JP5504680B2 - 快削合金工具鋼 - Google Patents

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Description

この発明は快削合金工具鋼、特に焼入れによる熱処理変形及び機械加工による加工変形の抑制された快削合金工具鋼に関する。
本発明の対象には、冷間において鍛造、順送型プレスによって加工するのに用いられる冷間金型、機械構造部材が含まれる。
ここで冷間金型には、ブロックパンチ,ボタンダイ,パイロットパンチ,ストレートパンチ,絞りパンチ,絞りダイ,曲げパンチ・ダイ,パンチ型切り刃・ロール型切り刃,ネジや溝転造型,鍛造型,歯車用パンチ部材・ダイス,スエージングダイス等が含まれる。
また機械構造部材には、ベースプレート,ガイドプレート,スペーサー,ストリッパ,スクリュープラグ,リテーナー,ガイドブシュ,ノックブシュ,ストリッパガイド,ノックアウトピン,シャンク,ガイドポスト,固定キー,塑性加工工具,スクリュー部材,カム部品,シールプレート,ゲージ類等が含まれる。
また上記用途の金型や構造部材には、CVD処理,PVD処理,TD処理,窒化等の表面処理やショットピーニング等の表面改質を行った冷間金型や構造部材も含まれる。
従来、工具鋼として炭素工具鋼や、合金元素の添加量の少ない合金工具鋼、Crを多量に添加して成る冷間ダイス鋼等が使用されている。
ここで炭素工具鋼や合金工具鋼は、合金元素の添加量が少ないため、焼入性の特性が乏しい問題がある。
これらの工具鋼では、Mnを多く添加することで焼入性を高めるようにしているが、Mnは焼入性を最も向上させる効果的な元素であるものの、Mnを多量に添加すると焼入後に残留オーステナイトが多量に残存するようになるため、Mnを添加するとしても自ずと限界があり、一定以上のMnを添加することはできない。
そのため、主としてMnの添加によって焼入性を高めている従来の炭素工具鋼や合金工具鋼等の工具鋼は、そもそも焼入性が不十分である。
従って焼入れするに際して水冷や油冷等の急速冷却が必須であり、この場合冷却中に表面と内部で、また製品の肉厚の異なる部位で冷却速度の差に起因して温度差が大となり、焼入れ(熱処理)に伴う材料の変形(熱処理変形)が大きくなってしまう。
こうした問題から、これら炭素工具鋼や合金工具鋼は大型の金型等への適用ができず、対象製品が厚さ30mm以下の小物に限定されてしまう。
一方、冷間ダイス鋼は合金元素の添加量が多いため、焼入性については十分である。
一般的にこの冷間ダイス鋼では、焼入性の向上元素としてCrを多量に添加している。
Crは、同一添加量の下ではMnに比べて焼入性を向上させる効果は小さいものの、Crは多量に添加することができるため、結果としてMn添加のみの炭素工具鋼や合金工具鋼に比べて、冷間ダイス鋼の焼入性は遥かに優れている。
そのため焼入れの際の冷却速度は除冷で十分となるので、炭素工具鋼や合金工具鋼における上記のような熱処理による材料の変形を抑制することができる。
ところが冷間ダイス鋼の場合、耐摩耗性の向上のためにCrの多量添加によって炭化物を多く析出させているため、冷間ダイス鋼を切削,研削等の機械加工を行ったときに、母材よりも硬い炭化物が刃具の刃先や砥石を摩耗させてしまう。
この場合、炭化物が多ければ多いほど刃先や砥石の摩耗が助長され、結果として材料の加工に対する抵抗が大となって材料を加工し難くなる。
このことは、加工時に材料に付与される応力が大きくなることを意味し、そして加工終了時に材料に残留した大きな応力によって、材料が全体的に或いは局部的に変形してしまう。
即ち、Crを多く添加し、炭化物を多く析出させる冷間ダイス鋼の場合には、高い焼入性によって焼入れ時の熱処理変形は小さくなるものの、機械加工を行ったときの加工変形が大きくなってしまう問題がある。
尚、本発明に対する先行技術として下記特許文献1,特許文献2,特許文献3に開示されたものがある。
