JP5688073B2 - カルシウムフェロアルミネート化合物、セメント混和材及びその製造方法、セメント組成物 - Google Patents

カルシウムフェロアルミネート化合物、セメント混和材及びその製造方法、セメント組成物 Download PDF

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Description

本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
セメント混和材に使用されるCaO-Al-Fe系の化合物としては、カルシウムアルミノフェライトが知られている。カルシウムアルミノフェライトは、4CaO・Al・Fe(CAF)、6CaO・2Al・Fe(CF)、6CaO・Al・2Fe(CAF)などが知られている。
これらのカルシウムアルミノフェライトは、カルシウムフェライトの1種である2CaO・Fe(CF)の結晶構造を持つ。つまり、CFにAlが大量に固溶しながら結晶構造はCFの構造を保ち、様々な組成のAl/Feモル比をとる。CFの結晶構造は斜方晶系であり、a=5.32Å、b=14.48Å、c=5.51Å、単位格子容積=424.95Åである。
一方、カルシウムアルミネートの1種として、CaO・2Al(CA)が知られている。CAの結晶構造は単斜晶系であり、a=12.89Å、b=8.88Å、c=5.45Å、単位格子容積=596.41Åである。
このように、CFとCAは全く異なる結晶構造を持つ。そして、CAにFe成分を固溶させた化合物は知られていなかった。
ところで、近年、土木や建築分野において、コンクリート構造物の耐久性向上に対する要望が高まっている。
コンクリート構造物の劣化要因の1つとして、塩化物イオンの存在によって鉄筋腐食が顕在化する塩害があり、その塩害を抑制するための方法として、コンクリート構造物に塩化物イオンの浸透抵抗性を付与する手法がある。
コンクリート硬化体の内部への塩化物イオンの浸透を抑制し、塩化物イオンの浸透抵抗性を与える方法としては、水/セメント比を小さくする方法が知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、水/セメント比を小さくする方法では、施工性が損なわれるだけでなく、抜本的な対策とはならない場合があった。
また、セメントコンクリートに早強性を付与し、かつ、鉄筋の腐食を防止するなどの目的で、CaO・2Alとセッコウを主体とし、更に無機塩化物を含有するセメント混和材を使用する方法が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、CaO/Al モル比が0.3〜0.7、ブレーン比表面積値が2,000〜6,000cm/gのカルシウムアルミネートを含有するセメント混和材を使用し,優れた塩化物イオンの浸透抵抗性を持ち,マスコンの温度ひび割れ抑制する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、このセメント混和材は、高温環境下では、急硬性が現れ、これを混和したセメントコンクリートの作業性が損なわれるという課題があった。例えば、日本国内では沖縄、海外ではシンガポールのような高温で、かつ、塩害や酸性劣化が促進されやすい地域では急硬性が現れ、作業性が損なわれるばかりか、本発明者らの数々の実験から、塩化物イオンの浸透抵抗性が充分に発揮されないことが明らかとなってきた。本来、腐食成分の拡散速度が速く、かつ、腐食反応が促進される高温環境下で、より有効に効く防錆技術の開発が待たれている。
一方、高炉水砕スラグ微粉末やポゾラン物質を混和したセメント組成物が塩化物イオンの浸透抵抗性を向上させることが知られている。塩化物イオンの浸透を抑制する理由は、高炉水砕スラグ微粉末中のAl成分が塩化物イオンを化学的に固定化、あるいは電気的に吸着するためである。さらにポゾラン物質はセメント硬化体中の水酸化カルシウムの低減に関連して、水酸化カルシウムが海水中に溶脱した場合に生成する数十μm〜数百μmの空隙の生成を抑制していることが考えられる。しかしながら、高炉水砕スラグ微粉末やポゾラン物質の反応は長期にわたって起こるため、初期強度の発現を阻害する傾向にあり、若材齢で海水に浸漬されると塩化物イオンの浸透抵抗性が低下し、コンクリートが劣化するという課題があった。そのため、耐久性すなわち耐海水性を向上させるにはセメント硬化体中における反応を促進して初期材齢のうちから海水の作用による塩化物イオンの侵入を低減する必要がある。
他方、鉄筋の防錆を目的として、亜硝酸塩などを添加する方法も提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、亜硝酸塩には耐酸性を付与する効果は認められないものであった。
特開昭47−035020号公報 特開2005−104828号公報 特開昭53−003423号公報 特開平01−103970号公報
岸谷孝一、西澤紀昭他編、「コンクリート構造物の耐久性シリーズ、塩害(I)」、技報堂出版、pp.34−37、1986年5月
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、高温環境下においても、セメントコンクリート硬化体内部の鉄筋に優れた防錆効果を付与することができ、外部から侵入するセメントコンクリート硬化体への塩化物イオンの浸透抵抗性を有し、さらに、セメントコンクリート硬化体からのCaイオンの溶脱も少ないため多孔化も抑制でき、さらにひび割れの自己治癒能力も有するセメント混和材、及びその製造方法、その混和材を含有するセメント組成物、を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用する。
