JP2008034215A - リチウム二次電池用正極とその製造方法、およびリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用正極とその製造方法、およびリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 高性能であり、かつ大電流での充放電が可能なリチウム二次電池を構成し得るリチウム二次電池用正極を良好に製造する方法、上記リチウム二次電池用正極、および該リチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】 集電体上に、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な活物質とバインダとを含有する下層と、表面においてリチウムイオンの物理的な吸着および脱着が可能であり且つ電気二重層を形成可能な材料とバインダとを含有する上層とが積層されてなるリチウム二次電池用正極の製造方法において、下層および上層を、活物質およびバインダを含有する下層形成用塗料と上記材料およびバインダを含有する上層形成用塗料とを、下層が集電体側となるように同時に重層塗布する塗布工程を経て形成し、下層の厚みを20〜100μmとし、上層の厚みを5〜20μmとするリチウム二次電池用正極の製造方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高性能であり且つ大電流での充放電が可能なリチウム二次電池用正極とその製造方法、および上記リチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池に関するものである。
近年、電気自動車やハイブリッド自動車、パワーツールなどの電源として、従来の携帯機器用主電源として用いられてきた小型リチウム二次電池に比べて、より高出力で耐候性に優れ、高容量化された電源の開発が求められている。
このような要求に対し、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池およびリチウム二次電池などの活物質を始めとする各電極構成部材の改良による高性能化、瞬間的にイオンの吸脱着を行い得るため大電流の入出力対応が可能な電気二重層キャパシタを単独使用または併用するシステム、もしくは上記特性を同時に達成する目的で、電気二重層キャパシタの材料として用いられる活性炭を活物質と混合して使用した正極を有するリチウム二次電池(特許文献1)などが各種提案されている。
しかし、二次電池は高容量化できるものの大電流での充放電特性が悪いため、入出力特性が低下し、電気二重層キャパシタは入出力特性に優れるもののエネルギー密度が低いという問題があった。
一方、活性炭を活物質と混合して使用した正極を用いて構成したリチウム二次電池の場合、容量を維持したままある程度まで出力特性を向上させることは可能であるが、比表面積が極端に異なる活物質と活性炭とを混合して使用することになるため、低いエネルギー密度を補う目的で活性炭混合量を多くすると、活性炭や活物質を含有する層(正極合剤層)を形成するための塗料において、その特性が極端に変化してしまい、正極の作製が非常に難しくなる。
上記の活性炭と活物質とを混合して用いた正極において、活性炭量が増加すると単位体積あたりの活性炭量に比例した混合材料の比表面積総和が著しく増加する。そのため、正極合剤層を形成するための塗料の特性を安定させるには、バインダを適量増加しなければならないが、バインダは抵抗成分として存在するため、多量のバインダ成分の使用は正極特性を劣化させることになり、十分な改善効果が見られない。
さらに、正極合剤層中では、含有するいずれの材料も均一に分散していなければその効果が十分に発現されないが、活性炭と活物質とを混合して使用する系では、必然的に正極−電解質間の固液界面部に正極活物質が部分的に表出する形態となる。この状態の正極を用いた電池において大電流充放電を行うと、リチウムイオンを物理的に吸脱着する活性炭部と、リチウム含有複合酸化物に代表される正極活物質表面との電流応答速度格差が極めて大きくなる。この場合、活物質表面に大電流が選択的に非線形集中するため、活物質にかかる負荷が部分的に過大となり、出力バランスおよび安全性の面で問題がある。
上記問題を解決する方法として、活物質含有層の上層に活性炭含有層を敷設して、活性炭と活物質とを混合して正極合剤層に含有させた正極と同等の特性を有する電極構造が提案されている(特許文献2)。
特許文献2に記載の構造の電極であれば、活性炭と活物質とを併用することによる電池の高性能化と大電流での入出力特性の向上を達成できる可能性がある。しかし、この電極はこれまで活物質含有層(下層)を形成するための塗料を規定重量塗布し、溶媒を乾燥させた後に所定厚みになるように調厚することで一旦作製された正極表面に、更に活性炭を含有する塗料を塗布して上層を形成する方式(以下、「逐次重層塗布方式」という)で作製されていたため、上層形成用の塗料を塗布した直後に、上層形成用の塗料中の溶媒が下層に吸収されてしまうことから、欠陥の無い均一な上層膜を形成し難いという問題があった。
なお、特許文献2以外にも、電極の製造にあたり、2層またはそれ以上の多層膜を形成する方法が各種提案されている(特許文献3など)。
