JP2022139530A - セメントコンクリート混和材、セメント組成物、及び硬化体 - Google Patents

セメントコンクリート混和材、セメント組成物、及び硬化体 Download PDF

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拓海 前田
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Abstract

【課題】蒸気養生によっても塩化物イオンの浸透性を抑制し得るセメントコンクリート混和材を提供すること。【解決手段】CaO/Al2O3モル比が0.15~0.7であるカルシウムアルミネートを含有する蒸気養生用セメントコンクリート混和材である。【選択図】なし

Description

本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメントコンクリート混和材、該混和材を用いたセメント組成物、該セメント組成物を用いた硬化体、及び硬化体を製造する方法に関する。
近年、土木や建築分野において、コンクリート構造物の耐久性向上に対する要望が高まっている。
コンクリート構造物の劣化要因の1つとして、塩化物イオンの存在によって鉄筋が腐食する塩害が挙げられ、その抑制手段として、コンクリート構造物に塩化物イオン浸透抵抗性を付与する方法がある。
コンクリート硬化体内部への塩化物イオンの浸透を抑制し、塩化物イオン浸透抵抗性を付与する方法として、水/セメント比を小さくする方法が知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、水/セメント比を小さくする方法は、施工性が損なわれるだけでなく、抜本的な対策とはならない場合があった。
また、セメントコンクリートに早強性を付与し、かつ、鉄筋の腐食を防止するなどの目的で、CaO・2Alとセッコウを主体とし、ブレーン比表面積値が8000cm/gの微粉を含有するセメント混和材を使用する方法が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、CaO/Alモル比が0.3~0.7、ブレーン比表面積値が2000~7000cm/gのカルシウムアルミネートを含有するセメント混和材を使用し、優れた塩化物イオン浸透抵抗性を持ち、マスコンの温度ひび割れを抑制する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、CaO/A1モル比が0.15~0.7で、Fe含有量が0.5~15質量%のカルシウムフェロアルミネート化合物を含有するセメント混和材が提案されている(特許文献3参照)。
さらに、鉄筋の防錆を目的として、亜硝酸塩などを添加する方法も提案されている(特許文献4、特許文献5参照)。
ところで、近年はコンクリートのプレキャスト化が進展し、工場でコンクリート製品を製造し、建設現場に運搬して組み立てを行う工法が増加している。このような、プレキャストコンクリート製品では、生産性の向上を目的として蒸気養生が実施される。
蒸気養生とは、型枠に打設したコンクリートを養生室内に設置し、この養生室内にボイラー等によって発生させた水蒸気を導入し、コンクリートを加湿条件下で昇温させ、セメントの水和反応を促進して強度発現を早める方法である。
「コンクリートの耐久性シリーズ、塩害(I)」、技報堂出版、岸谷孝一、西澤紀昭他編、pp.34-37、1986年5月
特開昭47-035020号公報 特開2005-104828号公報 特許第5688073号公報 特開昭53-003423号公報 特開平01-103970号公報
上述のようなプレキャストコンクリート製品において、従来のセメントを用いて、モルタル、コンクリートの硬化を促進させるため初期に蒸気養生を行うと、鉄筋コンクリートの長期耐久性に影響する外部からの塩化物イオンの浸透に対する遮蔽効果が低下することが確認された。これは、蒸気養生によって、コンクリートの組織が粗となり、耐塩性が低下したためと思われる。したがって、蒸気養生を行ったプレキャストコンクリート製品では、短い養生時間で、優れた遮蔽効果を有するコンクリートを得ることが困難であった。
このような状況下、本発明は、蒸気養生を行うプレキャストコンクリート製品等において、蒸気養生によっても塩化物イオンの浸透性を抑制し得るセメントコンクリート混和材を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題の解決のために、鋭意研究を進めたところ、特定のCaO/Alモル比を有するカルシウムアルミネートを用いることで、蒸気養生に好適なセメントコンクリート混和剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]CaO/Alモル比が0.15~0.7であるカルシウムアルミネートを含有する蒸気養生用セメントコンクリート混和材。
