JP4817459B2 - 汚泥の焼却装置及びこれを用いた汚泥の焼却方法 - Google Patents

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本発明は、地球温暖化ガスであるNOの発生を抑制しながら、N分を含む汚泥を焼却することができる汚泥の焼却装置及びこれを用いた汚泥の焼却方法に関するものである。
下水汚泥に代表される汚泥中には蛋白質に由来する多量のN分が含有されているので、焼却により各種の窒素酸化物が生成され、大気中に放出されている。これらの窒素酸化物の中でも、NO(亜酸化窒素)はCOに比べて310倍の温暖化効果を示すガスであるため、その削減が特に強く求められている。
従来から汚泥の焼却には、ダイオキシンを発生させにくい流動焼却装置が広く使用されており、一般的に約800℃で焼却が行われてきた。しかし焼却温度を850℃まで高めるとNOの発生量が従来の数分の一にまで減少することが分り、これを「高温焼却法」と呼んでNOの抑制に有効な方法と評価されている。
ところが、焼却温度を850℃にまで高めるためには補助燃料の使用量を従来の1.4〜1.6倍にまで増加させる必要があり、省エネルギの観点からは好ましくない。また燃料コストが上昇している昨今の状況から、ランニンゴコストの大幅な増加を招くという問題を生ずる。このように「高温焼却法」はNOの抑制には有効であるが、実用上の問題が残されている。
このようなNOの抑制という課題は、都市廃棄物を燃料とする流動層燃焼ボイラにおいても発生している。そこで特許文献1には、流動層の空気比を0.9〜1.0としてNO及びNOの発生量を抑制し、その上段で付加燃料とその燃焼用空気を供給して高温燃焼させることによって高温でNOを分解させ、さらに最上段で十分な量の空気を吹き込んで完全燃焼させるという流動層燃焼ボイラの多段燃焼方法が提案されている。
しかしこの特許文献1の多段燃焼方法は、流動層の上段に付加燃料とその燃焼用空気を供給し、NOを分解することができる高温場を形成するために多量の補助燃料を必要としている。もっとも特許文献1の多段燃焼方法はボイラに関するものであるから、補助燃料の熱量を水蒸気の熱量として回収することができ、補助燃料の使用量はさほど大きな問題ではない。しかしこれをそのまま汚泥焼却炉に適用した場合には、補助燃料の使用量が問題となり、省エネルギの観点から満足できない点があった。
特許第3059995号公報
本発明は上記した従来の問題点を解決し、N分を含む汚泥を焼却する際のNOの発生量を「高温焼却法」と同等レベルまで抑制することができ、しかも補助燃料の使用量を「高温焼却法」に比べて大幅に低下させることができる汚泥の焼却装置及びこれを用いた汚泥の焼却方法を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するためになされた本発明の汚泥の焼却装置は、流動媒体分離手段を備えた循環流動炉と、その後段に設置された後燃焼炉とからなり、循環流動炉は空気比が1.0未満の流動用空気を燃料とともに供給して、汚泥を流動媒体とともに流動させつつ熱分解する熱分解ゾーンとし、後燃焼炉の内部には、空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気のみを供給することにより局所高温場を形成してNOを分解する局所高温場形成ゾーンと、未燃分を完全燃焼させる完全燃焼ゾーンとを順次形成したことを特徴とするものである。
なお請求項2のように、後燃焼炉の内部の局所高温場形成ゾーンと完全燃焼ゾーンとの間に、補助燃料のみを供給してNOを分解する補助燃料反応ゾーンを形成することができる。また請求項3のように、熱分解ゾーンの空気比を0.6〜1.0、温度を550〜750℃、局所高温場形成ゾーンの温度を850〜1000℃とすることができる。また請求項4のように、流動用空気として供給される1次空気と局所高温場形成ゾーンに供給される2次燃焼用空気の合計の空気比を1.0〜1.3とし、請求項5のように完全燃焼ゾーンに供給される空気の空気比を0.1〜0.4とし、全体での空気比を1.5以下とすることができる。
また請求項6に記載の本発明の汚泥の焼却方法は、空気比が1.0未満の流動用空気が燃料とともに供給され、流動媒体が循環流動している循環流動炉に汚泥を投入し、550〜750℃の温度域で熱分解し、流動媒体分離手段で流動媒体を分離して循環流動炉に返送する一方、流動媒体分離手段を通過した熱分解ガスを後段の後燃焼炉に導き、入口側の局所高温場形成ゾーンにおいて空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気のみを供給することにより、局所高温場を形成してNOを分解し、さらに出口側の完全燃焼ゾーンで空気を吹き込んで未燃分を完全燃焼させることを特徴とするものである。