また、特許文献3の技術は、上層として無機微粒子を含有する薄膜を均一に形成する方法に関するものであり、10μm以下程度の上層または下層の形成には適しているものの、逐次重層塗布形式には違いないため、必然的に上層−下層間に界面が形成される。
特許文献2に記載の技術は、正極における正極合剤層を、リチウム含有複合酸化物を含有する層と活性炭を含有する層との積層構造とすることで、電荷が上層の活性炭に蓄積されると同時に上層の活性炭と下層の活物質とが電子の授受を行うレドックスキャパシタ反応と類似した機構を構築するものである。しかし、特許文献2に記載の電極の製造に、特許文献3のように、上層−下層間に明瞭な界面が形成される手法を適用すると、上層−下層間の界面抵抗成分が、上記のレドックスキャパシタ反応に類似の反応を阻害してしまう。
特開2002−260634号公報 特開2005−203131号公報 特開2005−332809号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高性能であり、かつ大電流での充放電が可能なリチウム二次電池を構成し得るリチウム二次電池用正極を良好に製造する方法、上記リチウム二次電池用正極、および該リチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の方法は、集電体上に、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な活物質とバインダとを含有する下層と、表面においてリチウムイオンの物理的な吸着および脱着が可能であり且つ電気二重層を形成可能な材料とバインダとを含有する上層とが積層されてなるリチウム二次電池用正極の製造方法において、上記下層および上記上層を、上記活物質および上記バインダを含有する下層形成用塗料と上記材料および上記バインダを含有する上層形成用塗料とを、上記下層が上記集電体側となるように同時に重層塗布する塗布工程を経て形成し、上記下層の厚みを20〜100μmとし、上記上層の厚みを5〜20μmとすることを特徴とする。
また、本発明のリチウム二次電池用電極は、集電体上に、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な活物質とバインダとを含有する下層と、表面においてリチウムイオンの物理的な吸着および脱着が可能であり且つ電気二重層を形成可能な材料とバインダとを含有する上層とが積層されてなるリチウム二次電池用正極であって、上記下層の厚みが20〜100μmであり、上記上層の厚みが5〜20μmであり、上記下層が上記上層の表面に露出していないことを特徴とするものである。
更に、本発明のリチウム二次電池は、上記本発明のリチウム二次電池用正極を有するものである。
本発明によれば、高性能であり、かつ大電流(例えば10〜30C程度、すなわち、電池容量の10〜30倍程度の電流)での充放電が可能なリチウム二次電池を構成し得るリチウム二次電池用正極を良好に製造することができる。
また、本発明によれば、高性能であり、かつ大電流での充放電が可能なリチウム二次電池と、該リチウム二次電池を構成し得るリチウム二次電池用正極を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法は、集電体上に、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な活物質とバインダとを含有する下層と、表面においてリチウムイオンの物理的な吸着および脱着が可能であり且つ電気二重層を形成可能な材料とバインダとを含有する上層とが積層されてなるリチウム二次電池用正極を製造する方法である。
本発明法により製造されるリチウム二次電池用正極を用いた電池では、上記リチウム二次電池用正極における上記の積層構造(重層構造)により、上層における上記材料に電荷が蓄積されると同時に、上記材料と下層における上記活物質とが電子の授受を行うレドックスキャパシタ反応に類似の反応が生じるようにし、これにより、電池の高性能化を達成すると共に大電流での充放電を可能としている。
また、本発明法では、下層形成用塗料(以下、「下層用塗料」という)と上層形成用塗料(以下、「上層用塗料」という)とを、下層が集電体側となるように同時に重層塗布する工程を経て、下層および上層を形成することにより、下層が上層の表面に露出しないようにしており、これにより良好な特性を有するリチウム二次電池用正極の効率的な製造を可能としている。
本発明法により得られるリチウム二次電池用正極における上層は、表面においてリチウムイオンの物理的な吸着および脱着が可能であり且つ電気二重層を形成可能な材料を含有するものであるが、かかる材料としては活性炭が挙げられる。
活性炭としては、その平均粒径[体積頻度の積算で50%となる粒径(D50)]が、7μm以下、より好ましくは5μm以下の粒子であることが望ましい。また、活性炭の平均粒径は、1μm以上であることが好ましい。
更に、上層に用いる活性炭粒子は、その最大粒径が上層の厚みと同等以下であることが好ましい。活性炭粒子の最大粒径が上層の厚みよりも大きい場合、製造後の正極表面や下層との界面に活性炭の一部が突出することがある。このような正極をリチウム二次電池に用いると、正極表面に突出した活性炭がセパレータを突き破って負極との短絡が生じたり、下層との界面側に突出した活性炭による特定部分への極端な電流集中によって下層の活物質の利用率が部分的に極大となる可能性が生じる。このような正極を有する電池を大電流充放電条件下で長期間使用すると、正極全体の平衡電位バランスが徐々に崩壊し、安全性や残存容量など、種々の点で問題が発生することがある。上層に用いる活性炭粒子の最大粒径は、具体的には、10μm以下であることが好ましい。
