JP4616112B2 - セメント用急結材及びセメント組成物 - Google Patents
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かかるコンクリート吹き付け工法においては、コンクリート等を調製し、それを取り扱う際に必要な最低限の可使時間(ハンドリングタイム)を確保するとともに、壁面や露出面に吹き付けた後に、コンクリート等を即時に硬化させる必要がある。
また、止水工事や緊急工事においても、モルタルやコンクリートの可使時間を確保するとともに、即時に硬化させる必要がある。
また、急硬性成分であるC12A7を主成分としたクリンカを溶融し、その後これを急冷することによって、非晶質C12A7を得る方法もある。
また、アーウィン系クリンカは、急硬性を有するアーウィン(C4A3SO3)を70重量%以上含有することから急硬性セメント用クリンカとして利用されているが、その急硬性成分の特性により、常温や低温での急硬性に劣るという問題がある。
また、本発明の他の目的は、前記セメント用急結材を用いて、所定の可使時間を確保できるとともに、優れた急結性を呈する、経済的に安価なセメント組成物を提供することである。
本発明のセメント組成物は、上記本発明のセメント用急結材と、セメントとを含むことを特徴とする。
好適には、本発明のセメント組成物は、前記セメント100質量部に対して、前記セメント用急結材を10〜100質量部添加してなることを特徴とする。
また、本発明のセメント組成物は、所定の可使時間を確保できるとともに、優れた急結性能を有し、経済的に安価なものとすることが可能となる。
従って、作業現場等における急硬性用途に有効に適用できる。
本発明のセメント用急結材について説明する。
本発明のセメント用急結材は、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を、熱分解・転移させて生成するC3Aを有効成分とするものである。
このように、C12A7またはC11A7・CaX2を熱分解することによって生成したC3Aを含有することにより、急結性に優れるとともに、特殊な設備も必要とせず、安価な急結材が得られることとなる。
次いで、該配合原料を、例えば1380℃〜1450℃の温度で十分に、例えば1時間〜2時間焼成してクリンカを得る。
なお、上記のような配合原料からではなく、別に製造されたC12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を含むクリンカを再度焼成して、熱転移したC3Aを生成してもよい。
好適には、該カルシウムアルミネートクリンカ中には、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)が、熱転移前の状態で20〜30質量%含まれる。
20質量%以上であれば、急結材として機能するための、熱転移により得られるC3Aを有効量得ることができ、また、30質量%以下であれば、溶融しすぎることがなく良好な性状を維持してクリンカを製造することができる。
このようにして、結晶格子サイズの大きい、反応性の高いC3Aを得ることで、高い急結作用を発現させることができる。
該C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を熱転移して得られたC3Aを含むクリンカは、粉砕して粉末とする。
また、ブレ−ン比表面積は、それを大きくするほど、粉砕時間を要し生産性が低下しコスト高になるので、5000〜7000cm2/gが望ましい。
また、粉砕する際に、粉砕助剤(ジエチレングリコール、トリエタノールアミン等)を添加してもよい。
当該硫酸塩は、凝結調整剤として機能し、急結剤を添加する母材セメント中の硫酸塩を補うために添加される。
具体的には、芒硝(硫酸ナトリウム)、硫酸カリウムなどのアルカリ金属硫酸塩、硫酸マグネシウム、石こう(硫酸カルシウム)などのアルカリ土類金属硫酸塩、硫酸アルミニウムなどが挙げられ、強度発現性から、石こうの使用が、あるいは石こうと芒硝の併用が好ましい。
石こうとしては、無水石こう、半水石こう、2水石こう、またはこれらの混合物が例示できる。
また、その他必要に応じて配合が可能な材料として消石灰が挙げられる。当該消石灰は強度増進のために添加される。
