以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置(すなわちいわゆる専用機)に対しても適用される。
[第1の実施の形態]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納されて構成されている。
筐体2は、少なくとも放射線入射面Rが放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフロント板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、バッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、後述する画像データd等の情報を画像処理用のコンピュータ等の外部装置との間で無線方式で送受信するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。
なお、アンテナ装置39の設置位置は蓋部材38の側面部に限らず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置39を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置39は1個に限らず、複数設けることも可能である。さらに、画像データd等を外部装置との間でケーブル等の有線方式で送受信するように構成することも可能であり、その場合は、ケーブル等を差し込むなどして接続するための接続端子等が放射線画像撮影装置1の側面部等に設けられる。
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する状態で配置されるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、電荷を放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。なお、補助電極72は必ずしも設けられなくてもよい。
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
そして、放射線画像撮影時に、放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線が筐体2の放射線入射面Rから入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波が放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷(電子正孔対)に変換するようになっている。
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC12a等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
図7や図8に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
本実施形態では、後述するように、走査駆動手段15は、後述する制御手段22からの指示に従って、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加したり、或いは、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加した状態を維持したりするようになっている。
また、各放射線検出素子7からの画像データd等を読み出す際に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するタイミング等については後で説明する。
図7や図8に示すように、各信号線6は、各読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられている。
増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっており、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされるとスイッチ18eがそれと連動してオフ状態となり、電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とされるとスイッチ18eがそれと連動してオン状態となるようになっている。
増幅回路18では、画像データdの読み出し処理の際に、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)の状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から蓄積されていた電荷が信号線6に放出され、電荷が信号線6を流れて、増幅回路18のコンデンサ18bに流入して蓄積される。
なお、その際、当該放射線検出素子7からの電荷だけでなく、同じ信号線6に接続されている他の放射線検出素子7からTFT8を介してリークする電荷もコンデンサ18bに流入することは、図78で示した通りである。また、図9では、電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフしか記載されておらず、スイッチ18e(図8参照)のオン/オフについては記載されていないが、前述したように、スイッチ18eは電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフと連動してオフ/オン動作する。また、以下の説明においても、電荷リセット用スイッチ18cの動作等のみについて述べる場合があるが、その場合も同様である。
そして、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。
なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。また、増幅回路18をリセットする際には、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされ、それに連動してスイッチ18eがオフ状態となると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電される。そして、放電された電荷がオペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出すことで、増幅回路18がリセットされるようになっている。
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
すなわち、例えば画像データdの読み出し処理の際には、図9に示すように、まず、各読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを制御してオフ状態とされる。その際、電荷リセット用スイッチ18cをオフ状態にした瞬間に、いわゆるkTCノイズが発生し、増幅回路18のコンデンサ18bにkTCノイズに起因する電荷が溜まる。
そのため、図10に示すように、増幅回路18から出力される電圧値が、電荷リセット用スイッチ18cをオフ状態にした瞬間(図10では「18coff」と表示)に、前述した基準電位V0からkTCノイズに起因する電荷の分だけ変化して電圧値Vinに変わる。制御手段22は、この段階で、図9に示すように、相関二重サンプリング回路19に1回目のパルス信号Sp1を送信して、その時点(図10では「CDS保持」(左側)と表示)で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持させる。
続いて、図9に示したように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから1本の走査線5(例えば走査線5のラインLn)にオン電圧を印加してその走査線5にゲート電極8gが接続されているTFT8をオン状態とすると(図9参照。図10では「TFTon」と表示)、これらのTFT8が接続されている各放射線検出素子7から蓄積された電荷が各信号線6を介して増幅回路18のコンデンサ18bに流れ込んで蓄積され、図10に示すように、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じて増幅回路18から出力される電圧値が上昇する。
そして、制御手段22は、所定時間が経過した後、図9に示すように、ゲートドライバ15bから当該走査線5に印加しているオン電圧をオフ電圧に切り替えてその走査線5にゲート電極8gが接続されているTFT8をオフ状態とし(図10では「TFToff」と表示)、この段階で各相関二重サンプリング回路19に2回目のパルス信号Sp2を送信して、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持させる(図10では「CDS保持」(右側)と表示)。
各相関二重サンプリング回路19は、2回目のパルス信号Sp2で電圧値Vfiを保持すると、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データdとして下流側に出力するようになっている。
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データdは、アナログマルチプレクサ21に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データdに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。また、バッテリ41には、図示しない充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
以下、本実施形態における各構成等について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
なお、本発明では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて行われる放射線画像撮影の前から画像データdの読み出し処理を行うようになっており、また、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了した後に、いわゆる本画像としての画像データdの読み出し処理が行われる。
以下では、放射線の照射が終了した後の本画像として読み出される画像データdを、放射線画像撮影前に読み出される画像データdと区別し易いように、画像データDという。また、放射線の照射が終了した後の読み出し処理を、放射線画像撮影前の読み出し処理と区別し易いように、放射線画像撮影後の読み出し処理という。従って、放射線画像撮影前には画像データdが、放射線画像撮影後には画像データDがそれぞれの読み出し処理で読み出される。
[モデルとなる構成]
ここで、本実施形態における各構成等について説明する前に、本実施形態の各構成と対比される対象となる構成について説明する。なお、以下では、この構成をモデル構成と略称する。
このモデル構成では、放射線画像撮影前から、図73に示したように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して画像データdの読み出し処理が行われる。そして、読み出される画像データdの値が監視され、例えば図11に示すように、読み出された画像データdの値が増加して、予め設定された閾値dthを越えた時点(図11中では時刻t1)で、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成される。
そして、図12に示すように、例えば、走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて走査線5の当該ラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことが検出された場合には、その時点で、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxに対するオン電圧の印加を停止し、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオフ電圧に切り替える。そして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積モードに移行する。
そして、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が終了すると、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理が行われ、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加されて、各放射線検出素子7から画像データDが読み出される。
このモデル構成においては、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理においても、また、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理においても、図12に示したように、いずれの場合も、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して読み出し処理が行われる。
その際、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加して各TFT8をオン状態とした後、印加する電圧をオフ電圧に切り替えて各TFT8をオフ状態とするまでの時間、すなわち、図9においてTFT8がオン状態とされている時間(図10では「TFTon」から「TFToff」までの時間。以下、オン時間という。)が、放射線画像撮影後の本画像としての画像データDの読み出し処理の場合と同じオン時間とされる。
また、この場合、図9に示した相関二重サンプリング回路19に送信されるパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔や、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフ動作のタイミングも、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の場合と、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の場合とで同じ送信間隔やタイミングとされる。
しかし、このモデル構成のような構成では、放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率が必ずしも高くならないことは、前述した特許文献6に記載の発明について述べた場合と同様であり、検出効率を高めるための構成が必要となる。
[放射線の照射開始の検出効率の改善等について]
以下、放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を向上させるための本実施形態に係る各構成等について説明する。
[構成1]
上記のモデル構成で検出効率が必ずしも高くならない理由の1つとして、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理におけるTFT8のオン時間が短いことが挙げられる。そこで、例えば図13に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際のTFT8のオン時間を、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際のオン時間よりも長くなるように構成することが可能である。
放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出される画像データdは、前述したように、放射線の照射開始を検出するために用いられるデータであるため、画像データdの値を見て、すなわち閾値dthを越えたか否かを判断して、放射線の照射が開始されたことを検出することができるものであればよい。そのため、画像データdの読み出し処理は、放射線画像撮影後に本画像として読み出される画像データDと必ずしも同じ条件で行われる必要はない。
つまり、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理を、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理におけるTFT8のオン時間やパルス信号Sp1、Sp2の送信タイミング(図9参照)と同じオン時間や送信タイミングで行う必要はない。
また、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了し、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷が各放射線検出素子7内に蓄積された状態で行われる放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理では、図10に示したように、TFT8のオン時間(図10では「TFTon」から「TFToff」までの時間)を長くしても、増幅回路18から出力される電圧値Vfiはさほど大きくならない。そのため、TFT8のオン時間が十分に長ければ、TFT8のオン時間を長くしても読み出される画像データDの値はほとんど変わらない。
それに対して、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理におけるTFT8のオン時間を長くすると、放射線の照射が開始され、放射線が照射されている最中に読み出される画像データdでは、TFT8のオン時間中にも各放射線検出素子7内で放射線の照射により電荷が発生し続けている。そのため、TFT8のオン時間が長くなればなるほど、画像データdの値が増加する。
また、図78を用いて説明したように、放射線が照射されると、上記のように、その最中に画像データdを読み出している放射線検出素子7(図78では放射線検出素子7i)と同じ信号線6に接続されている他の放射線検出素子7からTFT8を介してリークする電荷qの量も増加する。そして、他の放射線検出素子7からリークして増幅回路18のコンデンサ18bに流れ込む各電荷qの量は、TFT8のオン時間が長ければ長いほど多くなる。そのため、この点においても、TFT8のオン時間が長くなればなるほど、画像データdの値が増加する。
そのため、この構成1のように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際のTFT8のオン時間を放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際のオン時間よりも長くなるように構成することで、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データd自体の大きさがモデル構成の場合よりも大きくなり、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を向上させることが可能となる。
なお、上記のように、放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率が向上することで、線欠陥が生じる走査線5の本数を低減することが可能となるが、この点については、後で説明する。
[構成2]
また、上記のように、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データd自体の値を大きくして検出効率を向上させるという観点から言えば、前述した特許文献7に記載された手法も、画像データd自体の値を大きくするための処理であった。
しかし、特許文献7に記載されている技術を応用して、複数の隣接する走査線5に同時にオン電圧を印加して放射線照射の検出効率を高めることになるが、このように構成すると、図80に示したように、線欠陥が走査線5の隣接する複数のラインLに連続して現れてしまう。
そこで、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、走査駆動手段15から、検出部P上で隣接しない複数の走査線5に同時にオン電圧を印加して読み出し処理を行うように構成することで、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データd自体の値を大きくして検出効率を向上させることが可能となる。
具体的には、例えば、走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成する各ゲートIC12aの各端子にそれぞれ128本の走査線5が接続されているような場合、例えば図14に示すように、各ゲートIC12aの1番目の端子に接続されている各走査線5に同時にオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理を同時に行い、次のタイミングでは、各ゲートIC12aの2番目の端子に接続されている各走査線5に同時にオン電圧を印加して読み出し処理を行うように構成することができる。
このように構成すれば、例えば走査駆動手段15のゲートドライバ15bが8個の各ゲートIC12aで構成されている場合には、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データd自体の値が8倍の大きさになる。そのため、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データd自体の値を大きくして検出効率を向上させることが可能となる。
また、検出部P上で隣接しない複数の走査線5に同時にオン電圧を印加して読み出し処理を行うように構成することで、線欠陥となる走査線5が複数生じるようになるとしても、線欠陥が走査線5の隣接する複数のラインLに連続して現れることは的確に抑制される。さらに、走査線5の複数のラインLに同時にオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理を同時に行うように構成することで、1フレーム分の読み出し処理に要する時間が短くな、各走査線5に接続されている各放射線検出素子7内に蓄積される暗電荷等の余分な電荷をより少なくすることが可能となる。
なお、[構成1]で説明したように放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際のTFT8のオン時間を長くする場合も、同様に走査線5の複数のラインLに同時にオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理を行うように構成することが可能である。
[構成3]
上記のモデル構成では、放射線画像撮影前に繰り返し行われる画像データdの読み出し処理により読み出された画像データdを時系列的にプロットすると、図11に示すように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、画像データdの値が大きくなる。
そして、この場合、図11に示したように、閾値dthを予め設定しておき、上記のようにして画像データdの読み出し処理を行って、読み出した画像データdが設定された閾値dthを越えた時点(図中の時刻t1参照)で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
そこで、本実施形態においても、制御手段22は、放射線画像撮影前から、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxに対して、例えば図12或いは図13に示したようにオン電圧を順次印加して画像データdの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出された画像データdの値が閾値dthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
なお、図7等に示したように、画像データdは、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加されるごとに各読み出し回路17からそれぞれ出力される。そして、読み出し回路17は、検出部Pに数千本から数万本設けられた信号線6ごとに1つずつ設けられているため、1回の画像データdの読み出し処理で、数千〜数万個の画像データdが各読み出し回路17から出力される。
そして、数千〜数万個の個々の画像データdについて閾値dthを越えたか否かの判断を行うように構成すると、判断処理の負担が非常に大きなものとなる。そこで、例えば、画像データdの読み出し処理ごとに読み出されるこれらの各画像データdの中から最大値dmaxを抽出し、その画像データdの最大値dmaxが閾値dthを越えたか否かを判断するように構成することが可能である。
このように構成すれば、例えば、放射線が放射線画像撮影装置1の検出部Pの狭い範囲にのみ照射されたような場合(すなわち照射野が絞られて照射された場合)には、放射線が照射されなかった部分では画像データdが上昇しないが、放射線が照射された部分で画像データdが上昇するため、画像データdの最大値dmaxが上昇する。そのため、画像データdの最大値dmaxが閾値dthを越えたか否かを判断することで、放射線の照射の開始を的確に検出することが可能となる。
しかし、放射線検出素子7の中には異常に大きな値の画像データdが読み出される放射線検出素子7がある。また、各読み出し回路17の性能にもよるが、読み出し回路17で発生するノイズが大きい場合もある。このような場合には、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないにもかかわらず、異常に大きな値の画像データdやノイズが重畳された画像データdが閾値dthを越えてしまい、放射線の照射が開始されたと誤検出してしまう虞れがある場合がある。
そのため、そのような場合には、例えば、異常な画像データdが読み出される放射線検出素子7については、予めそのような異常な放射線検出素子7の情報を有しておき、異常な放射線検出素子7から読み出された画像データdについては、上記の放射線の照射開始の判断の対象としないように構成することが可能である。
また、例えば、異常な放射線検出素子7が接続されている走査線5にオン電圧を印加する際に、当該走査線5に印加するオン電圧の電圧値を低くして、異常な放射線検出素子7から異常に大きな値の画像データdが読み出されないように構成することも可能である。
さらに、例えば、所定個の読み出し回路17が設けられた各読み出しIC16ごとに画像データdの平均値或いは合計値等の統計値を算出するように構成し、その平均値や合計値の中から最大値を抽出して、その最大値と閾値dthとを比較するように構成することも可能である。
このように構成すれば、読み出しIC16内には、通常、128個や256個等の多数の読み出し回路17が形成されているため、異常に大きな値の画像データdが他の正常な値の画像データdと平均化されたり合計値が算出される中でいわば希釈され、算出された平均値や合計値はさほど異常に大きな値にならない。そのため、閾値dthを適切な値に設定しておけば、仮に異常に大きな値の画像データdが読み出されても、放射線の照射を誤検出することを防止することが可能となる。
また、上記のように画像データdの平均値や合計値を算出するように構成すると、各読み出し回路17でそれぞれ発生するノイズが、画像データdの平均値や合計値を算出する際に互いに相殺されるため、各読み出し回路17で発生するノイズの画像データdに対する影響を低減させることが可能となる。
