JP2010023644A - 車両のシートベルト装置およびその制御方法 - Google Patents

車両のシートベルト装置およびその制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ウェビングの巻取り段階での迅速な巻取りと、乗員拘束段階での圧迫感の低減を両立させることのできる車両のシートベルト装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】横加速度和センサ29とヨーレートセンサ31を設け、コントローラ21には、センサ信号を基にモータ10に通電する目標電流を周期的に設定する目標電流設定手段34を設ける。さらに、コントローラ21には、目標電流設定手段34で設定した目標電流と一致するようにモータ10の通電電流を制御する標準電流制御手段35と、クラッチ20を接続状態に維持し得る低電流でモータ10に通電する保持電流制御手段36と、目標電流の経時変化に応じて標準電流制御手段35と保持電流制御手段36のいずれかを選択する電流制御選択手段37を設ける。
【選択図】図2

Description

この発明は、車両のシートに着座した乗員をウェビングによって拘束するシートベルト装置およびその制御方法に関するものである。
車両に装備されるシートベルト装置は、乗員拘束用のウェビングがリトラクタ内のベルトリールに巻回され、装着時にリトラクタから引き出されるようになっている。そして、シートベルト装置には、緊急時にウェビングの引き出しを機械的にロックする緊急ロック機構が設けられており、車両に設定値以上の減速度が作用した場合等には、緊急ロック機構がウェビングの引き出しをロックし、乗員をシートに拘束するようになっている。
また、近年、加速度センサやヨーレートセンサ、ブレーキスイッチ等によって車両の状態を検出し、車両の状態に応じてウェビングの張力を制御するシートベルト装置が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
このシートベルト装置は、ウェビングを引き込むためのモータと、車両の状態を検出する車両状態検出装置と、車両状態検出装置の検出信号を受けてモータの通電電流を制御するコントローラを備え、車両状態検出装置が車両の旋回やブレーキ作動、ロールオーバー等を検出すると、そのときの車両状態に適したウェビング張力が得られるように、コントローラがモータに対する通電電流を選択する。
特開2004−291967号公報
しかし、この従来のシートベルト装置の場合、車両の状態に応じてモータの通電電流を制御するものであるため、例えば、車両状態検出装置によって車両の旋回が検出されると、車両の旋回中は一定電流値を目標として通電が継続される。このため、ウェビングの弛みを取る初期段階でのウェビングの巻取り速度を重視した通電電流の設定とした場合には、乗員を拘束する後期段階でのウェビングの張力が大きくなり、乗員に与える圧迫感が大きくなってしまう。また、逆に、後期段階でのウェビングの締め付け緩和を重視した通電電流の設定とした場合には、初期段階でのウェビングの巻取り速度が不足してしまう。
また、この種のシートベルト装置においては、車両の状態を短周期で頻繁に検出し、その都度モータの通電電流を更新することも検討されている。
ところが、同じ車両状態の検出値であっても、現在ウェビングの巻取り段階なのか乗員拘束の段階なのかを判別することができないため、車両の状態を頻繁に検出してモータの通電電流を更新するにしても、ウェビングの巻取り段階での迅速な巻取りと、乗員拘束段階での圧迫感の低減を両立させることは難しい。
そこで、この発明は、ウェビングの巻取り段階での迅速な巻取りと、乗員拘束段階での圧迫感の低減を両立させることのできる車両のシートベルト装置およびその制御方法を提供しようとするものである。
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、シートに着座した乗員を拘束するウェビング(例えば、後述の実施形態におけるウェビング5)が巻回されるベルトリール(例えば、後述の実施形態におけるベルトリール12)と、前記ベルトリールに駆動力を伝達するモータ(例えば、後述の実施形態におけるモータ10)と、前記モータのウェビング巻取り方向の設定値以上の回転トルクを受けて前記モータとベルトリールを接続状態に維持するクラッチ(例えば、後述の実施形態におけるクラッチ20)と、を備えた車両のシートベルト装置において、車両の状態を検出する車両状態検出装置(例えば、後述の実施形態における横加速度センサ29およびヨーレートセンサ31)と、前記車両状態検出装置の検出信号を基にして前記モータに通電する目標電流を周期的に設定する目標電流設定手段(例えば、後述の実施形態における目標電流設定手段34)と、前記目標電流設定手段で設定した目標電流と一致するように前記モータの通電電流を制御する標準電流制御手段(例えば、後述の実施形態における標準電流設定手段35)と、前記クラッチを接続状態に維持し得る低電流で前記モータに通電する保持電流制御手段(例えば、後述の実施形態における保持電流制御手段36)と、目標電流の経時変化に応じて前記標準電流制御手段と保持電流制御手段のいずれかを選択する電流制御選択手段(例えば、後述の実施形態における電流制御選択手段37)と、を設けたことを特徴とする。
