JP5634683B2 - セメント混和材及びセメント組成物の調整方法 - Google Patents

セメント混和材及びセメント組成物の調整方法 Download PDF

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Description

本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
近年、土木や建築分野において、コンクリート構造物の耐久性向上に対する要望が高まっている。コンクリート構造物の劣化要因の1つとして、塩化物イオンの存在によって鉄筋腐食が顕在化する塩害があり、その塩害を抑制するための方法として、コンクリート構造物に塩化物イオン浸透抵抗性を与える手法がある。
コンクリート硬化体の内部への塩化物イオン浸透を抑制し、塩化物イオン浸透抵抗性を与える方法としては、水/セメント比を小さくする方法が知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、水/セメント比を小さくする方法では、施工性が損なわれるだけでなく、抜本的な対策とはならないという課題があった。
また、セメントコンクリートに早強性を付与し、かつ、鉄筋の腐食を防止するなどの目的で、CaO・2Alとセッコウを主体とし、ブレーン比表面積値が8000cm/gの微粉を含有するセメント混和材を使用する方法(特許文献1参照)が提案されている。
さらに、CaO/Al モル比が0.3〜0.7、ブレーン比表面積が2000〜6000cm/gのカルシウムアルミネートを含有するセメント混和材を使用し、優れた塩化物イオン浸透抵抗性を持ち、マスコンの温度ひび割れ抑制する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、このカルシウムアルミネートは、初期強度の発現を阻害する傾向にあった。
一方、高炉水砕スラグ微粉末を混和した高炉セメント組成物が塩素イオンの浸透抵抗性を向上させることができることが知られている。塩素イオンの浸透を抑制する理由は、高炉スラグ微粉末中のAl成分が塩素イオンを化学的に固定化、あるいは電気的に吸着するためである。しかしながら、高炉水砕スラグ微粉末の反応は長期にわたって起こるため、初期強度の発現を阻害する傾向にあり、若材齢で海水に浸漬されると塩化物イオンの浸透抵抗性が低下し、コンクリートが劣化するという課題があった。そのため、耐久性すなわち耐海水性を向上させるにはセメント硬化体中における反応を促進して初期材齢のうちから海水の作用による塩化物イオンの侵入を低減する必要がある。
他方、鉄筋の防錆を目的として、亜硝酸塩や亜硝酸型ハイドロカルマイトを添加する方法も提案されている(特許文献3〜特許文献5参照)。しかしながら、亜硝酸塩は、防錆効果を発揮するものの、外部から侵入する塩化物イオンの遮蔽効果を発揮するものではなく、また、亜硝酸型ハイドロカルマイトは、防錆効果を発揮するものの、これを混和したセメント硬化体が多孔質になりやすく、むしろ、外部からの塩化物イオンの浸透を許容しやすいという課題を有していた。
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、特定の組成を用いることにより、前述のような初期強度の低下と、初期からの塩化物イオンの遮蔽効果の課題を解決し、高耐久性のセメント混和材が得られる知見を得て、本発明を完成するに至った。
岸谷孝一、西澤紀昭他編、「コンクリートの耐久性シリーズ、塩害(I)」、技報堂出版、pp.34−37、1986年5月 特開昭47−035020号公報 特開2005−104828号公報 特開昭53−003423号公報 特開平01−103970号公報 特開平04−154648号公報
セメントコンクリート硬化体において、内部の鉄筋に優れた防錆効果を付与し、外部から侵入する塩化物イオン浸透の遮蔽効果を有し、さらに、Caイオンの溶脱も少ないため多孔化も抑制できる、セメント混和材及びセメント組成物を提供する。
本発明は、(1)セメントと、CaO/Alモル比が0.15〜0.7のブレーン比表面積値で2000〜7000cm/gのカルシウムアルミネート化合物と、ブレーン比表面積値で3000〜12000cm/gでガラス化率は90%以上の高炉水砕スラグ微粉末を含有してなり、カルシウムアルミネート化合物と高炉水砕スラグ微粉末との配合割合が質量比で5/1〜1/2とする、JIS R 5201に準じて調製した材齢1日のモルタルにおいて、塩化物イオン浸透深さが4〜12mmでCaイオンの溶脱が42〜62mg/lである、塩化物イオン浸透の遮蔽効果を有しCaイオンの溶脱も少ないという効果をモルタルに付与するセメント組成物の調整方法、である。
本発明のセメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、セメントコンクリート硬化体において、内部の鉄筋に優れた防錆効果を付与し、外部から侵入する塩化物イオン浸透の遮蔽効果を有し、さらに、Caイオンの溶脱も少ないため多孔化も抑制できるなどの効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に規定しない限り質量基準で示す。
また、本発明で云うセメントコンクリートとは、セメントペースト、セメントモルタル、及びコンクリートの総称である。
土木用途や建築用途では、生コン工場から工事現場に輸送し、大量に打設する使用形態がある。このような使用形態では、可使時間はセメントと同等以上とすることが必要であり、可使時間が少なくとも1時間以上確保される必要があり、3時間以上確保されることが好ましいとされている。