特許文献1には「フレームハード用冷間工具鋼」についての発明が示され、特許文献2には「熱処理定歪み冷間工具鋼及びこれを用いた冷間工具の製造方法」についての発明が、また特許文献3には「被削性に優れた冷間工具鋼」についての発明が示されているが、何れも本発明とは技術的思想を異にするものであり、従ってそれらの何れにおいても本発明の成分範囲に属する実施例は存在せず、これらは本発明とは別異のものである。
特開平11−131182号公報 特開2002−167644号公報 特開2001−234278号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、焼入れの際の熱処理を原因とする材料の変形と、機械加工を原因とする材料の変形の両者が抑制され、また冷間金型や機械構造部品として必要な硬さの得られる快削合金工具鋼を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、質量%でC :0.50〜0.90%,Si:0.50〜2.20%,Mn:≧0.8%,Mn/Cr:0.10〜0.23,Mn+0.08Cr:1.35〜2.05%,Ni:0.01〜0.30%,Mo+0.5W:0.01〜0.50%,(Mo+0.5W)/Mn:≦0.55,V :0.01〜0.15%,S :0.03〜0.15%、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有することを特徴とする。
(ここで各元素記号は対応する各元素の含有量(質量%)を表している。以下各請求項においても同様である。)
請求項2のものは、請求項1において、質量%でCa及びOを、Ca:0.0001〜0.0100%,O :≦0.0100%の量で更に含有していることを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、質量%で、Se,Te,Pb,Biの1種以上をSe+Te:0.01〜0.15%,Pb+2Bi:0.01〜0.15%の量で更に含有していることを特徴とする。

請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、質量%でNb,Ta,Ti,Zrの1種以上をNb+Ta+Ti+Zr:0.01〜0.15%の量で更に含有していることを特徴とする。
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、1000℃〜1050℃の温度で焼入れされて使用されることを特徴とする。
発明の作用・効果
以上の発明は、Mnの添加による作用と、Crの添加による作用との協働作用によって合金工具鋼の焼入性を高く確保するとともに、Mnの添加による焼入性の向上効果によりCrの添加量を従来の冷間ダイス鋼に対して低量とし、そのことによって炭化物形成を抑制して、炭化物による加工性の悪化を改良した点、さらに、通常ではMnの添加により焼入焼戻し状態の硬さが低下するが、Moの添加量を低量とすることで必要硬さを保持した点を特徴としたものである。
具体的には、Mnを0.8%以上添加することを前提として、Mn+0.08Crを1.35〜2.05%の範囲内で添加し、またMnの添加量とCrの添加量とのバランスを適正化すべくMn/Crを0.1〜0.23の範囲内とし、さらに、Mnの添加量と(Mo+0.5W)の添加量とのバランスを適正化すべく(Mo+0.5W)/Mnを0.55以下とした点を主たる特徴としたものである。
焼入れの際の熱処理を原因とする材料の変形は、従来の冷間ダイス鋼のように十分な焼入性を確保することで抑制することができる。この場合には合金添加量を多くした方が良い。
他方、機械加工を原因とする材料の変形は、炭化物を少なくすることで抑制することができる。即ち機械加工原因とした材料の変形に対しては合金添加量を少なくした方が良い。
これらは相反することであるが、この点は添加合金元素を炭化物を形成する元素と、炭化物形成に寄与しない元素とに分けて考えることで解決できる。
炭化物を形成する元素はC,Cr,Mo,W,Vが主たるものであり、従ってこれらを可能な限り低減するのが良い。
一方炭化物形成に寄与しない元素はSi,Mn,Niが主たるものであり、これらは逆に可能な限り増加させるのが良い。
