JP5675519B2 - 二次電池用負極,二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池およびそれらの製造方法 - Google Patents

二次電池用負極,二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二次電池用負極,二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池およびそれらの製造方法に関する。
リチウムイオン電池などの二次電池は、環境問題の観点から、電気自動車用や電力貯蔵用の電池として注目されている。鉛電池,ニッケルカドミウム電池よりも軽量であること、高出力と高エネルギー密度といった特性を持ち合わせており、近い将来期待されている。
しかしながら、従来のリチウムイオン電池は、電池特性をさらに向上することを求められている。例えば、電極材の改良として、性質の異なる2層以上の合剤層を用いた二次電池用負極を製造することが提案されている(特許文献1,2)。その他の従来技術として、特許文献3が挙げられる。
特開2009−064574号公報 特開2010−108971号公報 特開2004−179005号公報
特許文献1は複数種の負極活物質を用い、負極集電体に近い側の第一の負極層、遠い側に高い充電レート特性の第二の負極層、特許文献2は集電体の上に炭素粒子と結着剤を混合してなる導電性接着剤層を形成し、さらに、その導電性接着剤層の上に電極活物質,導電剤および結着剤とを混合してなる電極組成物層を形成した負極の発明を開示しており、電池特性を改善させることを目的としている。
本発明の対象としている負極は、リチウムイオンを挿入離脱可能な活物質と、導電剤とポリフッ化ビニリデン(PVDF;Poly(vinylidene fluoride))系やスチレンブタジエンゴム(SBR;Styrene Butadiene Rubber)などのバインダと有機溶媒または水を調製,混合,撹拌した負極スラリを、ドクターブレード法などによって銅などの集電体シートへ付着させた後、加熱して有機溶媒を乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形することにより、作製することができる。
しかし、活物質と導電剤では、炭素粒子の粒径,比表面積などの物性がそれぞれ異なる場合があり、さらに、炭素粒子表面の被覆有無などにより、同じ原材料から製造されても異なる性質を有することがある。このため、塗工した合剤層は必ずしも均一な形態になるとは限らない。
得られた負極の合剤層を走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)で観察すると、活物質粒子と導電剤粒子とバインダの状態を確認することができる。合剤層断面では、活物質の複数の粒子の間に導電剤の凝集体が付着した形相、活物質の複数の粒子の間隙に導電剤の凝集体が主に局在した形相などがある。また、バインダは一般的に高抵抗な材料であるので、電池の集電体と活物質の粒子との界面に多くのバインダが介在する場合、合剤層表面の活物質の複数の粒子の上にバインダが多く介在する場合、あるいは活物質の粒子同士の間に多く介在する場合は、活物質間の間に電導阻害が起き、合剤層の内部抵抗が高くなり、レート特性が低下してしまう問題が生じる。
このように導電剤の凝集,バインダのムラ等の問題が発生すると、充放電容量低下だけでなく、集電体からの活物質,導電剤粒子の脱落,電流の不均一化等になりやすくなり、電池品質の信頼性が低下してしまう。
このような状況において、電池の高容量化,健全かつ強力な導電性ネットワークの形成をした負極が強く求められている。
本発明は、上記の課題を解決し、レート特性が向上し、不可逆容量の増加を抑制できる非水電解質二次電池を提供することにある。特に、リチウムイオン電池の高容量化を目的としている。
本発明が解決しようとする課題は、以下に示した手段により解決される。ここで、非水電解質二次電池とは、リチウムイオンの挿入離脱可能な正極と負極及びこれらを分離する多孔質フィルムからなる非水電解質二次電池を代表例とし、他のアルカリ金属イオンを利用する二次電池にも適用可能とする。
(1)集電体の上に形成される負極合剤層を有する非水電解質二次電池用負極であって、負極合剤層は、負極下層合剤層および負極上層合剤層で構成され、集電体の上に負極下層合剤層が形成され、負極下層合剤層の上に負極上層合剤層が形成され、負極下層合剤層は、負極活物質を含み、負極上層合剤層は、導電剤およびバインダを含み、導電助剤およびバインダは、負極上層合剤層の表面側に偏在している非水電解質二次電池用負極。
(2)上記において、負極上層合剤層は、負極活物質を含み、負極上層合剤層中の負極活物質の含有量は負極上層合剤層中の導電剤の含有量より多い非水電解質二次電池用負極。
(3)上記において、負極合剤層中の導電剤の含有量は1wt%以上6wt%以下である非水電解質二次電池用負極。
(4)上記において、負極上層合剤層の膜厚は負極下層合剤層の膜厚より大きい非水電解質二次電池用負極。
(5)上記において、負極合剤層中のバインダの含有量は0.5wt%以上2.0wt%以下である非水電解質二次電池用負極。
(6)上記において、負極下層合剤層の厚さは、集電体の表面粗さの2倍以上である非水電解質二次電池用負極。
(7)上記において、負極合剤層の膜厚方向において、集電体および負極合剤層の界面から負極合剤層の表面に向かう距離を 2 、負極合剤層の膜厚方向において、負極合剤層の表面から集電体および負極合剤層の界面に向かう距離を 1 、とした時、0≦ 2 ≦10μmにおける負極合剤層中の導電剤およびバインダの平均面積比率が、0≦ 1 ≦10μmにおける負極合剤層中の導電剤およびバインダの平均面積比率の2倍以上である非水電解質二次電池用負極。
(8)上記において、負極合剤層に増粘剤が含まれる非水電解質二次電池用負極。
(9)上記の非水電解質二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池。
(10)上記の非水電解質二次電池を複数用いた電池モジュール。
(11)集電体の上に形成される負極合剤層を有する非水電解質二次電池用負極の製造方法であって、集電体の上に、負極活物質を含み、導電剤およびバインダを含まない負極下層合剤層を形成する工程と、負極下層合剤層の上に、導電剤およびバインダを含む負極上層合剤層を形成する工程と、を含み、導電助剤およびバインダは、負極上層合剤層の表面側に偏在している非水電解質二次電池用負極の製造方法。
