JP7334202B2 - 二次電池用電極の製造方法および該電極 - Google Patents
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Description
また、電極活物質層に塗布液を塗布することも検討されている。例えば、特許文献3では、湿潤粉体成膜によって得られた負極活物質層の表面に絶縁粒子を含む塗布液を塗布して絶縁層を形成する方法が開示されている。
そして、従来の湿潤粉体とは異なり、固形分(固相)と溶媒(液相)と空隙(気相)との存在形態を、後述するペンジュラー状態あるいはファニキュラー状態(特にファニキュラーI状態)とすること、換言すれば、湿潤粉体を構成する凝集粒子を形成する電極活物質粒子間を架橋するのに過不足ない適量の溶媒(液相)が存在するとともに、該凝集粒子内に外部と連通する空隙が形成されており、かつ、該凝集粒子の表面には実質的な溶媒の層が形成されないことによって、集電体上に形成された乾燥前の塗膜に所望する凹凸形状を付与することが可能であることを見出した。かかる凹凸形状を有する塗膜に対して塗布液(例えば、無機化合物を含むコート材)を塗布することによって、コート材からなる塗布物と塗膜からなる電極活物質層とが接触する表面積が増大し、かつ、電極の厚さ方向にも塗布物を配置させることができ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
かかる製造方法によれば、成膜後の塗膜に所望する凹凸形状を付与し、かかる凹凸形状を有する乾燥前の電極に少なくとも一種の無機化合物を有するコート材を塗布することができる。上述したように、固相と液相と気相とがペンジュラー状態あるいはファニキュラー状態(特にファニキュラーI状態)の湿潤粉体を用いて気相を残した状態で成膜することにより、所定の凹凸形状を有する電極を製造することができる。凹凸形状を有する塗膜は表面積が増大し、かつ、電極の厚さ方向に塗布物が配置され得る空間(凹部)を有することができる。これにより、活物質層の表面積の増大と厚さ方向への塗布物の配置を実現する電極を好適に製造することができる。
かかる構成によれば、塗膜と塗布物とが接触する表面積を増大することができ、塗布物を塗布することの効果がより一層発揮される。
かかる構成によれば、電極の機械的強度を向上させることができ、充放電時の電極の膨張および収縮によっても凹凸形状を維持し得る電極を製造することができる。
かかる構成によれば、二次電池の高容量化に寄与する一方で充放電に伴う体積変化が大きくクラックを引き起こす傾向にある活物質を、凹部に配置することにより、かかるクラックを緩和しつつ高容量化された電極を製造することができる。
かかる構成によれば、電極活物質層と塗布物とが接触する表面積が増大し、かつ、電極活物質層の厚さ方向への塗布物の配置を実現することができる。これにより、電極活物質層が塗布物を有することの効果がより一層発揮される。
かかる構成によれば、凹凸形状を有する電極であっても、活物質層の凹部において局所的な電極密度の上昇(緻密化)がない電極を提供することができる。
かかる構成によれば、電極の機械的強度が向上し、充放電時の電極の膨張および収縮によっても凹凸形状が維持される電極を提供することができる。
かかる構成によれば、二次電池の高容量化に寄与し得る活物質を塗布物として用いることにより、高容量化された電極を提供することができる。
なお、寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
また、本明細書において範囲を示す「A~B(ただし、A,Bは任意の値。)」の表記は、A以上B以下を意味するものとする。
図1に示すようにここに開示される電極の製造方法は、大まかに言って、以下の5つの工程:(1)湿潤粉体(電極材料)を用意する工程(S1);(2)湿潤粉体からなる塗膜を成膜する工程(S2);(3)塗膜に凹凸を形成する工程(S3);(4)凹凸形成後の塗膜にコート材を塗布する工程(S4);(5)塗膜およびコート材を乾燥する工程(S5);を包含しており、乾燥工程S5前に凹凸形状を有する塗膜に対してコート材を塗布する点において特徴づけられている。したがって、その他の工程は特に限定されず、従来この種の製造方法と同様の構成でよい。以下、各工程について説明する。
電極材料30は、上述した電極活物質、溶媒、バインダ樹脂、その他の添加物等の材料を従来公知の混合装置を用いて、混合することによって用意することができる。かかる混合装置としては、例えば、プラネタリーミキサー、ボールミル、ロールミル、ニーダ、ホモジナイザー等が挙げられる。
