JP4091879B2 - 廃棄物処理炉の制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物などの廃棄物に所定の処理を施す廃棄物処理炉の制御方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ごみ処理においては、収集されるごみを安定かつ安全に燃焼或いは溶融処理して減容化し、無害化し、発生した熱エネルギーを効率よく回収することが重要である。また、ごみ処理施設に搬入されるごみ量は日ごとに変動するため、ごみ収集量に応じて計画的にごみ処理を行うことも重要である。もしごみ処理を計画的に行わなければ、ごみ収集量が多いときに処理量が少ないと、ごみピット内のごみが溢れてしまうおそれがあり、逆にごみ収集量が少ない場合に多くのごみを処理してしまうと、ごみピット内のごみが底をつき、最悪の場合には収集ゴミが蓄積されるまで炉を一時停止して保温しなければならなくなる。
【0003】
ごみ処理量を管理するためには、給じん装置によるごみの供給速度(給じん装置速度)を一定にして、一定量ずつごみを供給すればよいが、現実にはごみの性状は絶えず変動するため、給じん装置速度を一定にしても、一定重量ずつごみを投入することができない。例えば乾いて滑りやすいごみと、水分を多量に含んだ重量感のあるごみでは、単位給じん装置速度あたりの投入ごみ重量は大きく異なる。
【0004】
そこで、以下のようなごみ処理量の補償方法が考案された。
【0005】
例えば特許文献1では、ホッパー内のごみを炉内に落下させるプッシャーと、このプッシャーの前方のごみ落し口に回転式のごみ受け台及び計量装置と、受け台上のごみが所定の重量に達した時点で、受け台上のごみを炉内に投入する装置とを設けており、この装置によるごみの投入間隔が所定のペースになるようにプッシャー速度を調整し、ごみ供給量を制御する。
【0006】
特許文献2では、ホッパーに投入されたごみ重量を測定するために乾燥火格子の下側にごみ重量測定装置を設置しており、ごみ重量が所定の割合で減少するように給じん装置速度を調整し、ごみ供給量を一定に制御する。
【0007】
特許文献3では、ごみ投入クレーンのごみ荷重計と、ホッパー内のごみの表面高さを測定するレベル計とからごみの嵩密度を求め、ごみ表面のレベル降下速度と嵩密度とから現在の給じん装置速度(燃焼ペース)を算出し、給じん装置速度が目標焼却速度と一致するようにフィーダー送り速度を調節する。
【0008】
特許文献4では、操作量と制御量と目標値との関係から、その時点の状態に対して、無理な目標値が設定されていると判断された場合には、安定制御可能な領域へ目標値を変更する。
【0009】
【特許文献1】
特公平2−27568号公報
【特許文献2】
特開昭63−113215号公報
【特許文献3】
特開平9−170736号公報
【特許文献4】
特開平11−325433号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1,2では、通常のごみ供給装置に加えて、ごみ重量を測定するための装置を高温部に設置しなければならず、給じん装置や乾燥火格子の構造を複雑化、大型化せざるをえない。したがって、重量測定装置やその周辺機構の保守が容易ではなく、実用化が困難であった。上記特許文献1では、受け台上のごみ重量を元に供給量を制御しているため、プッシャーで押し出したごみが受け台上にうまくのらなかった場合、供給量に誤差が生じることにもなる。
【0011】
特許文献3でも、通常のごみ供給装置に加えて、ごみの表面高さを測定するレベル計が必要であり、また、ごみの性質上、ホッパー内のごみ高さは液面のように一定にはならず、高さ方向にどうしても偶発的なむらが生じるため、測定値に無視できない誤差が生じるおそれがある。さらに、ホッパー内に舞う紙くずや粉塵のため、正確にごみ表面を測定できない場合もあり、環境上どうしてもレベル計のセンサ表面に汚れが付着するため定期的な保守もかかせない。
【0012】
また、ごみ処理炉には、ボイラ蒸気発生量や炉内各温度などを制御するために、給じん装置速度等を自動操作するケースも多い。このとき、ボイラ蒸気発生量や炉内各部温度などの制御目標値は、オペレータが手動で設定したり、特許文献4のように、自動的に制御目標値を安定な領域に設定したりしている。例えば手動で蒸気発生量の制御目標値を設定する場合、そのときのごみ質とは矛盾する制御目標値を設定すると、投入負荷が多すぎたり、少なすぎたりして、炉の燃焼を不安定な状態にしてしまうおそれがある。熱容量の小さな小型の炉では、制御目標値を設定するのが特に難しい。