そこで従来冷間ダイス鋼に多く添加されているCrをMnに置き換えることが重要となる。
またその他にMo,W,Vについては極力添加しないようにすることが重要である。
但しCについては冷間金型や機械構造部品としてHRC58以上が必要であるため、0.50%以上の添加が必須である。
本発明はこのような着想ないし知見に基づいてなされたものである。
図1は、本発明の合金工具鋼におけるCrの添加量とMnの添加量との関係を表している。図1中の領域Hが本発明におけるCrとMnの添加量の領域である。
かかる本発明によれば、合金工具鋼の焼入れの際の熱処理による変形を小さく抑制できるとともに、機械加工の際の応力の残留による変形も小さく抑制することができる。
加えて本発明では、高価な合金元素であるCrの添加量を少なくすることができることによって材料費を安価となすことができ、また機械加工が容易となることによって加工に要するコストも安価となすことができ、それらによって金型等を製作する際のコストを効果高く低廉化することができる。
本発明では、請求項2に従ってCa及びOを所定量で含有させることで、合金工具鋼の被削性をより一層高めることができる。
更に請求項3に従ってSe+Te,Pb+2Biを添加することで被削性を更に高めることができる。
また請求項4に従い、Nb,Ta,Ti,Zrの1種以上を添加することで、それらの炭化物や窒化物等による結晶粒のピン止め効果に基づき、Crの添加量抑制による炭化物減少を補償し、結晶粒の粗大化を防止することができる。
尚、焼入性を確保するためには焼入温度で固溶する元素量を多くすることが有用である。
従って焼入温度は1000℃以上の焼入温度(1050℃以下)としておくことが望ましい(請求項5)。
換言すればそのような高い温度で焼入れされて使用されることを前提とした成分系としておくことが望ましい。
上記温度での焼入れにはまた次のような意味もある。
従来、工具鋼として用いられているものはCrを所定量添加した、焼入温度1000℃〜1050℃で焼入れされるものが量的に大部分を占めており、従って焼入れのための熱処理炉もそのような温度での焼入れを前提としたもの、即ち1000〜1050℃での焼入用のものが一般的である。
従って焼入れの温度がこれよりも低いとそのための設備を設置しなければならず、これに伴って焼入処理のためのコストが高くなってしまう。
しかるに1000℃〜1050℃を適正な焼入温度とする材料であれば新たに熱処理炉を設置することなく、従来と同様にして安価に焼入処理を行うことができる。
次に本発明における各化学成分の限定理由を以下に詳述する。
C :0.50〜0.90%
Cは焼入れ時にマルテンサイト化し、硬さを向上させるため、必要な硬度に応じて添加する必要がある。HRC58以上を得るためには少なくとも0.50%以上添加することが必要である。一方多すぎると炭化物量が比例して増加するため、0.90%以下にする必要がある。上記の観点から好ましい範囲は0.65〜0.80%である。
Si:0.50〜2.20%
Siは固溶し、マルテンサイト硬さを向上させる効果がある。炭化物を形成せずに焼入性を向上させる元素であるため、0.50%以上添加する。但し多すぎるとフェライトを生成し、焼入れ硬さが低下するため、2.20%以下とする。
Mn:≧0.8%
Mnは焼入性を効果的に向上させる元素である。Cr、Mo、W、Vの代替として焼入性を確保するためには、0.8%以上の添加が必須である。
Mn/Cr:0.10〜0.23
炭化物量を減らし、焼入性を確保するためには、Mn比率を高めることが望ましい。下限未満では、炭化物が多すぎて、加工により発生する歪みを十分に低減できない。逆に上限を越えるとMnが過剰になりすぎて残留オーステナイトが多量に生成し、硬さを確保できない。また上限を越えた場合はCr量が少なくなりすぎるため、焼入性も不足する。
Mn+0.08Cr:1.35〜2.05%
多ければ多いほど焼入性は向上するが、多すぎれば残留オーステナイトが多量に生成し、硬さが確保できなくなる。一方少なければ焼入性が不足する。尚Crの0.08の係数は、Mnを基準としたCrの焼入性への寄与率を示す。
