JP6985547B1 - グラウト材料、グラウトモルタル組成物及び硬化体 - Google Patents
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Abstract
Description
主な用途としては、地下構造物の施工、橋梁支承部の据付け、各種機械類の据付け、耐震補強における壁、柱の間隙充填等であり、構造物の間隙を充填して一体化するために、(1)充填箇所および充填方法等に応じた所要の流動性、(2)充填後にブリーディング、沈下および空隙を発生させない無収縮性、(3)構造物の使用条件に応じた所要の各種強度などが要求される(例えば、非特許文献1参照)。
そのため、セメントの収縮を補償し、ひび割れ発生抑制や、構造体との付着性能を保持する目的で、使用される膨張材としては、例えば、3CaO・3Al2O3・CaSO4(アウイン)、CaSO4及びCaOを主成分とするカルシウムサルホアルミネート系(アウイン系膨張材)、遊離石灰を主成分とする石灰系(石灰系膨張材)のほか、遊離石灰−水硬性物質−セッコウ類を含有してなる膨張材等がある。
さらに、優れた流動性、泡発生の抑制、最適な長さ変化率、体積膨張率を保持した高強度グラウト材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
[1]セメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材からなるグラウト材料であって、SO3の量が0.5質量%以上10.0質量%以下、MgOの量が0.1質量%以上3.0質量%以下である、グラウト材料。
[2]前記膨張材は、テルネサイトを含有し、前記テルネサイトの含有量は、前記膨張材100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下である、[1]に記載のグラウト材料。
[3]さらに急硬材を含有し、前記急硬材は、カルシウムアルミネートを含有し、前記カルシウムアルミネートがCaO/Al2O3モル比1.2以上3.0以下であり、前記カルシウムアルミネートの含有割合は、前記セメント100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下である、[1]又は[2]に記載のグラウト材料。
[4]前記細骨材の含有割合は、前記セメント100質量部に対して、40質量部以上300質量部以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のグラウト材料。
[5]さらに亜硝酸塩を含有し、前記亜硝酸塩の含有割合は、セメント100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のグラウト材料。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のグラウトモルタル材料と水とを含有するグラウトモルタル組成物。
[7][6]に記載のグラウトモルタル組成物を用いてなる硬化体。
なお、本明細書における部や質量%は特に規定しない限り質量基準である。
また、本明細書でいうグラウトモルタルとは、粗骨材のないペースト、細骨材を含有するモルタルを総称するものである。
本発明におけるグラウト材料は、含有するSO3、MgOの量に着目し、SO3、MgOの量がグラウト材料の流動性、自己治癒効果に影響することを突き止めた。すなわち、グラウト材料に含まれるSO3の量が0.5質量%未満、MgOの量が0.1質量%未満であると、流動性が低下し、自己治癒効果が低くなってしまう。また、SO3の量が10.0質量%、MgOの量が3.0質量%を超えると、流動性が低下し、自己治癒効果の低下をもたらしてしまう。
グラウト材料に含まれるSO3の量は、流動性を高め、自己治癒効果を向上させる観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることがさらに好ましい。また、グラウト材料に含まれるSO3の量は、同様の観点から、10.0質量%以下であることが求められるが、8.0質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましい。
グラウト材料に含まれるMgOの量は、流動性を高め、自己治癒効果を向上させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましい。また、グラウト材料に含まれるMgOの量は、同様の観点から、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明では、高い流動性、塩害抵抗性や鉄筋との付着強度、防錆の観点から、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントを選定することが好ましい。