このように、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出される画像データdの中から最大値dmaxを抽出したり、画像データdの平均値や合計値の中から最大値を抽出して、その最大値と閾値dthとを比較して放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を向上させることが可能となる。
また、上記のように個々の画像データdの最大値を抽出したり、読み出しIC16ごとの画像データdの平均値や合計値を算出し、その中から最大値を抽出して閾値dthと比較するように構成する代わりに、1回の画像データdの読み出し処理の際に各読み出し回路17で読み出された全ての画像データdの平均値や合計値を算出して、その平均値や合計値と閾値dthとを比較するように構成することも可能である。このように構成すれば、最大値を抽出する処理が不要になる。
なお、画像データd等の平均値と合計値との違いは、合計値を画像データd等の総数で除算する処理を行うか行わないかのみの違いであり、画像データd等を加算するという意味では同じ処理である。従って、以下、平均値のみ或いは合計値のみについて説明する場合も、平均値の代わりに合計値を用いたり、合計値の代わりに平均値を用いるように適宜構成することが可能である。
また、各読み出しIC16ごとに画像データdの統計値として、上記のように画像データdの平均値や合計値のほかに、例えば、各読み出しIC16ごとの画像データdの中央値や最頻値、或いは重み付け平均値、二乗平均値、二乗平均の平方根等の種々の値を用いることが可能である。そして、以下では、統計値として、主に平均値を用いる場合について説明するが、平均値の代わりに、上記の平均値以外の各統計値を用いるように構成することも可能である。
[構成4]
一方、放射線画像撮影装置1に通常の線量の放射線が照射された場合には、読み出し処理で読み出される画像データdは、放射線が照射されていない段階で読み出された画像データdよりも比較的明確に増加するため、放射線の照射開始を検出し易いが、例えば聴器のシュラー撮影等のように、放射線画像撮影装置1に非常に低い線量率(すなわち単位時間あたりの線量)の放射線が照射される場合には、画像データdの増加が明確でない場合もある。
そこで、この構成4では、そのように放射線画像撮影装置1に非常に低い線量率の放射線が照射された場合でも検出効率を向上させて、放射線の照射開始を的確に検出するための構成について説明する。
このように放射線画像撮影装置1に非常に低い線量率の放射線が照射される場合には、画像データdとそれに重畳されるノイズとの比、すなわち画像データdのS/N比が重要な問題となる。画像データdには、種々のノイズが重畳されるが、主なノイズとしては、例えばバイアス電源14(図7参照)の電圧に生じるノイズや、走査駆動手段15の電源回路15aに由来するノイズを挙げることができる。
バイアス電源14は、結線10や各バイアス線9を介して各放射線検出素子7に接続されており、バイアス電源14で発生したノイズが重畳されたバイアス電圧Vbiasが、各放射線検出素子7に印加される。
各放射線検出素子7は第1電極74と第2電極78との間にi層76(図5参照)等が介在する状態であり、一種のコンデンサ状の構造になっているため、寄生容量Cを有している。そして、各放射線検出素子7には基本的にQ=C・(V0−Vbias)で表される電荷Qが蓄積されており、この電荷Qがバイアス電圧Vbiasのノイズでゆらぐ。
すなわち、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷Qにバイアス電圧Vbiasのゆらぎに起因する電荷ノイズが重畳される。バイアス電源14は、バイアス線9等を介して全ての放射線検出素子7に接続されているため、バイアス電圧Vbiasのノイズは、全ての放射線検出素子7に同時に伝わり、バイアス電圧Vbiasのノイズに起因する電荷ノイズが、全ての放射線検出素子7に同時に重畳される。
そのため、走査線5のあるラインLにオン電圧が印加され、走査線5の当該ラインLに接続されている各放射線検出素子7から読み出される画像データdに、バイアス電圧Vbiasのノイズに起因する同じノイズが重畳される。
また、走査駆動手段15の電源回路15a(図7参照)から供給されたオン電圧がゲートドライバ15bを介して走査線5に印加されて、各TFT8のゲート電極8gに印加される。その際、1個の電源回路15aで発生したオン電圧のノイズが、オン電圧が印加されている走査線5に伝達され、当該走査線5を介して、それに接続されている各TFT8に瞬時に伝達される。
そのため、電源回路15aでオン電圧に発生したノイズが、オン電圧が印加されている走査線5に接続されている全てのTFT8に同時に伝達されて、画像データdの読み出し処理の際に、読み出される画像データdに重畳される。
このように、走査線5のあるラインLにオン電圧が印加されて画像データdの読み出し処理が行われた場合、走査線5の当該ラインLに接続されている各放射線検出素子7から読み出される画像データdには、バイアス電圧Vbiasのノイズや電源回路15aのノイズに起因する同じノイズが同時に重畳される。
以上のように、バイアス電圧Vbiasのノイズや走査駆動手段15の電源回路15aで発生したノイズが全ての放射線検出素子7に同時に重畳される。そのため、同じタイミングで読み出された画像データd、すなわち、走査線5のあるラインLにオン電圧が印加されて読み出し処理が行われた場合に走査線5の当該ラインLに接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データdには、同じノイズ成分が重畳される。また、オン電圧が印加される走査線5が切り替えられるごとに、各画像データdに重畳されるノイズ成分は同じように増減する。
そこで、この特性を利用して、例えば、下記のように構成することで、画像データdのS/N比を改善して検出効率を向上させることが可能となる。なお、以下では、各画像データdの読み出しIC16ごとの平均値daveを用いる場合について説明するが、平均値daveの代わりに、個々の画像データdや、各画像データdの読み出しIC16ごとの合計値等の統計値を用いてもよいことは前述した通りである。
[構成4−1]
前述したように、放射線画像撮影装置1に放射線を照射する際、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1、図2参照)側から見た場合、放射線画像撮影装置1のシンチレータ3や検出部Pの全域ではなく、図15に示すようにシンチレータ3や検出部Pの一部に照射野Fが絞られて放射線が照射される場合がある。特に、放射線画像撮影装置1に低い線量率の放射線を照射する場合には、放射線の照射野Fが絞られて照射される場合が多い。
なお、図15では、走査線5は図中の左右方向に、また、信号線6は図中の上下方向にそれぞれ延在するように配線されているものとする。
放射線がこのように照射される場合、放射線の照射野Fに対応する検出部P上の位置、すなわち照射された放射線がシンチレータ3で変換された電磁波が入射し得る位置に設けられた各放射線検出素子7では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、放射線の照射により内部で電荷が発生し、読み出される画像データdの値が大きくなる。
しかし、放射線の照射野Fに対応する検出部P上の位置以外の位置、すなわちシンチレータ3からの電磁波が入射しない検出部P上の位置に設けられた各放射線検出素子7では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されても、当該放射線検出素子7には、シンチレータ3で変換された電磁波が入射しないため、画像データdの値は大きくならない。
そして、前述したように、いずれの位置の放射線検出素子7やTFT8にも、バイアス電源14や走査駆動手段15の電源回路15aで発生したノイズがバイアス線9や走査線5の各ラインL1〜Lxを介して同時に伝達される。そのため、各放射線検出素子7から読み出される画像データdに同じノイズが重畳される。
そこで、これを利用して、制御手段22で、シンチレータ3から照射された電磁波が入射し得る検出部P上の位置(すなわち放射線の照射野Fに対応する検出部P上の位置)の各放射線検出素子7から読み出された画像データdから、シンチレータ3から照射された電磁波が入射しない検出部P上の位置(すなわち放射線の照射野Fに対応する検出部P上の位置以外の位置)に設けられた各放射線検出素子7から読み出された画像データdを差し引いた差分Δdを算出し、算出した差分Δdが、当該差分Δdについて設定された閾値Δdthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
なお、この場合、上記のように、放射線を、放射線画像撮影装置1のシンチレータ3や検出部Pの全域ではなく、シンチレータ3や検出部Pの一部に照射するように、照射野Fを絞って照射することが前提となる。
しかし、この場合、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の照射野Fは、通常、撮影ごとに、撮影の都合上、最も適した放射線入射面R上の位置に設定される。そのため、照射野Fが、図15に示すように放射線入射面Rの中央付近に設定される場合もあるが、シンチレータ3や検出部Pの周縁部付近に対応する位置に設定される場合もあるため、予めシンチレータ3からの電磁波が入射しない放射線検出素子7を特定しておくことができない。
そこで、例えば、制御手段22で、各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdの中から最大値dmaxと最小値dminを抽出する。すなわち、1回の読み出し処理で1本の走査線5にオン電圧が印加されて当該走査線5に接続されている全ての放射線検出素子7からそれぞれ読み出された全画像データdの中から最大値dmaxと最小値dminを抽出する。そして、抽出した最大値dmaxから最小値dminを差し引いた差分Δdを算出し、算出した差分Δdが、当該差分Δdについて設定された閾値Δdthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
また、この場合も、各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdには、通常、各読み出し回路17の読み出し特性に起因するオフセット分がそれぞれ重畳される。そのため、同じ電荷Qに対する画像データdが各読み出し回路17で読み出されると、各画像データdは各オフセット分だけ異なる値になる。
そのため、例えば、画像データdの読み出し処理を行うごとに、当該読み出し処理の直前の読み出し処理を含む、例えば5回や10回等の所定回数分の過去の各読み出し処理で抽出された画像データdの移動平均を、各読み出し回路17ごとに算出し、今回の読み出し処理で読み出された画像データdからこの移動平均を減算して、この減算した値を今回の読み出し処理で当該読み出し回路17で読み出された画像データdとする。
そして、上記のように、各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdからそれぞれ移動平均を減算して算出された各画像データdの中から最大値dmaxと最小値dminを抽出し、最大値dmaxから最小値dminを差し引いた差分Δdを算出する。そして、算出した差分Δdが、当該差分Δdについて設定された閾値Δdthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
このように構成すれば、放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前には、各読み出し回路17で読み出された画像データdから移動平均を減算して算出された画像データdは、各読み出し回路17ごとのオフセット分が相殺されて、いずれの読み出し回路17から出力された値もほぼ0に近い値になるため、最大値dmaxから最小値dminを差し引いた差分Δdは0に近い値になる。
しかし、例えば図15に示したように放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合、前述したように、放射線の照射野Fに対応する検出部P上の位置に配置されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により読み出される画像データdの値が上昇するが、放射線の照射野Fに対応する検出部P上の位置以外の位置に配置されている各放射線検出素子7では、画像データdの値は上昇しない。
そのため、実際に放射線の照射が開始されてから放射線の照射が開始されたことが検出されるまでの間は、各読み出し回路17で読み出された画像データdから移動平均を減算して算出された画像データdの最大値dmaxから最小値dminを差し引いた差分Δdは、0とは有意に異なる正の値になる。そのため、この差分Δdに対して閾値Δdthを適切な値に設定しておくことで、少なくとも放射線の照射の開始を的確に検出することが可能となる。
例えば、図16は、放射線画像撮影装置1に非常に弱い放射線を照射した場合に、ある読み出しIC16から読み出される画像データdの最大値dmaxを示すグラフであり、バイアス電源14や走査駆動手段15の電源回路15aで発生したノイズで画像データdが増減している。そして、実際には、時刻t1で放射線の照射が開始されているが、放射線の照射による画像データdの上昇分がノイズに埋もれてしまい、放射線の照射開始を検出することができない。
しかし、上記のように、画像データdから移動平均を減算して算出された画像データdの中から最大値dmaxと最小値dminを抽出し、最大値dmaxから最小値dminを差し引いた差分Δdを算出すると、図17に拡大して示すように、算出した差分Δdは、時刻t1で確実に上昇して閾値Δdthを越え、その時点で放射線の照射が開始されたことを検出することができる。
このように、差分Δdを算出するように構成することで、画像データdに重畳されているバイアス電源14や電源回路15aに由来するノイズ成分を除去することが可能となり、画像データdのS/N比を改善させて放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を向上させることが可能となる。
そして、閾値Δdthを適切な値に設定して、算出した差分Δdに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することで、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
なお、前述したように、図17に示した差分Δdは、前述したように、極端に低い線量率の放射線が放射線画像撮影装置1に照射された場合の差分Δdであり、そのような差分Δdに対しても図17に示したような結果が得られる。そのため、通常の、より高い線量率の放射線が放射線画像撮影装置1に照射された場合には、より鮮明に差分Δdが上昇することは言うまでもない。
また、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量率が高い場合も低い場合も、照射野Fが絞られずに放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1等参照)の全域に対して放射線が照射される場合もある。このような場合には、この[構成4−1]の処理の仕方では放射線の照射の開始を検出することができない。
しかし、その一方で、[構成4−1]の処理の仕方を採用すれば、例えば上記の[構成1]〜[構成3]の説明で示した構成では必ずしも的確に放射線の照射の開始や終了を検出できないような微弱な線量率の放射線が照射された場合でも、図17に示したように、的確に放射線の照射の開始や終了を検出することが可能となる。
そこで、実際の放射線画像撮影装置1では、上記の[構成1]〜[構成3]とこの[構成4−1]とを組み合わせた構成とすることが可能である。また、上記の[構成1]〜[構成3]の説明で示した構成と上記の[構成4−1]に示した構成とを併用し、両方の構成で同時に放射線の照射の開始が検出された場合は勿論、それらの構成のうち、いずれかの構成で放射線の照射の開始が検出された時点で、放射線の照射の開始を検出するように構成することが可能である。
ところで、前述したように、読み出しIC16には、図18に示すように、それぞれ各読み出し回路17が例えば128個や256個等の所定個数ずつ形成されている。そして、例えば、1個の読み出しIC16に読み出し回路17が128個形成されており、信号線6が1024本配線されている場合には、読み出しIC16が少なくとも8個設けられる。
そして、上記のように、放射線が放射線画像撮影装置1に対して照射野F(図15参照)が絞られた状態で照射される場合、例えば8個の読み出しIC16の中には、読み出しIC16に各信号線6を介して接続されている各放射線検出素子7が、上記の放射線の照射野Fに対応する検出部P上の位置以外の位置、すなわちシンチレータ3からの電磁波が入射しない検出部P上の位置に設けられた各放射線検出素子7となるような読み出しIC16が存在すると考えられる。
すなわち、放射線の照射野Fが絞られたことにより、放射線画像撮影装置1には放射線が照射されているにもかかわらず、ある読み出しIC16に接続されている全ての放射線検出素子7に放射線が到達しないような(本実施形態ではシンチレータ3で放射線から変換された電磁波が入射しないような)読み出しIC16が存在すると考えられる。
そのため、上記のように、各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdからそれぞれ移動平均を減算して算出された各画像データdの中から最大値と最小値を抽出するように構成する代わりに、例えば、各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdからそれぞれ移動平均を減算して算出された各画像データdの各読み出しIC16ごとの平均値を算出し、各読み出しIC16ごとの平均値の中から最大値と最小値を抽出するように構成することも可能である。
このように構成すれば、上記の例では、読み出しIC16は8個であるから各読み出しIC16ごとの平均値の数も8個になり、最大値や最小値の抽出処理を容易に行うことが可能となる。
一方、実際の放射線画像撮影装置1では、信号線6やそれに対応する読み出し回路17は数千から数万あり、上記のいずれの場合も、その全てについてそれぞれ移動平均を算出し、各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdからそれぞれ移動平均を減算しなければならず、処理に時間がかかる可能性がある。
そして、このように上記の各処理に時間がかかる場合には、画像データdの各読み出し処理ごとに放射線の照射が開始されたか否かの判断等を遅れ、後述するように、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れるといった問題等が生じる可能性がある。
そこで、図18に示したように、読み出しIC16に、それぞれ各読み出し回路17が例えば128個や256個等の所定個数ずつ形成されていることを利用して、上記のように各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdからそれぞれ移動平均を減算する代わりに、例えば、1回の読み出し処理で、1個の読み出しIC16について各読み出し回路17から出力される128個の画像データdの読み出しIC16ごとの平均値を先に算出するように構成することが可能である。
このように構成すれば、1回の読み出し処理ごとの読み出しIC16ごとの各画像データdの平均値の個数は、上記の例の場合、読み出しIC16の個数に等しい8個になる。
そして、これらの8個の読み出しIC16ごとの画像データdの平均値について、それぞれ移動平均を算出し、各平均値から移動平均をそれぞれ減算し、移動平均が減算された各平均値を比較してそれらの中から最大値と最小値を抽出し、最大値から最小値を差し引いた差分Δdを算出し、算出した差分Δdが閾値Δdthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
このように構成すれば、上記のように、検出効率を向上させて放射線の照射の開始や終了を的確に検出することが可能となるとともに、1回の読み出し処理で各読み出し回路17で読み出される1024個の画像データdについて移動平均を算出する必要はなく、8個の読み出しIC16ごとの画像データdの平均値に対して移動平均を算出すればよくなる。
そのため、移動平均の算出や、画像データdの平均値からの移動平均の減算、最大値および最小値の抽出、差分Δdの算出、差分Δdと閾値Δdthとの比較の一連の各処理を速やかに行うことが可能となり、画像データdの読み出し処理ごとに行われる放射線の照射が開始されたか否かの判断等を、速やかに行うことが可能となる。
また、このように読み出しIC16ごとに各画像データdの平均値を算出するように構成すれば、読み出しIC16内の多数の読み出し回路17ごとに発生する電気ノイズが画像データdの平均値を算出する際に互いに相殺されるため、各読み出し回路17で発生する電気ノイズの画像データdやその移動平均に対する影響を低減させることが可能となるといった利点もある。
[構成4−2]
一方、放射線画像撮影装置1によっては、図19に模式的に示すように、もともとシンチレータ3が基板4上に設けられた検出部Pより小さく形成される場合がある。なお、図19においても、走査線5は図中の左右方向に、また、信号線6は図中の上下方向にそれぞれ延在するように配線されているものとする。
そして、このように構成されている場合、検出部P上のシンチレータ3直下の位置、すなわち照射された放射線がシンチレータ3で変換された電磁波が入射し得る位置に設けられた各放射線検出素子7では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、画像データdが上昇する。
しかし、検出部P上のシンチレータ3直下以外の位置、すなわちシンチレータ3からの電磁波が入射しない検出部P上の位置(図中に斜線を付して示す位置C参照)に設けられた各放射線検出素子7では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されても、電磁波が当該放射線検出素子7には入射しないため、画像データdは上昇しない。
そして、前述したように、いずれの位置の放射線検出素子7に接続されているTFT8においても、バイアス電源14や電源回路15aで発生したノイズがバイアス線9や走査線5を介して各放射線検出素子7や各TFT8に同時に伝達される。そのため、バイアス電源14等で発生したノイズが、読み出される各画像データdに重畳される。
そこで、これを利用して、制御手段22で、シンチレータ3から照射された電磁波が入射し得る検出部P上の位置(すなわちシンチレータ3直下の位置)の各放射線検出素子7から読み出された画像データdから、シンチレータ3から照射された電磁波が入射しない検出部P上の位置(すなわちシンチレータ3直下以外の位置)に設けられた各放射線検出素子7から読み出された画像データdを差し引いた差分Δdを算出する。そして、上記と同様に、算出した差分Δdが閾値Δdthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
なお、上記のように構成して差分Δdを算出する場合、後者の、シンチレータ3から照射された電磁波が入射しない検出部P上の位置(すなわちシンチレータ3直下以外の位置)に設けられた各放射線検出素子7から読み出された画像データdとして、例えば、上記の位置Cの各放射線検出素子7から読み出された画像データdのうちの1つの画像データdを選択して用いるように構成することも可能であり、それらの画像データdの平均値を算出して後者の画像データdとして用いるように構成することも可能である。
このように、放射線画像撮影装置1が図19に示したように構成されている場合に、上記のように各処理を行って差分Δdを算出するように構成することで、少なくとも画像データdに重畳されているバイアス電源14等に由来するノイズ成分を除去することが可能となり、画像データdのS/N比を改善することが可能となる。
そして、閾値Δdthを適切な値に設定して、算出した差分Δdに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することで、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
なお、この[構成4−2]の場合も、各読み出し回路17ごとに読み出された各画像データdには、各読み出し回路17の読み出し特性に起因するオフセット分がそれぞれ重畳される。そのため、上記の[構成4−1]の場合と同様に、読み出し処理を行うごとに、当該読み出し処理の直前の読み出し処理を含む所定回数分の過去の各読み出し処理で読み出された、位置Cの各放射線検出素子7から読み出された画像データdの移動平均を、各読み出し回路17ごとに算出したり、今回の読み出し処理で読み出された画像データdからこの移動平均を減算して、この減算した値を今回の読み出し処理で当該読み出し回路17で読み出された画像データdとする等の処理が行われることが好ましい。
また、この場合、各読み出し回路17で読み出された画像データdから移動平均を減算した値を画像データdとする処理を、常時行うように構成するか、或いは、照射される放射線の線量率が非常に低い場合にのみ行うように構成するかは適宜決められる。
[構成5]
また、画像データdのS/N比を改善して検出効率を向上させる構成として、前述したチャージアンプ回路で構成された増幅回路18のコンデンサ18bの容量を可変できるように構成しておき、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際には、増幅回路18のコンデンサ18bの容量cfが、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際の容量よりも小さくなるように可変するように構成することも可能である。
前述したように、増幅回路18は、放射線検出素子7から放出されて流れ込みコンデンサ18bに蓄積された電荷Qに応じた電圧値を出力するが、コンデンサ18bの容量cfが小さくなるように可変させることで、V=Q/cfの関係に従って、コンデンサ18bに同じ電荷量Qが蓄積された場合でも、増幅回路18から出力される電圧値Vを大きくすることができる。
その際、放射線検出素子7から放出された電荷Qに元々重畳されているノイズ成分、すなわち例えば上記のようなバイアス電源14等に由来するノイズ成分については、増幅回路18から出力される電圧値Vが大きくなることでノイズ成分も大きくなり、S/N比の改善に寄与しないが、少なくとも増幅回路18を含む読み出し回路17で発生するノイズ成分については電圧値Vが大きくなってもノイズ成分は大きくならない。
従って、この場合は、少なくとも増幅回路18を含む読み出し回路17で発生するノイズ成分についてS/N比を改善することが可能となり、S/N比を改善して放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を向上させることが可能となる。
なお、コンデンサ18bの容量cfをあまり下げすぎると、コンデンサ18bが各放射線検出素子7から放出された電荷Qで飽和し易くなるが、コンデンサ18bが飽和すると、当該コンデンサ18bを備える読み出し回路17での次回以降の読み出しに悪影響を及ぼす場合がある。そのため、コンデンサ18bの容量cfは適切な値に低下されるように調整される。また、放射線画像撮影後に行われる画像データDの読み出し処理の際には、コンデンサ18bの容量cfは、通常の所定の容量に戻される。
また、読み出し回路17の増幅回路18を、例えば、図20に示すように構成することで、増幅回路18のコンデンサ18bの容量を可変できるように構成することが可能となる。
