JP2001064754A - 溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼ならびにそれを用いた金型 - Google Patents

溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼ならびにそれを用いた金型

Info

Publication number
JP2001064754A
JP2001064754A JP24271899A JP24271899A JP2001064754A JP 2001064754 A JP2001064754 A JP 2001064754A JP 24271899 A JP24271899 A JP 24271899A JP 24271899 A JP24271899 A JP 24271899A JP 2001064754 A JP2001064754 A JP 2001064754A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
machinability
tool steel
steel
hardness
weldability
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP24271899A
Other languages
English (en)
Inventor
Yukio Abe
行雄 阿部
Kunichika Kubota
邦親 久保田
Isao Tamura
庸 田村
Yoshihiro Kada
善裕 加田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP24271899A priority Critical patent/JP2001064754A/ja
Publication of JP2001064754A publication Critical patent/JP2001064754A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 靭性や耐摩耗性といった機械的特性を低下さ
せずに、溶接性や被削性、そして経年変化も少ない工具
鋼ならびに金型を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.55〜0.75%、
Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、C
r:6.8〜8.0%、MoまたはWの1種または2種
を(Mo+1/2W):1.0%未満、V:1.0%以
下、S:0.2%以下を含有し、残部がFe及び不可避
的不純物からなる工具鋼であり、望ましくは、S:0.
01〜0.2%である。さらには、Ca:100ppm
以下またはNi:1.0%以下を含有する工具鋼であ
る。そして、500℃以上の焼戻しによりその最高硬さ
が57HRC以上の工具鋼であって、これら工具鋼を5
5HRC以上の硬さに調質し、切削加工を行うことで作
製した金型である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車、家庭電化製
品、農機具等に使用される鋼板の打抜き、曲げ、絞り、
あるいはトリミング用の金型等に使用される工具鋼なら
びに金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車や家庭電化製品等の部品製造に
は、打抜き等の加工が用いられる。その加工に使用され
る金型、特に冷間加工用金型には、その素材として耐摩
耗性付与のために炭化物を多量に含み、さらに焼入れ性
に優れかつ靭性を確保するためにCr含有量が多い材料
が求められており、例えばJISG4404規定の合金
工具鋼鋼材であるSKD11等の高C−高Cr系鋼が使
用されている。また耐摩耗性を特に必要としない場合は
SKS3といった低合金鋼も、油焼入れ後300℃以下
での焼戻しで調質して使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年自動車メーカー等
では、価格競争に打ち勝つためにこれまであらゆる分野
でコスト低減を実施し、上記金型関連においても金型製
作工数の削減が必要となってきた。一方、全体的な社会
の流れとして多品種少量生産への移行があり、それに伴
って金型をいかに早く作製できるかが重要視され、被削
性等型材の加工性が良好なことも金型製作工数の削減の
上で求められている。この場合、SKD11では耐摩耗
性が良好な反面、鋼材からの加工による形状出しでは切
