JP5683338B2 - 循環式流動焼却炉の温度制御装置及びその温度制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炉本体に充填された流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼に同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロンで回収して循環させながら汚泥を焼却する共に、後燃焼炉で燃焼ガスを分解する、循環式流動焼却炉の温度制御装置及びその温度制御方法に関するものである。
循環式流動焼却炉は、特許文献1に開示されているように、炉本体に充填された硅砂等からなる流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼ガスに同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロンで回収して炉本体下部へ循環させながら廃棄物を焼却する共に、後燃焼炉で燃焼ガスを分解する炉である。この循環式流動焼却炉は、含水率や発熱量等の異なる幅広い廃棄物を安定して焼却できるため、下水汚泥等の廃棄物の焼却処理に用いられている。
特開2001−263634号公報
近年、環境問題に対応するため、汚泥焼却炉から排出されるNO等の温室効果ガスを低減することが要望されている。温度効果ガスの低減を図るためには、後燃焼炉の温度を高め、完全燃焼の度合いを高めることが有効である。例えば、後燃焼炉の温度を800℃から850℃に上げることによって温室効果ガスは約7割低減する。一方、炉本体の温度は、燃焼が保たれるように一定温度以上に維持する必要があり、そのために燃料を増加させる必要がある。
従来のPID(Proportional Integral Differential)制御では単一の目標値に対してのみしか制御値を制御できない。このため、炉本体の温度を一定温度に維持しながら、後燃焼炉の温度を高温に維持しようとする複数の目標値がある場合、カスケード制御によって温度制御が行われる。しかしながら、カスケード制御によって温度制御を行った場合、燃料の流量と流動空気の風量とが干渉し、過剰な流動空気の供給による燃料の過剰供給が生じ、あるいは炉本体の温度低下による燃焼停止が発生する場合があり、安定した燃焼制御を行うことができないことがあった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、炉本体の温度を目的の一定温度に維持しつつ、後燃焼炉の温度を目的の温度に維持する温度制御を安定して行うことができる循環式流動焼却炉の温度制御装置及びその温度制御方法を提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御装置は、本体に充填された流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼に同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロンで回収して循環させながら汚泥を焼却すると共に、後燃焼炉で燃焼ガスを分解する循環式流動焼却炉の温度制御装置であって、前記炉本体の温度と、前記後燃焼炉の温度と、前記炉本体に供給される燃料の流量と、前記炉本体の下部に供給される流動空気の風量と、前記後燃焼炉の下部又は中部及び上部又は中部に供給される空気の風量とを制御入力とし、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量とを制御出力とし、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との少なくとも一つを所定範囲内に収める制約条件下で、前記炉本体の温度、前記後焼却炉の温度、及び排出ガスの成分量をそれぞれ異なる目標値として、前記制御出力である前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との予測結果を示す評価関数の値が所定値以下で最小となるモデル予測演算を行うモデル予測演算部を備えることを特徴とする。