(W)の混合割合]
非水溶性ポリマー粒子(X)と金属酸化物前駆体(W)の混合比率は特に制限されるものでは無いが、重量比で1:10〜10:1が好ましい。成分(X)が多い場合、金属酸化物の存在比が低下するため中空構造の制御が難しくなり、壁が薄くなるため機械的強度が低下する。成分(W)が多い場合は空孔の存在する割合が低くなるため、表面積、空孔率が小さくなり中空としての性能が期待できない。水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)は金属酸化物前駆体(W)100重量部に対して30重量部以上100000重量部以下が好ましく、より好ましくは50重量部以上50000重量部以下である。成分(Y)の割合が低いと粒子が凝集しやすくなり、多い場合は生産効率の点から好ましくない。なお、成分(Y)中の水と溶媒の割合は特に制限されるものでは無いが水の割合が10〜100%が好ましい。水が少ないと金属酸化物前駆体縮合物のゾル−ゲル反応速度が著しく低下する。前述の通り、非水溶性ポリマー粒子(X)とカチオン界面活性剤(Z)の混合比率は重量比で10:1〜1:10であり、好ましくは8:1〜1:8である。この範囲に調整することで、金属酸化物前駆体を適度に引き付け、効果的に非水溶性ポリマー粒子の表面上に金属酸化物層構造の形成を行うことができ、円滑に非水溶性ポリマー(コア)−金属酸化物(シェル)によるコア−シェル構造の形成を行うことができると推察される。
酸性触媒(V)は金属酸化物前駆体(W)100重量部に対して10重量部以上1000重量部以下が好ましい。成分(V)の割合をこの範囲に制御することで、有機無機複合体粒子の粒径を過度に増大させることなく、ゾル−ゲル反応を円滑に行うことができる。
なお、超音波(US)処理などの物理的処理により金属酸化物前駆体縮合物のゾルーゲル反応速度の促進することができる。その場合、成分(V)は必須ではない。超音波がゾルーゲル反応を促進させる機構は必ずしも明確ではないが超音波により生成するキャビテーション(空洞化現象)が関与しているものと思われる。なお、超音波の好ましい周波数範囲は20〜10、000kHzである。
好ましい照射時間としては好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上である。
成分(W)のゾル−ゲル反応の好ましい反応温度は、たとえば1℃以上200℃以下であり、好ましくは10℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上100℃以下である。反応温度をこの範囲に設定することにより、適度な反応速度を担保することができ、粒子径や形状にばらつきをもたらすことなく、有機無機複合体粒子へと導くことができる。反応時間は収率、生産効率の点から10分以上72時間以下が好ましく、より好ましくは1時間以上24時間以下である。成分(W)のゾル−ゲル反応は大気圧下で進行するが、オートクレーブなどを用いて高圧下で行っても構わない。
金属酸化物前駆体縮合物のゾル−ゲル反応が進行することにより有機無機複合体粒子が形成する。図1は、実施の形態に係るコアーシェル構造を有する有機無機複合体粒子を示す模式断面図である。
得られた有機無機複合体粒子は遠心分離、限外濾過のよる濃縮などの方法により反応液中から取り出される。取り出された有機無機複合体粒子はゾル−ゲル反応を完結させるため、ゾル−ゲル反応用触媒、水分を有機溶媒により洗浄除去し、その後充分に乾燥する。なお、ゾル−ゲル反応が完結した状態とは、理想的には全てがM−O−Mの結合を形成した状態であるが、一部アルコキシル基(M−OR)、M−OH基を残すものの、固体(ゲル)の状態に移行した状態を含むものである。
[工程(3)]
工程(3)では有機無機複合体粒子から非水溶性ポリマー粒子を除去し、金属酸化物中空粒子を調製する。
非水溶性ポリマー粒子を除去する方法としては、焼成により分解除去する方法、VUV光(真空紫外光)、遠赤外線、マイクロ波、プラズマを照射して分解除去する方法、溶剤や水を用いて抽出除去する方法などが挙げられる。焼成により分解除去する場合、好ましい温度は200℃〜1000℃、より好ましくは300℃〜700℃である。焼成温度が低すぎる場合、非水溶性ポリマー粒子が除去されず、一方高すぎる場合、金属酸化物の融点に近くなるため細孔が崩れる場合がある。焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない。VUV光を照射して分解除去する場合、VUVランプ、エキシマレーザー、エキシマランプを使用することができる。空気中でVUV光を照射する際に発生するオゾン(O)の酸化作用を併用しても構わない。マイクロ波としては、2.45GHzまたは28GHzの周波数いずれでも構わない。マイクロ波の出力は特に制限されず非水溶性ポリマー粒子が除去される条件が選ばれる。
溶剤や水を用いて抽出を行う場合、例えば、溶剤としてはエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどを使用することができる。抽出の操作は、加温下で行っても良い。また超音波(US)処理を併用しても良い。なお、抽出操作を行った後は細孔に残存する水分、溶剤を取り除くため減圧下で、熱処理を行うのが好ましい。
金属酸化物中空粒子は、溶剤、水への分散安定性を向上させるため、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを共存させても良い。
金属酸化物中空粒子は、溶剤、水への分散安定性を向上させるため、あるいはバインダー樹脂との馴染みを良くし機械的強度や耐水性を向上させるために、シランカップリング剤に代表される有機珪素化合物(表面処理剤)で表面処理しても良い。
表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。特に重合性単量体がカチオン重合成単量体である場合、カチオン重合性の官能基を有するシランカップリング剤である3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン等が望ましい。上記シランカップリング剤は1種類あるいは2種類以上を合わせて用いることができる。
[金属酸化物中空粒子の評価方法]
本実施形態で得られる金属酸化物中空粒子の粒子径および粒子径分布は水中に分散させた粒子を動的光散乱法(粒度分布計/ナノトラックWAVE)にて粒子径の体積分布を測定することができる。
金属酸化物中空粒子の内径はTEM観察により決定することができ、TEM画像から任意に50個の粒子を抽出し実測した内径の平均値として求めることができる。
金属酸化物中空粒子の比表面積は窒素吸着法で測定でき、具体的には日本ベル社製表面積測定装置BELSORP−maxを用いて測定することができる。
<樹脂組成物>
本実施形態の金属酸化物中空粒子は、後述する様々な用途にそのまま用いることができ、さらに金属酸化物中空粒子とバインダー樹脂とを含む樹脂組成物として用いることもできる。以下、樹脂組成物について説明する。
<バインダー樹脂>
本実施形態においてバインダー樹脂は、金属酸化物中空粒子間を結合しうる、あるいは金属酸化物中空粒子を均一に分散させる媒体となりうるものをいう。