削加工時間を短縮するという要求に満足できなくなって
きた。
【0004】その点、低合金鋼のSKS3はSKD11
に比べ被削性こそ良好であるが、油焼入れを必要とし近
年重要視されてきている環境面で好ましくない。加えて
工具鋼が工業上必要とされる57HRC以上の硬さを得
るには約300℃以下の低温での焼戻しが必要となり、
耐摩耗性付与のため行われる表面処理ができず、形状出
しに用いられる放電加工にとって不利といった問題点が
ある。
【0005】それらに加え、特に鋼板の打抜き、曲げ、
絞りあるいはトリミング等に使用される金型では、三次
元的に変化している製品の形状を成形する金型にて割れ
が頻発するようになり、溶接補修等の要求も高まってき
た。そして、近年において高精度が要求される金型に
は、金型への加工後の常温放置での寸法変化、つまり経
年変形が少ないことをも要求されている。
【0006】以上、従来より金型等に適用されてきた工
具鋼には、最近において求められる機械的特性について
各々一長一短がある。そこで本発明は靭性や耐摩耗性と
いった機械的性質を低下させずに、溶接性や被削性に優
れ、さらに経年変形も少ない工具鋼および金型を提供す
るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、靭性や耐摩
耗性といった基本的な特性の維持を鑑みた上で溶接性や
被削性の改善、さらには経年変形の抑制に要求される基
本条件を見直した。
【0008】まず、このような金型材は現状では耐摩耗
性重視のため硬質脆性な炭化物を多量に含有する成分設
計を行っているが、近年の耐摩耗性付与手段として表面
処理の技術が発達しており、また社会的な流れである多
品種少量生産、つまり一型の必要生産個数の減少により
金型自体の耐摩耗性確保は現状ほど重視する必要がなく
なってきた。
【0009】そして、耐割れ性や溶接性の点から見る
と、このような炭化物はクラック進展を促進させる因子
であるので適切な量まで低くする必要がある。また被削
性については工具寿命の向上、つまり工具の摩耗を抑制
するためには硬質粒子の炭化物を適切な量に抑える必要
がある。さらに、適切な量の硫化物を生成させるべく快
削元素であるSの添加も望ましい。そして、経年変形を
少なくするにはその要因となる残留オーステナイトの量
を減らすか、安定化させることが必要である。
【0010】これら考慮の結果として、本発明者らは工
具鋼の基本成分であるC含有量を減少しても良好な機械
的性質、特に硬さ及び靭性を得るに充分な成分及び組成
を見いだし、溶接性や被削性が優れ、さらには熱処理・
表面処理特性にも優れ、経年変形の少ない組成バランス
を見いだした。
【0011】すなわち、本発明は、重量%で、C:0.
55〜0.75%、Si:0.1〜0.6%、Mn:
0.1〜1.2%、Cr:6.8〜8.0%、Moまた
はWの1種または2種を(Mo+1/2W):1.0%
未満、V:1.0%以下、S:0.2%以下を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなる工具鋼であり、
望ましくは、S:0.01〜0.2%である。さらに
は、Ca:100ppm以下またはNi:1.0%以下
を含有する工具鋼である。
【0012】そして、500℃以上の焼戻しによりその
最高硬さが57HRC以上の工具鋼であって、これら本
発明の工具鋼を55HRC以上の硬さに調質し、切削加
工を行うことで作製した金型である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の特徴は、工具鋼の基本成
分であるC含有量を減少しても良好な機械的性質、特に
硬さ及び靭性を得るに十分な成分組成として、その適正
な炭化物、硫化物量の達成をも念頭に置いた検討を行う
ことで、溶接性や被削性が優れ、さらには熱処理・表面
処理特性にも優れ、経年変形の少ない金型をも達成でき
る工具鋼を見いだしたところにある。
【0014】本発明において、溶接性が優れるあるいは
溶接可能というのは、規定の予熱、後熱処理を行うJI
SZ3158のY形状試験にて溶接割れが認められない
ことを指す。予熱は一般的に溶接時の高温割れ防止のた
めに行い、後熱は低温割れの防止を目的とする。一般に
金型はその製造途中または使用中の状況により形状変更
や補修のために溶接が実施されるが、合金鋼は溶接時の
割れを防止するために高温に予熱した状態で実施され
る。特にCr等を含む場合は450〜550℃以上に予
熱後溶接するのが一般的であるが、本発明ではこの予熱
温度を下げてもJISZ3158のY形状試験にて溶接
割れが認められない。これによって溶接での作業性が向
上する。
【0015】また高C、Cr鋼では溶接後の後熱も重要