ブレーン比表面積値は、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に準拠して求められる。
膨張材として遊離石灰、遊離マグネシア、カルシウムフェライト、エトリンガイト系、石灰系、エトリンガイト−石灰複合系を含むものが知られ特に限定されるものではないが、長期安定性の観点から、遊離石灰を含むものが好ましい。遊離石灰を含むものとしては、例えば、遊離石灰−無水セッコウ系、遊離石灰−水硬性化合物系、ならびに、遊離石灰−水硬性化合物−無水セッコウ系などが挙げられる。
本発明で使用する膨張材は、テルネサイトを含有することが好ましい。テルネサイトは、5CaO・2SiO2・SO3で表される鉱物であり、水硬反応を促進する。又、テルネサイト自体はほとんど反応しないためフィラーのような役割を果たして、流動性保持性を良好にすると推定される。そのため、高温時でも流動性の保持効果を保つことができる。
テルネサイトの含有量は、膨張材100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上18質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。テルネサイトの含有量が上記範囲内であることで、硬化促進と流動性保持性をともに良好にすることができる。
本発明では、膨張性能が良好なことから、遊離石灰−水硬性化合物−無水セッコウ系を用いることが好ましく、特に遊離石灰の含有量が40質量%を超えるものが好ましい。
ここで、水硬性化合物としては、例えば、アウイン、カルシウムフェライト、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムシリケート、カルシウムアルミネートなどの1種または2種以上が挙げられる。本発明では、膨張材としては、市販の膨張材や静的破砕材が利用できる。
膨張材や静的破砕材は各社より市販されており、その代表例としては、例えば、デンカ社製「デンカCSA♯20」、「デンカパワーCSA」、太平洋マテリアル社製「エクスパン」、「ハイパーエクスパン」、「N−EX」、「ブライスター」やこれらの粉砕品などが挙げられる。
本発明に使用する急硬材としては、凝結を促進し、短期での強度増進を図るものであれば、特に限定されるものではない。急硬材は、凝結を促進するものとして、ギ酸カルシウムに代表される有機酸のカルシウム塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、チオシアン酸塩、アミン類、無水マレイン酸、水ガラスに代表される珪酸塩、硫酸アルミニウム、及び、ミョウバンに代表されるアルミニウム塩、カルシウムアルミネート(アルミン酸カルシウム)、アルミン酸塩等が挙げられる。これらの中では、強度発現性の点から、アルミン酸塩が好ましく、カルシウムアルミネート(CA)を含むことが好ましい。カルシウムアルミネートは、石膏と併用することで強度発現性が良好となる観点でより好ましい。石膏の使用量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、80質量部以上250質量部以下であることが好ましく、90質量部以上220質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましい。石膏の含有割合が上記下限値以上であることで、早期硬化性を得やすくなる。また、石膏の含有割合が上記上限値以下であることで、強度発現性、自己治癒効果が良好となる。石膏の含有割合が上記範囲内であることで、本発明の効果を満たす補修モルタル材料の早期硬化性、自己治癒効果を向上させるグラウト材料とすることが容易になる。
カルシウムアルミネートは、カルシア原料とアルミナ原料などを混合して、キルンで焼成し、あるいは、電気炉で溶融し冷却して得られるCaOとAl2O3とを主成分とする水和活性を有する物質の総称であり、結晶質、又は非晶質のいずれであっても使用可能である。硬化時間が早く、初期強度発現性が高い材料である。カルシウムアルミネートの代表的なものとしてはアルミナセメントが挙げられ、通常、市販品が使用できる。例えば、アルミナセメント1号、アルミナセメント2号などが使用できる。なかでも、アルミナセメントよりも短時間で硬化し、その後の初期強度発現性が高い点から、溶融後に急冷した非晶質カルシウムアルミネートが好ましい。
カルシウムアルミネートのなかでも、CaOとAl2O3とのモル比(CaO/Al2O3モル比)は、1.2以上3.0以下であることが好ましく、1.7以上2.5以下であることがより好ましい。モル比が上記範囲内であることで、硬化時間をより短縮して初期強度発現性を高めることができる。
ガラス化率X(質量%)=100×(1−S/S0)
カルシウムアルミネートの粒度は、初期強度発現性の面で、ブレーン比表面積値3,000cm2/g以上が好ましく、5,000cm2/g以上がより好ましい。カルシウムアルミネートの粒度が上記下限値以上であることで、硬化時間が短くなることで初期強度発現性が良好となり、自己治癒性能が良好となる。
