JP4597754B2 - シートベルト装置 - Google Patents

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Description

この発明は、車両のシートに着座した乗員をウェビングによって拘束するシートベルト装置に関し、特に、車両の衝突時にウェビングの引き出しを機械的にロックする緊急ロック機構と、車両衝突前にウェビングに予め引き込み力を加えるプリテンション機構を備えたシートベルト装置に関するものである。
車両に装備されるシートベルト装置は乗員拘束用のウェビングがリトラクタ内のリールに巻回され、装着時にリトラクタから引き出されるようになっている。また、シートベルト装置の多くは、ウェビングの引き出しを機械的にロックする緊急ロック機構を備え、衝突の危険性の高い所定運転状況のとき緊急ロック機構がウェビングの引き出しをロックするようになっている。
また、近年、レーダ等によって車両の前方状況を検出し、その検出信号を基にして車両の衝突可能性を判定して、ブレーキの制動力やシートベルト装置の引き込みを制御するものが開発されている。ここで用いられるシートベルト装置は、ウェビングを引き込むためのモータを備え、衝突可能性判定手段が衝突の可能性有りと判定したときに、前記モータを駆動させてウェビングの緊急引き込みを行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−224263号公報
この従来のシートベルト装置においては、衝突可能性判定手段が一度衝突の可能性有りと判定した場合には、モータ制御によるウェビングの緊急引き込みが所定時間継続される。しかし、衝突可能性判定手段が一度衝突の可能性有りと判定した場合であっても、衝突に至らずに衝突可能性がなしに変わる状況も当然に発生する。
このような状況の場合、従来のシートベルト装置は、衝突の回避後にもウェビングの緊急引き込みが所定時間行われ、その後に緊急引き込み制御が解除される。このため、従来のシートベルト装置においては、衝突回避後の緊急引き込みの解除にタイムラグが生じやすい。
また、従来のシートベルト装置の場合、ウェビングの緊急引き込みが開始して衝突が回避されるまでの間に緊急ロック機構が作動する可能性を考慮すると、緊急引き込みを解除する際には、引き込みを一旦停止した後にロック解除用のウェビングの引き込み動作を行わなければならない。このため、衝突の回避後にはウェビングが二度引きされて乗員に違和感を与えることになり、特に、緊急ロック機構が実際に作動しない場合には、ロック解除用のウェビングの引き込みが不要な張力を乗員に付与することになる。
そこでこの発明は、衝突可能性判定手段の判定が衝突の可能性有り、から、なしに変わったときに、速やかにウェビングの緊急引き込みを解除でき、しかも、ウェビングの緊急引き込みの解除時における乗員への不要な張力の付与と、ウェビングの二度引きによる違和感を可及的に無くすことのできるシートベルト装置を提供しようとするものである。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、シート(例えば、後述の実施形態におけるシート2)に着座した乗員を拘束するウェビング(例えば、後述の実施形態におけるウェビング5)と、衝突の危険性の高い所定運転状況時にウェビングの引き出しを機械的にロックする緊急ロック機構(例えば、後述の実施形態における緊急ロック機構33)と、車両の衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段(例えば、後述の実施形態における衝突可能性判定手段38)と、この衝突可能性判定手段が衝突の可能性有りと判定したときにウェビングの緊急引き込み制御を行うシートベルト制御手段(例えば、後述の実施形態におけるシートベルト制御手段40)と、を備えたシートベルト装置において、前記シートベルト制御手段のウェビングの緊急引き込み制御開始後に前記衝突可能性判定手段が衝突可能性なしと判定したならば、シートベルト制御手段にウェビングの緊急引き込み制御の解除指令を発する緊急引き込み解除手段(例えば、後述の実施形態における緊急引き込み解除手段41)と、前記緊急ロック機構のロック作動の有無を判定するロック作動判定手段(例えば、後述の実施形態におけるロック作動判定手段39)と、前記シートベルト制御手段による緊急引き込み制御の解除時に、前記ロック作動判定手段がロック作動有りと判定した場合には、ロック解除用のウェビング引き込み制御に移行して引き込み制御を終了するロック解除モードを選択し、前記ロック作動判定手段がロック作動なしと判定した場合には、ロック解除用のウェビング引き込み制御に移行せずに引き込み制御を終了する通常解除モードを選択する解除モード選択部(例えば、後述の実施形態における解除モード選択部42)と、を設けるようにした。