湿潤粉体を構成する凝集粒子における固形分(固相)、溶媒(液相)および空隙(気相)の存在形態(充填状態)に関しては、「ペンジュラー状態」、「ファニキュラー状態」、「キャピラリー状態」および「スラリー状態」の4つに分類することができる。
ここで「ペンジュラー状態」は、図3の(A)に示すように、凝集粒子1中の活物質粒子(固相)2間を架橋するように溶媒(液相)3が不連続に存在する状態であり、活物質粒子(固相)2は相互に連なった(連続した)状態で存在し得る。図示されるように溶媒3の含有率は相対的に低く、その結果として凝集粒子1中に存在する空隙(気相)4の多くは、連続して存在し、外部に通じる連通孔を形成している。そしてペンジュラー状態では、電子顕微鏡観察(SEM観察)において凝集粒子1の外表面の全体にわたって連続した溶媒の層が認められないことが特徴として挙げられる。
ファニキュラー状態は、ペンジュラー状態とキャピラリー状態との間の状態であり、ペンジュラー状態寄りのファニキュラーI状態(即ち、比較的溶媒量が少ない状態のもの)とキャピラリー状態寄りのファニキュラーII状態(即ち、比較的溶媒量が多い状態のもの)とに区分したときのファニキュラーI状態では、依然、電子顕微鏡観察(SEM観察)において凝集粒子1の外表面に溶媒の層が認められない状態を包含する。
「スラリー状態」は、図3の(D)に示すように、もはや活物質粒子2は、溶媒3中に懸濁した状態であり、凝集粒子とは呼べない状態となっている。気相はほぼ存在しない。
以下、ここで開示される上記(1)および(2)の要件を具備する湿潤粉体を「気相制御湿潤粉体」という。
なお、ここに開示される気相制御湿潤粉体は、少なくとも50個数%以上の凝集粒子が上記(1)および(2)の要件を具備することが好ましい。
また、最小の溶媒で活物質間の液架橋を実現するために、使用する粉体材料の表面と使用する溶媒には、適度な親和性があることが望ましい。
好ましくは、ここで開示される好適な気相制御湿潤粉体として、電子顕微鏡観察で認められる三相の状態がペンジュラー状態若しくはファニキュラー状態(特にファニキュラーI状態)であって、さらに、得られた湿潤粉体を所定の容積の容器に力を加えずにすり切りに入れて計測した実測の嵩比重である、緩め嵩比重X(g/mL)と、気相が存在しないと仮定して湿潤粉体の組成から算出される比重である、原料ベースの真比重Y(g/mL)とから算出される「緩め嵩比重Xと真比重Yとの比:Y/X」が、1.2以上、好ましくは1.4以上(さらには1.6以上)であって、好ましくは2以下であるような湿潤粉体が挙げられる。
固形分の主成分である電極活物質としては、従来の二次電池(ここではリチウムイオン二次電池)の負極活物質あるいは正極活物質として採用される組成の化合物を使用することができる。例えば、負極活物質としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料が挙げられる。また、正極活物質としては、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4等のリチウム遷移金属複合酸化物、LiFePO4等のリチウム遷移金属リン酸化合物が挙げられる。電極活物質の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm~50μm程度が適当であり、1~20μm程度が好ましい。なお、本明細書において、「平均粒径」とは、一般的なレーザ回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径(D50、メジアン径ともいう。)をいう。
溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)や、水系溶媒(水または水を主体とする混合溶媒)等を好ましく用いることができる。
なお、本明細書において、「固形成分」とは、上述した各材料のうち溶媒を除く材料(固形材料)のことをいい、「固形分率」とは、各材料すべてを混合した電極材料のうち、固形成分が占める割合のことをいう。
具体的には、撹拌造粒機の混合容器内に固形成分である電極活物質と種々の添加物(バインダ樹脂、増粘材、導電材、等)を投入し、モータを駆動させて回転羽根を、例えば、2000rpm~5000rpmの回転速度で1~60秒間(例えば2~30秒)程度、回転させることによって各固形成分の混合体を製造する。そして、固形分が70%以上、より好ましくは80%以上(例えば85~98%)になるように計量された適量の溶媒を混合容器内に添加し、撹拌造粒処理を行う。特に限定するものではないが、回転羽根を例えば100rpm~1000rpmの回転速度で1~60秒間(例えば2~30秒)程度さらに回転させる。これによって、混合容器内の各材料と溶媒が混合されて湿潤状態の造粒体(湿潤粉体)を製造することができる。なお、さらに1000rpm~3000rpm程度の回転速度で1~5秒間程度の短い撹拌を断続的に行うことで、湿潤粉体の凝集を防止することができる。得られる造粒体の粒径は、例えば、50μm以上(例えば100μm~300μm)であり得る。