本発明で使用するガス発泡物質としては、沈下抑制効果が大きいことから、ステアリン酸等で表面処理したアルミニウム粉末を用いることが好ましい。
本発明で使用する窒素ガス発泡物質としては、構造物と一体化させるために、また、まだ固まらない状態のグラウトモルタルが沈下や収縮するのを抑止するために、さらには、乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性を向上させるために使用できるものであれば特に限定されるものではない。
減水剤の具体例としては、例えば、ナフタレン系減水剤としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−9シリーズ」、花王社製商品名「マイティ2000シリーズ」、及び日本製紙社製商品名「サンフローHS−100」などが挙げられる。メラミン系減水剤としては、日本シーカ社製商品名「シーカメント1000シリーズ」及び日本製紙社製商品名「サンフローHS−40」などが挙げられる。アミノスルホン酸系減水剤としては、藤沢薬品工業社製商品名「パリックFP−200シリーズ」などが挙げられる。ポリカルボン酸系減水剤としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−8シリーズ」、グレースケミカルズ社製商品名「ダーレックススーパー100PHX」、及び竹本油脂社製商品名「チューポールHP−8シリーズ」、「チューポールHP−11シリーズ」などが挙げられる。
減水剤には粉末状のものも存在する。具体的には、ナフタレン系減水剤としては、花王社製商品名「マイティ100」、三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」、及び第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」などが挙げられる。メラミン系減水剤としては、BASFポゾリス社製「メルメントF10M」などが挙げられる。ポリカルボン酸系減水剤としては、例えば、三菱化成社製商品名「クインフロー750」や花王社製商品名「CAD9000P」などが挙げられる。
CaOの割合は、87質量%以上であることが好ましく、89質量%以上であることがより好ましく、91質量%以上であることがさらに好ましい。CaOの割合の上限は、特に限定されないが、99質量%以下であることが好ましく、98.5質量%以下であることがより好ましい。
SiO2の割合は、0.25質量%以上13質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上11質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
細骨材の化学成分を上記範囲内及び後述範囲内にするために、珪砂、方解石、変成岩であるスカポライト、火成岩である石英、カリ長石等を混合させて調製する。化学成分は、本発明の範囲に入るよう、蛍光X線回折で確認しながら、各岩を混合し調整する。なお、本発明で使用する細骨材の化学成分は、酸化物換算で計算したものである。
シリカフュームの種類は限定されるものではないが、流動性の観点から、不純物としてZrO2を10%以下含有するシリカフュームや、酸性シリカフュームの使用がより好ましい。酸性シリカフュームとは、シリカフューム1gを純水100ccに入れて攪拌した時の上澄み液のpHが5.0以下の酸性を示すものをいう。
混合装置としては、既存のいかなる装置、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
本発明の練り混ぜ水量は、使用する目的・用途や各材料の含有割合によって変化するため特に限定されるものではないが、グラウト材料100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下であることが好ましく、14質量部以上65質量部以下であることがより好ましく、16質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。練り混ぜ水量が上記下限値以上であることで、流動性の低下を抑制し、発熱量が極めて大きくなることを抑制することができる。また、練り混ぜ水量が上記上限値以下であることで、強度発現性を確保することができる。
練り混ぜられたグラウトモルタルは、通常、手動式注入ガン、ダイヤフラム式手押しポンプ、あるいは、スクイズ式等のモルタルポンプにより施工箇所まで圧送し、充填施工されることで、本発明のグラウトモルタル組成物を用いてなる硬化体となる。
