以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の、予備苗載置部が積層形態、即ち予備苗載部材が上下方向に並ぶ積層形態であるときの苗移植機の側面図を示し、図2は、予備苗載置部が展開形態、即ち予備苗載部材が前後方向に並ぶ展開形態であるときの苗移植機の側面図を示している。
図3は、本実施の形態1の、予備苗載置部が積層形態であるときの苗移植機の平面図を示し、図4は、予備苗載置部が展開形態であるときの苗移植機の平面図を示している。図5は、本実施の形態1の苗移植機の部分正面図であって、予備苗載置部が積層形態となっている状態を示している。なお、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許登録の範囲を拘束するものではない。
本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
図1から図5で示すとおり、車体の運転部10におけるフロアステップ11の後部には運転座席12が備えられている。また、エンジン210を覆うボンネット13をフロアステップ11の前方に備え、該ボンネット13の上部には前輪14を操向操作する操縦ハンドル18が備えられている。前記フロアステップ11の左右両外側には、右及び左の補助ステップ27が備えられている。以後車体の左側を中心に説明する。なお、図1及び図2において、16は車体の後ろ側に取り付けられた植付部、15は後輪、17は施肥装置を示す。
前記車体左側の補助ステップ27の外側には、予備苗載台20u、20m、20d…を複数設けて構成する予備苗枠19が、車体に固定された前後方向に長い基礎支持フレーム23の前後両端部に固定された主支持フレーム24及び副支持フレーム25によって支持されている。該基礎支持フレーム23は、その下端部が屈曲しており、その屈曲部が補助ステップ27の下側に回り込み、車体フレームのブラケット26に固定されている。そして、前記基礎支持フレーム23の上端部で且つ前後両端部固定された主支持フレーム24および副支持フレーム25は、ほぼ垂直に立設している。
また、車体右側の補助ステップ27の外側には、予備苗を載置する、回動しない構成の固定された固定予備苗載置部28が設けられている。
前記主支持フレーム24の上端部に切替装置21が固定されており、3つの予備苗載台20u、20m、20dを連結する主リンクアーム41を切替装置21によって回動させることにより、予備苗枠19を積層形態と展開形態に切り替え可能に構成している。
該切替装置21は、前記主支持フレーム24の上端部に固定されるため、主支持フレーム24の上下長さを抑えつつ予備苗枠19のリンク機構の回動軌跡を確保することができるので、前記予備苗載台20u、20m、20dの位置が高くなり過ぎて苗の積み込みや取り出しが困難になることが防止されるため、作業効率が向上する。
図5に示すとおり、前記切替装置21を構成する半円形状の歯車32に作業者が接触することを防止すべく、切替装置21は切替部カバー31によって覆われる構成としている。
図5に示す該切替部カバー31は、前記歯車32を作動させる切替アクチュエータ22の上部を露出させる構成としているため、切替装置21がコンパクトに構成される。なお、切替部カバー31に切替アクチュエータ22の上部の覆い部を形成し、切替アクチュエータ22全体を覆う構成としてもよい。
また、空の苗箱や苗掬い板等を収納する空苗箱収容部33を、前記主支持フレーム24および副支持フレーム25に固定して、車体の内側に設けている。該空苗箱収容部33は、本件においては金属製の棒体を組み合わせて構成しているが、他の素材を用いて構成してもよい。なお、図1から図4では、空苗箱収容部33の図示を省略している。
前記空苗箱収容部33を設けたことにより、使い終わった苗の空箱や苗掬い板を収容しておくことができるので、苗箱や苗掬い板が風で飛ばされて圃場に落ちることを防止でき、作業者が拾い集める手間が省け、作業効率が向上する。
また、前記空苗箱収容部33を予備苗枠19とボンネット13の間に設けたことにより、作業者は車体上をほとんど移動することなく苗箱や苗掬い板を空苗箱収容部33に収容することができるので、作業者の労力が軽減される。
前記空苗箱収容部33を車体の外側に配置すると、空苗箱収容部33の突出により車体を壁に寄せられなくなると共に、運転者から空苗箱収容部33までの距離が遠くなり、空の苗箱や苗掬い板が届き難くなる等の問題があるため、本実施の形態1で示すとおり車体内側寄りに配置することが合理的であり、これにより苗移植機の操作性及び作業性が向上する。
なお、本実施の形態1の苗移植機の車体が、本発明の走行車体の一例にあたる。また、主支持フレーム24及び副支持フレーム25が、本発明の支持部材の一例にあたる。そして、切替装置21が、本発明の切替装置の一例にあたり、切り替え部カバー31が、本発明のカバーの一例にあたる。さらに、空苗箱収容部33が、本発明の収容部材の一例にあたる。
次に、予備苗枠19と切替装置21との接続構成、及び予備苗枠19の動作について説明する。
図6は、本実施の形態1の、積層形態における予備苗枠19の、苗移植機の外側から見た側面図を示し、図7は、苗移植機の内側から見た側面図を示す。図8は、本実施の形態1の、展開形態における予備苗枠19の、苗移植機の外側から見た側面図を示し、図9は、苗移植機の内側から見た側面図を示す。
図6に示すとおり、本実施の形態1の切替装置21は、予備苗枠19の積層形態において、側面視で予備苗載台20u、20m、20dの前後幅の範囲内に収まる前後幅としている。切替装置21の前後幅を、予備苗載台20u、20m、20dの前後幅よりも短くしたことにより、積層形態において切替装置21が予備苗載台20u、20m、20dの前後幅から突出することが無く、コンパクトな構成とすることができる。
なお、切替装置21の前後幅は、予備苗載台20u、20m、20dの前後幅と略同じとしてもよい。
図6及び図7に示すとおり、3つの予備苗載台20u、20m、20dは、主リンクアーム41に間隔を空けて連結されている。また、該予備苗載台20uと予備苗載台20mは前側の第1副リンクアーム42によって連結されており、予備苗載台20mと予備苗載台20dは後側の第2副リンクアーム43によって連結されている。
前記予備苗載台20uは、第1副リンクアーム42に回動自在に回動部46を介して接続され、主リンクアーム41に回動自在に回動部47を介して接続されている。
前記予備苗載台20mは、第1副リンクアーム42に回動自在に回動部48を介して接続され、主リンクアーム41に回動自在に従回動軸45を介して接続されると共に、第2副リンクアーム43に回動自在に回動部49を介して接続されている。
前記予備苗載台20dは、主リンクアーム41に回動自在に回動部50を介して接続され、第2副リンクアーム43に回動自在に回動部51を介して接続されている。
前記主リンクアーム41の中央部で且つ前記従回動軸45よりも前側位置には、主リンクアーム41を前側の主支持フレーム24に回動自在に取り付ける主回動軸44が設けられている。
なお、該主回動軸44は本発明の軸の一例にあたり、主リンクアーム41に主回動軸44が接続されている部分が、本発明のリンク機構の回動中心の部分の一例にあたる。