このような存在形態にするため、上述した用意工程S1において、気相を増大させ得る種々の処理や操作を取り入れることができる。例えば、撹拌造粒中若しくは造粒後、乾燥した室温よりも10~50度程度加温されたガス(空気または不活性ガス)雰囲気中に造粒体を晒すことにより余剰な溶媒を蒸発させてもよい。また、溶媒量が少ない状態でペンジュラー状態またはファニキュラーI状態である凝集粒子の形成を促すため、活物質粒子その他の固形成分同士を付着させるために圧縮作用が比較的強い圧縮造粒を採用してもよい。例えば、粉末原料を鉛直方向から一対のロール間に供給しつつロール間で圧縮力が加えられた状態で造粒する圧縮造粒機を採用してもよい。
ここに開示される製造方法においては、電極材料30の気相(空隙)を残した状態で塗膜32を成膜する。電極材料30からなる塗膜32の成膜は、例えば、図2に模式的に示すような成膜部120において行うことができる。図示されるように、成膜部120は、転写ロールが連続的に複数備えられている。この例では、供給ロール121に対向する第1転写ロール122、該第1転写ロールに対向する第2転写ロール123、および、該第2転写ロールに対向し、且つ、バックアップロール125にも対向する第3転写ロール124を備えている。
このような構成とすることにより、各ロール間のギャップG1~G4のサイズを異ならせ、湿潤粉体の連通孔を維持しつつ好適な塗膜32を形成することができる。以下、このことを詳述する。
このように各回転ロール間で集電体搬送方向(進行方向)に沿って回転速度を少しずつ上げていくことによって、ロール成膜を行うことができる。
塗膜32に対する凹凸形成は、例えば、図2に示すような凹凸転写ロール132とバックアップロール134とを用いて行うことができる。ここに開示される電極の製造方法においては、空隙(気相)を残した状態で成膜された塗膜32に対して凹凸形成工程S3を実施する。かかる塗膜32の平均空隙率(気相率)は、少なくとも1%以上であることが好ましく、例えば1%以上55%以下、典型的には5%以上55%以下であってよい。気相を残した状態で凹凸を形成することにより、展延性が向上しているため、従来よりも小さい荷重で塗膜32に対して所望する凹凸形状を付与することができる。また、凹凸を形成するために荷重がかけられたとしても、塗膜32の表面部において局所的な密度の上昇(緻密化)することなく凹凸形状を形成することができる。
塗膜32に対するコート材20の塗布工程は、グラビアコーター等の各種凹版印刷機、スリットコーター、コンマコーター、キャップコーター(capillary coater:CAPコーター)等のダイコーター、リップコーター等の各種の塗布装置を使用することができる。なかでも、グラビア印刷法を利用して塗布すると、比較的高速でのコート材20を塗布することができるため、好ましい。例えば、図2および図4では、塗布装置142としてダイレクトグラビアロールコーター(direct gravure roll coater)が例示されている。微細なパターンが表面に彫刻されたグラビアロール142aを用いたダイレクトグラビアによって、コート材20を塗膜32に転写するとよい。グラビアロール142aの外周面には、コート材20を保持するための溝を有している。かかる溝は、概ね10~30μm(例えば、20μm)、であってよい。
なお、本明細書においては、「金属」とは、Siのような半金属も含まれ得る。また、「合金」とは、微視的なレベルで2種以上の金属を混合したものを意味し、合金の組織としては、例えば、固溶体、金属間化合物あるいはそれらが共存するものが含まれ得る。
また、無機化合物の他に固形材料として、無機化合物を結着させるためのバインダ(ポリマー成分)等が挙げられる。かかるバインダとしては、例えば、上述した電極材料に配合され得るバインダから適宜選択し使用することができる。