具体的には、チャージアンプ回路で構成された増幅回路18のオペアンプ18aに並列に接続するコンデンサを、図8に示したように1つのコンデンサ18bとする代わりに、各コンデンサC1〜C4をそれぞれ並列に接続する。そして、各コンデンサC2〜C4にスイッチSw1〜Sw3をそれぞれ直列に接続するように構成する。なお、コンデンサC1にもスイッチを直列に接続するように構成することも可能である。
そして、スイッチSw1〜Sw3のオン/オフを切り替えることで、増幅回路18のコンデンサ18bの容量を可変できるように構成することが可能となる。なお、この場合、コンデンサ18bの容量cfは、コンデンサC1の容量と、スイッチSw1〜Sw3のうちオン状態とされたスイッチに直列に接続されているコンデンサC2〜C4の各容量との合計値になる。
なお、増幅回路18のコンデンサ18bの容量cfを下げなくても十分にS/N比が良好な状態で画像データdを読み出すことができるような場合には、前述したようにコンデンサ18bが各放射線検出素子7から放出された電荷Qで飽和することによる悪影響が生じることを防止することを重視する観点から、上記の場合とは逆に、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、コンデンサ18bの容量cfを、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際の容量よりも大きくなるように可変させるように構成することも可能である。
この場合も、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際には、画像データDを正確に読み出すことが必要となるため、コンデンサ18bの容量cfは、通常の所定の容量に戻される。
[構成6]
また、図78に示したように、走査線5のあるラインLiにオン電圧が印加されて放射線検出素子7iから画像データdiが読み出される場合、画像データdiは、実際には、当該放射線検出素子7iから放出された電荷Qと、同じ信号線6に接続されている他の放射線検出素子7からTFT8を介してリークした電荷qとの合計値に相当するデータとなる。
そのため、これらの他の放射線検出素子7からリークする電荷qを多くすることで、画像データdをより大きくして、画像データdのS/N比を改善することが可能である。
図5に示したTFT8の断面構造を模式的に表した図21に示すように、TFT8は、そのゲート電極8gにオフ電圧が印加されているため、TFT8の半導体層82のゲート電極8g側(図21中では下側)が電子の密度が小さい状態になっている。
そして、この半導体層82のゲート電極8g側の電子密度が小さい領域を正孔が流れることによって、オフ状態のTFT8内を電荷qがリークすると考えられている。なお、この場合、本実施形態では、ソース電極8sに接続されている放射線検出素子7の第2電極78(図21では図示省略)に逆バイアス電圧が印加されているため、リーク電流は、相対的に電位が高いドレイン電極8d側から、半導体層82のゲート電極8g側の領域を通って、相対的に電位が低いソース電極8s側に流れる。
一方、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて、シンチレータ3(図21中では図示省略)で放射線から変換された電磁波が照射されると、シンチレータ3は図中では上側に設けられているため、電子正孔対は、主にTFT8の半導体層82のシンチレータ3側(図21中では上側)で発生する。
そして、上記のように、半導体層82のシンチレータ3側では電子密度が比較的高くなっているため、発生した正孔が電子と再結合する確率が高くなる。そのため、前述したように、放射線の照射によりシンチレータ3から電磁波が照射されることで、TFT8の半導体層82内で電子正孔対が発生し、オフ状態のTFT8内を流れるリーク電流の量が増加するが、キャリアである正孔の一部は電子と再結合してしまうため、リーク電流の増加率を低減させてしまう。
そこで、TFT8の半導体層82のシンチレータ3側でも電子密度が低い領域を形成すれば、キャリアである正孔が、半導体層82のゲート電極8g側の領域と、半導体層82のシンチレータ3側の領域の2つのチャネルを流れるようになり、放射線検出素子7からリークする電荷qの量をより大きくすることが可能となる。そして、リークする電荷qの量を大きくすることで、画像データdのS/N比を改善して検出効率を向上させることが可能となる。
TFT8の半導体層82のシンチレータ3側にも電子密度が低い領域を形成するためには、例えば、図22や図23に示すように、各TFT8のシンチレータ3(図22や図23では図示が省略されており、図22中の放射線検出素子7やTFT8の上側に設けられている。)側に配線85を配置し、少なくとも放射線画像撮影前に繰り返し行われる読み出し処理の際に、配線85に負の電圧を印加するように構成することが可能である。
具体的には、配線85は、ITO等の、シンチレータ3から照射される電磁波を透過する導電性材料で形成され、例えば、図23に示すように、各走査線5に平行に、走査線5と同数設けられる。そして、少なくとも放射線画像撮影前に繰り返し行われる読み出し処理の際には、例えば、走査駆動手段15から各走査線5に印加されるオフ電圧と同じ負の電圧が印加されるように構成される。
なお、各配線85に印加する負の電圧は、必ずしもオフ電圧と同じ値の負の電圧である必要はなく、上記のように、TFT8の半導体層82のシンチレータ3側に電子密度が低い領域を的確に形成することができる電圧に設定される。また、各配線85に、走査駆動手段15の電源回路15aからオフ電圧を印加するように構成することも可能であり、また、他の電源回路から負の電圧を印加するように構成することも可能である。
また、上記のように、他の放射線検出素子7からリークする電荷qの量を増加させる措置は、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出される画像データdを、放射線の照射開始の検出用に用いるための措置であり、放射線画像撮影後の読み出し処理で、本画像として画像データDを読み出す際には、読み出される画像データDに重畳される他の放射線検出素子7からリークした電荷qの成分は少ない方が良い。
そのため、少なくとも放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射後に行われる画像データdの読み出し処理の際には、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出しに悪影響を与えないようにするために、各配線85への負の電圧の印加は停止され(すなわちフローティング状態とされ)、または0[V]等の所定の電圧が印加される。
さらに、図22では、配線85やバイアス線9を、放射線検出素子7やTFT8の上方に積層して形成した第1平坦化層80aの上面(すなわち図示しないシンチレータ3側の面)上に形成し、その上方にさらに第2平坦化層80bを形成する場合が示されているが、配線85を形成する形態はこの形態に限定されず、TFT8の半導体層82のシンチレータ3側に電子密度が低い領域を形成することができるものであれば、配線85を適宜の位置に配置することが可能である。
[構成7]
また、本発明者らの研究では、例えば、バイアス電源14が、その内部に設けられている図示しない抵抗器の抵抗値を可変させることができるように構成されている場合には、抵抗器の抵抗値が大きくなるように可変させると、バイアス電源14由来のノイズが低減されることが分かっている。
バイアス電源14の抵抗器の抵抗値を大きくすると、それがいわゆるローパスフィルタのように機能して、特に高い周波数のノイズを低減することができる。そこで、例えば、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際には、バイアス電源14内の抵抗器の抵抗値が大きくなるように抵抗値を可変させるように構成することが可能である。
そして、このように構成すれば、画像データdに重畳されるノイズのうち、少なくともバイアス電源14に由来するノイズの高周波数成分のノイズを除去することが可能となり、その分だけ画像データdのS/N比が改善される。そのため、画像データdのS/N比を改善して検出効率を向上させることが可能となる。
なお、この場合も、バイアス電源14内の抵抗器の抵抗値は、少なくとも放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際には、元の通常の抵抗値に戻される。
なお、上記の構成1〜構成7を適宜組み合わせて構成することも可能である。
[線欠陥が隣接する複数の走査線に連続して現れることの防止等について]
前述したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されている最中に読み出し処理が行われた放射線検出素子7からは、放射線の照射により発生した電荷(すなわち本画像として読み出されるべき画像データD)の一部が流出して、画像データdとして読み出される。
そのため、そのような各放射線検出素子7について、放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出された画像データDは、本来読み出されるべきデータの一部が既に放射線画像撮影前の読み出し処理で画像データdとして読み出されて失われてしまっているものであるため、信頼がおけないものとして無効とし、破棄するように構成される場合がある。この場合、当該放射線検出素子7が接続されている各走査線5が線欠陥とされる。
上記のモデル構成の場合について、図12に示したように、例えば、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が、実際には、走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出し処理が行われた時点では既に開始されているにもかかわらず、検出効率が低いため、例えば、走査線5のラインLn+2にオン電圧を印加して読み出し処理が行われた時点で、放射線の照射が開始されたことが検出されたものとする。
すると、走査線5のラインLn〜Ln+2が線欠陥となるが、この場合、図24に示すように、線欠陥が走査線5の隣接する複数のラインLn〜Ln+2に連続して現れるようになる。そして、これらの連続する線欠陥に対して、例えば走査線5のラインLn-1やラインLn+3に接続されている各放射線検出素子7の画像データDで補間する等して修復すると、前述したように、線欠陥とされた各走査線5の部分に撮影されていた患者の病変部の情報が補間等の修復により失われてしまう虞れがある。
それに対して、例えば、上記の[構成1]で説明したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際のTFT8のオン時間を、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際のオン時間よりも長くなるように構成すると、放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率が向上する。
そのため、図25に示すように、放射線画像撮影装置に対する実際の放射線の照射が開始された時点t1、すなわち図13に示したように走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出し処理が行われた時点t1で、読み出される画像データdの値が急増し、閾値dthを越えるため、この時点t1で放射線の照射が開始されたことを検出することが可能となる。そのため、この場合は、図79に示したように、走査線5のラインLnのみが線欠陥となる。
このように、放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を向上させることで、放射線画像撮影装置に対する実際の放射線の照射が開始された時点で行われていた読み出し処理で読み出された画像データdが、予め設定された閾値dthを越えるようになる。そのため、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れることを防止することが可能となる。
また、仮に実際の放射線の照射開始時点で放射線の照射が開始されたことが検出できなくても、検出効率が向上されているため、その直後の読み出し処理で読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことが的確に検出される。そのため、線欠陥が生じる走査線5の本数を的確に低減することが可能となる。
また、[構成1]のように構成した場合のみならず、上記の[構成2]〜[構成7]のように構成した場合やそれらの構成を組み合わせた構成においても、同様に、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れることを防止し、或いは線欠陥が生じる走査線5の本数を的確に低減することが可能となる。
また、以下に述べる各構成を採用することによっても、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れることを防止、或いは線欠陥が生じる走査線5の本数を的確に低減することが可能となる。
[構成8]
図12に示したモデル構成をベースにして説明すると、上記の[構成1]〜[構成7]の場合も同様であるが、例えば、図26に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、走査駆動手段15から、ある走査線5にオン電圧を印加した後、次の走査線5にオン電圧を印加するまでの周期(以下、略してゲート周期という。)を、放射線照射終了後の画像データFの読み出し処理の際のゲート周期よりも長くなるように構成することが可能である。
このように構成すれば、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合、ゲート周期の間に、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生し蓄積される電荷の量が、例えば図12に示したモデル構成の場合よりも多くなる。
そのため、放射線画像撮影装置に対する実際の放射線の照射が開始された時点やその直後の読み出し処理で読み出される画像データdの値が大きくなり、閾値dthを越える可能性が高まる。そのため、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れることを防止し、或いは線欠陥が生じる走査線5の本数を低減することが可能となる。
なお、この場合、ゲート周期は、少なくとも放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の際には、元の通常のゲート周期に戻される。
[構成9]
上記では、放射線画像撮影装置1の検出効率を向上させる等して、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れることを防止したり線欠陥を生じる走査線5の本数を低減する場合について説明した。しかし、一方で、放射線画像撮影装置1に放射線を照射する図示しない放射線発生装置側で、放射線の照射開始時に、照射する放射線の線量の立ち上がりが遅く、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が、いわば緩慢に増加するような放射線発生装置がある。
このような放射線発生装置から放射線画像撮影装置1に放射線を照射する場合、放射線画像撮影装置1側の検出効率が向上されていても、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出される画像データdは、例えば図11に示したように増加し、実際に放射線の照射が開始された時点と、放射線画像撮影装置1で放射線の照射が開始されたことを検出した時点とがずれてしまう。そのため、放射線画像撮影装置1側の検出効率が向上されていても、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れる状態になってしまう場合がある。
このような場合には、例えば、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理では、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから、走査線5のあるラインLnにオン電圧を印加したタイミングの次のタイミングでは、走査線5のラインLnに検出部P上で隣接する走査線5のラインLn-1やラインLn+1以外の走査線5にオン電圧を印加するようにして、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を行うように構成することが可能である。
具体的には、例えば、図27に示すように、走査駆動手段15から走査線5の奇数番目のラインL1、L3、L5、L7、…にオン電圧を順次印加させた後、続いて、走査線5の偶数番目のラインL2、L4、L6、L8、…にオン電圧を順次印加させるように構成することが可能である。
また、図示を省略するが、走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC12a(図6参照)に、走査線5が例えば128本ずつ接続されている場合、例えば、1番目のゲートIC12aの1番目の端子に接続されている走査線5のラインL1にオン電圧を印加した次のタイミングで、2番目のゲートIC12aの1番目の端子に接続されている走査線5のラインL129にオン電圧を印加し、その後、順次、各ゲートIC12aの1番目の端子にそれぞれ接続されている走査線5のラインL257、L385、…にオン電圧を印加する。
続いて、各ゲートIC12aの2番目の端子にそれぞれ接続されている走査線5のラインL2、L130、…にオン電圧を順次印加し、続いて、各ゲートIC12aの3番目の端子にそれぞれ接続されている走査線5のラインL3、L131、…にオン電圧を順次印加する。この動作を、オン電圧を印加する各ゲートIC12aの端子を1つずつずらしながら、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を行うように構成することも可能である。
このように、走査線5のあるラインLnにオン電圧を印加したタイミングの次のタイミングでは、走査線5のラインLnに検出部P上で隣接する走査線5のラインLn-1やラインLn+1にオン電圧を印加するように構成されていなければ、どのようなタイミングで走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するように構成することも可能である。
このように構成すれば、上記のように放射線発生装置から照射する放射線の線量の立ち上がりが遅く、図28に示すように、実際に放射線の照射が開始された時点でオン電圧が印加されていた走査線5のラインLnやその次にオン電圧が印加された走査線5のラインLn+2で放射線の照射開始を検出できず、その次の走査線5のラインLn+4にオン電圧が印加された時点で初めて放射線の照射が開始されたことを検出したとしても、線欠陥が生じる走査線5は、図29に示すように、走査線5のラインLn、Ln+2、Ln+4のようになり、線欠陥が生じる走査線5が互いに離間した状態で現れるようになる(すなわちいわば飛び飛びに現れる状態になる)。
そのため、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れることを的確に防止することが可能となる。
また、線欠陥の周囲の走査線5のラインLn-1、Ln+1、Ln+3、Ln+5は、図28に示したように、走査線5のラインLn、Ln+2、Ln+4にオン電圧が印加されるタイミングよりも前のタイミングでオン電圧が印加されており、放射線の照射が開始された時点では確実にオフ電圧が印加されているため、各放射線検出素子7から電荷が流出することがない。
そのため、線欠陥の周囲の走査線5のラインLn-1、Ln+1、Ln+3、Ln+5に接続されている各放射線検出素子7からは、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で、電荷が欠損することなく読み出されるため、それらの各放射線検出素子7から読み出された画像データDは確実に正常な値となる。
そのため、無効として破棄して線欠陥とした走査線5の各ラインLn、Ln+2、Ln+4に接続されている各放射線検出素子7の画像データDを、これらの正常な値の画像データDを用いて、適切に修復することが可能となる。
なお、上記のように、ゲートドライバ15bを構成する各ゲートIC12aごとに1本ずつ走査線5にオン電圧を順次印加するように構成する場合には、128本の走査線5に1本の割合で線欠陥が現れる状態になる。
[放射線の照射開始の検出時期を早めるための構成等について]
なお、放射線画像撮影装置の中には、例えば図30や図31に示すように、検出部Pが、複数の領域に分割されて構成されているものもある。
例えば、図30に示した放射線画像撮影装置1aでは、検出部P上で、各信号線6がその延在方向の途中で分断されており、検出部Pが2つの領域Pa、Pbに分割されている。また、例えば、図31に示した放射線画像撮影装置1bでは、検出部P上で、各走査線5がその延在方向の途中で分断されており、検出部Pが2つの領域Pc、Pdに分割されている。なお、図示を省略するが、例えば、検出部P上で、各走査線5と各信号線をともにそれらの延在方向の途中で分断させて、検出部Pを例えば4つの領域に分割するように構成することも可能である。
以下、図30の場合を例に挙げて説明すると、このように構成されている場合には、各領域Pa、Pbの各走査線5は各入出力端子11を介してそれぞれ別々のゲートドライバ15bに接続されており、各ゲートドライバ15bから各領域Pa、Pbの各走査線5にそれぞれ独立のタイミングでオン電圧を印加させるように構成することができるように構成されている場合がある。
そこで、このような場合、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、1つの領域Paに対応するゲートドライバ15bから、当該領域Paの各走査線5にオン電圧を印加するタイミングが、他の領域Pbに対応するゲートドライバ15bから当該他の領域Pbの各走査線5にオン電圧を印加するタイミングと同時にならないようにして、各走査線5にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行うように構成することが可能である。
具体的には、例えば検出部Pが図31に示すように2つの領域Pa、Pbに分割されており、領域Paに対応するゲートドライバ15bから走査線5の各ラインLに対してラインL1、L2、L3、…の順にオン電圧を順次印加し、領域Pbに対応するゲートドライバ15bからは走査線5の各ラインLに対してラインLx、Lx-1、Lx-2、…の順にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行うように構成されているものとする。
そのような場合、例えば図32に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、領域Paに対応するゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1、L2、L3、…にオン電圧を印加するタイミングが、他の領域Pbに対応するゲートドライバ15bから走査線5の各ラインLx、Lx-1、Lx-2、…にオン電圧を印加するタイミングと同時にならないようにオン電圧を印加して、読み出し処理を行うように構成することが可能である。
上記のモデル構成のような場合のように、走査線5の各ラインL1、L2、…、Lx-1、Lxの順にオン電圧を印加する場合には、例えば走査線5のラインL1にオン電圧を印加したタイミングで放射線の照射開始が検出されなかった場合、次の走査線5のラインL2にオン電圧を印加して行われる読み出し処理まで、放射線の照射が開始されたか否かの判断を行うことができない。これは、図27に示したようにオン電圧を印加する場合等でも同様である。
しかし、図32に示したように構成すると、例えば領域Paの走査線5のラインL1にオン電圧を印加したタイミングで放射線の照射開始が検出されなかった場合、同じ領域Paの走査線5のラインL2にオン電圧を印加して行われる読み出し処理まで待つことなく、領域Pbの走査線5のラインLxにオン電圧を印加して行われる読み出し処理で放射線の照射が開始されたか否かの判断を行うことが可能となる。
このように、検出部Pの各領域Pa、Pbで、各領域Pa、Pbに対応する各ゲートドライバ15bから各領域Pa、Pbの各走査線5にオン電圧を印加するタイミングが同時にならないようにして各走査線5にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行うように構成することで、放射線の照射が開始されたことの検出時期を早めることが可能となり、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、迅速にそれを検出することが可能となる。
[放射線の照射開始の検出後の処理について]
次に、上記のようにして、制御手段22が、放射線画像撮影前に繰り返し行われる画像データdの読み出し処理で読み出された画像データdに基づいて、すなわち画像データdが閾値dthを越えたと判断して、放射線の照射が開始されたことを検出した後の各処理について説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影前の処理として、[構成1](図13参照)で説明したように走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加する場合について説明するが、上記の各構成や各処理を行うことが可能であることは言うまでもない。
[電荷蓄積モードへの移行および電荷蓄積モードにおける処理]
制御手段22は、上記のようにして放射線の照射が開始されたことを検出すると、図13に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し動作を停止させて、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して、各TFT8をオフ状態とした状態を維持して電荷蓄積モードに移行する。図13に示したように、例えば走査線5のラインLnにオン電圧を印加して読み出された画像データdに基づいて放射線の照射開始を検出した場合には、その時点で電荷蓄積モードに移行する。
そして、電荷蓄積モードにおいては、例えば、予め放射線の照射時間より長い時間に設定された所定時間待機した後、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理に移行するように構成することが可能である。
また、例えば、以下のように構成することにより、放射線の照射の終了を検出することも可能である。
図78を用いて説明したように、各放射線検出素子7からは、TFT8を介して僅かずつ電荷qがリークする。そして、放射線画像撮影装置1に放射線が照射され、その放射線がシンチレータ3で電磁波に変換され、この電磁波が各TFT8に照射されると、このリークする電荷qが増加する。そして、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了すると、リークする電荷qは元の小さい値に戻る。
これを利用して、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したことを検出することができる。