また、前記第2副リンクアーム43は、予備苗載台20mに近い部分で、副支持フレーム25の上端部に回動軸52を介して接続されており、該回動軸52を中心として第2副リンクアーム43が回動可能に構成されている。
前記主回動軸44は、切替装置21の切替アクチュエータ22の駆動によって回動する構成としており、主回動軸44の回動に伴って主リンクアーム41が回動し、主リンクアーム41の回動に伴って、その両端に接続される予備苗載台20uおよび予備苗載台20dがそれぞれ第1副リンクアーム42および第2副リンクアーム43によって規制されながら、ほぼ水平な状態を維持して移動する。
また、主リンクアーム41の回動に伴って、従回動軸45で接続される予備苗載台20mも、第1副リンクアーム42および第2副リンクアーム43によって規制されながら、ほぼ水平な状態を維持して移動する。
図6で示す予備苗枠19の積層形態において、主リンクアーム41が左回りに回動すると、予備苗載台20uは、上昇した後、下降しながら前方へ移動していき、予備苗載台20dは、下降した後、上昇しながら後方へ移動していく。そして、予備苗枠19は、図8に示す展開形態となる。
図15は、展開形態における予備苗枠19の平面図を示している。ここでは、予備苗枠19及び切替装置21以外の部分の図示は省略している。
前記主リンクアーム41、第1副リンクアーム42及び第2副リンクアーム43は、予備苗載台20u、20m、20dに対して平行で等距離の位置に配置されており、図15で示すとおり、展開形態ではこれらのリンクアーム41、42、43が重なり合う状態となる。
また、図5及び図15に示すとおり、運転部10側から車体外側に向けて、切替装置21、各リンクアーム41、42、43、予備苗載台20u、20m、20dの順に配置されているので、予備苗載台20u、20m、20dに載置される苗の動きを邪魔する部材が無く、苗マットの積み込みが容易になる。
従来の乗用型田植機では、収容状態の予備苗載部材の停止位置を決めるストッパを設けているため、予備苗載部材を展開形態または積層形態に切り替える度にこのストッパの作用状態を手作業で解除する必要があり、作業能率が低下する問題があると共に、このストッパを作用状態と非作用状態に切り替える構成としなければならず、予備苗載部材の構成が複雑になる問題がある。
そして、予備苗載部材を展開形態に切り替えたとき、積載した苗が予備苗載部材の前側及び後側から落下することを防止する受け部材を設けているが、この受け部材の上部が上方に突出する形状であるため、苗を予備苗載部材に積み込む際、作業者はこの受け部材の上部を避けて苗を積み込まなければならないため、容易に苗が積み込めず、苗の補充作業の能率が低下する問題がある。
さらに、予備苗載部材同士の間に苗を移動を補助する搬送補助回転体等を設けていないため、苗の後方への移動に要する労力が増大すると共に、作業能率が低下する問題がある。
図10、図12及び図15で示すとおり、第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dの前側両端部に前方に向かって突出する一対の前側突出部38a1,38b1,38c1をそれぞれ形成し、後側端部中央に後方に向かって突出する後側突出部38a2,38b2,38c2をそれぞれ形成している。したがって第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dを展開形態にした場合に、機体前側に位置する予備苗載せ台20u、20mの後部突出部38a2,38b2が機体後側に位置する予備苗載せ台20m、20dの前側突出部38b1,38c1と側面視で重複する位置に配置される。なお、上記前側突出部38a1,38b1,38c1は前側ストッパ部の一例であり、上記後側突出部38a2,38b2,38c2は後側ストッパ部の一例である。
このため、第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dが前後方向に並ぶ展開形態にあるときには、第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dを前後方向に並べることができるので、予備苗載せ台20u、20m、20dに積み込む苗箱を円滑に後側に移動させることができ、作業能率が従来よりも向上する。
そして、前側ストッパ部38a1,38b1,38c1及び後側ストッパ部38a2,38b2,38c2を作用状態または非作用状態に切替操作することなく予備苗載部材20u,20m,20dを展開形態または積層形態に切り替えることができるので、予備苗載部材20u,20m,20dの構成が複雑になることが防止されると共に、作業能率が向上する。
図10、図12の側面図に示すとおり、第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dの前側突出部38a1,38b1,38c1に後上り傾斜形状(後上り傾斜部)の案内面を形成し、該案内面を各予備苗載せ台20u、20m、20dの苗載せ面よりも高くしている。
そして、展開形態において、側面視で前記案内面または案内面よりも後方に後側ストッパ部を配置する。
また、第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dの後側突出部38a2,38b2,38c2を各予備苗載せ台20u、20m、20dの苗載せ面よりも高くし、且つ前側突出部38a1,38b1,38c1の上面と同じか又は前記上面より低くしている。
上記のとおり、前側突出部38a1,38b1,38c1を後上り傾斜部としたことにより、第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dを展開状態としたとき、前側の予備苗載せ台20u、20mから後側の予備苗載せ台20m、20dに苗箱等を移動させるとき、この苗箱は後上り傾斜部に載り上げて後方に移動することができるので、苗箱の移動が容易となり、作業能率が従来よりも向上する。
また、前側突出部38a1,38b1,38c1の案内面の後部に形成した前側ストッパ部と、後側突出部38a2,38b2,38c2に形成した後側ストッパ部を各予備苗載せ台20u、20m、20dの苗載せ面よりも高く形成したことにより、第1、第2、第3予備苗載せ台20u、20m、20dを積層形態としたとき、前側突出部38a1,38b1,38c1と後側突出部38a2,38b2,38c2で各予備苗載せ台20u、20m、20dに載置した苗箱などの前後移動を防止することができるので、各予備苗載せ台20u、20m、20dから苗箱が下方に落下することが防止され、落下した苗箱を拾う必要が無くなり、作業能率が従来よりも向上する。
前記各予備苗載せ台20u、20m、20dの一対の前側突出部38a1,38b1,38c1の左右間で、且つ当該予備苗載せ台20u、20m、20dの底部に前側の予備苗載せ台20u、20mの後側突出部38a2,38b2などを受けるための受け部材38a3,38b3,38c3をそれぞれ設け、該受け部材38a3,38b3,38c3は一対の前側突出部38a1,38b1,38c1同士の間の空間部に突出して形成している。
なお、前側突出部38a1,38b1,38c1及び後側突出部38a2,38b2のうちの一方に受け部材38a3,38b3,38c3を設け、該受け部材38a3,38b3,38c3により前側突出部38a1,38b1,38c1及び後側突出部38a2,38b2のうちの他方を受ける構成としている。
