JP5635587B2 - 車両のシートベルト装置 - Google Patents
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Description
本願は、2010年3月4日に、日本に出願された特願2010−47831号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
また、このプリテンショナの駆動源としてモータを用いるものも知られている。
また、横滑りの程度が小さいときにプリテンショナの過剰な作動により乗員が違和感を覚える場合もある。
すなわち、(1)本発明の一態様に係るシートベルト装置は、
車両のシートに着座した乗員を拘束するウェビングと;前記ウェビングが巻回されるベルトリールと;前記ベルトリールに回転駆動力を伝達するモータと;前記モータのウェビング巻取り方向における設定値以上の回転トルクを受けた場合に、前記モータと前記ベルトリールとの間を接続状態に維持するクラッチと;前記車両の運動状態を検知する検知手段と;前記車両の車輪を制動するブレーキ装置におけるホイールシリンダ内の液体を加圧又は減圧することにより車両挙動を制御する制動制御手段と;前記制動制御手段が前記車両挙動を制御中であることを示す作動信号を出力しているとき、または前記検知手段により前記車両の運動状態が予め設定された運動状態にあることを検知したときに、前記モータの通電量を制御するモータ制御手段と;を備え、前記モータ制御手段が、前記制動制御手段が作動信号を出力しているときに前記クラッチを接続状態に維持し得る電流を前記モータに通電する待機電流制御手段と;前記検知手段により検知された車両の運動状態に基づいて前記モータへの通電量を調整する可変電流制御手段と;を備え、前記可変電流制御手段は、前記待機電流制御手段による電流制御中に前記検知手段により前記車両の運動状態の変化が検知されたときに前記待機電流制御手段による電流制御から、前記可変電流制御手段による電流制御へ移行し、前記制動制御手段が、その作動状態に応じて異なる作動信号を出力し、前記制動制御手段は、前記車両のアクセルペダルの非操作状態において前記ホイールシリンダ内の前記液体の圧力を予圧制御する予圧手段を備え;前記モータ制御手段は、前記予圧手段が作動状態であることを示す予圧作動信号を出力しているときにも前記待機電流制御手段による電流制御を行う。
車両のシートに着座した乗員を拘束するウェビングと;前記ウェビングが巻回されるベルトリールと;前記ベルトリールに回転駆動力を伝達するモータと;前記モータのウェビング巻取り方向における設定値以上の回転トルクを受けた場合に、前記モータと前記ベルトリールとの間を接続状態に維持するクラッチと;前記車両の運動状態を検知する検知手段と;前記車両の車輪を制動するブレーキ装置におけるホイールシリンダ内の液体を加圧又は減圧することにより車両挙動を制御する制動制御手段と;前記制動制御手段が前記車両挙動を制御中であることを示す作動信号を出力しているとき、または前記検知手段により前記車両の運動状態が予め設定された運動状態にあることを検知したときに、前記モータの通電量を制御するモータ制御手段と;を備え、前記モータ制御手段が、前記制動制御手段が作動信号を出力しているときに前記クラッチを接続状態に維持し得る電流を前記モータに通電する待機電流制御手段と;前記検知手段により検知された車両の運動状態に基づいて前記モータへの通電量を調整する可変電流制御手段と;を備え、前記可変電流制御手段は、前記待機電流制御手段による電流制御中に前記検知手段により前記車両の運動状態の変化が検知されたときに前記待機電流制御手段による電流制御から、前記可変電流制御手段による電流制御へ移行し、前記制動制御手段が、その作動状態に応じて異なる作動信号を出力し、前記制動制御手段は、前記車両のスリップ状態によらず操舵操作に応じて前記ホイールシリンダ内の前記液体を加圧又は減圧するとともに前記作動信号を出力する第1の制御手段を備える。
そして、モータの通電量を待機電流に制御している間に、車両の運動状態を示す値が変化したときには、その運動状態を示す値に応じてモータの通電量を制御する可変電流制御に移行する。これにより、車両の運動状態を示す値の変化に応じてウェビングによる乗員の拘束力を適切に変えることができる。
その結果、中高車速で車両挙動が不安定となったときに、モータの通電量を目標電流に迅速に増大させてウェビングを巻き取ることができ、乗員を速やかに拘束することができる。
図1は、本実施形態に係るシートベルト装置1の全体概略構成を示す。図1に示すシート2は乗員3が着座するシートである。この実施形態のシートベルト装置1は、所謂三点式のシートベルト装置である。シートベルト装置1は、図示しないセンタピラーに取付けられたリトラクタ4からウェビング5が上方に引き出されている。ウェビング5は、センタピラーの上部側に支持されたスルーアンカ6に挿通される。ウェビング5の先端は、シート2の車室外側寄りのアウタアンカ7を介して車体のフロアに固定されている。ウェビング5のスルーアンカ6とアウタアンカ7の間にはタングプレート8が挿通されている。タングプレート8は、シート2の車体内側寄りの車体フロアに固定されたバックル9に対して脱着可能となっている。