【0013】
ここで、もし処理量の目標値に応じて、ボイラ蒸気発生量や炉内各部温度などの制御目標値を設定するとすれば、従来の制御系の構造を変えることなしに、処理量目標値を達成できるようになる。また、ごみを定格処理量処理する際、想定範囲のごみ質であれば、炉の状態が安定するように設計されているため、およそ定格処理量となるようにボイラ蒸気発生量や炉内各部温度などの制御目標値を設定すれば、安定した制御が実現できるとともに、処理量を制御できる。
【0014】
本発明は以上のような従来の廃棄物処理方法における課題を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、特別な測定装置を設けることなく、廃棄物処理量を制御できることである。さらに好ましくは、処理量目標値に基づいて、既存制御系の制御目標値を定め、既存制御系の安定化と、処理量目標値の管理をともにできることである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
ところで、特許文献1〜3のような特別な測定装置を備えない限り、給じん装置によって炉内に投入される廃棄物量を直接測定する手段はない。しかし、炉内に投入された廃棄物量と相関のあるデータであって、その測定が可能なデータ(できれはその測定が容易なデータであることが好ましい。)があれば、特別な測定装置を設けなくとも現在投入されている廃棄物重量を推定することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、給じん装置から投入される廃棄物に所定の処理を施す廃棄物処理炉の制御方法において、廃棄物処理量と相関を持つ他のデータを測定する第一ステップと、予め設定しておいた廃棄物処理量と他のデータとの関係を示す関数に、予め設定された廃棄物処理量の目標値を代入することよって、当該廃棄物処理量の目標値に対応する他のデータを推定する第二ステップと、他のデータの測定値と、他のデータの推定値とが一致するように、給じん装置による廃棄物投入量を操作する第三ステップとを備えたことを特徴とする廃棄物処理炉の制御方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、給じん装置から投入される廃棄物に所定の処理を施す廃棄物処理炉の制御装置において、廃棄物処理量の目標値を設定する設定手段と、廃棄物処理量と相関を持つ他のデータを測定する測定手段と、予め設定しておいた廃棄物処理量と他のデータとの関係を示す関数に、廃棄物処理量の目標値を代入することよって、当該廃棄物処理量の目標値に対応する他のデータを推定する推定手段と、他のデータの測定値と、他のデータの推定値とが一致するように、給じん装置による廃棄物投入量を操作する操作手段とを備えたことを特徴とする廃棄物処理炉の制御装置を提供するものである。
【0021】
これらの構成によれば、もともと廃棄物処理炉に炉内温度やボイラ蒸気発生量を安定化させる制御システムなどの既存の制御系が存在する場合には、他のデータとして、炉内温度や蒸気発生量などの制御量を関数の変数に組み込む。例えば、ボイラ蒸気発生量を安定化させる制御システムが存在する場合には、予め設定された廃棄物処理量の目標値(或いは蒸気発生量以外の値)を関数に代入することによって、廃棄物処理量の目標値に対応する蒸気発生量の値が推定される。この値を、蒸気発生量を安定化させる制御システムの目標値として設定する。すると、蒸気発生量の目標値と蒸気発生量の推定値とが一致するように、給じん装置による廃棄物投入量が操作されるので、蒸気発生量が安定化するとともに、従来のように廃棄物処理量の測定のための特別の装置を設けることなく、廃棄物処理量も目標値付近に制御されることになる。
【0022】
ここで、請求項2記載の発明のように、廃棄物処理量の実績値に基づいて廃棄物処理量の目標値を補正することとしてもよい。その際、例えば一定期間ごとに、廃棄物処理量の目標値と、それまでに処理した廃棄物重量の実績値とを比べて、残り時間で処理すべき量を計算し、これを新たな廃棄物処理量の目標値とすることによって、より確実にこの廃棄物処理量の目標値を達成することができるようになる。一般に、廃棄物投入クレーンには、ホッパーに投入する廃棄物重量を測定するための廃棄物重量測定装置がもともとついており、投入した廃棄物重量を積算することによって、一日の廃棄物処理量等を測定しているので、特別の測定装置を追加する必要はない。
【0023】
しかし、廃棄物処理量の推定値と廃棄物処理量の実績値との間には、誤差が存在するため、極端な場合には、この誤差が一日の処理量としては大きくずれてしまう可能性がある。