上記構成としたことにより、各予備苗載せ台20m、20dの前側突出部38b1,38c1の左右間に受け部材38b3,38c3で、それぞれの前側の予備苗載せ台20u、20mの後側突出部38a2,38b2を受け止めることができるので、各予備苗載せ台20u、20m、20dが下がり過ぎることがなく、展開状態の各予備苗載せ台20u、20m、20dが確実にほぼ同じ高さに並ぶ姿勢となるため、苗箱の積み込み作業が容易となり、作業能率が従来よりも向上する。
また、予備苗載せ台20u、20m、20dの底部に受け部材38a3,38b3,38c3を設けたことにより、後側突出部38a2,38b2,38c2の上端部は前側突出部38a1,38b1,38c1の上端部と略同じ高さ、または下側に位置するので、後上り傾斜部を有する前側突出部38a1,38b1,38c1に載り上げる苗箱の移動が円滑に行われるため、作業能率が従来よりも向上する。
また、第1,第2,第3予備苗載せ台20u、20m、20dの左右側面の前後の4箇所に苗箱の落下を防ぐ第1,第2,第3仕切壁38a4,38b4,38c4をそれぞれ配置している。
さらに、第2移動リンク部材39bの回動支点44を第2予備苗載せ台20mの回動軸45と同軸上に設けても良い。この場合は、中央の第2予備苗載せ台20mが前後に移動しない構成となる。
図14の(a)、(b)は、展開形態とした予備苗載台20u,20m,20d上を移動する苗を示す側面図であり、図14の(c)は苗を省略した平面図である。また、図14の(c)、(d)は、苗の搬送を補助する補助搬送回転体を設けた平面図と、要部の側面図である。
前記三つの予備苗載台20u,20m,20dの前側突出部38a1,38b1,38c1のうち、第2の予備苗載台20m及び第3の予備苗載台20dの前側突出部38b1,38c1には、遊転して苗の搬送を補助する搬送補助回転体47b,47cをそれぞれ配置する。
このとき、搬送補助回転体47b,47cの上面は、前記前側突出部38b1,38c1の後上り傾斜面の上部よりも上方に突出する構成とする。
前記前側突出部38b1,38c1に搬送補助回転体47b,47cを設けたことにより、展開形態であるときに作業者が第2の予備苗載台20m及び第3の予備苗載台20dに苗を押して移動させる際、苗の移動にかかる力を軽減することができるので、作業者の労力が軽減される。
そして、搬送補助回転体47b,47cの上面が前側突出部38b1,38c1よりも上方に位置することにより、補助搬送回転体47b,47cが確実に作用する。
図16は、切替装置21の構造を示す説明図である。
図16で示すとおり、前記主支持フレーム24が車体内側に配置され、前記主リンクアーム41が主支持フレーム24よりも外側に配置される。また、主支持フレーム24の上端部に固定支持板58が固定されており、固定支持板58には切替アクチュエータ22が固定されている。
前記主回動軸44は主リンクアーム41に固定されており、また歯部55が形成されている円弧の中心の位置を貫通するように歯車32にも固定されている。そして、主回動軸44は、主支持フレーム24に回動自在に接続されており、主回動軸44、歯車32及び主リンクアーム41が一体となって回動する構成としている。
図16に示すとおり、車体の内側から外側に向けて、主支持フレーム24、切替アクチュエータ22、歯車32、主リンクアーム41の順に配置されており、さらに図15で示すとおり、主リンクアーム41の外側に予備苗枠19が接続されている。
上記構成としたことにより、補助ステップ27上で作業する作業者から見て、主リンクアーム41、第1副リンクアーム42および第2副リンクアーム43よりも切替装置21が手前側に位置する構成となるので、回動中の主リンクアーム41、第1副リンクアーム42および第2副リンクアーム43に作業者の手や腕がぶつかることを防止できるので、作業の安全性が向上する。
前記切替装置21を構成する切替アクチュエータ22、該切替アクチュエータ22の出力軸(図示省略)に軸着する回動歯車61及び歯車32は、図5に示すとおり、主支持フレーム24の上部と共に、前記切替部カバー31で覆う構成とする。
なお、前記切替部カバー31は、例えば、下方が開放された箱型形状とし、切替装置21の上部から被せる構造としてもよい。また、側面が開放された箱型形状とし、主支持フレーム24側の側面から被せて切替装置21を覆わせて、その後で開放された側面部分に蓋を取り付ける構成としてもよい。
切替部カバー31を、下方が開放された箱型形状として切替装置21の上方から着脱自在に取り付ける構造とすると、切り替え部カバー31の取り外しが容易になるので、メンテナンス性が向上する。
なお、切替アクチュエータ22を歯車32に近い位置に配置するほど、切替装置21のサイズをよりコンパクトにすることができる。
また、主支持フレーム24を内部が空洞のパイプ形状とし、切替アクチュエータ22に電源を供給するハーネスを主支持フレーム24の内部を通して、切替アクチュエータ22に接続する構成としてもよい。該構成とすることにより、主支持フレーム24を回動させると予備苗枠19が車体の内側を向く構成としても、切替アクチュエータ22に電源を供給するハーネスが絡まることを防止できる。
また、予備苗枠19の積層形態および展開形態を切り替えるための操作部材、すなわち切替アクチュエータ22を駆動するための切替操作スイッチは、操縦ハンドル18の根元のハンドルポスト30に配置してもよい。該ハンドルポスト30に切替操作スイッチ73を設けることにより、運転者は予備苗枠19の状態の切り替えを運転部10で操作することができる。
また、運転座席12に座った状態では少し手を伸ばさなければ届かない位置に切替操作スイッチ73が配置されるため、誤操作をする可能性が低くなる。
あるいは、予備苗枠19の状態を切り替える切替操作スイッチ73を、ハンドルポスト30に設けると共に、ボンネット13の前側位置に設ける構成としてもよい。該構成とすることにより、運転者とは別の補助者も操作することができ、例えば危険と感じたときに予備苗枠19の回動動作を停止させることができる。
同様に、予備苗枠19の状態を切り替える切替操作スイッチを、予備苗枠19や切替装置21に設けてもよい。
図10は停止プレート73a1,73a2を設けた積層形態の予備苗枠19を示す側面図であり、図11は停止プレート73a1,73a2の取付位置を示す要部側面図である。そして、図12は停止プレート73a1,73a2を設けた展開形態の予備苗枠19を示す側面図であり、図13は停止プレート73a1,73a2の取付位置を示す要部側面図である。
前記切替操作スイッチを操作して予備苗枠19を積層形態及び展開形態に切り替えたとき、主リンクアーム41、第1及び第2副リンクアーム42,43に接触してそれ以上の回動を規制する停止プレート73a1,73a2を設ける。該停止プレート73a1,73a2は、積層形態で中央の予備苗載台20mと下段の予備苗載台20dの側面にそれぞれ設ける。
図10及び図11で示すとおり、予備苗枠19が積層状態になると、下側に位置する停止プレート73a2に主リンクアーム41が接触してそれ以上の回動を規制し、この回動規制が続くことによって切替アクチュエータ22に一定以上の負荷が生じる、または過熱状態となると制御装置100が切替アクチュエータ22を停止させる。
