JP5248429B2 - 車両用シートベルト装置およびその制御方法 - Google Patents
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Description
この種のシートベルト装置の多くは、ベルトリールの回転を検出する回転センサが設けられ、車両状態や乗員の状態に応じて決定されるベルトリールの目標位置(巻取り位置)と、回転センサによって検出されるベルトリールの現在位置とを比較し、これらの間の乖離量を考慮して目標電流を補正し、その目標電流になるようにモータの通電電流を制御するようにしている。
これにより、第1の電流制御手段によってモータを制御している途中で回転センサが故障した場合には、電流の急激な変化を回避しつつ回転センサを用いない第2の電流制御手段によるモータの制御に切換えられる。
また、センサ異常検知手段によって回転センサの異常が検知される直前に、異常を含んだ回転センサの検出信号が抽出されてしまった場合であっても、このとき、回転センサの検出信号をフィードバックパラメータとして含む目標補正成分を無効にし、若しくは目標補正成分を減少させて目標電流が設定されるため、回転センサの故障前の目標電流と大きく乖離しない目標電流でモータに電流を流した後に、第2の電流制御手段による電流制御が実行されるようになる。
これにより、回転センサの異常がセンサ異常検知手段によって検知されると、モータに対する通電電流がフィードバックされ、第2の電流制御手段によるウェビングの張力変化を考慮したモータの制御が行われるようになる。
これにより、回転センサの故障の有無を判定するステップで故障が判定されると、次のステップで回転センサの検出信号をフィードバックパラメータとして用いることを禁止され、他のフィードバックパラメータを用いて、或いは、予め固定された通電パターンでモータの通電制御が実行されるようになる。
これにより、モータの通電が実行されている間には、回転センサの異常報知が行われることがなくなる。
具体的には、センサ異常検知手段によって回転センサの異常が検知されたときに、異常検知直前に第1の電流制御手段で設定した目標電流のうちの、回転センサの検出信号をフィードバックパラメータとして含む目標補正成分を無効にし、若しくは目標補正成分を減少させ、そこで得られた目標電流でモータの通電を実行した後に第2の電流制御手段による電流制御に移行するため、電流制御の移行時における目標電流の急激な変化を確実に抑制することができる。
図1は、この発明にかかるシートベルト装置1の全体概略構成を示すものであり、同図中2は、乗員3の着座するシートである。この実施形態のシートベルト装置1は、所謂三点式のシートベルト装置であり、図示しないセンタピラーに取付けられたリトラクタ4からウェビング5が上方に引き出され、そのウェビング5がセンタピラーの上部側に支持されたスルーアンカ6に挿通されるとともに、ウェビング5の先端がシート2の車室外側寄りのアウタアンカ7を介して車体フロアに固定されている。そして、ウェビング5のスルーアンカ6とアウタアンカ7の間にはタングプレート8が挿通されており、そのタングプレート8は、シート2の車体内側寄りの車体フロアに固定されたバックル9に対して脱着可能となっている。
ウェビング5は、初期状態ではリトラクタ4に巻き取られており、乗員3が手で引き出してタングプレート8をバックル9に固定することにより、乗員3の主に胸部と腹部をシート2に対して拘束する。また、このシートベルト装置1は、車両の挙動が不安定になったとき等に電動式のモータ10によって自動的にウェビング5の巻取り調整を実行する。
この場合、ベルトリール12の回転に応じてセンサ回路からコントローラ21に入力されたパルス信号は、ベルトリール12の回転量(回転位置)や、回転速度、回転方向等を検出するのに用いられる。つまり、コントローラ21においては、パルス信号をカウントすることによってベルトリール12の回転量(ウェビング5の巻取り量・引き出し量)を検出し、パルス信号の変化速度(周波数)を演算することによってベルトリール12の回転速度(ウェビング5の巻取り・引き出し速度)を求め、さらに、両パルス信号の波形の立ち上がりの比較によってベルトリール12の回転方向を検出する。
動力伝達機構13は、サンギヤ14が駆動入力用の外歯15に一体に結合されるとともに、複数のプラネタリギヤ16を支持するキャリア17がベルトリール12の軸に結合されている。そして、プラネタリギヤ16に噛合したリングギヤ18の外周側には複数のラチェット歯(図示省略)が形成され、このラチェット歯がクラッチ20の一部を構成するようになっている。このクラッチ20は、コントローラ21によるモータ10の駆動力の制御によってモータ10とベルトリール12の間の動力伝達系を適宜断切する。
これらの図に示すように、A相,B相のパルス波形は、回転センサ11が正転(一方向に回転)するときのものであるとすると、A相とB相の加算値は…3→2→0→1…と変化し、回転センサが逆転する場合には、A相とB相の加算値は…3→1→0→2…と変化する。