Ni:0.01〜0.30%
NiはMnと同様の効果を持つ。Mnで代替した焼入性を補うために、Niを0.01%以上添加する。但し多すぎると残留オーステナイト量が増加し、硬さが低下するため0.30%以下とする。
Mo+0.5W:0.01〜0.50%
MoとWは同様の効果をもつ。WはMoの効果の2分の1であるため係数を0.5とする。合金工具鋼の焼入性はMnやCrの添加によってほぼ十分であるため、本来添加しないことが望ましい。但し硬さの観点では添加されていることが必要となるため、0.01%の添加は必須である。但し多すぎると不要な炭化物量が増加するため0.50%以下とする。
(Mo+0.5W)/Mn:≦0.55
Mo+0.5Wの多量添加はまた、次のような問題も生ずる。
本発明ではMnを0.8%以上に多く添加する。このように多くMnを添加する下でMo+0.5Wが多過ぎると、Ms点やMf点が低下し過ぎるため、焼入焼戻し状態の硬さが低下し、HRC58以上が得られなくなる。よって、HRC58以上を得るために本発明では(Mo+0.5W)/Mnを0.55以下とする。
因みに図2は(Mo+0.5W)/Mnと、焼入焼戻し硬さとの関係を表している。
この図2に示す結果は、鋼成分をC:0.60〜0.75%,Si:0.96〜1.53%,Mn:0.81〜1.53%,Cr:6.65〜7.95%,Mn/Cr:0.12〜0.21,Mn+0.08Cr:1.36〜1.98%,Ni:0.15〜0.16%,Mo:0.001〜2.52%,(Mo+0.5W)/Mn:0.005〜3.11,V:0.02〜0.09%,S:0.05%,残部Feの成分、即ち(Mo+0.5W)/Mnを除いて請求項に規定する成分とし、そして(Mo+0.5W)/Mnの影響を調べるため、その値を種々変化させて影響を調べ表したものである。
ここで図2における(Mo+0.5W)/Mnと、焼入焼戻し硬さとの関係は具体的には次のようにして求めている。
上記組成の鋼を真空誘導炉で溶解して50kgのインゴットを製造し、そしてインゴットを1160℃で10時間ソーキングを行った後、900℃から1160℃の温度間で鍛造して45×45×1500mmの角棒とした。
角棒の状態で、900℃から20℃/hの冷却速度で徐冷を行う球状化焼鈍し処理を実施し、熱処理後の材料を20×20×20mm程度のサイコロ状に切断加工した。
これらの試験片を1030℃で30min以上加熱し、油冷却にて焼入れを行った。更に180℃で60min以上加熱し、焼戻しを行った。
熱処理終了後に研削を実施してスケールを除去した後、試験片の硬さを測定した。
この焼入焼戻し後の硬さを(Mo+0.5W)/Mnで整理して表したのが上記の図2である。
図2の結果において、主な成分が本発明の請求項の範囲内にあるにも関らず、(Mo+0.5W)/Mnの影響が顕著に表れている。
この図2の結果から、冷間金型等として必要なHRC58以上得るためには、(Mo+0.5W)/Mnを0.55以下とすることが必須であることが分る。
これは、本発明の請求項の組成範囲ではMoやWを添加し過ぎると、焼入時に未変態の残留オーステナイト組織が増加し、硬さが得られなくなるためである。
一方でMoやWを減らし過ぎると、一般的には焼入焼戻し硬さが低下したり、焼入性が低下したりするが、本発明では十分な焼入焼戻し硬さが得られるようにC,Mn,Cr等の成分が規定してある。
また焼入性についても、特にMn+0.08Crで規定するように、必要な添加量が定めてある。
V :0.01〜0.15%
VはMo、Wと同様の効果を有する元素で、本発明では0.01〜0.15%の範囲内で添加する。
S :0.03〜0.15%
SはMnと結合してMnS化合物を形成する。これにより切削加工性や研削加工性を向上させる。但し0.03%以下では向上効果が得られない。他方0.15%を超えて添加しても効果が飽和するため0.15%を上限とする。
Ca:0.0001〜0.0100%