ウェビング5は、初期状態ではリトラクタ4に巻き取られており、乗員3が手で引き出してタングプレート8をバックル9に固定することにより、乗員3の主に胸部と腹部をシート2に対して拘束する。
このシートベルト装置1では、後述する車両挙動制御装置(制動制御手段)100が作動しているとき、および、車両が予め設定された運動状態(所定の運動状態)となったときに、モータ10に通電され、その電流制御によってウェビング5の引き込み等が行われる。
動力伝達機構13は、サンギヤ14が駆動入力用の外歯15に一体に結合されるとともに、複数のプラネタリギヤ16を支持するキャリア17がベルトリール12の軸に結合されている。そして、プラネタリギヤ16に噛合したリングギヤ18の外周側には複数のラチェット歯19(図4参照)が形成され、このラチェット歯19がクラッチ20の一部を構成するようになっている。クラッチ20は、シートベルト制御装置21によるモータ10の駆動力の制御によってモータ10とベルトリール12の間の動力伝達系を適宜切断又は接続する。
クラッチ20は、パウル29と、クラッチスプリング30と、ラチェット歯19と、を備える。パウル29は、図示しないケーシングに回動可能に支持され、先端部に係止爪28を有する。クラッチスプリング30は、このパウル29を操作する。前記リングギア18のラチェット歯は、パウル29の係止爪28に係合可能である。係止爪28は、パウル29がラチェット歯19方向に操作されたときに、ラチェット歯19の傾斜面とほぼ直交する面に突き当たり、リングギヤ18の一方向の回転をロックする。
このようにリングギヤ18の回転がロックされると、前述のようにサンギヤ14に伝達された回転力がすべてキャリア17の回転となってベルトリール12に伝達されるようになる(クラッチがONになった状態)。
このようにリングギヤ18のロックが解除されると、前述のようにサンギヤ14に伝達された回転力がプラネタリギヤ16を自転させる。このときリングギヤ18を空転させてキャリア17(ベルトリール12)側に動力が伝達されないようにする(クラッチがOFFになった状態)。
なお、この実施形態において、車両の運動状態には、前後G、横G、ヨーレート、定常ヨーレート偏差Δωff、限界ヨーレート偏差Δωfbが含まれる。
図6は、車両挙動制御装置100の制御ブロック図である。
車両挙動制御装置100は、ブレーキ制御部102と、ブレーキ装置110とを備えている。ブレーキ装置110はプレフィル制御部(予圧手段)190を備えている。
ブレーキ制御部102は車両の走行状態に応じて左右の前輪及び左右の後輪の制動力制御量を決定する。プレフィル制御部190はアクセルペダルの非操作時にホイールシリンダ(図示略)の液圧を予圧するのに必要な制御量を決定する。ブレーキ装置110は、ブレーキ制御部102によって決定されたそれぞれの車輪の制動力制御量に基づいて、それぞれの車輪のホイールシリンダ内の液体の圧力を制御する。また、ブレーキ装置110は、プレフィル制御部190によって決定されたプレフィル制御量に基づいてホイールシリンダ内の液体の圧力を制御する。
プレフィル判定部191は、アクセルペダルスイッチ193の出力信号等に基づいてプレフィル制御を実行するか否かを判定する。詳述すると、アクセルペダルスイッチ(gas pedal switch)193は、乗員がアクセルペダル(gas pedal)に足を載せているときにはON信号を、乗員がアクセルペダルから足を離したときにはOFF信号を、プレフィル判定部191に出力する。プレフィル判定部191は、アクセルペダルスイッチ193の出力信号がONからOFFに切り替わったときにプレフィル制御を実行する指令信号をプレフィル制御量出力部192に出力する。また、プレフィル判定部191は、ブレーキペダルが踏み込まれたとき、あるいは、プレフィル制御を開始してから所定の時間が経過したときに、プレフィル制御を終了させる指令信号をプレフィル制御量出力部192に出力する。
プレフィル制御量出力部192から出力される制御量信号は、シートベルト制御装置21にも出力される。
ブレーキ制御部102には、各種センサの検出値に応じた検知信号が入力される。具体的には、車両のステアリングホイールの操舵角及び操舵量の少なくも一方を検知する操舵角センサ103、車速を検知する車速センサ104、車両の左右方向(車幅方向)の加速度すなわち横加速度(以下、横Gと略す)を検知する横加速度センサ(以下、横Gセンサと略す)105、車両の前後方向の加速度すなわち前後加速度(以下、前後Gと略す)を検知する前後加速度センサ(以下、前後Gセンサと略す)101、車両のヨーレートを検知するヨーレートセンサ106、車両のアクセル開度を検知するアクセル開度センサ107から、それぞれ検出値に応じた検知信号がブレーキ制御部102に入力される。また、ブレーキ制御部102には、車両の車輪と路面との摩擦係数を算出するμ算出部108から、算出した摩擦係数に応じた電気信号が入力される。