この発明の場合、車両の走行中に衝突可能性判定手段が衝突の可能性有りと判定すると、シートベルト制御手段がウェビングの緊急引き込み制御を開始し、車両がそのまま衝突するときには緊急引き込み制御が維持される。また、衝突可能性判定手段が衝突の可能性有りと判定した後に、衝突可能性判定手段の判定が衝突可能性なしに切り換わると、緊急引き込み解除手段からシートベルト制御手段にウェビングの緊急引き込み制御を解除すべき指令が発される。この緊急引き込み制御を解除すべき指令が発されると、ロック作動判定手段の判定に応じて解除モード選択部が解除作動モードを選択し、その解除作動モードの選択結果に応じた解除作動モードでウェビングの引き込み制御が解除される。そして、ロック作動判定手段がロック作動有りと判定したときには、ロック解除用のウェビングの引き込み制御に移行することによって緊急ロック機構のロックを解除して引き込み制御を終了し、ロック作動なしと判定したときには、そのまま引き込み制御を終了する。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ロック解除モードの選択時におけるロック解除用のウェビングの引き込みは、緊急引き込み制御時のウェビングの累積引き込み量を基に引き込み力を制御するようにした。
この場合、ロック解除モードが選択された状態で、シートベルト制御手段にウェビングの緊急引き込み制御を解除すべき指令が発されると、ウェビングの引き込み移動が一度停止して緊急ロック機構がロック作動した後、緊急引き込み制御時のウェビングの累積引き込み量に応じた力とウェビングをさらに引き込む力を加算した力でウェビングが引き込まれ、それによって緊急ロック機構がロック解除されるようになる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記ロック解除モードの選択時におけるロック解除用のウェビングの引き込みは、ウェビングの張力がゼロになる前のタイミングで行うようにした。
この場合、ウェビングの張力が完全にゼロになる前のタイミングでロック解除用のウェビングの引き込みが行われると、ウェビングの引き込み移動が一度停止した後にも乗員が断続的な引き込みと感じにくくなる。
請求項1に記載の発明によれば、衝突可能性判定手段の判定が衝突の可能性有りからなしに切り換わったときには、緊急引き込み解除手段からシートベルト制御手段に解除指令を発してウェビングの緊急引き込みを迅速に解除することができ、しかも、この解除にあたっては、解除モード選択部がロック作動判定手段の判定結果に応じてシートベルト制御手段の解除作動モードを選択し、緊急ロック機構がロック作動するときにのみロック解除用のウェビングの引き込み制御に移行し、ロック作動しないときにはそのまま緊急引き込み制御を解除するため、ロック作動しない場合における不要なウェビングの引き込みを防止することができる。また、緊急ロック機構がロック作動する場合にあっても、衝突可能性判断手段による判定が衝突可能性なしに切り換わった時点で、ウェビングの引き込み制御を緊急ロック用の制御からロック解除用の制御に連続的に移行させるため、乗員に与えるウェビングの二度引き感をより少なくすることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、ロック作動解除のためのウェビングの引き込み力を、緊急引き込み制御時のウェビングの累積引き込み量を基にして制御するため、乗員に必要以上の張力を作用させることなく、緊急ロック機構を確実にロック解除することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、ウェビングの張力が完全にゼロになる前のタイミングでロック解除用のウェビングの引き込みを行うため、乗員に与えるウェビングの二度引き感をより少なくすることができる。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明にかかるシートベルト装置1の全体概略構成を示すものであり、同図中2は、乗員3の着座するシートである。この実施形態のシートベルト装置1は、いわゆる三点式のシートベルト装置であり、図示しないセンタピラーに取り付けられたリトラクタ4からウェビング5が上方に引き出され、そのウェビング5がセンタピラーの上部側に支持されたスルーアンカ6に挿通されるとともに、ウェビング5の先端がシート2の車室外側寄りのアウタアンカ7を介して車体フロアに固定されている。そして、ウェビング5のスルーアンカ6とアウタアンカ7の間にはタングプレート8が挿通されており、そのタングプレート8は、シート2の車体内側寄りの車体フロアに固定されたバックル9に対して脱着可能となっている。