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御方法は、炉本体に充填された流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼に同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロンで回収して循環させながら汚泥を焼却すると共に、後燃焼炉で燃焼ガスを分解する循環式流動焼却炉の温度制御方法であって、前記炉本体の温度と、前記後燃焼炉の温度と、前記炉本体に供給される燃料の流量と、前記炉本体の下部に供給される流動空気の風量と、前記後燃焼炉の下部又は中部及び上部又は中部に供給される空気の風量とを取り込む制御入力ステップと、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との少なくとも一つを所定範囲内に収める制約条件下で、前記炉本体の温度、前記後焼却炉の温度、及び排出ガスの成分量をそれぞれ異なる目標値として、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との予測結果を示す評価関数の値が所定値以下で最小となるモデル予測演算を行う演算ステップと、前記モデル予測演算の結果に従い、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量とを制御する制御出力ステップと、を含むことを特徴とする
本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御装置及びその温度制御方法によれば、炉本体の温度を目的の一定温度に維持しつつ、後燃焼炉の温度を目的の温度に維持する温度制御を安定して行うことができる。
図1は、本発明の第1の実施形態である循環式流動焼却炉の温度制御装置の構成を示す図である。 図2は、図1に示す制御装置内におけるモデル予測演算処理の概要を示す図である。 図3は、モデル予測演算によるにおける評価関数の行列式を示す図である。 図4は、本発明の第2の実施形態である循環式流動焼却炉の温度制御装置による評価関数の最適化演算処理手順を示す図である。 図5は、本発明の応用システムの構成を示す図である。 図6は、本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御装置を用いた実験結果を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態である循環式流動焼却炉の温度制御装置及びその温度制御方法について説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態である循環式流動焼却炉の温度制御装置の構成を示す図である。図1に示すように、本発明の第1の実施形態である循環式流動焼却炉1は、炉本体(以下、ライザー10という)を有する。ライザー10は、略円筒形状をなし、炉内には、上部に希薄層11と、下部に濃厚層12と称される、充填された硅砂等流動媒体の粒子留まりの部分とが形成される。
ライザー10の下部に充填される流動媒体(平均粒子径200〜500μm)は、流動空気により炉内で流動され、投入された汚泥を激しく攪拌しつつ800〜900℃で燃焼させる。燃焼ガスは、流動媒体及び焼却灰と共にサイクロン20に送られて固気分離され、ライザー1下部に循環させながら汚泥を焼却する。燃焼ガスは、更に、後燃焼炉30で熱分解され、温室効果ガスの削減が行われる。
ライザー10の下部には、汚泥供給ポンプ60を介して汚泥が供給され、同じく、バルブ51、燃料流量検出71を介して燃料70が供給される。バルブ51は、燃料流量調節器(FIC)41により、燃料流量検出器71で検出された燃料流量が制御装置100から指示された制御量となるように開度制御される。
ライザー10の下部には1次空気ブロワ80からバルブ52を介して供給される1次空気が、後燃焼炉30の上部又は中部には、2次空気ブロワ90から供給される2次空気が、後燃焼炉30の中部又は下部には、2次空気から分岐して生成される3次空気がそれぞれ供給される。
1次空気風量調節器42は、制御装置10によって指示された制御量の1次空気をライザー下部の濃厚層12に供給するように、不図示の1次空気風量検出器の検出結果をもとにバルブ52の開度を制御する。2次空気風量調節器43は、制御装置100から指示された制御量の2次空気を、後燃焼炉30の上部又は中部に供給するように、不図示の2次空気風量検出器の検出結果をもとにバルブ53の開度を制御する。3次空気風量調節器44は、制御装置100から指示された制御量の3次空気を後燃焼炉30の中部又は下部に供給するように、不図示の3次空気風量検出器の検出結果をもとにバルブ54の開度を制御する。
ライザー10の上部には、複数の熱電対からなる熱電対群13が、また後燃焼炉3は、複数の熱電対からなる熱電対群33がそれぞれ分散配置され、それぞれの炉内温度が計測されるようになっている。
この循環式流動焼却炉1では、ライザー10において、下部に供給された汚泥を同じく下部から供給される燃料及び1次空気によって燃焼させ、後燃焼炉30において、ライザー10から排出される排ガスを上部又は中部に供給される2次空気によって燃焼させ、同じく下部では、ライザー10及び後燃焼炉30上部又は中部で不完全燃焼のものを、3次空気を用いて完全燃焼させるようにしている。
