JP5843105B2 - セメント混和材、セメント組成物及びその製造方法 - Google Patents

セメント混和材、セメント組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
近年、土木や建築分野において、コンクリート構造物の耐久性向上に対する要望が高まっている。
コンクリート構造物の劣化要因の1つとして、塩化物イオンの存在によって鉄筋腐食が顕在化する塩害があり、その塩害を抑制するための方法として、コンクリート構造物に塩化物イオン浸透抵抗性を付与する手法がある。
コンクリート硬化体の内部への塩化物イオン浸透を抑制し、塩化物イオン浸透抵抗性を与える方法としては、水/セメント比を小さくする方法が知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、水/セメント比を小さくする方法では、施工性が損なわれるだけでなく、抜本的な対策とはならない場合があった。
また、セメントコンクリートに早強性を付与し、かつ、鉄筋の腐食を防止するなどの目的で、CaO・2Alとセッコウを主体とし、ブレーン比表面積値が8,000cm/g以上の微粉を含有するセメント混和材を使用する方法が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、CaO/Alモル比が0.3〜0.7、ブレーン比表面積が2000〜7000cm/gのカルシウムアルミネートを含有するセメント混和材を使用し,優れた塩化物イオン浸透抵抗性を持ち,マスコンの温度ひび割れ抑制する方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、この方法では、混和材中の微粒子がセメントの水和に影響を及ぼし、フローダウンや強度の低下および乾燥収縮の増大を引き起こし、ひび割れが入りやすくなる等の課題を有していた。
さらに、可使時間や初期強度の確保を目的として、カルシウムアルミネートとセッコウから成るセメント急硬材に対して水を0.5〜2質量部含有させたセメント混和材が提案されている(特許文献3参照)。
他方、鉄筋の防錆を目的として、亜硝酸塩などを添加する方法も提案されている(特許文献4、特許文献5参照)。
しかしながら、亜硝酸塩は、防錆効果を発揮するものの、外部から侵入する塩化物イオンの遮蔽効果を発揮するものではなく、また、亜硝酸型ハイドロカルマイトは、防錆効果を発揮するものの、これを混和したセメント硬化体が多孔質になりやすく、むしろ、外部からの塩化物イオンの浸透を許容しやすいという課題を有していた。
特開昭47−035020号公報 特開2005−104828号公報 特開昭53−125431号公報 特開昭53−003423号公報 特開平01−103970号公報
岸谷孝一、西澤紀昭他編、コンクリートの耐久性シリーズ、塩害(I)、技報堂出版、pp.34−37、1986年5月
本発明は、セメントコンクリート硬化体内部の鉄筋に優れた防錆効果を付与し、外部から侵入するセメントコンクリート硬化体への塩化物イオン浸透の遮蔽効果を有し、セメントコンクリート硬化体からのCaイオンの溶脱も少ないため多孔化も抑制でき、乾燥収縮量やフローダウンが小さく、さらに発生したひび割れを自ら閉塞する自己治癒効果を有するため、長期に渡り優れた遮塩性を発揮するセメント混和材、セメント組成物及びその製造方法を提供する。
本発明は、(1)CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜20質量%のカルシウムフェロアルミネート化合物と水を含有してなり、カルシウムフェロアルミネート化合物100質量部に対して水が0.1〜3質量部であるセメント混和材、(2)カルシウムフェロアルミネート化合物の粉末度が、ブレーン比表面積2000〜7000cm/gである(1)のセメント混和材、(3)セメントと、(1)又は(2)のセメント混和材を含有してなるセメント組成物、(4)セメントと、CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜20質量%のカルシウムフェロアルミネート化合物に水を添加したものとを含有してなり、カルシウムフェロアルミネート化合物100質量部に対して水が0.1〜3質量部であるセメント組成物、(5)CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜20質量%のカルシウムフェロアルミネート化合物100質量部に対して水を0.1〜3質量部攪拌混合しながら、噴霧器等を用いて10μm以下の微粒子に優先的に吸着するよう添加したブレーン比表面積2000〜7000cm/gのセメント混和材に、セメントを混合するセメント組成物の製造方法、である。
本発明のセメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、優れた防錆効果と、外部から侵入する塩化物イオンの遮蔽効果を持ち、セメントコンクリート硬化体からのCaイオンの溶脱も少ないことから、多孔化も抑制でき、乾燥収縮量やフローダウンが小さく、さらに発生したひび割れを自ら閉塞する自己治癒効果を有するため、長期に渡り優れた遮塩性を発揮するなどの効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に規定しない限り質量基準で示す。
また、本発明で云うセメントコンクリートとは、セメントペースト、セメントモルタル、及びコンクリートの総称である。
本発明で使用するカルシウムフェロアルミネート化合物(以下、CFA化合物という)とは、カルシアを含む原料、アルミナを含む原料、フェライトを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaO、Al、Feを主成分とする化合物を総称するものである。
