JP3586164B2 - 循環流動焼却炉の運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物の焼却処理等に用いられる循環流動焼却炉の運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
循環流動焼却炉は、炉本体に充填されたケイ砂、アルミナ等からなる流動媒体を流動空気により流動させ、燃焼ガスに同伴されて炉本体から排出された流動媒体をサイクロンで回収して炉本体下部へ循環させながら廃棄物の焼却等を行う炉である。含水率や発熱量等の異なる幅広い廃棄物を安定して焼却できるため、下水汚泥等の廃棄物の焼却処理に用いられている。
【0003】
この循環流動焼却炉を安定して運転するためには、炉内を循環する流動媒体の量と粒径とを適正範囲に保つことが必要である。媒体量が減少し過ぎると、炉内下部の濃厚層と呼ばれる粒子溜まりの部分における廃棄物攪拌効果が低下して燃焼不良を招き、排ガス中に含まれる一酸化炭素等の未燃ガスが増加する。逆に媒体量が増加し過ぎた場合、流動空気の供給圧を増加させねばならず、ブロワの負荷が過大となるうえ、濃厚層の空気抵抗が大きくなって流動空気流量が変動し、炉の不安定化を招く。また流動媒体の粒径が大きくなると流動状態が悪くなり、未燃ガスが増加したりクリンカが発生する等のトラブルを引き起こす。
【0004】
一般に、流動媒体は850℃前後の高温で激しく流動し、媒体粒子間の衝突および炉壁、サイクロン内壁等との衝突により次第に消耗し、サイクロンの分離粒径以下になると燃焼ガスとともに炉外に排出されてしまう。このために減少分の流動媒体を定期的に補給しながら運転を行うのが一般的な姿である。しかし廃棄物の種類によっては運転中に媒体量が増加する場合がある。
【0005】
例えば、廃棄物中に砂質の無機物が含まれる場合には、焼却後にこれが炉内に留まり、流動媒体の量が増加することがある。また、廃棄物中にNa,K,P等が多く含まれている場合には、炉内で低融点化合物を形成し、これがバインダとなって焼却灰が流動媒体の周囲に付着し、粒径が肥大する。そしてこれが破壊されて二次粒子を生成し、媒体量を増加させる。更に石灰系凝集剤を用いた下水汚泥のように燃焼後の灰が粒子状になり、炉内に残留するため媒体量を増加させる場合もある。
【0006】
このように流動媒体が減少する場合には、補充する流動媒体の量を極力少なくしてランニングコストを抑える必要がある。また、流動媒体が増加する場合にも、炉下部から排出した媒体を廃棄物として処分する必要があるため、この排出量を低減することが必要である。また、媒体量の増加と共に粒子径の肥大を防ぐことも焼却炉を安定運転するために必要となる。そして流動媒体の補充量、排出量、粒子径肥大を抑えることのできる循環流動焼却炉の運転方法が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に対し、流動媒体が減少傾向にあるときには補充量が少なくなるよう制御し、また運転中に媒体量が増加する場合にも、媒体排出コンベヤから媒体の一部を抜き出すに至る前に炉の安定性を阻害することなく媒体量を一定に制御もしくは排出量を極力低減することができる循環流動焼却炉の運転方法を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の循環流動焼却炉の運転方法は、流動空気圧力の変化により循環流動焼却炉内の流動媒体の増減傾向を検出し、媒体量が減少傾向にあるときには燃焼温度を高くして媒体量の減少を抑制し、媒体量が増加傾向にあるときにはサイクロンの下方に設置された流動媒体分離粒径調整装置により分離粒径を大きくして炉本体における媒体への付着の原因となる焼却灰を炉内に返送しないように制御する。なお、流動媒体が増加傾向にあるときには燃焼温度を低下させることにより媒体への焼却灰付着を抑制して媒体量の増加を低減させ、更に増加傾向にあるときには炉本体に充填している媒体の量を下限値まで低くすることで濃厚層と呼ばれる炉本体下部の粒子溜まり部分の温度を低減し、流動砂の増加を抑制させる工程を付加することができる。
【0009】
またこの循環流動焼却炉の運転方法における流動媒体分離粒径調整装置は、燃焼ガスとともに流動焼却炉から排出された流動媒体および焼却灰を固気分離するサイクロンの下方に、サイクロンにより分離された流動媒体および分離径よりも大きな焼却灰の内、流動媒体への付着の原因となる焼却灰および粒径の小さな流動媒体を吹き上げてガス側に移行させる空気供給管を設けたものである。なお、空気供給管がサイクロンと同じ回転方向に空気を供給するように接線方向に設けられたものであることが、細かな粒子を選択的に吹き上げることが可能であり好ましい。
【0010】