制御装置100には、燃料流量検出器71、不図示の汚泥流量検出器、1次空気風量検出器、2次空気風量検出器、3次空気風量検出器、流動空気検出器から、それぞれ燃料流量、汚泥流量、1次空気風量、2次空気風量、3次空気風量、流動空気風量が入力されるとともに、熱電対群13、33からそれぞれ、ライザー10の炉内温度、及び後燃焼炉30の炉内温度が入力されている。また、制御装置100には、後燃焼炉30から、ガスセンサ35により検出されるOやNO等の排ガス成分値も入力されている。そして、制御装置100は、後述するモデル予測演算後、燃料流量調節器41、1次空気風量調節器42、2次空気風量調節器43、3次空気風量調節器44に、それぞれ制御量としての、熱料流量、1次空気風量、2次空気風量、3次空気風量を出力する。
制御装置100は、入力されたライザー10の炉内温度と後燃焼炉30の炉内温度がそれぞれ設定された温度に保たれ、燃料流量、1次空気風量、2次空気風量、3次空気風量が少なくなるようにモデル予測制御を行なう。このため、制御装置100は、各流量・風量の制御値を、燃料流量検出器71、不図示の1次空気風量検出器、2次空気風量検出器、3次風量検出器のそれぞれに出力する。燃料流量検出器71、そして不図示の1次空気風量検出器、2次空気風量検出器、3次空気風量検出器は、それぞれ入力された各制御値をもとに、PID制御によるフードバック制御を個別に行う。
制御装置100は、図2に示すようにモデル予測演算部100aを有し、このモデル予測演算部100aが上記したモデル予測制御を行う。なお、モデル予測制御とは、システムのモデルをもとに未来の出力や状態を予測し、一定時刻毎に最適制御問題を解き、その時刻での入力を決定する制御である。また、現代制御特有の多入力・多出力制御を可能にし、制御量の干渉を生じさせることがない。特に、このモデル予測制御は、制約条件を容易に記述できることから、制約条件を扱うことができる制御方法として注目されている。
この循環式流動焼却炉1の制御を行う場合、燃料及び空気の各供給量が、炉のサイズ等に大きく依存する未知の制御量であり、この場合、燃料停止等の問題が生じないような大枠としての制約条件として、燃料及び空気の各供給量を当てはめ、後燃焼炉30の上部、中部及び下部の複数の温度目標値を一定温度に保ちつつ、燃料70及び空気の各供給量を予測制御することができる。
モデル予測演算部100aは、予めこの汚泥熱焼システムの動的モデルを生成しておく。精密な物理モデルの構築は困難であるため、ここでは、ステップ応答モデルを生成する。ステップ応答モデルは、ステップ入力した場合のステップ応答を飽和するまでの時間と値で表現する。本実施形態では、熱電対群13によって検出されるライザー10内の複数の温度、熱電対群33によって検出される後燃焼炉30の複数の温度、1次空気の風量、2次空気の風量、3次空気の風量、燃料70の流量に対するステップ応答モデルを生成する。
モデル予測演算部100aは、このステップ応答モデルに、空気比の制約条件を記述しておく。上述したように、燃料及び空気の制御量は未知のものであり、この熱料及び空気を制御するにあたり、空気比の制約条件をステップ応答モデルに記述しておく。ここで、空気比とは、燃料を完全燃焼させる必要最低限の理論空気量Aと実際に供給されている空気量Bとの比であり、例えば、空気比AFRは、fair/(ηcake×fcake+ηfuel×ffuel)として示される。ここで、ηcakeは、汚泥を完全燃焼させるために必要な汚泥理論空気比であり、fcakeは、汚泥の流量であり、ηfuelは、燃料を完全燃焼させるに必要な熱量理論空気比であり、ffuelは、燃料の流量である。そして、空気比AFRは、上限空気比rmaxと下限空気比minとの範囲内に収まる制約条件が記載される。
モデル予測演算部100aは、このモデルをもとに、モデル予測演算を行うが、このモデル予測演算を行うために、図2に示すように、まず、ライザー10の5つの炉内温度、後燃焼炉30の複数の炉内温度の温設定値101が入力される。また、上記した制約条件の条件値である制約条件102も入力される。例えば、上記した空気比の上限値及び下限値である。ライザー10の上部温度の上限値を制約条件として入力とてもよい。さらに、演算条件103を入力しておく。ここで、演算条件とは、実際の演算に必要な、設定スケールや演算パラメータであり、例えば、演算周期(サンプリング周期)や予測期間等である。
このような設定処理が施されたモデル予測演算部100aは、熱電対群13、33から現在温度110を取得し、この現在温度110が温度設定値101、排ガス成分であるOやNOの設定値104(例えば、Oの場合5%、NOの場合50〜100ppm等)を維持するための予測演算を行うとともに、燃料の流量、及び空気の風量の現在操作量120が、入力され制約条件を満足する範囲内で燃料の流量及び空気の風量の次時刻操作量130を出力する。
汚泥の固形分は、固形分=汚泥流量×(1−含水率)で求められ、この固形分の組成分析結果から燃焼分を知ることができる。この燃焼分は、空気量に関係する「汚泥からの必要燃焼空気風量」の演算に関与するため、汚泥流量のステップ応答モデルを生成し、これをモデル予測制御に取り込むことによって、汚泥流量による変動を抑制できる。