(1)CaO-Al-Fe系からなり、Feの含有量が0.5〜15質量%であり、CaO・2Al構造を持つカルシウムフェロアルミネート化合物を含有し、CaO/Al モル比が、0.15〜0.7の範囲にあることを特徴とするセメント混和材
)粉末度が、ブレーン比表面積値で2,000〜7,000cm/gである前記()のセメント混和材。
)さらに潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質を含有する前記()または()のセメント混和材。
)前記潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質が、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、パルプスラッジ焼却灰、下水汚泥焼却灰、及び廃ガラス粉末からなる群より選ばれた一種又は二種以上を含有してなる前記()のセメント混和材。
)前記カルシウムフェロアルミネート化合物と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質との配合割合が、質量比で10/1〜1/10である前記()または()のセメント混和材。
)CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜15質量%となるように、CaOを含む原料、Alを含む原料、鉄を含む原料を配合し、1400℃以上、1600℃以下で熱処理して得られるクリンカーを、ブレーン比表面積値2,000〜7,000cm/gに粉砕することを特徴とするセメント混和材の製造方法。
)セメントと、前記(1)〜()のうちのいずれか1項のセメント混和材を含有するセメント組成物。
本発明のセメント混和材を使用することにより、高温環境下においても、充分な作業時間が確保でき、優れた防錆効果と、外部から侵入する塩化物イオンの浸透抵抗性を持ち、さらに、セメントコンクリート硬化体からのCaイオンの溶脱も少ないことから、多孔化も抑制できるなどの効果を奏する。
カルシウムフェライトおよびカルシウムアルミノフェライトのXRD測定結果を示す図である。 カルシウムフェロアルミネートおよびカルシウムアルミネートのXRD測定結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に規定しない限り質量基準で示す。
また、本発明で云うセメントコンクリートとは、セメントペースト、セメントモルタル、及びコンクリートの総称である。
本発明者らは、数々の実験を通して、CAにFe成分が固溶することを見出した。しかも、Fe成分が固溶してもCA構造を保ち、CAF、CF、CAFなどのカルシウムアルミノフェライトとは全く異なる組成、全く異なる結晶構造の化合物となることを明らかにした。CAの結晶構造を保ちながらCAにFe成分が固溶した化合物を、カルシウムフェロアルミネートと呼ぶ。
本発明で使用するカルシウムフェロアルミネート化合物(以下、CFA化合物という)とは、カルシアを含む原料、アルミナを含む原料、フェライトを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaO、Al、Feを主成分とする化合物を総称するものである。
CFA化合物の組成は、CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFe含有量が0.5〜15%である。CaO/Alモル比が0.4〜0.6がより好ましい。0.15未満では、塩化物イオンの浸透抵抗性が充分に得られない場合があり、逆に、0.7を超えると急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。CFA化合物にFeの含有量は、0.5〜15%が好ましく、1〜12%がより好ましく、3〜10%が最も好ましい。0.5%未満では、熱処理した場合に未反応の酸化アルミニウムが多く残存し、カルシウムフェロアルミネートの生成反応が進行しにくいばかりか、高温環境下での急硬性が現れて作業性が損なわれたり、塩化物イオンの浸透抵抗性が悪くなったりする。逆に15%を越えても効率的に反応を進行させる効果は頭うちとなり、また、塩化物イオンの浸透抵抗性も改悪傾向となる。
CFA化合物の粉末度は、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で2,000〜7,000cm/gが好ましく、3,000〜6,000cm/gがより好ましく、4,000〜5,000cm/gが最も好ましい。CFA化合物が粗粒では充分な塩化物イオンの浸透抵抗性が得られない場合があり、7,000cm/gを超える微粉では急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。
CFA化合物の製造に使用する原料について説明する。
CaOを含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている例えば、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、石灰石(CaCO)等の使用が挙げられる。
Alを含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている例えばAlや水酸化アルミニウム、ボーキサイトの使用が挙げられる。特にボーキサイトはAlと共にFeを含んでいるため望ましい。