また、図12及び図13で示すとおり、予備苗枠19が展開形態になると前側に位置する停止プレート73a1に主リンクアーム41が接触してそれ以上の回動を規制し、この回動規制が続くことによって切替アクチュエータ22に一定以上の負荷が生じる、または過熱状態となると制御装置100が切替アクチュエータ22を停止させる。
上述のとおり、切替アクチュエータ22の停止は制御装置100を介して行うものとしているが、該切替アクチュエータ22を電動モータとし、この電動モータの内部に通電切替部材92を用いた通電経路を配置し、負荷により一定温度以上になると該通電切替部材92が曲がって通電状態から非通電状態に強制的に切り替える構成としてもよい。
上記構成とすると、予備苗枠19を積層形態または展開形態に切り替えたとき、作業者は切替操作スイッチ73を操作して切替アクチュエータ22を停止させる必要がなくなるため、他の操作に集中することができ、作業能率が従来以上に向上する。
また、予備苗枠19が積層形態または展開形態となるとき、主移動リンクアーム41が停止プレート73a1,73a2に接触する構成となるので、機体の振動で主リンクアーム41、第1及び第2副リンクアーム42,43が動いて予備苗枠19が前後に揺れることが防止され、苗の落下が防止されると共に、揺れによる予備苗枠19及びその他の構成部材の摩耗が軽減される。
さらに、予備苗枠19を積層形態または展開形態に切り替えたとき、切替アクチュエータ22を停止させるスイッチ等の構成部材及び回路を省略することができるので、部品点数が大幅に削減されると共に、構成が簡潔になる。
図17(a)及び(b)で、本件の切替装置21の構成について説明する。
前記切替装置21を構成するカバープレート78を設け、主リンクアーム41を動かす歯車32よりも車体の外側寄りとなる位置に補助プレート79を装着する。そして、該カバープレート78と補助プレート79の左右間に保持プレート80を装着し、該保持プレート80を補助プレート79側に延設させて該補助プレート79により支持し、該補助プレート79と保持プレート80で切替アクチュエータ22を左右から支持する構成とした。
上記構成とした切替装置21では、カバープレート78と補助プレート79の左右間に保持プレート80を設け、この保持プレート80と補助プレート79で切替アクチュエータ22を左右から支持したことにより、主リンクアーム41、第1及び第2副リンクアーム42,43が停止プレート73a1,73a2に接触して負荷をかける際、切替アクチュエータ22が移動しようとする力が保持プレート80に加えられても、その力をカバープレート78と保持プレート80で受けることができるので、切替アクチュエータ22は十分な強度で的確に支持される。
また、切替アクチュエータ22の移動を防止することにより、切替アクチュエータ22と歯車32の距離が離れることを防止できるので、切替装置21の調整作業が不要となり、作業能率が向上する。
上述したとおり、積層形態と展開形態とに切替自在な予備苗枠19を用いることにより、予備苗載せ台20u,20m,20d上を移動させて圃場外から苗移植機に苗マットや苗箱を積み込む作業ことができるので、苗の積込作業が容易になり、作業者の労力が軽減される。しかしながら、本件構成の苗移植機で植付作業をするときには、施肥装置17で圃場に肥料を供給しているので、定期的に施肥装置に肥料を補充する作業が必要であり、補充作業に用いる肥料袋の積込作業も行う必要がある。
肥料袋は、市販の一般的なサイズのものであれば、一袋辺り20kg程度の重量である。従来の作業においては、作業者がこの肥料袋を抱えて圃場内を移動し、苗移植機上に上がってから施肥装置17に補充しているが、作業者の体重に約20kgの重量が加わった状態で水田圃場内を歩くと足が泥に取られ易くなるので、短距離の移動であっても作業者に多大な労力を負担させるという問題がある。
上記の問題を解決すべく、本件の予備苗枠19の予備苗載せ台20u,20m,20dに肥料袋を載置し、展開形態から積層形態に切り替えることで、作業者が肥料袋を持って圃場内を歩く作業を省略することが考えられる。本件の予備苗枠19の構造上、約20kgの肥料袋の一袋程度であれば、上述の作業を行うことは可能ではある。
しかしながら、本件の予備苗枠19は、1〜2kg程度の苗マットや苗箱を予備苗載せ台20u,20m,20dに各々1つ載置して使用することを想定して作られているので、約10倍の重量の肥料袋を積載して展開形態から積層形態への切替作業を行うと、予備苗枠19の構成部品に負荷がかかりやすくなり、苗マットや苗箱を載せて用いる作業条件に比べて、予備苗枠19の耐久性の低下が早くなってしまうという問題がある。
また、予備苗載せ台20u,20m,20dの積載面積は、苗マットや苗箱に合わせたものとなっており、一般的な肥料袋の面積よりも狭いので、肥料袋の積載姿勢が安定せず、搬送途中で落下してしまい、作業者が圃場に降りて肥料袋を拾い上げねばならなくなり、作業者の労力を増大させると共に、作業能率を低下させてしまう問題がある。
なお、苗マットと苗箱の面積は、標準的な栽培条件においては、殆ど差が生じない。
そして、本件の苗移植機に設けられている施肥装置17の貯留ホッパの容量は、一条につき約10kgであり、肥料袋一袋では二条分しか補充ができないので、六条植えの本件の苗移植機においては、少なくとも三袋は肥料袋を積み込む必要があり、作業者が運ぶのであれば作業者に相当な労力を費やさせる問題があり、予備苗枠19に載せて搬送するときには、相応の負荷が予備苗枠19の構成部品にかかり、その分耐久性が早く低下する問題が生じる。
さらに、苗マットや苗箱と異なり、肥料袋を載置しておく専用の場所は無いので、フロアステップ11上に載置することが多いが、予備苗枠19から苗植付部16に苗を補充する作業を行う際、肥料袋が作業者の移動範囲を制限してしまい、作業能率を低下させてしまう問題がある。
上記の問題を解消する構成を、下記の通り示す。
図18及び図19に示す通り、基礎支持フレーム23の上部に取付ステー101を機体内側に向けて設け、該取付ステー101の機体内側端部に予備苗枠19の主支持フレーム24及び副支持フレーム25を設ける。また、該取付ステー101の機体外側に支持アーム102を設け、該支持アーム102のうち、積層形態で上下方向に重なり合う予備苗載せ台20u,20m,20dの左右方向の中央部の下方となる位置に第1回動ピン103を設ける。そして、該第1回動ピン103の上部に回動アーム104の基部側を設け、該回動アーム104の端部側に肥料載置台105を設ける。
図18で示す通り、回動アーム104を機体前方に回動させると、肥料載置台105が展開形態で最前列に位置する予備苗載せ台20uの下方に位置し、機体前側に向かって突出する姿勢になると共に、回動アーム104を機体後方に回動させると、肥料載置台105が展開形態で最後列に位置する予備苗載せ台20dの下方に位置し、機体前側に向かって突出する姿勢になる。このとき、肥料載置台105の機体外側端部は、予備苗載せ台20u,20m,20dの機体外側端部の下方に位置し、機体外側に余分にはみ出さない構成とする。
なお、該肥料載置台105は、予備苗枠19の機体外側端部よりも外側に突出することは好ましくないが、機体内側端部よりも内側に移動し、且つフロアステップ11のうち、作業者が移動しない(足を近づけない)箇所まで移動させることは問題が無い。
