JP5577651B2 - 急硬性セメント - Google Patents
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Description
早期強度を発現させるために、かかるモルタルやコンクリート等には超速硬セメントが用いられ、例えば、ジェットセメントクリンカーと石膏を主成分とするジェットセメント、C4A3SO3を主成分とするアーウィン系クリンカー及び普通ポルトランドセメント或いは早強セメント及び石膏を主成分とするもの、CAを主成分とするアルミナセメントクリンカー及び普通ポルトランドセメント或いは早強セメント及び石膏を主成分とするもの等がある。
カルシウムアルミネートクリンカーは、i)固相反応のみで製造する、ii)液相と固相が混在する系で焼成して製造する、或いはiii)全量を溶融させて製造することなどによって得られる。例えば、急硬性成分である非晶質C12A7であれば、C12A7を主成分としたクリンカー原料を一旦溶融し、その後これを急冷することにより得られる。
結晶質/非晶質を制御するには冷却速度を制御する必要があり、非晶質とする場合には、結晶質を製造するよりも高温から溶融したクリンカー原料の冷却を行う、溶融したクリンカー原料を水中に投入して急冷する、或いは多量の空気を吹付けることにより冷却することなどによって可能となる。このため、その製造方法が複雑であるとともに、当該製造方法では、クリンカーの溶融に電融法を用いていることから多量の電力を消費し、電力費が高くなり製造コストが高騰するという問題がある。
当該カルシウムサルホアルミネート系クリンカー組成物においては、酸化チタン及び酸化マグネシウムの含有量を制御することにより、1350℃以下の焼成温度でC3Aよりもアーウィンの生成量が高いクリンカー組成物を得ている。
従って、低温での適用を考慮して、より優れた急硬性及び高い早期強度発現性が望まれている。
即ち、本発明の急硬性セメントは、主成分であるC3Sを50質量%以上、C11A7・CaF2を20〜30質量%、TiをTiO2換算で0.5〜1.6質量%含有し、ブレーン比表面積が5000〜7000cm2/gである急硬性クリンカー粉末を65〜90質量%、硫酸塩を5〜35質量%、消石灰を0.7〜5質量%で含有することを特徴とするものである。
好適には、本発明の急硬性セメントは、前記急硬性クリンカーに含有されるTiのTiO2換算含有量が1.0〜1.6質量%である急硬性セメントである。
更に、本発明の急硬性セメントは、前記急硬性クリンカーには、更に4CaO・Al2O3・Fe2O3(以下C4AFと表記)を4〜6質量%含有する急硬性セメントである。
また、本発明の急硬性クリンカーは、低温のみならず、常温における早期強度発現性にも優れているものである。
更に、本発明の急硬性クリンカーは、クリンカー原料にTiを含む材料、例えばTiO2を含む廃棄物等も原材料として使用することが可能となる。
本発明の急硬性クリンカーは、鉱物相として、C3Sを50質量%以上、C11A7・CaF2を20〜30質量%、Tiを酸化物TiO2換算で0.5〜1.6質量%含有するものである。
かかるC3Sが、上記範囲外であると、ジェットセメント中のカルシウムアルミネート相であるC11A7・CaF2相の水和反応が進行する際にCaイオンの供給が不十分となり、早期強度発現を阻害してしまう。
また、速硬性成分であるC11A7・CaF2が上記範囲外であると、十分な急硬性が得られず、特に常温においても急硬性が劣ってしまうとともに、製造途中でC11A7・CaF2が溶融しすぎてしまい、急硬性が劣り、本発明の上記効果が得られない。
また、セメントキルン内で溶融した成分が増えすぎると、操業を行うことができなくなる。
TiO2を上記範囲で含むことにより、低温での急硬性、例えば5℃以下での初期強度発現性(施工後3時間後等)に優れることとなる。
更に、TiO2が存在することにより、クリンカー生成時の融液生成温度を低下させ、同時に融液生成温度範囲を拡大することができるため、一般的なロータリーキルン等による焼結方法によってクリンカーを焼成することも可能となり、更には、融液生成温度が低下することから、より低温でクリンカーを焼成することができる。
また、本発明のクリンカー結晶へのTiO2の固溶量が増加してクリンカーの低温での急硬性が良好となり、初期強度発現性も優れたものとなる。
かかるC4AF(4CaO・Al2O3・Fe2O3)鉱物相を含むことで、焼成時において液相と固相を介した鉱物生成反応が促進されるため好ましい。また、その含有割合が3重量%未満であると、鉱物生成反応が促進されず焼成に長時間を要するので好ましくない。10重量%を超えると、焼成時に液相成分(C11A7・CaF2とC4AFを主成分とした融液)が過剰となり、セメントキルンでの焼成が困難になる。
更にフッ化カルシウム原料としてはホタル石が例示できる。