ウェビング5は、初期状態でリトラクタ4に巻き取られており、乗員3が手で引き出してタングプレート8をバックル9に固定することにより、乗員3の主に胸部と腹部をシート2に対して拘束する。このシートベルト装置1の場合、衝突時におけるウェビング5の緊急引き込みが電動式のモータ10によって行われ、このモータ10がプリテンション機構を構成するようになっている。
リトラクタ4は、図2〜図4に示すようにケーシング11に回転可能に支持されたリール12にウェビング5が巻回されるとともに、ケーシング11の一端側に突出したリール12の軸12aに遊星歯車式の減速機構13が係合され、その減速機構13が複数の歯車群から成るモータ側動力伝達系22を介してモータ10の回転軸10aに連係されている。
減速機構13は、サンギヤ14が駆動入力用の外歯15に一体に結合されるとともに、複数のプラネタリギヤ16を支持するキャリア17がリール12の軸12aに結合されている。そして、プラネタリギヤ16に噛合したリングギヤ18の外周側には複数のラチェット歯19が形成され、このラチェット歯19が後述するクラッチ20の一部を構成するようになっている。このクラッチ20は、コントローラ21による制御によってモータ10とリール12の間の動力伝達系を適宜断切する。
モータ側動力伝達系22は、サンギヤ14と一体の外歯15に常時噛合される小径の第1コネクトギヤ23と、この第1コネクトギヤ23と同軸にかつ一体に回転し得るように設けられた大径の第2コネクトギヤ24と、この第2コネクトギヤ24とモータギヤ25(モータ10の回転軸10aと一体)の間にあって動力伝達可能に常時噛合される第1,第2アイドラギヤ26,27と、を備えている。モータ10の正転方向の駆動力は、図3中の実線矢印で示すように各ギヤ25,27,26を通して第2,第1コネクトギヤ24,23へと伝達され、さらに外歯15を介してサンギヤ14に伝達された後にプラネタリギヤ16とキャリア17を介してリール12に伝達される。このモータ10の正転方向の駆動力は、ウェビング5を引き込む方向にリール12を回転させる。ただし、サンギヤ14からプラネタリギヤ16に伝達された駆動力は、リングギヤ18が固定されているときに前記のようにすべてキャリア17側に伝達されるが、リングギヤ14の回転が自由な状態においては、プラネタリギヤ16の自転によってリングギヤ18を空転させる。クラッチ20は、リングギヤ14の回転のロックとロック解除を制御することによって、リール12(キャリア17)に対するモータ駆動力の伝達をオン・オフ操作する。
ここで、クラッチ20について図3,図4を参照して説明する。
クラッチ20は、図示しないケーシングに回動可能に支持され、先端部に係止爪28を有するパウル29と、このパウル29を操作するクラッチスプリング30と、パウル29の係止爪28に係合可能な前記リングギヤ14のラチェット歯19と、を備え、係止爪28は、パウル29がラチェット歯19方向に操作されたときに、ラチェット歯19の傾斜面とほぼ直交する面に突き当たり、リングギヤ14の一方向の回転をロックするようになっている。
また、クラッチスプリング30は付根部側が円弧状に湾曲し、その湾曲部31が第1コネクトギヤ23の軸部の外周に巻き付いた状態で係止されている。そして、クラッチスプリング30の先端部はパウル29方向に延出し、パウル29の操作窓32に係合するようになっている。なお、クラッチスプリング30の湾曲部31は摩擦によって第1コネクトギヤ23の軸部に係合しており、第1コネクトギヤ23との間に設定値以上のトルクが作用すると、そのトルクによって第1コネクトギヤ23との間で滑りを生じる。
したがって、このクラッチ20は、モータ10が正転方向(図3中の実線矢印参照。)に回転すると、クラッチスプリング30が、図4の実線で示す姿勢から鎖線で示す姿勢に変化し、これによってパウル29の係止爪28が図3に示すようにラチェット歯19に噛合してリングギヤ18の回転をロックする。なお、このときラチェット歯19は一方の回転方向に傾斜しているため、リングギヤ18の一方向の回転を確実にロックすることができるが、リングギヤ18が逆方向に回転しようとしたときにも、ラチェット歯19が係止爪28を押し上げるためにある程度以上の力が必要となる。このため、クラッチスプリング30は、リングギヤ18の逆方向の回転に対してもある程度以上の抵抗力を付与する。