これにより、車両状態検出装置がシートベルトによる拘束を要する車両状態を検出すると、目標電流設定手段が車両状態検出装置の検出信号を基にして目標電流を設定する。モータはこの目標電流と一致するように標準電流制御手段によって通電電流を制御される。目標電流設定手段による目標電流の設定は周期的に行い、目標電流の経時変化は電流制御選択手段で監視する。電流制御選択手段では、例えば、目標電流の経時変化が基準パラメータ以上の場合には、標準電流制御手段によるモータ制御を選択し、目標電流の経時変化が基準パラメータに満たない場合には、保持電流制御手段によるモータ制御を選択する。したがって、ベルトリールの巻取り位置の変化が大きいことが予測される状況では、標準電流制御手段によるモータ制御が行われ、ベルトリールの巻取り位置の変化が小さいことが予測される状況では、保持電流制御手段によるモータ制御が行われる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のシートベルト装置において、前記保持電流制御手段は、前記クラッチを接続状態に維持し得るほぼ最小値での通電を行う前に、その最小値よりも大きい中間電流値で通電を行うことを特徴とする。
これにより、モータの通電制御が標準電流制御手段から保持電流制御手段に移行すると、目標電流に近い電流値から一旦中間電流値に下げられ、その後にクラッチを接続状態に維持し得るほぼ最小値に下げられる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両のシートベルト装置において、前記保持電流制御手段から標準電流制御手段に電流制御が移ったときには、時間当たりの電流増加量を規制値以下に制限することを特徴とする。
これにより、保持電流制御手段から標準電流制御手段に電流制御が移ったときには、モータに通電される電流の急激な上昇が規制されるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両のシートベルト装置において、前記規制値は、車速に応じて設定されていることを特徴とする。
これにより、例えば、車速が速いときに電流の増加速度の規制値を大きくすることが可能になる。
請求項5に記載の発明は、シートに着座した乗員を拘束するウェビングが巻回されるベルトリールと、前記ベルトリールに駆動力を伝達するモータと、前記モータのウェビング巻取り方向の設定値以上の回転トルクを受けて前記モータとベルトリールを接続状態に維持するクラッチと、を備えた車両のシートベルト装置の制御方法において、車両状態に応じて前記モータに通電する目標電流を周期的に設定するステップ(例えば、後述の実施形態におけるステップS202,S206)と、前記目標電流の経時変化を監視するステップ(例えば、後述の実施形態におけるステップS203)と、目標電流の経時変化に応じて、前記目標電流と一致するように前記モータの通電電流を制御する標準電流制御モードと、前記クラッチを接続状態に維持し得る低電流で前記モータに通電する保持電流制御モードのいずれか一方にモータ制御を切り替えるステップ(例えば、後述の実施形態におけるステップS204)と、を備えていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両のシートベルト装置の制御方法において、前記保持電流制御モードは、前記クラッチを接続状態に維持し得るほぼ最小値での通電を行う前に、その最小値よりも大きい中間電流値で通電するステップ(例えば、後述の実施形態におけるステップS207,S208)を備えていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の車両のシートベルト装置の制御方法において、前記保持電流制御モードから標準電流制御モードに電流制御が移ったときに、時間当たりの電流増加量を規制値以下に制限するステップ(例えば、後述の実施形態におけるS210)を備えていることを特徴とする。