なお、この実施形態において、前後Gセンサ101、横Gセンサ105、ヨーレートセンサ106、定常ヨーレート偏差演算部113、限界ヨーレート偏差演算部116は、車両の運動状態を検知する検知手段を構成する。
補正部115は、定常規範ヨーレートω_highと横G規範ヨーレートω_lowとに基づいて限界規範ヨーレートω_TARを算出する。補正部115における限界規範ヨーレートω_TARの算出方法については後で詳述する。
限界ヨーレート偏差演算部116は、限界規範ヨーレートω_TARからヨーレートセンサ106により検知されたヨーレート(実ヨーレート)を減算し、限界ヨーレート偏差Δωfbを算出する。
定常ヨーレート偏差演算部113において算出された定常ヨーレート偏差Δωffと、限界ヨーレート偏差演算部116において算出された限界ヨーレート偏差Δωfbは、モータ10の通電量制御のためにシートベルト制御装置21に出力される。
補正部115は、図7に示すように、配分係数HB1演算部131、基準限界規範ヨーレート(standard boundary normative yaw rate)演算部132、補正係数HS1演算部133、補正係数HS2演算部134、補正係数HS3演算部135を備えている。
補正部115では、基準限界規範ヨーレート演算部132において、配分係数HB1演算部131で算出した配分係数HB1と定常規範ヨーレートω_highと横G規範ヨーレートω_lowとに基づいて基準限界規範ヨーレートω_t1が算出される。さらに、この基準限界規範ヨーレートω_t1に、補正係数HS1演算部133および補正係数HS2演算部134で算出した補正係数HS1,HS2を乗じ、さらに補正係数HS3演算部135で算出した補正係数HS3を加算することにより、限界規範ヨーレートω_TARが算出される。
ω_TAR=ω_t1×HS1×HS2+HS3 ・・・ 式(1)
この限界規範ヨーレートω_TARは、フィードバック制御におけるヨーレート目標値となる。
詳述すると、この実施形態では、配分係数HB1演算部131により算出された配分係数HB1と、横G規範ヨーレートω_lowと、定常規範ヨーレートω_highに基づいて、式(2)から基準限界規範ヨーレートω_t1を算出する。
ω_t1=HB1×ω_high+(1−HB1)×ω_low ・・・ 式(2)
ここで、配分係数HB1は0から1の数値である。HB1=0の場合には基準限界規範ヨーレートω_t1は横G規範ヨーレートω_lowとなる。HB1=1の場合には基準限界規範ヨーレートω_t1は定常規範ヨーレートω_highとなる。
配分係数HB1は、配分係数HB1a,HB1b,HB1c及びHB1dを乗算して算出される。ここで、配分係数HB1aは車速に応じて算出され、配分係数HB1bはヨーレート変化率に応じて算出され、配分係数HB1cはヨーレート偏差積分に応じて算出され、配分係数HB1dは転舵速度に応じて算出される。
HB1=HB1a×HB1b×HB1c×HB1d ・・・ 式(3)
各配分係数HB1a,HB1b,HB1c,HB1dは、それぞれ図9に示す配分係数テーブル140,141,142,143を参照して算出される。この実施形態における各配分係数テーブル140,141,142,143を説明する。
ここで、ヨーレート偏差積分値とは、限界規範ヨーレートとヨーレートセンサ106で検知される実ヨーレートとの偏差すなわち限界ヨーレート偏差Δωfbを操舵を開始したときから積算した値である。例えば、限界ヨーレート偏差Δωfbが小さくてもその状態が長時間続いた場合にはヨーレート偏差積分値が大きくなる。このようなときは、ゆっくりではあるが徐々に車がスピン状態になっている可能性があるので、FB制御量演算部119において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくすべきではない。そこで、ヨーレート偏差積分値が大きいときには配分係数HB1cを小さい値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにする。