CFA化合物の組成は、CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFe含有量が0.5〜20%である。CaO/Alモル比が0.4〜0.6がより好ましい。0.15未満では、塩化物イオンの遮蔽効果が充分に得られない場合があり、逆に、0.7を超えると急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。CFA化合物のFeの含有量は、0.5〜20%が好ましく、1〜10%がより好ましく、3〜7%が最も好ましい。0.5%未満では、キルンで焼成した場合に未反応の酸化アルミニウムが多く残ったり、初期強度の増進の効果は期待できない。20%を越えても効率的に反応を進行させる効果は頭うちとなり、塩化物イオン浸透抵抗性が悪くなる場合がある。
CFA化合物100部に対して含有させる水分(以下、水添率と称する。)は0.1〜3部が好ましく、より好ましくは0.3〜2部である。0.1部未満では乾燥収縮量の低減、フローの経時低下の抑制効果や乾燥収縮量の改善効果が十分ではなく、3部を超えると混和材中に均一に分散させることが困難となり、遮塩性や強度発現性に悪影響を及ぼす場合がある。本発明における水添効果は従来の可使時間の確保や超早期強度発現性の向上を目的とした水添効果とは異なる。
従来、活性の高いカルシウムアルミネートに水分を添加して粒子の表面を水和物で覆うことで、可使時間の確保や早期の強度発現性を向上させることが行われていた。
一方、本発明はCFA化合物に水分を添加するものであるが、特に反応性の高い10μm以下の微粒子と優先的に水和させることによって、乾燥収縮量が大幅に改善され、塩化物イオン浸透抵抗性や防錆効果にはほとんど影響を及ぼさないことを見出したものである。
CFA化合物中に水分を含有させる方法は、優先的に10μm以下の微粒子と反応させる方法が好ましく、例えば、ボールミル等で粉砕混合しながら水を噴霧器や水蒸気等で添加する方法や、Vブレンダーなどで撹拌混合しながら、噴霧器や水蒸気等で添加する方法がある。粉砕や攪拌を行いながら水を添加することで10μm以下の微粒子が空気中に舞い上がり、優先的に水分が吸着する。水分を加えてから攪拌混合を始めると、10μm以上の粒子にも水が吸着し、塩化物イオン浸透抵抗性や防錆効果が低下する場合がある。
CFA化合物の粉末度は、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)で2000〜7000cm/gが好ましく、3000〜6000cm/gがより好ましく、3000〜4000cm/gが最も好ましい。2000cm/g未満では充分な塩化物イオンの遮蔽効果が得られない場合があり、7000cm/gを超える微粉では、急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。
CFA化合物の製造に使用する原料について説明する。
カルシアを含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている例えば、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、石灰石(CaCO)等が挙げられる。
アルミナを含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている例えばAlや水酸化アルミニウム、ボーキサイト等が挙げられる。特にボーキサイトはAlと共にFeを含んでいるため望ましい。
フェライトを含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている鉄鉱石を粉砕、加工、精製したFeや鋼材洗浄廃塩酸から回収、精製して得られるFe等が挙げられる。
さらに、例えば、SiOやRO(Rはアルカリ金属)を併用しても、本発明の目的を損なわない限り使用可能である。
CFA化合物は、カルシアを含む原料、アルミナを含む原料、フェライトを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる。焼成温度は原料の配合にもよるが1400℃以上が好ましく、1500℃以上がより好ましい。1400℃未満では効率良く反応が進まず未反応のAlが残る可能性がある。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等のポルトランドセメントが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
セメント混和材の使用量は特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1〜30部が好ましく、5〜15部がより好ましい。セメント混和材の使用量が少ないと充分な防錆効果、塩化物イオンの遮蔽効果、Caイオンの溶脱抑制効果が得られない場合があり、過剰に使用すると急硬性が現れるようになり、充分な可使時間が確保できない場合がある。
本発明では、セメントとセメント混和材を配合して、また、セメント、CFA化合物を配合してセメント組成物とする。
本発明のセメント組成物の水/セメント組成物比は、25〜70%が好ましく、30〜65%がより好ましい。水の配合量が少ないと、ポンプ圧送性や施工性が低下したり、収縮等の原因となる場合があり、水の配合量が過剰では強度発現性が低下する場合がある。
本発明のセメント混和材やセメント組成物は、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
本発明では、セメント、セメント混和材、及び砂等の細骨材や砂利等の粗骨材の他に、膨張材、急硬材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、従来の防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体、高炉水砕スラグ微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末等のスラグ、石灰石微粉末等の混和材料からなる群のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサ等の使用が可能である。