具体的には、電荷蓄積モードで、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加した状態で、図33に示すように、各読み出し回路17を動作させる。すなわち、画像データdの読み出し処理の場合と同様に、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18c(図8参照)をオフ状態として、コンデンサ18bに電荷が蓄積される状態として、制御手段22から相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1、Sp2を送信してサンプリングを行わせるが、その間、各TFT8のオン/オフ動作は行わない。
このように各読み出し回路17を動作させると、図34に示すように、オフ状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークした各電荷qが、増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。そのため、増幅回路18からはこの蓄積された電荷、すなわち各放射線検出素子7からリークした電荷qの合計値に相当する電圧値が出力され、図34では図示を省略した相関二重サンプリング回路19でサンプリングされて、データが出力される。
以下、このデータを、各放射線検出素子7からリークした電荷qに基づくデータという意味で、リークデータDleakという。
上記のように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことが検出され、走査線5の全てのラインL1〜Lxに印加する電圧をオフ電圧に切り替えた後、各読み出し回路17による読み出し動作を続行させて、このリークデータDleakの読み出し処理を行わせる。
すると、リークデータDleakの読み出し処理が開始された時点では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されており、各放射線検出素子7からTFT8を介してリークする電荷qが増加している状態であるため、図35に示すように、読み出されるリークデータDleakの値は大きい状態である。
そして、リークデータDleakの読み出し処理を続けると、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了した時点(図中の時刻t2参照)で、各放射線検出素子7からTFT8を介してリークする電荷qが低下して元の小さな値に戻るため、図35に示すように、読み出されるリークデータDleakの値が減少する。
そこで、例えば、制御手段22は、このリークデータDleakの値を監視し、リークデータDleakの値が予め設定された閾値Dleak_th以下になった時点で、放射線の照射が終了したと判断するように構成することが可能である。
このように、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が終了したことを検出するように構成すれば、放射線の照射の終了を検出した後、すぐに画像データDの読み出し処理を開始することが可能となり、画像データDの読み出し処理以降の処理を迅速に行うことが可能となる。
特に、放射線画像撮影装置1を用いた放射線画像撮影では、外部のコンピュータ等で画像データDに対して本格的な画像処理を行って診断用放射線画像を生成する前に、プレビュー画像を作成して表示し、放射線技師等がそのプレビュー画像を見て、被写体が放射線画像上に撮影されているか否かや被写体が放射線画像上の適切な位置に撮影されているか否か等を確認するように構成される場合が多い。
その場合には、再撮影の要否を迅速に判定し、再撮影が必要であれば速やかに再撮影を行うようにすることで被写体となる被験者にかかる負担を軽減することが可能となるが、上記のように、放射線の照射の終了後、速やかに画像データDの読み出し処理を開始することが可能となることで、プレビュー画像を速やかに表示することが可能となり、放射線技師等が迅速に再撮影の要否を判定することが可能となるといった利点がある。
また、図13に示したように、放射線の照射開始後の電荷蓄積モードにおいて、通常の放射線画像撮影の場合と同様に、読み出し回路17による読み出し動作を停止させて所定時間待機するように構成すれば、電荷蓄積モードでリークデータDleakの読み出し処理を行わずに済み、放射線画像撮影装置1の電力消費を抑制することが可能となるといった利点がある。また、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加し、各読み出し回路17の差動を停止させるだけなので、制御構成が簡単になるといった利点もある。
なお、図35では、時刻t2で放射線の照射の終了を検出した後もリークデータ読み出し処理を引き続き行ってリークデータDleakを読み出す場合が示されているが、これはあくまで放射線の照射に伴ってリークデータDleakがどのように変化するかを示すための実験例であり、実際には、時刻t2で放射線の照射の終了を検出すると、リークデータ読み出し処理を停止し、すぐに画像データDの読み出し処理が開始される。
[画像データDの読み出し処理について]
図13に示した場合には所定時間が経過した時点で、また、図33等に示したように電荷蓄積モードでリークデータDleakの読み出し処理を行う場合には放射線の照射の終了を検出した時点で、制御手段22は、図13に示したように、続いて、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させ、読み出し回路17に順次読み出し動作を行わせて、各放射線検出素子7からそれぞれ画像データDを読み出す画像データDの読み出し処理を行わせる。
画像データdの読み出し処理では、図9や図10に示したように走査駆動手段15や読み出し回路17等を作動させ、読み出された画像データdが記憶手段40(図7等参照)に順次保存される。
なお、図13では、画像データDの読み出し処理において、走査線5の最初のラインL1から順番にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行う場合を示したが、例えば図36に示すように、画像データDの読み出し処理では、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において放射線の照射が開始されたことを検出した走査線5(図36の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図36の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧を順次印加するように構成することも可能である。
このように構成すると、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理と、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理を、同じ処理のシーケンスで行うことが可能となるといった利点がある。また、他の点でも優れた効果があるが、その点については第4の実施形態で説明する。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影前から各走査線5にオン電圧を順次印加して画像データdの読み出し処理を行い、読み出した画像データdの値に基づいて放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたことを検出する。そのため、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出することが可能となる。
そして、その際に、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際のオン時間を、放射線画像撮影後の本画像としての画像データDの読み出し処理の際のオン時間よりも長くするように制御する等の構成を採用することによって、放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を的確に向上させることが可能となる。
そして、このように放射線の照射が開始されたことを検出する際の検出効率を向上させることが可能となるため、実際に放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で放射線の照射が開始されたことを検出することが可能となるため、線欠陥が1本の走査線5のみに生じるようになり、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れることを的確に防止することが可能となる。
また、仮に実際の放射線の照射開始時点で放射線の照射が開始されたことが検出できない場合であっても、上記のように検出効率が向上されているため、その直後の読み出し処理で読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことが的確に検出される。そのため、線欠陥が生じる走査線5の本数を的確に低減することが可能となる。
そして、このように、線欠陥となる走査線5を1本のみとし、或いは線欠陥が生じる走査線5の本数が的確に低減されるため、線欠陥とされた画像データDを例えば周囲の画像データDを用いて修復したとしても、例えば線欠陥の部分に撮影されていた患者の病変部の情報が失われてしまうことが的確に回避される。そして、上記の画像データDに基づいて生成される放射線画像中にも病変部の情報が現れるようになるため、生成された放射線画像を医療における診断用等に的確に用いることが可能となる。
[画像データDの修復処理について]
ここで、放射線画像撮影後の読み出し処理で本画像として読み出された画像データDに対する修復処理について説明する。
その際、放射線画像撮影装置1は、上記のように、走査線5のあるラインLnにオン電圧が印加されて読み出された画像データdが閾値dthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するものであり、例えば図11に示したように、図示しない外部の放射線発生装置から放射線画像撮影装置1に対して実際に放射線の照射が開始されて、読み出される画像データdの値が上昇しても、画像データdの値が閾値dthを越えない限りは、放射線画像撮影装置1は、実際に放射線の照射が開始されていることを認識することができない。
そのため、放射線画像撮影装置1自体では、実際に放射線の照射がいつ開始されたかを検出することができない点に注意する必要がある。そして、実際に放射線の照射が開始されてから放射線の照射が開始されたことを検出するまでの間に、何本の走査線5にオン電圧が印加されて画像データdの読み出し処理が行われたか、すなわちどの走査線5を線欠陥とすべきかを、放射線画像撮影装置1自体が把握することはできない。
そこで、例えば、線欠陥とすべき走査線5の本数を予め設定しておくように構成することが可能である。本実施形態では、上記のように、検出効率が向上されているため、線欠陥とすべき走査線5の本数を予め1本と設定しておき、放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5のみを線欠陥とするように構成しても、実際上、何ら問題を生じない。
また、より厳密に画像処理を行う場合には、例えば、放射線画像撮影装置1に放射線を照射した放射線発生装置から照射される放射線の線量の立ち上がりの情報(すなわちどの程度速やかに立ち上がるかついての情報)や、放射線画像撮影装置1で走査線5のあるラインLにオン電圧を印加してから次の走査線5のラインLにオン電圧を印加するまでの時間間隔すなわち前述したゲート周期等を考慮して、それらの撮影条件に応じて、線欠陥とすべき走査線5を決定するように構成することが可能である。
さらに、例えば、放射線画像撮影が終了した後、画像処理用のコンピュータ等の外部装置等で(或いは放射線画像撮影装置1で画像処理を行う場合は放射線画像撮影装置1で)画像処理を行い、得られた画像データd等に基づいて放射線画像を生成する際に、放射線画像撮影装置1が放射線の照射の開始を検出した走査線5のラインLnを含む何ライン分の走査線5を線欠陥とするかを割り出すように構成することも可能である。
この場合、例えば、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で、走査線の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7から順次読み出された画像データdの値の推移(例えば図11や図25等参照)を解析し、放射線発生装置から実際に放射線の照射が開始された時点を割り出して、線欠陥とすべき走査線5を決定するように構成することも可能である。
具体的には、前述したように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると読み出される画像データdの値が増加するため、例えば図11に示したように推移する画像データdを解析すると、時刻t1で放射線の照射開始を検出した走査線5を含む3本の走査線5が線欠陥とされる。また、図25に示したように推移する画像データdを解析すると、時刻t1で放射線の照射開始を検出した走査線5のみが線欠陥とされることになる。
また、このように放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを解析する代わりに、或いはそれと併用して、放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出された本画像である画像データDを解析して、線欠陥とすべき走査線5の本数を決定するように構成することも可能である。
例えば、放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出された画像データD(正確には画像データDから後述するオフセット補正値Oを減算した値)を走査線の各ラインL1〜Lxごとにプロットした場合の画像データDの推移が、例えば図37に示すように推移している場合、この画像データDの値の推移を解析すると、走査線5の各ラインLn-2〜Lnを線欠陥とすべきであることが分かる。
このようにして、まず、線欠陥とすべき走査線5を、例えば放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5のみとしたり、撮影条件に応じて決定したり、或いは画像データdや画像データDを解析して決定する。
次に、上記のようにして決定した線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDに対して修復処理を行うが、その際、前述したように、線欠陥の部分の画像データDを信頼性が低いものとして無効とし、破棄するように構成することが可能である。
本実施形態では、上記のように、線欠陥が1、2本の走査線5に生じるようになり、図79や図80に示したような状態で現れる。また、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で例えば図27等に示したように各走査線5にオン電圧を印加した場合には図29に示したように、線欠陥がいわば飛び飛びに現れる状態になる。
そこで、上記のように、線欠陥の部分の画像データDを破棄するように構成する場合には、例えば、それらの周囲の画像データDを用いて線形補間等の手法によって破棄した画像データDを修復するように構成することができる。
すなわち、図79の場合には例えば走査線5のラインLn-1、Ln+1、図80の場合には例えば走査線5のラインLn-1、Ln+2に接続されている各放射線検出素子7の画像データDを用いてそれぞれ修復する。また、図29の場合の走査線5のラインLnの線欠陥は例えば走査線5のラインLn-1、Ln+1、走査線5のラインLn+2の線欠陥は例えば走査線5のラインLn+1、Ln+3、走査線5のラインLn+4の線欠陥は例えば走査線5のラインLn+3、Ln+5を用いてそれぞれ修復するように構成することができる。
一方、本実施形態では、上記のように、放射線画像撮影前の読み出し処理で画像データdが読み出されているため、この画像データdを用いて本画像である画像データDを修復するように構成することも可能である。なお、この場合は、線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDは破棄されない。
そして、それらの各放射線検出素子7については、本来、放射線画像撮影後の読み出し処理で本画像として読み出される画像データDの一部が、放射線画像撮影前に画像データdとして読み出されたと見なすことができる。そのため、画像データDを修復する方法として、画像データDと画像データdを単に加算して修復することが考えられる。
なお、この場合、画像データDにも画像データdにもそれぞれ暗電荷に起因するオフセット分が重畳されているため、それらの値を差し引いて両者が加算される。画像データDに重畳されるオフセット分はオフセット補正値Oとも呼ばれ、後述する第2の実施形態で詳しく説明する。
そして、画像データD中に含まれている、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因するデータ、すなわち暗電荷分を含まないデータを真の画像データD*というとすると、真の画像データD*は、各放射線検出素子7ごとに、
D*=D−O …(1)
の演算を行うことにより算出される。
また、画像データdに重畳されているオフセット分として上記のオフセット補正値Oを用いることは困難であるが、上記のように、放射線画像撮影前に繰り返し行われる読み出し処理で読み出される画像データdのうち、放射線の照射が開始される以前に読み出された画像データdは、放射線の照射により発生した電荷分を含まず、暗電荷のみに起因するデータであるため、画像データdに対するオフセット分として用いることができる。
これを画像データdに対するオフセット補正値oと呼ぶこととすると、放射線画像撮影前の読み出し処理で、放射線の照射が開始されてから放射線の照射開始が検出されるまでの間に読み出された画像データd中に含まれている、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因するデータ、すなわち暗電荷分を含まないデータを真の画像データd*は、各放射線検出素子7ごとに、
d*=d−o …(2)
の演算を行うことにより算出される。なお、画像データdに対するオフセット補正値oを実験等により予め有しておくように構成することも可能である。
そして、線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7について、上記の真の画像データD*と真の画像データd*とを加算することによって、当該各放射線検出素子7から本来読み出されるべき真の画像データD*を修復することが可能となる。
しかし、前述した図78を用いて説明したように、放射線の照射が開始されてから放射線の照射開始が検出されるまでの間に読み出された画像データd中には、上記の放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因するデータや、暗電荷に起因するデータのほかに、放射線の照射により当該放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている他の放射線検出素子7からリークする電荷qの増加分も含まれている。
そのため、上記(2)式に従って、画像データdからオフセット補正値oを減算して真の画像データd*を算出すると、真の画像データd*は、前述した真の画像データD*の一部そのものの値にはならず、それに、上記の他の放射線検出素子7からリークする電荷qの放射線の照射による増加分が加算された値になる。
上記のように、真の画像データD*と真の画像データd*とを単純に加算する構成は、上記の他の放射線検出素子7からリークする電荷qの放射線の照射による増加分を無視するものであるが、そもそも本実施形態では発生する線欠陥の本数を非常に少なく本数に抑制することができるため、この方法によっても、真の画像データD*を比較的良好に修復することができる。
また、これらの他の放射線検出素子7からリークする電荷qの放射線の照射による増加分を修正して加算するように構成することも可能であり、その場合、例えば、上記(2)式に従って算出した真の画像データd*に乗ずる係数を予め設定しておき、その係数を乗算した真の画像データd*を真の画像データD*に加算するように構成することが可能である。
そして、この場合、上記の係数は、例えば、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の単位時間あたりの線量すなわち線量率等に応じて値が変わる係数等とすることが可能である。また、係数を一定値とすることも可能であり、適宜設定される。このように構成すれば、上記の放射線が照射されている間に生じる現象の影響を排除して、各放射線検出素子7の真の画像データD*をより的確に修復することが可能となる。
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態では、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理や、放射線の照射開始の検出後の電荷蓄積モードへの移行、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理までの各処理について説明した。
第2の実施形態では、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理後に行われる、オフセット補正値Oを取得するための処理について説明する。
オフセット補正値Oはダーク読取値とも呼ばれ、電荷蓄積モードに移行して各TFT8がオフ状態とされていた間に、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生して蓄積される電荷とは別に、放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等によって発生した暗電荷等が各放射線検出素子7内に蓄積されたデータに相当し、画像データDのオフセット分に相当する。
オフセット補正値Oの値、すなわち画像データD中にどの程度のオフセット分が含まれているかは、画像データDの値を見ただけでは分からないため、別途、オフセット補正値Oを得るための処理が必要となる。そのため、通常、放射線画像撮影の前または後に、放射線画像撮影装置1に放射線を照射せずに、各TFT8をオフ状態とした状態で放射線画像撮影装置1を放置した後、画像データDの読み出し処理と同様にして各放射線検出素子7から蓄積された暗電荷等を読み出すことで、各放射線検出素子7ごとにオフセット補正値Oが取得される。
そして、外部のコンピュータ等で行われる放射線画像の生成処理で、上記の(1)式に示したように各画像データDからそれぞれオフセット補正値Oを減算して、放射線の照射により発生した電荷のみに由来する真の画像データD*が算出され、この真の画像データD*に基づいて放射線画像が生成される。
従って、このオフセット補正値Oを的確に取得することができないと、各画像データDからオフセット補正値Oを減算して得られる真の画像データD*が正常な値ではなくなり、それに基づいて生成される放射線画像が異常なものとなったり、画質が劣化したものとなってしまう。
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1でオフセット補正値Oを的確に取得するための処理について説明する。
なお、本実施形態では、オフセット補正値Oを放射線画像撮影後に取得する場合について説明する。また、上記のように、各放射線検出素子7からオフセット補正値Oを読み出す処理は、図9や図10に示した画像データDの読み出し処理と同様にして行われるが、以下、それと区別して、オフセット補正値読み出し処理という。
ここで、オフセット補正値Oを取得する際の前提となる事項について説明する。
[前提1]
オフセット補正値Oは、上記のように、各TFT8がオフ状態とされていた間に放射線検出素子7内で発生して蓄積された電荷(暗電荷)に相当するものであるが、より正確に言えば、本実施形態や第1の実施形態では、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、走査線5のあるラインLnに印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えた後、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で走査線5の当該ラインLnに印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの間に、放射線検出素子7内で発生して蓄積された電荷に相当するものである。
なお、以下では、上記のように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に走査線5のあるラインLnに印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから。放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で走査線5の当該ラインLnに印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの間の時間間隔を、実効蓄積時間という。
[前提2]
この実効蓄積時間は、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理における処理のシーケンスと、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理における処理のシーケンスとによって、走査線5の各ラインL1〜Lxで同じ時間間隔になる場合もあり、異なる時間間隔になる。
すなわち、例えば、図12に示したモデル構成の場合のように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の場合と同じオン時間や同じゲート周期で走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加すると、少なくとも走査線5のラインL1〜Ln+2同士では実効蓄積時間が同じになり、走査線5の各ラインLn+3〜Lxでは別の長さの実効蓄積時間になるが、走査線5の各ラインLn+3〜Lx同士では実効蓄積時間が同じになる。
一方、例えば、図13に示したように放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の場合よりも長いオン時間としたり、或いは、図26に示したように放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の場合よりも長いゲート周期にしたりする場合には、走査線5の各ラインL1〜Lxにおける実効蓄積時間は異なる時間間隔になる。
すなわち、例えば図13の場合には、同図を簡略化した図38に示すように、走査線5の各ラインL1〜L4におけるTFT8の実効蓄積時間T1〜T4が、各走査線5ごとに異なる時間間隔になる。
また、図13において放射線画像撮影後の画像データDにおける読み出し順を替えた場合を示した図36の場合でも、同図を簡略化した図39に示すように、走査線5の各ラインL1〜L4におけるTFT8の実効蓄積時間T1〜T4が、各走査線5ごとに異なる時間間隔になる。
[前提3]
本発明者らが行った実験では、オフセット補正値Oは、TFT8の実効蓄積時間には必ずしも線形に(すなわち比例して)増加するものではないことが分かっている。これは、上記のように放射線を照射しない状態で放射線画像撮影装置1を放置した場合に各放射線検出素子7内で発生する暗電荷の発生速度が時間変化に対して非線形であるためと考えられる。なお、オフセット補正値Oは、TFT8の実効蓄積時間が同じであれば、同じ値になる。