このモデル予測演算の概要は、図3に示すように、既知パラメータ201と現在(時刻k)の現在入出力値202を初期値とし、設定パラメータ203を用いて所定サンプリング時刻毎(k+1,k+2,・・・,k+N:Nは整数)の予測入力値200と予測出力値204とを表す状態方程式を求め、このうちの予測出力値204を用いて評価関数Jを生成し、この評価関数Jに対する最適解、即ち、最小値を求める最適演算を行う。この最適値演算は、空気比等の制約条件102を満足し、温度設定値101と予測温度値との制御誤差の距離を含む各要素の最小値を求め、このときの予測入力値200を次時刻操作量130として出力する。
この結果、ライザー10の炉内温度や後燃焼炉30の炉内温度等の温度制御値が複数の目標値に保たれるように制御するとともに、燃料の流量及び空気の風量が所定範囲に収まり、安定した制御を行うことができる。
上記したように本発明の第1の実施形態である循環式流動焼却炉の温度制御装置によれば、空気比の制約条件を付加したモデルを生成し、このモデルをもとにモデル予測制御を行い、高温の後燃焼炉の温度を含む複数の温度を独立の目標値として安定した制御ができる。また、燃料の流量や空気の風量が制約条件を満足するように制御しているため、燃料流量や空気風量の干渉がなく、高温の後燃焼炉の温度制御に加えて燃料流量や空気風量をも少なくすることができるため、結果として温室効果ガスの抑制及び低減を図ることができる。
〔第2の実施形態〕
上記した第1の実施形態におけるモデル予測制御では、制約条件を付して演算を行っていたが、厳しい制約条件を与えると、評価関数の最適化演算結果が、演算不可あるいは制約条件内に解なしとなり最適化演算が停止してしまう場合がある。そこで、以下に説明する第2の実施形態では、第1の実施形態の評価関数Jに、ペナルティ関数f=рεを加えて最適化演算を行う。ここで、εは、許容誤差の値であり、рは重みの値とする。
上記した第1の実施形態の最適化演算は、評価関数Jに対し、以下の演算を行っていた。即ち、以下に示す数式(1)のように、要素y(t)が上限値ymaxと下限値yminとの範囲内である制約条件下で評価関数Jの最小値を演算していた。これに対して、第2の実施形態では、ペナルティ関数f=рεを用いて以下に示す数式(2)のような演算を行う。
min(J) subject to ymin≦y(t)≦ymax …(1)
min(J+рε2) subject to ymin−ε≦y(t)≦ymax+ε …(2)
これは、上限値ymaxと下限値yminとを許容誤差ε分だけそれぞれ広げ、評価関数(J+рε)の最小値も、評価関数Jのみの最小値に比べて実質的に大きくし、ペナルティ関数を加えて最小値を求めた場合であっても、最小値として選択されないようにしている。これによって、評価関数の演算が停止することがなくなる。
特に、システム立ち上げ時は、制約条件が厳しい場合、評価関数の最適化演算が行えなくなる場合が発生しやすくなり、この評価関数の最適化演算が行えなくなると、システム立ち上げ時間が長くなってしまう。第2の実施形態では、上述したペナルティ関数の導入によって継続的なシステム制御が維持できるとともに、システム立ち上げ時間を短縮することができる。
図4のフローチャートを参照して、第2の実施形態における評価関数の最適化演算処理手順について説明する。
まず、モデル予測演算部100は、ペナルティ関数を加えずに、評価関数Jのみ最適化演算を行う(ステップS401)。その後、モデル予測演算部100は、最適化演算の結果が解なし等による制約条件外であるか否かを判断する(ステップS402)。制約条件外である場合(ステップS402“Yes”)には、モデル予測演算部100は、上述したペナルティ関数f=рεを導入し、制約条件の上限値及び下限値を許容誤差ε分だけ広げ、評価関数Jにペナルティ関数f=рε加えて(ステップS403)、最適化演算を行う(ステップS404)。
その後、モデル予測演算部100は、ステップS405に移行し、あるいは制約条件外でない場合(ステップ402“No”)には、ステップS405に移行し、次の最適化演算があるか否かを判断し(ステップS405)、次の最適化演算がある場合(ステップS405“Yes”)には、ステップS401に移行して上記した処理を繰り返し、次の最適化演算がない場合(ステップS405“No”)には、本処理を終了する。
上記したように本発明の第2の実施形態である循環式流動焼却炉の温度制御装置によれば、ペナルティ関数を導入して最適化演算を継続して行えるようにしたため、制御のロバスト性を向上させることができる。特に、システム立ち上げ時等のシステムが不安定になりがちな時に、ペナルティ関数を導入して最適化演算を行うことが好ましい。