本発明によれば、流動媒体の増減傾向に応じてサイクロンにより分離される流動媒体および焼却灰の粒径を調整することによって炉内に返送される焼却灰および微粒状の媒体量を変化させ、炉本体での流動媒体への焼却灰付着量を調整することにより、炉内での流動媒体消耗と焼却灰付着による増加とのバランスを保って常に炉内の媒体量を安定化させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1において、1は循環流動焼却炉の炉本体、2は流動空気供給管、3は廃棄物投入機である。流動媒体(最適値は平均粒子径200〜500μm)は流動空気供給管2の流動空気により炉内で流動され、投入された廃棄物を激しく攪拌しつつ800〜900℃で燃焼させる。燃焼ガスは流動媒体および焼却灰とともにサイクロン4に送られて固気分離され、燃焼ガスおよびサイクロンにおいて分離できない粒子径となった微粒状焼却灰および流動媒体は流動空気加熱用の熱交換器5を経由して後段の排ガス処理装置へ送られる。一方、分離された流動媒体および分離粒子径以上の比較的大きな焼却灰はダウンカマー6内を落下してマテリアルシール部に達し、ニューマチックバルブ7により吹き上げられて炉本体1の下部に返送されている。なお8は炉下部に設けられた流動媒体排出コンベヤ、9は流動媒体供給機、10は炉本体1の上部の温度検出器、11は流動ブロワである。更にサイクロン4の下方には流動媒体分離粒径調整装置12が設置されているが、その構造に付いては後述する。
【0012】
本発明では、流動空気供給管2に設けられた圧力計によって流動層のヘッドを求め、流動空気圧力が増加傾向にあるか減少傾向にあるかによって媒体量の増減傾向を検出する。そして図2のフローに示すように、流動空気圧力が減少傾向すなわち媒体量が減少傾向にあるときには、燃焼温度を高くする。これにより流動媒体の周囲に焼却灰が付着し易くなるため、媒体の減少を防止または減少量を低減させることができる。しかし燃焼温度の増加は燃料消費量や窒素酸化物の発生量を増加させるため上限温度があり、通常は900℃程度に設定されるが、この上限温度まで昇温してもなお媒体量の減少傾向が続く場合には、流動空気圧力つまり流動媒体量が下限値未満とならないように流動媒体供給機9から流動媒体を流動空気圧力最適値付近まで補充する。このような媒体量の減少は一般的に起こるものであり特に重要な問題ではないが、直ちに流動媒体を補充せずに燃焼温度による制御を先行させて補充の量を低減させる点に本発明のひとつの特徴がある。
【0013】
次に、流動空気圧力が増加傾向すなわち媒体量が増加傾向にあるときには、先ずサイクロン4の下方に設置された流動媒体分離粒径調整装置12により流動媒体の分離粒径を大きくする。この流動媒体分離粒径調整装置12の構造は、例えば図3に示される通りである。この例では、サイクロン4の下方にサイクロン4と同じ回転方向に空気を供給できるように接線方向に空気供給管13を設けたものである。
【0014】
流動媒体および焼却灰はサイクロン4の内部で図示のように旋回して壁面に押し付けられながらながら壁近傍を落下し、分離粒径よりも小さいものは排ガスと共に吸気管16に吸引され、分離粒径よりも粗いものは下方に落下して行く。そこで空気供給管13から空気を吹き込むことで、それまでサイクロン4により分離された流動媒体を吹き上げてガス側に移行させることができる。すなわち空気供給管13から吹き込む空気の量を調整することで、サイクロンで分離する流動媒体および焼却灰の粒径を調整することができる。このようにして、流動媒体分離粒径調整装置12によりサイクロン4で分離される流動媒体および焼却灰の分離粒径を換えることにより、炉内に返送される焼却灰の量を調整することができ、流動媒体への焼却灰付着を抑えることで媒体量増加を低減させることができる。なお、図3の例では空気供給管13を備えた流動媒体分離粒径調整装置12をサイクロン4の直下に設けたが、このような設備を設けず、図1中に14として示される位置に設置されている空気供給管の空気量を調整することでも類似の効果を得ることができる。
【0015】
このようにしてもなお媒体量の増加傾向が収まらない場合には、図2のフローに示すように燃焼温度を低下させる。燃焼温度を低下させると焼却灰の付着による媒体粒子の成長が抑制され、粒子間や壁面等との衝突に伴う消耗が優勢となるので、媒体量は減少傾向となる。しかし排ガス中の一酸化炭素濃度等の値から決められる下限温度(通常800℃程度)まで燃焼温度を下げてもなお媒体量の増加傾向が認められる場合には、止むなく流動媒体排出コンベヤ8から流動媒体を排出し、流動空気圧力を下限値に設定する。これにより炉本体下部の流動媒体充填量が少なくなるため、炉本体下部の濃厚層において廃棄物の水分蒸発および熱分解により流動媒体が熱を奪われることによる温度低下量が大きくなり、焼却炉の制御を行っている炉本体上部の温度は一定であっても、下部濃厚層の温度だけを低下することができる。これにより炉下部の濃厚層部分における焼却灰の付着が抑制され、流動媒体の増加を抑えることができる。更に流動媒体の増加傾向が続く場合には、最終的な手段として図1に示す安定化剤投入口15から、石灰、珪藻土、白土等の安定化剤を炉内に投入し、Na、K、P等との高融点化合物を生成または低融点化合物を吸収して炉外に排出させることが好ましい。なお、これらの流動媒体量増加を抑制する手段は場合により優先順位を変える、もしくは一部を省略しても差し支えないが、流動媒体の排出量を最小限にし、未燃ガス等の発生も極力抑えるためには前記の順番に対策を行うことがより好ましい。