従来のスラリー状の電極材料からなる塗膜に対して、乾燥工程実施前の塗膜にコート材を塗布する場合には、塗膜とコート材とが混合する。一方、乾燥工程実施後の塗膜(すなわち電極活物質層)にコート材を塗布する場合には、溶媒が蒸発(揮発)した際に塗膜に形成される空隙にコート材が浸透する。結果的に乾燥工程の実施前および後のどちらによっても電極の厚さ方向(Z方向)の制御をすることが困難であった。また、従来の溶媒リッチな湿潤粉体(すなわち、キャピラリー状態)からなる塗膜においても、凝集粒子の外表面(すなわち塗膜の表面)に溶媒の層が存在しているため、コート材を塗布した際に塗膜とコート材とが混ざり合うことがあった。
これに対して、上述したようにペンジュラー状態およびファニキュラー状態(特にファニキュラーI状態)の気相制御湿潤粉体は、凝集粒子の外表面(すなわち塗膜の表面)の全体にわたって連続した溶媒の層が認められないため、かかる気相制御湿潤粉体を用いて塗膜を成膜することにより、塗膜とコート材とが混ざり合うことを抑制することができる。またこれに加えて、凹凸を形成する際に荷重が負荷されることによって、塗膜の気相率(空隙率)がわずかに減少し、活物質粒子(固相)同士は相互により密に連なった状態となり得る。このことによっても、コート材が塗膜に染み込むことを抑制し得る。
図2に示すように、本実施形態に係る電極製造装置100の塗布部140よりも搬送方向の下流側には、乾燥部150として図示しない加熱器(ヒータ)を備えた乾燥室が配置されている。かかる乾燥部150は、電極集電体12上に形成された塗膜32およびコート材20を乾燥させて、塗膜32からなる電極活物質層14と、該活物質層14上の凹凸形状の凹部内に配置されるコート材20からなる塗布物22と、を備える電極10を形成する。乾燥の方法については、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥等の手法が挙げられる。なお、乾燥工程S5は、従来のこの種の電極製造装置における乾燥工程と同様でよく、特に本教示を特徴付けるものではないため、これ以上の詳細な説明は省略する。
以下、特に限定されるものではないが、ベーマイトを含む塗布物22が凹部に保持されている場合を例にして記載する。電極活物質層14の凹部にベーマイトを含む塗布物22が保持されることによって、ベーマイトが骨格維持剤として機能し該凹部の機械的強度を向上させ得る。具体的には、電極10が充放電によって膨張収縮を繰り返した際にも、かかるベーマイトのはたらきによって、電極10の凹部形状を維持することができる。かかる電極10を二次電池に用いた時には、凹部が維持されることにより凹部が電解質(典型的には非水電解液)をより好適に保液することができる。これに加えて、ここに開示される電極10の凹部は緻密化されておらず、Liイオンの挿入/脱離経路として機能している。このため、従来の電極と比較しても、凹部に電解質を保液することの効果が高い。
なお、ベーマイトを例にして説明したが、かかる効果はアルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニアおよびチタニア等の非導電性の無機化合物粒子(いわゆる無機フィラー)を含む塗布物22が、凹部に保持された場合にも同様の効果を得ることができ得る。
図6に示すリチウムイオン二次電池200は、密閉可能な箱型電池ケース50に、扁平形状の捲回電極体80と、非水電解液(図示せず)とが、収容されて構築される。電池ケース50には、外部接続用の正極端子52および負極端子54と、電池ケース50の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁56とが設けられている。また、電池ケース50には、非水電解液を注液するための注液口(図示せず)が設けられている。正極端子52と正極集電板52aは、電気的に接続されている。負極端子54と負極集電板54aは、電気的に接続されている。電池ケース50の材質は、高強度であり軽量で熱伝導性が良い金属製材料が好ましく、このような金属材料として、例えば、アルミニウムやスチール等が挙げられる。
なお、上記非水電解液は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
体を電極材料として用いた場合の実施例を説明するが、ここで開示される技術をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
負極材料として好適に使用し得る気相制御湿潤粉体を作製し、次いで、該作製された湿潤粉体(負極材料)を用いて銅箔上に負極活物質層を形成した。
本試験例では、負極活物質としてレーザ回折・散乱方式に基づく平均粒子径(D50)が10μmである黒鉛粉、バインダ樹脂としてスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、溶媒として水を用いた。