鉄を含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている鉄鉱石を粉砕、加工、精製したFeや鋼材洗浄廃塩酸から回収、精製して得られるFeなどが使用可能である。また、FeOやFe、さらには純鉄を用いても酸化雰囲気で熱処理することで使用可能である。
さらに、例えば、SiOやRO(Rはアルカリ金属)を併用しても、本発明の目的を損なわない限り使用可能である。
CFA化合物は、CaOを含む原料、Alを含む原料、鉄を含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる。熱処理温度は原料の配合にもよるが1400℃以上、1600℃以下が好ましく、1450℃以上、1550℃以下がより好ましい。1400℃未満では効率良く反応が進まず未反応のAlが残り、カルシウムフェロアルミネートが得られない場合があり、逆に、1600℃を超えると、熱処理の際にコーチングがつきやすくなり、操業が困難になるばかりか、エネルギー効率が悪くなる場合がある。
本発明では、充分な防錆硬化、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果を維持し、初期強度を増進させ、さらに、自己治癒能力を向上させるため、CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFe含有量が0.5〜20%のCFA化合物と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質を併用することもできる。
本発明の潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質とは、特に限定されるものではないが、例えば、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、パルプスラッジ焼却灰、下水汚泥焼却灰、廃ガラス粉末等が挙げられる。上記の効果をより充分に発揮させるためには、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリンが好ましい。
CFA化合物と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質との配合割合は特に限定されるものではないが、質量比で10/1〜1/10が好ましく、5/1〜1/5がより好ましい。
CFA化合物またはポゾラン物質(潜在水硬性物質)の配合割合を上記の範囲とすることにより、単独の場合と比べて充分な防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果、自己治癒能力の向上が得られる。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのポルトランドセメントが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
セメント混和材の使用量は特に限定されるものではないが、通常、カルシウムフェロアルミネート化合物のみをセメント混和材として使用する場合、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1〜15部が好ましく、2〜12部がより好ましい。セメント混和材の使用量が少ないと充分な防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果が得られない場合があり、過剰に使用すると急硬性が現れるようになり、充分な可使時間が確保できない場合がある。また、カルシウムフェロアルミネート化合物と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質をセメント混和材として使用する場合、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1〜50部が好ましく、5〜30部がより好ましい。セメント混和材の使用量が少ないと充分な防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果、さらに自己治癒能力が得られない場合があり、過剰に使用すると急硬性が現れるようになり、充分な可使時間が確保できない場合がある。
本発明では、セメントとセメント混和材を配合して、また、セメント、CFA化合物を配合してセメント組成物とする。
本発明のセメント組成物の水/結合材比は、25〜70%が好ましく、30〜65%がより好ましい。水の配合量が少ないと、ポンプ圧送性や施工性が低下したり、収縮等の原因となる場合があり、水の配合量が過剰では強度発現性が低下する場合がある。ここで結合材とは、セメント、CFA化合物の合計をいう。
本発明のセメント混和材やセメント組成物は、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
本発明では、セメント、セメント混和材、及び砂等の細骨材や砂利等の粗骨材の他に、膨張材、急硬材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、従来の防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結調整剤、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体、高炉水砕スラグ微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などのスラグ、石灰石微粉末等の混和材料からなる群のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサ等の使用が可能である。