以上の各事項を前提として、オフセット補正値Oを取得するための処理を、以下の各構成例のようにして構成することが可能である。
[オフセット補正値Oを取得するための処理]
[構成A]
上記の前提3で述べたように、オフセット補正値Oは、TFT8の実効蓄積時間に比例する形では増加しないが、TFT8の実効蓄積時間が同じであれば同じ値になる。そこで、例えば、以下のようにして、走査線5の各ラインLごとのTFT8の実効蓄積時間を、画像データDの読み出し処理とオフセット補正値読み出し処理とで同じ実効蓄積時間になるように構成することができる。
なお、以下では、図39に示したように走査線5の各ラインL1〜L4にオン電圧を順次印加して、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理と放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理とを行う場合について説明するが、他の構成の場合についても同様に説明される。
また、以下では、走査線5が各ラインL1〜L4で構成されている場合について説明するが、以下の説明が、図7等に示したように、検出部Pに走査線5の各ラインL1〜Lxが数千本から数万本設けられた場合に一般化できることは改めて説明するまでもない。
例えば、図39に示したように放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理、電荷蓄積モードへの移行、および放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理を行った後、図40に示すように、それらの各処理と同じタイミングで走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜L4に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替え、読み出し回路17に順次読み出し動作を行わせて、画像データdの読み出し処理、電荷蓄積モードへの移行(ただし放射線は照射されない。)、およびオフセット補正値読み出し処理を行うように構成することが可能である。
つまり、簡単に言えば、画像データDを読み出すまでの処理シーケンス(すなわち画像データdの読み出し処理、電荷蓄積モードへの移行、および画像データDの読み出し処理)と同じ処理シーケンスを、画像データDの読み出し処理後に繰り返して、オフセット補正値Oを読み出す。
しかし、この場合、画像データDの読み出し処理後の画像データdの読み出し処理では、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始等を検出する必要はないため、制御手段22は、第1の実施形態で説明したような画像データdの監視は行わない。また、画像データDの読み出し処理後の画像データdの読み出し処理の代わりに、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成してもよい。そして、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成する場合、上記のオン時間やゲート周期は、画像データdの読み出し処理の場合と同じ時間や周期とされる。
図40に示したように構成すれば、画像データDを読み出す際の処理シーケンスと同じ処理シーケンスでオフセット補正値Oが読み出されるため、上記のように、走査線の各ラインL1〜L4ごとのTFT8の実効蓄積時間T1〜T4同士が互いに異なる場合であっても、走査線の各ラインL1〜L4ごとに見た場合には、画像データDを読み出す際のTFT8の実効蓄積時間と、その後のオフセット補正値Oを読み出す際のTFT8の実効蓄積時間とが同じ時間間隔になる。
そのため、オフセット補正値O自体は走査線5の各ラインL1〜L4ごとにそれぞれ異なる値になるとしても、走査線の各ラインL1〜L4ごとに見た場合には、読み出された画像データDに含まれるオフセット分と、オフセット補正値読み出し処理で読み出されたオフセット補正値Oとが同じ値になる。
そして、各放射線検出素子7ごとに見た場合も、画像データDの読み出し処理で放射線検出素子7から読み出された画像データDに含まれるオフセット分と、その後のオフセット補正値読み出し処理で当該放射線検出素子7から読み出されたオフセット補正値Oとが同じ値になる。
従って、放射線画像の生成処理の際に、読み出された各画像データDから、オフセット補正値読み出し処理で読み出されたオフセット補正値Oを減算することで、放射線の照射により発生した電荷のみに由来する真の画像データD*を各放射線検出素子7ごとに的確に算出することが可能となる。そして、この真の画像データD*に基づいて放射線画像を的確に生成することが可能となる。
なお、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理を終了した後、上記のように、画像データDを読み出すまでの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返す前に、すなわち、図40における2回目の画像データdの読み出し処理(或いは各放射線検出素子7のリセット処理)の前に、所定回数の各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
この場合のリセット処理は、画像データdの読み出し処理の場合と同じオン時間やゲート周期で行われる必要はなく、例えば短いオン時間やゲート周期でリセット処理を高速に繰り返すように構成することも可能である。そして、この場合、リセット処理を所定回数行った後、2回目の画像データdの読み出し処理、或いは画像データdの読み出し処理の場合と同じオン時間やゲート周期で行う各放射線検出素子7のリセット処理を行って電荷蓄積モードを経た後、オフセット補正値読み出し処理が行われる。
すなわち、オフセット補正値読み出し処理の直前の処理シーケンスが、画像データDを読み出すまでの処理シーケンスと同じ処理シーケンスであればよく、その間に、各放射線検出素子7のリセット処理等の適宜の処理を行うように構成することが可能である。
上記のように構成する場合、制御手段22は、画像データDの読み出し処理で各放射線検出素子7から読み出された画像データDを記憶手段40(図7等参照)に順次保存させた後、続けて他の撮影を行わない場合には、自動的に同じ処理シーケンスを繰り返してオフセット補正値読み出し処理を行い、読み出されたオフセット補正値Oを記憶手段40に順次保存させる。
そして、適宜のタイミングで各画像データDと各オフセット補正値Oとを記憶手段40から順次読み出して、それらの画像データをアンテナ装置39(図1、図7等参照)等を介して画像処理を行う外部のコンピュータ等に送信するように構成される。また、制御手段22が自ら各画像データDからオフセット補正値Oを減算する減算処理を行うように構成することも可能である。
[構成B]
また、例えば、図41に概略的に示すように、画像データDの読み出し処理が終了した後、放射線が照射されない状態で、走査線5の各ラインL1〜L4ごとに、画像データDの読み出し処理で走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてからオフセット補正値読み出し処理で走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでのTFT8の実効蓄積時間が、図39に示したTFT8の実効蓄積時間T1〜T4とそれぞれ同じになるようなタイミングでオフセット補正値読み出し処理を行うように構成することが可能である。
すなわち、簡単に言えば、走査線5の各ラインL1〜L4ごとに、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理から放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理までの時間間隔(すなわちTFT8の実効蓄積時間T1〜T4)と、画像データDの読み出し処理からオフセット補正値読み出し処理までの時間間隔(実効蓄積時間)が同じになるように、それぞれオフセット補正値読み出し処理を行う。
また、図示を省略するが、画像データDの読み出し処理が終了した後で、一旦各放射線検出素子7のリセット処理を行った後、この各放射線検出素子7のリセット処理からオフセット補正値読み出し処理までの時間間隔が、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理から放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理までの時間間隔と同じになるように、それぞれオフセット補正値読み出し処理を行うように構成することも可能である。
このように構成すれば、画像データDの読み出す処理までのTFT8の実効蓄積時間T1〜T4と、オフセット補正値読み出し処理までのTFT8の実効蓄積時間T1〜T4とが同じ時間間隔になるため、上記と同様に、各放射線検出素子7ごとに、画像データDに含まれるオフセット分と、オフセット補正値読み出し処理で読み出されたオフセット補正値Oとが同じ値になる。
そのため、放射線画像の生成処理の際に、読み出された各画像データDからオフセット補正値Oを減算することで、放射線の照射により発生した電荷のみに由来する真の画像データD*を各放射線検出素子7ごとに的確に算出することが可能となる。そして、この真の画像データD*に基づいて放射線画像を的確に生成することが可能となる。
[構成C]
一方、図42に示すように、画像データDの読み出し処理を終了した後、すぐに、或いは所定時間経過後に、放射線が照射されない状態で、画像データDの読み出し処理と同じタイミングで走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜L4にオン電圧を順次印加させてオフセット補正値読み出し処理を行うように構成することも可能である。なお、この場合も、画像データDの読み出し処理が終了した後で一旦各放射線検出素子7のリセット処理を行い、その後、オフセット補正値読み出し処理を行うように構成することも可能である。
この場合、画像データDの読み出し処理からオフセット補正値読み出し処理までの時間間隔(すなわちTFT8の実効蓄積時間)が、走査線5の全てのラインL1〜L4で同じ時間間隔Taになる。そのため、この場合、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理から放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理までの走査線5の各ラインL1〜L4ごとのTFT8の実効蓄積時間T1〜T4と、画像データDの読み出し処理からオフセット補正値読み出し処理までの時間間隔Taとは同じ時間間隔にならない。
そのため、走査線の各ラインL1〜L4ごとに見た場合、読み出された画像データDに含まれるオフセット分と、オフセット補正値読み出し処理で読み出されたオフセット補正値Oとが同じ値にならず、画像データDからオフセット補正値Oを減算しても、真の画像データD*を的確に算出することができない。すなわち、本来の真の画像データD*とは異なる値になってしまう。
そこで、この構成Cの場合には、例えば、予め図43に示すようなTFT8の実効蓄積時間Tと基準となるオフセット補正値O*との関係を表すテーブルや関係式を実験的に求めておき、そのテーブルや関係式を、放射線画像撮影装置1から送信されてきた画像データDやオフセット補正値Oに基づいて画像処理を行う外部のコンピュータ等に予め保持させておく。なお、この場合、実験は、例えば、放射線画像撮影装置1の読み出し回路17を含む各機能部に長時間通電する等して、各機能部や基板4等の温度等が安定した状態で行われる。
そして、例えば、画像データDの読み出し処理で走査線5のラインL1に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDに含まれるオフセット分(以下、オフセット分O1と表す。)を算出する場合には、コンピュータ等は、まず、上記のテーブルを参照し、或いは上記の関係式に従って、実効蓄積時間T1に対応する基準となるオフセット補正値O1*(図43参照)を読み出し、或いは算出する。
しかし、図43に示したテーブルや関係式を求める際の読み出し回路17の温度等の撮影条件と、実際に放射線画像撮影が行われた撮影条件とが異なるため、このように読み出され或いは算出された基準となるオフセット補正値O1*を、そのまま上記のオフセット分O1として用いることができない。
そのため、例えば、上記のテーブルや関係式に基づいて、実効蓄積時間Taにおける基準となるオフセット補正値Oa*を求め、基準となるオフセット補正値O1*と上記のオフセット分O1との比が、基準となるオフセット補正値Oa*とオフセット補正値読み出し処理で読み出されたオフセット補正値Oとの比に等しい、すなわち、
O1*:O1=Oa*:O …(3)
が成り立つことを利用して、上記(3)式から導出される下記(4)式に従って、読み出されたオフセット補正値Oから上記のオフセット分O1を算出する。
O1=O×O1*/Oa* …(4)
そして、各画像データDから、上記(4)式に従って算出したオフセット分O1を減算することで、放射線の照射により発生した電荷のみに由来する真の画像データD*を各放射線検出素子7ごとに的確に算出することが可能となる。
また、走査線5のラインL2〜L4についても同様にして処理を行い、画像データDの読み出し処理で走査線5のラインL2〜L4に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDに含まれるオフセット分(すなわちオフセット分O2〜O4)を算出し、各画像データDから、算出したオフセット分O2〜O4をそれぞれ減算することで、放射線の照射により発生した電荷のみに由来する真の画像データD*を各放射線検出素子7ごとに的確に算出することが可能となる。
そして、上記のように構成することで、構成Cの場合においても、算出した真の画像データD*に基づいて放射線画像を的確に生成することが可能となる。
なお、上記の各構成A〜Cでは、画像データDの読み出し処理後に、オフセット補正値読み出し処理を含むオフセット補正値Oを取得するための処理をそれぞれ1回だけ行う場合について説明したが、例えば、オフセット補正値Oを取得するための処理を複数回行うように構成し、各処理で得られた各オフセット補正値Oを、放射線検出素子7ごとに平均し、その平均値を各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oとして用いるように構成することも可能である。
[第3の実施の形態]
上記の第2の実施形態では、オフセット補正値Oを取得するために、主に放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の後に、オフセット補正値読み出し処理を行う場合について説明した。
一方、上記のように放射線画像撮影ごとにオフセット補正値Oを取得する代わりに、予め各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oを備えておき、それらを参照してオフセット補正値Oを決定するように構成することも可能である。
このように構成する場合、上記のように、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5の位置によって、各走査線5のTFT8の実効蓄積時間が変わってくることを考慮しなければならない。
すなわち、例えば簡略化された図39に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で、例えば走査線5のラインL2にオン電圧が印加されて読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことが検出された場合、走査線5の各ラインL1〜L4のTFT8の実効蓄積時間T1〜T4は、実効蓄積時間T2が最も短く、実効蓄積時間T3が最も長くなる。
しかし、仮に走査線5のラインL3にオン電圧が印加されて読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことが検出された場合には、走査線5の各ラインL1〜L4のTFT8の実効蓄積時間T1〜T4は、実効蓄積時間T3が最も短く、実効蓄積時間T4が最も長くなる。
このことを一般化して分かるように、走査線5の各ラインL1〜LxにおけるTFT8の実効蓄積時間T1〜Txは、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5がどの走査線5であるかによって変わる。そして、実効蓄積時間T1〜Txが変われば、例えば図43に示したように、各放射線検出素子7のオフセット補正値Oの値も変わる。
そのため、上記のように、予め各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oを備えておくように構成する場合には、例えば図44に示すように、予め実験的に、ある走査線5にオン電圧が印加された際に放射線の照射の開始が検出された場合のオフセット補正値O(m,n)を取得して、それらを各放射線検出素子(m,n)にそれぞれ割り当ててオフセット画像poを作成する。
この場合、各オフセット補正値O(m,n)を取得する処理を1回だけ行うと、取得された各オフセット補正値O(m,n)にはノイズが含まれるため、同一の走査線5にオン電圧が印加された際に放射線の照射開始が検出された場合のオフセット補正値O(m,n)を複数回取得して、例えばそれらのオフセット補正値O(m,n)の各放射線検出素子ごとの平均値を当該放射線検出素子(m,n)のオフセット補正値O(m,n)とするように構成することが好ましい。
そして、この処理を、放射線の照射開始が検出された際にオン電圧が印加されていた走査線5を替えながら、全ての走査線5についてそれぞれオフセット画像poを作成する。そして、図45に示すように、各走査線5ごとに作成された一群のオフセット画像poを予め記憶手段40(図7等参照)に保存する等して有しておく。
そして、実際の放射線画像撮影の際に、制御手段22は、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出した画像データdの値に基づいて上記のようにして放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5のラインLnを検出し、そのライン番号(この場合はn)を記憶しておく。
そして、放射線画像撮影後の各処理で、オフセット補正値Oが必要となった段階で、そのライン番号nに対応する走査線5(すなわち走査線5のラインLn)に対応するオフセット画像poを参照して、当該オフセット画像poで各放射線検出素子(m,n)にそれぞれ割り当てられている各オフセット補正値O(m,n)を割り出して、それらの各オフセット補正値O(m,n)を、各放射線検出素子(m,n)についての各オフセット補正値O(m,n)としてそれぞれ決定するように構成することが可能である。
ここで、上記のように構成する場合には、オフセット補正値Oが放射線画像撮影装置1の基板4(図3等参照)の温度等によって変化し得る点に注意が必要となる。
例えば、放射線画像撮影装置1が、図示しない支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置である場合には、例えば放射線画像撮影装置1に常時電力を供給するように構成して、常時撮影可能な状態としておくことができる。その場合、放射線画像撮影装置1の基板4の温度はほぼ一定の温度となる状態が維持されるため、予めオフセット画像poを作成する際に、同じ温度条件の下で作成すれば、上記のようにオフセット画像poに割り当てられたオフセット補正値O(m,n)をそのまま各放射線検出素子(m,n)ごとのオフセット補正値O(m,n)として用いることができる。
しかし、第1の実施形態で示したような可搬型の放射線画像撮影装置1の場合、バッテリ41(図7参照)から常時電力を供給するように構成すると、バッテリ41の電力の消耗が激しくなり、絶えず充電を強いられる状況になり、撮影効率の低下を招く。
そのため、このようなバッテリ内蔵型の放射線画像撮影装置1の場合、放射線画像撮影以外の場合には必要な機能部にのみ電力を供給する省電力モード(スリープモードともいう。)に切り替えることができるように構成されている場合が多い。そして、電力の消費を極力抑制するために、放射線画像撮影の直前まで省電力モードとされる場合も少なくない。
しかし、バッテリ内蔵型の放射線画像撮影装置1がこのように運用されると、実際の放射線画像撮影の際の基板4の温度が、オフセット画像poの作成時における基板4の温度と同じにならず、そのため、オフセット画像poに割り当てられたオフセット補正値Oをそのまま使うことができない場合がある。
そこで、例えば、放射線画像撮影装置1が図19に示したようにシンチレータ3が基板4上に設けられた検出部Pより小さく形成されている場合には、検出部P上のシンチレータ3直下以外の位置C、すなわちシンチレータ3からの電磁波が入射しない検出部P上の位置Cのうち、同図中のC1の位置の信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出される画像データdに基づいて、オフセット画像poに割り当てられたオフセット補正値Oを修正して用いるように構成することができる。
図19中のC1の位置の信号線6に接続されている各放射線検出素子7には、シンチレータ3からの電磁波が入射しないため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されても、これらの放射線検出素子7では放射線の照射による電荷の発生がない状態となっている。そして、これらの放射線検出素子7からは、常時、暗電荷に起因する画像データdが読み出される。そのため、これらの各放射線検出素子7から読み出される画像データdを用いて、放射線画像撮影装置1の基板4の温度が現時点でどの程度の温度になっているかが分かる。
しかし、放射線画像撮影装置1の基板4の現時点での温度を、これらの各放射線検出素子7から読み出された画像データdに基づいて割り出す必要はなく、暗電荷に起因する画像データdの大きさが、今回の撮影時と、オフセット画像poの作成時とでどの程度変化しているかが分かればよい。そして、それに応じてオフセット画像poに割り当てられたオフセット補正値Oを修正することができる。
そこで、この場合、例えば、オフセット画像poの作成時に、C1の位置の信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データdの平均値(または合計値。以下同じ)を画像データdの情報として算出しておき、一群のオフセット画像poとともに保存しておく。
また、実際の放射線画像撮影の際にも、当該信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データdの平均値を算出する。
そして、上記のように、実際の放射線画像撮影の際に、放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5に対応するオフセット画像poを参照して、各放射線検出素子(m,n)ごとの各オフセット補正値O(m,n)を割り出した後、例えば、実際の放射線画像撮影の際に算出した各画像データの平均値をオフセット画像poの作成時の各画像データの平均値に除算して算出した割合を、割り出した各オフセット補正値O(m,n)にそれぞれ乗算して、今回の放射線画像撮影における各放射線検出素子7のオフセット補正値O(m,n)を算出して決定するように構成することができる。
また、上記のようにして算出した割合を割り出した各オフセット補正値O(m,n)に乗算する代わりに、例えば、実際の放射線画像撮影の際に算出した各画像データの平均値からオフセット画像poの作成時の各画像データの平均値を減算して算出した差分を、割り出した各オフセット補正値O(m,n)にそれぞれ加算して、今回の放射線画像撮影における各放射線検出素子7のオフセット補正値O(m,n)を算出して決定するように構成することも可能である。
このようにして、オフセット画像poで各放射線検出素子(m,n)にそれぞれ割り当てられている各オフセット補正値O(m,n)を、オフセット画像poの作成時の画像データdの情報と、今回の撮影時に読み出された画像データdの情報とに基づいて修正して、各放射線検出素子(m,n)についての各オフセット補正値O(m,n)としてそれぞれ決定することが可能となる。
また、放射線画像撮影装置1が、図19に示したようにシンチレータ3が基板4上に設けられた検出部Pより小さく形成されていないような場合には、例えば、検出部P上の信号線6のうちの1本或いは複数の信号線6に接続されている各放射線検出素子7とシンチレータ3との間に図示しない遮光板を介在させるように構成する等して、当該各放射線検出素子7を、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されても放射線の照射による電荷の発生がない状態とすることができる。
そして、このような状態とされた各放射線検出素子7を用いて、上記と同様にして、オフセット画像poで各放射線検出素子(m,n)にそれぞれ割り当てられている各オフセット補正値O(m,n)を修正するように構成することが可能もある。
一方、上記の各実施形態で示したように、本発明では、放射線画像撮影前から画像データdの読み出し処理が繰り返し行われており、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始される前に読み出された画像データdは、暗電荷に起因するデータである。
そこで、この暗電荷に起因する画像データdを用いて、オフセット画像poで各放射線検出素子(m,n)にそれぞれ割り当てられている各オフセット補正値O(m,n)を修正するように構成することが可能もある。
すなわち、この場合には、例えば、オフセット画像poの作成時に、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理を繰り返し行わせて、例えば、検出部P上の全ての各放射線検出素子7或いは所定範囲の各放射線検出素子7から読み出された各画像データdの平均値(または合計値。以下同じ)を画像データdの情報として算出しておく。
そして、実際の放射線画像撮影の際にも、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始される前の画像データdの読み出し処理で、オフセット画像poの作成時と同じ範囲の各放射線検出素子7から読み出された各画像データdの平均値を算出する。そして、上記と同様に、それらの平均値同士の割合や差分を算出して、今回の放射線画像撮影における各放射線検出素子7のオフセット補正値O(m,n)を算出して決定するように構成することができる。
上記のようにして、オフセット画像poで各放射線検出素子(m,n)にそれぞれ割り当てられている各オフセット補正値O(m,n)を、オフセット画像poの作成時の画像データdの情報と、今回の撮影時に読み出された画像データdの情報とに基づいて修正して、各放射線検出素子(m,n)についての各オフセット補正値O(m,n)としてそれぞれ決定するように構成することで、放射線画像撮影の前や後にオフセット補正値読み出し処理を行う必要がなくなる。
そのため、オフセット補正値読み出し処理を行わない分だけ電力の消費を抑制することが可能となるとともに、前述したように、本画像である画像データD等を外部のコンピュータ等に送信して診断用放射線画像を生成したり、プレビュー画像を作成して表示したりする処理を、より迅速に行うことが可能となる。
ところで、以下のように構成すれば、放射線画像撮影後にオフセット補正値読み出し処理を行うことなく、或いは、上記のように予めオフセット画像poを備えておくことなく、各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oを取得することができる。
