JP2007031181A - セメント用急結材及び急硬性セメント組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セメント用急結材は、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を熱分解・転移させて生成するC3Aを有効成分とする第1の材料と、前記C3A以外のカルシウムアルミネートを有効成分とする第2の材料とを混合して得られるものであり、当該セメント用急結材をセメントと配合することにより、急結性セメント組成物が得られる。
【選択図】 図3
Description
かかるコンクリート吹き付け工法においては、コンクリート等を調製・取り扱う際の必要最低限の可使時間(ハンドリングタイム)を確保するとともに、壁面や露出面に吹き付ける状態でコンクリート等を即時に硬化させる必要がある。
また、止水工事や緊急工事においても、モルタルやコンクリートの可使時間を確保するとともに、即時に硬化させる必要がある。
また、急硬性成分であるC12A7を主成分としたクリンカを溶融し、その後これを急冷することによって、非晶質C12A7を得る方法もある。
また、アーウィン系クリンカは、急硬性を有するアーウィン(C4A3SO3)を70質量%以上含有することから急硬性セメント用クリンカとして利用されているが、その急硬性成分の特性により、常温や低温での急硬性に劣るという問題がある。
更にC12A7を主成分とするクリンカは、例えば、上記したような、急硬性成分であるC12A7を主成分としたクリンカを一旦溶融し、その後これを急冷することにより非晶質C12A7を合成する方法によって得られるものであるが、製造方法が複雑であり、当該製方法では、クリンカの溶融に電融法を用いていることから多量の電力を消費し、電力費が高くなり製造コストが高騰するという問題がある。
また、ポルトランドセメントに急結材を添加するセメント組成物は、所望する任意の高い急結性能を発現させることは難しいという問題がある。
また、本発明の他の目的は、前記急結材を用いてセメントクリンカ等と任意の割合で混合することにより、所定の可使時間を確保するとともに、所望する任意の優れた急結性能を有する、経済的に安価な急硬性セメント組成物を提供することである。
また、当該急結性クリンカと、これとは急結性の異なるクリンカとを任意の割合で混合することにより、任意の急結性を有する急結材を容易に得ることができることを見出したことにより達成されたものである。
また、好適には、本発明のセメント用急結材は、上記セメント用急結材において、第1の材料と第2の材料とを質量比で25:75〜75:25の割合で配合することを特徴とする。
また、更に好適には、本発明のセメント用急結材において、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)の熱分解は1380℃〜1450℃で行なわれることを特徴とするものである。
また、本発明のセメント組成物は、所望する任意の急結性能を有し、経済的に安価なものとすることが可能となる。
本発明のセメント用急結材について説明する。
本発明のセメント用急結材は、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を熱分解・転移させて生成するC3Aを有効成分とする第1の材料と、前記C3A以外のカルシウムアルミネートを有効成分とする第2の材料とを混合して得られるものであり、該第1材料も該材2材料も粉末であることが望ましく、急結材はこれらの粉末を含む混合物である。
このように、C12A7またはC11A7・CaX2を熱分解することによって生成したC3Aを含有することにより、急結性に優れるとともに、特殊な設備も必要とせず、安価な急結材を得られることとなる。
C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)のカルシウムアルミネートを生成するように、例えばボーグ式に基づいて、石灰質原料(例;生石灰、消石灰、石灰石)、アルミナ原料(例;水酸化アルミニウム、アルミナ)、必要に応じてフッ化カルシウム原料(例;ホタル石)を配合する。
次いで、該配合原料を、例えば1380℃〜1450℃の温度で十分に、例えば1時間〜2時間焼成してクリンカを得る。
なお、上記のような配合原料からではなく、別に製造されたC12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を含むクリンカを再度焼成して、熱転移したC3Aを生成してもよい。