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(化合物の結晶構造の特定)
カルシウムフェライト(CF)、カルシウムアルミノフェライト(CAF、CF、CAF)、カルシウムフェロアルミネート、カルシウムアルミネート(CA)を合成した。
図1に、カルシウムフェライト(CF)およびカルシウムアルミノフェライト(CAF、CF、CAF)のXRD測定結果を示した。図1より、これらは同じ結晶構造を持つことが分かる。
一方、図2にカルシウムフェロアルミネートおよびカルシウムアルミネート(CA)のXRD測定結果を示した。カルシウムフェロアルミネートでは、CA構造を保ちながらFeが固溶していることが分かる。なお、Feが15%を超えると、固溶しなくなり、マグネタイトが析出している様子がうかがえる。以上より、カルシウムフェロアルミネートは、従来知られているCaO-Al-Fe系化合物のカルシウムアルミノフェライトとは全く異なる化合物であることが実証された。
(実験例1)
試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを酸化物換算で表1に示すモル比となるように配合し、その配合物に対して試薬1級の酸化鉄を表1に示すFe含有量となるように配合し、電気炉で焼成した。CaO/Alモル比0.7のものは1400℃、CaO/Alモル比0.6のものは1450℃、CaO/Alモル比0.4のものは1500℃、CaO/Alモル比0.15のものは1550℃でそれぞれ3時間焼成後,徐冷して合成した。すべてブレーン値は4,000cm/gに調整した。なお、比較のため、酸化鉄を添加しない場合、SiOを含有した場合、ROを含有した場合についても同様に合成した。X線回折を用いて未反応物の有無を評価した。結果を表1に示す。
<試験方法>
X線回折:未反応物(酸化アルミニウム)の回折ピークが明確に確認された場合を×,多少残っているようであれば△、確認されなかった場合を○とした。
表1より、鉄分を含有することで未反応物のアルミナが残らずエネルギー的に効率良く合成することが可能であることが分かる。
なお、鉄分を加えない場合、CaO/Alモル比0.7のものは1500℃、CaO/Alモル比0.6のものは1550℃、CaO/Alモル比0.4のものは1600℃、CaO/Alモル比0.15のものは1650℃以上で焼成することで未反応の酸化アルミニウムの回折ピークが消失した。
(実験例2)
表2に示すCFA化合物をセメントとCFA化合物からなるセメント組成物100部中、7部配合してセメント組成物を調製し、水/結合材比0.5のモルタルをJIS R 5201に準じて調製した。このモルタルを用いて、凝結時間、防錆効果、圧縮強さ、塩化物浸透深さ、Caイオンの溶脱、および耐硫酸塩性を調べた。結果を表1に併記する。なお、試験の環境温度は30℃で行った。
<使用材料>
CFA化合物A:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が3%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、実験例1と同様に1550℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成、CaO/Alモル比0.1、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物B:実験No.1-3、CaO/Alモル比0.15、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物C:実験No.1-9、CaO/Alモル比0.4、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物D:実験No.1-15、CaO/Alモル比0.6、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物E:実験No.1-21、CaO/Alモル比0.7、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物F:電気炉において1400℃で焼成した後徐冷して合成、CaO/Alモル比0.9、Fe:3%,ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物G:実験No.1-26、CaO/Alモル比0.4、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物H:実験No.1-29、CaO/Alモル比0.4、SiO:3%、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物I:実験No.1-30、CaO/Alモル比0.4、NaO:3%、ブレーン値4,000cm/g
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
細骨材:JIS R 5201で使用する標準砂
水:水道水
<評価方法>
凝結時間:JIS R 5201に準じて終結時間を測定。
防錆効果:モルタルに内在塩化物イオンとして、10kg/mとなるように塩化物イオンを加え、丸鋼の鉄筋を入れて50℃に加温養生することによる促進試験で防錆効果を確認した。鉄筋に錆が発生しなかった場合は良、1/10の面積以内で錆が発生した場合は可、1/10の面積を超えて錆が発生した場合は不可とした。
圧縮強さ:JIS R 5201に準じて材齢1日と28日圧縮強さを測定。
