JP5736317B2 - コーティング設備のための洗浄方法 - Google Patents

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Description

発明が対象とする技術分野
本発明は、コーティング設備と関連する、特に真空コーティング設備と関連する、洗浄方法に関する。コーティングにあたっては、コーティングチャンバの中で、コーティングすることが望ましくない表面も必然的にコーティングされるのが通常である。そのような面は、たとえばチャンバの一部、コーティングされるべき基板の一部、保持面、その他の副次面である可能性がある。1回または複数回のコーティングの後、労力を費やしてこのような面を洗浄しなければならないのが通常である。このことが特に必要なのは、コーティングにあたって望ましくないコーティングがなされた部分において、たとえば導電性のような表面特性が重要になる場合である。本発明の方法により、このような洗浄が大幅に簡素化される。本件特許出願の枠内において、望ましくないコーティングされた面のことを副次面と呼び、それに対して、望ましいコーティングがなされた面のことを目標面と呼ぶ。
これまでの従来技術
従来技術では、たとえばサンドブラスト、研磨、ブラシング、あるいは機械式な後処理あるいは化学的なコーティング除去プロセスといった種々の方法によって、このような望ましくないコーティングを取り除くことが知られている。こうした方法はどれも業界で広く適用されている、普及した実用技術である。このような望ましくないコーティングの副次面への付着力はしばしば強力であるため、ほぼ全般的に、その除去は非常に時間コストがかかる。少なからぬケースにおいて、1回のコーティングプロセス(バッチ)が終わるたびに副次面を洗浄しなければならない
かも、あらゆる摩擦式の洗浄方法(サンドブラスト、研磨など)は、処理されたコンポーネントにとって追加の強力な材料摩耗を意味している。このことは、追加的に高い維持費用につながる(摩減したコンポーネントの交換)。
さらに、このような材料摩耗はプロセス確実性の低下につながる。その場合、状況によっては、コーティングプロセスに関連する機械的な許容差を守れなくなるからである。
本発明の技術的課題
したがって、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服する方法を提供することが望まれる。具体的には、これに加えて大幅に少ない時間コストで実施することができ、洗浄されるべきコンポーネントの材料摩耗につながることがない、簡素化された副次面の洗浄方法を提供することが望ましい。
一般的な解決法または解決方法の記載
本発明の基本的思想は、コーティングプロセスの前に副次面に前処理を施しておき、これに続くコーティングプロセスのときに副次面へのコーティング材料の付着が、前処理しないときの付着に比べて大幅に減るようにすることにある。このようにして洗浄が大幅に簡素化される。
このような本発明による前処理の要諦は、たとえば適当な「付着防止層」を副次面に塗布することにある。付着防止層は、副次面への付着力が低いという特徴がある。本来のコーティングの後、副次面と、コーティングプロセスで塗布された材料との間に「付着防止層」が存在しているので、コーティング材料の付着が効果的に妨げられる。コーティングプロセスの種類によっては、付着防止層は温度抵抗性、導電性であり、真空技術面から懸念がないのがよい。特に真空技術面での懸念のなさは、PVDプロセスのための前提条件である。付着防止層の塗布は、目標面の本来の層の特性にマイナスの影響を及ぼさないのが好ましい。
発明の詳細な説明
次に、実施例と図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
本発明に基づく前処理のプロセスを示す概略図である。 マスキングステンシルの利用例を示す概略図である。 コーティングプロセス後の簡素化された洗浄プロセスを示す概略図である。 付着防止層とコーティングとを備える表面の断面を示す概略図である。
以下の説明はPVDプロセスに限定しているが、それによって本発明の範囲をそうしたプロセスだけに限定しようとするものではない。
このようなPVDプロセスにとって重要なのは、付着防止層が真空適合的なことである。しかしこのことは、結合剤またははこれに類する補助剤が付着防止層に存在しないことを意味している。