【0024】
そこで、請求項3記載の発明のように、前記関数に、他のデータの測定値を代入することよって、当該他のデータの測定値に対応する廃棄物処理量を推定するステップをさらに実施するとともに、このステップにより求められる廃棄物処理量の推定値と廃棄物処理量の実績値とに基づいて廃棄物処理量の目標値をさらに補正してもよい。また、請求項4記載の発明のように、廃棄物処理量の実績値と廃棄物処理量の推定値とに基づいて関数を補正することとしてもよい。その際、一定期間ごとに推定値と実績値との差を元に、関数を補正して推定精度をオンラインで向上させることとすればよい。
【0025】
ところで、処理量と他のデータとの関係を関数ではなく、テーブルにしてもよいが、テーブルの場合、各升目を等しく埋めるための十分なデータ数を確保しなければならないといった問題がある。例えば、縦軸を蒸気発生量、横軸を廃棄物カロリー推定値、各升目にそのときの処理量を記入する場合、各升目を埋めるためには相当数の実績データが必要となる。空いている升目を補間計算するにしても、個々の升目の実績値とN数のばらつきが大きく、信頼性のある計算ができない。そこで、理論的な知見から関数を固定し、実績データを用いて、最適化計算(最小自乗法、二次計画法など)により関数の係数を求めることがよい。その場合、式の形を、処理量=f(x1,x2,x3,・・・)とし、処理量の推定誤差が最小となるように関数の係数を決定する必要がある。
【0026】
すなわち、請求項5記載の発明のように、関数の形を下記のようにパラメータに関して線形表現し、最適化計算によって、関数のパラメータを定めることとすればよい。
【0027】
ただし、廃棄物処理量=ΘTX、
Θ=[θ0 θ1 θ2・・・θN ]T はパラメータ、
X=[ 1 x1 x2・・・xN ]T は変数、
Nは自然数である。
【0028】
例えば請求項6記載の発明のように、関数の変数として、少なくともごみカロリーと、他のデータとを含むこととしてもよいし、請求項7記載の発明のように、他のデータとして、少なくとも蒸気発生量を含むこととしてもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るごみ処理炉まわりの概略構成を示したものであり、廃棄物処理炉としてのごみ処理炉10は、給じん装置1から投入される廃棄物としてのごみを熱分解ガス化する流動床炉2と、それにより発生する熱分解ガスを燃焼溶融する溶融炉3とを備えている。
【0030】
図1において、ごみ処理場に収集されてきたごみは一旦、図示しないごみピットに貯留され、図示しないクレーンによって給じん装置1のホッパに投入される。給じん装置1は、例えばスクリューコンベヤ式のものであって、ごみを定量的にガス化炉としての流動床炉2に供給する。この供給量は、給じん装置1のスクリュー回転数に基づいて検出される。
【0031】
流動床炉2では、例えば空気比0.2〜0.4の条件で部分燃焼が行われ、砂層温度を500〜600℃に維持した低温熱分解ガス化が行われる。そして投入されたごみのうち炉床最下部2aからは不燃物が抜き出され、この不燃物以外はすべて流動床炉2に直結(下流側に)された溶融炉3に導かれる。流動床炉2の炉床下部2bには、一次空気(押込空気)が供給される。
【0032】
流動床炉2で発生した灰分を含む熱分解ガスは溶融炉3に導かれ、後述する空気比の条件下でさらに燃焼される。この溶融炉3では約1300℃の高温燃焼が行われ、灰分を溶融してスラグとして分離して溶融炉下部3aから排出するとともにダイオキシン等のガス中の有害物質が分解される。また溶融炉3には、上記一次空気が供給されるとともに、二次空気が供給される(3b,3b)。溶融炉3の図示しないバーナには必要に応じて補助燃料が供給される。
【0033】
この溶融炉排ガスは、廃熱ボイラ4で熱回収され、以下は図示しないが、さらに冷却室で温度が下げられ、バグフィルタで除塵される。浄化された排ガスは次いで誘引送風機を経て、煙突から排出される。廃熱ボイラ4の蒸気ドラム6aからの蒸気は蒸気弁4bを介して外部に取り出される。
【0034】
本実施形態1では、さらに図2に示すようなごみ処理量補償系を備えており、以下、その内容を詳述する。ごみ処理量補償系は、ごみカロリー演算部11と、ごみ処理量目標値設定部(設定手段に相当する。)12と、ごみ処理量制御部(測定手段、推定手段、操作手段に相当する。)13とを備え、これらの要素によって図1に示したごみ処理炉10を制御するようになっている。なお、各要素は、例えば図示しない制御装置に組み込まれたプログラム等によって具体化されており、その動作により本実施形態1に係る制御方法が実行される。