[2]前記カルシウムアルミネートの含有量が2~20質量%である上記[1]に記載の蒸気養生用セメントコンクリート混和材。
[3]前記蒸気養生は、最高温度40~70℃で、2~5時間行う上記[1]又は[2]に記載の蒸気養生用セメントコンクリート混和材。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の蒸気養生用セメントコンクリート混和材と、セメントを含有してなるセメント組成物。
[5]上記[4]に記載のセメント組成物を蒸気養生により硬化してなる硬化体。
[6]上記[4]に記載のセメント組成物を用いて、蒸気養生により硬化体を製造する方法であって、前記蒸気養生は、最高温度40~70℃で、2~5時間行うことを特徴とするセメント硬化体を製造する方法。
[7]前記蒸気養生が、10~30℃での前置き養生を1~3時間行い、最高温度を50~60℃として、2~4時間蒸気養生を行い、20℃まで自然降温する上記[6]に記載のセメント硬化体を製造する方法。
本発明の蒸気養生用セメントコンクリート混和材を使用することにより、蒸気養生を伴うコンクリート製品であっても、塩化物イオンの浸透性を抑制することができ、コンクリート構造物の耐久性を向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
[セメントコンクリート混和材]
本発明のセメントコンクリート混和材は、CaO/Alモル比が0.15~0.7であるカルシウムアルミネートを含有する。
<カルシウムアルミネート>
カルシウムアルミネートは、カルシアを含む原料とアルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAlを主成分とする化合物を総称するものである。
本発明に係るカルシウムアルミネートは、CaO/Alモル比が0.15~0.7の範囲にあることが特徴である。CaO/Alモル比が0.15未満では、水和反応の進行が遅く、短い養生期間で優れた塩害抵抗性を得ることができない。一方、CaO/Alモル比が0.7を超えると、水和反応による発熱が早くなり、十分な可使時間が確保できない。以上の観点から、CaO/Alモル比は0.3~0.7の範囲であることが好ましく、0.4~0.6の範囲であることがさらに好ましい。
カルシウムアルミネートの含有量としては、結合材中の含有量として、2~20質量%の範囲であることが好ましい。カルシウムアルミネートの含有量が、2質量%以上であると、カルシウムアルミネートの添加効果が得られる。すなわち、蒸気養生を伴うコンクリート製品であっても、塩化物イオンの浸透性を抑制することができる。一方、カルシウムアルミネートの含有量が20質量%以下であると、セメントの含有量が相対的に多くなり、十分な結合力が得られる。以上の観点から、カルシウムアルミネートの含有量は、4~15質量%の範囲であることがより好ましく、5~12質量%の範囲であることがさらに好ましく、6~10質量%の範囲であることがよりさらに好ましく、7~9質量%の範囲であることが特に好ましい。
なお、本発明において、「結合材」とは、セメント及びカルシウムアルミネートを含む蒸気養生用セメントコンクリート混和材を意味するものである。
また、本発明において、セメントコンクリートとは、セメントペースト、セメントモルタル、及びコンクリートの総称である。
本発明に係るカルシウムアルミネートは、ブレーン比表面積値が2000~6000m/gの範囲であることが好ましい。カルシウムアルミネートのブレーン比表面積値が2000cm/g以上であると、塩害抵抗性を十分に発揮することができる。一方、カルシウムアルミネートのブレーン比表面積値が6000cm/g以下であると、水和反応による発熱の制御が容易である。なお、ブレーン比表面積値が6000cm/gを超えても、塩害抵抗性の更なる向上は期待できない。以上の観点から、カルシウムアルミネートのブレーン比表面積値は2500~5000cm/gが好ましく、3000~4000cm/gがより好ましい。
本発明のセメント混和材に係るカルシウムアルミネートには、CaOとAlのほか、不純物が含まれることがある。不純物としては、SiO、Fe、TiO、KO、NaO、BO等が挙げられる。これらの不純物の存在は、カルシウムアルミネートを焼成する際の生成反応を助長する効果を発揮するものもあり、好ましい面もあるので、総計で10質量%以下の範囲で存在しても差し支えない。
また、本発明のカルシウムアルミネートに加え、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、メタカオリン、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰等の混和材料、増粘剤、収縮低減剤、ポリマー、凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物等のうちの1種または2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
[セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、上記セメント混和材とセメントを含有してなる。
本発明のセメント混和材は、いかなるコンクリートにも使用できる。コンクリートに使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱,及び耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ、又は石灰石微粉等を混合した各種混合セメント、並びに、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメント等が挙げられる。中でも、普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントとの相性が良い。
セメント混和材の含有量としては、本発明の効果を奏する範囲であれば、特に限定されないが、通常、セメントとセメント混和材の合計量(結合材量)100質量部に対して、1~50質量部の範囲であることが好ましく、3~30質量部の範囲であることがより好ましく、5~10質量部の範囲であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、十分な防錆効果及び塩化物イオンの遮蔽効果が得られる。一方、上記上限値以下であると、十分な可使時間が確保できる。
セメント組成物には、通常、水が混合されるが、水の含有量としては、水/結合材比(質量比)で、25/75~70/30(25~70質量%)の範囲であることが好ましく、30/70~65/35(30~65質量%)の範囲であることがより好ましい。水の配合量が上記下限値以上であると、ポンプ圧送性や施工性が良好となり、また収縮等の問題もない。一方、上記上限値以下であると、十分な強度が得られる。
本発明のセメント混和材やセメント組成物は、それぞれの材料を蒸気養生の直前に混合してもよいし、あらかじめ一部あるいは全部を混合しておいてもよい。
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、モルタルミキサー、傾胴ミキサー、オムニミキサー、V型ミキサー、ヘンシェルミキサー、強制二軸ミキサー、及びナウターミキサー等が利用可能である。混練の条件としても特に限定されるものではなく、例えば、5~50℃の温度で、1~10分程度、低速撹拌若しくは高速撹拌するとよい。
本発明のセメント組成物は、セメント、セメント混和材、及び砂等の細骨材や砂利等の粗骨材の他に、膨張材、急硬材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、従来の防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体、高炉徐冷スラグ微粉末等のスラグ、石灰石微粉末等の混和材料からなる群のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
[コンクリート硬化体]
本発明のセメント組成物と、骨材および水とを混練して調製したモルタルまたはコンクリートは、成形、蒸気養生してコンクリート硬化体となる。
(蒸気養生)
本発明のセメント組成物は、使用するセメントの種類にもよるが、例えば、5~30℃で1~3時間前置き養生を行い、その後昇温して、最高温度を40~70℃として、2~5時間蒸気養生を行い、次いで20℃程度で封緘養生する方法により、強度特性に優れた硬化体が得られる。
最高温度については、40℃以上とすることで、短い養生時間で、優れた遮蔽効果を有するコンクリートを得ることができる。一方、最高温度を70℃以下とすることで、塩化物イオンの浸透を抑制することができる。以上の観点から、蒸気養生の最高温度は、50~65℃の範囲であることがより好ましく、50~60℃の範囲であることがさらに好ましい。
また、蒸気養生における養生時間としては、2~5時間の範囲であることが好ましい。当該範囲であれば、十分な養生時間であり、コンクリート硬化体の強度が十分となる。以上の観点から、養生温度としては、50~60℃の範囲で、養生時間としては2~4時間の範囲であることがより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
<塩化物イオン浸透深さ>
材齢14日の時点から、JSCE-G 572-2010「浸せきによるコンクリート中の塩化物イオンの見掛けの拡散係数試験方法」に準拠して、10%NaCl水溶液に試験体を浸漬させた。浸漬13週時点で、試験体を割裂し、硝酸銀溶液噴霧法により塩化物イオンの浸透深さを測定した。具体的には、供試体の断面が茶色に変色しなかった部分をノギスを用いて8点測定し、その平均値を塩化物イオン浸透深さとした。
(使用材料)
セメント:市販の普通ポルトランドセメント
水:水道水
細骨材:新潟県姫川水系産川砂
粗骨材:新潟県姫川水系産川砂利
実施例1
以下の方法で供試体を作製し、上記方法にて評価した。評価結果を表1に示す。