このようにリングギヤ18の回転がロックされると、前述のようにサンギヤ14に伝達された回転力がすべてキャリア17の回転となってリール12に伝達されるようになる(クラッチオン状態)。
一方、このクラッチオン状態からモータ10が逆転すると、第1コネクトギヤ23が、図3中の点線矢印で示すように回転して、クラッチスプリング30を図4中の実線で示すように回動させる。これにより、パウル29の係止爪28がラチェット歯19から引き離され、リングギヤ18のロックが解除される。
このようにリングギヤ18のロックが解除されると、前述のようにサンギヤ14に伝達された回転力がプラネタリギヤ16を自転させ、このときリングギヤ18を空転させてキャリア17(リール12)側に動力が伝達されないようにする(クラッチオフ状態)。
また、リトラクタ4には、図1,図2に示すように、車両に設定値以上の減速度が作用したときにウェビング5の引き出しを機械的にロックする周知の緊急ロック機構33が設けられている。
ところで、車両には、図1に示すように、前方の静止物体や走行車両等を検出するレーダ35(前方状況検出手段)と、車両の減速度を検出する加速度センサ36(ロック状況検出手段)が設けられ、これらがコントローラ21に接続されている。コントローラ21には、レーダ35の検出信号を基にして衝突の可能性の有無を判定する衝突可能性判定手段38と、加速度センサ36の検出信号を基にして緊急ロック機構33の作動の有無を推定し判定するロック作動判定手段39と、衝突可能性判定手段38とロック作動判定手段39の判定結果に基づいてモータ10を制御するシートベルト制御手段40と、シートベルト制御手段40がウェビング5の緊急引き込み制御を開始した後に、衝突可能性判定手段38が衝突の可能性なしと判定したときに、シートベルト制御手段40にウェビング5の緊急引き込み制御を解除すべき信号(指令)を出力する緊急引き込み解除手段41と、を備えている。
なお、この実施形態では、モータ10の制御のみによってクラッチ20の作動も同時に制御し得るようになっている。即ち、クラッチ20には、図2,図3に示すように第1コネクトギヤ23の軸に摩擦係合するクラッチスプリング30が設けられているため、モータ10の正転駆動が開始されると、クラッチ20のパウル29がクラッスプリング30によってリングギヤ18をロック(クラッチオン)する方向に操作され、モータ10が逆転方向に駆動されると、クラッチスプリング30によって逆にリングギヤ18のロックを解除(クラッチオフ)する方向に操作される。
ここで、シートベルト制御手段40の機能について説明する。
シートベルト制御手段40は、衝突可能性判定手段38が衝突の可能性有りと判定したときに、モータ10を正転方向に回転させ、それによってウェビング5を設定量引き込んで実際の衝突に備える(このときの制御を「緊急引き込み制御」と呼ぶ)。なお、このときクラッチ20はモータ10の正転駆動によって自動的にオンになる。
また、シートベルト制御手段40は、緊急引き込みが開始された後に前述の緊急引き込み解除手段41から解除信号が入力されると、その解除信号の入力までの間にロック作動判定手段39からロック作動有りの信号が入力されたか否かによって解除作動モードを選択する。シートベルト制御手段40は、図1に示すように後述するロック解除モードと通常解除モードのいずれかを選択する解除モード選択部42を備えている。この解除モード選択部42は、緊急引き込み解除手段41から解除信号が入力されるまでの間に、ロック作動判定手段39からロック作動有りの信号が入力されたときにロック解除モードを選択し、ロック作動有りの信号が入力されないときには残余の通常解除モードを選択する。
<ロック解除モード>
ウェビング5の緊急引き込み制御からロック解除用のウェビング5の引き込み制御に移行し、その後に引き込み制御を終了する。具体的には、緊急引き込み制御によるウェビング5の移動を停止して、緊急ロック機構33の機械的なロックの後にロック解除のための引き込み制御に移行し、ここでロック作動を解除し得る所定量のウェビング5の引き込みを行った後にモータ10を逆転させてクラッチ20を解除する。
ロック解除のための引き込みにおいては、緊急引き込み制御時のウェビング5の累積引き込み量を基に、その累積引き込み量に応じた力と、ロック解除のための力αを加算した引き込み力となるようにモータ10の電流を制御する。なお、ロック解除のための力αは解除信号の入力からの経過時間等に応じて変化されるようにしても良い。また、緊急引き込み制御時にモータ10に流す電流値は、累積引き込み量から演算するのに代えて、実引き込み時間等から予測するようにしても良い。