本発明の急硬性クリンカーは、ブレ−ン比表面積が4500cm2/g以上に粉砕して用いるのが好ましく、4500cm2/g未満では、良好な急硬性が得られない場合があるからである。
また、ブレ−ン比表面積は、大きくしすぎると、粉砕時間を要し生産性が低下しコスト高になるので、5000〜7000cm2/gが望ましい。
また、粉砕する際に、粉砕助剤(ジエチレングリコール、トリエタノールアミン等)を添加してもよい。
石こうとしては、無水石こう、半水石こう、2水石こう、またはこれらの混合物が例示できる。
また、その他必要に応じて配合が可能な材料として消石灰が挙げられる。当該消石灰は更なる強度増進のために添加される。
急硬性およびハンドリングタイムを確保する点から、上記本発明の急硬性クリンカーを65〜90質量%、硫酸塩を5〜35質量%、消石灰を0.7〜5質量%として配合し、急硬性セメントを得ることが望ましい。
また、硫酸塩が5質量%未満では、瞬結してハンドリングタイムが確保できなくなり、35質量%を超えると、急硬性が小さくなり、過剰の硫酸イオンが存在するために遅れ膨張が発生し、膨張破壊を起こす危険性も生じるためいずれも好ましくない。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
下記表1に示す化学組成を有するように試薬を配合して調製し、該配合した各クリンカー原料混合物について、電気炉を用いて、温度1350℃で1時間焼成し、次いで、該電気炉より取り出して空気中で急冷して各クリンカーを得た。
但し、通常のボーグ式を用いた理論上の鉱物組成は、Fe2O3が消費しきるまでC4AFが出来るとして生成量を計算した後、Al2O3を消費しきるまでC3Aが出来るとして生成量を計算し、その後CaOとSiO2の含有量によりC3SとC2Sの生成量を計算するが、表3においては、前記計算中、C11A7・CaF2はフッ素を消費しきるまでC3Aに優先して生成量を計算し、フッ素が残る場合、Al2O3を消費しきるまでフッ素を消費すると考え、フッ素が残った場合はCaF2で存在していると計算する以外は、前記のような通常のボーグ式での計算と同様にして、求めたものである。本発明の実施例、比較例ではアルミを全て消費してC11A7・CaF2となっている。
当該クリンカー及び芒硝の粉末に、無水石膏(商品名:ノンクレーブ、住友大阪セメント(株)製)、半水石膏(商品名:焼きセッコウ、和光純薬工業(株)製)及び消石灰(和光純薬工業(株)製)を、表4に示す配合割合で配合して均一に混合し、各セメント組成物を調製した。
比較例2、3については、当該粗粉砕クリンカーを粉砕後(ブレーン比表面積が4000±200cm2/g程度)、前記無水石膏及び早強セメント(HC;住友大阪セメント(株)製)を表4に示す配合割合で均一に混合し、セメント組成物を調製した。
比較例4、5については、当該粉砕クリンカーと芒硝とを表4に示す配合割合で配合し、更に粉砕してブレーン比表面積が5200±200cm2/g程度まで粉砕し、前記早強セメント、前記無水石膏、前記半水石膏及び前記消石灰を、表4に示す配合割合で配合して均一に混合し、セメント組成物を調製した。
得られた各セメント組成物に水(水道水)を表4に示す配合割合で配合して均一に混練することにより、各モルタルを調製した。
また、各モルタルについて温度5℃でのハンドリングタイムの測定結果を表5に示す。
但し、ハンドリングタイムは、以下のようにして測定した。
ハンドリングタイムの測定:直径1インチ、高さ2インチのハンドリングタイム測定用コーンとJISモルタル用凝結試験機(ビカー針装置)を用いて測定を行う。ハンドリングタイム測定用コーンをビカー針装置に取り付け、降下するものの重量が350gになるように調節する。JISモルタル用凝結試験型枠にフロー試験の要領でモルタルを詰め、表面をならす。ビカー針装置に取り付けたコーンの先端がモルタル表面に接する位置にセットし、コーンをモルタルに落下させコーンの侵入深さを読む。侵入深さが1.5mmになったときの注水時からの時間をハンドリングタイムとする。
Claims (3)
- 3CaO・SiO2を50質量%以上、11CaO・7Al2O3・CaF2を20〜30質量%、TiをTiO2換算で0.5〜1.6質量%含有し、ブレーン比表面積が5000〜7000cm2/gである急硬性クリンカー粉末を65〜90質量%、硫酸塩を5〜35質量%、消石灰を0.7〜5質量%で含有することを特徴とする、急硬性セメント。
- 請求項1記載の急硬性セメントにおいて、急硬性クリンカーに含有されるTiのTiO2換算含有量が1.0〜1.6質量%であることを特徴とする、急硬性セメント。
- 請求項1または2記載の急硬性セメントにおいて、急硬性クリンカーには更に4CaO・Al2O3・Fe2O3を4〜6質量%含有することを特徴とする、急硬性セメント。
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