本実施形態で使用しうるバインダー樹脂に特に制限はない。例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂、紫外線等の光の照射により硬化する光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。なかでも造膜性を有するポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系の樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、環状脂肪族型、ノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型等の各種のエポキシ樹脂が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂としては、オルソフタル酸系、イソフタル酸系、テレフタル酸系、脂環式不飽和酸系、脂肪式飽和酸系、ビスフェノール系、含ハロゲン酸系、含ハロゲンビスフェノール系の各種の不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。フェノール樹脂としては、レゾール型、ノボラック型等のフェノール樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロックコポリマー樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリビニルアセタール樹脂(PVB)、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリサルホン樹脂、非晶アリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、シンジオ系ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、α−オレフィンコポリマー樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマー樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソールコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂等が挙げられる。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体等が挙げられる。
造膜性を有するポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系の樹脂としては、粒子径10〜300μmのポリマー粒子であり、乾燥後、室温または100℃以下の加熱により透明な塗膜を形成するものが好ましい。
上記のバインダー樹脂の中では、金属酸化物中空粒子の分散性や汎用性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、水溶性樹脂、及び前記の造膜性を有する樹脂が好ましい。バインダー樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
バインダー樹脂の重量平均分子量は、200〜100,000が好ましく、500〜80,000がより好ましい。
断熱性の性能発現の観点から、バインダー樹脂の含有量は、30〜95重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましく、本実施形態の金属酸化物中空粒子の含有量は70〜5重量%が好ましく、60〜10重量%がより好ましい。
金属酸化物中空粒子のバインダー樹脂への分散方法は特に限定されず、公知の方法が適用でき、例えば以下のような分散方法を用いることができる。
なおバインダー樹脂と有機溶媒、水等の分散媒を混合してエマルジョンにして用いてもよい。
(1)バインダー樹脂(またはそのエマルジョン)、金属酸化物中空粒子を、必要に応じ溶剤及び/又は分散剤の存在下で混練機により溶融混練し、バインダー樹脂中に金属酸化物中空粒子(軽量化充填剤)が分散したマスターバッチを得る方法。
混練機としては、ビーズミル混合機、3本ロールミル混合機、ホモジナイザー混合機、ラボプラストミル混合機などが使用できる。
(2)水中に分散している金属酸化物中空粒子を、処理剤を添加して湿式処理を行なった後、溶剤置換した金属酸化物中空粒子オルガノゾルをバインダー樹脂(またはそのエマルジョン)に添加・混合する方法。
処理剤としては、前記のシランカップリング剤に代表される有機珪素化合物(表面処理剤)あるいはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
<フィルム、塗膜>
本実施形態の樹脂組成物からフィルムまたは塗膜を得ることができる。このフィルムまたは塗膜の熱伝導率は、0.1W/mK以下であることが好ましく、より好ましくは0.05W/mK以下である。これにより、断熱効率が向上できる。また、このフィルムまたは塗膜の乾燥時厚みが10μmの時のHAZE値は、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。これにより、透明性の高いフィルム、または塗膜が得られる。
フィルムまたは塗膜の作成方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができるが、例えば、以下のようにして形成される。
金属酸化物中空粒子を含む塗料を、ガラス基盤上にバーコーターを用い厚みを調節しコートする。オーブンにより50℃〜100℃の温度で1時間〜24時間乾燥させた後、形成されたフィルムをガラス基盤から剥がし取り、金属酸化物中空粒子含有フィルムまたは塗膜を得る。
本実施形態のフィルムまたは塗膜の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により測定することができる。また、本実施形態のフィルムまたは塗膜のHAZE値は、フィルムまたは塗膜の乾燥時の厚みを10μmとし、日本電色工業社製 NDH4000により測定することができる。フィルムの屈折率はアッベ屈折計により、また薄い塗膜の屈折率はエリプソメーターにより測定することができる。
<用途>
本実施形態の金属酸化物中空粒子は、医薬(DDS:ドラッグデリバリーシステム)、分子プローブ、触媒、吸着材料、センサー、塗料、インク等に用いることができる。
本実施形態の金属酸化物中空粒子を含む樹脂組成物は、プリント基板等の低誘電率材料、機能性分子を内包した特殊塗料またはインク等に用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物から得られるフィルムまたは塗膜は、自動車、住宅、ビル等の窓ガラス断熱フィルムまたは断熱塗料等の断熱材料、ディスプレー、タッチパネル等の反射防止フィルム等に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の合成例)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSC(示差走査熱量測定)を用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)の合成例)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)を合成した。