本発明によれば、レート特性が向上し、不可逆容量の増加を抑制できる非水電解質二次電池を得ることができる。上記した以外の課題,構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
合剤層の構造図である。 本発明の一実施形態の合剤層厚み方向の第2の炭素およびバインダの面積比率(1)である。 比較例の合剤層厚み方向の第2の炭素およびバインダの面積比率(2)である。 本発明の一実施形態の合剤層厚み方向のバインダの面積比率(3)である。 本発明の一実施形態のコイン型リチウムイオン電池の断面図である。 本発明の一実施形態の円筒型リチウムイオン電池の構造図である。 本発明の一実施形態の円筒型リチウムイオン電池からなる電池モジュールである。 合剤層の分析エリアを示すである。 実施例1〜6および比較例1〜3のデータ表である。
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の実施例は本願発明の内容の具体例を示すものであり、本願発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、実施例を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
本発明は、非水電解質二次電池の高充放電容量化するためには、合剤層の集電体側にバインダを吸着しやすい高い比表面積の第2の炭素を可能な限り含有させないことにより成し遂げたものである。本発明による非水電解質二次電池は、リチウムイオンの挿入・離脱が可能な正極と負極と、正極と負極とを分離するセパレータと、電解液とを有する。以下、これらの要素について説明する。リチウムイオン以外にマグネシウムイオン,ナトリウムイオンなどの挿入・離脱が可能な正極と負極を用いても良い。以下では、非水リチウム二次電池について説明する。
まず、非水リチウム二次電池の正極について説明する。正極は、正極活物質,導電剤及びバインダからなる正極合剤層と、正極集電体とから構成される。
本発明によるリチウムイオン電池で使用可能な正極活物質は、リチウムを含有する酸化物からなる。リチウムを含有する酸化物としては、例えば、LiCoO2,LiNiO2,LiMn1/3Ni1/3Co1/32,LiMn0.4Ni0.4Co0.22のような層状構造を有する酸化物、LiMn24やLi1+xMn2-x4のようなスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、または、これらの酸化物においてMnの一部をAlやMg等の他の元素で置換したものを用いることができる。
正極活物質は一般に高抵抗であるため、導電剤として炭素粉末を混合することにより、正極活物質の電気伝導性を補っている。正極活物質と導電剤はともに粉末であるため、バインダを混合して粉末同士を結合させると同時に、この粉末層を合剤層として正極集電体へ接着させている。
導電剤には、天然黒鉛,人造黒鉛,コークス,カーボンブラック、または非晶質炭素などを使用することが可能である。導電剤の平均粒径を正極活物質粉末の平均粒径よりも小さくすると、導電剤が正極活物質粒子表面に付着しやすくなり、少量の導電剤によって正極の電気抵抗が減少する場合が多い。したがって、導電剤の材料は、正極活物質の平均粒径に応じて選択すれば良い。
正極集電体は、電解液に溶解しにくい材質であれば良く、アルミニウム箔が多用されている。
正極は、正極活物質,導電剤,バインダ、及び有機溶媒を混合した正極スラリを、ブレードを用いて集電体へ塗布する方法、すなわちドクターブレード法により作製することができる。集電体へ塗布した正極スラリを加熱して有機溶媒を乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形する。正極合剤層は、正極スラリの有機溶媒を乾燥させることにより、集電体上に作製される。このようにして、正極合剤層と集電体とが密着した正極を作製することができる。
負極は、負極活物質,導電剤及びバインダからなる負極合剤層と、負極集電体とから構成される。負極合剤層に、導電剤を使用しない場合もある。
本発明による非水リチウムイオン電池の負極活物質には、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出可能な黒鉛や非晶質炭素を利用可能であるが、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能であれば種類や材料に制限はない。使用する負極活物質は、一般に粉末状態で使用されることが多いので、バインダを混合して粉末同士を結合させると同時に、この負極活物質からなる層を合剤層として負極集電体へ接着させている。
第1の炭素は、負極活物質として用いられ、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料であり、例えば、天然黒鉛,人造黒鉛,非晶質炭素などを使用することが可能である。不可逆容量を減らすための被覆した天然黒鉛がより好ましい。第1の炭素として、上記の材料を単独で用いても良いし、2種類以上混ぜて使用しても良い。
第2の炭素は、導電剤として用いられ、導電性を有し、実質的にリチウムイオンを吸蔵しないが、比表面積が10m2/g以上が好ましく、コークス,カーボンブラック,アセチレンブラック,カーボンファイバー,ケチェンブラック,カーボンナノチューブ,メソカーボンマイクロビーズ,気相成長炭素繊維等の炭素材料を用いてもよい。さらに、後述する負極上層合剤層中の第1の炭素に第2の炭素を添加するとより好ましい。これにより、容量を大きくできる。以下に述べる実施例では、カーボンブラックを使用したが、これに限定されない。例えば、カーボンブラックを、上述の他の第2の炭素に置き換えても良いし、異なる炭素を数種類、混合して用いても良い。