この配分係数テーブル143において、転舵速度が大きいほど配分係数HB1dが大きくなり、且つ、転舵速度が正の場合には転舵速度が負の場合よりも配分係数HB1dが大きくなるように設定されている。ここで、転舵速度は操舵角センサ3で検知される操舵角の単位時間当りの変化量と操舵角に基づき決定される値であり、操舵角を時間微分して操舵角と比較することにより算出することができる。転舵速度が正の場合とは、ステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)から離間する方向に回転操作している状態で同方向に向けた単位時間当りの変化量が生じているときおよびステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)に向けて回転操作している状態で同方向への単位時間当りの変化量が生じているときである。転舵速度が負の場合とは、ステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)から離間する方向に回転操作している状態で中立位置に向く方向に単位時間当りの変化量が生じているときおよびステアリングホイールを中立位置に戻す方向に回転操作している状態で中立位置から離間する方向に単位時間当りの変化量が生じているときである。
これにより、前方障害物からの回避操作やレーンチェンジなどのときの操舵の応答性が向上する。
なお、配分係数HB1dは転舵速度に代えて転舵角及び転舵量の少なくとも一方に基づいて算出してもよい。転舵角が大きいほど、運転者が車両を積極的に曲げたいという操作意志が大きいと推定することができるからである。この場合の、転舵角は操舵角と同義である。
この補正係数HS1は、運転者が車両を前荷重にしてハンドルを切ることにより車両を曲げる操作を行うときなどを想定した補正係数である。
図10に示すように、補正係数HS1は、操舵速度に応じて算出される補正係数HS1aと、車両の前荷重に応じて算出される補正係数HS1bとを乗算して算出される。
HS1=HS1a×HS1b ・・・ 式(4)
車両の前荷重とは車両前方への荷重移動量であり、例えば、車両の前後方向の加速度を検知する前後Gセンサ101に基づいて推定することができる。
補正係数HS1aを算出する補正係数テーブル144において、横軸は操舵速度であり、縦軸は補正係数HS1aである。この補正係数HS1aテーブル144において、操舵速度が小さい領域ではHS1a=1で一定である。操舵速度が予め設定される任意の閾値(所定値)以上になると操舵速度が大きくなるにしたがって補正係数HS1aが徐々に小さくなっていく。操舵速度が大きい領域ではHS1a=0で一定となる。
補正係数HS1bを算出する補正係数テーブル145において、横軸は前荷重(車両前方への荷重移動量)であり、縦軸は補正係数HS1bである。この補正係数HS1bテーブル145において、前荷重が小さい領域ではHS1b=1で一定である。前荷重が任意の閾値(所定値)以上になると前荷重が大きくなるにしたがって補正係数HS1bが徐々に小さくなっていく。前荷重が大きい領域ではHS1b=0で一定となる。
補正係数HS1を上述のように算出する結果、操舵速度が小さい領域で且つ前荷重が小さい領域では補正係数HS1は1となる。そのため、限界規範ヨーレートω_TARを大きくすることができ、回頭性を向上することができる。これに対して、操舵速度および前荷重が大きくなるにしたがって補正係数HS1は1よりも小さくなっていく。したがって、限界規範ヨーレートω_TARを小さくすることができ、車両挙動の安定性を確保することができる。
この補正係数HS2は、車輪と路面との摩擦係数(以下μと略す)が高い路面(以下、高μ路(high-μ lane)と略す)で車線を変更(操舵をして、すぐに元の進行方向に戻す操作)する場合を想定した補正係数である。
補正係数HS2は、1を最大値として、下記の(a)から(d)のいずれかの条件を満たした場合に所定の減少カウント値を初期値から減算し、下記の(a)から(d)のいずれの条件も満たさない場合に1に向けて所定の増加カウント値を加算するよう構成されるゲインである。
(a)摩擦係数μが高いと判断されたとき(または高摩擦係数の路面走行に対応する前後または横方向加速度が検出されているとき)。
(b)操舵角が大きいと判断されたとき。
(c)横G減少率が大きいと判断されたとき。
(d)ヨーレート減少率が大きいと判断されたとき。
なお、補正係数HS2は、上記(a)から(d)のうち任意の2以上の条件を満たす場合に所定の減少カウント値を初期値から減算し、その2以上の条件を満たさない場合に1に向けて所定の増加カウント値を加算するよう構成してもよい。特に車輪と路面との摩擦係数が高いときの車両挙動の収束性を考慮すると、上記(a)と、(b)から(d)のいずれかを組合わせて用いることが好ましい。
なお、摩擦係数μは、μ算出部8により算出される。また、横G減少率とは、横Gの減少速度であり、横Gセンサ5で検知される横Gに基づいて算出することができる。ヨーレート減少率とは、ヨーレートセンサ6で検知される実ヨーレートの減少速度である。
初めに、ステップS301において、摩擦係数μが閾値μthよりも大きいか否かを判定する。
ステップS301における判定結果が「YES」(μ>μth)である場合には、ステップS302に進み、操舵角δが閾値δthよりも大きいか(δ>δth)、あるいは、横G減少率ΔGが閾値ΔGthよりも大きいか(ΔG>ΔGth)、あるいは、ヨーレート減少率γが閾値γthよりも大きいか(γ>γth)のうち1つでも満たすものがあるか否かを判定する。