本発明で使用するカルシウムアルミネート化合物(以下、CA化合物という)とは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAlを主成分とする化合物を総称するものであり、本発明は、その組成が、CaO/Alモル比で、0.15〜0.7の範囲にあるものである。CA化合物に、例えば、SiOやRO(Rはアルカリ金属)が含有していても、本発明の目的を損なわない限り使用可能である。
CA化合物のCaO/Alモル比は0.15〜0.7であり、0.4〜0.6が好ましい。0.15未満では、塩化物イオンの遮蔽効果が充分に得られない場合があり、逆に、0.7を超えると急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。
CA化合物の粉末度は、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で2000〜7000cm/gが好ましく、3000〜6000cm/gがより好ましく、4000〜5000cm/gが最も好ましい。CA化合物が粗粒では充分な塩化物イオンの遮蔽効果が得られない場合があり、7000cm/gを超える微粉では急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。
本発明では、CaO/Alモル比が0.15〜0.7のCA化合物と高炉水砕スラグを併用する。本発明の高炉水砕スラグとは、特に限定されるものではないが、製鉄所の溶鉱炉から副産する溶融スラグを水で急冷した後、微粉砕したものが一般的である。そのガラス化率は90%以上が好ましい。90%以下であると、反応が緩慢になり、塩化物イオンの遮蔽効果が充分に得られない場合がある。
高炉水砕スラグ微粉末の粉末度は、ブレーン値で3000〜12000cm/gが好ましい。3000cm/g以下であると反応が緩慢になり、塩化物イオンの遮蔽効果が充分に得られない場合があり、12000cm/g以上であっても塩化物イオンの遮蔽効果は頭打ちになりそれ以上の効果は期待できない。
本発明のCA化合物と高炉水砕スラグ微粉末との配合割合は、質量比で10/1〜1/10が好ましい。1/10よりも高炉水砕スラグ微粉末が過剰になると、外部から侵入する塩化物イオンの遮蔽効果が充分でない場合や、防錆効果が不充分になる場合があり、逆に、10/1よりも本CA化合物が過剰になると、Caの溶脱効果が不充分になる場合がある。
セメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等のポルトランドセメントが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が使用可能である。
セメント混和材の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1〜50部が好ましく、5〜30部がより好ましい。セメント混和材の使用量が少ないと充分な防錆効果、塩化物イオンの遮蔽効果、Caイオンの溶脱抑制効果が得られない場合があり、過剰に使用すると急硬性が現れるようになり、充分な可使時間が確保できない場合がある。
本発明では、セメントとセメント混和材を配合して、また、セメント、CA化合物、及び高炉水砕スラグ微粉末を配合してセメント組成物とする。
本発明のセメント組成物の水/結合材比は、25〜70%が好ましく、30〜65%がより好ましい。水の配合量が少ないと、ポンプ圧送性や施工性が低下する場合や、収縮等の原因となる場合があり、水の配合量が過剰では強度発現性が低下する場合がある。ここで結合材とは、セメント、CA化合物、及び高炉水砕スラグ微粉末の合計をいう。
本発明のセメント混和材やセメント組成物は、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
本発明では、セメント、セメント混和材、及び砂等の細骨材や砂利等の粗骨材の他に、膨張材、急硬材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、従来の防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体、高炉徐冷スラグ微粉末等のスラグ、石灰石微粉末等の混和材料からなる群のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ及びナウタミキサ等の使用が可能である。
以下、さらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「実験例1」
表1に示すCA化合物と高炉スラグ微粉末を、質量比1/1で混合してセメント混和材を調製した。調製したセメント混和材を用いて、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、セメント混和材を10部配合してセメント組成物を調製し、水/結合材比0.5のモルタルをJIS R 5201に準じて調製した。このモルタルを用いて、防錆効果、圧縮強さ、塩化物浸透深さ、及びCaイオンの溶脱を調べた。結果を表1に併記する。
<使用材料>
CA化合物A:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定の割合で配合し、電気炉で1650℃で焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.1、ブレーン値4000cm/g