(カルシウムアルミネートの調製)
試薬1級の炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムを所定の割合で配合し、電気炉で1500℃で溶融した後、徐冷してカルシウムアルミネート(表1中では「CA」と記載する。)を合成し、ブレーン比表面積値で3000cm/gに粉砕してセメント混和材とした。なお、各実施例及び比較例のCaO/Al(モル比)は表1に記載の通りである。
(練り混ぜ)
次に、容量55Lの強制二軸ミキサを用いて練り混ぜを行った。手順としては、細骨材692kg/m、セメント400kg/m、及び粗骨材1052kg/mを投入して15秒間空練りをした後、水160kg/m及びカルシウムアルミネートkg/mを投入して、120秒間練り混ぜを行い、セメントコンクリートを作製した。
なお、カルシウムアルミネートの含有量は、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100質量部中、8質量部(8質量%)と計算される。また、水/セメント比、及び、水/結合材比は、それぞれ40.0、36.8と計算される。
(蒸気養生)
上記のようにして得られたセメントコンクリートを10cm×10cm×40cm角柱状の型枠を用いて成形し、供試体とした。この供試体について、以下に示す蒸気養生方法(1)~(3)を施した。
(1)蒸気養生温度55℃:前置き養生を20℃で2時間行い、最高温度55℃まで、20℃/時で昇温し、55℃で3時間保持した後、室温(20℃)まで自然降温させた。
(2)蒸気養生温度60℃:前置き養生を20℃で2時間行い、最高温度60℃まで、20℃/時で昇温し、60℃で3時間保持した後、室温(20℃)まで自然降温させた。
(3)蒸気養生温度65℃:前置き養生を20℃で2時間行い、最高温度65℃まで、20℃/時で昇温し、65℃で3時間保持した後、室温(20℃)まで自然降温させた。
その後、脱型し、材齢14日まで供試体を封緘養生させた。
実施例2~21及び比較例1~4
実施例1において、CaO/Al(モル比)、CA含有量、蒸気養生温度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、供試体を調製し、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
比較例5~7
実施例1において、カルシウムアルミネートを配合しないこと、及び蒸気養生温度を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を調製し、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 2022139530000001
表1より、本発明のセメント混和材は、塩化物イオン浸透深さの値が小さく、蒸気養生によっても塩化物イオンの浸透性を抑制できることがわかる。また、CaO/Alモル比が0.3~0.7の範囲で塩化物イオン浸透深さがより小さく、特に0.4~0.6の範囲で良好な結果を示す。
一方、カルシウムアルミネートの含有量が、本発明の範囲外であるか、又はカルシウムアルミネートを含有しない比較例では、塩化物イオンの浸透深さが増大することがわかる。
本発明の蒸気養生用セメントコンクリート混和材は、蒸気養生によっても塩化物イオンの浸透を抑制することができるため、短い養生時間で、優れた塩化物イオンの遮蔽効果を有するプレキャストコンクリート製品を得ることができる。このことにより、土木・建築工事において、プレキャストコンクリート製品を利用することができ、工期を短縮することが可能となる。

Claims (7)

  1. CaO/Alモル比が0.15~0.7であるカルシウムアルミネートを含有する蒸気養生用セメントコンクリート混和材。
  2. 前記カルシウムアルミネートの含有量が2~20質量%である請求項1に記載の蒸気養生用セメントコンクリート混和材。
  3. 前記蒸気養生は、最高温度40~70℃で、2~5時間行う請求項1又は2に記載の蒸気養生用セメントコンクリート混和材。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の蒸気養生用セメントコンクリート混和材と、セメントを含有してなるセメント組成物。
  5. 請求項4に記載のセメント組成物を蒸気養生により硬化してなる硬化体。
  6. 請求項4に記載のセメント組成物を用いて、蒸気養生により硬化体を製造する方法であって、前記蒸気養生を、最高温度40~70℃で、2~5時間行うことを特徴とするセメント硬化体を製造する方法。
  7. 前記蒸気養生が、5~30℃での前置き養生を1~3時間行い、最高温度を50~60℃として、2~4時間蒸気養生を行い、20℃まで自然降温する請求項6に記載のセメント硬化体を製造する方法。

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