また、上層にはバインダを用いる。バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールなどの熱可塑性樹脂;などが挙げられる。
上層の厚みは、5μm以上20μm以下である。上層をこのような厚みとすることで、特に大電流充放電におけるレドックスキャパシタ反応に類似の反応による効果を十分に確保し、また、体積あたりの容量を高めることができる。すなわち、上層が薄すぎると、正極全体に対するキャパシタ容量が低すぎて、大電流充放電によるレドックスキャパシタ反応に類似の反応による効果が十分に確保できなくなる。また、上層が厚すぎると、上層の絶縁抵抗成分が過大となって、体積あたりの容量メリットが出せなくなる。上層の厚みは、8μm以上であることが好ましく、また、15μm以下であることが好ましい。
また、上層の密度は、0.5g/cm以上、より好ましくは0.6g/cm以上であって、1.0g/cm以下であることが望ましい。例えば上層の上記材料として活性炭を用いる場合、活性炭自体の真密度が2.0g/cm程度であるので、上層の密度が1.0g/cmを超えるように活性炭を充填することが実質的に困難であること、および上層の密度が1.0g/cmを超えると、電解液の吸液性が低下して、大電流充放電に適さなくなることがあるなどの理由から、上層の密度は上記範囲とすることが好ましい。
リチウム二次電池用正極における上層および下層の密度は、例えば次のようにして求めることができる。上層用塗料および下層用塗料の乾燥後の密度を予め測定しておき、これらの塗料を重層塗布した後の上層用塗料塗膜および下層用塗料塗膜の乾燥後の面積と厚みを測定して、乾燥後(プレス前)の上層および下層の密度を求め、次に、プレス後の面積と厚みを測定することにより、電極となった状態での上層および下層の密度を計算する。
本発明法により得られるリチウム二次電池用正極における下層は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な活物質を含有するものであるが、かかる活物質としては、リチウム含有複合酸化物が挙げられ、より具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMn1/3Ni1/3、LiMn0.4Ni0.4Co0.2などの層状構造を有するリチウム含有複合酸化物;LiMn、Li1+xMn2−xなどのスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物や、これらのMnの一部をCo、Crなどの他の元素で置換したリチウム含有複合酸化物;などが挙げられる。
また、下層にはバインダを用いるが、その具体例としては、上層で使用できるものとして先に例示した各種バインダが挙げられる。
上記下層は、その厚みが、20μm以上200μm以下である。下層が薄すぎると、その厚みが活物質の粒子径を下回ることがあり、このような条件下では、均一な下層の形成が困難となることがある。また、下層が厚すぎると、単位面積あたりの塗布重量が増加して、とりわけ大電流充電時に抵抗成分が増加し、電池特性が低下することがある。下層の厚みは、100μm以下であることが好ましい。
なお、上層、下層とも、導電性の向上を目的として、導電助剤を含有させることができる。導電助剤の具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、カーボンブラック、アセチレンブラック、非晶質炭素などが挙げられる。
上層中における上記材料(活性炭など)の含有量は、50〜90質量%とすることが好ましく、また、上層中におけるバインダの含有量は、5〜10質量%とすることが好ましい。更に、上層に導電助剤を含有させる場合には、その含有量を5〜10質量%とすることが好ましい。よって、上層用塗料を調製する場合には、形成後の上層が、各構成材料を上記の好適含有量で含有するように、これらの混合比率を調整すればよい。
また、下層中における上記活物質の含有量は、86〜98質量%とすることが好ましく、また、下層中におけるバインダの含有量は、1〜5質量%とすることが好ましい。更に、下層に導電助剤を含有させる場合には、その含有量を1〜9質量%とすることが好ましい。よって、下層用塗料を調製する場合には、形成後の下層が、各構成材料を上記の好適含有量で含有するように、これらの混合比率を調整すればよい。
本発明法に係るリチウム二次電池で用いる集電体としては、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、SUS箔、銅箔や、導電性向上を目的としたこれらの材料で構成されるクラッド箔などが挙げられる。集電体の厚みは、6〜25μmが好ましい。
本発明法では、上層を下層上に均一に形成し、下層が上層の表面に露出しないようにするために、下層用塗料を塗布した直後で溶媒が乾燥していない塗膜上に、上層用塗料を直接塗布して、上層と下層とを形成する方式、すなわち、同時重層塗布方式を採用する。