【0035】
図2において、ごみカロリー演算部11は、ごみ処理量と相関のある他のデータを含む各種測定データから物質・熱収支計算によって現在のごみカロリーを計算するものである。ごみカロリーを計算する方法は公知である(例えば、特開昭55−160219号公報、特開昭57−43114号公報等参照)。
【0036】
ごみ処理量目標値設置部12は、オペレータが図示しない監視制御装置(DCS)の画面上でごみ処理量の目標値[t/day]を設定し、この目標値を実績値や推定値に基づいて自動的に補正し、或いは、オペレータが目標値を随時変更することができるようになっている。この目標値の変更の際には、DCS画面上でのボタン操作等により、ごみ処理量目標値設置部12は、目標値の設定変更の要否判断を行う。なお、目標値の補正方法については後述する。
【0037】
ごみ処理制御部13は、ごみ処理炉10からの各種測定データを取り込み、ごみ処理量と他のデータとの関係を示す関数を用いて、給じん装置速度などの制御を行うものである。なお、関数は予め設定されて、図示しないメモリに記憶されているが、一定期間ごとにごみ処理量の推定値と実績値とに基づいて関数を補正して推定精度をオンラインで向上させるようにしている。なお、関数の補正方法についても後述する。
【0038】
ここで、関数の求め方を述べる。まず、ごみ投入量(ごみ処理量)と相関をもち、かつ測定が容易な他のデータの1つとして蒸気発生量があげられる。蒸気発生量は、ごみ処理量だけでなくごみカロリーにも依存する。これらの関係は、理論的な見地から簡単化すると、以下のような関数で表現できる。ただし、a,b,c1,c2,c3,・・・は係数(パラメータ)である。
【0039】
蒸気発生量=a×(ごみ処理量×ごみカロリー)+・・・ (1)式
となる。(1)式を、ごみ処理量が左辺にくるように変形すると、
ごみ処理量=b×(蒸気発生量/ごみカロリー)+その他の項 (2)式
となる。ここで、かりにその他の項が、測定データから計算される値1,値2,値3,・・・に対して、
その他の項=c1×値1+c2×値2+c3×値3+・・・ (3)式
というような一次線形結合で表すことができるとすると、(2)式は係数c1,c2,c3・・・に対して線形となり、実データに基づいた重回帰計算(最小自乗法)によって各係数の値を求めることができる。
【0040】
ここで、(1)式を(2)式に変換したのは、重回帰計算において、ごみ処理量の推定誤差を最小にする関数が求まるようにするためである。なお、(2)式を簡単化して、以下のようにしてもよく、必ずしも上記のように、係数c1,c2,c3・・・に関して線形の式である必要はない。ただし、d,eも係数である。
【0041】
ごみ処理量=d×蒸気発生量+e×ごみカロリー+その他の項 (4)式
最終的には、推定精度や式構造の簡単さを考慮して、採用する関数を決定する。例として(4)式の構造の関数を使って計算した処理量推定値[t/day]と処理量実績値[t/day]との関係を図3に示す。同図中の○印は各計算値をプロットしたものであり、実線はそれらの回帰直線である。ここでは、重回帰に使用するデータ数を増やすため、それぞれ4時間分のデータを6倍して、一日の処理量データとした。その他の項の選び方によって,(4)式のような構造でも、重相関係数は約0.85となり、この関数でもおよそのごみ処理量を推定できることがわかる。
【0042】
なお、ごみ処理量を推定する関数を求めるときに、係数に制約条件を設定したような場合には、例えば二次の目的関数を伴った最小化問題の解法である周知の二次計画法を用いればよい。また、上記関数は一般化すると、ごみ処理量=ΘTXで表現できる。ただし、Θ=[θ0 θ1 θ2・・・θN ]T はパラメータベクトル、X=[ 1 x1 x2・・・xN ]T は変数、Nは自然数である。
【0043】
引き続き、本実施形態1のごみ処理量制御補償系の動作について説明する。図4はその動作フローを示す。
【0044】
図4において、まず、ごみ処理量目標値設定部11がごみ処理量の目標値を設定する(ステップS1)。ついで、この目標値を達成するために、残りの時間の処理ペースを計算する(ステップS2)。例えば朝8時から翌朝8時までの処理量を管理する場合には、
処理ペース[t/day]=(ごみ処理量の目標値[t/day]−朝8時からのごみ処理量の実績値の合計[t/day])×24[h]/残り時間[h] (5)式