強度発現性およびコストを考慮した場合、より好ましいのは4000〜10000cm2/gの細かさのものである。
このようにして、本発明のセメント用急結材を得る。
急結性およびハンドリングタイムを確保する点から、上記カルシウムアルミネ−トが
79〜84質量%、硫酸塩が15〜20質量%、消石灰が0〜1質量%であることが望ましい。
また、硫酸塩が10質量%未満では、瞬結してハンドリングタイムが確保できなくなり、30質量%を超えると、急結性が小さくなり、いずれも好ましくない。
当該添加量が10質量部(外割)未満では、急結性が小さくなり、100質量部(外割)を超えると十分なハンドリングタイムがとれなくなり、いずれも好ましくない。
これらのモルタルやコンクリートは、例えば、湿式吹付け工法に適用することができ、吹付け装置なども、慣用の装置をそのまま利用することができるものである。
試験例
1)クリンカの焼成
焼成後のクリンカの化学組成が表1となるよう、試薬を配合してクリンカ原料を調製した。
なお、表1の化学組成に基づいてボーグ法で求めた理論上のクリンカ鉱物組成は、表2に示すとおりである。
得られた各クリンカ1〜10をX線回析装置(理学電機(株)製;RAD−rC)を用いて回析した。
その結果を上記表2に示す。
また、当該分析において、クリンカ9及び10についてはC11A7・CaF2の量が、表2に示す理論量より減少していることが確認された。
以上より、クリンカ9及び10から検出されたC3Aは、C11A7・CaF2が熱分解して生成したものであると考えられる。
次いで、上記各クリンカ100質量部を粗粉砕して、1質量部の芒硝(硫酸ナトリウム)を各クリンカと混合し、0.08質量部の粉砕助剤(ジエチレングリコール)を使用してブレーン比表面積が5200±100cm2/g程度まで粉砕して、クリンカ粉末を得た。
当該クリンカ粉末、無水石膏(商品名;ノンクレーブ、住友大阪セメント(株)製)、半水石膏(商品名;焼きセッコウ、和光純薬工業(株)製)及び消石灰(和光純薬工業(株)製)を、SiO2/Al2O3のモル比が1.2となるように、表3の割合で配合して均一に混合し、各水硬性組成物1〜10を調製した。
上記1〜10の各水硬性組成物、砂(豊浦標準砂)、凝結調整剤(試薬;クエン酸、和光純薬工業(株)製)、水及び混和剤(花王(株)製、商品名:マイティ150)を、表4に示す割合で配合して均一に混練し、モルタル1〜10を得た。
上記で得られた各モルタルについて、ハンドリングタイムを測定した。
各ハンドリングタイムは、JIS R5201−1997の凝結試験法のビガー針に代えて直径1cm高さ2cmの円錐コーン(350g)を取り付け、進入度1.5mmになるまでの時間をハンドリングタイムとした。
また、練直温度は、上記モルタルを得るために各材料及び水を添加して混練した直後の温度を測定した値を示す。
その結果を表5及び図1及び図2に示す。
このことにより、モルタル9及び10に用いた水硬性材料9、10は、高い急結性能を有し、急結材として適していることがわかる。
前記試験例で作成した水硬性材料9を急結材として用い、当該急結材、セメント(住友大阪セメント(株)製、商品名:ジェットセメント)、砂(豊浦標準砂)、凝結調整剤(試薬;クエン酸、和光純薬工業(株)製)、水及び混和剤(花王(株)製、商品名:マイティ150)を、表6の割合で配合して、均一に混練して、実施例1及び2のモルタルを得た。
急結材である水硬性材料を用いない以外は、実施例1と同様にして、表6の割合で各材料を配合して、比較例1のモルタルを得た。
その結果を表7に示す。
Claims (3)
- 熱転移前の状態におけるC 12 A 7 またはC 11 A 7 ・CaX 2 (Xはハロゲンを示す)の含有量が20〜30質量%であって、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を、1380〜1450℃で熱分解することにより転移させて生成するC3Aを有効成分とすることを特徴とする、セメント用急結材。
- 請求項1記載のセメント用急結材と、セメントとを含むことを特徴とする、セメント組成物。
- 請求項2記載のセメント組成物において、セメント100質量部に対して、セメント用急結材を10〜100質量部添加してなることを特徴とする、セメント組成物。
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