また、この例では、A相とB相の加算値が…3→2→0→1…と変化する場合(正転時)には、加算値の変化(前回値−今回値)を+1とし、A相とB相の加算値が…3→1→0→2…と変化する場合には、加算値の変化(前回値−今回値)を−1としており、図4の(F)は、正転時における加算値の変化(前回値−今回値)の様子を示している。また、図4の(G)は、A相とB相の加算値変化をカウントした値を示している。パルスの総カウント値はベルトリール12の回転量に応じて変化し、正転時には増加し、逆転時には減少する。
この回転センサ11のB相の故障時には、図5の(D)に示すように、B相のパルスの対応値は常に1となり、A相とB相の加算値は、図5の(E)に示すように…1→3→1…と変化し、加算値の変化(前回値−今回値)は、図5の(F)に示すように1の場合と−1の場合がある。このため、図5の(G)に示すように、パルスの総カウント値は、ベルトリール12が回転しても1以上に増加することがなく、−1以下に減少することもない。
なお、ここでは図示は省略するが回転センサ11のA相が故障した場合も同様である。
この実施形態のセンサ異常検知手段35は、パルスの総カウント値が−1以上1以下の範囲で変動するときに、回転センサ11のA相、B相の一方に異常があるものと判定する。
(a)ベルトリール12の目標位置X1(ウェビング5の目標巻取り位置)と、現在位置Xとの乖離量。
(b)ベルトリール12の目標速度V1(ウェビング5の目標巻取り速度)と、現在速度Vとの乖離量。
(c)モータ10に通電する目標電流I1と電流センサ40によって検出される実際の電流Iとの乖離量。
すなわち、第1の電流制御手段36においては、ベルトリール12の現在位置Xと現在速度Vと、モータ10に対する現在の通電電流Iをフィードバックパラメータとして用いている。
図8のステップS101においては、回転センサ11や横加速度センサ31、ヨーレートセンサ32等のセンサ類の信号を読み込み、つづくステップS102では、モータ10の作動要求、つまり、車両状態の変化等による乗員拘束要求があるか否かを判定する。このとき、Noの場合には待機し、Yesの場合には、ステップS103へと進む。
ステップS103では、車両状態等に応じてベルトリール12の目標位置X1と、目標回転速度V1と、モータ10に対する初期通電量I0を設定し、つづくステップS104においてモータ10に対する通電を開始する。
次のステップS108においては、ステップS106で設定した基準目標電流に対して、後述するステップS110で設定する電流補正代ΔIを加算若しくは減算して最終目標電流を決定する。なお、故障検知の周期は、この電流補正代ΔIの加減周期よりも短くすることが好ましい。
つづくステップS109においては、ベルトリール12の目標位置X1と現在位置Xの乖離量が規定の範囲を超えているか否かを判定し、Yesの場合には、ステップS110を経てからステップS111に進み、Noの場合には、直接ステップS111へと進む。
ステップS110においては、電流補正代ΔIを決定するが、この電流補正代ΔIは、目標電流I1と現在電流Iとの乖離量(I1−I)と、目標位置X1と現在位置Xとの乖離量(X1−X)と、目標速度V1と現在速度Vとの乖離量(V1−V)が加味されて決定される。
ステップS111においては、モータ制御の終了条件に達したか否かを判定し、Yesの場合にはステップS105に戻り、Noの場合にはステップS112に進む。このステップS112以降の処理については後に説明する。
なお、ステップS106からステップS110までの一連の制御は第1の電流制御手段36の機能に相当する。
ステップS115に進んだ場合には、ステップS106と同様に車両状態等に応じて基準目標電流を設定する(制御電流目標を更新する)。
次のステップS117においては、ステップS115で設定した基準目標電流に対して、電流補正代ΔIを加算若しくは減算して最終目標電流を決定する。
ただし、ステップS105で異常フラグが初めて有効と判定されたときには、ステップS117で電流補正代ΔIの加算や減算は行わない。これは異常フラグが初めて有効と判定された場合に、フィードバックパラメータに回転センサ11の検知信号が加えられるステップS110の電流補正代ΔIが採用されるため、回転センサ11の異常信号が加わっている可能性が高くなり、異常信号が加わっている場合には電流補正代ΔIが急増してしまうためである。なお、この例では、異常フラグが有効と判定されて初回の電流補正代ΔIの加算や減算を行わないようにしたが、ΔIに係数α(α<1)を掛け合わせたものを加算若しくは減算するようにしても良い。
つづくステップS118においては、目標電流I1と現在電流Iの乖離量が規定の範囲を超えているか否かを判定し、Yesの場合には、ステップS119を経てからステップS111に進み、Noの場合には、直接ステップS111へと進む。