になるが、溶接熱影響部の硬さを下げることで後熱にお
ける加熱温度、時間を低くすることができる。特に熱影
響部のコントロールにはC量を0.75%以下にするこ
ととCr量を6.8%以上にすることが望ましい。
【0016】次に被削性について述べる。被削性に関与
する材料の組織的要因のひとつに炭化物がある。硬質粒
子である炭化物が存在すると、そのアブレッシブ摩耗に
より工具の摩耗が促進され、工具寿命の低下、つまり被
削性が悪くなる。この点から見れば被削性の向上には炭
化物がないことが望ましく、C及びCr添加量を下げる
ことでこれも可能でこそあるが、完全に炭化物をなくす
領域まで下げると工具鋼が工業上必要とする57HRC
以上の硬さを得難くなり、耐摩耗性が劣化する。
【0017】被削性低下に影響を及ぼすのは、主に凝固
過程にて晶出する一次炭化物などの粗大な炭化物であ
る。これら踏まえて、耐摩耗性を考え57HRC以上の
焼入れ焼戻し硬さが得られ、そして一次炭化物などの粗
大な炭化物を少なくするためのC−Cr量バランスを検
討した結果、Cが0.55%以上、Crが6.8%以上
であることが望ましいことを見いだした。
【0018】加えて、被削性は、MnS等の硫化物を生
成させるべく快削元素であるSを添加することでより向
上する。これは硫化物が応力集中源として作用し、ミク
ロクラックが発生して、それが硫化物間を伝播し切削抵
抗が低下することによる。また、工具面と切りくず部の
接触域で硫化物は、高い圧縮応力下の高温での流動変形
によって粘性体挙動をして薄膜上に延伸され、鋼母相の
内部でスリップするように変形して見かけの流動変形抵
抗を下げ、被削性が向上する。
【0019】ただし、硫化物が多すぎると靭性や溶接性
の低下を招くため、本発明においてはS添加量を0.2
%以下、好ましくは0.1%以下とする。なお、上記効
果を得るにSは0.01%以上の添加が好ましく、さら
に好ましくは0.04%以上である。
【0020】上記、最適な炭化物、硫化物形態に調整す
べく成分バランスを考慮した本発明の工具鋼は、焼きな
まし状態に加えて、焼入れ焼戻し後の被削性も向上し、
具体的には57HRC以上という焼入れ焼戻し状態にお
いても優れた被削性が達成できる。そのため、本発明の
工具鋼は、いわゆるプリハードン鋼として、所定の硬さ
に調質してから切削加工を行うことで作製する金型に最
適である。
【0021】次に表面処理性について述べる。表面処理
温度でのオーステナイト組織中に固溶するC量の調整
は、十分な膜厚を有するMX型化合物(TiC、VC
等)の生成に重要である。固溶Cは、表面処理において
MX型化合物を生成するためにその鋼材から供給すべく
必要となり、つまり、その最適量は表面処理温度に保持
する前のマルテンサイト組織中に固溶するC量による。
その固溶C量を最適に調整すべく、本発明の工具鋼はそ
のC含有量を0.55%以上としている。
【0022】次に経年変形について述べる。経年変形は
鋼を常温で放置したときに主として残留オーステナイト
の分解により生じるものであり、残留オーステナイトの
量と安定性に影響される。これらの制御による経年変形
の低減は熱処理方法によるものがある。いくつかを挙げ
ると、高温での焼戻しや焼入れでのサブゼロ処理による
残留オーステナイト量の低減や、低温での適切な温度で
の焼戻しによる残留オーステナイトの安定化によるなど
の知見がある。
【0023】ただし、高温での焼戻しによる残留オース
テナイトの低減は反面で過度の焼戻しによる硬度の低下
を招く。また、サブゼロ処理は通常の冷間金型の加工に
は用いられないことが多いので実施により効率、コスト
面では不利になる。そして、低温での焼戻しでは近年の
型加工の主流のひとつであるワイヤー放電加工に対して
不利である。これは低温焼戻しでは型材に熱処理歪が残
存し、ワイヤー放電加工でそれが開放されることで寸法
変化をきたすためである。そこで本発明者らは過度にな
らない高温焼戻し及び通常の熱処理が可能であるように
成分面から経年変形の低減の検討を行い、添加元素のう
ちSi、Mo、Wについて特に着目した。
【0024】つまり、Siの添加量が高い場合は、マル
テンサイトの焼戻し過程におけるセメンタイトの析出が
遅れ、残留オーステナイトが分解しにくくなる。そし
て、MoやWの添加量が高い場合は焼戻し温度上昇によ
る残留オーステナイトの分解が進みにくく、ある温度か
ら分解が急速に進み出す。これら残留オーステナイト量
が多かったり、分解途上域で焼戻しを行うと残留オース
テナイトは不安定な状態であり経年変形が起こりやすく
なる。これを防ぐためにはSi及びMoの低減が必要で
あり、Siは0.6%以下、Mo、Wは(Mo+1/2