ステップS302における判定結果が「YES」である場合には、ステップS303に進み、減算処理により補正係数HS2を決定し、このルーチンの実行を一旦終了する。この減算処理は、補正係数HS2の初期値から所定の減算カウント値を繰り返し減算し、補正係数HS2が0に収束していくようにする。
一方、ステップS301における判定結果が「NO」(μ≦μth)である場合、および、ステップS302における判定結果が「NO」である場合には、ステップS304に進み、加算処理により補正係数HS2を決定し、本ルーチンの実行を一旦終了する。この加算処理は、所定の増加カウント値を繰り返し加算し、補正係数HS2が1に収束していくようにする。
なお、補正係数HS2の初期値は0から1の間の任意の値とする。
車両の旋回中に運転者がアクセルペダルを急に戻したときに車両が前荷重となって旋回の内側に入り込む現象が生じることがある。補正係数HS3は、このような旋回中の車両の出力OFFに対する反応を想定した補正係数である。運転者によってはこの反応を利用して積極的に旋回操作を行う場合がある。しかしながら、この反応を利用した旋回操作は、車両への要求トルクが大きいとき(換言すると、アクセル開度が大きいとき)からアクセルを開放するときや、車速が大きいときには、車両挙動が不安定になり易い。補正係数HS3は、旋回中の車両の出力OFFに対する反応が生じたときの限界規範ヨーレートω_TARを調整するための補正係数である。
図12に示すように、補正係数HS3は、車速に応じて算出される補正係数HS3aと、車両の要求トルクに応じて算出される補正係数HS3bとを乗算して算出される。
HS3=HS3a×HS3b ・・・ 式(6)
なお、車両の要求トルクは、アクセル開度センサ107で検知したアクセル開度から算出することができる。
補正係数HS3aを算出する補正係数テーブル151において、横軸は車速であり、縦軸は補正係数HS3aである。この補正係数HS3aテーブル151は、車速が予め設定される任意の閾値(所定値)よりも小さい領域ではHS3aは正の一定値である。車速が上記閾値(所定値)以上になると車速が大きくなるにしたがって補正係数HS3aが徐々に小さくなっていく。速度V0を越えると負の値となる。車速が非常に大きい領域ではHS3aは負の一定値となる。
まず、要求トルクが上記の閾値(所定値)T0以上の場合(すなわち、旋回中の車両の出力OFFに対する反応が生じていないと判断されるとき)について説明する。この場合には、車速の大きさに関わらず補正係数HS3が0となり、限界規範ヨーレートω_TARを補正しないようにすることができる。
次に、要求トルクが上記の閾値(所定値)T0以下の場合(すなわち、旋回中の車両の出力OFFに対する反応が生じていると判断されるとき)について説明する。この場合、車速がV0よりも小さいときには、補正係数HS3が正の値となるので、限界規範ヨーレートω_TARが大きくすることができる。また、車速がV0以上のときには、補正係数HS3が負の値となるので、限界規範ヨーレートω_TARを小さくすることができる。さらに、車速がV0よりも小さい場合、要求トルク一定であれば、車速が小さいほど補正係数HS3を正値の大きな値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくすることができる。これにより、低中速で旋回中の車両において出力OFFに対する反応が生じているときの回頭性を向上させることができる。一方、車速がV0以上の場合、要求トルクが一定であれば、車速が大きいほど補正係数H3を負値の大きな値にして、限界規範ヨーレートω_TARを小さくすることができる。
前述したように、制御量演算部117は、FF制御量演算部118において定常ヨーレート偏差Δωffに基づいてFF制御量を算出し、FB制御量演算部119において限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいてFB制御量を算出する。そして、制御量演算部117は、FF制御量とFB制御量を加算してそれぞれの車輪に対する総制御量を算出する。
まず、操舵角センサ103で検知された操舵角に基づいて、旋回時の車両における内側の前輪すなわちFR旋回内輪(以下、内側前輪と略す)と旋回時の車両における内側の後輪すなわちRR旋回内輪(以下、内側後輪と略す)に対する増圧配分を決定する。そして、この増圧配分に基づいて、内側前輪に対する増圧係数K1frと内側後輪に対する増圧係数K1rrを算出する。ここで、操舵による荷重移動が大きい場合には、操舵角に応じて、内側前輪に対する増圧係数K1frが大きくなるように設定してもよい。
そして、内側前輪に対する増圧係数K1frと内側後輪に対する増圧係数K1rrに基づいて、内側前輪に対するFF増圧量ΔP1ffの算出と、内側後輪に対するFF増圧量ΔP2ffの算出が、並行して実施される。