さらに請求項7に記載の本発明の汚泥の焼却方法は、空気比が1.0未満の流動用空気が燃料とともに供給され、流動媒体が循環流動している循環流動炉に汚泥を投入し、550〜750℃の温度域で熱分解し、流動媒体分離手段で流動媒体を分離して循環流動炉に返送する一方、流動媒体分離手段を通過した熱分解ガスを後段の後燃焼炉に導き、入口側の局所高温場形成ゾーンにおいて空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気のみを供給することにより、局所高温場を形成してNOを分解し、次に補助燃料反応ゾーンで補助燃料のみを供給して残余のNOを分解し、さらに出口側の完全燃焼ゾーンで空気を吹き込んで未燃分を完全燃焼させることを特徴とするものである。
本発明の汚泥の焼却装置では、空気比が1.0未満の流動用空気が燃料とともに供給される循環流動炉に汚泥を投入し、循環流動させつつ熱分解する。この熱分解ゾーンでは空気比が1.0未満であって酸素が少ないので、N分の酸化が進みにくくNOの生成が抑制される。それにもかかわらず汚泥は550〜750℃の温度場で流動媒体によって激しく撹拌されて解砕され、汚泥中の可燃分は十分に熱分解され熱分解ガスとなる。流動媒体はサイクロン等の流動媒体分離手段によって回収され、ダウンカマーを経由して循環流動炉に返送されるが、熱分解ガスは後段に設置された後燃焼炉に送られる。
流動媒体分離手段を通過した熱分解ガスは後燃焼炉の内部に導かれ、空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気が供給されて局部燃焼させられ、850〜1000℃の局所高温場を形成することによって熱分解ガス中のNOが分解される。このように酸素濃度の低い熱分解ガス中に空気のみを吹き込んで熱分解ガスを局所燃焼させるので、局所高温場形成ゾーンでは補助燃料を全く必要とせずにNOを分解することができる。そしてさらに後燃焼炉の内部出口側に形成された完全燃焼ゾーンにおいて未燃分を完全燃焼させるので、排ガス中に有害成分は含まれない。この結果、補助燃料の使用量を「高温焼却法」よりも約3割減少させつつ、NOの排出量を「高温焼却法」と同等レベルまで抑制することが可能となる。
また請求項2や請求項7のように、後燃焼炉の局所高温場形成ゾーンと完全燃焼ゾーンとの間に、補助燃料のみを供給してNOを分解する補助燃料反応ゾーンを形成した場合には、燃料中の水素がラジカル化し残余のNOをアタックして分解させるので、NOの生成がより確実に抑制される。しかも補助燃料の供給量は微量でよいので、この場合にも補助燃料の使用量は「高温焼却法」に比べて大幅に低下させることができる。
なお、本発明では循環流動炉を用いて熱分解を行わせたため、気泡流動炉を用いた場合よりも流動用の一次空気の圧力を下げることができ、ブロワ動力を削減することができる。また後燃焼炉内の圧力は低くその内部への空気供給には低圧の送風ファンを使用することができるので、動力費を削減することができる。しかも流動媒体の移動速度が大きい循環流動炉では汚泥の燃焼効率が高いため、気泡流動炉を用いた場合には燃焼効率が低下して砂層部の温度維持が困難となる低い空気比であっても、熱分解運転を進行させることができる。
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は本発明の第1の実施形態を示す断面図であり、1は汚泥が投入される循環流動炉、2は循環流動炉1の上部側方に設けられたサイクロン等の流動媒体分離手段である。循環流動炉1は底部に流動用空気供給手段3を備え、高温の流動媒体を3〜5m/s以上の流速で高速流動させ、汚泥と接触させる構造の流動炉である。流動媒体を含む炉内ガスは循環流動炉1の上部から流動媒体分離手段2に流入して流動媒体とガスとに分離され、流動媒体はダウンカマー4を経由して炉内下部に返送され、循環を繰り返すことは従来と同様である。