好適には、該カルシウムアルミネートクリンカ中には、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)が、熱転移前の状態で20〜30質量%含まれることが好ましい。
20質量%以上であれば、急結材として機能するための、熱転移により得られるC3Aを有効量得ることができ、また、30質量%以下であれば、溶融しすぎることがなく良好な性状を維持してクリンカを製造することができる。
このようにして、結晶格子サイズの大きい、反応性の高いC3Aを得ることで、高い急結作用を発現させることができる。
第2の材料は、カルシウムアルミネートを生成するように、例えばボーグ式に基づいて、石灰質原料(例;生石灰、消石灰、石灰石)、アルミナ原料(例;水酸化アルミニウム、アルミナ)、必要に応じてフッ化カルシウム原料(ホタル石)を配合し、該混合物を電気炉などの加熱炉で焼成または溶融し、冷却して、カルシウムアルミネートクリンカを得る。
得られたクリンカには、カルシウムアルミネートとして、C12A7、C11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)、C2A、CA、C3Aを含むことができるが、当該C3Aは、第1の材料と異なり、該C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を熱分解による転移で得られたものではないことが重要である。
また、カルシウムアルミネート以外の成分としてC3S、C2SやC4AF等を含んでいてもかまわない。
また、ブレーン比表面積は、それを大きくするほど、粉砕時間を要し生産性が低下しコスト高になるので、5000〜7000cm2/gが望ましい。
また、粉砕する際に、粉砕助剤(ジエチレングリコール、トリエタノールアミン等)を添加してもよい。
硫酸塩は、凝結調整剤として機能し、急結剤を添加する母材セメント中の硫酸塩を補うために添加される。
具体的には、芒硝(硫酸ナトリウム)、硫酸カリウムなどのアルカリ金属硫酸塩、硫酸マグネシウム、石こう(硫酸カルシウム)などのアルカリ土類金属硫酸塩、硫酸アルミニウムなどが挙げられ、強度発現性から、石こうの使用が、あるいは石こうと芒硝の併用が好ましい。
石こうとしては、無水石こう、半水石こう、2水石こう、またはこれらの混合物が例示できる。
また、その他必要に応じて配合が可能な材料として消石灰が挙げられる。消石灰は強度増進のために添加される。
強度発現性およびコストを考慮した場合、より好ましいのは4000〜10000cm2/gの細かさのものである。
上記割合において、クリンカ粉末の配合割合が60質量%未満では、急結性が小さくなり、また90質量%を超えると瞬結してハンドリングタイムがとれなくなり、いずれも好ましくない。
また、硫酸塩が10質量%未満では、瞬結してハンドリングタイムがとれなくなり、40質量%を超えると、急結性が小さくなり、いずれも好ましくない。
当該急結材は、使用時に上記第1材料と第2材料の配合割合を調整することにより、急結性を任意に調整することができるものである。
本発明のセメント用急結材を構成する、第1材料と第2材料の配合割合は、質量比で25:75〜75:25、好ましくは50:50〜75:25とすることが、上記本発明の効果を有効に奏する上で望ましい。
当該添加量が10質量部(外割)未満では、急結性が小さくなり、100質量部(外割)を超えると十分なハンドリングタイムがとれなくなり、いずれも好ましくない。
これらのモルタルやコンクリートは、例えば、湿式吹付け工法に適用することができ、吹付け装置なども、慣用の装置をそのまま利用することができるものである。
試験例
1)クリンカの焼成
焼成後のクリンカの化学組成が、クリンカ1〜10については表1の上段に示す組成となるように、またクリンカ11については表1の下段に示す組成となるように、試薬を配合してクリンカ原料を調製した。
なお、表1の化学組成に基づいてボーグ法で求めた理論上のクリンカ1〜10及びクリンカ11の鉱物組成は、表2に示すとおりである。
得られた各クリンカ1〜10をX線回析装置(理学電機(株)製;RAD−rC)を用いて回析した。
その結果を表2に示す。
上記表2より、クリンカ9及び10からはC3Aがそれぞれ1質量%及び10質量%検出され、クリンカ1〜8からはC3Aが検出されなかった。
また、当該分析において、クリンカ9及び10についてはC11A7・CaF2の量が、表2に示す理論量より減少していることが確認された。