バインダには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の他に、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー,スチレンブタジエンゴム(SBR),アクリロニトリルゴムなどを用いてもよい。負極の還元電位で分解せず、非水電解質あるいはそれを溶解させる溶媒と反応しなければ、上で列挙されていない他のバインダを用いてもよい。負極スラリを調製する際に用いる溶媒には、バインダに適応した公知のものを用いてもよい。例えば、SBRの場合は水等、PVDFの場合はアセトン,トルエン等、公知の溶媒を用いることができる。負極合剤層中のバインダの含有量は0.5wt%以上2.0wt%以下が望ましい。バインダ含有量が2.0wt%より大きいと、内部抵抗が高くなる可能性がある。バインダとして、上記の材料を単独で用いても良いし、2種類以上混ぜて使用しても良い。
スラリの粘度を調整するために、増粘剤を用いることもできる。例えば、SBRには、カルボキシメチルセルロース(CMC)を使用することができる。増粘剤として、CMC以外に、PVP,PEO,AQUPEC等が挙げられる。増粘剤として、上記の材料を単独で用いても良いし、2種類以上混ぜて使用しても良い。
負極集電体は、リチウムと合金化しにくい材質であることが条件であり、銅,ニッケル,チタンなど、あるいはこれらの合金からなる金属箔がある。特に、銅箔が多用されている。
負極は、負極活物質,導電剤,バインダ、及び有機溶媒を混合した負極スラリを、ドクターブレード法などによって集電体へ付着させた後、加熱して有機溶媒を乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形することにより、作製することができる。負極合剤層は、負極スラリの有機溶媒を乾燥させることにより、集電体上に作製される。
セパレータは、ポリエチレン,ポリプロピレン,4フッ化エチレンなどの高分子系材料から構成され、上記で述べたように作製した正極と負極の間に挿入される。セパレータと電極が電解液を十分に保持するようにして、正極と負極の電気的絶縁を確保し、正極と負極間でリチウムイオンの授受を可能とする。
コイン型電池の場合は、円形状に切り出した正極,セパレータ,負極の順に積層し、その積層体をコイン状容器に収納し、蓋を上部に設置した後に、電池全体をかしめることにより製作される。
円筒型電池の場合は、正極と負極間にセパレータを挿入した状態で捲回して電極群を製造する。セパレータの代わりに、ポリエチレンオキシド(PEO),ポリメタクリレート(PMA),ポリアクリロニトリル(PAN),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)などのポリマーに、リチウム塩または非水電解液を保持させたシート状の固体電解質またはゲル電解質を使用することも可能である。また、電極を二軸で捲回すると、長円形型の電極群も得られる。
角型電池の場合は、正極と負極を短冊状に切断し、正極と負極を交互に積層し、各電極間にポリエチレン,ポリプロピレン,4フッ化エチレンなどの高分子系セパレータを挿入し、電極群を作製する。
また、安全性の向上のために、セパレータとして、高分子系セパレータをアルミナ,シリカ,チタニア,ジルコニア等の電気的絶縁性セラミックス粒子層で挟んだサンドイッチ状のセラミックスセパレータを用いても差し支えない。
本発明は上記で述べた電極群の構造に依存せず、本発明によるリチウムイオン電池には、任意の構造が適用可能である。
また、電解液の溶媒としては、プロピレンカーボネート,ブチレンカーボネート,ジメチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,ジエチルカーボネート,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピル,蟻酸メチル,蟻酸エチル,蟻酸プロピル,γ−ブチロラクトン,α−アセチル−γ−ブチロラクトン,α−メトキシ−γ−ブチロラクトン,ジオキソラン,スルホラン、及びエチレンサルファイトの中から選ばれる少なくとも1種以上を混合して用いることができる。好ましい電解液としては、これらの溶媒に、LiPF6,LiBF4,LiSO2CF3,LiN[SO2CF3]2,LiN[SO2CF2CF3]2,LiB[OCOCF3]4,LiB[OCOCF2CF3]4などのリチウム塩電解質を、体積濃度で0.5Mから2M程度含有したものを用いることができる。
リチウムイオン電池は、作製した電極群を、アルミニウム,ステンレス鋼,ニッケルメッキ鋼製の電池容器へ挿入した後に、電解液を電極群へ浸透させることで作製することができる。電池缶の形状は、円筒型,偏平長円形型,角型などがあり、電極群を収納できれば、いずれの形状の電池缶を選択してもよい。
不可逆容量の増加を抑制する目的として、比表面積の高い第2の炭素を用いないで、第1の炭素,バインダおよび増粘剤を含む合剤層を集電体の上に形成した。その結果、不可逆容量の増加を抑制できたものの、レート特性は悪化していた。原因を究明した結果、合剤層の集電体付近のSEMで観察すると、集電体に余分にバインダと増粘剤が偏在していることを認められた。これは、合剤層と集電体との間の内部抵抗が高くなり、高レート特性が阻害される要因と考えられる。また、第1の炭素,第2の炭素,バインダ,増粘剤を含む合剤層を単層で形成した。第2の炭素からなる凝集体は、バインダおよび増粘剤を含有し、第2の炭素とバインダが複合した状態になっている。この凝集体は、結着力を発現すると同時に、電子伝導性も有している。さらに、第2の炭素の凝集体をよくみると、第2の炭素は一次粒径が通常50nmの粒径だったのに対し、ミクロンオーダに大きくなっている。これは、第2の炭素は比表面積が高いため、バインダ,増粘剤を吸着しやすいためである。
この性質を生かすべく、第1の炭素,増粘剤を含む下層合剤層を集電体の上に形成し、さらに第2の炭素,バインダ,増粘剤を含む上層合剤層を下層合剤層の上に形成した負極を作製した。その結果、合剤層の集電体付近のSEM観察をしたところ、余分なバインダと増粘剤の集電体への偏在がみられなかったことを確認している。具体的な負極の製造方法は、実施例にて説明する。
下層合剤層の厚さが集電体の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzの2倍以上にした理由は、下層合剤層の厚さが集電体の表面粗さRzの2倍未満にすると、集電体の凸部が露出された状態で、その上に上層合剤層を形成してしまい、不可逆容量が大きくなってしまうためである。このために、不可逆容量の増加の抑制の観点から、合剤層の集電体側に第2の炭素を含まないことが好ましい。このために、集電体の表面粗さの凸部に第2の炭素,バインダおよび増粘剤を含む上層合剤層を接触させないことが重要である。