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cmG加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記一般式(14)で示される化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)を得た。
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、NaWO0.85g(2.6mmol)、CH(nC17NHSO0.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)の白色固体96.3gを得た(収率99%,ポリオレフィン転化率100%)。
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった(末端エポキシ基含有率:90mol%)。
H−NMR:δ(CCl)0.88(t,3H,J=6.92Hz),1.18−1.66(m),2.38(dd,1H,J=2.64,5.28Hz),2.66(dd,1H,)J=4.29,5.28Hz),2.80−2.87(m,1H)
融点(Tm)121℃
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(I)(Mn=1223、下記一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R=R=水素原子、Y、Yの一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
H−NMR:δ(CCl)0.88(t,3H,J=6.6Hz),0.95−1.92(m),2.38−2.85(m,6H),3.54−3.71(m,5H)
融点(Tm)121℃
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体(I)20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075))を得た。
また、上述の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)の調製方法のエチレンオキシドの添加量を18.0重量部に変更することで、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)(Mn=2446、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075))を得た。
T−33、T−50共に、R=R=水素原子、X、Xの一方が一般式(6)で示される基(X11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q=Q=エチレン基、X=X10=ポリエチレングリコール基)である。
H−NMR:δ(CCl)0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),2.80−3.20(m),3.33−3.72(m)
融点(Tm;T−33)−16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
融点(Tm;T−50)−16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
<末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製例>
(20重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液の調製)
前記合成例で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)10重量部と溶媒(C)の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系を動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「マイクロトラックUPA-EX150(日機装株式会社製)」にて粒子径を測定した結果、体積50%平均粒子径は0.018μmであった(体積10%平均粒子径0.014μm、体積90%平均粒子径0.022μm)。得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。また、前記合成例で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)もT−33と同様に水分散液を調製した。得られた分散系を上記と同様の条件にて粒子径を測定した結果、体積50%平均粒子径は0.017μmであった(体積10%平均粒子径0.013μm、体積90%平均粒子径0.024μm)。得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。
(実施例1)
15重量%に調製した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)水分散液0.42mlと臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)0.015gを予め60mlの水に分散させ30分撹拌混合した。酸触媒として塩酸を徐々に加え、溶液のpHを2.3程度に調整した。引き続き、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5gを加えた。混合液の温度を80℃に昇温し3時間撹拌した。その後80℃のオーブン中に24時間保管した。得られた液を遠心分離し、得られた固形物を水とエタノールで3回洗浄し、オーブンにて充分乾燥させた。得られた粉体を、電気炉を用い600℃、4時間の条件で焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体粒子を除去することにより目的とするシリカ中空粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が20nm、D90/D50が1.33であり、TEM観察(図3)から内部に平均直径18nmの空孔を有するシリカ中空粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積432m/g、空孔率が1.2cm/gであることがわかった。
(実施例2)
15重量%に調製した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)水分散液0.42mlと臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)0.015gを予め20mlの水に分散させ30分撹拌混合した。引き続き、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5gを加えた。引き続き混合液を超音波処理装置Elmasonic S 120 を用い、37kHzの条件で超音波(US)処理を15分間行った。その後、40℃のオーブン中に24時間保管した。得られた液を限外濾過し、得られた固形物を水とエタノールで3回洗浄し、オーブンにて充分乾燥させた。得られた粉体を、電気炉を用い600℃、4時間の条件で焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体粒子を除去することにより目的とするシリカ中空粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が20nm、D90/D50が1.38であり、TEM観察(図4)から内部に平均直径18nmの空孔を有するシリカ中空粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積404m/g、空孔率が0.8cm/gであることがわかった。