図12に示したモデル構成の場合、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理では、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理の場合と同じオン時間や同じゲート周期で走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が印加されるため、第2の実施形態の[前提2]で述べたように、少なくとも走査線5のラインL1〜Ln+2同士では実効蓄積時間が同じになり、走査線5の各ラインLn+3〜Lxでは別の長さの実効蓄積時間になるが、走査線5の各ラインLn+3〜Lx同士では実効蓄積時間が同じになる。
そして、このモデル構成に、図36で示した、画像データDの読み出し処理で、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において放射線の照射が開始されたことを検出した走査線5のラインLnの次にオン電圧を印加すべき走査線5のラインLn+1からオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理を行う構成を適用すると、図46に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が印加される状態になる。そして、このように構成すれば、走査線5の全てのラインL1〜Lxで、TFT8の実効蓄積時間が同じになる。
一方、これまで放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理では、図74に示したように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加し、走査線5の最終ラインLxにオン電圧を印加した次のタイミングですぐに走査線5の最初のラインL1にオン電圧を印加するようにして、各フレームごとの読み出し処理を繰り返すことを前提に説明した。
そして、この場合も、TFT8の実効蓄積時間は走査線5の全てのラインL1〜Lxで同じになるが、図46に示した場合のTFT8の実効蓄積時間よりも電荷蓄積モードの分だけ短くなっている。
そこで、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、図74に示したように、走査線5の最終ラインLxにオン電圧を印加した次のタイミングですぐに走査線5の最初のラインL1にオン電圧を印加する代わりに、例えば図47に示すように、1フレーム分の画像データdの読み出し処理が終了した後、電荷蓄積モードにおいて走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加する期間と同じ期間だけ走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加し、その後、次のフレームの画像データdの読み出し処理を開始するようにして、各フレームごとの画像データdの読み出し処理を繰り返して行うように構成すれば、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理におけるTFT8の実効蓄積時間と、図46に示した放射線画像撮影時のTFT8の実効蓄積時間とを同じ時間とすることができる。
そして、このようにして行われる放射線画像撮影前の読み出し処理で、放射線の照射が開始される前のフレームで読み出された画像データdとして、暗電荷に起因する画像データdが読み出されるため、この画像データdを各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oとして用いることが可能となる。
この場合、放射線の照射が開始される前の数フレーム分の画像データdすなわちオフセット補正値Oを取得しておき、例えば、それらの複数のオフセット補正値Oの平均値を算出し、算出したオフセット補正値Oの平均値を各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oとして用いるように構成することも可能である。
このように構成すれば、放射線画像撮影後にオフセット補正値読み出し処理を行う必要がなく、また、上記のように予めオフセット画像poを備えておく必要もなくなる。また、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理を、各フレームごとに電荷蓄積モードにおける上記の期間だけおいて行うようにすればよいため、オフセット補正値Oを取得するための処理構成が非常に簡便になる。
なお、本実施形態では、上記の各処理を、放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うことを前提に説明したが、例えば、放射線画像撮影装置1から画像データDや画像データd等の必要なデータを、画像データDに対する画像処理を行う外部の図示しない放射線画像処理装置に送信して、放射線画像処理装置で行うように構成することも可能である。
この場合、オフセット画像poを用いて各放射線検出素子7のオフセット補正値Oを算出、修正するように構成する場合には、当該放射線画像撮影装置1に関する一群のオフセット画像poの情報を、放射線画像処理装置の図示しない記憶手段に予め保存しておくように構成される。
また、画像処理の対象となる画像データDが取得された放射線画像撮影において、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5のラインLnの情報(すなわち当該走査線5のライン番号n等の情報)等の必要な情報が、放射線画像撮影装置1から放射線画像処理装置に適宜送信される。
[第4の実施の形態]
上記の第2の実施形態では、各TFT8をオフ状態としている間に各放射線検出素子7内で発生し蓄積される、放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等によって発生した暗電荷等に起因するオフセット補正値Oを取得する場合の種々の構成について説明した。
ところで、本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置1に強い放射線が照射された場合、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を行った後、上記のようにしてオフセット補正値Oを読み出すと、前述したような放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等によって発生した暗電荷等に起因するオフセット分だけでなく、それとは別のいわゆるラグ(lag)によるオフセット分が読み出される場合があることが分かっている。
そして、暗電荷等に起因するオフセット分は、例えば各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返すことによって比較的容易に除去されるが、ラグによるオフセット分は、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返し行っても容易には消えないという特徴がある。
すなわち、暗電荷等に起因するオフセット分は、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返すと、比較的速やかに0に近い値まで低下する。しかし、ラグによるオフセット分は、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返してもなかなか除去できず、リセット処理を繰り返し行っても、放射線を照射しない状態で放射線画像撮影装置1を放置した後でオフセット補正値読み出し処理を行うと、暗電荷等に起因するオフセット分のみの場合よりも大きい値のオフセット補正値Oが読み出される。
このように、各放射線検出素子のリセット処理を繰り返してもラグによるオフセット分が容易に除去できない理由は、強い放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電子や正孔の一部が、一種の準安定なエネルギーレベル(metastable state)に遷移して、放射線検出素子7内での移動性を失った状態が比較的長時間保たれるためと考えられている。そのため、放射線画像撮影後に例えば各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返してもラグによるオフセット分がなかなか除去できない。
そして、この準安定なエネルギー状態の電子や正孔は、熱エネルギーによって、ある確率で、この準安定なエネルギーよりも高いと考えられるエネルギーレベルの伝導帯に遷移して移動性が復活する。このように、移動性が復活した電子や正孔がいわばじわじわと現れるため、放射線画像撮影後のオフセット補正値読み出し処理で、暗電荷等に起因するオフセット分にラグによるオフセット分が重畳されて、オフセット補正値Oとして読み出されると考えられている。なお、以下、このラグによるオフセット分をOlagと表す。
なお、このラグによるオフセット分Olagは、強い放射線が照射された場合ばかりでなく、弱い放射線を含む通常の線量の放射線が照射された場合にも生じる。しかし、さほど強くない放射線が照射された場合には、オフセット補正値Oに含まれるラグによるオフセット分Olagの割合が無視できる程度に小さい場合が多い。
どの程度の線量の放射線が照射された場合にラグによるオフセット分Olagが無視できない程度に大きくなるかは、放射線画像撮影装置1に用いられるフォトダイオード等の放射線検出素子7の性能等によって決まる。そのため、以下で説明する第4の実施形態の手法を、どの程度の線量の放射線が照射された際に用いるかは、放射線画像撮影装置1ごとに適宜決められる。また、常時、第4の実施形態の手法で画像データDの読み出し処理やオフセット補正値読み出し処理を行うように構成することも可能である。
一方、本発明者らの研究では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された後の画像データDの読み出し処理で、図48に示すように、走査線5の各ラインLnにオン電圧が順次印加されて画像データdが読み出された場合、走査線5の各ラインLnに印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられた直後からラグによるオフセット分Olagが発生する。
そして、単位時間あたりに発生するラグによるオフセット分OlagをΔOlagと表すと、この単位時間あたりのラグによるオフセット分ΔOlagは、図48に示すように、走査線5の各ラインLnに印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられた時点で最も大きく、その後、徐々に減衰していくことが分かっている。そのため、単位時間あたりのオフセット分ΔOlagの時間当たりの積分値として表すことができるラグによるオフセット分Olagは、時間的に図48に示すように増加する値になる。
そして、ラグによるオフセット分Olagがこのように時間的に増加するため、以下のような問題が生じる。
前述したように、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で読み出される画像データDには、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に由来する真の画像データD*と、暗電荷等に起因するオフセット分(以下、Odと表す。)とが含まれる。従って、
D=D*+Od …(5)
の関係が成り立つ。
また、オフセット補正値読み出し処理で読み出されるオフセット補正値Oには、暗電荷等に起因するオフセット分Odと、ラグによるオフセット分Olagとが含まれる。従って、
O=Od+Olag …(6)
の関係が成り立つ。
そのため、通常の画像処理の仕方に従って、画像データDからオフセット補正値Oを減算すると、暗電荷等に起因するオフセット分Odは相殺されるが、ラグによるオフセット分Olagは相殺されず、
D−O=(D*+Od)−(Od+Olag)
∴D−O=D*−Olag …(7)
となる。
いま、例えば、放射線画像撮影装置1に強い放射線を一様に、すなわち放射線入射面R(図1等参照)の前面に同じ線量の強い放射線を照射した場合を考える。この場合、最終的に得られる各放射線検出素子7ごとの画像データは、同じ値になるはずである。なお、この場合、放射線検出素子7の異常や、読み出し回路17ごとのオフセット分等は考慮しない。
この場合、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に由来する真の画像データD*は同じ値になる。しかし、例えば図40に示したように各処理を行うと、走査線5の各ラインL1〜L4ごとにTFT8の実効蓄積時間T1〜T4が異なるため、図49に示すように、走査線5の各ラインL1〜L4ごとのラグによるオフセット分Olag(1)〜Olag (4)の値が、互いに異なる値になる。
そのため、上記のように画像データDからオフセット補正値Oを減算する処理を行うと、上記(7)式中のD*は同じ値だが、Olagが走査線5の各ラインL1〜L4ごとに異なる値になるため、画像データDからオフセット補正値Oを減算して算出された値D−Oも走査線5の各ラインL1〜L4ごとに異なる値になってしまう。
そのため、算出した値D−Oに基づいて放射線画像を生成すると、放射線画像撮影装置1に強い放射線を一様に照射して撮影を行ったため放射線画像の全域が同じ明るさ(輝度)になるはずであるにもかかわらず、放射線画像の明るさが画像の各領域で僅かずつ異なる状態になってしまう。
そこで、本実施形態では、これを防止するための1つの方法として、例えば、図50に示すように、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理において走査線5の各ラインL1〜L4(走査線5の各ラインL1〜Lxの場合も同様であることは前述した通りである。)にオン電圧を順次印加するタイミングを可変させて、走査線5の全てのラインL1〜L4でTFT8の実効蓄積時間T1〜T4が同じ時間間隔Tcになるように可変させるように構成することが可能である。
このように構成すれば、上記の第2の実施形態の[構成A]のように、画像データDを読み出すまでの処理シーケンスと、画像データDの読み出し処理後、オフセット補正値Oを読み出すまでの処理シーケンスとを同じ処理シーケンスにする場合や、[構成B]のように、走査線5の各ラインL1〜L4ごとに、画像データDの読み出し処理までのTFT8の実効蓄積時間T1〜T4とオフセット補正値読み出し処理までのTFT8の実効蓄積時間T1〜T4が同じになるようにオフセット補正値読み出し処理を行う場合には、画像データDの読み出し処理前後のTFT8の実効蓄積時間T1〜T4が全て同じ時間間隔Tcになる。
そのため、上記の例のように、放射線画像撮影装置1に強い放射線を一様に照射した場合には、図48や図49からも分かるように、ラグによるオフセット分Olag(1)〜Olag(4)が全て同じ値になる。そして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に由来する真の画像データD*は同じ値になるから、上記(7)式に従って算出される値D−Oが、走査線5の全てのラインL1〜L4で同じ値になる。
そのため、算出した値D−Oに基づいて放射線画像を生成すると、放射線画像撮影装置1に強い放射線を一様に照射して撮影を行った場合には、放射線画像の全域が同じ明るさになる。このようにして、上記のような放射線画像上の明るさに段差が生じることを防止することができる。
なお、上記の第2の実施形態の[構成C]の場合も、画像データDの読み出し処理からオフセット補正値読み出し処理までの時間間隔Ta(図42参照)を、上記の時間間隔Tcと同じ時間間隔とすることで、上記と同様の効果を奏することが可能となる。また、その場合、画像データDの読み出し処理前後のTFT8の実効蓄積時間T1〜T4は、全て同じ時間間隔Tcになるため、上記のテーブルや関係式に基づき、上記(4)式に従って暗電荷に起因するオフセット分Od(式中ではO1)を算出する必要もなくなる。
また、前述したように、このラグによるオフセット分Olagは、強い放射線が照射された場合に問題となり、弱い放射線や通常の線量の放射線が照射された場合には問題にならない場合も多い。
そこで、例えば、放射線画像撮影装置1に照射される線量に応じて、放射線画像撮影後の画像データdの読み出し処理で走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧およびオフ電圧を印加するタイミングを、通常のタイミングで行わせるモード(第2の実施形態の場合)と、タイミングを可変させて行わせるモード(第4の実施形態の場合)との間で切り替えることができるように構成することも可能である。
このように構成すれば、本実施形態のように放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するタイミングを可変させると、放射線画像撮影装置1での各処理に要する時間が、通常のタイミングの場合に比べて若干長くなるが、弱い放射線や通常の線量の放射線が照射された場合には、通常のタイミングで画像データdの読み出し処理を行うことで、このような処理に要する時間が長くなることを防止することが可能となる。
[第5の実施の形態]
ところで、上記のように、放射線画像撮影前に各放射線検出素子7から画像データdを読み出す読み出し処理においては、通常、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させて、オン電圧を印加する走査線5をシフトさせながら、オン状態とするTFT8を順次切り替えて各放射線検出素子7から画像データdを次々と読み出していく。
その際、図51に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bやそれを構成する複数のゲートIC12aに、走査線5が接続されていない、いわゆる非接続の端子hが存在する場合がある。そして、このような状態で、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するためにオン電圧を印加する端子を順次切り替えていくと、やがて、非接続の端子hにオン電圧が印加される状態になる。
しかし、非接続の端子hには走査線5が接続されていないため、図52に示すように、非接続の端子hにオン電圧が印加されている間(図中のτ参照)は、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されず、いずれの放射線検出素子7からも画像データdが読み出されない状態になる。なお、図52で、1フレームとは、前述したように、検出部P(図3や図7参照)上の全ての走査線5にオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7から画像データdを読み出す期間をいう。
このように、画像データdの読み出し処理のフレーム間に、ゲートドライバ15bやゲートIC12aの非接続の端子hにオン電圧が印加されている期間τ、すなわちいずれの放射線検出素子7からも画像データが読み出されない期間τが存在する場合、その間に、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されてしまうと、この期間τの経過後のフレームで読み出し処理が開始された時点で初めて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が検出されるようになる。
つまり、この期間τ後のフレームの読み出し処理が開始されないと、放射線の照射を検出することができず、放射線の照射が開始されたことの検出が、実際に放射線の照射が開始された時点よりも遅れてしまうという問題がある。
放射線の照射開始が検出されると、通常、放射線の照射時間より長い時間に設定された所定時間だけ走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加した状態を維持して、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷を蓄積させるが、上記のように、放射線の照射開始の検出が遅れると、その分だけ、走査線5の全ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加する状態が長く続く。
そのため、放射線検出素子7自体の熱による熱励起等により発生する、いわゆる暗電荷が各放射線検出素子7内により多く蓄積されるようになり、読み出される本画像としての画像データDのS/N比が悪化するといった問題が生じ得る。そして、読み出される本画像としての画像データDのS/N比が悪化すると、画像データDに基づいて生成される放射線画像pの画質が劣化するといった問題があった。
そこで、放射線画像撮影装置1は、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理等において、画像データd等が読み出されない期間τを生じさせず、或いはこの期間τを極力短くすることが可能で、放射線の照射を的確に検出することが可能であることが望ましい。
本実施形態では、上記の問題を解決し得る放射線画像撮影装置1について説明する。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、放射線画像撮影装置1の各機能部における基本的な構成や動作等については上記の各実施形態の場合と同様である。しかし、本実施形態では、図53に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15b或いはそれを構成するゲートIC12aには、前述した走査線5が接続されていない非接続の端子hが存在している。
ここで、本実施形態における走査駆動手段15のゲートドライバ15bの構成や駆動のさせ方について説明する。図53は、本実施形態に係る走査駆動手段15の構成およびゲートドライバ15bに対する配線等を表す図である。
前述したように、本実施形態では、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、複数の前述したゲートIC12aが並設されて構成されており、各ゲートIC12aには、電源回路15aからオン電圧を供給する配線Lonを介してオン電圧が供給されるようになっている。また、各ゲートIC12aには、電源回路15aから図示しない別の配線を介してオフ電圧が供給されるようになっており、この配線Lonとオフ電圧を供給する配線とで、前述した配線15c(図7参照)が構成されている。
また、図53に示すように、本実施形態では、各ゲートIC12aの両端部には、それぞれ配線Lse1と配線Lse2とが接続されており、各配線Lse1、Lse2はそれぞれ制御手段22に接続されている。そして、各ゲートIC12aには、制御手段22からの配線Lshがそれぞれ接続されている。
そして、各ゲートIC12aの配線Lse1からシード信号が入力されると、各ゲートIC12aの図中上端の端子がアクティブな状態となり、上記のように電源回路15aから配線Lonを介してオン電圧が供給されると、アクティブな状態になっている当該上端の端子に接続されている走査線5にオン電圧が印加される。
そして、配線Lshを介してシフト信号が入力されると、アクティブな状態となる端子(以下、アクティブな端子という。)が、この場合は図中の1つ下側の端子に移動する。そして、その状態で電源回路15aから配線Lonを介してオン電圧が供給されると、アクティブな当該端子にオン電圧が印加され、当該端子に走査線5が接続されていれば、その走査線5にオン電圧が印加されるようになる。
このようにして、各ゲートIC12aは、配線Lse1を介してゲートIC12aにシード信号を入力し、配線Lshを介してシフト信号を次々と入力することで、アクティブな端子を1つずつ移動させることができるようになっている。また、各端子がアクティブな状態となるごとに配線Lonを介して電源回路15aからオン電圧を供給することで、各端子にオン電圧を順次印加し、各端子に接続されている各走査線5にオン電圧を順次印加することができるようになっている。
そして、本実施形態では、上記のように配線Lse1側から各ゲートIC12aにシード信号を入力すると、各ゲートIC12aの図中下端の端子がアクティブな状態とされた次のタイミングで配線Lse2からシード信号が出力されるようになっている。
そのため、例えば、図53中の最も上側のゲートIC12aに配線Lse1からシード信号を入力し、配線Lshを介してシフト信号を次々と入力してアクティブな端子をシフトさせて、各走査線5にオン電圧を順次印加した後、配線Lse2を介してシード信号が出力されるタイミングと同じタイミングで、2番目のゲートIC12aに配線Lse1を介してシード信号を入力する。
そして、配線Lshを介して2番目のゲートIC12aにシフト信号を次々と入力してアクティブな端子をシフトさせて、各走査線5にオン電圧を順次印加した後、配線Lse2を介してシード信号が出力されるタイミングと同じタイミングで、3番目のゲートIC12aに配線Lse1を介してシード信号を入力する。このような制御を繰り返すことで、各ゲートIC12aの各端子に接続されている走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加することができるようになっている。
また、本実施形態では、上記とは逆に、配線Lse2側から各ゲートIC12aにシード信号を入力して、配線Lshを介してシフト信号を次々と入力すると、今度は、各ゲートIC12aの図中下側の端子から順にアクティブな端子が上側にシフトしていくようになっている。
そのため、例えば、図53中の下側のゲートIC12aに配線Lse2からシード信号を入力し、配線Lshを介してシフト信号を次々と入力してアクティブな端子を上側にシフトさせて、各走査線5にオン電圧を順次印加した後、配線Lse1を介してシード信号が出力されるタイミングと同じタイミングで、その図中上側のゲートIC12aに配線Lse2を介してシード信号を入力する。
この制御を繰り返すことで、走査線5の各ラインL1〜Lxに、ラインLxから順にラインL1に向けてオン電圧を順次印加するように構成することもできるようになっている。
なお、あるゲートIC12aの配線Lse2とそれに隣接するゲートIC12aの配線Lse1とを互いに接続しておき、1つのゲートIC12aの配線Lse2或いは配線Lse1から出力されたシード信号を、次のゲートIC12aに配線Lse1或いは配線Lse2を介して自動的に入力するように構成することも可能である。
本実施形態では、上記のような構成の下で、上記の各実施形態と同様にして、放射線画像撮影前に読み出した画像データdに基づいて、放射線画像撮影装置1自体で放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを検出するようになっている。
ところで、図53に示したように、ゲートドライバ15bを構成する各ゲートIC12aの1つ(或いは複数)に、走査線5が接続されていない、いわゆる非接続の端子hが存在する場合に、上記のようにアクティブな端子を図53中の上側或いは下側に1つずつシフトさせながら各走査線5にオン電圧を順次印加するように構成すると、前述したような問題が生じる(図52参照)。
すなわち、非接続の端子にオン電圧が印加されている間(図中のτ参照)は、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されず、いずれの放射線検出素子7からも画像データdが読み出されないため、画像データdが読み出されない期間τ(図52参照)が生じる。