請求項1,5に記載の発明によれば、車両状態に応じて目標電流を周期的に設定し、目標電流の経時変化に応じて標準電流制御モードと保持電流制御モードのいずれか一方にモータ制御を切り替えるため、ベルトリールの巻取り位置変化が大きくウェビングの巻取り段階であることが予測される状況では標準電流制御によってウェビングの迅速な巻取りを行い、ベルトリールの巻取り位置変化が小さくウェビングによる乗員拘束段階であることが予測される状況では保持電流制御によって乗員に圧迫感を与えることなく乗員の拘束を行うことができる。
請求項2,6に記載の発明によれば、保持電流制御モードにおいて、クラッチを接続状態に維持し得るほぼ最小値での通電を行う前に、その最小値よりも大きい中間電流値で通電を行うため、目標電流が比較的小さい状態で、拘束が断続的に実行されるような場合でも、電流低下直後の車両状態の変化によるウェビングの引き出しを防止することができる。
請求項3,7に記載の発明によれば、保持電流制御モードから標準電流制御モードにの移行したときに、時間当たりの電流増加量を規制値以下に制限して、ウェビングの張力の急激な増加を抑制することができるため、作動の唐突感を低減して快適性を向上させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、保持電流制御モードから標準電流制御モードに移行したときの電流の増加速度が車速に応じて制限されるため、例えば、車速が速いときに電流増加速度の規制値(許容幅)を大きくして、ウェビングの巻取りの迅速性を優先させることができる。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明にかかるシートベルト装置1の全体概略構成を示すものであり、同図中2は、乗員3の着座するシートである。この実施形態のシートベルト装置1は、所謂三点式のシートベルト装置であり、図示しないセンタピラーに取付けられたリトラクタ4からウェビング5が上方に引き出され、そのウェビング5がセンタピラーの上部側に支持されたスルーアンカ6に挿通されるとともに、ウェビング5の先端がシート2の車室外側寄りのアウタアンカ7を介して車体フロアに固定されている。そして、ウェビング5のスルーアンカ6とアウタアンカ7の間にはタングプレート8が挿通されており、そのタングプレート8は、シート2の車体内側寄りの車体フロアに固定されたバックル9に対して脱着可能となっている。
ウェビング5は、初期状態ではリトラクタ4に巻き取られており、乗員3が手で引き出してタングプレート8をバックル9に固定することにより、乗員3の主に胸部と腹部をシート2に対して拘束する。また、このシートベルト装置1は、緊急時や車両の挙動変化が大きいときに、電動式のモータ10によって自動的にウェビング5の引き込みを行う。
リトラクタ4は、図2に示すようにケーシング(図示せず)に回転可能に支持されたベルトリール12にウェビング5が巻回されるとともに、ケーシングの一端側にベルトリール12の軸が突出している。このベルトリール12は、動力伝達機構13を介してモータ10の回転軸10aに連動可能に接続されている。動力伝達機構13は、モータ10の回転を減速してベルトリール12に伝達する。また、リトラクタ4には、ベルトリール12をウェビング巻取り方向に付勢する図示しない巻取りばねが設けられ、ベルトリール12とモータ10が後述するクラッチ20(図3,図4参照)によって切り離された状態において、巻取りばねによる張力がウェビング5に作用するようになっている。
また、リトラクタ4には、ベルトリール12の回転を検出する回転センサ11(回転状態検出手段)が設けられている。この回転センサ11は、例えば、円周方向に沿って異磁極が交互に着磁され、ベルトリール12と一体に回転する磁性円板と、この磁性円板の外周縁部に近接配置された一対のホール素子と、ホール素子の検出信号を処理するセンサ回路とから成り、センサ回路で処理されたパルス信号がコントローラ21に出力されるようになっている。
この場合、ベルトリール12の回転に応じてセンサ回路からコントローラ21に入力されたパルス信号は、ベルトリール12の回転量や、回転速度、回転方向等を検出するのに用いられる。つまり、コントローラ21においては、パルス信号をカウントすることによってベルトリール12の回転量(ウェビング5の引き出し量)を検出し、パルス信号の変化速度(周波数)を演算することによってベルトリール12の回転速度(ウェビング5の巻取り・引き出し速度)を求め、さらに、両パルス信号の波形の立ち上がりの比較によってベルトリール12の回転方向を検出する。