(実施例3)
15重量%に調製した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)水分散液0.68mlと臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)0.015gを予め20mlの水に分散させ30分撹拌混合した。酸触媒として塩酸を徐々に加え、溶液のpHを2.3程度に調整した。引き続き、テトラエトキシシラン(TEOS)0.78gを加えた。混合液の温度を80℃に昇温し3時間撹拌した。その後80℃のオーブン中に24時間保管した。得られた液を遠心分離し、得られた固形物を水とエタノールで3回洗浄し、オーブンにて充分乾燥させた。得られた粉体を、電気炉を用い600℃、4時間の条件で焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体粒子を除去することにより目的とするシリカ中空粒子を得た。
(実施例4)
15重量%に調製した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)水分散液0.42mlと臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)0.015gを予め20mlの水に分散させ30分撹拌混合した。引き続き、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5gを加えた。引き続き混合液を超音波処理装置Elmasonic S 120 を用い、37kHzの条件で超音波(US)処理を15分間行った。その後、40℃のオーブン中に24時間保管した。得られた液を限外濾過し、得られた固形物を水とエタノールで3回洗浄し、オーブンにて充分乾燥させた。得られた粉体を、電気炉を用い600℃、4時間の条件で焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体粒子を除去することにより目的とするシリカ中空粒子を得た。
(比較例1)
臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を加えない以外は、実施例1と同様の方法でシリカ中空粒子を得た。TEM観察(図5)から中空構造ではない粒子が多数観察された。
本発明の製造方法によれば、比較的穏やかな条件にて粒径の制御された有機無機複合体粒子を調製することができ、これにより、平均粒子径が小さく、また粒子径分布の狭い金属酸化物中空粒子を得ることができる。
このようにして得られた金属酸化物中空粒子は、樹脂に混合しても透明性に優れるため、光学材料、低誘電率材用、断熱材料に適用でき、また、粒子そのものでも医薬(DDS:ドラッグデリバリーシステム)、分子プローブ、触媒、吸着材料、センサー、塗料、インク等に新しく応用できる材料として期待される。

Claims (5)

  1. 水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下である非水溶性ポリマー粒子(X)およびカチオン界面活性剤(Z)を含み、重量比(X):(Z)が10:1〜1:10である混合物を得る工程(1)と、
    前記混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程(2)と、
    前記有機無機複合体粒子から前記非水溶性ポリマー粒子(X)を除去する工程(3)を含む、体積50%平均粒子径が10nm以上50nm以下である金属酸化物中空粒子の製造方法であって、
    前記非水溶性ポリマー粒子が、下記一般式(1)で表され、数平均分子量が2.5×10 以下である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体からなる粒子であり、
    (式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。R およびR は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。X およびX は、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。)
    前記カチオン界面活性剤(Z)が臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)または塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)である、金属酸化物中空粒子の製造方法
  2. 前記工程(1)の混合物がさらに酸性触媒を含む、請求項1に記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
  3. 前記工程(2)が、前記混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該混合物を超音波処理し、次いで該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程である、請求項1または2に記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
  4. 前記一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体のXおよびXが、同一または相異なり、一般式(2)
    (式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、Xはポリアルキレングリコール基、または、一般式(3)
    (式中、Rはm+1価の炭化水素基を表す。Gは同一または相異なり、−OX、−NX(X〜Xはポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表す。mは、RとGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
    または、一般式(4)
    (式中、X,Xは同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
  5. 前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が下記一般式(1a)または一般式(1b)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物中空粒子の製造方法。
    (式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
    (式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
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