定常ヨーレート偏差演算部113で演算された定常ヨーレート偏差Δωffに、内側後輪に対する増加係数K1rrを乗じて、内側後輪に対する定常ヨーレート偏差Δω2ffを算出する。
次に、増圧量テーブル164を参照し、内側後輪に対する定常ヨーレート偏差Δω2ffに応じて、内側後輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkを算出する。増圧量テーブル164は増圧量テーブル160と同じであるので説明を省略する。
次に、リミット処理部165において、内側後輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkが上限値を超えないようにリミット処理を行う。上限値は、上限値算出部166によって算出される。上限値算出部166は上限値算出部162と同じである。
次に、リミット処理された内側後輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkに、ゲインテーブル167により算出したゲインを乗じて、内側後輪に対するFF増圧量ΔP2ffを算出する。ゲインテーブル167はゲインテーブル163と同じであるので、説明を省略する。
内輪減圧量算出部170では、第1減圧率テーブル171を参照して車速に応じた減圧率を算出するとともに、第2減圧率テーブル172を参照して横Gに応じた減圧率を算出する。そして、内輪減圧量算出部170は、算出したこれらの減圧率を乗じることで総減圧率を算出する。
これにより、総減圧率は、走行時の車速および横Gに応じて、0から1の間の値に設定されることとなる。
そして、このようにして求めた総減圧率にブレーキ装置110のマスタシリンダ圧を乗じ、さらにマイナス1を乗じて内輪減圧量ΔPdを求める。
FB制御量演算部119では、限界ヨーレート偏差演算部116で演算された限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいて、内側前輪のFB増圧量ΔP1fb、旋回時の車両における外側の前輪すなわちFR旋回外輪(以下、外側前輪と略す)のFB増圧量ΔP3fb、内側後輪のFB増圧量ΔP2fb、旋回時の車両における外側の後輪すなわちRR旋回外輪(以下、外側後輪と略す)のFB増圧量ΔP4fbを算出する。なお、以降の旋回方向は偏差Δωfbの符号が正で、規範ヨーレートおよび実ヨーレートがともに正の場合を例に説明する。
ブレーキ装置10は、入力したそれぞれの車輪の制御量に応じて、各車輪のホイールシリンダの液圧を制御する。
前述したように、シートベルト制御装置21には、車両挙動制御装置100から、前後Gセンサ101、横Gセンサ105、ヨーレートセンサ106の各センサ出力信号と、ブレーキ制御部102で算出される定常ヨーレート偏差Δωffおよび限界ヨーレート偏差Δωfbと、プレフィル制御部190のプレフィル制御量とが入力される。これら情報に基づいてシートベルト制御装置21はモータ10を制御する。
目標電流設定手段41は、車両の運動状態量に基づいてモータ10の目標電流を設定する。電流制御手段42は、モータ10に実際に流れる電流、すなわち実電流が目標電流設定手段41によって設定された目標電流と一致するように電流制御を行う。
初めに、図16のフローチャートにしたがってモータ制御を説明する。
ステップS101において、前後Gセンサ101および横Gセンサ105の検出値を取得する。
次に、ステップS102に進み、車両挙動制御装置100とプレフィル制御部190の作動情報を取得する。車両挙動制御装置100の作動情報とは、具体的には、ブレーキ制御部102からシートベルト制御装置21に入力される定常ヨーレート偏差Δωffおよび限界ヨーレート偏差Δωfbである。プレフィル制御部190の作動情報とは、具体的には、プレフィル制御量出力部192からシートベルト制御装置21に入力されるプレフィル制御量である。
詳述すると、ステップS103における判定結果が「YES」である場合、すなわち、車両挙動制御装置100が車両挙動制御を実行中であるとき、あるいは、加速度(前後Gまたは横G)が設定された閾値(所定値)以上であるときには、ステップS104に進み、プレフィル作動中か否かを判定する。なお、プレフィル作動中か否かの判定は、プレフィル制御量出力部192からシートベルト制御装置21に入力されたプレフィル制御量に基づいて判定する。プレフィル制御量が0である場合はプレフィル非作動であると判定する。プレフィル制御量が0より大である場合はプレフィル作動中と判定する。
ステップS106においては、ブレーキ制御部102から入力した定常ヨーレート偏差Δωffが第1設定値(第1の所定値)以上か否かを判定する。第1設定値は、例えば、操舵角が比較的に大きく且つ車速が中低速の場合に取り得る定常ヨーレート偏差の値に設定する。