また、リトラクタ4には、車両に設定値以上の減速度が作用したときに、ベルトリール12の回転(ウェビング5の引出し)を機械的にロックする周知の緊急ロック機構40が設けられている。緊急ロック機構40は、設定値(例えば、2G)以上の加速度が車両に入力されたときに作動するセンシング要素(図示せず)と、センシング要素の作動を受けてベルトリール12の回転をロックするロックング要素(図示せず)とを備え、ロックキング要素は、ロック作動の後にベルトリール12がウェビング巻取り方向に設定量以上回転操作されることによってベルトリール12のロックを解除し得るようになっている。
動力伝達機構13は、図3,図4に示すように、サンギヤ14が駆動入力用の外歯15に一体に結合されるとともに、複数のプラネタリギヤ16を支持するキャリア17がベルトリール12の軸に結合されている。そして、プラネタリギヤ16に噛合したリングギヤ18の外周側には複数のラチェット歯19(図4参照)が形成され、このラチェット歯19がクラッチ20の一部を構成するようになっている。このクラッチ20は、コントローラ21によるモータ駆動の制御によってモータ10とベルトリール12の間の動力伝達系を適宜断切する。
動力伝達機構13のモータ側動力伝達系22は、サンギヤ14と一体の外歯15に常時噛合される小径の第1コネクトギヤ23と、この第1コネクトギヤ23と同軸にかつ一体に回転し得るように設けられた大径の第2コネクトギヤ24と、この第2コネクトギヤ24とモータギヤ25(モータ10の回転軸10aと一体)の間にあって動力伝達可能に常時噛合される第1,第2アイドラギヤ26,27と、から構成されている。モータ10の正転方向の駆動力は、図4中の実線矢印で示すように各ギヤ25,27,26を通して第2,第1コネクトギヤ24,23へと伝達され、さらに外歯15を介してサンギヤ14に伝達された後にプラネタリギヤ16とキャリア17を介してベルトリール12に伝達される。このモータ10の正転方向の駆動力は、ウェビング5を引き込む方向にベルトリール12を回転させる。ただし、サンギヤ14からプラネタリギヤ16に伝達された駆動力は、リングギヤ18が固定されているときに前記のようにすべてキャリア17側に伝達されるが、リングギヤ14の回転が自由な状態においては、プラネタリギヤ16の自転によってリングギヤ18を空転させる。クラッチ20は、リングギヤ14の回転のロックとロック解除を制御することによって、ベルトリール12(キャリア17)に対するモータ駆動力の伝達をオン・オフ操作する。
ここで、クラッチ20について図4,図5を参照して説明する。
クラッチ20は、図示しないケーシングに回動可能に支持され、先端部に係止爪28を有するパウル29と、このパウル29を操作するクラッチスプリング30と、パウル29の係止爪28に係合可能な前記リングギヤ14のラチェット歯19と、を備え、係止爪28は、パウル29がラチェット歯19方向に操作されたときに、ラチェット歯19の傾斜面とほぼ直交する面に突き当たり、リングギヤ14の一方向の回転をロックする。
また、クラッチスプリング30は付根部側が円弧状に湾曲し、その湾曲部31が第1コネクトギヤ23の軸部の外周に巻き付いた状態で係止されている。そして、クラッチスプリング30の先端部はパウル29方向に延出し、パウル29の操作窓32に係合するようになっている。なお、クラッチスプリング30の湾曲部31は摩擦によって第1コネクトギヤ23の軸部に係合しており、第1コネクトギヤ23との間に設定値以上のトルクが作用すると、そのトルクによって第1コネクトギヤ23との間で滑りを生じる。
したがって、このクラッチ20は、モータ10が正転方向(図4中の実線矢印参照。)に回転すると、クラッチスプリング30が、図5の実線で示す姿勢から鎖線で示す姿勢に変化し、これによってパウル29の係止爪28が図4に示すようにラチェット歯19に噛合してリングギヤ18の回転をロックする。なお、このときラチェット歯19はリングギヤ18の一方向の回転を確実にロックすることができるが、リングギヤ18が逆方向に回転しようとしたときにも、ラチェット歯19が係止爪28を押し上げるためにある程度以上の力が必要となる。このため、クラッチスプリング30は、リングギヤ18の逆方向の回転に対してもある程度以上の抵抗力を付与する。
このようにリングギヤ18の回転がロックされると、前述のようにサンギヤ14に伝達された回転力がすべてキャリア17の回転となってベルトリール12に伝達されるようになる(クラッチオン状態)。
一方、このクラッチオン状態からモータ10が逆転すると、第1コネクトギヤ23が、図4中の点線矢印で示すように回転して、クラッチスプリング30を図5中の実線で示すように回動させる。これにより、パウル29の係止爪28がラチェット歯19から引き離され、リングギヤ18のロックが解除される。
このようにリングギヤ18のロックが解除されると、前述のようにサンギヤ14に伝達された回転力がプラネタリギヤ16を自転させ、このときリングギヤ18を空転させてキャリア17(ベルトリール12)側に動力が伝達されないようにする(クラッチオフ状態)。