汚泥焼却用の通常の循環流動炉では、過剰量の空気が炉内に供給されて汚泥を完全燃焼させているが、本発明では循環流動炉1の内部は熱分解ゾーンであって、空気比が1.0未満の流動用空気を補助燃料とともに供給して、汚泥を流動媒体とともに流動させつつ熱分解する。汚泥は下水脱水汚泥が代表的なものであるが、N分を含む畜産汚泥、工場汚泥等であってもよい。炉内温度は550〜750℃に維持され、投入された汚泥は流動媒体により激しく解砕・撹拌されながら加熱される。補助燃料としては都市ガスやプロパンガスのようなガスや、A重油のような燃料油が使用される。
本発明では、流動用空気の空気比が1.0未満、好ましくは0.6以上1.0未満となるように設定されている。このため汚泥は部分燃焼しながら熱分解されるが、空気比が低く酸素量が不十分であるので、通常の流動燃焼を行わせる場合に比較してNOの発生量を抑制することができる。なお空気比が0.6未満であると部分燃焼による発熱量が、汚泥水分蒸発熱や熱分解熱、放熱などの出熱量よりも少なくなり、流動層部の温度維持が困難となるので、0.6以上1.0未満とすることが好ましい。
循環流動炉1の後段には後燃焼炉5が設置されており、流動媒体分離手段2により流動媒体が分離された熱分解ガスが導かれる。この実施形態では熱分解ガスを後燃焼炉5の上端に導いているが、後燃焼炉5の下端に導いても差し支えない。しかし炉外のガス流路が長くなると熱分解ガスの温度が低下するおそれがあるので、図1のように上端に導くことが好ましい。
後燃焼炉5の内部は、入口側が局所高温場形成ゾーン6、出口側が未燃分を完全燃焼させる完全燃焼ゾーン7となっている。局所高温場形成ゾーン6には2次燃焼用空気供給手段8が設けられており、空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気のみを供給する。熱分解ガスはこの2次燃焼用空気と接触して燃焼され、温度が850〜1000℃の局所高温場(ホットスポット)を形成する。このため熱分解ガス中に含まれるNOはこの局所高温場において分解され減少する。この温度が850℃よりも低いとNOの分解効果が低下する。
なお燃焼用空気供給管8から供給される空気比が0.1未満では850〜1000℃の局所高温場を形成することができず、0.4を越えると空気量が増加し850〜1000℃の局所高温場を形成するには補助燃料の供給が必要となるので、空気比は0.1〜0.4とすることが必要である。このように本発明では還元雰囲気中に少量の空気のみを吹き込んでホットスポットを形成し、NOを分解する点に大きな特徴があり、必要量以上の補助燃料を使用しない利点がある。なお、流動空気として供給される1次空気と局所高温場形成ゾーンに供給される2次空気の合計の空気比を1.0〜1.3とすることが好ましい。
後燃焼炉5の内部出口側は、未燃分を完全燃焼させる完全燃焼ゾーン7である。この完全燃焼ゾーン5には未燃分燃焼用空気供給管9が配置され、空気を供給する。その供給量は空気比が0.1〜0.4となる量とする。この完全燃焼ゾーン7の温度は800〜850℃であり、局所高温場形成ゾーン6において分解されなかったNOはさらに分解されるとともに、COはCOに酸化され、炉外に排出されて通常の排ガス処理が行われる。
なお、上記した流動用空気供給手段3と燃焼用空気供給管8と未燃分燃焼用空気供給管9とから供給される空気量の合計は、トータル空気比が1.5以下、好ましくは1.3以下となるように設定する。このように空気比を絞り、かつ補助燃料を循環流動炉1のみから供給するようにした結果、補助燃料の使用量をほぼ従来レベルとしながら、NOの発生量を従来よりも大幅(実施例では1/3)に削減することができた。なお本発明によるNOの抑制効果は「高温焼却法」と同様あるいはそれ以上であるが、「高温焼却法」では補助燃料の使用量が従来レベルの1.4〜1.6倍となる。このように本発明によれば、NOの発生量を「高温焼却法」と同等レベル以下まで抑制することができ、しかも補助燃料の使用量を「高温焼却法」に比べて大幅に低下させることが可能となる。
図2は本発明の第2の実施形態を示す断面図である。この実施形態においては、後燃焼炉5の局所高温場形成ゾーン4と完全燃焼ゾーン7との間に、補助燃料のみを供給してNOを分解する補助燃料反応ゾーン10が形成される。
この補助燃料反応ゾーン10には第2の補助燃料供給管11が配置されており、ごく少量の補助燃料が添加される。補助燃料の炭化水素が熱分解して水素ラジカルが発生し、汚泥の熱分解ガス中に含有されるNOをアタックして分解する。またこのゾーンでは補助燃料が添加されることによってより強い還元雰囲気が形成されるので、NOの生成が抑制される。