具体的には、混合羽根を有する撹拌造粒機内で混合羽根の回転速度を4500rpmに設定し、15秒間の撹拌分散処理を行い、上記固形分からなる粉末材料の混合物を得た。得られた混合物に、固形分率が90重量%となるように溶媒である水を添加し、300rpmの回転速度で30秒間の撹拌造粒複合化を行い、次いで4500rpmの回転速度で2秒間撹拌し微細化を行った。これにより本試験例に係る湿潤粉体(負極材料)を作製した。
次いで、上記得られた気相制御湿潤粉体(負極材料)を、上記電極製造装置の成膜部に供給し、別途用意した銅箔からなる負極集電体の表面に塗膜を転写した。
なお、コート材は、99質量部のベーマイトと1質量部のPVDFとからなる固形分を撹拌造粒機で混合し、溶媒であるNMPを添加して調整したものを用いた。
かかるコート材が塗布された塗膜を乾燥部で加熱乾燥させ、ロール圧延機によりプレスした。これにより、電極活物質層と該活物質層の凹部内に塗布物の少なくとも一部が配置されている電極を得た。
また、実施例1の電極活物質層の凹部の上層および下層の電極密度(g/cm3)を測定した。なお、上層および下層の電極密度は、電極活物質層の真密度に該当範囲の充填率を乗ずることによって求めた。電極の真密度は、構成成分の密度と含有割合に基づいて算出した。また、該当範囲の充填率は、走査型電子顕微鏡(SEM)による電極活物質層の断面観察において、画像解析ソフト「ImageJ」を用いて二値化処理を行うことによって算出した。
その結果、凹部の上層の電極密度d1が1.2g/cm3、凹部の下層の電極密度d3が1.2g/cm3であった。
比較対象として、凹凸形状を有しない電極活物質層に無機化合物を含む塗布物を配置した電極を用意した。具体的には、実施例1と同様にして電極材料を混合し、別途用意した銅箔からなる負極集電体の表面に塗膜を転写した。かかる塗膜を塗布部に搬送し、ダイレクトグラビアロールコーターを用いて、無機化合物を含むコート材を塗布した。これにより、塗膜の表面にコート材が塗布された塗膜を得た。
かかるコート材が塗布された塗膜を乾燥部で加熱乾燥させ、ロール圧延機によりプレスした。これにより、電極活物質層と該活物質層の表面に塗布物とを備える電極を得た。
上記作製した実施例1よび各比較例1の電極を用いて、評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
実施例1および比較例1の正極は、スラリー状態の電極材料からなる正極を用意した。
また、セパレータシートとしては、PP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを2枚用意した。
作製した実施例1および比較例1の電極と、正極と、用意した2枚のセパレータシートとを重ね合わせ、捲回して捲回電極体を作製した。作製した捲回電極体の正極シートと負極シートのそれぞれに電極端子を溶接により取り付けて、これを、注入口を有する電池ケースに収容した。
かかる注入口から非水電解液を注入し、該注入口を封口蓋により気密に封止した。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:1:1の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。以上のようにして、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
25℃の環境下で、各評価用リチウムイオン二次電池の活性化処理(初回充電)を行った。活性化処理は、定電流-定電圧方式とし、1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行うことで満充電状態にした。その後、1/3Cの電流値で電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行った。
評価用リチウムイオン二次電池を作成する前の各例の負極の膜厚を、接触式マイクロメーターを用いて測定した。膜厚は3か所測定し、膜厚の平均値を充放電前の平均膜厚とした。
活性化処理後の各評価用リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下に置き、30Cで4.3Vまで定電流充電および30Cで3.1Vまで定電流放電を1サイクルとする充放電サイクルを10サイクル繰り返した。10サイクル目の満充電状態でサイクルを停止し、評価用リチウムイオン二次電池を解体して、負極の膜厚を上述した方法と同様に測定した。かかる膜厚の平均値を充放電後の平均膜厚とした。