そのため、上記のように、放射線画像撮影装置1に対して実際に放射線が照射されると同時に放射線の照射開始を検出することができず、放射線の照射開始の検出が、実際に放射線の照射が開始された時点から遅れてしまい、リアタイムに放射線の照射開始を検出することができなくなるといった問題が生じ得る。
また、このように放射線の照射開始の検出が遅れる分、各放射線検出素子7内に蓄積される暗電荷の量が多くなり、読み出される本画像としての画像データDのS/N比が悪化するといった問題が生じ得る。
そこで、本実施形態では、以下の各手法のいずれかを採用することにより、このような問題が生じることを防止して、少なくとも放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを的確に検出するようになっている。
[手法1]
ゲートドライバ15bを構成するゲートIC12aに、いずれの走査線5とも接続されていない非接続の端子h(図53参照)が存在する場合には、少なくとも放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理においてゲートドライバ15bから各走査線5にオン電圧を順次印加する際に、ゲートIC12aの非接続の端子hにはオン電圧を印加せず、常に走査線5が接続されているいずれかの端子にオン電圧を印加するようにして、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するように走査駆動手段15を構成する。
すなわち、例えば、図53に示したゲートドライバ15bにおいて、前述したように、各ゲートIC12aに配線Lse1からシード信号を入力し、配線Lshからシフト信号を次々と入力すると、アクティブな端子が図中上側から1つずつシフトし、各タイミングで配線Lonを介して電源回路15aからオン電圧を供給することで、オン電圧が印加される走査線5のラインL1〜Lxが順次切り替わり、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加される。
そして、走査線5の最終ラインLxが接続されている端子がアクティブな状態とされて当該ラインLxにオン電圧が印加されると、その次のタイミングでは、当該ゲートIC12a(図53中の最も下側のゲートIC12a)から配線Lse2を介してシード信号を出力させる。或いは、当該ゲートIC12a内のシード信号をアースする等して当該ゲートIC12a内から強制的に除去する。
そして、それと同じタイミングで、図53中の最も上側のゲートIC12aに配線Lse1を介してシード信号を入力する。このように構成すれば、走査線5の最終ラインLxにオン電圧が印加された次のタイミングで、走査線5の最初のラインL1にオン電圧を印加するように構成することが可能となる。
そして、走査線5の最初のラインL1にオン電圧を印加した後、当該ゲートIC12a(すなわち図53中の最も上側のゲートIC12a)にシフト信号を順次入力することで、オン電圧が印加される走査線5を図中下側に順次シフトさせることが可能となる。このようにして、ゲートIC12aの非接続の端子hにはオン電圧を印加せず、常に走査線5が接続されているいずれかの端子にオン電圧を印加するようにして、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するように構成することが可能となる。
このように構成すれば、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、図52に示したように各フレーム間に走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されない期間τが生じず、図54に示すように、あるフレームの画像データdの読み出し処理が終了すると続けて次のフレームの画像データdの読み出し処理が開始され、画像データdが時間的に連続して読み出されるようになる。
そのため、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されず画像データdが読み出されない期間τを生じさせないように構成することが可能となり、上記のように放射線の照射開始の検出が遅れる等の問題が発生することを的確に防止して、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を的確に検出することが可能となる。
なお、走査線5の各ラインL1〜Lxに、走査線5の最終ラインLxから順にラインL1に向けてオン電圧を印加する走査線5(すなわち各ゲートIC12aの各端子)を上側にシフトさせていくようにして、走査線5の各ラインLx〜L1にオン電圧を順次印加するように構成される場合も同様である。
この場合は、走査線5のラインL1およびそれが接続されている端子にオン電圧を印加した次のタイミングで、図53中の最も下側のゲートIC12aにシード信号を入力し、かつ、走査線5の最終ラインLxが接続されている端子にオン電圧を印加するように構成する。そして、オン電圧を印加する端子を順次シフトさせることで、上記と同様に、期間τを生じさせずに、走査線5の各ラインLx〜L1にオン電圧を順次印加するように構成することができる。
また、以下の各手法においても、上記のようにオン電圧を印加する走査線5を、走査線5の最終ラインLxから順次上側の走査線5にシフトさせる場合もあり、そのような場合についての説明を省略するが、オン電圧を印加する走査線5を、走査線5の最初のラインL1から順次下側の走査線5にシフトさせる場合と同様に説明される。
[手法2]
一方、ゲートIC12aによっては、上記のように、一旦入力されたシード信号を、各端子ごとにシフトさせている途中で、配線Lse2から出力させたり、ゲートIC12a内でアースする等して当該ゲートIC12a内から強制的に除去することができないように構成されている場合もある。
そこで、このような場合には、例えば、図55に示すように、各ゲートIC12aの各端子にオン電圧を印加する際に、ゲートIC12aの非接続の端子h1、h2、…(図53参照)にオン電圧を印加するタイミングでは、走査線5が接続されている端子にオン電圧を印加する時間間隔よりも短い時間間隔でオン電圧を順次印加するようにして、ゲートドライバ15bを構成する各ゲートIC12aの各端子にオン電圧を順次印加するように構成することが可能である。
従来の通常の仕方においては、図56に示すように、ゲートIC12aの非接続の端子h1、h2、…にオン電圧を印加するタイミングでは、走査線5が接続されている端子にオン電圧を印加する時間間隔と同じ時間間隔でオン電圧を順次印加するようにして、各ゲートIC12aの各端子にオン電圧を順次印加していた。
そのため、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、フレーム間に、ゲートIC12aの非接続の端子hにオン電圧が印加されていていずれの放射線検出素子7からも画像データdが読み出されない期間τが長い時間になった。
それに対し、図55に示したように、ゲートIC12aの非接続の端子h1、h2、…にオン電圧を印加するタイミングで、走査線5が接続されている端子にオン電圧を印加する時間間隔よりも短い時間間隔でオン電圧を順次印加するように構成することで、フレーム間の、ゲートIC12aの非接続の端子hにオン電圧が印加されていていずれの放射線検出素子7からも画像データdが読み出されない期間τを、図56に示した従来の場合よりも短縮することが可能となる。
そのため、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されず画像データdが読み出されない期間τを短縮して、上記のように、放射線の照射開始の検出が遅れたとしても、その遅れを極力短くすることが可能となるとともに、事実上、1フレーム分の画像データdの読み出し処理を終えた後、ほとんど間をおかずに次のフレームの画像データdの読み出し処理を開始することが可能となるため、仮に放射線の照射が期間τ中に開始されたとしても、その後速やかに放射線の照射を的確に検出することが可能となる。
また、そのため、放射線の照射開始の検出が実際の放射線の照射開始よりも遅れるとしても、その遅れはごく僅かになるため、放射線検出素子内に蓄積される暗電荷の増加量も大きくなく、実際上、読み出される本画像としての画像データDのS/N比はほとんど悪化しない。このように、上記の手法2を採用すれば、事実上、読み出される本画像としての画像データDの悪化を防止して、画像データDのS/N比を良好に維持することが可能となる。
なお、図55では、ゲートIC12aの非接続の端子h1、h2、…に実際にオン電圧を印加する場合を示したが、上記のように、ゲートIC12aにシフト信号を入力するとアクティブな状態となる端子がシフトしていくが、その際、必ずしも非接続の端子hにオン電圧を印加する必要はない。
そのため、ゲートIC12aが、アクティブな端子にオン電圧を印加しなくてもアクティブな端子をシフトさせることができるように構成されている場合には、非接続の端子hがアクティブな状態である場合にはオン電圧を印加せずにアクティブな状態のシフトだけを行い、走査線5が接続されている端子がアクティブな状態になった場合にはオン電圧を印加するように構成することが可能である。
このように構成すれば、非接続の端子hにオン電圧を印加するために電力が無駄に消費されてしまうことを防止することが可能となる。なお、下記の手法3から手法6においても同様に、アクティブな非接続の端子hにはオン電圧を印加しないように構成することが可能である。
また、図55では、非接続の端子hをアクティブな状態とする時間(図55ではオン電圧が印加されている時間として表現されている。)が、走査線5が接続されている端子をアクティブな状態とする時間と同じ時間になるように設定されている場合が示されているが、上記のように、非接続の端子hについては、アクティブな状態を端子間で単にシフトさせるだけでよいため、上記のように設定する必要はない。
そこで、例えば、ゲートIC12aに入力するシフト信号を可能な限り短い時間間隔で入力する等して、非接続の端子hがアクティブな状態になっている時間を可能な限り短くしてアクティブな端子を速やかにシフトさせることで、非接続の端子hにオン電圧が印加されていていずれの放射線検出素子7からも画像データdが読み出されない期間τをさらに短縮することが可能となり、上記の効果をより的確に発揮させることが可能となる。
[手法3]
上記の手法1、2では、複数のゲートIC12aで構成されるゲートドライバ15bに対して1つのシード信号のみを入力できることを前提としているが、シード信号を異なるタイミングで2つ以上入力できる場合には、以下のようにして、上記期間τを生じさせないように構成することができる。
具体的には、例えば、上記のように、図53に示した最も上側のゲートIC12aから順に、配線Lse1からシード信号を入力して配線Lshからシフト信号を次々と入力するようにして、アクティブな端子を図中上側から順に1つずつシフトさせてオン電圧を印加することで、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加していく。
そして、図53中の最も下側のゲートIC12aで、走査線5の最終ラインLxにオン電圧が印加された後、次のタイミングで配線Lshを介してシフト信号を入力すると、当該ゲートIC12aの、走査線5の最終ラインLxが接続されている端子の次の非接続の端子h1がアクティブな状態となる。
そこで、非接続の端子h1をアクティブな状態とするためのシフト信号を入力するタイミングと同じタイミングで、図53中の最も上側のゲートIC12aに配線Lse1からシード信号を入力する。このように制御すると、非接続の端子h1がアクティブな状態となるのと同時に、図53中の最も上側のゲートIC12aの最も上側の、走査線5の最初のラインL1が接続されている端子がアクティブな状態となる。
すなわち、この時点では、ゲートドライバ15bの2つの端子(すなわちゲートドライバ15bを構成する異なる2つのゲートIC12aの各端子)が同時にアクティブな状態となる。
そして、この状態で、走査駆動手段15の電源回路15aからゲートドライバ15bにオン電圧が供給されると、非接続の端子h1にオン電圧が印加されると同時に、図53中の最も上側のゲートIC12aの最も上側の端子にもオン電圧が印加されて走査線5の最初のラインL1にオン電圧が印加される。
そして、続いて、配線Lshを介してシフト信号が入力されると、上記のアクティブな状態とされた端子が2つとも同時に図中下側にシフトし、今度は、非接続の端子h2と、走査線5の2番目のラインL2が接続されている端子とが同時にアクティブな状態となる。そして、電源回路15aからオン電圧が供給されると、非接続の端子h2にオン電圧が印加されると同時に、図53中の最も上側のゲートIC12aの上から2番目の端子にもオン電圧が印加されて走査線5の2番目のラインL2にオン電圧が印加される。
以降、このような制御を繰り返すことで、アクティブな状態とされる各端子をそれぞれシフトさせて、非接続の端子hの最後の端子がアクティブな状態になるまで、非接続の端子hと、走査線5が接続されている端子との2つの端子が同時にそれぞれアクティブな状態になり、非接続の端子hと走査線5のあるラインLに同時にオン電圧が印加される状態が続く。
そのため、図57に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxについて見た場合、走査線5の最終ラインLxにオン電圧が印加された次のタイミングでは、走査線5の最初のラインL1にオン電圧が印加されて次のフレームの画像データdの読み出し処理が再開されるようになる。
このように、以上の手法3を採用することで、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、図52に示したように各フレーム間に走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されない期間τが生じることなく、図57に示したように、あるフレームの画像データdの読み出し処理が終了すると、続けて次のフレームの画像データdの読み出し処理が開始され、画像データdが時間的に連続して読み出されるようになる。
そのため、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されず画像データdが読み出されない期間τを生じさせないように構成することが可能となり、上記のように放射線の照射開始の検出が遅れる等の問題が発生することを的確に防止して、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を的確に検出することが可能となる。
なお、この場合、上記のように、走査線5が接続されている端子にオン電圧を印加して当該走査線5にオン電圧を印加すると、それと同時に、非接続の端子hにもオン電圧が印加されて、無駄な電力が消費されたり、或いは、走査線5に印加されているオン電圧の印加状況に何らかの悪影響を及ぼす場合がある。
そのような場合には、例えば図58に示す走査駆動手段15*のように、各端子に走査線5が接続されている各ゲートIC12aにオン電圧を供給する電源回路15aとは別に、非接続の端子hを有するゲートIC12aにオン電圧を供給する第2の電源回路15a*を備えるように構成する。
そして、非接続の端子hを有するゲートIC12aの各端子のうち、走査線5が接続されている端子がアクティブな状態とされるタイミングでは第2の電源回路15a*から当該ゲートIC12aにオン電圧を供給し、非接続の端子hがアクティブの状態とされるタイミングでは第2の電源回路15a*から当該ゲートIC12aにはオン電圧を供給しないように構成することが可能である。
このように構成することによって、非接続の端子hにオン電圧を供給して電力を無駄に消費したり、或いは、走査線5に印加されているオン電圧の印加状況に影響を及ぼしてしまうことを的確に防止することが可能となる。
[手法4]
一方、放射線画像撮影装置の中には、例えば図59や図60に示すように、検出部Pが複数の領域に分割されて構成されているものもある。例えば、図59に示した放射線画像撮影装置1では、検出部P上で、各信号線6がその延在方向の途中で分断されており、検出部Pが2つの領域Pa、Pbに分割されている。
また、例えば、図60に示した放射線画像撮影装置1では、検出部P上で、各走査線5がその延在方向の途中で分断されており、検出部Pが2つの領域Pc、Pdに分割されている。なお、図示を省略するが、例えば、検出部P上で、各走査線5と各信号線をともにそれらの延在方向の途中で分断させて、検出部Pを例えば4つの領域に分割するように構成することも可能である。
そして、図59の場合を例に挙げると、検出部Pの各領域Pa、Pbの各走査線5は、図61に示すように、それぞれ別々のゲートドライバ15ba、15bbに接続されており、また、検出部Pの各領域Pa、Pbの各信号線6も、それぞれ別々の読み出しIC16a、16bに接続されている。
そして、領域Paの各走査線5にはゲートドライバ15baから、また、領域Pbの各走査線5にはゲートドライバ15bbから、それぞれ独立にオン電圧を印加させることができるように構成されている場合がある。なお、図示を省略するが、ゲートドライバ15ba、15bbはそれぞれ複数のゲートIC12aが並設されて構成されており、図61に示すようにそれぞれ末端部分に非接続の端子ha、hbを備えているものとする。
この場合、例えば、各領域Pa、Pbの境界B側から各読み出しIC16a、16b側に向けて(すなわち領域Paでは図中上側に向けて、また、領域Pbでは図中下側に向けて)、それぞれオン電圧を印加する走査線5をシフトさせるようにして、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理を行うように構成すると、領域Pa、Pbで同じタイミングで非接続の端子hがアクティブな状態になる場合が生じ得る。
このように、領域Pa、Pbで同じタイミングで非接続の端子hがアクティブな状態になってしまうと、その間、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されず画像データdが読み出されない期間τが生じるため、上記の問題が発生してしまう。
そこで、手法4では、図59や図60に示したように、検出部P上で各走査線5や各信号線6、或いはその両方が各延在方向の途中で分断されていて検出部Pが複数の領域に分割されており、かつ、各領域ごとにゲートドライバ15bが設けられていて各ゲートドライバ15bに非接続の端子hがそれぞれ存在する場合には、少なくとも放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理では、以下のようにして、走査線5の各ラインLにオン電圧を印加するように構成される。
すなわち、各ゲートドライバ15ba、15bbから各走査線5にオン電圧を順次印加する際に、一方のゲートドライバ15b(例えばゲートドライバ15ba)において非接続の端子hにオン電圧を印加するタイミングでは、他方のゲートドライバ15b(例えばゲートドライバ15bb)においては走査線5が接続されている端子にオン電圧を印加するようにして、各タイミングでいずれかの走査線5にオン電圧が印加されるようにして、各ゲートドライバ15ba、15bbから走査線5の各ラインLにオン電圧を順次印加する。
具体的には、例えば、上記のように各領域Pa、Pbの境界B側から各読み出しIC16a、16b側に向けてそれぞれオン電圧を印加する走査線5をシフトさせるようにして画像データdの読み出し処理を行う場合には、オン電圧を印加する走査線5のシフト、すなわちアクティブな状態とする端子のシフトを境界B部分から開始する時期を、領域Paと領域Pbとでずらす。
すなわち、例えば、領域Paにおける読み出し処理を先に、領域Pbにおける読み出し処理を後で開始させた場合には、領域Paで非接続の端子hがアクティブな状態となっているタイミングでは、領域Pbでは走査線5が接続されている端子がアクティブな状態となるようにし、遅れて領域Pbで非接続の端子hがアクティブな状態となっているタイミングでは、領域Paでは既に次のフレームの読み出し処理に移行していて走査線5が接続されている端子がアクティブな状態となっているように構成する。
また、この他にも、例えば、各領域Paでは各読み出しIC16a側の非接続の端子h側から境界B側に向けてシフトさせ、領域Pbの境界B側から各読み出しIC16b側の非接続の端子h側に向けてそれぞれオン電圧を印加する走査線5をシフトさせるようにして画像データdの読み出し処理を行うように構成する。すなわち、領域Pa、Pbでともに、図中上側から下側に向けてアクティブな端子をシフトさせるように構成する。
上記のように構成すれば、各領域Pa、Pbの各ゲートドライバ15ba、15bbから各走査線5にオン電圧を順次印加する各タイミングで、一方のゲートドライバ15bで非接続の端子hがアクティブな状態になっていて当該ゲートドライバ15bに接続されているいずれの走査線5にもオン電圧を印加していない状態になっていても、他方のゲートドライバ15bでは必ず走査線5が接続されているいずれかの端子がアクティブな状態になっていて当該走査線5にオン電圧が印加されている状態になる。
そのため、この手法4を採用すれば、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されない期間τが生じることがなくなり、各タイミングで、少なくとも領域Pa、Pbのいずれかの領域で画像データdの読み出し処理が行われるようになる。
そのため、画像データdを時間的に連続して読み出すことが可能となり、上記のように放射線の照射開始の検出が遅れる等の問題が発生することを的確に防止して、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を的確に検出することが可能となる。
[手法5]
上記の手法1から手法4では、走査線5が接続されている端子のみを用いて画像データdの読み出し処理を行ったり(手法1)、非接続の端子hをアクティブな状態とする期間τを短縮したり(手法2)、或いは、非接続の端子hがアクティブな状態になっているタイミングで同時に走査線5が接続されている端子をアクティブな状態にしてオン電圧を印加する(手法3、4)ように構成することで、画像データdが読み出されない期間τを生じさせないようにし、或いは期間τを極力短縮するように構成する場合について説明した。
このように構成する理由は、前述したように、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出される画像データdが、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始された時点でそれ以前の画像データdよりも格段に大きな値になることを利用して、読み出した画像データdに基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出するためであった。
一方、本発明者らの研究によれば、前述した図33、図34に示したように、各走査線5にオン電圧を印加せずに全ての走査線5にオフ電圧を印加して、各TFT8をオフ状態とした状態で、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qを、増幅回路18を含む各読み出し回路17で読み出して得られる前述したリークデータDleakについても、上記の画像データdと同様に、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始された時点でそれ以前のリークデータDleakよりも格段に大きな値になることが分かっている。
そこで、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、少なくとも上記の期間τの間、すなわち非接続の端子hのみがアクティブな状態とされているために走査線5のいずれのラインL1〜Lxにもオン電圧が印加されず、画像データdが読み出されない期間τの間は、画像データdの代わりにこのリークデータDleakを読み出して、読み出されたリークデータDleakに基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を検出するように構成することができる。
手法5では、このように画像データdとリークデータDleakとに基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を検出する構成について説明する。
リークデータDleakの読み出し処理についてより詳しく説明すると、ゲートドライバ15bの非接続の端子hがアクティブな状態とされている場合には、走査線5の各ラインL1〜Lxにはオフ電圧が印加されている状態になる。
この状態で、前述した図33に示したように各読み出し回路17を動作させる。すなわち、画像データdの読み出し処理の場合と同様に、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18c(図8参照)をオフ状態として、コンデンサ18bに電荷が蓄積される状態として、制御手段22から相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1、Sp2を送信してサンプリングを行わせるが、その間、各TFT8のオン/オフ動作は行わない。
このように各読み出し回路17を動作させると、前述した図34に示したように、オフ状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークした各電荷qが、増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。そのため、増幅回路18からはこの蓄積された電荷、すなわち各放射線検出素子7からリークした電荷qの合計値に相当する電圧値が出力され、図34では図示を省略した相関二重サンプリング回路19でサンプリングされて、リークデータDleakが読み出される。
このように構成すると、放射線画像撮影装置1に放射線が照射される以前では、各TFT8を介して各放射線検出素子7iからリークする電荷qは僅かであり、それらの合計値も小さい値であるため、リークデータDleakも小さい値であるが、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが大きくなり、それらの合計値が大きくなる。そのため、前述した画像データdの場合の値の上昇と同様に、読み出されるリークデータDleakの値が上昇する。
そのため、例えば図62に示すように、上記の期間τの間にリークデータDleakを定期的に読み出すように構成し、読み出したリークデータDleakが大きく上昇して、例えば予め設定された閾値を越えた場合に、その時点で放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと判断して、放射線の照射開始を検出するように構成することが可能となる。
そして、図62に示した場合には、放射線画像撮影前に、画像データdの読み出し処理を行っている際には上記のように画像データdの値を監視し、また、非接続の端子hがアクティブな状態とされている期間τ(すなわち走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧が印加されている期間τ)の間は図33に示したリークデータDleakの読み出し処理で読み出されたリークデータDleakの値を監視し、画像データdやリークデータDleakのいずれかが大きく上昇した時点で放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を検出することが可能となる。