セメント100質量部に対して、膨張材11.1質量部、ガス発泡物質0.0025質量部、減水剤0.5質量部を含有し、急硬材、細骨材、亜硝酸塩をセメント100質量部に対して表1に示す質量部を含有するように調製し、グラウト材料を得た。次いで、当該グラウト材料について、蛍光X線回折によりSO3含有量を測定し、かつ、蛍光X線回折によりMgO含有量を測定したうえで、その測定値を考慮しながら、最終的なグラウト材料において下記表1に記載のSO3含有量及びMgO含有量となるようにSO3含有混和剤(材質名:硫酸カリウム)、MgO含有混和剤(材質名:炭酸マグネシウム)を混合し、グラウト材料を調製した。
得られたグラウト材料100質量部に対して、水23質量部で混練しグラウトモルタル組成物を調製した。
調製したグラウトモルタル組成物の流動性、自己治癒効果を測定した。結果を表1に併記する。
・セメント:試製セメント(セメント工場の調合原料及び化学成分の調整に各種市販の純薬を用いた。)、ブレーン値3,450cm2/g
・膨張材:CaO原料、Al2O3原料、SiO2原料、CaSO4原料を配合し、混合粉砕した後1,200℃で焼成してクリンカを合成し、ボールミルを用いてブレーン比表面積で3,000cm2/gに粉砕して、作製した。なお、テルネサイトの同定と含有量は、蛍光X線から求めた化学組成と粉末X線回折の同定結果に基づいて計算により求めた。膨張材100質量部に含まれるテルネサイトの含有量を表1に示す。
・ガス発泡物質:ステアリン酸で表面処理した燐片状のアルミニウム粉末、市販品
・減水剤:ナフタレン系減水剤、市販品(第一工業製薬社製「セルフロ−110P」)
・水:水道水
・細骨材:石灰砂、0.6mm下を50%、0.6〜1.2mmを50%混合したものを使用した。
・急硬材A:CaO43%、Al2O353%となるように調整し、電気炉で溶融・急冷した非晶質カルシウムアルミネート、ガラス化率98%以上、ブレーン比表面積6,050cm2/g、カルシウムアルミネート100質量部に石膏を150質量部混合したものを用いた。
・急硬材B:ギ酸カルシウム、試薬
・急硬材C:硝酸カルシウム、試薬
・亜硝酸塩:亜硝酸リチウム水溶液、固形分濃度40%を用い、表1に示す質量部は固形分の量を示す。
・流動性:JSCE−F 541に準拠し、30℃環境下のJ14漏斗流下値で練混ぜ直後と30分後に測定した。
・自己治癒効果:JISA6206に準拠し鉄筋拘束条件下で10cm×10cm×40cmの形状でグラウト材を打設し、材齢56日後、供試体表面に歪ゲージを取り付け曲げ試験を行い、ひび割れ幅が0.1mmのひび割れが生じた時点で、曲げ試験を終了させた。その後、湿度98質量%、35℃の条件下で28日静置後、湿度60質量%、20℃の条件下で7日静置を5サイクル繰り返えし、ひび割れが閉塞している面積割合(閉塞した面積/ひび割れが生じた面積)を測定し、自己治癒効果を確認した。
Claims (8)
- セメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材からなるグラウト材料であって、前記膨張材がテルネサイトを含有するグラウト材料。
- SO 3 の量が0.5質量%以上10.0質量%以下、MgOの量が0.1質量%以上3.0質量%以下である、請求項1に記載のグラウト材料。
- 前記テルネサイトの含有量は、前記膨張材100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下である、請求項1又は2に記載のグラウト材料。
- さらに急硬材を含有し、
前記急硬材は、カルシウムアルミネートを含有し、
前記カルシウムアルミネートがCaO/Al2O3モル比1.2以上3.0以下であり、
前記カルシウムアルミネートの含有割合は、前記セメント100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラウト材料。 - 前記細骨材の含有割合は、前記セメント100質量部に対して、40質量部以上300質量部以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のグラウト材料。
- さらに亜硝酸塩を含有し、
前記亜硝酸塩の含有割合は、セメント100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のグラウト材料。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のグラウト材料と水とを含有するグラウトモルタル組成物。
- 請求項7に記載のグラウトモルタル組成物を用いてなる硬化体。
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五味秀明,松永嘉久,中谷清一: "非鉄系骨材を使用した高性能無収縮グラウト材の性質", コンクリート工学年次論文集, vol. 15, no. 1, JPN6021034439, 1993, pages 25 - 30, ISSN: 0004588269 * |
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