発明者らは、副次面へ付着防止層を塗布するときに、易揮発性の溶剤中の粉末からなる懸濁液が適当な混合比率で適用されれば、上記を実現できることを見出している。易揮発性の溶剤は、使用する粉末や処理される表面と化学結合をしてはならない。懸濁液の支持媒体として揮発性溶剤を使用することで、吹付けプロセスの直後に溶剤がすでに完全に気化しており、引き続いて、わずかに付着した粉末層が表面に残ることが保証される。溶剤としては、たとえばイソプロパノールが非常に好適である。
さらに発明者らは、純粋なグラファイトが粉末材料として適していることを見出している。グラファイト粉末は、特に真空中で十分に温度抵抗性と導電性があり、真空適合的であり、付着防止特性を満たしており、したがってPVDプロセスで使用することができる。
塗布は、たとえばスプレーガンによる吹付けによって行うことができる。このことはガスを援用することなく行うことができ、またはガスを援用して行うことができる。後者の場合、特に空気、窒素、あるいはCOが適している。吹付け方法に関連する影響要因(たとえば吹付け圧、スプレーガンのノズルサイズ、懸濁液の混合比率、吹付け間隔と吹付け時間など)は、多数の用途について適切な厚みの均一な層塗布を保証するために、広い範囲で適応調節することができる。用途に応じて、これ以外の塗布方法も可能である(刷毛塗り、浸せきなど)。
塗布層は、処理される副次面へPVDプロセス中に塗布された層材料を、PVDプロセス後に、簡単な吸取りおよび/または拭取りによって実質的に完全に除去できることを保証する。それ以外の後処理は必要なく、次の適用のための新たな付着防止層をすぐに副次面へ再び設けることができる。
驚くほど優れた適用の有効性と簡易性に基づき、たとえばPVDプロセスの周辺で次のような多彩な用途が考えられる:
アーク蒸着との関連で、いわゆる閉じ込めリングがしばしば用いられる。これはコーティング材料を有している蒸発源のターゲットを取り囲み、アークがターゲット表面の領域に限定されるように作用する。閉じ込めリングはターゲット材料の近傍にあるため、PVDコーティングプロセスのときに強い材料塗布をうけ、その洗浄は従来、たとえばサンドブラストや切削による後加工といったきわめて攻撃性のある手法を必要としていた。本発明に基づくグラファイト粉末の塗布により、必要な導電性が維持される。PVDプロセス中に塗布されるコーティング材料は、グラファイト層の上に載る。この被膜を含めたグラファイト層は、簡単な仕方で閉じ込めリングから除去することができる。
コーティングされるべき基板をコーティング中に保持する基板ホルダについても、同様のことが当てはまる。コーティングされるべき基板に空間的に近いため、基板ホルダは強くコーティングされる。コーティングの後、基板ホルダは従来サンドブラストによって時間集約的に、かつそれに伴ってコスト集約的に処理されなくてはならなかった。サンドブラストは高い摩耗につながる。そのために、プロセス確実性の低下に加えて、高価なホルダを頻繁に取り換えなくてはならなかった。本発明によると基板ホルダが付着防止層で前処理されるので、PVDプロセス後に簡単かつ迅速に、摩耗を生じることなくこれを洗浄することができる。
同様のことはPVD設備のカルーセルや蒸着防護板についても当てはまる。プラズマ放電を準備するためのアノード、たとえばスパッタソース、低電圧アーク放電、エッチング装置などを設備が追加的に含んでいるとき、これらを本発明により付着防止層の塗布によってコーティングステップ前に前処理することができる。
以下においては具体的な実施例として、コーティング設備に設けられたエッチング装置の一部である、コーティングされたアノード面を洗浄するために適用される本発明の方法について説明する。
この場合に生じる問題点は、PVDプロセスのときに、固定的に付着するコーティング材料でアノード面が強く被覆されることにある。後続のコーティングプロセスでその上にさらにコーティングがなされると、時間の経過とともに非常に厚くきわめて除去しにくい(時間コストがかかる)堆積物が生じる。
導電性の低い層または導電性でない層がコーティングされると、アノードの上の導電性のない堆積物が、すでに1回のコーティングプロセス後にアノードの機能を保証することができなくなり、そのために、このようなプロセスでは1回のバッチの後ごとにアノードの洗浄がどうしても必要になるという結果をもたらす可能性がある。
こうした洗浄を実施するには、たとえば次のような手順が行われる。