上記フロアステップ11を移動する際、作業者は足場の安定性を確保すべく、基本的にフロアステップ11の端部には足を近付けない。よって、肥料載置台105がフロアステップ11の端部の上方に位置していても、作業者の足と接触することは無く、肥料載置台105を作業者が踏んで破損させることもない。
前記予備苗枠19の機体内側端部よりも内側寄りに肥料載置台105の機体内側端部を位置させることにより、作業者は肥料載置台105を目視しやすく、またフロアステップ11上で作業を行う作業者に近付くので、作業者は肥料載置台105から肥料袋を取り出しやすくなり、作業能率が向上する。
図22(a)(b)、図23(a)(b)に示す通り、前記第1回動ピン103の下部には一文字または十文字の第1ロック溝103aを形成し、前記取付ステー101に上下回動自在な第1回動ストッパ103bを設け、該第1回動ストッパ103bを第1ロック溝103aに差し込んで、回動アーム104の回動を規制する構成とする。該第1ロック溝103aを一文字にしたときは、肥料載置台105を機体前方又は後方に移動させたときに第1回動ストッパ103bが第1ロック溝103aに差し込み可能となり、十文字としたときには、肥料載置台105を機体外側方向に回動(回動アーム104を90度回動)させた状態のときにも第1回動ストッパ103bが第1ロック溝103aに差し込み可能となる。
なお、前記回動アーム104よりも機体内側に、前記主支持フレーム24及び副支持フレーム25が上下方向に設けられていることにより、該主支持フレーム24と副支持フレーム25が回動アーム104の機体内側方向への回動規制部材となる。
これにより、回動アーム104を移動させ過ぎて、肥料載置台105が機体内側方向に過度に移動してしまうことが防止され、肥料載置台105を適切な位置に移動させる作業が不要となり、作業能率が向上すると共に、肥料載置台105がボンネット13等に接触し、肥料載置台105やボンネット13、及び周辺の構成部品が破損することが防止される。
上記構成としたことにより、圃場端から肥料袋を積み込むときは、回動アーム104を機体前側まで回動させると、肥料載置台105を機体の前方に突出させることができるので、圃場の外にいる作業者が容易に肥料を機体上に積み込むことが可能となり、作業能率が向上する。
特に、圃場端に水路がある圃場や、圃場端の足場が不安定な圃場で作業をするときは、作業者は無理に身を乗り出して肥料袋を機体に積み込む必要がなくなるので、作業者の労力が軽減されると共に、肥料袋を落としてしまい、この肥料袋を拾う作業が不要となるので、作業能率が向上する。
また、回動アーム104を機体外側に回動させ、肥料載置台105が機体外側に突出する姿勢で保持することができるので、機体を圃場端に横付けしても肥料載置台105を圃場端に近付けることができるので、様々な作業条件に対応することが可能となり、作業能率の向上や作業者の労力の軽減が図られる。
そして、肥料載置台105を移動させる際、回動アーム104を機体外側方向に回動させる構成としたことにより、フロアステップ11上を回動アーム104や肥料載置台105が移動しないので、作業者は回動アーム104や肥料載置台105を避けることなくフロアステップ11上で苗や肥料の補充作業をすることができ、作業能率が向上する。
さらに、肥料載置台105を機体前部、後部のどちらに移動させても、肥料載置台105の外側端部が予備苗枠19の外側端部の略直下に位置する構成としたことにより、肥料載置台105が機外に突出することを防止できるので、肥料載置台105が壁等に接触して破損することが防止され、耐久性が向上する。
また、肥料載置台105を機体後部側に移動させると、肥料載置台105を施肥装置17に接近させることができるので、作業者が肥料袋を肥料載置台105から取って施肥装置17に移動させる距離が短くなり、作業能率が向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
そして、肥料の補充作業を行うまでの間、肥料袋を肥料載置台105上に載置しておくことができるので、フロアステップ11上に載置される肥料袋の数が減少し、作業者が苗や肥料の補充作業時に移動しやすくなり、作業能率が向上する。
前記肥料載置台105を機体前側に移動させると、圃場外から肥料を積み込み易くなるのは、上述の通りである。しかしながら、肥料を用意している位置が肥料載置台105を前方に移動させた位置から機体内側、または機体外側に位置していると、作業者が肥料袋を持って移動する距離が少し長くなり、作業能率の向上や労力の軽減が十分に図れなくなる。
また、肥料載置台105を左右の予備苗枠19,19の下方に各々設ける構成では、左右一方の肥料載置台105には殆ど移動することなく肥料を積み込むことができても、左右他方の肥料載置台105には肥料袋を持って移動しなければ積み込めず、作業能率の向上や労力の軽減が十分に図れなくなる。
上記の図18及び図19の構成でも、回動アーム104を主支持フレーム24に接触するまで機体内側に回動させれば、肥料載置台105を機体内側に寄せることはできる。しかしながら、このとき肥料載置台105は圃場端で作業をする作業者から見て斜め向きになるので、作業者は肥料袋を肥料載置台105に載置する際に適切な肥料袋を斜めに向けて載置する必要があり、作業能率の向上に繋がらない、あるいはかえって積み込みに手間がかかるようになり、作業能率が低下する問題がある。
上記の問題を解消する方法として、図19及び図20で示す構成がある。
前記取付ステー101に設ける支持アーム102の基部側に、第2回動ピン106を設けて該支持アーム102を前後回動自在に構成し、該第2回動ピン106の上部には一文字または十文字の第2ロック溝106aを形成すると共に、前記主支持フレーム24に第2回動ストッパ106bを上下回動自在に設け、該第2回動ストッパ106bを第2ロック溝106aに差し込んで、前記支持アーム102の回動を規制する構成とする。
なお、上記構成とするときは、前記第1回動ストッパ103bを第1ロック溝103aに差し込み、前記回動アーム104の回動を規制し、回動アーム104が予期せぬ動作をしない状態としておくとよい。
上記の構成では、前記回動アーム104よりも回動支点が機体内側に位置することにより、支持アーム102を、肥料載置台105の前端部が圃場端と略平行となる位置まで機体前側に回動させると、肥料載置台105が機体の前側、図20ではフロアステップ11の前側に位置する構成となるので、圃場端に肥料袋を置いている位置が機体内側寄りであっても作業者は肥料袋を持って移動することなく肥料の積み込み作業が行えるため、作業能率が向上すると共に作業者の労力が軽減される。
なお、肥料載置台105をフロアステップ11の前側に移動させたとき、支持アーム102は主支持フレーム24に接触する配置構成とすると、支持アーム102の細かい操作をすることなく載置位置まで移動させることができるので、作業能率が向上する。
上記配置構成とすると、支持アーム102を機体後方に向けて回動させると、副支持フレーム25と接触する位置で支持アーム102の回動が規制されるが、このとき肥料載置台105の機体外側端部は予備苗枠19の機体外側端部の下方に位置するので、肥料載置台105が壁等に接触して破損することが防止されると共に、フロアステップ11の上方に肥料載置台105が位置しないので、作業者はフロアステップ11上で苗や肥料の補充作業を容易に行え、作業能率が向上する。