【0016】
上記したように、本発明によれば流動焼却炉の運転中に媒体量が増加した場合にも、媒体排出コンベヤから媒体の一部を抜き出すという手段を取る前に、流動媒体分離粒径調整装置を用いて炉内に返送される焼却灰量を減少させたり、燃焼温度を変更したり、炉内の流動媒体量を少なくして下部の粒子溜まり部分を局部的に低温にすることにより、炉の安定性を阻害することなく媒体量を一定に制御することができる。
【0017】
【実施例】
ある下水処理場から発生した下水汚泥を2.5t/日の循環流動焼却炉で焼却した。その汚泥の性状として、水分は80.5%であり、固形分中の可燃分は81%、灰分は19%であった。また灰分の組成は、SiO :40.8%、Al :17.2%、Fe :3.2%、CaO:3.2%、MgO:2.9%、Na :1.8%、K :2.8%、P :24.6%であった。
【0018】
このように多量のP、Na、Kを含有するため、従来の運転方法による場合には炉内で流動媒体が増量し、図4に破線で示すように流動空気圧力が上限に達したときにやむを得ず媒体排出コンベヤから媒体の一部を抜き出すことを繰り返す必要があった。ここで従来の方法とは流動媒体の充填量すなわち流動空気圧力を基準値に設定して運転を開始し、燃焼温度は流動媒体の増減に関わらず基準値において一定に制御し、サイクロンの下部への空気吹き込みも行わない方法である。
【0019】
これに対して本発明の運転方法による場合には、図4に実線で示すように最終的に流動空気圧力の増加を抑えて安定した運転が可能であり、媒体量も略一定に維持されていることが確認された。
なお、通常燃焼温度の上限、下限値は設備に架せられる窒素酸化物やダイオキシン類等の排ガス規制値等により定められるべきものであるが、実施例ではテストプラントを使用しているため表1に示す値を採用した。また、この実施例におけるその他の設定値についても表1に示した。流動空気圧力増減判定間隔tは、この間の前後の圧力値比較により圧力が増加しているか減少しているかを判断する時間間隔であり実施例では2時間とした。また、調整回数nは空気量、燃焼温度、流動空気圧力をそれぞれ上限値や下限値に調整するまでの分割回数をし示しており、実施例では4回とした。なおこの調整方法は任意の傾き(調整速度)において直線的に変化させても問題ないが実施例では2時間間隔で4回の段階的調整にて運転した。
【0020】
【表1】
Figure 0003586164
【0021】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の流動焼却炉の運転方法によれば、流動焼却炉内の媒体量を一定に制御することができ、安定した操炉を行うことができる。また本発明における流動媒体分離粒径調整装置によれば、サイクロンにより分離される媒体の粒径を空気により簡便かつ正確に制御することができ、炉内への焼却灰返送量を自由に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す概念的な断面図である。
【図2】本発明の制御フローを示すフローシートである。
【図3】本発明の流動媒体分離粒径調整装置を示す概念的な断面図である。
【図4】本発明の実施例と比較例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 流動焼却炉の炉体、2 流動空気供給管、3 廃棄物投入機、4 サイクロン、5 熱交換器、6 ダウンカマー、7 ニューマチックバルブ、8 流動媒体排出コンベヤ、9 流動媒体供給機、10 温度検出器、11 流動ブロワ、12 流動媒体分離粒径調整装置、13 空気供給管、14 吸気管

Claims (4)

  1. 流動空気圧力の変化により流動焼却炉内の流動媒体の増減傾向を検出し、媒体量が減少傾向にあるときには燃焼温度を高くして媒体量の減少を抑制し、媒体量が増加傾向にあるときにはサイクロンの下方に設置された流動媒体分離粒径調整装置により分離粒径を大きくして媒体への付着の原因となる焼却灰を炉内に返送しないように制御することを特徴とする循環流動焼却炉の運転方法。
  2. 媒体量が増加傾向にあるときには、燃焼温度を低下させることにより媒体への焼却灰付着を抑制し、更に媒体量が増加傾向にあるときには、炉本体に充填している媒体の量を下限値まで低くすることで濃厚層の温度を低減して流動媒体の増加を抑制させる工程を組み合わせたことを特徴とする請求項1記載の循環流動焼却炉の運転方法。
  3. 前記流動媒体分離粒径調整装置が、燃焼ガスとともに流動焼却炉から排出された流動媒体および焼却灰を固気分離するサイクロンの下方に、サイクロンにより分離された焼却灰を吹き上げてガス側に移行させる空気供給管を設けたものである請求項1または2に記載の循環流動焼却炉の運転方法。
  4. 前記空気供給管がサイクロンと同じ回転方向に空気を供給するように接線方向に設けられたものである請求項3に記載の循環流動焼却炉の運転方法
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