<通常解除モード>
ウェビング5の緊急引き込み制御からモータ10の回転を停止し、設定時間の経過後にモータ10を逆転させてクラッチ20を解除する。なお、モータ10の停止時に即時にクラッチを解除せずに設定時間の経過を待つのは、この間にモータ側動力伝達系22の慣性質量による負荷をウェビング5に作用させ、乗員に対する拘束力が急激に抜けないようにするためである。
また、この実施形態の場合、バイワイヤ方式によるブレーキ装置(図示せず。)が車両に搭載され、衝突可能性判定手段38が衝突可能性有りと判定したときには、コントローラ21がブレーキ装置に対して車両状態に応じた制動制御を行うようになっている。
なお、衝突可能性判定手段38が衝突可能性有りと判定した後に、判定が衝突可能性なしに変わる状況とは、例えば、図5に示すように車両50の走行中に前方車両51が左折する場合において、前方車両51との一時的な接近を最初に衝突可能性有りと判定し、その後に前方車両51の左折によって衝突可能性が無くなるようなときである。
以下、コントローラ21による制御を図6のフローチャートを参照して説明する。
S101において緊急引き込み制御が開始されると、次に、S102において、緊急引き込み解除手段41からの解除信号(指令)の入力があったかどうかを判断する。ここで、解除信号の入力があった場合には、S103に進み、解除信号の入力が無かった場合には、S104に進んで緊急引き込み制御を継続する。
S103においては、解除信号が入力されるまでの間に、ロック作動判定手段39でロック作動有りの信号が出力されたか否かを判定し、ロック作動有りの信号が出力された場合には、S105に進み、ロック作動有りの信号出力がない場合には、S106へと進む。ここでの判定は解除モード選択部42の機能に相当する。
S105においては、ウェビング5の引き込み移動を一時的に停止した後に上述のロック解除用の引き込み制御に移行し、ロック解除後にモータ10を停止させて、次のS107においてクラッチ20を解除して制御を終了する。
一方、S106においては、モータ10を停止してウェビング5の引き込みを停止し、設定時間ウェビング5に負荷を作用させた後に、S107においてクラッチ20を解除して制御を終了する。
図7,図8は、緊急引き込み制御中に解除信号が入力されたときに、ロック作動判定手段39からロック作動有りの信号出力があった場合のモータ通電電流とウェビング張力の様子を示したものである。これらの図において、破線は、緊急引き込み制御が途中で解除されない場合の衝突時の基準電流制御値であり、実線は、緊急引き込み制御から解除信号の入力によってロック解除用の引き込み制御に移行したときの電流の変化を示すものである。
図7は、緊急引き込み制御の開始から比較的早期に解除信号の入力があった場合であり、この場合には、緊急引き込み制御の開始初期の電流増加の途中で解除信号の入力によって電流が減少し、モータ10の一時停止によってウェビング5の引き込み移動が停止した後に、ロック解除用の引き込みのための通電が行われている。そして、この通電が終了し、ウェビング張力がほぼゼロになった後にクラッチ解除のための通電が行われている。
この場合、ウェビング張力が高まった状態のまま緊急引き込み制御からロック解除用の引き込み制御に連続的に移行しているため、乗員に二度引き感を与えることなく、速やかに緊急引き込み制御を解除することができる。
図8は、緊急引き込み制御の開始からtを過ぎてウェビング張力が充分に高まった後に解除信号の入力があった場合であり、この場合には、緊急引き込みの制御電流が安定した後に解除信号の入力によって電流が減少し、モータ10の一時停止によってウェビング5の引き込み移動が停止した後に、ロック解除用の通電と、その通電終了後のクラッチ解除のための通電が行われている。
この場合、ウェビング張力が完全にゼロになる前に緊急引き込み制御からロック解除用の引き込み制御に連続的に移行するため、速やかに、かつ乗員に与える二度引き感を抑制した状態で緊急引き込み制御を解除することができる。
また、図9は、緊急引き込み制御中に解除信号が入力されたときに、ロック作動判定手段39からロック作動有りの信号出力が無かった場合のモータ通電電流とウェビング張力の様子を示したものであり、同図中の破線は、緊急引き込み制御が途中で解除されない場合の衝突時の基準電流制御値であり、実線は、緊急引き込み制御が途中で解除される際の電流の変化を示すものである。この場合には、緊急引き込みの制御電流が安定した後に解除信号の入力によって電流がそのままゼロまで減少し、ロック解除用の通電が行われることなく所定時間の経過後にクラッチ解除のための通電が行われている。