また、左右の肥料載置台105,105を設ける構成では、左右の肥料載置台105,105を各々機体内側に移動させることができるので、作業者は左右の肥料載置台105,105のどちらにも肥料袋を積載しやすくなり、作業能率がいっそう向上する。
上記の構成において、第2ロック溝106aを十文字に形成していると、肥料載置台105が機体の左右外側方向に突出した姿勢とすることも可能であるが、支持アーム102の第2回動ピン106は機体内側寄りに設けられているので、回動アーム104を回動させる構成に比べると肥料載置台105の機体外側への突出量は小さくなる。これにより、機体側方に十分な空間があるときは、回動アーム104を回動させ、肥料載置台105の突出量を多く取る方が、作業者の肥料積み込みは容易になる。
しかしながら、住宅地等、圃場端のすぐ近くに壁がある場所等では、肥料載置台105の突出量が多過ぎると壁に接触するので、回動アーム104の回動による肥料載置台105の機体側方への突出操作ができないことがある。このときは、支持アーム102を回動させ、突出量を抑えた状態で肥料載置台105を機体側方に突出させることにより、肥料載置台105の壁への接触を防止しつつ、肥料の積み込み作業に要する作業者の労力を軽減することができる。
上述の構成は肥料載置台105が機体内側に寄る構成であるが、肥料載置台105を機体外側位置で止めることが可能な構成としてもよい。
前記第1回動ピン103と回動アーム104を、前記支持アーム102から着脱自在に構成すると共に、該支持アーム102の外側端部に延長アーム108の基部側を設ける。そして、該延長アーム108の端部に肥料載置台105を装着することにより、肥料載置台105を機体から大幅に外側に離間した位置に位置させることができる構成とする。
この構成では、延長アーム108を装着した支持アーム102を回動させ、肥料載置台105を機体前側または機体後側に移動させても主支持フレーム24及び副支持フレーム25に接触しないので、作業者は肥料袋の積込作業位置、及び肥料載置台105の搬送停止位置で第2回動ストッパ106bを操作して延長アーム108を装着した支持アーム102の回動を規制する状態とする必要がある。
また、機体後側に移動させた肥料載置台105の機体外側端部が、予備苗枠19の機体外側端部の下方に位置するときに、延長アーム108を装着した支持アーム102の回動を規制する必要がある。
このとき、第2ロック溝106aが一文字または十文字に形成されていることにより、第2ロック溝106aに第1回動ストッパ106bが差し込み可能となる位置を、延長アーム108を装着した支持アーム102の回動停止位置と判断することができる。
上記の構成では、図18,図19の構成よりも回動支点が機体外側に位置することにより、回動アーム104を、肥料載置台105の前端部が圃場端と略平行となる位置まで機体前側に回動させると、肥料載置台105が機体から大きく離間する構成となるので、肥料の積込作業時に周囲に障害物が無く、肥料の積込作業が能率よく行える。
また、肥料載置台105を延長アーム108の端部に設けたことにより、肥料載置台105を機体後側に移動させたときに肥料載置台105と施肥装置17の間隔を狭くすることができるので、作業者が肥料袋を施肥装置17に移動させる距離が短くなり、作業能率が向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
なお、図18,図19の構成であっても、肥料載置台105を機体外側に離間した位置に移動させることはできるが、回動支点が予備苗枠19の下方に位置しているので、肥料載置台105の前側への突出量が少なく、しかも肥料載置台105は圃場端で作業をする作業者から見て斜め向きになるので、作業者は肥料袋を肥料載置台105に載置する際に適切な肥料袋を斜めに向けて載置する必要があり、作業能率の向上に繋がらない、あるいはかえって積み込みに手間がかかるようになり、作業能率が低下する問題がある。
図24(a)(b)で示すのは、前記肥料載置台105を、肥料の積込作業や施肥装置17に補充する作業位置と、苗の植付作業時や作業終了時の収納位置に切り替える構成である。
前記肥料載置台105は、前記支持アーム102、回動アーム104または延長アーム108のいずれにも、第3回動ピン109を装着した取付アーム110を介して装着する。このとき、該第3回動ピン109を回動支点として肥料載置台105を回動させ、平面視で前記予備苗枠19と重なる位置に移動可能な構成とする。
そして、該第3回動ピン109の下部側と、支持アーム102、回動アーム104または延長アーム108に設ける連結ピン111の下部側を、連結スプリング112で連結することにより、肥料載置台105を回動操作する際、支点越えさせるまでは該連結スプリング112の張力によって作業位置または収納位置を維持する構成とする。
なお、上記連結スプリング112は、強い力がかからないと支点越えしない程度の付勢力を有するものとする。
これにより、苗の植付作業時や機体の収納時には、肥料載置台105を第3回動ピン109を回動支点として予備苗枠19と重なる位置に移動させることができるので、肥料載置台105が作業者が乗り降りする機体の前方や側方を塞ぐことが防止され、作業者は機体から乗り降りする際に肥料載置台105を移動させる必要が無く、作業能率が向上する。
また、機体の収納時に肥料載置台105が機体前方や機体側方に突出した姿勢となることを防止できるので、機体の前後幅、または左右幅をコンパクトになるため、収納に必要なスペースを大きく取る必要が無くなり、収納性が向上する。
そして、肥料を積載して移動しているとき、即ち肥料載置台105を機体前側から後側に回動操作しているときに、肥料載置台105に手が触れたり、回動時の遠心力がかかったりして肥料載置台105が作業者の意図しないタイミングで回動することが防止されるので、肥料袋の落下が防止され、肥料袋を拾う作業が不要になる。
また、前記回動アーム104の回動支点となる第1回動ピン103、または前記支持アーム102の回動支点となる第2回動ピン106の近傍に、前記支持アーム102または回動アーム104を回動操作する、平面視でL字形状の回動操作レバー113を取り付ける。
上記構成としたことにより、肥料載置台105に肥料袋を積み込み、支持アーム102、回動アーム104または延長アーム108を機体後側に向かって回動させる回動方向と、肥料載置台105を予備苗枠19の下方から機体後側に回動させる回動方向を同じ方向とすることができるので、回動操作レバー113を持って支持アーム102、回動アーム104を回動操作する際、肥料載置台105に積載した肥料袋の重量や遠心力によって肥料載置台105が回動することが防止され、圃場外から積み込んだ肥料袋を施肥装置17の肥料補充作業にすぐ用いる際、余分な回動操作レバー113の操作が不要となるので、作業能率が向上する。
また、連結スプリング112の張力によって肥料載置台105を作業位置または収納位置を維持し、支点越えさせると連結スプリング112の張力によって作業位置と収納位置が切り替わる構成としたことにより、作業者は支点越えした後は回動操作する力を加える必要が無く、作業者の労力が軽減される。
そして、支持アーム102または回動アーム104の回動支点の近くに回動操作レバー113を設けたことにより、作業者は軽い力で支点越え操作を行なうことができるので、作業者の労力がさらに軽減される。