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「実験例1」
表1に示すCFA化合物を、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、セメント混和材を10部配合してセメント組成物を調製し、水/セメント組成物比0.5のモルタルをJIS R 5201に準じて調製した。このモルタルを用いて、防錆効果、圧縮強さ、フロー保持率、長さ変化率、塩化物浸透深さ、Caイオンの溶脱および自己治癒能力を調べた。結果を表1に併記する。
(使用材料)
CFA化合物A:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1550℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加した。CaO/Alモル比0.1、ブレーン値3000cm/g、水添率0.5%
CFA化合物B:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1550℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加した。CaO/Alモル比0.15、ブレーン値3000cm/g、水添率0.5%
CFA化合物C:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1500℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加した。CaO/Alモル比0.4、ブレーン値3000cm/g、水添率0.5%
CFA化合物D:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加した。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値3000cm/g、水添率0.5%
CFA化合物E:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1400℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加した。CaO/Alモル比0.7、ブレーン値3000cm/g、水添率:0.5%
CFA化合物F:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1400℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加した。CaO/Alモル比0.9、ブレーン値3000cm/g、水添率:0.5%
CFA化合物G:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、ボールミルで粉砕混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加した。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値3000cm/g、水添率0.5%
CFA化合物H:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、CFA化合物100部に対して水を0.5部噴霧器を用いて添加し、直ちにVブレンダーで攪拌混合を行った。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値3000cm/g、水添率0.5%
CFA化合物I:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定割合で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部手投入で添加した。CaO/Alモル比0.6、ブレーン値3000cm/g、水添率0.5%
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
細骨材:JIS R 5201で使用する標準砂
水:水道水
(評価方法)
防錆効果:モルタルに内在塩化物イオンとして、10kg/mとなるように試薬1級の塩化ナトリウムを加え、丸鋼の鉄筋を入れて50℃に加温養生することによる促進試験で防錆効果を確認した。鉄筋に錆が発生しなかった場合は良、1/10の面積以内で錆が発生した場合は可、1/10の面積を超えて錆が発生した場合は不可とした。
圧縮強さ:JIS R 5201に準じて材齢1日と28日圧縮強さを測定。
長さ変化率:JIS A 1129−3 ダイヤルゲージ法に準じて測定。4×4×16cmのゲージプラグ付き型枠にモルタルを打設し、48時間後まで型枠内で養生後、型枠を脱型し、速やかに基長を測定し、20℃/RH60%の環境下における28日後の長さ変化率を測定した。
フロー保持率:JIS R 5201に準じて練り上がり直後と1時間後のフローを測定。以下の式に準じてフロー保持率を算出した。
フロー保持率(%)=1時間後のフロー(mm)/練り上がり直後のフロー(mm)×100
塩化物浸透深さ:塩化物イオン浸透抵抗性を評価。塩化物イオンの遮蔽効果を示す10cmφ×20cmの円柱状のモルタル供試体を作製し、作製したモルタル供試体を、材齢28日まで20℃の水中養生を施し、30℃の塩分濃度3.5%である擬似海水に12週間浸漬した後、塩化物浸透深さを測定。塩化物浸透深さはフルオロセイン−硝酸銀法により、モルタル供試体断面の茶変しなかった部分を塩化物浸透深さと見なし、ノギスで8点測定して平均値を求めた。
Caイオンの溶脱:4×4×16cmのモルタル供試体を10リットルの純水に28日間浸漬し、液相中に溶解したCaイオン濃度を測定することにより判定した。
自己治癒能力:6mmのナイロン繊維を0.15%混合した10×10×40cmのモルタル供試体を作製し、曲げ応力によって幅0.3mmのひび割れを導入した。擬似海水に180日間浸漬した後、ひび割れ幅を測定した。◎は完全にひび割れが塞がった、○は0.1mm以下にひび割れ幅が縮小化した、△は0.2mm程度までひび割れ幅が縮小。×はひび割れ幅が縮小化されないか、あるいは逆に広がったことを示す。