前提となるのは堆積物や残留物のないアノードであり、すなわち、初回のコーティングプロセス前の、または洗浄処理後の「未使用状態の」アノードである。
第1のステップでは、本実施例では、本例では本件明細書で定めた定義に基づく副次面である、付着防止層でコーティングされたアノード表面のすぐ近辺が被覆および/またはマスキングされる。ここでは一例として、適当な切取部と適当な幾何学形状とを有する薄板ステンシルが考慮の対象となる。ステンシルは、希望する領域だけに付着防止層が施されることを保証する。
第2のステップでは、本例では吹付け方法により付着防止層がスプレーガンで塗布される。このとき付着防止層材料を含んでいる懸濁液が、マスキングされたアノードに吹き付けられる。
吹き付けられるべき懸濁液を作成するために、グラファイト粉末をイソプロパノールに入れてある。説明している例では、アノードは垂直方向に取り付けられた金属表面である。したがって、余剰の溶剤の表面への滴下が回避されるように、吹付け間隔と塗布量を選択することを留意すべきである。この場合、容易に揮発する溶剤がエアロゾルとして、すでに吹付けノズルと処理される表面との間でほとんど気化することができると非常に好ましい。そのようにして、グラファイト粉末による最善の被覆が得られる。ただしそのためには、溶剤とグラファイト粉末の混合比率も一定の役割を演じる。滴下を防ぐためには、できるだけ高いグラファイト割合が存在しているのがよい。しかしながら、スプレーガンのノズルが詰まらないようにも留意せねばならない。グラファイト粉末10gに対して50mlから150mlのIPAが好適であることが判明している。グラファイト粉末10gに対して100mlのイソプロパノー(IPA)を使用するのが好ましい。
使用するグラファイト粉末は、添加剤や結合剤その他の添加物をほぼ含んでいないのがよい。本例では99.9%の純度が適用されている。グラファイト粉末の粒度については、0.2μmから150μmが最大サイズとして好都合であることが判明している。粒が20μmよりも大きくないグラファイト粉末を使用するのが好ましい。
スプレーガンとしては、市販のカップ型スプレーガンを使用している。ノズルサイズはたとえば0.3mmから2mmの間であり、好ましくは0.8mmである。
吹付けプロセスを駆動するための媒体としては、圧縮空気が0.2バールから1.0バールの間の圧力で、好ましくは0.5バールから0.7バールの間の圧力で適用される。圧縮空気は、懸濁液およびこれに伴って付着防止層へ汚れを入れないために、脱油されていてかつできるだけ粒子を含まないのがよい。特に、スプレーガンの空気圧系が汚れを取り込まないように留意する。
毎回の使用前に懸濁液を均一化する。これは振動させたり揺らしたり、超音波処理その他の当業者に周知の手法によって行うことができる。
50mmから250mmの間、理想的には100mmから200mmの間の吹付け間隔を適用する。すでに上で述べたとおり、広い吹付け間隔は、溶剤がすでに飛行時間中に気化する可能性が与えられるという意味で好ましい。ただし広すぎる間隔は、空間的な拡散が広くなりすぎることにつながる。
付着防止層の塗布されるべき層厚は、本例では0.05mmから2.0mmの間である。本例では「見た目にまんべんなく」という基準が有用であり、その特性に基づいて好ましいことが判明している。このことは、少なくとも副次面そのものがグラファイト表面でなければ、グラファイト粉末の見た目の特性に基づいて良好に実施することができる。付着防止層の塗布は、本例では複数回の、好ましくは均等に行われる吹付け工程で行われる。
付着防止層の塗布後、次のことに留意するのが好ましい:粉末層は実質的に粘着力によって表面に付着しているので、吹付け後には、コーティングされた副次面への接触はできるだけ避けるのがよい。したがって、(可能な場合には)各コンポーネントを組み付けが完成した状態で処理するか、もしくは適当な装置および/または工具(「ハンドリング補助具」)を使用して、付着防止層の損傷が回避されるようにするのが好ましい。
第3のステップでは、マスキングのために利用する薄板ステンシルが取り外される。再度付言しておくと、どのようなケースでもこうしたマスキングが必要なわけではないが、本例ではこれが適用されている。
以上をもって前処理が完了し、本来のPVDコーティングを通常の仕方で実施することができる。すなわち、コーティングチャンバに工作物が装填され、チャンバが閉じられて排気され、たとえばアーク蒸着のようなコーティングが実施され、引き続いてコーティングチャンバが換気されて開かれる。本発明によるアノードの前処理は、不都合な影響をコーティングに及ぼすことがない。