ところで、コントローラ21には、図2に示すように回転センサ11の他に、横加速度センサ29や前後加速度センサ30、ヨーレートセンサ31、車速センサ32等の車両の状態を検出するためのセンサや、バックル9の接続状態を検出する図示しないバックルスイッチ等のセンサ類が接続されている。また、コントローラ21には、モータ10に流れる電流を検出する電流検出手段33が接続されている。
また、コントローラ21は、車両状態に応じてモータ10に通電する目標電流を周期的に(例えば、5〜20msec/cycle)設定する目標電流設定手段34と、目標電流設定手段34で設定した標準目標電流と一致するようにモータ10の通電電流を制御する標準電流制御手段35と、クラッチ20を接続状態に維持し得る低電流でモータ10に通電する保持電流制御手段36と、目標電流設定手段34で設定される目標電流の経時変化を監視し、目標電流の経時変化に応じて標準電流制御手段35と保持電流制御手段36のいずれかを選択する電流制御選択手段37と、を備えている。コントローラ21は、電流制御選択手段37で選択された電流制御手段(電流制御モード)によってモータ10の通電を制御する。
目標電流設定手段34は、横加速度センサ29とヨーレートセンサ31の検出信号を基にして、ウェビング5の巻取りに必要な標準目標電流を演算やマップの参照等によって決定する。
標準電流制御手段35は、電流検出手段33を通してモータ10の実際の通電電流値を常時フィードバックし、モータ10の通電電流が標準目標電流と一致するように電流の制御を行う。
保持電流制御手段36は、クラッチ20を接続状態に維持し得る最小値(例えば、0.2A)の電流を最終的にモータ10に通電するものであるが、標準電流制御手段35からの移行時には、最小値よりも大きい中間電流値(例えば、0.6A)を所定時間(例えば、01sec)通電する。この実施形態の場合、保持電流制御手段36もフィードバック制御によって目標電流(中間電流値や最小値)に合致するように電流制御を行う。
電流制御選択手段37は、例えば、目標電流設定手段34で周期的に設定される標準目標電流Idをデータとして記憶し、その標準目標電流Idのデータから平均電流値Iavgを求めて、現在の標準目標電流Idと平均電流値Iavgを比較する。そして、例えば、Id*0.8≧Iavgのときに標準電流制御手段35による電流制御を選択し、Id*0.8<Iavgのときに保持電流制御手段36による電流制御を選択する。
なお、電流制御選択手段37で利用する平均電流値Iavgは、モータ10によるウェビング5の巻取り時だけでなく、他の状況下(通常状態)でも算出されるが、図9に示すように、モータ10による巻取りを行わない状況(通常状態)では、ウェビング5の引き出し位置が予め設定された上限値以上や下限値以下になったときに、平均電流値Iavgの算出をリセットする。これにより、通常時に平均電流値Iavgが不要に大きく変化する不具合を解消する。
以下、このシートベルト装置1のコントローラ21による制御を図6〜図8のフローチャートを基にして説明する。
図6は、コントローラ21によるメインフローを示すものである。
このメインフローのステップS1においては、車速センサ32の検出値等を基にして現在車両が走行中であるかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS2に進み、NOの場合には、ステップS5へと進む。
ステップS2においては、加速度センサ29,30やヨーレートセンサ31等のセンサ情報を読み込み、次のステップS3ではセンサ情報を基にしてウェビング5による乗員拘束が現在必要であるかどうかを判定する。ステップS3における乗員拘束の要否は、例えば、加速度やヨーレート偏差が基準値を超えるかどうかによって判定する。ただし、乗員拘束の要否の判定は、これに限らず、車輪のスリップ角が設定値を超えるかどうかや、左右の車輪速度の差の絶対値が設定値を超えるかどうか、さらには、挙動安定化装置(VSA,ABS,TCS等)の作動の有無によって行うようにしても良い。
ステップS3でYESの場合には、拘束制御処理S4に移り、拘束制御処理S4を終了してからステップS5へと進み、NOの場合には、そのままステップS5へと進む。
ステップS5では、ウェビング5の引き出し位置が予め設定された上下限値の範囲内であるかどうかを判定し、YESの場合には、リターンし、NOの場合には、ステップS6に進んで平均電流値Iavgの算出をリセットしてからリターンする。
図7は、拘束制御処理S4のフローを示すものである。