この場合、緊急引き込み制御の解除の際にロック解除用の引き込みがまったく行われないため、不要な張力を乗員に与えることがない。
以上のようにこのシートベルト装置1は、緊急引き込み解除手段41からの解除信号の入力があったときには、緊急ロック機構の作動の有無に拘らず、速やかにウェビング5の緊急引き込み制御を解除することができる。したがって、衝突の可能性が回避された直後に、次の衝突の可能性が高まった場合にも、より速やかに緊急引き込み制御に移行することができる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、車両の前方状況を検出する手段としてレーダ35を用いているが、レーダに代えて赤外線による検出装置を用いることも可能である。また、緊急ロック機構33のロック状況を検出する手段も加速度センサ36に限らず、緊急ロック機構33の仕組み等に応じて適宜別の装置を採用することが可能である。
この発明の一実施形態のシートベルト装置を示す全体概略構成図。 同実施形態のシートベルト装置を側面側から見た概略構成図。 同実施形態のシートベルト装置の動力伝達系を正面側から見た概略構成図。 同実施形態の動力伝達系の一部の拡大部。 同実施形態を説明するための路上の鳥瞰図。 同実施形態のシートベルト装置の制御の流れを示すフローチャート。 同実施形態を示すものであり、緊急引き込み制御からロック解除用の引き込み制御に移行してクラッチ解除する際のモータ通電電流とウェビング張力の様子を示したタイミングチャート。 同実施形態を示すものであり、緊急引き込み制御からロック解除用の引き込み制御に移行してクラッチ解除する際のモータ通電電流とウェビング張力の様子を示したタイミングチャート。 同実施形態を示すものであり、緊急引き込み制御からロック解除用の引き込み制御に移行せずにクラッチ解除する際のモータ通電電流とウェビング張力の様子を示したタイミングチャート。
符号の説明
1…シートベルト装置
5…ウェビング
33…緊急ロック機構
38…衝突可能性判定手段
39…ロック作動判定手段
40…シートベルト制御手段
41…緊急引き込み解除手段
42…解除モード選択部

Claims (3)

  1. シートに着座した乗員を拘束するウェビングと、
    衝突の危険性の高い所定運転状況時にウェビングの引き出しを機械的にロックする緊急ロック機構と、
    車両の衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段と、
    この衝突可能性判定手段が衝突の可能性有りと判定したときにウェビングの緊急引き込み制御を行うシートベルト制御手段と、
    を備えたシートベルト装置において、
    前記シートベルト制御手段のウェビングの緊急引き込み制御開始後に前記衝突可能性判定手段が衝突可能性なしと判定したならば、シートベルト制御手段にウェビングの緊急引き込み制御の解除指令を発する緊急引き込み解除手段と、
    前記緊急ロック機構のロック作動の有無を判定するロック作動判定手段と、
    前記シートベルト制御手段による緊急引き込み制御の解除時に、前記ロック作動判定手段がロック作動有りと判定した場合には、ロック解除用のウェビング引き込み制御に移行して引き込み制御を終了するロック解除モードを選択し、前記ロック作動判定手段がロック作動なしと判定した場合には、ロック解除用のウェビング引き込み制御に移行せずに引き込み制御を終了する通常解除モードを選択する解除モード選択部と、
    を設けたことを特徴とするシートベルト装置。
  2. 前記ロック解除モードの選択時におけるロック解除用のウェビングの引き込みは、緊急引き込み制御時のウェビングの累積引き込み量を基に引き込み力を制御することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
  3. 前記ロック解除モードの選択時におけるロック解除用のウェビングの引き込みは、ウェビングの張力がゼロになる前のタイミングで行うことを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルト装置。

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