コーティングチャンバを開いてから、上に堆積している堆積物とともに付着防止層を、たとえば工業用の掃除機を用いて単純に吸い取る。必要または希望がある場合には、アノードをさらに洗浄用アルコールですすぐことができる。
次のコーティングプロセスの前に、再びアノードをステップ1から3に準じて前処理する。
理想的な場合、以上の手順をコーティングプロセスが終わるたびに実施する。ただし、1回のコーティングプロセス後の付着防止層の吸取りを省略し、複数回のコーティングサイクルの後にだけ付着防止層を更新することも可能である。
PVDコーティング設備および真空室内に配置されたIETアノード(IET=Innova etching technology)の前処理を例にとって、本発明について説明してきた。本例では、従来20分の洗浄コストを数分まで短縮することができた。さらに、本発明の方法によってアノードが保全される。本発明に基づく前処理は、特にたとえば真空コーティング法など、これ以外のコーティング方法でも有利に適用することができる。そのとき、必要な場合には付着防止層の材料を適合調節することができる。
上記以外の適用分野もすでに挙げたとおりである。あるいは、特に本発明はコーティング基板においても、たとえば基板表面の一部だけをコーティングしたいときにも、好ましく適用することができる。従来、コーティングされるべきでない基板の表面部分は保持部によって遮蔽されなくてはならなかった。それに対して本発明の方法では、コーティングされるべきでない基板表面の部分を付着防止層で被覆し、コーティング後にこれを簡単な仕方で吸い取ることができ、および/または拭き取ることができる。
頻繁に反復される同種類の付着防止層処理(たとえばカルーセル、基板ホルダ、複数の基板など)について、本発明の1つの発展例では、自動式に作動する吹付け装置の利用が好ましい。
本発明は大まかに次の各点にまとめることができる:
点1:コーティング方法のための前処理方法において、コーティング設備の副次面をコーティングプロセスの前に前処理して、後続するコーティングプロセスのときに副次面へのコーティング材料の付着が前処理しないときの付着に比べて大幅に減るようにすることを特徴とする前処理方法。
点2:前処理の過程で付着防止層が副次面に塗布されることを特徴とする、点1に記載の方法。
点3:付着防止層は揮発性溶剤中の、特に易揮発性溶剤中の粉末からなる懸濁液を含んでいることを特徴とする、点2に記載の方法。
点4:粉末材料はグラファイト粉末であり、特に実質的に純粋なグラファイト粉末であることを特徴とする、点3に記載の方法。
点5:付着防止層はスプレーガンによって吹き付けられることを特徴とする、点2から4のいずれか1つに記載の方法。
点6:点2から5のいずれか1つに記載の前処理と、これに後続するコーティング方法とを含んでいる方法において、1回または複数回のコーティングサイクルの後に付着防止層が除去されることを特徴とする方法。
1 カップ型スプレーガン
2 圧縮空気供給部
3 懸濁液
4 スプレーノズル
5 副次面
6 マスキングステンシル
7 噴霧
8 掃除機ノズル
9 堆積物が付いている付着防止層
10 付着防止層
11 PVDプロセスに基づく堆積物

Claims (2)

  1. PVDコーティング方法のための前処理方法において、コーティング設備の副次面をコーティングプロセスの前に前処理して、後続するコーティングプロセスのときに副次面へのコーティング材料の付着が前処理しないときの付着に比べて大幅に減るようにし、
    前処理の過程で付着防止層が副次面に塗布され、前記付着防止層はIPA溶液中に純粋な粉末を含む懸濁液を含み、
    10グラムのグラファイト粉末が50−150cm3のIPA中に含まれ、
    前記グラファイト粉末の最大粒子径は0.2μmから150μmであり、
    前記付着防止層はスプレーガンの手段によってマスキングされたアノードに吹き付けられ、
    吹き付けプロセスで駆動するための媒体は、脱油されており、粒子を含まない圧縮空気であることを特徴とする、前処理方法。
  2. 請求項1に記載の前処理と、これに後続するコーティング方法とを含んでいる方法において、1回または複数回のコーティングサイクルの後に付着防止層が除去されることを特徴とする方法。
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