ステップS106における判定結果が「YES」(Δωff≧第1設定値)である場合には、ステップS107に進み、ゲインKをもとの値よりも小さい値K1に設定する。なお、ゲインKは、後述するステップS112において実行するモータ10の電流制御において、モータ10に流れる実電流を目標電流に徐々に近づける際の電流変化の大きさを決定するゲインである。
一方、ステップS106における判定結果が「NO」(Δωff<第1設定値)である場合には、ステップS108に進み、ブレーキ制御部102から入力した限界ヨーレート偏差Δωfbが第2設定値(第2の所定値)以上か否かを判定する。第2設定値は、例えば、横加速度が予め決定された基準値以上の値になるときの操舵角に対応した限界ヨーレート偏差の値に設定する。
ステップS108における判定結果が「NO」(Δωfb<第2設定値)である場合には、ステップS110に進み、ゲインKをK1よりも大きくK2よりも小さい値K3(K1<K3<K2)に設定する。したがって、ステップS109において設定されるゲインK2が最大となる。
また、ステップS104における判定結果が「YES」(プレフィル作動中)である場合は、ステップS111に進んで、プレフィルフラグをONにする。そして、ステップS112に進み、モータ10の電流制御を実行し、リターンによりスタートに戻る。
一方、ステップS103における判定結果が「NO」である場合、すなわち、車両挙動制御装置100が非作動であり、且つ、加速度が設定された閾値(所定値)より小さいときには、ステップS113に進んで、ゲインKをK3に設定し、リターンによりスタートに戻る。すなわち、この場合には、モータ10の電流制御を行わず(モータ10に通電せず)にリターンによりスタートに戻る。ステップS113において設定されるゲインK3は、ステップS110において設定したゲインK3と同じ値である。
まず、ステップS201において目標電流I1を待機電流Iwに設定する。次に、ステップS202に進んで、モータ10への通電を開始する。なお、前述したように、待機電流Iwは、クラッチ20を接続状態に維持し得る低電流Iw(接続状態に維持し得るほぼ最小の電流値)である。
次に、ステップS203に進み、プレフィルフラグがONか否かを判定する。
ステップS203における判定結果が「YES」(ON)である場合には、プレフィル作動中であるので、ステップS204に進み、所定時間t0だけ待機電流Iwで通電して、リターンによりスタートに戻る。
次に、ステップS206に進み、電流センサ40により検知されるモータ10に流れている電流の現在値、すなわち実電流Iが、目標電流I1と不一致か否かを判定する。
ステップS206における判定結果が「YES」(I≠I1)である場合には、ステップS207に進み、目標電流I1と実電流Iとの差の絶対値ΔI(ΔI=|I1−I|)が許容値Ithより大きいか否かを判定する。
ステップS207における判定結果が「YES」(ΔI>Ith)である場合には、実電流Iが目標電流I1の許容範囲から外れているので、ステップS208に進み、実電流Iが目標電流I1よりも小さいか否かを判定する。
ステップS209における判定結果が「YES」(I+KΔI<Iu_limit)である場合には、ステップS210に進み、モータ10への通電量をKΔI分だけ増加してI+KΔIとし、ステップS211に進む。
一方、ステップS209における判定結果が「NO」(I+KΔI≧Iu_limit)である場合には、モータ10への通電量を増加させず、現状を維持してステップS211に進む。
ステップS212における判定結果が「NO」(I−KΔI≦Iw)である場合には、ステップS214に進み、モータ10への通電量Iを待機電流Iwとして、ステップS211に進む。
また、ステップS207における判定結果が「NO」(ΔI≦Ith)である場合には、モータ10の実電流Iが目標電流I1と一致してはいないが許容範囲内であるので、ステップS211に進む。
ステップS211における判定結果が「NO」である場合には、車両の走行状態が安定しており、モータ10を作動する必要がないので、モータ10の電流制御を終了してリターンによりスタートに戻る。
ステップS211における判定結果が「YES」である場合には、走行状態が安定状態に至っていないので、ステップS205に戻り、ステップS205〜S214の一連の処理を繰り返し実行する。
この実施形態においては、ステップS201〜S204の処理を実行することにより待機電流制御手段43が実現される。また、ステップS205〜S214の処理を実行することにより可変電流制御手段11が実現される。
そして、シートベルト装置1によれば、モータ10の通電量を待機電流Iwに制御しながら、この後の車両の運動状態を示す値の変化に備えることができる。
2 シート
5 ウェビング
10 モータ
12 ベルトリール
20 クラッチ
21 シートベルト制御装置(モータ制御手段)
43 待機電流制御手段
44 可変電流制御手段
100 車両挙動制御装置(制動制御手段)
101 前後Gセンサ(検知手段)
105 横Gセンサ(検知手段)
106 ヨーレートセンサ(検知手段)