W)にて1.0%未満の添加量に抑えることが経年変化
の抑制に重要であることを見いだしたのである。好まし
くはSi:0.4%以下、(Mo+1/2W):0.9
5%以下である。
【0025】これらのことを踏まえ、本発明での成分の
限定理由について述べる。Cは焼入れ性を向上し、熱処
理後の硬さを維持するために必要である。またCは耐摩
耗性付与のため行われる表面処理において十分な膜厚を
有するMX型化合物(TiC、VC等)の生成に重要で
ある。耐摩耗性を達成すべく熱処理後の最高硬さを57
HRC以上に確保し、CVD処理や塩浴法といった表面
処理において十分なMX型炭化物の膜厚を確保するため
には0.55%以上の含有量が必要である。
【0026】また、CはCr、Mo、W、Vと結合して
炭化物を形成し、耐摩耗性や焼戻し軟化抵抗を向上させ
る。添加量が過多になると靭性を低下させ、溶接性を劣
化させる。また、炭化物量増加により被削性が低下する
ので、C量は0.55〜0.75%とした。
【0027】Siは脱酸剤及び鋳造性改善の目的で含有
するが、これを低減化すると靭性が向上する。しかし被
削性も劣化するため0.1%以上が必要である。過多の
含有は溶接性を阻害する原因となり、またマトリックス
の成分偏析も激しくなる。そして、経年変形の抑制の上
でSi量の調整は特に重要であり、過多の含有は経年変
形を大きくすることから、Siの含有量は0.1〜0.
6%とした。好ましくは0.4%以下である。
【0028】Mnは焼入れ性向上のために含有するが、
0.1%未満では焼入れ硬さを安定して得るには不十分
である。一方、多すぎると溶接性を劣化させる原因とな
り、さらにSiと同様、マトリックスの成分偏析も激し
くなるので0.1〜1.2%とした。
【0029】CrはCと結合して炭化物を生成し耐摩耗
性を向上するとともに、焼入れ性を増す効果、そしてC
VD処理や塩浴法などによる複雑形状への表面処理後の
冷却中におこる一種の焼き割れ現象を防止する効果があ
る。しかし、多すぎるとCr炭化物の増加による靭性及
び被削性低下の原因となる。さらに固液共存温度幅が大
きくなり鋳造欠陥発生の危険度が増し、実質的に製造性
に困難が生じる原因となる。よって、Crの添加量は
6.8〜8.0%とした。
【0030】Mo及びWは焼入れ性を向上する。またC
と結合して硬い炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させ
る。MoとWが各特性に与える効果は同様のものが多
く、その効果の程度は重量比でMoがWの2倍相当であ
ることから、その効果は(Mo+1/2W)量で評価す
ることが可能である。本発明ではMo、Wの1種または
2種を含有させることができ、つまりMoの全含有量を
2倍のW含有量で置き換え使用してもよく、Moの一部
をそれに相当するW量に置き換え使用してもよい。
【0031】過多の添加量ではMo、W系炭化物の晶出
量が多くなり被削性及び靭性を劣化させる。そして、経
年変形の抑制の上でMo、W量の調整は特に重要であ
り、過多の含有は経年変形の増加を招くことから、(M
o+1/2W)量にて1.0%未満、好ましくは0.9
5%以下とした。なお、硬さを得るに合わせ、その硬さ
のコントロールの上から0.6%以上の含有が望まし
く、基本的にW置換はフレームハード性を劣化させるの
でMoを加えるのが好ましい。
【0032】Vは工具鋼に必要な軟化抵抗を増大させる
元素であるが、過多の含有は凝固時に巨大なV系炭化物
を晶出し、溶接性と被削性を低下させる原因となるので
1.0%以下とした。好ましくは0.5%未満とする。
【0033】Sは被削性を高める硫化物生成に必要な元
素であり、本発明の効果を得るに重要な元素である。添
加しすぎると靭性や溶接性の低下を招くので0.2%以
下とし、好ましくは0.1%以下とする。なお、上記効
果を得るに0.01%以上の添加が好ましく、さらに好
ましくは0.04%以上である。
【0034】Caは機械的性質の低下を伴わない快削元
素である。その快削機構は鋼中に微量に分散している酸
化物を低融点化させ、これが切削熱で溶け出し、刃先に
保護膜を形成するためである。また硫化物の鍛伸方向へ
の延伸を抑え、鍛伸垂直方向の靭性低下を抑制する効果
がある。しかし、蒸気圧が高いため溶鋼中から抜けやす
く、添加技術上100ppm程度までが現状の技術的レ
ベルである。
【0035】Niは焼入れ性と衝撃遷移温度を上げるこ
とによる靭性向上が認められる元素であるが、本合金系
では特に高C量域での靭性維持による効果で溶接性劣化
を防止でき、実用的に操業可能な表面処理領域を広げる
方向に作用する。しかし、被削性を劣化させるため1.