となる。ごみ処理量の実績値は図示しないごみ投入クレーンで測定した値(ごみ重量)を用いればよい。一般に、ごみ投入クレーンには、給じん装置1のホッパーに投入するごみ重量を測定するためのごみ重量測定装置がもともとついており、投入したごみ重量を積算することによって、一日のごみ処理量等を測定しているので、特別の測定装置を追加する必要はない。
【0045】
なお、24時間単位で処理量をきっちり管理するのではなく、あくまで処理ペースを目安としてごみ処理量の目標値を設定したい場合には、
処理ペース=ごみ処理量の目標値 (6)式
とすればよい。
【0046】
ついで、処理ペースを後述する補正係数Δ(初期値1.0)で割って、処理ペースを補正する(ステップS3)。
【0047】
処理ペース補正値=処理ペース/Δ (7)式
ごみ処理量制御部13は、この処理ペース補正値と、(4)式で示した関数によって推定された給じん量とが一致するように給じん装置の操作量を計算する(ステップS4)。ここでは、例えばPI制御ロジックを用いて、処理ペースの補正値と、給じん量の推定値とが一致するように、給じん装置1の操作量である給じん装置速度を求める。
【0048】
給じん装置速度=Gp×E+Gi×∫Edt (8)式
ここで、E=処理ペースの補正値−給じん量の推定値、Gpは比例ゲイン、Giは積分ゲインである。
【0049】
給じん装置1は、上記ステップS4で求めた給じん装置速度に基づいて、廃棄物を投入する(ステップS5)。
【0050】
ここで、ごみ処理量目標設定部12は、オペレータによるDCS画面上でのボタン操作等により、ごみ処理量の目標値を設定しなおすか否かを判断する(ステップS6)。そして、ごみ処理量の目標値を設定しなおすものと判断されると、ステップS1に戻る。
【0051】
一方、ごみ処理量の目標値を設定しなおさないものと判断されると、ごみ処理量制御部13は、ごみカロリー演算部11によって計算したごみカロリーと、実際の蒸気発生量の測定値と、その他の項の値とを(4)式で示した関数に代入し、現制御周期におけるごみ処理量の推定値を計算する(ステップS7)。それぞれの値の移動平均値等を代入してもよい。
【0052】
そして、計算したごみ処理量を積算することによって、例えば1時間単位のごみ処理量[t/h]を算出する。例えば1時間単位でごみ投入クレーンにより投入されたごみを積算し、これを1時間で投入されたごみ重量実績値[t/h]とみなす。そして、上記ステップS7で求めた1時間単位のごみ処理量の推定値との比を補正係数δとして(ステップS8)、ステップS3に戻る。
【0053】
δ=ごみ重量の実績値/ごみ重量の推定値 (9)式
さらに、この補正係数δを平滑化した値を、補正係数Δとして更新する。
【0054】
Δk+1=(1−α)×δ+α×Δk 0≦α<1 (10)式
なお、kは自然数である。
【0055】
そして、図示しない停止命令を受けるまで、以上をくり返すことによって、目標処理量を達成することができる。ここでは、単に関数による推定値を使うだけでなく、補正係数Δによって推定誤差をフィードバックして廃棄物処理量の目標値さらには関数自体までをも補正している。特に、24時間単位で処理量を管理する場合には、ステップS2によって、その時間までの処理実績量の合計値がさらにフィードバックされているので、確実に目標処理量を達成できる。
【0056】
すなわち、本実施形態1によれば、ごみ処理量を設定値通りにするために、ごみ処理量と他のデータとの関係を表す関数を構築し、現在の給じん量を推定しているため、従来のように、新たな測定装置を必要としない。このため、処理量制御を実現・維持するための時間・コスト・労力を大幅に削減できる。また、関数による推定と、実績値のフィードバックによって、ごみ質の変化に対する即応・追従性能と、処理量管理精度の両方をともに向上させることができ、確実にごみ処理量を制御することができる。
【0057】
図5にこのアルゴリズムを使った2週間分の実操業データを示す。同図中、横軸は日数[day]、縦軸は処理量[t/day]であって、●印でごみ処理量の目標値、▲印でごみ処理量の実績値をそれぞれプロットしている。これから明らかなように、ごみ処理量の目標値に対して、±0.5[t/h]以内に実際のごみ処理量を制御できている。操業管理には、十分すぎるほどの精度でごみ処理量を制御できており、本発明の有効性が確認できた。
【0058】
なお、上記において、推定値がある範囲に入ることを補償するために、リミッタを設けてもよい。また、厳密には、ごみ投入クレーンによってホッパーに投入されたごみと、給じん装置1で流動床炉3内に投入されたごみには、時間的なずれによる誤差が存在する。しかし,フィードバック機能によってこの誤差は補償されるため、この誤差は無視してもよい。もちろん、ステップS8で補正係数δを計算する際、この時間的なずれを考慮してもよい。