拘束制御処理S4では、最初に、目標電流Itargetの更新処理(設定処理)S101を行い、その後に、ステップS102においてモータ10の通電を行う。なお、ステップS102での初回の通電は予め設定された初期電流I0で実行する。
次のステップS103においては、モータ10の現在の通電電流Iが目標電流Itargetと一致していなかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS104に進み、NOの場合には、ステップS109へと進む。
ステップS104においては、現在の通電電流Iが目標電流Itargetよりも小さいかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS105に進み、NOの場合には、ステップS106へと進む。
ステップS105では、現在の通電電流Iに微小電流ΔIを加算したときに、予め設定された上限値Iupper_limitに満たないかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS107で微小電流Δを加算した後にステップS109に進み、NOの場合には、そのままステップS109へと進む。
一方、ステップS106では、現在の通電電流Iから微小電流ΔIを減算したときに、予め設定された下限値Ilower_limitを超えるかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS108で微小電流ΔIを減算した後にステップS109に進み、NOの場合には、そのままステップS109へと進む。
ここで説明したステップS103〜ステップS107,S108は、現在の通電電流と目標電流を比較し、両者が等しい場合には、そのまま通電を継続し、現在の通電電流が目標電流よりも大きい場合や小さい場合には、上下限値を超えない範囲で通電電流を増減させるステップである。
ステップS109においては、拘束解除条件を満たすかどうか、例えば、加速度やヨーレート偏差が基準値を下回るかどうかを判定する。このときYESの場合には、拘束制御処理を終了し、NOの場合には、目標電流Itargetの更新処理S101へと戻る。
図8は、目標電流Itargetの更新処理S101のフローを示すものである。
目標電流Itargetの更新処理S101のステップS201においては、横加速度センサ29とヨーレートセンサ31の検出信号を読み込み、前回の目標電流Itargetの値をIoldに代入する。
次のステップS202では、横加速度Gyとヨーレート偏差δγを基にして標準目標電流Idを演算やマップの参照によって求め、ステップS203では、標準目標電流Idとそのサンプリング回数nのデータを基にして平均電流値Iavgを算出する。
次のステップS204においては、現在の標準目標電流Idが過去の平均電流値Iavgに対してある程度以上小さいかどうか、例えば、Id*0.8が平均電流値Iavgを下回るかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS205に進み、NOの場合には、ステップS206へと進む。
ステップS206では、保持電流制御モード(保持電流制御手段36による制御)に移行する判定指標となる低減制御フラグをOFFにし、目標電流Itargetに現在の標準目標電流Idを代入して、次のステップS209へと進む。このステップS206を経たときには、標準電流制御モード(標準電流制御手段35による制御)が実行される。
ステップS205では、現在、低減制御フラグがONであるかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS207に進み、NOの場合には、ステップS208へと進む。すなわち、ステップS204で初めてYESと判定されて低減制御フラグがOFF状態の場合には、ステップS208に進み、ステップS204で2回目以降にYESと判定された場合には、ステップS207に進む。
ステップS207においては、目標電流Itargetに、クラッチ20を接続状態に維持し得る低減電流Ired(t)を代入する。この低減電流Ired(t)は、制御モードの変更時点からの経過時間tに応じて変化し、図10に示すように、経過時間tが設定時間(例えば1sec)に達するまでの間は、中間電流値(例えば、0.6A)に設定され、設定時間の経過後には、クラッチ20を接続状態に維持し得る最小値(例えば、0.2A)に設定される。ステップS207の後にはステップS209へと進む。
また、ステップS208においては、低減電流Ired(t)の演算で用いる時間tを計測するためのタイマ値を0にセットし、低減制御フラグをONにするとともに、目標電流Itargetに低減電流Ired(t)を代入する。このときtは0であるため、目標電流Itargetは中間電流値(例えば、0.6A)に設定される。ステップS208の後にはステップS209へと進む。