本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御方法は、例えば、図1において、炉本体(ライザー10)に充填された流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼に同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロン20で回収して循環させながら汚泥を焼却すると共に、後燃焼炉30で燃焼ガスを分解する循環式流動焼却炉1の温度制御方法であって、例えば、図2に示されるように、炉本体の温度と、後燃焼炉の温度と、炉本体に供給される燃料の流量と、炉本体の下部に供給される流動空気の風量と、後燃焼炉の中部又は下部及び上部又は中部に供給される空気の風量を取り込む制御入力ステップ(110、120)と、燃料の流量と、流動空気及び供給空気の風量の少なくとも一つを所定範囲内に収める制約条件下(102)で、炉本体、後焼却炉の各温度(101)、及び排出ガスの成分量(104)をそれぞれ異なる目標値としてモデル予測演算を行う演算ステップ(100a、及び図3の行列式)と、モデル予測演算の結果に従い、燃料の流量及び流動空気、及び供給空気の風量を制御する制御出力ステップ(130)と、を有する。
本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御方法によれば、空気比の制約条件を付加したモデルを生成し、このモデルをもとにモデル予測制御を行い、高温の後燃焼炉の温度を含む複数の温度を独立の目標値として安定した制御ができる。また、燃料の流量や空気の風量が制約条件を満足するように制御しているため、燃料流量や空気風量の干渉がなく、高温の後燃焼炉の温度制御に加えて燃料流量や空気風量をも少なくすることができるため、結果として温室効果ガスの抑制及び低減を図ることができる。
なお、上記した温度制御装置及びその方法は、上記した循環式流動却炉1以外にも適用が可能である。例えば、図5にそのシステム構成図が示されるように、燃料流量制御と空気風量制御とに対応して、例えば、ブロア圧力制御と、水処理D(Dissolved Oxgen)制御とが相互に干渉する可能性がある制御システム等に適用することができる。例えば、下水処理施設では、曝気槽300において、微生物による処理のために空気量のコントロールを行っているが、このとき、曝気槽側では、管理指標としてD値で制御し、ブロワB側では、圧力指標として制御している。このように、それぞれが個別の目標で制御しているため、水質変動に伴い多くの風量を用いて運転することになり、無駄な電力が発生するといった不都合が生じる。特に、D水質は無駄時間が長いために定常偏差が常に発生する。
これを回避するために、上記した第1及び第2の実施形態における制御装置100を用い、モデル予測制御による相互干渉抑制、及び将来予測演算により両者の干渉を抑制し、水質無駄時間を予測により目標値に制御することで、安定的な運用が可能になる。また、この場合、ブロワBの消費電力低減や、台数削減による省エネ効果にも期待できる。
〔実験例〕
最後に、本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御装置を用いて実際の運用における想定外乱を入力した場合の燃料の流量と1次〜3次の空気の風量とを制御した実験結果について説明する。図6は、(b)燃料の流量、(c)1次空気の風量、及び(d)2次空気(曲線L5)及び3次空気(曲線L6)の風量の制御に伴う(a)ライザー温度及び後燃焼温度の変化を示す。図6(a)に示すように、時間T=T1において外乱入力を開始すると、ライザー温度が低下し始め、目標値に追従させるため補助燃料流量及び1次空気風量を増加させる制御を実施した。これによりライザー温度の急激な温度低下を抑制したが、これらの操作量増加の影響により後燃焼炉30の温度(曲線L3)が上昇することとなった。その後は補助燃料流量と1次空気風量を微調整して後燃焼炉温度の目標値への追従を行いながら、ライザー温度の回復させるように補助燃料流量及び1次空気風量を増減する制御を行った。その結果、ライザー温度及び後燃焼炉温度の2つを目標値に追従させる結果となった。ライザー部温度と後燃焼炉温度では操作量変化での特性に大きく相違があること及び炉本体10の内部で砂が循環していることがライザー温度の緩やかな追従の理由と考えられる。これにより、本発明に係る循環式流動焼却炉の温度制御装置によれば、炉本体の温度を目的の一定温度に維持しつつ、後燃焼炉の温度を目的の温度に維持する温度制御を安定して行うことができることが確認された。
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
1 循環式流動焼却炉
10 炉本体(ライザー)
11 希薄層
12 濃厚層
13、33 熱電対
20 サイクロン
30 後燃焼炉
35 ガスセンサ
41 燃料流量調整器
42 1次空気風量調節器
43 2次空気風量調節器
44 3次空気風量調節器