(実施例1)
図5は、本発明のコイン形リチウム二次電池301の断面を示す。コイン形リチウムイオン電池301は、正極缶334と負極缶335とガスケット336によって密閉された構造である。その中に、正極307と負極308とセパレータ309と電解液が収納されている。電解液は、セパレータ309と電池内部の空間337に保持されている。正極307は正極合剤層330と正極集電体331からなる。負極308は負極合剤層332と負極集電体333からなる。負極合剤層332は、負極下層合剤層340と負極上層合剤層341からなる。
以下では、正極307,負極308およびコイン形電池の組立方法を順に説明する。
本実施例で使用した正極活物質は、平均粒径20μmのLi1.05Mn1.95O4である。導電剤には、平均粒径3μm,比表面積13m2/gの天然黒鉛と平均粒径0.04μm,比表面積40m2/gのカーボンブラックとを、重量比4:1となるように混合したものを用いた。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)8wt%を予めN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液を用いた。
これらの正極活物質,導電剤、及びPVDFが、重量比90:4:6となるように混合し、充分に混練したものを正極スラリとした。この正極スラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体331の片面に塗布し、乾燥させることで、正極集電体331上に正極合剤層330を形成させることができた。ロールプレス機を用いてその正極307をプレスし、正極合剤層330を圧縮した。これにより、正極合剤層330の内部抵抗が減少し、正極合剤層330と正極集電体331の界面接触抵抗も小さくなった。この電極を直径15mmの円盤状に打ち抜いて、正極307とした。
負極308は以下の方法で作製した。負極の第1の炭素には、平均粒径10μmの天然黒鉛を、増粘剤としては、CMCとを混合し下部合剤層スラリとして得られた。この下層合剤層スラリを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体333の片面に塗布し、仮乾燥させることで、負極集電体333上に負極下層合剤層340を得た。次に、第2の炭素には、平均粒径0.04μm,比表面積40m2/gのカーボンブラックを、バインダとしては、スチレン・ブダシエンゴムを、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを混合し、上部合剤層スラリとして得られた。この上部合剤層スラリを、負極集電体333上に形成された負極下層合剤層340の上に塗布し、仮乾燥させることで、負極上層合剤層341を得た。これにより、負極下層合剤層340および負極上層合剤層341が形成された負極集電体333をロールプレスでプレスした後、本乾燥させ、電極を作製した。この電極を直径が16mmの円盤状に打ち抜いて、負極308とした。
ここで、負極下層合剤層340の全体の断面積に対する第2の炭素およびバインダ凝集体の面積の違いができるように、これらの負極の断面状態を、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)およびエネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy),電子線マイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)を用いて観察した。さらに、バインダと増粘剤を区別できるように、SEMの前処理として、染色剤を用いることが好ましい。例えば、バインダがSBRの場合、ブタジエン由来の二重結合部分にオスミウムを付加する性質がある四酸化オスミウムを用いることができる。増粘剤がCMCの場合、四酸化ルテニウムを用いて染色させることができる。今回は、バインダの面積比率を求めるために、染色剤として四酸化オスミウムを用いた。
そのSEM像の全体の面積に対する第2の炭素およびバインダ凝集体の面積比率は、公知の画像処理ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング製、A像くん(R))を用いて粒子形状を解析し、求めることができる。
本発明に適用する画像処理ソフトは、自動的に画像上の粒子が1個ずつ分離,認識して粒子の面積を計測できるアプリケーションを持つことが好ましい。また、面積比率,面積の最大長と最小幅,粒子数を計測できる機能があれば、より望ましい。
面積を求める手順は次の通りである。SEM画像およびEDXにより得られたオスミウム検出マッピングには、大小の異なる粒径の第1の炭素の複数の粒子と第2の炭素の複数の粒子,バインダの複数の粒子がみられる。第2の炭素の粒子が凝集体をなしている合剤層があり、第2の炭素の凝集体の大きさが異なる合剤層がある。また、第2の炭素の粒子が独立してなす合剤層がみられる。第1の炭素の粒子間にバインダ,CMCが偏在するところもみられる。まずは、第1の炭素の複数の粒子と第2の炭素の複数の粒子が区別できるように、SEMで得られた負極合剤層断面の画像の第2の炭素の複数の粒子に色塗りを行う。任意の画像処理ソフトを用いてスキャンした画像に、できるだけ高倍率で色塗りすることが好ましい。SEMで得られた画像と同じ倍率で色塗りすると、人為的な誤差が大きくなってしまうからである。
さらに、SEMで得られた画像をそのまま二値化画像処理をすることは二値化しきい値が定められないため困難である。色塗りをすることにより画像処理が容易であり、データの高信頼性が得られる。画像処理が容易になるように、低加速電圧のSEM観察条件にて、SEM像の負極活物質(第1の炭素)と第2の炭素のコントラストの差を付けると良い。次に画像処理した画像に合剤層厚み方向に10μm、水平方向に30μmの一定したエリアで色塗りした面積を求めた。色塗り部分は第1の炭素,バインダ,CMC,空隙を除いた、すなわち第2の炭素に相当する。合剤層厚み方向に10μmごとに分けて解析した。合剤層厚み方向,水平方向,分析エリアは図8のように規定される。