なお、ステップS207やステップS208を経たときには、保持電流制御モード(保持電流制御手段36による制御)が実行される。
ステップS209においては、今回の目標電流Itargetと前回の目標電流Ioldの差が規制値ΔI(v)を超えるかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS210に進み、NOの場合には処理を終了する。規制値ΔI(v)は、現在の車速vに応じて変化し、図11に示すように、設定車速(例えば、40km/h)に達するまでは一定値C2に設定され、設定車速を超えた後には、C1・v+C2、つまり車速に応じて増大するように設定されている。なお、車速に限らず、ヨーレート偏差等の車両運動量を加味して規制値ΔIを設定するようにしても良い。
ステップS210においては、前回の目標電流Ioldに規制値ΔI(v)を加算したものを今回の目標電流Itargetとして設定し直す。つまり、前回の目標電流Ioldからの電流増加量が規制値ΔI(v)に制限されるように、今回の目標電流Itargetを補正する。このステップS210の後には処理を終了する。
図12は、このシートベルト装置1のコントローラ21による制御の一例を示すタイミングチャートである。
以下、このタイミングチャートについて説明する。
シートベルト装置1を装着して車両走行が行われると、車両の横加速度とヨーレート偏差に基づいて標準目標電流Idが常時算出され、その結果に例えば0.8をかけた比較値(図12中の点線参照)が求められる。また、これと並行して標準目標電流Idのサンプリングと平均電流値Iavgの算出が行われる。
このタイミングチャートの場合、最初に標準目標電流Idに達するようにモータ10の通電電流が制御され、しばらく標準目標電流Idを目標電流とした通電が行われる。こうして標準目標電流Idでの通電が継続されると、比較値(Id*0.8)が平均電流値Iavgを下回り(図12中の「切替1」参照)、この時点で目標電流が低減電流Iret(t)に切り替わる。低減電流Iret(t)は、例えば、1secの間、中間電流値0.6Aに設定された後、クラッチ20を接続状態に維持し得る最小値02Aに設定される。
そして、こうして低減電流Iret(t)での通電が継続されて後に、比較値(Id*0.8)が平均電流値Iavgを上回る(図12中の「切替2」参照)ようになると、目標電流が標準目標電流Idに再度切り替わる。このとき、目標電流が標準目標電流Idに切り替わって標準目標電流Idが増大する場合には、目標電流の最大増大速度が規定値ΔI(v)以下に制限される。
こうして標準目標電流Idでの通電が継続され、比較値(Id*0.8)が平均電流値Iavgを再度下回る(図12中の「切替3」参照)と、この時点で目標電流が低減電流Iret(t)に切り替わる。
以上のように、このシートベルト装置1においては、車両の状態に応じて目標電流を周期的に設定し、現在の目標電流と過去の平均電流値との比較結果に応じて、標準電流制御モード(標準目標電流Idでの通電)と保持電流制御モード(低減電流Ired(t)での通電)のいずれか一方に電流制御を切り替えるため、ベルトリール12の巻取り位置変化が大きくウェビング5の巻取り段階であることが予測される状況では標準電流制御モードによってウェビング5の迅速な巻取りを行い、ベルトリール12の巻取り位置変化が小さくウェビング5による乗員拘束段階であることが予測される状況では保持電流制御モードによって乗員に圧迫感を与えることなく拘束を行うことができる。
なお、保持電流制御モードでは、クラッチ20を接続状態に維持することができるため、モータ10とベルトリール12は動力伝達機構13(減速機構)を介して接続された状態となる。このため、保持電流制御モードで、ベルトリール12に引き出し方向の回転力が作用した場合には、駆動電流に対応した巻取り方向のモータ10のトルクはウェビング5の引き出しを抑制する大きな規制力となる。
また、このシートベルト装置1においては、標準電流制御モードから保持電流制御モードに移行した後に、最小値での通電を実行する前に所定時間、中間電流値での通電を実行するため、目標電流が比較的小さい状態で、拘束が断続的に実行されるような場合でも、電流低下直後の車両状態の変化によるウェビング5の引き出しを防止することができる。
また、このシートベルト装置1では、保持電流制御モードから標準電流制御モードに移行したときに、電流の増加速度(時間当たりの電流増加量)を規制値ΔI(v)以下に制限して、ウェビング5の張力の急激な増加を抑制することができるため、作動の唐突感を無くし、乗員に与える違和感を低減することができる。