0%以下とする。上記効果を得るに好ましくは0.00
5%以上、さらに好ましくは0.01%以上とする。
【0036】また、本発明の工具鋼はその他求められる
効果に則して、上記の成分組成にPb、Se、Te、B
i、In、Be、Ce、Zr、Tiのうちの1種または
2種以上を0.2%以下なら含有しても問題はない。そ
の他、希土類は本発明の工具鋼における被削性を向上す
る目的で0.2%以下の含有が可能である。また不可避
的不純物の総量は0.5%以下が好ましい。また、耐摩
耗性付与がさらに必要な場合、Alを0.5%以下添加
して窒化硬さを上げることも可能である。
【0037】以上に述べた本発明の工具鋼であれば、優
れた溶接性の付与に加えて従来のSKD11と同等の熱
処理条件である1000~1050℃からの焼き入れ、
500℃以上の焼戻しによっても57HRC以上の硬さ
が確保できる。そしてその57HRC以上の硬さにて優
れた被削性の達成に加え、塩浴法やCVD処理といった
表面処理性にも優れるものである。
【0038】また、本発明の工具鋼を金型等に使用した
場合は、その求められる機能に応じて必要な部位にのみ
フレームハード等を実施してもよく、製作工数あるいは
必要特性を考慮して硬さを得るための熱処理方法を選択
すればよい。例えば本発明の工具鋼を55HRC以上の
硬さに調質し、切削加工を行うことで作製した金型であ
り、必要に応じて上記表面処理やフレームハード等を施
すことが可能である。
【0039】
【実施例】次に本発明の実施例について詳細に説明する
が、本発明はこれらの実施例により何等限定されるもの
ではない。 (実施例1)高周波炉により表1に示す化学組成の合金
を溶解し、所定の鋼塊を製作した。表1で比較鋼1はJ
IS SKD11相当材である。これら鋼塊を鍛造比5
にて鍛造して鋼材に仕上げ、焼なましを行なった。
【0040】
【表1】
【0041】次に上記焼きなまし材を真空炉により10
30℃に加熱保持後、ガス加圧冷却焼入れを行い、目標
硬さが57HRC以上になるよう焼戻し500〜550
℃の熱処理を行った。熱処理後、JISZ3158のY
形試験片を製作し、表2に示す条件で溶接し、溶接性の
評価を行った。表3に焼入れ焼戻し硬さと溶接性試験結
果を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】本発明鋼はいずれも500℃以上の焼戻し
で57HRCの硬さが得られており、SKD11とほぼ
同等の熱処理特性であるのに対し、比較鋼5は57HR
C以上の硬さに達しなかった。溶接性は本発明鋼が予熱
温度450℃では割れなかったのに対し、SKD11で
ある比較鋼1はC、Crが、比較鋼2は(Mo+1/2
W)が、比較鋼3はSが、比較鋼4はVが、比較鋼8は
Crが高いため溶接割れを生じた。反対に比較鋼7はC
rが低いために溶接割れを生じた。
【0045】(実施例2)次に被削性の評価を行った。
表1の成分の焼きなまし状態(硬さ約15HRC)の素
材より50mm×100mm×200mmの試験片を製
作し、表4の条件にてスクエアエンドミルでの評価を行
った。評価は工具の刃先部の摩耗が0.3mmに達する
までの切削長を工具寿命として評価した。結果を表5に
示す。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】表5より、本発明鋼が優れた被削性を示す
ことがわかる。SKD11である比較鋼1はC、Cr
が、比較鋼4はVが、そして比較鋼8はCrが高いため
被削性が劣る。
【0049】さらに表1の成分の焼きなまし状態の素材
を真空炉により1030℃に加熱保持後、ガス加圧冷却
焼入れを行い、500℃以上の焼戻しによって約58H
RCに調質して、表6の条件にて被削性評価を行った。
なお、被削性は工具の刃先部の摩耗が0.1mmに達す
るまでの切削長を工具寿命として評価した。結果を表7
に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】表7より、本発明鋼は焼入れ焼戻し材でも
良好な被削性であるのに対し、比較鋼はC、Crまたは
Mo当量(Mo+1/2W)が高く、S量が低いことも
あって、被削性が劣る。
【0053】(実施例3)次に経年変形の評価を行っ
た。表1の成分の焼きなまし状態の素材より図1に示す
形状の試料を製作した。そして、真空炉により1030
℃に加熱保持後、ガス加圧冷却焼入れを行い、520℃
×1時間の焼戻しを2回行ったものにつき、30日後の
クリアランス部寸法変形率を調べた。結果を表8に示
す。
【0054】
【表8】
【0055】本発明鋼並びにSKD11である比較鋼1
は寸法変形率が小さく、経年変形が少ないが、Si量の
高い比較鋼6及びMo量の高い比較鋼2、3は経年変形
が大きくなっていることがわかる。
【0056】
【発明の効果】以上述べたように、本発明鋼はSKD1
1と比較して工具鋼の基本成分であるC含有量を減少し