また、四酸化オスミウムを染色させた合剤層断面をEDXで分析したオスミウムマッピングを上記のSEM画像と同じ分析エリアおよび倍率で面積を求めた。分析エリアを合剤層厚み方向に10μm、水平方向に30μmに一定とし、上記と同様に合剤層厚み方向に10μmごとに分けて解析した。これをまとめたものを、図2に示す。横軸の厚み方向10μmとは、集電体表面から合剤層表面に向かって0〜10μm、水平方向に30μmのエリアのこと、厚み方向50μmとは、集電体表面から合剤層表面に向かって40〜50μm、水平方向に30μmのエリアのことを指す。第2の炭素およびバインダとも、集電体表面から合剤層表面に向かって増加することがわかる。これは、集電体の上に塗布・仮乾燥した下層合剤層の上に上層合剤層スラリを塗布することにより、上層合剤層スラリの第2の炭素,バインダが集電体の方に染み込んだために、下層合剤層の集電体側にわずかに第2の炭素,バインダが存在する。また、余分なバインダと増粘剤が集電体に偏在しなかったことを確認している。すなわち、実施例1で試作した負極の場合、第2の炭素およびバインダの面積比率は集電体表面から合剤層表面側に向かって40〜50μmのエリアの合剤層(合剤層表層に相当)が集電体表面から合剤層表面に向かって0〜10μm、水平方向30μmのエリアの合剤層(合剤層集電体側に相当)に比較してそれぞれ、34.6%,22.8%の差があり、2倍以上になっている。
比較例1の単層の場合の図を図3に示す。第2の炭素およびバインダが明らかに集電体付近に大きなピークがみられ、偏在していることがわかる。第2の炭素およびバインダは、比較例1の場合、集電体側合剤層、実施例1の場合は合剤層表層にもっとも多く含有していることがわかる。
次に、負極を、ロールプレス機を用いて合剤層を圧縮した負極を用いて、図5に示したコイン型リチウムイオン電池301を組み立てた。正極307,セパレータ309,負極308を積層し、その積層体を正極缶334と負極缶335の中に収納させた。セパレータ309は、厚さ40μmのポリエチレン多孔質高分子シートである。電解液には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合液(体積比として1:2)にLiPF6を溶かして1.0mol/dm3とした混合液を用いた。電解液は、セパレータ309と電池内部の空間437に存在する。外側からかしめ機により電池を圧縮してコイン型リチウムイオン電池301を完成させた。
実施例1で示したコイン型リチウムイオン電池301について、温度45℃環境下にて、以下の条件で充放電試験を行った。まず、電圧4.1Vまで電流密度1mA/cm2の定電流で充電した後に、4.1Vで定電圧充電をする定電流定電圧充電を3時間行った。充電が終了した後に、1時間の休止時間をおき、放電終止電圧3Vまで、1〜21mA/cm2の定電流で放電した。放電が終了した後に、2時間の休止時間を設けた。このような充電,休止,放電,休止を繰り返し、段階的に定電流を上げてレート試験を行った。このレート試験の21mA/cm2(7C)目における、リチウムイオン電池の放電容量を比較した。
(実施例2〜4)
実施例1にて製作した負極308において、上層合剤層に第1の炭素および第2の炭素の重量比を変えて、また上層合剤層の厚さを変えて負極を製作した。バインダおよび増粘剤も変えて添加した。負極の第1の炭素には、平均粒径10μmの天然黒鉛を、増粘剤としては、CMCとを混合し下部合剤層スラリとして得られた。この下層合剤層スラリを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体333の片面に塗布し、仮乾燥させることで、負極集電体333上に負極下層合剤層340を得た。次に、第1の炭素には、平均粒径20μmの天然黒鉛と第2の炭素には、平均粒径0.04μm,比表面積40m2/gのカーボンブラックを、機械的に混合したものを用いた。バインダとしては、スチレン・ブダシエンゴムを、増粘剤としては、CMCとを混合し、上部合剤層スラリとして得られた。この上部合剤層スラリを、負極集電体333上に形成された負極下層合剤層340の上に塗布し、仮乾燥させることで、負極上層合剤層341を得た。これにより、負極下層合剤層340および負極上層合剤層341が形成された負極集電体333をロールプレスでプレスした後、本乾燥させ、電極を作製した。この電極を直径が16mmの円盤状に打ち抜いて、負極308とした。これに、実施例1と同じ正極307,セパレータ309,電解液,正極缶334,負極缶335,ガスケット336を用いて、図5のコイン型リチウムイオン電池301を製作した。
(実施例5)
集電体と合剤層の剥離強度の向上を目的として、集電体の表面粗さの違いを調べた。実施例1および2は表面粗さRzが1.0μmの集電体を用いたのに対し、実施例5は5.0μmの集電体を用いた。他に、負極,正極の製造方法は実施例2と同様である。実施例1と同じ正極307,セパレータ309,電解液,正極缶334,負極缶335,ガスケット336を用いて、図5のコイン型リチウムイオン電池301を製作した。
(実施例6)
EDX分析の代わりに、EPMAを用いてバインダを点分析した。電子ビーム径をφ1μmとした。電子ビームを所定分析面積にスキャンさせて面分析ができる。分析エリアを10平方μmに一定にし、集電体表面から合剤層表面に向かって10μm間隔で分析した。バインダの面積比率を求めるために、合剤層断面に染色剤として四酸化オスミウムを用いて染色させた。バインダの面積比率は、第1の炭素,第2の炭素,CMC,空隙を除いてある。第2の炭素の面積は実施例1と同様に求めた。まとめたものを、図4に示す。
(比較例1)
実際、第2の炭素は、比表面積が高いためバインダおよび増粘剤を吸着しやすいだけでなく、不可逆容量が高くなる。比較例1として以下、単層作製した。
負極の第1の炭素には、平均粒径10μmの天然黒鉛と第2の炭素には、平均粒径0.04μm,比表面積40m2/gのカーボンブラックとを、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)を、バインダとしては、スチレン・ブダシエンゴムを用いた。先に混合した黒鉛とカーボンブラックからなる炭素材とカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレン・ブダシエンゴムとが、重量比95:3:1:1となるように混合し、充分に混練したものを負極スラリとした。スラリは、上記の活物質,カーボンブラック,バインダ,増粘剤からなる固形分の比率が35〜50%の範囲になるように、精製水を添加した。正極の組成,製造方法は実施例1と同様に作製した。