110 ブレーキ装置
113 定常ヨーレート偏差演算部(検知手段)
116 限界ヨーレート偏差演算部(検知手段)
190 プレフィル制御部(予圧手段)
Claims (5)
- 車両のシートに着座した乗員を拘束するウェビングと;
前記ウェビングが巻回されるベルトリールと;
前記ベルトリールに回転駆動力を伝達するモータと;
前記モータのウェビング巻取り方向における設定値以上の回転トルクを受けた場合に、前記モータと前記ベルトリールとの間を接続状態に維持するクラッチと;
前記車両の運動状態を検知する検知手段と;
前記車両の車輪を制動するブレーキ装置におけるホイールシリンダ内の液体を加圧又は減圧することにより車両挙動を制御する制動制御手段と;
前記制動制御手段が前記車両挙動を制御中であることを示す作動信号を出力しているとき、または前記検知手段により前記車両の運動状態が予め設定された運動状態にあることを検知したときに、前記モータの通電量を制御するモータ制御手段と;を備え、
前記モータ制御手段が、
前記制動制御手段が作動信号を出力しているときに前記クラッチを接続状態に維持し得る電流を前記モータに通電する待機電流制御手段と;
前記検知手段により検知された車両の運動状態に基づいて前記モータへの通電量を調整する可変電流制御手段と;を備え、
前記可変電流制御手段は、前記待機電流制御手段による電流制御中に前記検知手段により前記車両の運動状態の変化が検知されたときに前記待機電流制御手段による電流制御から、前記可変電流制御手段による電流制御へ移行し、
前記制動制御手段が、その作動状態に応じて異なる作動信号を出力し、
前記制動制御手段は、前記車両のアクセルペダルの非操作状態において前記ホイールシリンダ内の前記液体の圧力を予圧制御する予圧手段を備え;
前記モータ制御手段は、前記予圧手段が作動状態であることを示す予圧作動信号を出力しているときにも前記待機電流制御手段による電流制御を行う
ことを特徴とする車両のシートベルト装置。 - 車両のシートに着座した乗員を拘束するウェビングと;
前記ウェビングが巻回されるベルトリールと;
前記ベルトリールに回転駆動力を伝達するモータと;
前記モータのウェビング巻取り方向における設定値以上の回転トルクを受けた場合に、前記モータと前記ベルトリールとの間を接続状態に維持するクラッチと;
前記車両の運動状態を検知する検知手段と;
前記車両の車輪を制動するブレーキ装置におけるホイールシリンダ内の液体を加圧又は減圧することにより車両挙動を制御する制動制御手段と;
前記制動制御手段が前記車両挙動を制御中であることを示す作動信号を出力しているとき、または前記検知手段により前記車両の運動状態が予め設定された運動状態にあることを検知したときに、前記モータの通電量を制御するモータ制御手段と;を備え、
前記モータ制御手段が、
前記制動制御手段が作動信号を出力しているときに前記クラッチを接続状態に維持し得る電流を前記モータに通電する待機電流制御手段と;
前記検知手段により検知された車両の運動状態に基づいて前記モータへの通電量を調整する可変電流制御手段と;を備え、
前記可変電流制御手段は、前記待機電流制御手段による電流制御中に前記検知手段により前記車両の運動状態の変化が検知されたときに前記待機電流制御手段による電流制御から、前記可変電流制御手段による電流制御へ移行し、
前記制動制御手段が、その作動状態に応じて異なる作動信号を出力し、
前記制動制御手段は、前記車両のスリップ状態によらず操舵操作に応じて前記ホイールシリンダ内の前記液体を加圧又は減圧するとともに前記作動信号を出力する第1の制御手段を備えることを特徴とする
車両のシートベルト装置。 - 前記制動制御手段は、前記車両のスリップ状態の程度に応じて前記ホイールシリンダ内の前記液体を加圧又は減圧するとともに前記作動信号を出力する第2の制御手段をさらに備え;
前記可変電流制御手段は、前記検知手段により検知された前記車両の運動状態に基づき決定される前記モータに対して供給すべき目標電流と、前記モータに流れる実電流とを比較し、その比較結果に基づいて前記モータの実電流を前記目標電流に近づくように変化させていき、その際の変化量を、前記第1の制御手段の制御量が第1設定値以上の場合は、前記第2の制御手段の制御量が第2設定値以上の場合よりも低減させる;
ことを特徴とする請求項2に記載の車両のシートベルト装置。 - 前記可変電流制御手段は、前記車両のスリップ状態の程度が予め設定された基準以上であるときに前記変化量を最大とすることを特徴とする請求項3に記載の車両のシートベルト装置。
- 前記制動制御手段は、前記車両の低速走行時にのみ前記第1の制御手段による制御を行って前記作動信号を出力することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両のシートベルト装置。
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