ても良好な機械的性質、特に硬さ及び靭性を確保するこ
とができ、溶接性や被削性に優れる工具鋼である。そし
て、経年変形も小さいことから高精度の金型を提供でき
ることに加えて、金型の製作効率向上及びそれによるコ
スト低減が期待できる。本発明による工業的価値は大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】経年変化を評価するための試料の一例を示す図
である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年11月9日(1999.11.
9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正内容】
【0037】以上に述べた本発明の工具鋼であれば、優
れた溶接性の付与に加えて従来のSKD11と同等の熱
処理条件である1000から1050℃の焼入れ、50
0℃以上の焼戻しによっても57HRC以上の硬さが確
保できる。そしてその57HRC以上の硬さにて優れた
被削性の達成に加え、塩浴法やCVD処理といった表面
処理性にも優れるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加田 善裕 島根県安来市安来町2107番地2 日立金属 株式会社安来工場内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.55〜0.75%、
    Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、C
    r:6.8〜8.0%、MoまたはWの1種または2種
    を(Mo+1/2W):1.0%未満、V:1.0%以
    下、S:0.2%以下を含有し、残部がFe及び不可避
    的不純物からなることを特徴とする溶接性及び被削性に
    優れ経年変化を抑制した工具鋼。
  2. 【請求項2】 重量%で、S:0.01〜0.2%であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の溶接性及び被削性
    に優れ経年変化を抑制した工具鋼。
  3. 【請求項3】 重量比で、Ca:100ppm以下を含
    有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接
    性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼。
  4. 【請求項4】 重量%で、Ni:1.0%以下を含有す
    ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載
    の溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼。
  5. 【請求項5】 500℃以上の焼戻しによりその最高硬
    さが57HRC以上であることを特徴とする請求項1な
    いし4のいずれかに記載の溶接性及び被削性に優れ経年
    変化を抑制した工具鋼。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかの工具鋼を
    55HRC以上の硬さに調質し、切削加工を行うことで
    作製したことを特徴とする金型。
JP24271899A 1999-08-30 1999-08-30 溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼ならびにそれを用いた金型 Pending JP2001064754A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24271899A JP2001064754A (ja) 1999-08-30 1999-08-30 溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼ならびにそれを用いた金型

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24271899A JP2001064754A (ja) 1999-08-30 1999-08-30 溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼ならびにそれを用いた金型

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001064754A true JP2001064754A (ja) 2001-03-13

Family

ID=17093219

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP24271899A Pending JP2001064754A (ja) 1999-08-30 1999-08-30 溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼ならびにそれを用いた金型