以上より、クリンカ9及び10から検出されたC3Aは、C11A7・CaF2が熱分解して生成したものであると考えられる。
また、上記電気炉より取り出して空気中で急冷して得られたクリンカ11を、前記X線回析装置(理学電機(株)製;RAD−rC)を用いて回析したところ、得られたクリンカ11の鉱物組成は理論量どおりであった。
次いで、上記各クリンカ100質量部を粗粉砕して、1質量部の芒硝(硫酸ナトリウム)を各クリンカと混合し、0.08質量部の粉砕助剤(ジエチレングリコール)を使用してブレーン比表面積が5200±100cm2/g程度まで粉砕して、クリンカ粉末を得た。
当該クリンカ粉末、無水石膏(商品名;ノンクレーブ、住友大阪セメント(株)製)、半水石膏(商品名;焼きセッコウ、和光純薬工業(株)製)及び消石灰(和光純薬工業(株)製)を、SiO2/Al2O3のモル比が1.2となるように、クリンカ1〜10は表3の上段に示す配合割合で、またクリンカ11は表3の下段に示す配合割合で配合して均一に混合し、各水硬性組成物1〜10及び水硬性組成物11を調製した。
上記1〜10の各水硬性組成物、砂(豊浦標準砂)、凝結調整剤(試薬;クエン酸、和光純薬工業(株)製)、水及び混和剤(花王(株)製、商品名:マイティ150)を、表4に示す割合で配合して均一に混練し、モルタル1〜10を得た。
上記で得られた各モルタルについて、ハンドリングタイムを測定した。
各ハンドリングタイムは、JIS R5201−1997の凝結試験法のビガー針に代えて直径1cm高さ2cmの円錐コーン(350g)を取り付け、進入度1.5mmになるまでの時間をハンドリングタイムとした。
また、練直温度は、上記モルタルを得るために各材料及び水を添加して混練した直後の温度を測定した値を示す。
その結果を表5及び図1及び図2に示す。
このことにより、モルタル9及び10に用いた水硬性材料9、10は、高い急結性能を有し、急結材として適していることがわかる。
1)セメント用急結材に用いる第一の材料
前記試験例で作成した水硬性材料10を急結材用の第1の材料(急結材A)として用いた。
2)セメント用急結材に用いる第二の材料
前記試験例で作成した水硬性材料11を急結材用の第2の材料(急結材B)として用いた
前記第一の材料(急結材A)と第二の材料(急結材B)とを表6に示す割合で混合して、実施例1〜3の急結材を得た。
また、参考例1として第一の材料(急結材A)のみからなる急結材を、参考例2として、第二の材料(急結材B)のみからなる急結材を準備した。
前記急結材、セメント(住友大阪セメント(株)製、商品名:ジェットセメント)、砂(豊浦標準砂)、凝結調整剤(試薬;クエン酸、和光純薬工業(株)製)、水及び混和剤(花王(株)製、商品名:マイティ150)を、表6の割合で配合して、均一に混練して、実施例1〜3及び参考例1〜2のモルタルを得た。
急結材である水硬性材料を用いない以外は、実施例1と同様にして、表6の割合で各材料を配合して、比較例1のプレーンモルタルを得た。
得られた実施例1〜3、参考例1〜2及び比較例1のモルタルについて、前記試験例と同様にしてハンドリングタイム及び練直温度を測定した。
その結果を表7に示す。
また、急結材中の第一の材料(急結材A)の配合割合と、セメントモルタルのハンドリングタイムと練直温度との関係を図3に示す。
Claims (5)
- C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)を熱分解・転移させて生成するC3Aを有効成分とする第1の材料と、前記C3A以外のカルシウムアルミネートを有効成分とする第2の材料とを混合して得られることを特徴とする、セメント用急結材。
- 請求項1記載のセメント用急結材において、第1の材料と第2の材料とを質量比で25:75〜75:25の割合で配合することを特徴とする、セメント用急結材。
- 請求項1または2記載のセメント用急結材において、C12A7またはC11A7・CaX2(Xはハロゲンを示す)の該熱分解を1380℃〜1450℃で行うことを特徴とする、セメント用急結材。
- 請求項1〜3いずれかの項記載のセメント急結材と、セメントとを含むことを特徴とする、急硬性セメント組成物。
- 請求項4記載のセメント組成物において、セメント100質量部に対して、該セメント急結材を10〜100質量部添加してなることを特徴とする、急硬性セメント組成物。
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