上層と下層とを形成するにあたり、逐次重層塗布方式を採用すると、上層用塗料が下層と接触した瞬間に、既に乾燥している下層に上層用塗料の溶媒が吸収される。このため、均一な上層を形成するには、上層用塗料を塗布後直ちに溶媒が下層に吸収されても塗膜欠陥が生じないように、上層の厚みを、例えば上層の主成分(上記材料)の最大粒径の2倍以上に設定する必要があり、薄い上層を下層上に均一に形成することが困難である。
上層用塗料と下層用塗料とは、同一または類似の組成の溶媒を使用することが好ましい。ここでいう「類似の組成の溶媒を使用」とは、上層用塗料溶媒と下層用塗料溶媒の両者に、プロトン性の水素を持たない双極性非プロトン性溶媒を使用することを意味している。これは、下層用塗料の塗布直後から、下層用塗料塗膜の最表面での溶媒乾燥が開始した際に、かかる最表面を上層用塗料における溶媒(下層用塗料と同一または類似の組成の溶媒)で湿潤させるによる上層−下層間の界面でのなじみの向上と、上層用塗料と下層用塗料とに適切な濃度差を設定することによる上下でそれぞれ異なる組成の重層塗膜の形成を容易にすることとを同時に達成できるからである。なお、例えば、上層用塗料の溶媒に極性溶媒を用い、下層用塗料の溶媒に非極性溶媒を用いた場合など、上層用塗料溶媒と下層用塗料溶媒に、特性が極端に違うものを用いると、上層−下層間の界面に荒れが生じたり、上層用塗料溶媒と下層用塗料溶媒とが相溶しないために、上層−下層間に良好な界面が形成されないなどの問題が発生し、20μm以下の厚みの上層形成が困難となることがある。
上層用塗料および下層用塗料に用い得る溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)などが挙げられる。
上層用塗料の調製にあたっては、塗料中における各構成成分の分散性を高めるために、遊星ボールミルなどによる分散処理を行うことが好ましい。このような分散処理により、各構成成分の粒度制御と分散性向上とが同時に達成されるため、上記厚みの上層を同時重層塗布方式によって良好に形成できる。下層用塗料の調製方法については特に制限はなく、各構成材料を公知の手段によって溶媒に均一に分散させればよい(上層用塗料と同様に、遊星ボールミルなどによる分散処理を行っても構わない)。なお、上層用塗料および下層用塗料におけるバインダについては、溶媒に溶解させてもよいし、予め溶媒に溶解させた溶液を用いてもよい。
上下層用塗料の塗布直後には、上層用塗料塗膜と下層用塗料塗膜との界面部分での微量な溶媒対流と、上層用塗料塗膜内および下層用塗料塗膜内での構成材料停滞が同時に起こるため、上層用塗料の粘度を下層用塗料の粘度よりも低くすることが好ましく、上層用塗料の粘度を、下層用塗料の粘度の1/2以下とすることがより好ましく、1/5以下とすることが更に好ましい。下層用塗料の粘度に対して上層用塗料の粘度が高すぎると、重層塗布直後から上層用塗料と下層用塗料との濃度勾配の平衡化が始まるので、各層の乾燥完了までに上層用塗料と下層用塗料とが混同してしまうことがある。一方、下層用塗料の粘度に対して上層用塗料の粘度が低すぎると、上層用塗料が塗布直後より流出してしまい、塗膜を保持できないことがあるため、上層用塗料の粘度は、下層用塗料の粘度の1/20以上とすることが好ましく、1/10以上とすることがより好ましい。
なお、下層用塗料の密度が上層用塗料の密度よりも大きい場合には、溶媒乾燥時に、上層−下層間の界面部以外での層分離が生じ易いため、良好な重層塗膜を容易に得ることができる。一方、下層の密度を上層の密度よりも小さくするために、上層用塗料よりも密度の小さな下層用塗料を使用する場合には、上記のように上層用塗料と下層用塗料との粘度制御を厳密に行うことで、同時重層塗布方式を採用しつつ、良好な重層構造とすることが可能である。
また、上層用塗料と下層用塗料とでは、バインダの組成が異なっていることが、より重層構造を形成し易い点で好ましい。よって、リチウム二次電池用正極では、形成後の上層と下層とで、バインダの組成が異なっていることが好ましい。
例えば、ゴム系バインダ(フッ素ゴムなど)は、導電助剤として好適なアセチレンブラックとなじみがよく、良好に分散し易い。そのため、上層用塗料および下層用塗料において、フッ素ゴムのようなゴム系バインダ以外のバインダ(例えば、上記例示の含フッ素樹脂や熱可塑性樹脂など)を用い、更に上層用塗料または下層用塗料のいずれか一方において、全バインダ量中の20質量%以下程度をゴム系バインダ(フッ素ゴムなど)で置換すると、各層の成膜性が向上すると同時に、両層間での分離性がわずかながら向上するため、より良好な重層塗膜を得ることができる。しかし、上層用塗料または下層用塗料でのバインダの上記置換量が20質量%を超えると、上層−下層間の界面が分離しすぎて界面抵抗が大きくなることがあるため、その場合には、混合するバインダの組成、有する官能基、分子量などや、使用する溶媒の種類や混成比率などを十分に検討することが望ましい。
また、上層または下層において、更なる成膜性の向上を図るべく、界面活性剤、乳化剤などを添加剤として用いてもよい。なお、電極単位体積あたりの容量に影響を与えないことと、上層の成膜性の方が下層の成膜性よりも電極特性により密接に関連していることとを考慮して、上記添加剤は上層(すなわち、上層用塗料)に添加することが好ましい。