また、上記の肥料載置台105は、第1回動ストッパ103bまたは第2回動ストッパ106bを第1ロック溝103aまたは第2ロック溝106bに出し入れすることで、回動状態と非回動状態を切り替える構成としている。しかしながら、この構成では作業者は肥料載置台105を移動させるたびにロックの入切操作の必要があり、作業者の労力を多少とはいえ増大させる問題がある。
上記の問題を解消すべく、図25(a)(b)で示す通り、前記主支持フレーム24に支持アーム102の基部側に設けたボス114を装着し、該ボス114の上部にロック用の凹部114aを形成する。そして、前記主支持フレーム24に該凹部114aが入り込むロック突起115を固着し、該ロック突起115及びボス114の下方に、該ボス114の下降を制限する下降ストッパ116を固着すると共に、前記ボス114と取付ステー111の上下間に、ボス114を上方に付勢するスプリング117を伸縮自在に設ける。
なお、前記支持アーム102は、図19等の構成とは異なり、肥料袋を積載してもしていなくても、取付ステー101に位置する構成としており、主支持フレーム24を回動支点として前後方向に回動する構成とする。支点位置は図で示す、第2回動ピン106に近い位置であるので、肥料載置台105は、機体内側寄りとなる位置に移動したとき、圃場端部と略平行となる位置に位置する構成となる。
上記の構成により、肥料載置台105に肥料袋を載置すると、肥料袋の重量によって肥料載置台105が下降すると共に、連動してボス114がスプリング117を押し縮めながら主支持フレーム24に沿って下降する。すると、ボス114に形成した凹部114aがロック突起115よりも下方に位置するので、支持アーム102は主支持フレーム24を回動支点として機体前後方向に回動可能となり、肥料載置台105を移動させることが可能となる。
よって、肥料載置台105に肥料を積載する、または作業者が肥料載置台105を下方に押し下げると回動ロック状態が解除され、肥料載置台105に肥料を積み込んで施肥装置17に搬送することや、肥料袋の積込作業を行うべく、機体前側に移動させることが可能となるので、回動機構が簡潔な構成となり、組立や分解が容易なメンテナンス性の高い構成となる。
また、作業者が行うロック解除操作は、肥料袋の積載か肥料載置台105の押し下げ操作のみであるので、作業者の労力が増大することが防止される。
図26(a)(b)で示す通り、前記ボス114には、凹部114aを、互いに円周上で180度離れる位置にそれぞれ1つ、合計2つ形成する。一方、凹部114a内に入り込むと支持アーム102の回動を規制して肥料載置台105を非回動状態とするロック突起115は、主支持フレーム24の円周上に、互いに90度離れる位置に1つ、合計4つ形成するものとする。また、下降ストッパ116は、ボス114を受け止め可能な位置に突起体を1または複数個(例えば、前記4つのロック突起115,115,115,115の下方位置)設ける構成としてもよく、ボス114を受け止め可能な円形状としてもよい。
また、上記の第1ロック溝103a及び第2ロック溝106aを、第1回動ピン103及び第2回動ピン106の端部に設ける、ゴム等の摩擦力の高い部材に形成し、肥料袋が肥料載置台105に積載されると第1回動ストッパ103b及び第2回動ストッパ106bが摩擦抵抗に打ち勝って第1ロック溝103a及び第2ロック溝106aから抜け、肥料載置台105を回動状態に切り替える構成としてもよい。
上記のスプリング117、またはゴム等の摩擦力の高い部材に第1及び第2ロック溝103a,106bを形成するときは、約20kgの肥料袋が肥料載置台105に積載されるとゆっくりと肥料載置台105を非回動状態から回動状態に切り替える構成となる付勢力、または摩擦係数を有する部材で構成するとよい。
図には、機体の左右両側に、苗の植付作業を行っている作業位置に隣接する、次工程の作業位置の圃場面に直進走行の目安線を形成する左右の線引きマーカ200,200が設けられている。該左右の線引きマーカ200,200は、苗の植え付けを行うべく苗植付部16を下降させると、左右一側が下方回動して圃場面に目安線を形成すると共に、他方の線引きマーカ200は圃場面から大幅に上方に退避した姿勢となる構成としている。
図27で示す通り、左右の線引きマーカ200,200の切替回動操作は、苗植付部16を昇降動作する際、左右の線引きマーカ200,200の基部側に各々設けたマーカ切替モータ201,201を作動させることによって行っている。
なお、前記苗植付部16を上昇させると左右のマーカ切替モータ201,201が作動して、前記線引きマーカ200,200を圃場面から大幅に離間する上方に回動操作すると共に、苗植付部16を下降させると、制御装置100に記憶された前回の作動方向とは反対側のマーカ切替モータ201が作動し、対応する側の線引きマーカ200が下方回動して圃場面に接触する構成としている。
この機構を利用すべく、図28(a)(b)、図30で示す通り、前記凹部114a内にロック突起115が入らなくなる位置までボス114が下降すると、該ボス114が接触して「入」となる下降スイッチ118を設け、該下降スイッチ118が「入」になると前記マーカ切替モータ201が作動し、線引きマーカ200を下方回動させる構成としてもよい。
上記構成により、肥料載置台105を機体後側に移動させる際、肥料載置台105や載置した肥料袋が線引きマーカ200に接触することを防止できるので、肥料載置台105の回動操作前に線引きマーカ200を下降させる操作を別途行う必要が無く、作業能率の向上が図られると共に、線引きマーカ200や肥料載置台105の破損が防止される。
なお、図29、図30で示す通り、第1回動ストッパ103bまたは第2回動ストッパ106bをロック解除位置に操作すると移動する位置に前記下降スイッチ118を設け、第1回動ストッパ103bまたは第2回動ストッパ106bの回動規制の解除操作に連動して線引きマーカ200が下降する構成としてもよい。
また、前記施肥装置17の肥料の貯留部は、肥料の飛散や水の進入等を防止すべく、上部に回動自在なホッパ蓋17aを開閉可能に設けている。肥料の補充時には、該ホッパ蓋17aを開き、施肥装置17に肥料を供給する構成である。
このとき、図30で示す通り、前記ホッパ蓋17aを開くと「入」になる開放検知スイッチ121を設け、該開放検知スイッチ121が「入」になると、制御装置100は前記マーカ切替モータ201を作動させ、線引きマーカ200を下降させる構成としてもよい。
上記構成により、肥料の補充作業時にホッパ蓋17aを開けて補充の準備をすると、自動的に線引きマーカ200が下降して肥料載置台105を移動させる状態に自動的に切り替わるので、作業者が線引きマーカ200の下降操作を行なう必要が無く、作業能率が向上する。
本件の苗移植機には、駆動源であるエンジン210と、該エンジン210から駆動力を受けて機体の走行出力の大小、及び出力方向を変更するHST(油圧式無段変速装置)211が設けられている。該HST211は、図5等で示す通り、ボンネット13に設ける走行操作レバー212を操作することにより、走行出力の大小及び出力方向を切替操作する構成としている。
なお、図30で示す通り、該走行操作レバー212の操作は、走行操作レバー212とHST211の間に複数の部品からなる連動機構(図示省略)を設ける構成としてもよいが、走行操作レバー212の操作角度を検出する走行ポテンショメータ213を設け、該走行ポテンショメータ213が検出する操作角度を制御装置100に発信し、HST211の出力軸を回転するHSTサーボモータ214を作動させ、HST211の出力を変更する制御構成としてもよい。