CA化合物B:CA化合物Aと同様に合成、CaO/Alモル比0.15、ブレーン値4000cm/g
CA化合物C:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定の割合で配合し、電気炉で1550℃で焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.4、ブレーン値4000cm/g
CA化合物D:CA化合物Cと同様に合成、CaO/Alモル比0.5、ブレーン値4000cm/g
CA化合物E:CA化合物Cと同様に合成、CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4000cm/g
CA化合物F:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定の割合で配合し、電気炉で1450℃で焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.7、ブレーン値4000cm/g
CA化合物G:CA化合物Fと同様に合成、CaO/Alモル比0.9、ブレーン値4000cm/g
高炉水砕スラグ微粉末イ:市販品、ガラス化率>99% ブレーン値:4000cm/g
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
細骨材:JIS R 5201で使用する標準砂
水 :水道水
防錆効果:モルタルに内在塩化物イオンとして、10kg/mとなるように塩化物イオンを加え、丸鋼の鉄筋を入れて50℃に加温養生することによる促進試験で防錆効果を確認した。鉄筋に錆が発生しなかった場合は良、1/10の面積以内で錆が発生した場合は可、1/10の面積を超えて錆が発生した場合は不可とした。
圧縮強さ:JIS R 5201に準じて材齢1日および28日圧縮強さを測定。
塩化物浸透深さ:塩化物イオン浸透抵抗性を評価。塩化物イオンの遮蔽効果を示す10cmφ×20cmの円柱状のモルタル供試体を作製し、1日後に脱型した後、直ちに30℃の塩分濃度3.5%の食塩水である擬似海水に12週間浸漬した後、塩化物浸透深さを測定。塩化物浸透深さはフルオロセイン−硝酸銀法により、モルタル供試体断面の茶変しなかった部分を塩化物浸透深さと見なし、ノギスで8点測定して平均値を求めた。
Caイオンの溶脱:4×4×16cmのモルタル供試体を作製し、1日後に脱型した後、直ちに10リットルの純水に28日間浸漬し、液相中に溶解したCaイオン濃度を測定することにより判定した。
Figure 0005634683
表1より、CA化合物と高炉スラグ微粉末を併用することで,初期強度の低下を抑制することができ、初期材齢から塩化物イオンの遮蔽効果とCaイオンの溶脱抑制効果を発揮していることが分かる。
「実験例2」
表2に示す粉末度のCA化合物Dと高炉水砕スラグ微粉末を併用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
Figure 0005634683
表2より、CA化合物と高炉水砕スラグ微粉末の粉末度を調整することで、初期強度の低下を抑制することができ、初期材齢から塩化物イオンの遮蔽効果とCaイオンの溶脱抑制効果を発揮していることが分かる。
「実験例3」
CA化合物Dと高炉水砕スラグ微粉末を用いて、表3に示す配合で混和材としたこと以外は実験例1と同様に行った。
Figure 0005634683
表3より、CA化合物と高炉スラグ微粉末を併用することで、初期強度の低下を抑制することができ、初期材齢から塩化物イオンの遮蔽効果とCaイオンの溶脱抑制効果を発揮していることが分かる。
「実験例4」
表4に示すように、実験No.1-5のセメント混和材を使用し、使用量を変えたこと以外は実験例1と同様に行った。比較のために、従来の防錆材を用いて同様に行った。結果を表4に併記する。
<使用材料>
従来の防錆材イ:亜硝酸リチウム、市販品
従来の防錆材ロ:亜硝酸型ハイドロカルマイト、市販品
Figure 0005634683
表4より、セメント混和材の使用量を変えることで、初期強度低下の抑制、初期材齢の塩化物イオンの遮蔽効果、Caイオンの溶脱抑制効果を調整できることが分かる。
本発明のセメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、セメントコンクリート硬化体において、内部の鉄筋に優れた防錆効果を付与し、外部から侵入する塩化物イオン浸透の遮蔽効果を有し、さらに、Caイオンの溶脱も少ないため多孔化も抑制できるなどの効果を奏するなどの効果を奏するため、主に、土木・建築業界等において海洋構造物や護岸構造物、床版コンクリート等の用途に適する。

Claims (1)

  1. セメントと、CaO/Alモル比が0.15〜0.7のブレーン比表面積値で2000〜7000cm/gのカルシウムアルミネート化合物と、ブレーン比表面積値で3000〜12000cm/gでガラス化率は90%以上の高炉水砕スラグ微粉末を含有してなり、カルシウムアルミネート化合物と高炉水砕スラグ微粉末との配合割合が質量比で5/1〜1/2とする、JIS R 5201に準じて調製した材齢1日のモルタルにおいて、塩化物イオン浸透深さが4〜12mmでCaイオンの溶脱が42〜62mg/lである、塩化物イオン浸透の遮蔽効果を有しCaイオンの溶脱も少ないという効果をモルタルに付与するセメント組成物の調整方法。
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