(比較例2)
下層合剤層に第2の炭素を含み、不可逆容量の増加を調べた。負極308は以下の方法で作製した。負極の第1の炭素には、平均粒径10μmの天然黒鉛を、第2の炭素には、平均粒径0.04μm,比表面積40m2/gのカーボンブラックを、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを混合し下部合剤層スラリとして得られた。この下層合剤層スラリを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体333の片面に塗布し、仮乾燥させることで、負極集電体333上に負極下層合剤層340を得た。次に、第1の炭素には、平均粒径20μmの天然黒鉛と第2の炭素には、平均粒径0.04μm,比表面積40m2/gのカーボンブラックを、バインダとしては、スチレン・ブダシエンゴムを、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを混合し、上部合剤層スラリとして得られた。この上部合剤層スラリを、負極集電体333上に形成された負極下層合剤層340の上に塗布し、仮乾燥させることで、負極上層合剤層341を得た。これにより、下層および上層合剤層が形成された負極集電体333をロールプレスでプレスした後、本乾燥させ、電極を作製した。この電極を直径が16mmの円盤状に打ち抜いて、負極308とした。これに、実施例1と同じ正極307,セパレータ309,電解液,正極缶334,負極缶335,ガスケット436を用いて、図4のコイン型リチウムイオン電池301を製作した。
(比較例3)
集電体の表面粗さおよび下層合剤層の厚さの違いを実施例3と比較できるように負極を製造した。他に、負極,正極の製造方法は実施例3と同様である。負極の下層合剤層および上層合剤層の厚さは8μm,42μmであった。
実施例1〜6および比較例1〜3の電池特性等を図9にまとめた。A:不可逆容量(mAh/g)は最初の充放電容量の差から求めた。B:7C(21mA/cm2)時の放電容量である。A/B*100は不可逆容量を7C時の放電容量で徐した割合であり、低いほど、充放電容量が大きいといえる。レート特性は、電流密度を変化させたときの電池容量の維持率でレート特性が高いほど、急速な充放電容量に耐えられる電池となる。次に、下層および上層合剤層からなる合剤層集電体側(集電体表面から合剤層表面に向かって10μmの範囲の合剤層)と合剤層表層(合剤層表面から集電体に向かって10μmの範囲の合剤層)の第2の炭素,バインダの面積比率の差は、第2の炭素,バインダの添加量が異なるが、第2の炭素では1.1〜34.6%、バインダでは1.3〜22.8%と、合剤層表層の方が高い。
一方、比較例1〜3は合剤層集電体側と合剤層表層の第2の炭素,バインダの面積比率の差が大きくなく、合剤層集電体側の方が高い。
不可逆容量は、実施例1〜6の方が比較例1〜3より小さく、改善されていることがわかる。具体的には、実施例1〜6では不可逆容量が31.8mAh/gより小さく、29.8mAh/g以下となっている。A/B*100は、実施例1〜6は12.2より小さく10.5以下となっており、比較例1〜3に比べ低く抑えている。
不可逆容量の増加を抑制しつつ、レート特性が向上した理由は次のように考えられる。比較例1〜3は、第2の炭素が高絶縁性バインダを吸着しやすいため、バインダが集電体に偏在しやすい。この影響で、合剤層と集電体との間の内部抵抗が上昇し、レート特性に悪影響を及ぼすと考えられる。これに対し、実施例1〜6は、集電体に近い合剤層には第2の炭素を存在させない共通点がある。このために、バインダは第1の炭素粒子間に偏在しても、集電体に偏在しにくくなり、レート特性が改善したと考えられる。
実施例1〜6のように、負極合剤層332の膜厚方向において、負極集電体333および負極合剤層332の界面から負極合剤層332の表面に向かう距離をd1、負極合剤層332の表面から負極集電体333および負極合剤層332の界面に向かう距離をd2、とした時、0≦d1≦10μmにおける負極合剤層332中の第2の炭素およびバインダの平均面積比率を0≦d2≦10μmにおける負極合剤層中332の第2の炭素およびバインダの平均面積比率の2倍以上、より好ましくは4倍以上、更に好ましくは5倍以上、とすることにより、不可逆容量を改善できる。
実施例2−4のように、負極上層合剤層341に第1の炭素および第2の炭素が含まれている場合、第1の炭素の含有量を第2の炭素の含有量より多くすることで、容量を大きくできる。この場合、負極合剤層332中の第2の炭素の含有量は1wt%以上6wt%以下、好ましくは1.5wt%以上5wt%以下が望ましい。第2の炭素の含有量が6wt%より大きくなると、不可逆容量が増加する可能性がある。
実施例3−5のように、負極上層合剤層341の膜厚を負極下層合剤層340の膜厚よりも大きくしても、第2炭素およびバインダが集電体付近に偏在することを抑制できる。具体的には、負極上層合剤層341の膜厚が負極下層合剤層340の膜厚の2倍以上、望ましくは4倍以上とすることが好ましい。
また、下層合剤層および上層合剤層の最適厚さは、図9からわかるように、集電体の表面粗さRzが5μmの場合、下層合剤層の厚さが10μm以上が好ましい(実施例5)。10μm未満だと、集電体側に第2の炭素,バインダが偏在しやすくなる(比較例3)。すなわち、下層合剤層の厚さは、集電体の表面粗さRzの2倍以上、好ましくは10倍以上、更に好ましくは40倍以上が望ましい。
このように第2の炭素の集電体への含有制限により、不可逆容量の増加を抑制しつつ、レート特性を改善することができる。本発明は、特に、放電容量が大きいリチウム二次電池において効果がある。
以上で説明した実施例では、コイン形リチウムイオン電池を例示した。これらの電池の形状や、電極仕様などは本発明の趣旨の範囲内で任意に変更可能であり、これらの実施例に本発明は限定されない。
(実施例7)
図6は、非水電解質二次電池501の内部構造を模式的に示している。非水電解質二次電池501とは、非水電解質中における電極へのイオンの吸蔵・放出により、電気エネルギーを貯蔵・利用可能とする電気化学デバイスの総称である。本実施例では、リチウムイオン電池を代表例として説明する。