塩化物浸透深さ:塩化物イオンの浸透抵抗性を評価。10cmφ×20cmの円柱状のモルタル供試体を作製し、作製したモルタル供試体を、材齢28日まで30℃の水中養生を施し、30℃の塩分濃度3.5%の食塩水である擬似海水に12週間浸漬した後、塩化物浸透深さを測定。塩化物浸透深さはフルオロセイン−硝酸銀法により、モルタル供試体断面の茶変しなかった部分を塩化物浸透深さと見なし、ノギスで8点測定して平均値を求めた。
Caイオンの溶脱:4×4×16cmのモルタル供試体を10リットルの純水に28日間浸漬し、液相中に溶解したCaイオン濃度を測定することにより判定した。
耐硫酸塩性:4×4×16cmのモルタル供試体を10%NaSO溶液に25週間浸漬し、膨張率を測定した。
表2に示されるように、CaO/Alモル比0.15〜0.7の範囲にあり、鉄分(Fe)を含有するCFA化合物B〜Eをセメント混和材とすること(実験No.2-3〜No.2-6)で、特に、高温環境下でも、充分な作業時間が確保できると共に、CFA化合物を使用しない場合(実験No.2-1)と比較して、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性を維持し、初期強度の低下を抑制することができ、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、耐硫酸塩性を向上させることができる。特に、CaO/Alモル比が0.4〜0.6のCFA化合物C、Dが好ましいといえる。鉄分を含有するがCaO/Alモル比が0.1のCFA化合物Aを使用した場合(実験No.2-2)、CaO/Alモル比0.4であるが鉄分を含有しない化合物G(CAであるが表2では便宜的にCFA化合物として表記した)を使用した場合(実験No.2-8)には、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果が充分に得られず、耐硫酸塩性が低下した。CaO/Alモル比が0.9のCFA化合物Fを使用した場合(実験No.2-7)には、急硬性が現れ、可使時間が確保できなかった。
Feの代わりに、SiOを含有した化合物H(CFAではないが表2では便宜的にCFA化合物として表記した)を使用した場合(実験No.2-9)には、防錆効果が劣り、初期強度が低下し、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果が充分に得られず、耐硫酸塩性が低下した。
Feの代わりに、NaOを含有した化合物I(CFAではないが表2では便宜的にCFA化合物として表記した)を使用した場合(実験No.2-10)には、短時間で流動性が低下し、凝結した。
(実験例3)
試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムをCaO/Alモル比0.4で配合し、試薬1級の酸化鉄を表3に示すFe含有量となるように配合し、実験例1と同様に電気炉で焼成した後、徐冷して合成したCFA化合物を併用したこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表3に併記する。
表3に示されるように、鉄分を0.5〜15質量%含有するCFA化合物をセメント混和材とすること(実験No.3-1〜No.3-6)で、鉄分を含有しないCA化合物を使用した場合(実験No.2-8)と比較して、特に、高温環境下でも、充分な作業時間が確保でき、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性を維持し、初期強度の低下を抑制することができ、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、耐硫酸塩性を向上させることができる。鉄分を20質量%含有するCFA化合物を使用した場合(実験No.3-7)には、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果が充分に得られなかった。
(実験例4)
表4に示す粉末度のCFA化合物Dを使用したこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表4に併記する。
表4に示されるように、CFA化合物の粉末度を調整してセメント混和材とすることで、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性を維持し、強度低下を抑制することができ、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、耐硫酸塩性を向上させることができる。CFA化合物の粉末度は、2,000〜7,000cm/gが好ましく、3,000〜6,000cm/gがより好ましく、4,000〜5,000cm/gが最も好ましいといえる。
(実験例5)
CFA化合物Dを使用して表5に示す使用量としたこと以外は実験例2と同様に行った。比較のために、従来の防錆材を用いて同様に行った。結果を表5に併記する。
<使用材料>
従来の防錆材イ:亜硝酸リチウム、市販品
従来の防錆材ロ:亜硝酸型ハイドロカルマイト、市販品
表5に示されるように、CFA化合物の使用量を調整してセメント混和材とすることで、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性を維持し、強度低下を抑制することができ、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、耐硫酸塩性を向上させることができる。
表5より、カルシウムフェロアルミネート化合物のみをセメント混和材として使用する場合、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1〜15部が好ましく、2〜12部がより好ましいといえる。