電極膨張率は式:(充放電後の平均膜厚-充放電前の平均膜厚)/充放電前の平均膜厚×100によって算出した。かかる電極膨張率が小さいほど、塗布物を有することの効果が高いと評価することができる。
電極膨張率は、実施例1では3%、比較例1では5%であった。すなわち、凹凸形状を有する電極活物質層に塗布物を塗布することにより、塗布物を有することの効果がより一層発揮されることがわかる。
するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、
変更したものが含まれる。
2 活物質粒子(固相)
3 溶媒(液相)
4 空隙(気相)
10 電極
12 電極集電体
14 電極活物質層
20 コート材
22 塗布物
30 電極材料
32 塗膜
50 電池ケース
64 正極活物質層
74 負極活物質層
80 捲回電極体
90 セパレータ
100 電極製造装置
120 成膜部
130 塗膜加工部
132 凹凸転写ロール
134 バックアップロール
140 塗布部
142 塗布装置
142a グラビアロール
142b 貯留槽
150 乾燥部
200 リチウムイオン二次電池
Claims (7)
- 正負極いずれかの電極集電体および電極活物質層を有する電極の製造方法であって、以下の工程:
電極活物質とバインダ樹脂と溶媒とを少なくとも含有した凝集粒子によって形成される湿潤粉体であって、少なくとも50個数%以上の前記凝集粒子が以下の性質:
(1)固相と液相と気相とがペンジュラー状態またはファニキュラー状態を形成していること;および、
(2)電子顕微鏡観察において該凝集粒子の該表面に前記溶媒の層が認められないこと;
を具備している湿潤粉体を用意する工程;
前記湿潤粉体を用いて、前記電極集電体上に該湿潤粉体からなる塗膜を、該塗膜の気相を残した状態で成膜する工程;
前記塗膜の表面部に、所定のパターンと一定のピッチで凹凸形状を形成する工程;
前記凹凸形状が形成された塗膜に、少なくとも一種の無機化合物を含むコート材を塗布する工程;および、
前記集電体上に形成された前記塗膜および前記コート材を乾燥させて、前記塗膜からなる電極活物質層と、該活物質層上の前記凹凸形状の凹部内に配置される前記コート材からなる塗布物と、を備える前記電極を形成する工程;
を包含する、二次電池用電極の製造方法。 - 前記凹凸形成工程は、前記塗膜におけるLcm×Bcm(L,Bは3以上の整数)で示される基準エリアにおける表面積を、相互に異なるn(nは5以上の整数)点で計測したときの平均表面積が、1.05×L×Bcm2以上となる凹凸面が形成されるように行われる、請求項1に記載の二次電池用電極製造方法。
- 前記無機化合物が、アルミナ、ベーマイト、シリカ、マグネシア、ジルコニアおよびチタニアからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の二次電池用電極の製造方法。
- 前記コート材は、前記無機化合物として少なくとも一種の活物質を含有しており、該活物質は、シリコンおよびスズのうち少なくとも一方の金属元素を構成元素として含む、請求項1または2に記載の二次電池用電極の製造方法。
- 二次電池の正負極いずれかの電極であって、
電極集電体と、該電極集電体上に形成された電極活物質層と、少なくとも一種の無機化合物を含む塗布物と、を備えており、
前記電極活物質層の表面は、所定のパターンと一定のピッチで凹凸形状を有しており、
前記凹凸形状の凹部と凸部との高低差が、10μm以上であって、
前記凹部において、該活物質層の表面から前記集電体に至る厚み方向に上層、中間層および下層の3つの層に均等に区分し、
前記凹部の前記上層、前記中間層、前記下層の電極密度(g/cm 3 )を、それぞれ、d 1 、d 2 、d 3 、としたときに、
0.9<(d 1 /d 3 )<1.08
の関係を具備しており、
ここで、前記塗布物の少なくとも一部は、前記凹凸形状の凹部内に配置されている、二次電池用電極。 - 前記無機化合物が、アルミナ、ベーマイト、シリカ、マグネシア、ジルコニアおよびチタニアからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいる、請求項5に記載の二次電池用電極。
- 前記塗布物は、前記無機化合物として少なくとも一種の活物質を含有しており、該活物質は、シリコンおよびスズのうち少なくとも一方の金属元素を構成元素として含む、請求項5に記載の二次電池用電極。
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