上記添加剤としては、正極稼動電位範囲内に酸化還元ピークを持たないものであれば特に限定されないが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチンなどが挙げられる。これらの中でも、アニオン系界面活性剤がより好ましい。アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
同時重層塗布方式の具体的な態様としては、例えば、単独ヘッド(スロット)で構成されるスライドコーター、エクストルージョンダイ、カーテンコーターなどの塗布機(コーター)で集電体上に下層用塗料を塗布し、下層用塗料溶媒が乾燥する前に、別の塗布機(例えば、上記例示の塗布機)に下層用塗料を塗布した集電体を移管して、下層用塗料塗膜上に上層用塗料を塗布することで重層塗布を行う方式(2コーター2ヘッド方式);上記のような単独ヘッドを2つ隣接して設置し、同一コーターで各ヘッドにより下層用塗料と上層用塗料とを集電体上に塗布する方式(1コーター2ヘッド方式);複数の流路を備えた単独ヘッドで構成されるエクストルージョンダイによって、一工程で下層用塗料と上層用塗料とを集電体上に塗布する方式(1コーター1ヘッド方式);などが挙げられる。
なお、本発明では、ラボスケールでの実証を行うために、スライドコーターにより下層用塗料を集電体上に塗布し、その直後に、スライドコーター(アプリケーターブロック)に隣接して設置されたカーテンコーターで下層用塗料塗膜上に上層用塗料を塗布する1コーター2ヘッド方式を採用したが、これは量産設備を考慮した場合には必ずしも最適ではなく、塗料特性や目的とする重層構造に併せて、塗布方式を適宜設計することが望ましい。
以下、上述の、スライドコーターで下層用塗料を、カーテンコーターで上層用塗料をそれぞれ塗布する方式を採用した場合の各種条件について説明する。上記スライドコーターでは、下層用塗料粘度が、2000mPa・s以上、より好ましくは3000mPa・s以上であって、10000mPa・s以下、より好ましくは8000mPa・s以下の場合に、好適な塗布特性を示す。このとき、下層用塗料の溶媒量に対する固体(活物質、バインダ、導電助剤などの固形分)量の比率(S/S比)は、70質量%以下、より好ましくは66質量%以下で、60質量%以上であることが望ましく、スライドコーターの塗布ギャップを70μm以上90μm以下とすれば、プレス後の厚みが28〜35μmで、密度が2.8〜2.9g/cm程度の下層を有する正極を製造することができる。ここで、下層用塗料粘度が10000mPa・sを超える場合には、塗料の流動性が低すぎてスライドコーターでの塗布が困難となり、また、2000mP・sを下回る場合には、逆に塗料の流動性が高すぎて、塗膜の乾燥中に単位面積あたりの塗布重量に斑が生じ易く、また、溶媒の対流が激しくなるため、下層の各構成材料(活物質、バインダ、導電助剤など)の均一分散性に乱れが発生することがある。
上記カーテンコーターでは、上層用塗料粘度が、500mPa・s以上、より好ましくは600mPa・s以上であって、1500mPa・s以下、より好ましくは900mPa・s以下の場合に、好適な塗布特性を示す。このとき、上層用塗料の溶媒量に対する固体(上記材料、バインダ、導電助剤などの固形分)量の比率(S/S比)は、30質量%以下、より好ましくは29質量%以下で、24質量%以上であることが望ましく、カーテンコーターの塗出量を10g/m以上30g/m以下とすれば、プレス後の厚みが8〜12μmで、密度が0.8〜1.0g/cm程度の上層を有する正極を製造することができる。ここで、上層用塗料粘度が1500mPa・sを超える場合には、塗料の流動性が低すぎてカーテンコーターの塗出部で目詰まりが生じ易く、また、500mP・sを下回る場合には、逆に塗料の流動性が高すぎて、塗出部で塗料が保持されず漏液を起こすことがある。
なお、上記の下層用塗料粘度および上層用塗料粘度は、例えば、TOKIMEC社製のB型粘度計「VISCOMETER TV−30」を用い、コーン部の回転速度を5rpmとし、25℃で測定した値を用いることができる。
上記スライドコーターとカーテンコーターの組み合わせによる同時重層塗布の場合の塗工速度は、20mm/s以下、より好ましくは10mm/s以下で、0.5mm/s以上とすることが望ましく、このような塗工速度とすることで、良好な重層塗膜を得ることができる。塗工速度が20mm/sを超えると、スライドコーターで塗布された下層用塗料塗膜の表面が、その表面張力によって平滑化する前に、カーテンコーターで射出された上層用塗料が下層用塗料塗膜と接触する。このとき、下層用塗料塗膜表面の粗さが直接上層用塗料塗膜に影響を及ぼすため、例えば、上記のような厚み(20μm以下の厚み)で良好な上層を形成することが困難となるからである。なお、このような観点から、塗工速度は遅いほど塗膜の成膜性は向上するが、量産性を考慮すると、0.5mm/s以下の塗工速度とするのは現実的ではない。
また、下層用塗料の表面張力を、上層用塗料のそれよりも大きくすることで、良好な重層塗膜を形成することができる。これは、異なる液体同士が接触する場合、表面張力が小さく濃度が低い液体を上層側に配置することで、上層側の液体の安定性がより向上し、層分離膜(重層塗膜)を形成し易いからである。なお、逆に上層用塗料の表面張力を下層用塗料よりも大きくすると、塗布直後に上層用塗料が下層用塗料(下層用塗膜)との濃度勾配を減少させて安定化しようとするので、結果的に下層用塗料塗膜に上層用塗料が混入してしまい、層分離膜(重層塗膜)の形成が困難となる。