ステップS119においては、電流補正代ΔIを決定するが、この電流補正代ΔIは、目標電流I1と現在電流Iとの乖離量(I1−I)のみが加味されて決定される。
ステップS120においては、回転センサ11等に異常があった旨をユーザーに報知するために報知ランプ41を点灯させる。
ステップS201においては、経過時間を計測するタイマーをスタートさせ、モータ等の作動信号とセンサ類の信号を読み込む。
つづく、ステップS202においては、モータ10の通電があるか否かを判定し、Yesの場合にはステップS203に進み、Noの場合にはリターンする。
ステップS203においては、電流センサ40からの検出電流があるか否かを判定し、Yesの場合にはステップS204に進み、Noの場合にはステップS205に進む。ステップS205では、電流センサ40の系に故障があるため、故障フラグを有効にした後にリターンする。
この図からも明らかなように、この実施形態のシートベルト装置1では、モータ制御中に回転センサ11が故障した場合であっても、通電電流の急激な変化を確実に抑制することができる。
したがって、このシートベルト装置1においては、ウェビング張力の急変によって乗員に不快感を与えたり、モータ10が高速回転することによって騒音が発生するを防止することができる。
10…モータ
11…回転センサ
12…ベルトリール
35…センサ異常検知手段
36…第1の電流制御手段
37…第2の電流制御手段
40…電流センサ
Claims (5)
- ウェビングが巻回されるベルトリールと、
前記ベルトリールの回転を検出する回転センサと、
前記ベルトリールを回転駆動するモータと、を備え、
車両状態若しくは乗員の状況に応じて前記モータに通電する電流を制御する車両用シートベルト装置であって、
前記回転センサの異常を検知するセンサ異常検知手段と、
前記回転センサの検出信号を少なくとも一つのフィードバックパラメータとして目標電流を設定し、その目標電流になるように前記モータの通電電流を制御する第1の電流制御手段と、
前記回転センサの検出信号を用いずに目標電流を設定し、その目標電流になるように前記モータの通電電流を制御する第2の電流制御手段と、をさらに備え、
前記第1の電流制御手段によって前記モータの通電電流を制御している状況下で、前記センサ異常検知手段が回転センサの異常を検知したときに、異常検知直前に前記第1の電流制御手段で設定した目標電流のうちの、前記回転センサの検出信号をフィードバックパラメータとして含む目標補正成分を無効にし、若しくは目標補正成分を減少させ、そこで得られた目標電流でモータの通電を実行した後に前記第1の電流制御手段による電流制御から前記第2の電流制御手段による電流制御に移行することを特徴とすることを特徴とする車両用シートベルト装置。 - 前記モータに通電される電流量を検出する電流センサを備え、
前記第2の電流制御手段は、前記電流センサの検出信号に基づいて目標電流を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用シートベルト装置。 - 前記センサ異常検知手段は、前記回転センサの異常に加えて、前記電流センサの異常を検知可能に構成され、
前記第2の電流制御手段は、前記センサ異常検出手段により前記電流センサの異常が検知されたときに、前記第1の電流制御手段による電流制御からの移行時に目標電流が急変化しない複数の通電パターンを記憶しておき、電流制御の移行時の条件に応じて通電パターンを選択することを特徴とする請求項2に記載の車両用シートベルト装置。 - ウェビングが巻回されるベルトリールと、
前記ベルトリールの回転を検出する回転センサと、
前記ベルトリールを回転駆動するモータと、を備え、
車両状態若しくは乗員の状況に応じて、前記回転センサの検出信号を少なくとも一つのフィードバックパラメータとして目標電流を設定し、その目標電流になるように前記モータに通電する電流を制御する車両用シートベルト装置の制御方法であって、
前記回転センサの異常の有無を判定するステップと、
前記ステップで異常有りの判定があったときに、異常検知直前に前記回転センサの検出信号を少なくとも一つのフィードバックパラメータとして設定した目標電流のうちの、前記回転センサの検出信号をフィードバックパラメータとして含む目標補正成分を無効にし、若しくは目標補正成分を減少させ、そこで得られた目標電流でモータの通電が実行された後に、前記回転センサの検出信号を除外して目標電流を設定するステップと、を含むことを特徴とする車両用シートベルト装置の制御方法。 - 前記回転センサの検出信号を除外して設定した目標電流になるように前記モータの通電を実行するステップと、
前記通電の実行が完了した後に、前記異常の有無の判定結果に基づいて前記回転センサの異常を報知するステップと、を含むことを特徴とする請求項4に記載の車両用シートベルト装置の制御方法。
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