図6の非水電解質二次電池501において、正極507,負極508、および両電極の間に挿入されたセパレータ509からなる電極群を、電池容器502に密閉状態にて収納されている。電池容器502の上部に蓋503があり、その蓋503に正極外部端子504,負極外部端子505,注液口506を有する。電池容器502に電極群を収納した後に、蓋503を電池容器502に被せ、蓋503の外周を溶接して電池容器502と一体にした。電池容器502への蓋503の取り付けには、溶接の他に、かしめ,接着などの他の方法を採ることができる。
積層体の上部は、リード線を介して外部端子に電気的に接続されている。正極507は正極リード線510を介して正極外部端子504に接続されている。負極508は負極リード線511を介して負極外部端子505に接続されている。なお、リード線510,511は、ワイヤ状,板状などの任意の形状を採ることができる。電流を流したときにオーム損失を小さくすることのできる構造であり、かつ電解液と反応しない材質であれば、リード線510,511の形状,材質は任意である。
また、正極外部端子504または負極外部端子505と、電池容器502の間には絶縁性シール材料512を挿入し、両端子が蓋503を介して短絡しないようにしている。絶縁性シール材料512にはフッ素樹脂,熱硬化性樹脂,ガラスハーメチックシールなどから選択することができ、電解液と反応せず、かつ気密性に優れた任意の材質を使用することができる。
本実施例では、平均粒径10μmの正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/32と、カーボンブラックを導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をバインダに用いて製作した正極を用いて、以下の試験を行った。正極活物質,導電剤,バインダの重量組成は、88:7:5とした。正極スラリを塗布した電極面積は10cm×10cm、合剤層厚さは70μmとした。負極は、実施例4に示すように製作した。電極面積は10cm×10cm、合剤層厚さは50μmとした。電解液には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合液(体積比として1:2)にLiPF6を溶かして1.0mol/dm3とした混合液を用いた。図6に示した角型電池を複数個、製作した。
次に、図7は、図6の通り製作した2個の非水電解質二次電池601a,601bを直列に接続した本発明の電池システムを示す。電池の本数はシステムが要求する電圧や容量に応じて、直列と並列の本数を任意に変更可能である。
各非水電解質二次電池601a,601bは、正極607,負極608,セパレータ609からなる同一仕様の電極群を電池容器602に挿入した構造を有し、蓋603の上面に正極外部端子604,負極外部端子605を設けている。外部端子604,605の蓋603の間には、絶縁性シール材料612を挿入し、外部端子同士が蓋603を介して短絡しないようにした。図中の正極と負極はそれぞれ1個ずつに表示されているが、実際は20枚の正極607と負極608がセパレータ609を介して交互に積層されている。電極の数は各外部端子と電池容器602の間には絶縁性シール材料612を挿入し、外部端子同士が短絡しないようにしている。なお、図では図6の正極リード線610と負極リード線611に相当する部品が省略されているが、非水電解質二次電池601a,601bの内部の構造は図6と同様である。蓋603の上部に注液口606を設けた。
非水電解質二次電池601aの負極外部端子605は、電力ケーブル613により充放電制御器616の負極入力ターミナルに接続されている。非水電解質二次電池601aの正極外部端子604は、電力ケーブル614を介して、非水電解質二次電池601bの負極外部端子605に連結されている。非水電解質二次電池601bの正極外部端子604は、電力ケーブル615により充放電制御器616の正極入力ターミナルに接続されている。このような配線構成によって、2個の非水電解質二次電池601a,601bを充電または放電させることができる。
充放電制御器616は、電力ケーブル617,618を介して、外部に設置した機器(以下では外部機器と称する。)619との間で電力の授受を行う。外部機器219は、充放電制御器616に給電するための外部電源や回生モータ等の各種電気機器、ならびに本システムが電力を供給するインバータ、コンバータおよび負荷が含まれている。外部機器が対応する交流,直流の種類に応じて、インバータ等を設ければ良い。これらの機器類は、公知のものを任意に適用することができる。
また、再生可能エネルギーを生み出す機器として風力発電機の動作条件を模擬した発電装置622を設置し、電力ケーブル620,621を介して充放電制御器616に接続した。発電装置622が発電するときには、充放電制御器616が充電モードに移行し、外部機器619に給電するとともに、余剰電力を非水電解質二次電池601aと601bに充電する。また、風力発電機を模擬した発電量が外部機器619の要求電力よりも少ないときには、非水電解質二次電池601aと601bを放電させるように充放電制御器616が動作する。なお、発電装置622は他の発電装置、すなわち太陽電池,地熱発電装置,燃料電池,ガスタービン発電機などの任意の装置に置換することができる。充放電制御器616は上述の動作をするように自動運転可能なプログラムを記憶させておく。
非水電解質二次電池601a,601bを定格容量が得られる通常の充電を行う。例えば、1時間率の充電電流にて、4.1Vあるいは4.2Vの定電圧充電を0.5時間、実行することができる。充電条件は、リチウムイオン電池の材料の種類,使用量などの設計で決まるので、電池の仕様ごとに最適な条件とする。
非水電解質二次電池601a,601bを充電した後には、充放電制御器616を放電モードに切り替えて、各電池を放電させる。通常は、一定の下限電圧に到達したときに放電を停止させる。
以上で説明したシステムをS1とし、外部機器619は充電時に電力を供給し、放電時に電力を消費させた。本実施例では、5時間率放電まで実施し、1時間率放電時の容量に対して90%の高い容量を得た。100サイクルの充放電サイクルを行ったときの容量低下は実質的に認められず、前記条件での容量は90%を維持していた。また、風力発電機を模擬した発電装置622が発電中には、3時間率の充電を行うことができた。