【0059】
また、関数を求める際に実績データは多いほどよいが、データが少なくても関数の精度を向上させることができる。例えば理論的な知見に基づいて各係数に制約条件を設け、上記二次計画法によって係数を最適化すればよい。さらに、逐次最小自乗法などのオンライン学習によって、実績データを蓄積しながら、モデル精度を改善していく方法もある。
【0060】
さらに、ステップS3で、「処理ペース補正値=処理ペース−補正係数Δ」とし、ステップS8で、「補正係数δ=ごみ重量実績値−ごみ重量推定値」としてもよい。
【0061】
さらに、関数は1つである必要はなく、複数の関数を使ってもよく、連立方程式によって処理量推定値を求めてもよい。
【0062】
さらに、ごみ処理炉10としては、流動床炉2と溶融炉3との組み合わせたガス化溶融炉以外の炉形式のものであってもよい。
【0063】
(実施形態2)
本実施形態2のごみ処理炉10の構成は、上記実施形態1のものとまったく同様であるので、その説明は省略し、以下では、図6を参照してごみ処理量補償系の構成を説明する。図6はその機能ブロック図であり、本実施形態2のごみ処理量補償系は、ごみカロリー演算部11と、ごみ処理量目標値設定部(設定手段に相当する。)12と、ごみ処理量制御部(測定手段、推定手段に相当する。)13aと、蒸気発生量制御システム(操作手段に相当する。)14とを備え、これらの要素によって図1に示したごみ処理炉10を制御するようになっている。なお、各要素は、例えば図示しない制御装置に組み込まれたプログラム等によって具体化されており、その動作により本実施形態2に係る制御方法が実行される。
【0064】
図6において、ごみ処理制御部13aは、ごみ処理量と他のデータとの関係を示す関数を用いて、他のデータの1つとしての蒸気発生量の目標値を推定するものである。なお、関数は予め設定されて、図示しないメモリに記憶されているが、ここでも、一定期間ごとにごみ処理量の推定値と実績値とに基づいて関数を補正して推定精度をオンラインで向上させるようにしている。
【0065】
蒸気発生量制御システム14は、蒸気発生量の目標値と実際の蒸気発生量が一致するように給じん装置速度を含む操作量を操作するものである。
【0066】
ごみカロリー演算部11、ごみ処理量目標値設置部12については、上記実施形態1のものと同様であるので、その説明は省略する。
【0067】
引き続き、本実施形態2のごみ処理量制御補償系の動作について説明する。図7はその動作フローを示す。
【0068】
図7において、ステップS11〜S13は、上記実施形態1のステップS1〜S3と同様である。
【0069】
本実施形態2では、上記ステップS13に引き続き、ごみ処理制御部13aは、処理ペース補正値と、(4)式で表された関数のごみ処理量の項に代入し、さらに、ごみカロリーとその他の項の値をこの関数に代入して(それぞれの値の移動平均値等を代入してもよい)、蒸気発生量の値を計算する(ステップS14)。このステップS14で求めた蒸気発生量の値を、蒸気発生量制御系の目標値として設定し、制御操作を続ける(ステップS15)。
【0070】
ここで、ごみ処理量目標設定部12は、オペレータによるDCS画面上でのボタン操作等により、ごみ処理量の目標値を設定しなおすか否かを判断する(ステップS16)。そして、ごみ処理量の目標値を設定しなおすものと判断されると、ステップS11に戻る。
【0071】
一方、ごみ処理量の目標値を設定しなおさないものと判断されると、ごみ処理量制御部13aは、ごみカロリー演算部11によって計算したごみカロリーと、実際の蒸気発生量の測定値と、その他の項の値とを(4)式で示した関数に代入し、現制御周期におけるごみ処理量の推定値を計算する(ステップS17)。それぞれの値の移動平均値等を代入してもよい。
【0072】
そして、計算したごみ処理量を積算することによって、例えば1時間単位のごみ処理量[t/hr]を算出する。例えば1時間単位でごみ投入クレーンにより投入されたごみを積算し、これを1時間で投入されたごみ重量実績値[t/hr]とみなす。上記ステップS17で求めた1時間単位のごみ処理量の推定値との比を補正係数δとして、さらにこの補正係数δを平滑化した値を、補正係数Δとして更新し(ステップS18)、ステップS13に戻る。
【0073】