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001064754A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010047831A (ja) * 2008-07-23 2010-03-04 Daido Steel Co Ltd 快削合金工具鋼
JP2015129322A (ja) * 2014-01-06 2015-07-16 山陽特殊製鋼株式会社 冷間プレス金型用鋼
CN106048148A (zh) * 2016-07-16 2016-10-26 柳州科尔特锻造机械有限公司 一种含铌高强度合金钢处理工艺
EP4234748A1 (en) * 2022-02-24 2023-08-30 Daido Steel Co., Ltd. Steel for a mold and mold

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010047831A (ja) * 2008-07-23 2010-03-04 Daido Steel Co Ltd 快削合金工具鋼
KR101608087B1 (ko) 2008-07-23 2016-03-31 다이도 토쿠슈코 카부시키가이샤 쾌삭 합금공구강
JP2015129322A (ja) * 2014-01-06 2015-07-16 山陽特殊製鋼株式会社 冷間プレス金型用鋼
CN106048148A (zh) * 2016-07-16 2016-10-26 柳州科尔特锻造机械有限公司 一种含铌高强度合金钢处理工艺
EP4234748A1 (en) * 2022-02-24 2023-08-30 Daido Steel Co., Ltd. Steel for a mold and mold
US11952640B2 (en) 2022-02-24 2024-04-09 Daido Steel Co., Ltd. Steel for a mold and mold

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2003129190A (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法
JP4860774B1 (ja) 冷間工具鋼
JP5029942B2 (ja) 靭性に優れた熱間工具鋼
JP2002327246A (ja) 耐溶損性・高温強度に優れた熱間工具鋼および該熱間工具鋼からなる高温用部材
JP2001294974A (ja) 被削性に優れ熱処理変寸が小さい工具鋼およびその製造方法
JPH05171262A (ja) 肌焼製品用線材又は棒鋼の製造方法
JP2001064754A (ja) 溶接性及び被削性に優れ経年変化を抑制した工具鋼ならびにそれを用いた金型
JPS58107416A (ja) 機械構造用鋼線棒鋼の直接軟化処理方法
JP3581028B2 (ja) 熱間工具鋼及びその熱間工具鋼からなる高温用部材
JP5345415B2 (ja) 被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼およびプレス金型
JP4099742B2 (ja) 溶接性および被削性に優れた工具鋼およびそれを用いた金型
JP7229827B2 (ja) 高炭素鋼板の製造方法
JP2005330511A (ja) 熱処理歪の小さい高炭素鋼部品の製造法
JP2001049394A (ja) 溶接性及び被削性に優れた工具鋼ならびにそれを用いた金型
JP2003321711A (ja) 結晶粒度特性に優れた浸炭用鋼を素材としたギアの製造方法
JP2001020041A (ja) 溶接性および被削性に優れた工具鋼ならびに工具、金型
CN114000059A (zh) 热作工具钢及热作工具
JPH10176242A (ja) 耐焼割れ性に優れた軸受鋼
JP3830030B2 (ja) 被削性に優れた冷間加工用高硬度プリハードン鋼およびそれを用いてなる冷間加工用金型ならびに鋼の加工方法
JP3365624B2 (ja) 被削性および熱処理性に優れた工具鋼およびそれを用いた金型
JP4088886B2 (ja) 耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼と、それを用いた金型
JP2602903B2 (ja) 温間および熱間加工用工具鋼
WO2006057470A1 (en) Steel wire for cold forging
JP2000212700A (ja) 溶接性に優れた金型
JP2000345290A (ja) 銅および銅合金用熱間圧延ロール