このように、補助燃料反応ゾーン10を形成することによって前記した実施形態の場合に比較してNOの発生量は更に抑制される(実施例では従来の1/4)。この場合前記した実施形態よりも余分に補助燃料を添加することとなるが、実施例に示すように微量の補助燃料の添加によって大きな効果を得ることができる。
実験用の循環流動炉と後燃焼炉を使用して、条件を変更しながら汚泥の焼却実験を行った。汚泥の投入量は全て80kg/hであり、補助燃料としてはA重油を使用した。実験は従来から行われている通常の流動焼却、焼却温度を高めた高温焼却、本発明の図1に示した方法、本発明の図2に示した方法の4種類である。なお本発明の図2に示した方法では、補助燃料供給管からの補助燃料として排ガス量の300ppmに相当する量のプロパンガスを使用した。それぞれの焼却方法について、補助燃料使用量(汚泥1kg当たりの補助燃料の発熱量で表示)、フリーボード部最高温度、出口温度、CO濃度及びNO濃度、トータル空気比を測定し、表1に示した。
Figure 0004817459
上記のデータから明らかなように、本発明によれば補助燃料の使用量を従来の焼却方法と同等レベルに維持しつつ、汚泥焼却時に発生するNOの量を大幅に削減することができる利点がある。
本発明の第1の実施形態を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1 循環流動炉
2 流動媒体分離手段
3 流動用空気供給手段
4 ダウンカマー
5 後燃焼炉
6 局所高温場形成ゾーン
7 完全燃焼ゾーン
8 燃焼用空気供給管
9 未燃分燃焼用空気供給管
10 補助燃料反応ゾーン
11 第2の補助燃料供給管

Claims (7)

  1. 流動媒体分離手段を備えた循環流動炉と、その後段に設置された後燃焼炉とからなり、循環流動炉は空気比が1.0未満の流動用空気を燃料とともに供給して、汚泥を流動媒体とともに流動させつつ熱分解する熱分解ゾーンとし、後燃焼炉の内部には、空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気のみを供給することにより局所高温場を形成してNOを分解する局所高温場形成ゾーンと、未燃分を完全燃焼させる完全燃焼ゾーンとを順次形成したことを特徴とする汚泥の焼却装置。
  2. 後燃焼炉の内部の局所高温場形成ゾーンと完全燃焼ゾーンとの間に、補助燃料のみを供給してNOを分解する補助燃料反応ゾーンを形成したことを特徴とする請求項1記載の汚泥の焼却装置。
  3. 熱分解ゾーンの空気比を0.6〜1.0、温度を550〜750℃、局所高温場形成ゾーンの温度を850〜1000℃としたことを特徴とする請求項1または2記載の汚泥の焼却装置。
  4. 流動用空気として供給される1次空気と局所高温場形成ゾーンに供給される2次燃焼用空気の合計の空気比を1.0〜1.3としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汚泥の焼却装置。
  5. 完全燃焼ゾーンに供給される空気の空気比を0.1〜0.4とし、全体での空気比を1.5以下としたことを特徴とする請求項1または2記載の汚泥の焼却装置。
  6. 空気比が1.0未満の流動用空気が燃料とともに供給され、流動媒体が循環流動している循環流動炉に汚泥を投入し、550〜750℃の温度域で熱分解し、流動媒体分離手段で流動媒体を分離して循環流動炉に返送する一方、流動媒体分離手段を通過した熱分解ガスを後段の後燃焼炉に導き、入口側の局所高温場形成ゾーンにおいて空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気のみを供給することにより、局所高温場を形成してNOを分解し、さらに出口側の完全燃焼ゾーンで空気を吹き込んで未燃分を完全燃焼させることを特徴とする汚泥の焼却方法。
  7. 空気比が1.0未満の流動用空気が燃料とともに供給され、流動媒体が循環流動している循環流動炉に汚泥を投入し、550〜750℃の温度域で熱分解し、流動媒体分離手段で流動媒体を分離して循環流動炉に返送する一方、流動媒体分離手段を通過した熱分解ガスを後段の後燃焼炉に導き、入口側の局所高温場形成ゾーンにおいて空気比が0.1〜0.4の2次燃焼用空気のみを供給することにより、局所高温場を形成してNOを分解し、次に補助燃料反応ゾーンで補助燃料のみを供給して残余のNOを分解し、さらに出口側の完全燃焼ゾーンで空気を吹き込んで未燃分を完全燃焼させることを特徴とする汚泥の焼却方法。
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