以上で説明した内容を踏まえ、それぞれ具体的な実施例を示し、本発明の効果を明らかにしていく。なお、本発明の要旨を変更しない範囲で、具体的な構成材料,部品などを変更しても良い。また、本発明の構成要素を含んでいれば、公知の技術を追加し、あるいは公知の技術で置き換えることも可能であり、発電装置は、太陽光,地熱,波動エネルギーなどの任意の再生可能なエネルギー発電システムに置き換えることができる。
(比較例4)
比較例1の負極の組成にて、負極を製作し、図6に示したリチウムイオン電池を複数個、製作した。この比較例によると、第1および第2の炭素,バインダ,CMCを混練分散したスラリを一度塗りした負極を用いており、他の条件は実施例7と同じとして、図7のシステムを製作した。
このシステムを用いて、外部機器619は充電時に電力を供給し、放電時に電力を消費させた。本実施例では、5時間率放電まで実施し、1時間率放電時の容量に対して初期10サイクル時点では90%の高い容量を得た。しかし、実施例7に比べ、不可逆容量は28%大きく、容量は20%低下した。
本発明による非水電解質二次電池の用途は、特に限定されない。例えば、パーソナルコンピュータ,ワープロ,コードレス電話子機,電子ブックプレーヤ,携帯電話,自動車電話,ハンディターミナル,トランシーバ,携帯無線機等の携帯情報通信機器の電源として使用することができる。また、携帯コピー機,電子手帳,電卓,液晶テレビ,ラジオ,テープレコーダ,ヘッドホンステレオ,ポータブルCDプレーヤ,ビデオムービー,電気シェーバー,電子翻訳機,音声入力機器,メモリーカード等の各種携帯機器の電源として使用できる。その他、冷蔵庫,エアコン,テレビ,ステレオ,温水器,オーブン電子レンジ,食器洗い機,乾燥器,洗濯機,照明器具,玩具等の家庭用電気機器として使用できる。また、家庭用,業務用を問わずに、電動工具や介護用機器(電動式車いす,電動式ベッド,電動式入浴設備など)の用電池としても利用可能である。さらに、産業用途として、医療機器,建設機械,電力貯蔵システム,エレベータ,無人移動車両などの電源として、さらには電気自動車,ハイブリッド電気自動車,プラグインハイブリッド電気自動車,ゴルフカート,ターレット車などの移動体用電源として、本発明を適用することができる。さらには、太陽電池や燃料電池から発生させた電力を本発明の電池モジュールに充電し、宇宙ステーション,宇宙船,宇宙基地などの地上以外で利用可能な蓄電システムとして用いることも可能である。本発明の内容は、特に、急速充放電(高レート特性)が要求される自動車用,高容量化が要求される産業用に用いられることが望ましい。
11,21 第1の炭素(負極活物質)
12 第1の炭素の直径(平均粒径)
23 第1の炭素に囲まれた間隙の最小直径
301 コイン型リチウムイオン電池
307,507,607 正極
308,508,608 負極
309,509,609 セパレータ
330 正極合剤層
331 正極集電体
333 負極集電体
334 正極缶
335 負極缶
336 ガスケット
337 空間(電解液が添加されている領域)
340 負極下層合剤層
341 負極上層合剤層
501,601a,601b 非水電解質二次電池
502,602 電池容器
503,603 蓋
504,604 正極外部端子
505,605 負極外部端子
506,606 注液口
510 正極リード線
511 負極リード線
512,612 絶縁性シール材料
613,614,615,617,618,620,621 電力ケーブル
616 充放電制御器
619 外部機器
622 発電装置

Claims (9)

  1. 集電体の上に形成される負極合剤層を有する非水電解質二次電池用負極であって、
    前記負極合剤層は、負極下層合剤層および負極上層合剤層で構成され、
    前記集電体の上に前記負極下層合剤層が形成され、
    前記負極下層合剤層の上に前記負極上層合剤層が形成され、
    前記負極下層合剤層は、負極活物質を含み、
    前記負極上層合剤層は、導電剤およびバインダを含み、
    前記導電助剤および前記バインダは、前記負極上層合剤層の表面側に偏在しており、
    前記負極上層合剤層は、前記負極活物質を含み、
    前記負極上層合剤層中の前記負極活物質の含有量は前記負極上層合剤層中の前記導電剤の含有量より多い非水電解質二次電池用負極。
  2. 請求項において、
    前記負極合剤層中の前記導電剤の含有量は1wt%以上6wt%以下である非水電解質二次電池用負極。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記負極上層合剤層の膜厚は前記負極下層合剤層の膜厚より大きい非水電解質二次電池用負極。
  4. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記負極合剤層中の前記バインダの含有量は0.5wt%以上2.0wt%以下である非水電解質二次電池用負極。
  5. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記負極下層合剤層の厚さは、前記集電体の表面粗さの2倍以上である非水電解質二次電池用負極。
  6. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記負極合剤層の膜厚方向において、前記集電体および前記負極合剤層の界面から前記負極合剤層の表面に向かう距離を 2
    前記負極合剤層の膜厚方向において、前記負極合剤層の表面から前記集電体および前記負極合剤層の界面に向かう距離を 1 、とした時、
    0≦ 2 ≦10μmにおける前記負極合剤層中の前記導電剤および前記バインダの平均面積比率が、0≦ 1 ≦10μmにおける前記負極合剤層中の前記導電剤および前記バインダの平均面積比率の2倍以上である非水電解質二次電池用負極。
  7. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記負極合剤層に増粘剤が含まれる非水電解質二次電池用負極。
  8. 請求項1乃至のいずれかの非水電解質二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池。
  9. 請求項の非水電解質二次電池を複数用いた電池モジュール。
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