(実験例6)
CaO/Alモル比が異なる表6に示すCFA化合物と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質イを、質量比1/2で混合してセメント混和材を調製した。調製したセメント混和材を用いて、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、セメント混和材を21部配合してセメント組成物を調製し、水/結合材比0.5のモルタルをJIS R 5201に準じて調製した。このモルタルを用いて、防錆効果、圧縮強さ、塩化物浸透深さ、Caイオンの溶脱および自己治癒能力を調べた。結果を表6に併記する。
<使用材料>
潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質イ:高炉水砕スラグ微粉末、市販品、ブレーン値:4000cm/g
<評価方法>
自己治癒能力:6mmのナイロン繊維を0.15質量%混合した10×10×40cmのモルタル供試体を作製し、曲げ応力によって幅0.3mmのひび割れを導入した。擬似海水に180日間浸漬した後、ひび割れ幅を測定した。◎は完全にひび割れが塞がった、○は0.1mm以下にひび割れ幅が縮小化した、△は0.2mm程度までひび割れ幅が縮小。×はひび割れ幅が縮小化されないか、あるいは逆に広がったことを示す。
表6より、本発明のCaO/Alモル比が0.15〜0.7のCFA化合物B〜Eと潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質を併用すること(実験No.6-2〜No.6-5)で、両者を使用しない場合(実験No.2-1)と比較して、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性が向上し、初期強度が増加し、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、自己治癒能力が向上することが分かる。特に、CaO/Alモル比が0.4〜0.6のCFA化合物C、Dが好ましいといえる。CaO/Alモル比が0.1のCFA化合物Aを使用した場合(実験No.6-1)には、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果が充分に得られず、自己治癒能力が低下した。CaO/Alモル比が0.9のCFA化合物Fを使用した場合(実験No.6-6)には、急硬性が現れ、可使時間が確保できなかった。
(実験例7)
Feの含有量が異なる表7に示すCFA化合物と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質イを併用したこと以外は実験例6と同様に行った。 結果を表7に併記する。
<使用材料>
CFA化合物J:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が0.5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物K:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が1%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物L:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が7%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物M:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が10%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物N:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が20%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4,000cm/g
CFA化合物O:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Feを配合しないで、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4,000cm/g
表7より、Feの含有量が0.5〜20%のCFA化合物D、J〜Oと潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質を併用すること(実験No.6-4、No.7-1〜No.7-5)で、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性が維持され、初期強度が増加し、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、自己治癒能力が向上することが分かる。Feの含有量が0%のCFA化合物O(CAであるが表7では便宜的にCFA化合物として表記した)と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質を併用した場合(実験No.7-6)には、初期強度が低下した。
(実験例8)
表8に示す粉末度のCFA化合物Dと潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質イを併用したこと以外は実験例6と同様に行った。結果を表8に併記する。