Figure 0005843105
表1より、攪拌混合しながら、水添率を0.5%としたCaO/Alモル比が0.15〜0.7のCFA化合物を使用することで、防錆効果、塩化物イオン浸透抑制効果を維持し、初期及び長期強度の低下、フローの経時低下及び乾燥収縮量を抑制することができ、Caイオンの溶脱抵抗性及び自己治癒能力を向上することが分かる。
「実験例2」
試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムをCaO/Alモル比0.6で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、1450℃で電気炉において焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、表2に示すような水添率としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
Figure 0005843105
表2より、水添率を調整することで、防錆効果、塩化物イオン浸透抑制効果を維持し、初期及び長期強度の低下、フローの経時低下及び乾燥収縮量を抑制することができ、さらにCaイオンの溶脱抵抗性及び自己治癒能力を向上することが分かる。
「実験例3」
試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムをCaO/Alモル比0.6で配合し、試薬1級の酸化鉄を表3に示すFe含有量となるように配合し、実験例1と同様に電気炉で焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、Vブレンダーで攪拌混合しながらCFA化合物100部に対して水を0.5部添加噴霧器を用いて添加したCFA化合物を併用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
Figure 0005843105
表3より、Feの含有量を調整することで、防錆効果、塩化物イオン浸透抑制効果を維持し、初期及び長期強度の低下、フローの経時低下及び乾燥収縮量を抑制することができ、さらにCaイオンの溶脱抵抗性及び自己治癒能力を向上することが分かる。
「実験例4」
試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムをCaO/Alモル比0.6で配合し、Fe含有量が5%となるように試薬1級の酸化鉄を配合し、実験例1と同様に電気炉で焼成した後、徐冷して合成し、振動ミルを用いて粉砕後、水添率を0.5%とし、表3に示すブレーン比表面積となるように調整したCFA化合物を併用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
Figure 0005843105
表4より、CFA化合物の粉末度を調整することで、防錆効果、塩化物イオン浸透抑制効果を維持し、フローの経時低下及び乾燥収縮量を抑制することができ、さらにCaイオンの溶脱抵抗性及び自己治癒能力を向上することが分かる。
「実験例5」
CFA化合物Dを使用して表5に示す使用量としたこと以外は実験例1と同様に行った。比較のために、従来の防錆材を用いて同様に行った。結果を表5に併記する。
(使用材料)
従来の防錆材イ:亜硝酸リチウム、市販品
従来の防錆材ロ:亜硝酸型ハイドロカルマイト、市販品
Figure 0005843105
表5より、CFA化合物の使用量を調整することで、防錆効果、塩化物イオン浸透抑制効果を維持し、フローの経時低下及び乾燥収縮量を抑制することができ、さらにCaイオンの溶脱抵抗性及び自己治癒能力を向上することが分かる。
本発明のセメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、優れた防錆効果と、外部から侵入する塩化物イオンの遮蔽効果を持ち、セメントコンクリート硬化体からのCaイオンの溶脱も少ないことから、多孔化も抑制でき、乾燥収縮量やフローダウンが小さく、さらに発生したひび割れを自ら閉塞する自己治癒効果を有するため、長期に渡り優れた遮塩性を発揮するなどの効果を奏するため、主に、土木・建築業界等において海洋や河川の水利構造物、水槽、床版コンクリートなど広範な用途に適する。

Claims (5)

  1. CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜20質量%のカルシウムフェロアルミネート化合物と水を含有してなり、カルシウムフェロアルミネート化合物100質量部に対して水が0.1〜3質量部であるセメント混和材。
  2. カルシウムフェロアルミネート化合物の粉末度が、ブレーン比表面積2000〜7000cm/gである請求項1に記載のセメント混和材。
  3. セメントと、請求項1又は2記載のセメント混和材を含有してなるセメント組成物。
  4. セメントと、CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜20質量%のカルシウムフェロアルミネート化合物に水を添加したものとを含有してなり、カルシウムフェロアルミネート化合物100質量部に対して水が0.1〜3質量部であるセメント組成物。
  5. CaO/Alモル比が0.15〜0.7でFeの含有量が0.5〜20質量%のカルシウムフェロアルミネート化合物100質量部に対して水を0.1〜3質量部攪拌混合しながら、噴霧器等を用いて10μm以下の微粒子に優先的に吸着するよう添加したブレーン比表面積2000〜7000cm/gのセメント混和材に、セメントを混合することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
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