さらに、この実施形態においては、保持電流制御モードから標準電流制御モードに移行したときにおける電流増加速度の規制値ΔI(v)が車速の増大に応じて大きくなるように設定されているため、車速が速く、その分緊急時に迅速なウェビング5の巻取りを要求される状況において適切に対応することができる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
この発明の一実施形態のシートベルト装置の概略構成図。 同実施形態のシートベルト装置のリトラクタとコントローラの概略構成図。 同実施形態のシートベルト装置のリトラクタ部分の概略構成図。 同実施形態のリトラクタの動力伝達系を正面から見た概略構成図。 同実施形態の動力伝達系の一部の拡大図。 同実施形態の制御の流れを示すフローチャート。 同実施形態の制御の流れを示すフローチャート。 同実施形態の制御の流れを示すフローチャート。 同実施形態の平均電流値のリセットタイミングを説明する図。 同実施形態の保持電流制御を説明する図。 同実施形態の車速に応じた電流増加速度の規制値の変化を示す図。 同実施形態の制御を示すタイミングチャート。
符号の説明
1…シートベルト装置
5…ウェビング
10…モータ
12…ベルトリール
20…クラッチ
29…横加速度センサ(車両状態検出装置)
31…ヨーレートセンサ(車両状態検出装置)
34…目標電流設定手段
35…標準電流制御手段
36…保持電流制御手段
37…電流制御選択手段

Claims (7)

  1. シートに着座した乗員を拘束するウェビングが巻回されるベルトリールと、
    前記ベルトリールに駆動力を伝達するモータと、
    前記モータのウェビング巻取り方向の設定値以上の回転トルクを受けて前記モータとベルトリールを接続状態に維持するクラッチと、
    を備えた車両のシートベルト装置において、
    車両の状態を検出する車両状態検出装置と、
    前記車両状態検出装置の検出信号を基にして前記モータに通電する目標電流を周期的に設定する目標電流設定手段と、
    前記目標電流設定手段で設定した目標電流と一致するように前記モータの通電電流を制御する標準電流制御手段と、
    前記クラッチを接続状態に維持し得る低電流で前記モータに通電する保持電流制御手段と、
    目標電流の経時変化に応じて前記標準電流制御手段と保持電流制御手段のいずれかを選択する電流制御選択手段と、
    を設けたことを特徴とする車両のシートベルト装置。
  2. 前記保持電流制御手段は、前記クラッチを接続状態に維持し得るほぼ最小値での通電を行う前に、その最小値よりも大きい中間電流値で通電を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
  3. 前記保持電流制御手段から標準電流制御手段に電流制御が移ったときには、時間当たりの電流増加量を規制値以下に制限することを特徴とする請求項1または2に記載の車両のシートベルト装置。
  4. 前記規制値は、車速に応じて設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車両のシートベルト装置。
  5. シートに着座した乗員を拘束するウェビングが巻回されるベルトリールと、
    前記ベルトリールに駆動力を伝達するモータと、
    前記モータのウェビング巻取り方向の設定値以上の回転トルクを受けて前記モータとベルトリールを接続状態に維持するクラッチと、
    を備えた車両のシートベルト装置の制御方法において、
    車両状態に応じて前記モータに通電する目標電流を周期的に設定するステップと、
    前記目標電流の経時変化を監視するステップと、
    目標電流の経時変化に応じて、前記目標電流と一致するように前記モータの通電電流を制御する標準電流制御モードと、前記クラッチを接続状態に維持し得る低電流で前記モータに通電する保持電流制御モードのいずれか一方にモータ制御を切り替えるステップと、
    を備えていることを特徴とする車両のシートベルト装置の制御方法。
  6. 前記保持電流制御モードは、前記クラッチを接続状態に維持し得るほぼ最小値での通電を行う前に、その最小値よりも大きい中間電流値で通電するステップを備えていることを特徴とする請求項5に記載の車両のシートベルト装置の制御方法。
  7. 前記保持電流制御モードから標準電流制御モードに電流制御が移ったときに、時間当たりの電流増加量を規制値以下に制限するステップを備えていることを特徴とする請求項5または6に記載の車両のシートベルト装置の制御方法。
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