表8より、CFA化合物の粉末度を調整することで、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性が維持され、強度低下が抑制され、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、自己治癒能力が向上することが分かる。CFA化合物の粉末度は、2,000〜7,000cm/gが好ましく、3,000〜6,000cm/gがより好ましく、4,000〜5,000cm/gが最も好ましいといえる
(実験例9)
CFA化合物Dを使用し、表9に示す潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質(以下、「ポゾラン物質」と省略する)を併用したこと以外は実験例6と同様に行った。結果を表9に併記する。
<使用材料>
ポゾラン物質ロ:市販のシリカフューム、BET比表面積20m/g
ポゾラン物質ハ:市販のフライアッシュ、ブレーン値4000cm/g
ポゾラン物質二:市販のメタカオリン、BET比表面積10m/g
ポゾラン物質ホ:市販のパルプスラッジ焼却灰、ブレーン値4000cm/g
ポゾラン物質へ:市販の下水汚泥焼却灰、ブレーン値9000cm/g
ポゾラン物質ト:市販の廃ガラス粉末、ブレーン値4000cm/g
ポゾラン物質チ:ポゾラン物質イ50部とポゾラン物質ロ50部の混合物、ブレーン値10000cm/g
表9より、いずれのポゾラン物質を使用しても、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性が維持され、強度低下が抑制され、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、自己治癒能力が向上することが分かる。中でも、高炉水砕スラグ微粉末(ポゾラン物質イ)、シリカフューム(ポゾラン物質ロ)、フライアッシュ(ポゾラン物質ハ)、メタカオリン(ポゾラン物質ニ)が好ましいといえる。
(実験例10)
CFA化合物Dとポゾラン物質イを用いて、表10に示す配合で混和材としたこと以外は実験例6と同様に行った。結果を表10に併記する。
表10より、CFA化合物とポゾラン物質との配合割合を、質量比で1/20〜20/1とすることで、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性が維持され、強度低下が抑制され、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、自己治癒能力が向上することが分かる。上記の配合割合を、質量比で1/10〜10/1とすることが好ましく、1/5〜5/1とすることがより好ましいといえる。
(実験例11)
CFA化合物Dを使用してセメント混和材(CFA化合物Dとポゾラン物質イを合計したもの)の使用量を表11に示す使用量としたこと以外は実験例6と同様に行った。比較のために、従来の防錆材を用いて同様に行った。結果を表11に併記する。
表11に示されているように、セメント混和材の使用量を調整することで、防錆効果、塩化物イオンの浸透抵抗性を維持し、強度低下を抑制することができ、さらに、Caイオンの溶脱抑制効果、自己治癒能力を向上することができる。
表11より、CFA化合物とポゾラン物質をセメント混和材として使用する場合、セメント混和材の使用量は、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1〜50部が好ましく、5〜30部がより好ましいといえる。
本発明のセメント混和材を使用することにより、高温環境下においても、充分な作業時間を確保でき、優れた防錆効果と、塩化物イオンの浸透抵抗性、Caイオンの溶脱抑制効果及び耐硫酸塩性を奏するため、主に、土木・建築業界等において海洋や河川の水利構造物、水槽、床版コンクリートなど広範な用途に適する。

Claims (7)

  1. CaO-Al-Fe系からなり、Feの含有量が0.5〜15質量%であり、CaO・2Al構造を持つカルシウムフェロアルミネート化合物を含有し、CaO/Al モル比が、0.15〜0.7の範囲にあることを特徴とするセメント混和材。
  2. 粉末度が、ブレーン比表面積値で2,000〜7,000cm/gである請求項に記載のセメント混和材。
  3. さらに潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質を含有する請求項1又は2に記載のセメント混和材。
  4. 前記潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質が、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、パルプスラッジ焼却灰、下水汚泥焼却灰、及び廃ガラス粉末からなる群より選ばれた一種又は二種以上を含有してなる請求項に記載のセメント混和材。
  5. 前記カルシウムフェロアルミネート化合物と潜在水硬性物質および/またはポゾラン物質との配合割合が、質量比で10/1〜1/10である請求項3又は4に記載のセメント混和材。
  6. CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜15質量%となるように、CaOを含む原料、Alを含む原料、鉄を含む原料を配合し、1400℃以上、1600℃以下で熱処理して得られるクリンカーを、ブレーン比表面積値2,000〜7,000cm/gに粉砕することを特徴とするセメント混和材の製造方法。
  7. セメントと、請求項1〜のうちいずれか1項に記載のセメント混和材を含有するセメント組成物。
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