このようなことから、上層用塗料には、ある程度の低S/S比と、低表面張力特性を同時に持たせることが好ましいが、液体濃度を下げるために単に溶媒量を増やすだけでは、表面張力が溶媒に近づくため、あまり好ましくない。そこで、例えば、塗料におけるバインダを、より高分子量のものや官能基を有するものとしたり、PVDFとゴム系バインダなどのように異なる種類のバインダを適宜組み合わせて使用するなどが好ましく、このような手法によれば、塗料のS/S比を一定にしたまま塗料粘度を制御することもできる。
また、カーテンコーターと塗布面の距離は、目的とする塗布厚みの1.5〜2倍とすることが好ましい。これは、2倍以上ではカーテンコーターから塗出される塗料カーテンが液滴となってしまい、集電体の搬送方向に平行な筋を発生させることがあるためであり、一方、1.5倍以下では下層用塗料を掻き取ってしまい、適正厚みでの塗布が困難となるからである。
なお、これまで、スライドコーターにより下層用塗料を集電体上に塗布し、その直後に、スライドコーターに隣接して設置されたカーテンコーターで下層用塗料塗膜上に上層用塗料を塗布する1コーター2ヘッド方式によって、同時重層塗布を行う場合に好適な下層用塗料および上層用塗料の特性について説明したが、下層用塗料および上層用塗料の組成、S/S比、粘度などについては、その好適範囲が同時重層塗布に使用する各種装置ごとに変動するため、下層用塗料および上層用塗料の特性が使用する装置に適するように、適宜調整すればよい。
上記のようにして下層用塗料と上層用塗料の同時重層塗布を行った後は、乾燥して塗料の溶媒を除去し、必要に応じて公知のプレス処理などによって上層および下層の厚みと密度を調節することで、リチウム二次電池用正極を得ることができる。
このようにして得られた本発明のリチウム二次電池用正極は、5μm以上20μm以下と非常に薄い上層を有しつつ、下層が上層の表面に露出しないように上層で下層を良好に被覆できており、正極全体にわたって安定して優れた特性を有するものである。よって、このような本発明のリチウム二次電池用正極を用いれば、高性能でかつ大電流での充放電が可能なリチウム二次電池を安定して提供できる。
本発明のリチウム二次電池は、本発明のリチウム二次電池用正極を有していれば、その他の構成(負極、非水電解液、セパレータ、外装体など)や構造については特に制限はなく、従来公知のリチウム二次電池で採用されている各種構成および構造を適用することができる。なお、本発明のリチウム二次電池においては、例えば、負極に係る負極活物質には、黒鉛、メソカーボン、非晶質炭素など従来公知のものを使用することができるが、ガス発生が少ないことから、非晶質炭素が好ましいと考えられる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
<塗料の調製>
正極活物質として平均粒径D50=10μmのLi1.05Mn1.95:86質量部、導電助剤として平均粒径D50=3μmの黒鉛質炭素:9.2質量部と平均粒径D50=0.04μm、比表面積40m/gのアセチレンブラック:1.8質量部、およびバインダとしてMw(重量平均分子量)=280,000のPVDF:3質量部を、プラネタリミキサーを用いて30rpmの回転数で60分間混練後、S/S比が64.5質量%になるまでNMPを添加して減圧混練を行って下層用塗料を調製した。この下層用塗料の粘度は4600mPa・sで、表面張力は36.4dyne/cmであった。
また、平均粒径D50=2.2μmに粉砕した活性炭:79.6質量部、導電助剤としてアセチレンブラック(下層用塗料に用いたのと同じもの):9.9質量部、バインダとしてMw=280,000のPVDF:8質量部とMw=630,000のPVDF:2質量部、添加剤としてヒドロキシプロピルセルロース:0.5質量部を、遊星ボールミルを用いて150rpmの回転数で30分間の処理を3回行い、その後S/S比が28質量%になるまでNMPを添加して減圧混練を行って上層用塗料を調製した。この上層用塗料の粘度は620mPa・sで、表面張力は19.9dyne/cmであった。
<1コーター2ヘッド同時重層塗布の方法>
集電体である15μm厚みのアルミニウム箔を210cm×600cmサイズに裁断し、第コーターの塗布常盤に設置した。ダイコーターのカーテンコーター部を塗布開始端まで移動させてから、塗布ギャップ80μmのSUS製アプリケーターブロックを、塗布方向に対してカーテンコーターよりも手前の位置になるようアルミニウム箔上に設置した。下層用塗料の塗布厚みを基準として、目的の上層用塗料の塗布厚み25μm(乾燥前)の2倍となる50μmとなるようにカーテンコーターの位置を調整し、アプリケーターブロックで下層用塗料、カーテンコーターで上層用塗料を塗布した。塗工速度は3mm/sであった。重層塗布を行った後のアルミニウム箔を85℃のホットプレート上に10分間静置してNMPを蒸発させた後に、炉内温度を100℃に設定した真空乾燥機内に15時間静置してNMPを完全に乾燥させた。乾燥後の下層および上層の重量は、それぞれ10.3mg/cm、0.6mg/cmであった。次に、下層の密度が2.7g/cmとなるようにカレンダーロールプレス機で加圧成形して、リチウム二次電池用正極を得た。作製した正極の下層は、厚みが30μm、密度が2.72g/cmであり、上層は、厚みが10μm、密度が1.01g/cmであった。