そして、図示しない停止命令を受けるまで、以上をくり返すことによって、目標処理量を達成するための蒸気発生量の目標値が設定されることになり、ごみ処理量を制御できるとともに、蒸気発生量も安定化できる。ここでは、単に関数による推定値を使うだけでなく、補正係数Δによって誤差をフィードバックしており、特に、24時間単位で処理量を管理する場合には、ステップS12によって、その時間までの処理実績量合計値がさらにフィードバックされており、確実に処理量を達成できる。
【0074】
すなわち、本実施形態2によれば、ごみ処理量を設定値通りにするために、ごみ処理量と他のデータとの関係を表す関数を構築し、現在の給じん量を推定しているため、従来のように、新たな測定装置を必要としない。このため、処理量制御を実現・維持するための時間・コスト・労力を大幅に削減できる。また、関数による推定と、実績値のフィードバックによって、ごみ質の変化に対する即応・追従性能と、処理量管理精度の両方をともに向上させることができ、確実にごみ処理量制御することができる。
【0075】
また従来の制御系では目標値を調整することでごみ処理量を制御していたが、その制御系との整合性もよい。すなわち、従来は、負荷が多すぎたり、逆に少なすぎたりして、ごみ処理炉を不安定な状態としかねないものであった。しかし、ごみ処理炉はもともと定格処理量付近で極力安定するように設計されているので、この実施形態2のように、従来の制御系の目標値をおよそ定格処理値から計算される値にすれば、ごみ処理炉を安定領域に維持することができる。
【0076】
図8にこのアルゴリズムを使った2週間分の実操業データを示す。同図中、横軸は日数[day]、縦軸は処理量[t/day]であって、●印でごみ処理量の目標値、▲印でごみ処理量の実績値をそれぞれプロットしている。これから明らかなように、処理目標値に対して、±0.5[t/h]以内に実際の処理量を制御できている。操業管理には、十分すぎるほどの精度でごみ処理量を制御できており、本発明の有効性が確認できた。
【0077】
また、このときの蒸気発生量や炉内の温度変動(12時間分)を図9に示す。同図(a)中、横軸は時間[hr]、縦軸は蒸気発生量[t/hr]であって、太線で蒸気発生量の実測値、細線で蒸気発生量の目標値をそれぞれプロットしている。同図(b)中、横軸は時間[hr]、右側縦軸は溶融炉温度[℃]、左側縦軸は砂層温度[℃]であって、太線で溶融炉温度の実測値、破線で砂層温度の実測値をそれぞれプロットしている。これから明らかなように、ごみ質に応じて、蒸気発生量の目標値が調整されているとともに、蒸気発生量自体も安定化できており、さらに、炉内各部温度も安定化できていることがわかる。したがって、ごみ質に応じた適切な負荷を供給できていることが確認できた。
【0078】
なお、上記において、推定値がある範囲に入ることを補償するために、リミッタを設けてもよい。また、定める目標値は、必ずしも蒸気発生量である必要はない。また、厳密には、ごみ投入クレーンによってホッパーに投入されたごみと、給じん装置で炉内に投入されたごみには、時間的なずれによる誤差が存在する。しかし,フィードバック機能によってこの誤差は補償されるため、この誤差は無視してもよい。もちろん、ステップS18で補正係数δを計算する際、この時間的なずれを考慮してもよい。
【0079】
また、関数を求める際に実績データは多いほどよいが、データが少なくても関数の精度を向上させることができる。例えば理論的な知見に基づいて各係数に制約条件を設け、二次計画法によって係数を最適化すればよい。さらに、逐次最小自乗法などのオンライン学習によって、実績データを蓄積しながら、モデル精度を改善していく方法もある。
【0080】
さらに、ステップS13で、「処理ペース補正値=処理ペース−補正係数Δ」とし、ステップS18で、「補正係数δ=ごみ重量実績値−ごみ重量推定値」としてもよい。
【0081】
さらに、関数は1つである必要はなく、複数の関数を使ってもよく、連立方程式によってごみ処理量の推定値を求めてもよい。
【0082】
さらに、ごみ処理炉10としては、流動床炉2と溶融炉3との組み合わせたガス化溶融炉以外の炉形式のものであってもよい。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、廃棄物処理量を設定値通りにするために、処理量と他のデータとの関係を表す関数を構築し、現在の給じん量を推定しているため、従来のように、新たな測定装置を必要としない。したがって、処理量制御を実現・維持するための時間・コスト・労力を大幅に削減できる。また、関数による推定と、実績値のフィードバックによって、廃棄物性状の変化に対する即応・追従性能と、処理量管理精度の両方をともに向上させることができ、確実に廃棄物処理量の制御を行うことができる。
【0084】