S添加時に併せてCaを添加すると、加工性向上の効果が大きくなる。これは、Ca酸化物が工具の保護をする効果があるためである。Ca酸化物を十分に形成させるためには、0.0001%以上の添加が必要である。但し0.0100%を超えて添加しても効果が飽和するためこれを上限とする。
O :≦0.0100%
鋼中に不可避的に含まれる元素である。Ca酸化物を形成させるためには0.0100%以下のO量が必要である。
Se+Te:0.01〜0.15%,Pb+2Bi:0.01〜0.15%
いずれの元素も、切削加工性や研削加工性を向上させる元素である。原料として使用するスクラップによっては、これらの元素が多く添加されている場合があるため、S添加の代替として利用する事が可能である。これらの添加により加工性向上効果を得るためには各下限以上が必要である。但し上限を超えて添加しても効果は飽和する。
Nb+Ta+Ti+Zr:0.01〜0.15%
いずれの元素も炭化物や窒化物を形成し、焼入れ保持温度での結晶粒粗大化を抑制する効果がある。本発明ではCr、Mo、W、Vをできる限り低減するため、炭化物量が少なくなる。そのため結晶粒粗大化が生じ易い。結晶粒の粗大化を抑制し、靭性低下を抑制することを目的に、上記各元素を合計量で0.01%以上添加することができる。但し上限の0.15%を超えて添加しても効果は飽和する。
焼入温度:1000〜1050℃
炭素工具鋼や特殊工具鋼(SKやSKSに相当)は、1000℃未満の焼入温度となっており、固溶元素量は少なく、焼入性に乏しい。冷間ダイス鋼(SKDに相当)は、1000℃以上の焼入温度であり、固溶元素量が多くなる。焼入性確保のためには1000℃以上の焼入温度が望ましい。但し1050℃を超えて加熱すると、結晶粒径の粗大化による低靭性が発生するためこれ以下の温度が望ましい。
本発明の合金工具鋼におけるCr量とMn量との関係を表した図である。 (Mo+0.5W)/Mnの焼入焼戻し硬さに及ぼす影響を表した図である。
表1に示す成分を120kg真空誘導炉で溶解し、φ250×450mmのインゴットケースを用いて鋳造した。インゴットは、1150〜1200℃で加熱保持した後、65mm角になるように鍛造した。鍛造後、球状化焼鈍しを実施し、HRC25以下の低硬度とした。
この鍛造材を各試験に必要な所定サイズに切断した。切断後、各試験片に加工し、表2中の焼入れ焼戻し温度で熱処理を実施した。この熱処理後の硬さも表2中に示した(括弧があるものは、括弧内の焼入温度の場合の硬さを表記した)。また焼入性の評価、及び、ドリル被削性については、球状化焼鈍し状態のまま試験を行った。
尚、表2中の各特性の評価試験は以下のようにして行った。
Figure 0005504680
(A)焼入性
φ3×10mmの試験片を作成し、表2中の焼入温度で5min保持した後、均一な冷却速度で100℃以下まで冷却した。そして冷却速度を変化させた場合の各冷却速度に対する試験片硬さがHRC58以上得られる限界の最低冷却速度を焼入性として記載した。
限界の冷却速度が遅いものほど、焼入性が高いと評価することができる。
本用途で必要な焼入性は、15℃/min以下である。
(B)熱処理後の反り
20×50×100mmの試験片を作成し、表2中の焼入温度で30min保持した後、焼入性に示した冷却速度で焼入れを行った。またその後、焼戻しを実施した。
試験片の100mm長さに対して、熱処理後にどのくらい反っているかを、3次元寸法測定装置で測定した。長さ100mmのうち、最大高さと最低高さとの差を求め、100mmあたりの、この差分の大きさを示した。
一般的な精度として、0.1mm以下が必要である。なお、熱処理前の状態でこの差分は0.020mm(0.020%)以下とする。
(C)ドリル被削性
50×50×200mmの試験片を作成し、ホモ処理をおこなったSKH51ハイスドリル(φ6mm)で穴あけ加工を行った。
加工は、乾式、0.15mm/rev、穴深さ15mmと一定条件で切削速度を変化させ、ドリルが溶損・折損するまで繰返し穴加工を行った。切削速度を徐々に小さくしていき、ドリル寿命として、70穴以上が得られる切削速度を評価した。この切削速度が大きいほど、ドリル被削性に優れる。
(D)研削性