このように、この手法5を採用することで、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、画像データdの読み出し処理が行われている際には画像データdに基づいて、また、画像データdの読み出し処理が行われていない期間τにはリークデータDleakに基づいて、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
そのため、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射を検出できなくなる期間τがなくなり、常時検出することが可能となるため、上記のように放射線の照射開始の検出が遅れる等の問題が発生することを的確に防止して、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を的確に検出することが可能となる。
なお、図63に示すように、放射線画像撮影前に読み出される画像データd中には、図34に示した他の放射線検出素子7からリークした電荷qの合計値に相当するリークデータDleakのほか、オン電圧が印加された走査線5(図63では走査線5のラインLi)に接続された放射線検出素子7から放出される暗電荷Qdに起因するデータが含まれる。そのため、読み出されるリークデータDleakの値は、通常、画像データdの値よりも小さな値になる。
そのため、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたか否かの判定に用いられる閾値に関しては、画像データdに対する閾値dth(図11参照)とリークデータDleakに対する閾値とを異なる値に設定することが好ましい。なお、両者に対する閾値として同じ値の閾値を用いるように構成することも可能であり、画像データdやリークデータDleakに対する閾値の値は適宜の値に設定される。
[手法6]
上記の手法5では、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、非接続の端子hがアクティブな状態とされ、画像データdが読み出されない期間τの間にのみリークデータDleakの読み出し処理を行い、その他の期間には画像データdの読み出し処理を行う場合について説明した(図62等参照)。
しかし、そもそも、放射線画像撮影前に、画像データdの読み出し処理を行う代わりに、リークデータDleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。手法6では、このように画像データdの読み出し処理を行わず、リークデータDleakのみに基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を検出する構成について説明する。
この場合、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で図33に示した各読み出し回路17に対する制御を繰り返して、すなわち読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフ制御や相関二重サンプリング回路19に対するパルス信号Sp1、Sp2の送信等を繰り返して、図64に示すように、リークデータDleakの読み出し処理を連続的に行うように構成することも可能である。
しかし、このように、各TFT8をオフ状態とされた状態が続くと、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積されていき、蓄積される暗電荷の量が増え続けるため、実際には、図65に示すように、リークデータDleakの読み出し処理と次のリークデータDleakの読み出し処理との間で、オン電圧を印加する走査線5を順次シフトさせながら各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することが好ましい。
なお、各放射線検出素子7内に暗電荷が蓄積され続けることを回避する観点から、上記のようにリークデータDleakの読み出し処理の間で各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成する代わりに、図66に示すように、リークデータDleakの読み出し処理の間で画像データdの読み出し処理を行うように構成することも可能である。また、以下では、リークデータDleakの読み出し処理の間でリークデータDleakの読み出し処理を行う場合について説明するが、リークデータDleakの読み出し処理の間で画像データdの読み出し処理を行うように構成する場合も同様に説明される。
そして、上記のように、リークデータDleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成する場合、各放射線検出素子7のリセット処理においては、前述したように、オン電圧を順次印加するゲートドライバ15bの端子(非接続の端子hを含む。図53等参照)を順次シフトさせていく。
そして、図67に示すように、ゲートドライバ15bの走査線5が接続されている端子にオン電圧を順次印加するタイミングでは、ゲートドライバ15bから当該端子を介して走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、当該各走査線5に接続されている各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させてリセット処理を行う。
また、ゲートドライバ15bの非接続の端子hにオン電圧を順次印加するタイミングでは、ゲートドライバ15bから当該非接続の端子hにオン電圧を順次印加するが、これらの非接続の端子hを介して走査線5にはオン電圧が印加されないため、この間は、各放射線検出素子7のリセット処理が行われない。
なお、図67では、ゲートIC12aの非接続の端子h1、h2、…に実際にオン電圧を印加する場合を示したが、非接続の端子hに必ずしもオン電圧を印加する必要はない。そのため、これらの非接続の端子hについては、オン電圧を印加せず、アクティブな状態をシフトさせるだけとするように構成することが可能であることは前述した通りである。
このように構成すると、前述した手法5で説明した場合と同様に、放射線画像撮影装置1に放射線が照射される以前では、各TFT8を介して各放射線検出素子7iからリークする電荷qは僅かであり、それらの合計値も小さい値であるため、リークデータDleakの各読み出し処理で読み出されるリークデータDleakも小さい値である。しかし、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが大きくなり、それらの合計値が大きくなるため、前述した画像データdの場合と同様に、読み出されるリークデータDleakの値が上昇する。
そのため、リークデータDleakに対して閾値を設けておき、読み出されたリークデータDleakが大きく上昇して閾値を越えた時点で、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと判断して、放射線の照射開始を検出するように構成することが可能となる。
しかし、本発明者らの研究によると、上記のように、放射線画像撮影前にリークデータDleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、以下のような現象が現れることが分かった。
すなわち、図68Aに示すように、リークデータDleakの各読み出し処理でそれぞれ読み出されるリークデータDleakが、走査線5にオン電圧が印加されて各放射線検出素子7のリセット処理の後に行われた読み出し処理で読み出されたリークデータDleak(図中のαで示された部分のデータ参照)よりも、非接続の端子hがアクティブの状態とされていて各放射線検出素子7のリセット処理が行われない状態の読み出し処理で読み出されたリークデータDleak(図中のβで示された部分のデータ参照)の方が、値が小さくなることが分かった。
また、これに対する対照実験として、上記のようにリークデータDleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う代わりに、リークデータDleakの読み出し処理のみを繰り返して行う実験を行い、その場合にリークデータDleakの各読み出し処理で読み出されるリークデータDleakの時間的推移を図68Bに示す。
図68Bに示すように、対象実験では、読み出されるリークデータDleakの値が、図68Aのαで示された部分のリークデータDleak、すなわち各放射線検出素子7のリセット処理の後に行われた読み出し処理で読み出されたリークデータDleakの値よりも小さくなる。また、対照実験では、図68Aのβで示された部分のリークデータDleakのように、他のリークデータDleakよりも値が小さくなる部分が現れないといった特徴が見られる。
このように、各放射線検出素子7のリセット処理の後に行われた読み出し処理で読み出されたリークデータDleak(図68A中のαで示された部分のデータ参照)よりも、各放射線検出素子7のリセット処理が行われない状態の読み出し処理で読み出されたリークデータDleak(図68A中のβで示された部分や図68B参照)の方が値が小さくなる理由は、以下のように考えられている。
すなわち、リークデータDleakの読み出し処理の前に各放射線検出素子7のリセット処理を行わない場合、図69Aにイメージ的に示すように、TFT8におけるエネルギ的に高い準位の伝導帯CBを通って放射線検出素子7から信号線6に電荷がリークする。なお、図69A、図69B、図69Cでは、図中左側の図示しない放射線検出素子7からTFT8に電荷が流れ込み、TFT8から図中右側の図示しない信号線6に電荷が流出する場合が示されている。また、移動する電荷量の大小が、図中の矢印の太さで表されている。
そして、この状態で各放射線検出素子7のリセット処理が行われると、図69Bに示すように、伝導帯CBを介して放射線検出素子7から信号線6に放出される比較的大きな量の電荷のうちの一部が、この伝導帯CBよりもエネルギ的に低いバンドギャップに存在するトラップ準位TLにトラップされて、TFT8内に残留する。この場合、太い矢印は、多い量の電荷の移動を表している。
そして、その後は、図69Cに示すように、TFT8における高準位の伝導帯CBを通って放射線検出素子7から信号線6に電荷がリークする際に、トラップ準位TLにトラップされた電荷の一部が高準位の伝導帯CBに励起してそれらとともにリークして信号線6に放出されるため、放射線検出素子7から信号線6にリークする電荷量が増加する。
そのため、各放射線検出素子7のリセット処理の後に行われた読み出し処理で読み出されたリークデータDleak(図68A中のαで示された部分のデータ参照)の方が、各放射線検出素子7のリセット処理が行われない状態の読み出し処理で読み出されたリークデータDleak(図68A中のβで示された部分のデータ参照)よりも値が大きくなるという現象が現れると考えられている。
図68A、図68Bでは、リークデータDleakの読み出し処理が開始される前、すなわち各図中の経過時間tのカウントが開始される前(すなわち横軸の経過時間tが0以前)に、各放射線検出素子7のリセット処理が何回も繰り返し行われた場合が示されている。そして、各図で、経過時間tが0に近い時点で読み出されたリークデータDleakの値が大きくなっていることからも、上記のメカニズムでリークデータDleakの値が大きくなると推測することができる。
なお、この現象は、リークデータDleakの読み出し処理の前に各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合だけでなく、画像データdの読み出し処理を行う場合(図66参照)も同様に生じることが確かめられている。
上記のように、放射線画像撮影前にリークデータDleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行い(図67参照)、各放射線検出素子7のリセット処理では、オン電圧を順次印加し或いは順次アクティブな状態とするゲートドライバ15bの端子(非接続の端子hを含む。)を順次シフトさせていくようにしてリセット処理を行うように構成する場合には、リークデータDleakの各読み出し処理で読み出されるリークデータDleakの値が上記のように変化する。
そこで、このような場合には、ゲートドライバ15bの非接続の端子hにオン電圧を印加した後(或いはアクティブな状態とした後)のリークデータDleakの読み出し処理で読み出されたリークデータDleakに適用する、放射線の照射開始を検出するための閾値を、ゲートドライバ15bから走査線5が接続されている端子にオン電圧を印加して走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理を行った後のリークデータDleakの読み出し処理で読み出されたリークデータDleakに適用する閾値よりも小さい値に設定することが好ましい。
そして、この場合、制御手段22は、ゲートドライバ15bの非接続の端子hにオン電圧を順次印加するタイミング(或いは非接続の端子hを順次アクティブな状態にするタイミング)と、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理を行うタイミングとで、上記の各閾値を切り替えて使い分けるように構成される。
一方、この手法6で、放射線画像撮影前にリークデータDleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理(或いは画像データdの読み出し処理。以下同じ。)とを交互に繰り返して行うように構成する場合においても、前述した手法1を適用して、図67等に示したようにゲートドライバ15bの非接続の端子hにオン電圧を印加したりアクティブな状態にしたりせずに、リークデータDleakの読み出し処理の間に行う各放射線検出素子7のリセット処理では、ゲートドライバ15bの走査線5が接続されている端子のみにオン電圧を順次印加してリセット処理を行うように構成することが可能である。
このように構成すれば、上記の閾値は1つ設定すればよくなり、上記のように複数の閾値を切り替えて使い分ける制御が不要になる。
また、同様に、手法6に、前述した手法3や手法4を適用して、非接続の端子hがアクティブな状態になっているタイミングで同時に走査線5が接続されている端子をアクティブな状態にしてオン電圧を印加するように構成することも可能であり、このように構成しても、上記の閾値は1つ設定すればよくなり、上記のように複数の閾値を切り替えて使い分ける制御が不要になる。
なお、上記の手法1〜5の場合についても同様であるが、上記の手法6では、図70に示すように、走査線5のあるラインL(図中では走査線5の4番目のラインL4)にオン電圧を印加して各放射線検出素子7のリセット処理を行った後のリークデータDleakの読み出し処理(図中の「4」参照)で読み出されたリークデータDleakが閾値を越えた場合、その時点で放射線の照射が開始されたことが検出され、各放射線検出素子7のリセット処理が停止され、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧が印加されて電荷蓄積モードに移行する。
その際、図70に示すように、電荷蓄積モードに移行した後も、読み出し回路17に引き続き読み出し動作を繰り返し行わせてリークデータDleakの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出したリークデータDleakの監視を続行すれば放射線の照射が終了したことを検出することが可能となることは前述した通りである。
また、図70に示すように、リークデータDleakが閾値以下の値になり、放射線の照射が終了したことが検出された時点(図中の「A」参照)で、走査線5の各ラインL5〜Lx、L1〜L4へのオン電圧の順次の印加を再開して本画像としての画像データDの読み出し処理を開始するように構成すれば、図70に示したように、放射線の照射の終了を検出した後、すぐに画像データDの読み出し処理を開始することが可能となり、画像データDの読み出し処理以降の処理を迅速に行うことが可能となるといった利点があることも前述した通りである。なお、図70では、手法6に手法1が適用された場合が示されている。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、前記各実施形態と同様の効果を奏することが可能となるとともに、放射線発生装置とのインターフェースがとれないような場合であっても、放射線画像撮影前すなわち放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前から画像データdの読み出し処理を行い、読み出された画像データdに基づいて、或いは上記の手法5を用いる場合には画像データdやリークデータDleakに基づいて、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたことを放射線画像撮影装置1自体で的確に検出することが可能となる。
また、その際、走査駆動手段15のゲートドライバ15bに、走査線5が接続されていない非接続の端子hが存在する場合であっても、非接続の端子hがアクティブな状態とされていて画像データdが読み出されない期間τを生じさせないようにしたり(上記の手法1、3、4)、期間τを非常に短くしたり(上記の手法2)、或いは期間τ中にリークデータDleakを読み出す(上記の手法5)ように構成することで、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたことを確実に検出することが可能となる。
そのため、図52に示した従来の手法の場合のように、上記の期間τが長くなって放射線の照射開始の検出が遅れてしまい、その分、放射線検出素子7内に蓄積される暗電荷の量が多くなって、読み出される本画像としての画像データDのS/N比が悪化することを的確に防止することが可能となる。
なお、上記の実施形態では、走査駆動手段15のゲートドライバ15bが図53に示したような複数のゲートIC12aを並設して構成される場合について説明したが、ゲートドライバ15bやゲートIC12aが他の構成をとる場合でも、走査線5が接続されていない非接続の端子hが存在する限り、上記の問題を生じ得る。従って、ゲートドライバ15bやゲートIC12aが他の構成をとる場合についても、本発明を適用することができる。
また、放射線画像撮影装置1が図示しない支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置である場合でも、上記のように、放射線発生装置とのインターフェースをとらずに放射線画像撮影装置で独自に放射線の照射を検出するように構成されている場合にも、本発明を適応することができることは前述した通りである。
ところで、前述した手法6を採用してリークデータDleakの値に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始等を検出するように構成する場合、放射線画像撮影装置1の検出部P(図3や図7等参照)には、通常、数千本から数万本の信号線6が配線されているため、1回のリークデータDleakの読み出し処理で読み出されるリークデータDleakの数は、数千個から数万個の数になる。
そして、それらの全てのリークデータDleakについて、上記のように閾値を越えたか否かを判断する処理を各読み出し処理ごとに行うように構成すると、処理が重くなる。そこで、例えば、各読み出し処理ごとに読み出されたリークデータDleakの中から最大値を抽出し、そのリークデータDleakの最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することも可能である。
しかし、各読み出し回路17(図7等参照)のデータの読み出し効率は、通常、各読み出し回路17ごとに異なり、各放射線検出素子7から信号線6にリークする電荷qの合計値(図34参照)が信号線6ごとに同じであったとしても、他の読み出し回路17よりも常に大きな値のリークデータDleakを読み出す読み出し回路17もあれば、他の読み出し回路17よりも常に小さな値のリークデータDleakを読み出す読み出し回路17もある。
このような状況において、例えば図71に示すように、放射線画像撮影装置1に対して照射野Fが絞られた状態で放射線が照射され、他の読み出し回路17よりも常に大きな値のリークデータDleakを読み出す読み出し回路17に接続されている信号線6aが照射野F外に存在する場合を考える。
このような場合、図72に示すように、照射野F内に存在する信号線6に接続されている読み出し回路17で読み出されたリークデータDleak(図中のγで示されたデータ参照)が放射線の照射により上昇しても、照射野F外に存在する信号線6aに接続されている読み出し回路17から読み出されたリークデータDleak(図中のδで示されたデータ参照)を越えない場合が生じ得る。
そして、このように、放射線の照射により上昇したリークデータDleak(γ)が、照射野F外にあり放射線の照射によっても上昇しないリークデータDleak(δ)を越えない場合、抽出されるリークデータDleakの最大値は図中δで示されたリークデータDleakであるから、抽出されたリークデータDleakの最大値は放射線の照射によっても変動せず、結局、閾値を越えないため放射線の照射を検出することができなくなる。
そこで、このような問題を回避するために、例えば、各読み出し処理ごとに読み出されたリークデータDleakの、各読み出し回路17ごとの移動平均を算出するように構成する。すなわち、リークデータDleakの読み出し処理を行うごとに、当該読み出し処理の直前の読み出し処理を含む所定回数分の過去の各読み出し処理で読み出された読み出し回路17ごとのリークデータDleakの平均値(移動平均)Dleak_aveを算出するように構成する。
そして、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータDleakと、算出した移動平均の平均値Dleak_aveとの差分ΔDleakを算出し、差分ΔDleakが、差分ΔDleakについて予め設定された閾値を越えた読み出し回路17があれば、その時点で放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことを検出するように構成することができる。
このように構成すれば、上記のような各読み出し回路17の読み出し効率等の影響を受けずに、リークデータDleakが上昇したか否かを的確に検出して、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
しかし、この場合も、リークデータDleakの各読み出し処理ごとに数千個から数万個読み出される各リークデータDleakについて上記の処理を行うように構成すると、処理が非常に重くなる。
そこで、例えば、図51等に示したように、放射線画像撮影装置1では、読み出しIC16内に例えば128個や256個の読み出し回路17が形成されており、読み出しIC16が複数個設けられていることを利用して、リークデータDleakの各読み出し処理ごとに、各読み出し回路17で読み出される各リークデータDleakの合計値を各読み出しIC16ごとに算出する。なお、この場合、各読み出しIC16ごとに、各リークデータDleakの平均値を算出するように構成することも可能である。
そして、上記と同様に、各リークデータDleakの合計値の移動平均を読み出しIC16ごとに算出し、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータDleakの読み出しIC16ごとの合計値と、算出した合計値の移動平均の平均値との差分を算出し、差分が、当該差分について予め設定された閾値を越えた読み出しIC16があれば、その時点で放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことを検出するように構成することができる。
また、上記のようにして、リークデータDleakの各読み出し処理ごとに算出した読み出しIC16ごとの上記の差分の中から最大値を抽出し、その最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することも可能である。この場合、上記の差分は読み出しIC16ごとに同程度の値になるため、図72に示したような問題は生じない。
以上のように構成すれば、上記と同様に、各読み出し回路17の読み出し効率等の影響を受けずに、リークデータDleakの合計値(或いは平均値)が上昇して、上記の差分(或いはその最大値)が閾値を越えたか否かを的確に検出して、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出することが可能となるとともに、移動平均の算出が、読み出し回路17ごとではなく読み出しIC16ごとになり、算出処理が減るため、処理が軽くなる。
さて、このように構成して放射線の照射開始を検出する場合においても、前述した図67に示した手法6のように、放射線画像撮影前にリークデータDleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う場合には、図68Aに示したように、非接続の端子hがアクティブの状態とされていて各放射線検出素子7のリセット処理が行われない場合には、読み出し処理で読み出されるリークデータDleakの値が小さくなる(図中のβで示された部分のデータ参照)。そのため、その間に算出される移動平均の値が小さくなる。
そして、アクティブな状態とされる端子が非接続の端子hから走査線5が接続されている端子にシフトすると、図68Aに示したように、読み出されるリークデータDleakの値が上昇する。そのため、読み出されたリークデータDleak(或いは読み出されたリークデータDleakの読み出しIC16ごとの合計値や平均値)と、前回の読み出し処理までのリークデータDleakの移動平均(或いは合計値や平均値の移動平均。以下同じ。)との差分(或いはその最大値。以下同じ。)が増加する。
そのため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないにもかかわらず、差分が閾値を越えてしまい、放射線が照射されたと誤検出してしまう虞れがある。
そこで、この場合も、上記と同様に、上記の手法に例えば手法1を適用してゲートドライバ15bの非接続の端子hにオン電圧を印加したりアクティブな状態にしたりしないように構成したり、或いは、手法3や手法4を適用して、非接続の端子hがアクティブな状態になっているタイミングで同時に走査線5が接続されている端子をアクティブな状態にしてオン電圧を印加するように構成することも可能である。
そして、このように構成すれば、上記のように移動平均が、非接続の端子hがアクティブの状態とされていて各放射線検出素子7のリセット処理が行われない場合に低下してしまう問題を回避することが可能となる。
また、上記の手法に手法1や手法3、4を適用する代わりに、上記の差分に対する閾値を2種類或いは複数種類、予め設定しておき、移動平均が、非接続の端子hがアクティブの状態とされていて各放射線検出素子7のリセット処理が行われない場合の読み出し処理で読み出されたリークデータDleakに基づいて算出されたものか、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が印加されて行われた各放射線検出素子7のリセット処理の後に行われた読み出し処理で読み出されたリークデータDleakに基づいて算出されたものかに応じて、閾値を切り替えて使い分けるように構成することが可能である。
このように構成すれば、閾値を切り替えて使い分けることで、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合に上記の差分が閾値を越えるように構成することが可能となり、差分が閾値を越えたことをもって、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射を的確に検出することが可能となる。