実施例2
上層用塗料の組成を、平均粒径D50=2.2μmの活性炭:80質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、バインダであるMw=280,000のPVDF:8質量部とMw=630,000のPVDF:2質量部、とした以外は実施例1と同様にして上層用塗料を調製した。この上層用塗料の粘度は890mPa・sで、表面張力は20.1dyne/cmであった。
上記の上層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウム二次電池用正極を作製した。なお、上層および下層の重量、厚みおよび密度は、実施例1のリチウム二次電池用正極を同等になるように各種条件を調整した。
実施例3
上層用塗料の組成を、平均粒径D50=2.2μmの活性炭:76.06質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:9.47質量部、バインダであるMw=280,000のPVDF:14質量部、および添加剤であるヒドロキシプロピルセルロース:0.48質量部とした以外は実施例1と同様にして上層用塗料を調製した。この上層用塗料の粘度は480mPa・sで、表面張力は32.6dyne/cmであった。
上記の上層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウム二次電池用正極を作製した。なお、上層および下層の重量、厚みおよび密度は、実施例1のリチウム二次電池用正極を同等になるように各種条件を調整した。
実施例4
粉砕処理をかけていない平均粒径D50=4.8μmの活性炭を用い、塗料組成を実施例1と同一にして、プラネタリミキサーを用いて30rpmの回転数で60分間混練後、S/S比が28質量%になるまでNMPを添加して減圧混練を行って上層用塗料を調製した。この上層用塗料の粘度は540mPa・sで、表面張力は38.2dyne/cmであった。
上記の上層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウム二次電池用正極を作製した。なお、上層および下層の重量、厚みおよび密度は、実施例1のリチウム二次電池用正極を同等になるように各種条件を調整した。
実施例5
上層用塗料の組成を、平均粒径D50=2.2μmの活性炭:80質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、およびバインダであるMw=280,000のPVDF:5質量部とMw=630,000のPVDF:5質量部とした以外は実施例1と同様にして上層用塗料を調製した。この上層用塗料の粘度は2160mPa・sで、表面張力は23.9dyne/cmであった。
上記の上層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウム二次電池用正極を作製した。なお、上層および下層の重量、厚みおよび密度は、実施例1のリチウム二次電池用正極を同等になるように各種条件を調整した。
実施例6
上層用塗料の組成を、平均粒径D50=2.2μmの活性炭:80質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、およびバインダであるMw=280,000のPVDF:10質量部とした以外は実施例1と同様にして上層用塗料を調製した。この上層用塗料の粘度は170mPa・sで、表面張力は23.1dyne/cmであった。
上記の上層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウム二次電池用正極を作製した。なお、上層および下層の重量、厚みおよび密度は、実施例1のリチウム二次電池用正極を同等になるように各種条件を調整した。
比較例
実施例1で使用したものと同じ下層用塗料と、実施例4で使用したものと同じ上層用塗料を用いて、以下の逐次重層塗布によりリチウム二次電池用正極を作製した。
集電体である15μm厚みのアルミニウム箔を210cm×600cmサイズに裁断し、この上にギャップ85μmのアプリケーターバーを用いて下層用塗料を塗布した。下層用塗料塗布後のアルミニウム箔を、85℃のホットプレート上で10分間NMPを蒸発させ、さらに炉内温度を100℃に設定した真空乾燥機内に15時間静置してNMPを完全に乾燥させた。これを、下層の密度が2.7g/cmになるまでカレンダーロールプレス機により加圧成形した後に、下層上に上層用塗料を、実施例1と同様の条件でカーテンコーターにて塗布した。このとき、塗布ギャップが、乾燥後の下層の厚み47μmを基準とし、目的の上層用塗料塗膜の厚み25μm(乾燥前)の2倍となる50μmとなるようにカーテンコーターの位置を調整して、上層用塗料を塗布した。下層上に上層用塗料を塗布した後のアルミニウム箔を85℃のホットプレート上に10分間静置してNMPを蒸発させた後に、炉内温度を100℃に設定した真空乾燥機内に15時間静置してNMPを完全に乾燥させてから、上層の密度が1.0g/cmとなるようにカレンダーロールプレス機で加圧成形して、リチウム二次電池用正極を得た。作製した正極の下層は、厚みが30μm、密度が2.72g/cmであり、上層は、厚みが10μm、密度が1.01g/cmであった。