51,52,53,54 バルブ
60 汚泥供給ポンプ
70 燃料
71 燃料流量検出
80 一次空気ブロワ
90 二次空気ブロワ
100 制御装置
100a モデル予測演算部

Claims (6)

  1. 炉本体に充填された流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼に同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロンで回収して循環させながら汚泥を焼却すると共に、後燃焼炉で燃焼ガスを分解する循環式流動焼却炉の温度制御装置であって、
    前記炉本体の温度と、前記後燃焼炉の温度と、前記炉本体に供給される燃料の流量と、前記炉本体の下部に供給される流動空気の風量と、前記後燃焼炉の下部又は中部及び上部又は中部に供給される空気の風量とを制御入力とし、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量とを制御出力とし、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との少なくとも一つを所定範囲内に収める制約条件下で、前記炉本体の温度、前記後焼却炉の温度、及び排出ガスの成分量をそれぞれ異なる目標値として、前記制御出力である前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との予測結果を示す評価関数の値が所定値以下で最小となるモデル予測演算を行うモデル予測演算部を備える
    ことを特徴とする循環式流動焼却炉の温度制御装置。
  2. 前記モデル予測演算部は、前記制約条件として、前記汚泥の燃焼に必要な供給空気の理論風量と前記燃料の燃焼に必要な供給空気の理論風量との合計理論風量に対する供給空気の実風量の比である空気比を所定範囲内に設定することを特徴とする請求項1に記載の循環式流動焼却炉の温度制御装置。
  3. 前記モデル予測演算部は、前記制約条件下で前記評価関数の最小値を求める場合に、前記評価関数の要素が前記制約条件外となる場合、前記制約条件の所定範囲の上限及び下限に許容誤差を与えて前記制約条件の所定範囲を広げ、この広げた制約条件を修正制約条件とし、前記許容誤差の2乗に所定の重み係数を乗算したペナルティ関数を前記評価関数に加えた関数を修正評価関数とし、前記修正制約条件下で前記修正評価関数の最小値を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の循環式流動焼却炉の温度制御装置。
  4. 前記モデル予測演算部は、複数点で計測された前記炉本体の温度又は前記後燃焼炉の異なる各温度をそれぞれ目標値とし、前記モデル予測演算を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の循環式流動焼却炉の温度制御装置。
  5. 前記モデル予測演算部は、既知パラメータと現在入出力値とを初期値とし、設定パラメータを用いて所定サンプリング時刻毎の予測出力値と予測入力値とを表す状態方程式を算出し、前記状態方程式の前記予測出力値を用いて評価関数を生成し、前記評価関数に対する最小値を求めるモデル予測演算を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の循環式流動焼却炉の温度制御装置。
  6. 炉本体に充填された流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼に同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロンで回収して循環させながら汚泥を焼却すると共に、後燃焼炉で燃焼ガスを分解する循環式流動焼却炉の温度制御方法であって、
    前記炉本体の温度と、前記後燃焼炉の温度と、前記炉本体に供給される燃料の流量と、前記炉本体の下部に供給される流動空気の風量と、前記後燃焼炉の下部又は中部及び上部又は中部に供給される空気の風量とを取り込む制御入力ステップと、
    前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との少なくとも一つを所定範囲内に収める制約条件下で、前記炉本体の温度、前記後焼却炉の温度、及び排出ガスの成分量をそれぞれ異なる目標値として、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量との予測結果を示す評価関数の値が所定値以下で最小となるモデル予測演算を行う演算ステップと、
    前記モデル予測演算の結果に従い、前記燃料の流量と、前記流動空気の風量と、供給空気の風量とを制御する制御出力ステップと、
    を含むことを特徴とする循環式流動焼却炉の温度制御方法。
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