さらに、もともと廃棄物処理炉にボイラ蒸気発生量を安定化させる制御システムなどが存在する場合には、他のデータとして、蒸気発生量などの制御量を関数の変数に組み込むことで、蒸気発生量などを安定化させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のごみ処理炉まわりの概略構成を示した図である、
【図2】実施形態1によるごみ処理量補償系の機能ブロック図である。
【図3】処理量推定値と処理量実績値との関係を示す図である。
【図4】実施形態1によるごみ処理量補償系の動作フローを示す。
【図5】実施形態1のアルゴリズムを使った2週間分の実操業データを示す図である。
【図6】実施形態2によるごみ処理量補償系の機能ブロック図である。
【図7】実施形態2によるごみ処理量補償系の動作フローを示す。
【図8】実施形態2のアルゴリズムを使った2週間分の実操業データを示す図である。
【図9】図8における蒸気発生量と炉内温度の変動(12時間分)を示す図である。
【符号の説明】
1 給じん装置
2 流動床炉
3 溶融炉
6 廃熱ボイラ
10 ごみ処理炉(廃棄物処理炉に相当する。)
11 ごみカロリー演算部
12 ごみ目標値設定部(設定手段に相当する。)
13 ごみ処理量制御部(測定手段、推定手段、操作手段に相当する。)
13a ごみ処理量制御部(測定手段、推定手段に相当する。)
14 蒸気発生量制御システム(操作手段に相当する。)
Claims (8)
- 給じん装置から投入される廃棄物に所定の処理を施す廃棄物処理炉の制御方法において、
廃棄物処理量と相関を持つ他のデータを測定する第一ステップと、
予め設定しておいた廃棄物処理量と他のデータとの関係を示す関数に、予め設定された廃棄物処理量の目標値を代入することによって、当該廃棄物処理量の目標値に対応する他のデータを推定する第二ステップと、
他のデータの測定値と、他のデータの推定値とが一致するように、給じん装置による廃棄物投入量を操作する第三ステップとを備えたことを特徴とする廃棄物処理炉の制御方法。 - 廃棄物処理量の実績値に基づいて廃棄物処理量の目標値を補正することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理炉の制御方法。
- 前記関数に、他のデータの測定値を代入することによって、当該他のデータの測定値に対応する廃棄物処理量を推定するステップをさらに含み、
このステップにより求められる廃棄物処理量の推定値と廃棄物処理量の実績値とに基づいて廃棄物処理量の目標値をさらに補正することを特徴とする請求項2記載の廃棄物処理炉の制御方法。 - 前記関数に、他のデータの測定値を代入することによって、当該他のデータの測定値に対応する廃棄物処理量を推定するステップをさらに含み、
このステップにより求められる廃棄物処理量の推定値と廃棄物処理量の実績値とに基づいて関数を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物処理炉の制御方法。 - 廃棄物処理量と他のデータとの関係を示す関数の形を下記のようにパラメータに関して線形表現し、最適化計算によって、この関数のパラメータを定めることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の廃棄物処理炉の制御方法。
ただし、廃棄物処理量=Θ T X、
Θ=[θ 0 θ 1 θ 2 ・・・θ N ] T はパラメータ、
X=[ 1 x 1 x 2 ・・・x N ] T は変数、
Nは自然数である。 - 上記関数の変数として、少なくともごみカロリーと、他のデータとを含むことを特徴とする請求項5記載の廃棄物処理炉の制御方法。
- 他のデータとして、少なくとも蒸気発生量を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の廃棄物処理炉の制御方法。
- 給じん装置から投入される廃棄物に所定の処理を施す廃棄物処理炉の制御装置において、
廃棄物処理量の目標値を設定する設定手段と、
廃棄物処理量と相関を持つ他のデータを測定する測定手段と、
予め設定しておいた廃棄物処理量と他のデータとの関係を示す関数に、廃棄物処理量の目標値を代入することよって、当該廃棄物処理量の目標値に対応する他のデータを推定する推定手段と、
他のデータの測定値と、他のデータの推定値とが一致するように、給じん装置による廃棄物投入量を操作する操作手段とを備えたことを特徴とする廃棄物処理炉の制御装置。
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