実施例1〜6および比較例の各リチウム二次電池用正極について、良好な重層構造が形成されているか否かを、下記の基準で判断した。
(1)目視観察で、正極表面の欠陥(下層が上層表面に露出していないことを含む)、泡立ち、ユズ皮、かすれ、スジなどがないこと。
(2)上層の厚みおよび上層の重量が、全体にわたって目標とする数値の±3%未満の誤差範囲内にあること。
(3)上層および下層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、上層と下層との分離が確認できること。
(4)上層および下層の断面のSEM観察により、上層の厚みが10μmで、下層の厚みが30μmであること。
(5)SEM観察により、上層と下層との間にひび割れ、泡立ち、スジなどの欠陥がないこと。
上記の基準による判断の結果、特に良好であったものを◎、良好であったものを○、電極として使用できるが、やや問題もあるものを△、不良であったものを×として判定した。これらの判定結果と、目視観察による正極表面における欠陥、泡立ちおよびかすれ・スジの有無、上層の厚み、重量および上層重量の誤差範囲、並びにSEM観察による上層と下層との分離および上層下層間のひび割れの有無を表1に示す。なお、表1では、SEM観察による上層と下層との分離が良好であった場合を「OK」、不良であった場合を「NG」と表記し、SEM観察によるひび割れ(上層下層間のひび割れ)がなかったものを「OK」、あったものを「NG」と表記する。
Figure 2008034215
なお、比較例における上層に関する「N/A」は、上層が均一に形成できなかったために、測定ができなかったことを意味している。
表1に示すように、実施例1〜3では、正極全体にわたって、上層および下層が良好に形成されたリチウム二次電池用正極が得られている。一方、実施例4〜6では、上層用塗料の粘度または表面張力が好適範囲から外れているために、上記実施例1〜3に比べて均一性が低下したリチウム二次電池用正極となった。
また、実施例1〜3の正極を用いてリチウム二次電池を構成したところ、30Cの大電流でも充放電効率の高い電池を構成することができた。また、実施例4〜6の正極では、10C程度の電流値には対応できるが、上記実施例1〜3の正極と比べると均質性に劣るため、より電流値の大きな30Cの条件では、効率が低下してしまった。一方、比較例の電極では、10C程度の電流値においても特性の著しい低下が見られた。

Claims (9)

  1. 集電体上に、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な活物質とバインダとを含有する下層と、表面においてリチウムイオンの物理的な吸着および脱着が可能であり且つ電気二重層を形成可能な材料とバインダとを含有する上層とが積層されてなるリチウム二次電池用正極の製造方法において、
    上記下層および上記上層を、上記活物質および上記バインダを含有する下層形成用塗料と、上記材料および上記バインダを含有する上層形成用塗料とを、上記下層が上記集電体側となるように同時に重層塗布する塗布工程を経て形成し、
    上記下層の厚みを20〜100μmとし、上記上層の厚みを5〜20μmとすることを特徴とするリチウム二次電池用正極の製造方法。
  2. 上層における電気二重層を形成可能な材料が活性炭であり、下層における活物質がリチウム含有複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
  3. 活性炭は、平均粒径が7μm以下であり、かつ最大粒径が10μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
  4. 上層形成用塗料の粘度が、下層形成用塗料よりも低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
  5. 上層と下層において、それぞれのバインダの組成が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
  6. 上層に、界面活性剤または乳化剤を含有させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
  7. 上層形成用塗料の表面張力が、下層形成用塗料よりも低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
  8. 集電体上に、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な活物質とバインダとを含有する下層と、表面においてリチウムイオンの物理的な吸着および脱着が可能であり且つ電気二重層を形成可能な材料とバインダとを含有する上層とが積層されてなるリチウム二次電池用正極であって、
    上記下層の厚みが20〜100μmであり、上記上層の厚みが5〜20μmであり、上記下層が上記上層の表面に露出していないことを特徴とするリチウム二次電池用正極。
  9. 請求項8に記載のリチウム二次電池用正極を有することを特徴とするリチウム二次電池。
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