図30,31で示すのは、前記第1回動ピン103に大径のカム119を設け、前記回動アーム104を回動操作すると該カム119が接触する位置に操作検知スイッチ120を設け、該操作検知スイッチ120が「入」になると、制御装置100は走行ポテンショメータ213が検知する操作角度が変更されてもHSTサーボモータ214を作動させる信号を発信させない制御構成である。
基本的に苗や肥料の積込作業は、安全性の確保や作業能率の低下を防止すべく、機体の走行を停止させた状態で行う。積込作業に要する時間が短いときは、エンジン210をキー操作によって停止させず、走行操作レバー212を操作してHST211の出力を前後方向共に0にする、所謂中立状態とすることが多い。これにより、走行操作レバー212を操作するとすぐに走行を再開することができるので、作業能率が向上する。
しかしながら、苗や肥料の補充中に身体の一部や肥料袋等が走行操作レバー212に接触し、走行操作レバーが中立位置から前進または後進方向に操作されると、機体が動き出してしまい、作業者は苗や肥料の積込作業を中断して機体を停止させる操作を行わなければならず、作業能率が低下すると共に、積込作業中の苗や肥料袋を拾う必要があり、労力が増大する。
また、苗や肥料の補充作業は圃場端で行うことが多く、機体が前進すると圃場外に機体が乗り出してしまい、機体を後進させる操作が余分に必要になり、作業能率がいっそう低下してしまう問題がある。
さらに、機体が後進して植え付けられた苗の上を移動すると、苗が押し潰されてしまい、苗を植え直さねばならず、作業者の労力がいっそう増大すると共に、苗の消費量が増えてしまう問題がある。
上記の構成では、肥料搬送台105を回動操作すると、カム119が操作検知スイッチ120に接触すると、走行操作レバー212が操作されてもHSTサーボモータ214が作動しなくなる構成としたことにより、誤って走行操作レバー212が操作されることがあってもHST211の出力が行われず、機体が前後進することが防止されるため、苗や肥料の積込作業が能率よく行える。
また、苗や肥料が落下することや、植え付けられた苗を機体が踏み潰すことを防止できるので、苗や肥料の回収作業や、潰された苗の植え直し作業が不要となるので、作業者の労力が軽減されると共に、無駄な苗の消費が防止される。
なお、苗や肥料の補充作業を行う際、圃場端に近付くと走行を停止させる前に肥料載置台105を機体前側に移動させることがあるが、このときカム119が操作検知スイッチ120を押して「入」操作すると、HSTサーボモータ214がHST211の出力軸を微速前進出力になるまで回転させる構成とすると、苗の載置作業準備と同時に走行速度を低下させることができるので、作業能率が向上する。
また、前記エンジン210の回転数を変更するスロットルモータ215を設け、前記操作検知スイッチ120が「入」になると、スロットルモータ215がエンジン210の回転数を停止しない下限の回転数(例:800rpm)まで自動的に低下させる構成としてもよい。
上記構成により、苗や肥料の補充作業中にエンジン210の回転数を自動的に極端に低下させることができるので、燃料消費を抑えることができる。
なお、前記操作検知スイッチ120が「切」になると、前記スロットルモータ215はエンジン210の回転数をアイドリング回転数(例:1800〜2000rpm)まで上昇させる構成とする。
あるいは、前記操作検知スイッチ120が「入」になったときのエンジン210の回転数を制御装置100に記憶し、該操作検知スイッチ120が「切」になると該制御装置100に記憶されたエンジン210の回転数に戻す構成としてもよい。
上記構成により、走行再開に必要なエンジン210の回転数を作業者が操作することなく得ることができるので、苗や肥料の積込作業から苗の植付作業に復帰するまでの時間が短縮され、作業能率が向上する。
特に、制御装置100に記憶されたエンジン210の回転数に復帰させることにより、圃場端等のぬかるみが強い圃場であっても、機体の移動が可能なエンジン210の回転数に自動的に復帰させることができるので、いっそう作業能率が向上する。
また、圃場での植付作業を行う植付作業状態と、圃場外で移動する際の走行状態と、HST211の出力にかかわらず走行伝動を遮断して苗植付部16に駆動力を供給する走行中立状態に切り替える副変速操作レバー216が、図1で示す通り、ボンネット13の下部側に設けられている。
前記肥料載置台105は、植付作業状態または走行中立状態で回動操作するものであるので、前記操作検知スイッチ120が「入」になると、前記副変速操作レバー216が走行状態に操作できなくする構成としてもよい。
上記の構成は、操作検知スイッチ120が「入」になると制御装置100がソレノイド217を一方向に作動させ、副変速レバー216の走行状態側への操作を規制する位置に第1規制ピン218を突出させる構成とする。
逆に、副変速操作レバー216が走行状態であるときには、肥料載置台105を回動させる状況はない。しかしながら、急停車時等に回動アーム104や支持アーム102が回動してしまうことが考えられるので、副変速操作レバー216を走行状態に操作すると、回動アーム104や支持アーム102を規制する第2規制ピン219を突出させる構成とするとよい。
上記により、苗や肥料の補充作業時に副変速操作レバー216に足等が接触して操作位置が走行状態に変更されることを防止できるので、走行再開時に走行速度が路上での走行速度になることが防止され、作業者が不快感を覚えることが防止されると共に、苗の植付位置が乱れることがなく、苗の植付精度が向上する。
また、副変速操作レバー216が走行中立状態に操作され、走行再開時に機体は前進せず、苗植付部16だけが動くことを防止できるので、苗植付部16に積載した苗が圃場に植え付けられることなく放出されることが防止され、無駄になる苗が減少する。
そして、副変速操作レバー216を走行状態に操作したときは、回動アーム104や支持アーム102の回動が規制されることにより、走行の加減速時に回動アーム104や支持アーム102が回動して肥料載置台105が機体の前方や側方に突出することを防止できるので、路上走行中に電柱や対向車等に接触することが防止され、安全な路上走行が可能となると共に、肥料載置台105の破損が防止される。
図32で示すのは、肥料載置台105の回動軌跡に沿う位置では、肥料袋を支持しない構成とした肥料載置台105の平面図である。
上記構成により、肥料載置台105を移動させる際、肥料載置台105の機体外側部が突出しなくなるので、肥料載置台105が壁等の障害物に接触することが防止され、肥料載置台105の破損が防止されると共に、接触の衝撃で肥料袋が落下することが防止され、肥料袋を拾う作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
上記構成では、肥料袋の大きさによっては、載置した肥料袋の一部が、重量によって除去部分に垂れ下がることになる。これにより、載置時の安定性は若干低下するものの、施肥装置17に肥料を補充する際、肥料袋のうち垂れ下がった部分を空けてその部分から肥料を排出させやすくなるので、肥料の補充開始時に作業者が肥料袋を持ち上げる必要が無く、作業者の労力が軽減される。