20×50×200mmの試験片を作成し、平面研削盤で50×200mmの面を0.5mmまで面下げ加工を行った。比較例6の作業時間を100としたとき、0.5mm面下げ加工に必要な時間を評価した。所要時間が半分のとき、研削性は200とした。数値が大きいほど研削性は良好となる。
(E)加工後の反り
上記の研削性評価を行った後で、3次元寸法測定器で、長さ100mmのうち、最大高さと最低高さとの差を測定した。一般的な精度として、0.1mm以下が必要である。なお研削加工前の状態でこの差分は0.020mm(0.020%)以下とする。
(F)シャルピー
JIS Z 2242記載の方法で試験を実施した。試験片は、ノッチ部10R、深さ2mmとした10Rノッチ試験片とした。室温で試験し、衝撃値で評価した。
(G)疲労
JIS Z 2274記載の方法で試験を実施した。試験片は、1号試験片とした(平行部φ8mm)試験は室温で実施し、繰返し数10の7乗回で破断しない強度を疲労限として評価した。
これらの結果が表2に示してある。
Figure 0005504680
表2の結果において、比較鋼1はS添加がされていないため、ドリル被削性を満足していない。
比較鋼2は、C、Si添加範囲が大幅に異なるため、更にMo,W,Vが多いために炭化物が多く形成され、研削性が悪く、加工後の反りも大きくなっている。また、シャルピーや疲労の特性も炭化物が原因で低下している。
比較鋼3、4、5はMn/Crが小さすぎ、かつC添加範囲が外れているため、炭化物が多く形成され、比較鋼2と同様に特性が低下している。
比較鋼6、7、8はMn/Crが大きすぎ、Mn+0.08Crが小さすぎるため、焼入性が不十分となる。このため、焼入れ後の冷却に急冷が必要となり、熱処理後の反りが大きくなってしまう。またこれらの比較鋼は、1000℃未満の焼入温度でのみ必要な硬さHRC58以上が得られる。
比較鋼9、10、11は、Mn/Crが大きすぎるため、焼入性が不足する。このため、焼入れ後の冷却に急冷が必要となり、熱処理後の反りが大きくなる。
また焼入温度が1000℃未満であれば必要な硬さHRC58以上が得られるが、焼入温度が1000℃以上、1050℃以下では必要硬さが得られない。
以上の比較鋼に対して、本発明鋼は何れの特性も良好な結果が得られている。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (5)

  1. 質量%で
    C :0.50〜0.90%
    Si:0.50〜2.20%
    Mn:≧0.8%
    Mn/Cr:0.10〜0.23
    Mn+0.08Cr:1.35〜2.05%
    Ni:0.01〜0.30%
    Mo+0.5W:0.01〜0.50%
    (Mo+0.5W)/Mn:≦0.55
    V :0.01〜0.15%
    S :0.03〜0.15%
    残部Fe及び不可避的不純物の組成を有することを特徴とする快削合金工具鋼。
  2. 質量%で、Ca及びOを
    Ca:0.0001〜0.0100%
    O :≦0.0100%
    の量で更に含有していることを特徴とする請求項1に記載の快削合金工具鋼。
  3. 質量%で、Se,Te,Pb,Biの1種以上を
    Se+Te:0.01〜0.15%
    Pb+2Bi:0.01〜0.15%
    の量で更に含有していることを特徴とする請求項1,2の何れかに記載の快削合金工具鋼。
  4. 質量%で、Nb,Ta,Ti,Zrの1種以上を
    Nb+Ta+Ti+Zr:0.01〜0.15%
    の量で更に含有していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の快削合金工具鋼。
  5. 1000℃〜1050℃の温度で焼入れされて使用されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の快削合金工具鋼。
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