JP5625172B2 - 二酸化バナジウム微粒子、その製造方法、及びサーモクロミックフィルム - Google Patents
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(1)バナジウム化合物を過酸化水素水に含有させたバナジウム含有液を調製し、前記バナジウム含有液を0〜45℃の温度に調節してバナジウム酸化物を多孔質体として析出させ、該多孔質体を粉砕し、この粉砕されたバナジウム酸化物に還元処理及び加熱処理を施して得られたルチル型二酸化バナジウム結晶からなる微粒子であって、下記結晶性残存率が75%以上である二酸化バナジウム微粒子。
[結晶性残存率:ルチル型二酸化バナジウム結晶からなる微粒子の粉末X線回折(XRD)における(011)面のピーク強度(Ii)に対する、当該微粒子を水中にいれ85℃で100時間加熱を行った後における前記(011)面のX線ピーク強度(If)の比率(If/Ii)の百分率。]
(2)一次粒子の短径の平均粒径が20〜400nmであることを特徴とする(1)記載の二酸化バナジウム微粒子。
(3)メジアン径が50〜600nmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の二酸化バナジウム微粒子。
(4)サーモクロミック材料であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子を含有するサーモクロミックフィルム。
(6)バナジウム化合物を過酸化水素水に含有させたバナジウム含有液を調製する工程、
前記バナジウム含有液を0〜45℃の温度に調節してバナジウム酸化物を多孔質体として析出させる工程、
前記バナジウム酸化物を還元処理する工程、
前記還元処理を施したバナジウム酸化物に加熱処理を施す工程、及び
前記バナジウム酸化物を多孔質体として析出させた後の所定の時期にこれを粉砕する工程
を有することを特徴とする二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
(7)前記バナジウム酸化物を析出させるとき、前記バナジウム含有液のpHを0.5〜2.5の範囲で調節することを特徴とする(6)に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
(8)前記バナジウム化合物がバナジウムアルコキシドあるいは五酸化二バナジウムであることを特徴とする(6)または(7)に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
(9)前記過酸化水素水に、さらにタングステン化合物又はモリブデン化合物を含有させることを特徴とする(6)〜(8)のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
(10)前記過酸化水素水に含有させるタングステン化合物又はモリブデン化合物の量を、共存するバナジウム原子に対するタングステン原子及びモリブデン原子の総量で12原子%以下となる量にする(9)に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
(11)前記バナジウム酸化物の還元処理が、水素還元処理であることを特徴とする(6)〜(10)のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子。の製造方法。
(12)前記加熱処理が、真空加熱処理もしくは不活性ガス雰囲気下での加熱処理であることを特徴とする(6)〜(11)のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
二酸化バナジウム微粒子を水中にて85℃で100時間加熱処理を行い、加熱処理前後において当該微粒子の前記XRDによって得られる(011)面のX線ピーク強度(If)を測定し、加熱処理前のピーク強度(Ii)に対する加熱処理後のピーク強度の比率(If/Ii)の百分率。数式で表せば下記数式(1)のとおり。
[数式1]
[結晶性残存率(%)]=[(加熱処理後の(011)面のX線ピーク強度(If)(cps)]/[(加熱処理前の(011)面のX線ピーク強度(Ii)(cps))×100
このように、本発明の好ましい二酸化バナジウム微粒子は、その粒径が小さく、かつ比較的粒子径が揃っていることから、これを用いてフィルムとした場合、薄膜化、大型化が容易で、かつ高い可視光透過性を有するサーモクロミックフィルムを作製することができる。
本発明の製造方法では、まず、バナジウム化合物を過酸化水素水に含有させたバナジウム溶液を調製する。本発明に用いるバナジウム化合物としては、特に限定されないが、バナジウムアルコキシド、金属バナジウム、酸化バナジウム、バナジウム塩等が挙げられる。バナジウムは0価から5価の価数を取りうるが、いずれの価数でもかまわない。なかでも、バナジウムアルコキシド、及び酸化バナジウムが好ましい。バナジウムアルコキシドの具体例として、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、バナジウムトリノルマルプロポキシドオキシド、バナジウムトリメトキシドオキシド、バナジウムトリエトキシドオキシド等が挙げられる。また酸化バナジウムの具体例として、五酸化二バナジウム、三酸化二バナジウム、四酸化二バナジウム等が挙げられる。
また、バナジウム酸化物を析出させるときのバナジウム含有液のpHは、0.5〜2.5の範囲に調節することが好ましく、1.0〜2.0の範囲に調節することがより好ましい。pHの調節はアンモニア、水酸化アルカリ、アミン類等のアルカリ化合物、または酢酸、蟻酸などの有機酸や塩酸、硝酸などの無機酸等によって行うことができるが、生成物のコンタミを考慮した場合、加熱する工程において分解あるいは揮発されるアンモニア、アミン類、有機酸が好ましい。ただし、本発明においては、このときアルカリを添加するのはpH調整のためであり、アルカリで加水分解を行わないことが好ましい。
本発明において、加熱処理はルチル型を得ることができればよく、通常の方法で行うことができる。具体的には、真空加熱処理、不活性ガス雰囲気下での加熱処理、不活性ガスに還元ガスを混合させた雰囲気下での加熱処理が挙げられる。なかでも、真空下又は不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行うことが好ましく、不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行うことが特に好ましい。
加熱処理の温度及び時間は、特に限定されないが、VO2(B)からルチル型への結晶相変換が十分進行するように、380℃以上で1時間以上行うことが好ましく、500℃〜600℃で2〜3時間程度行うことがより好ましい。
析出物を粉砕する方法としては、通常の機械的・物理的な粉砕方法・装置を用いることができる。粉砕装置としては、例えばボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、サイクロンミル、ビーズミル、ハンマーミル、ピンミル等が挙げられる。
よって、本発明においては、前記過酸化水素水に含有させるタングステン化合物又はモリブデン化合物の量に特に制限はく、相転移温度の観点から、適宜選択すればよいが、実際上、共存するバナジウム原子に対するタングステン原子及び/又はモリブデン原子の量で12原子%以下となる量が好ましく、8原子%以下となる量がより好ましく、3原子%以下となる量が好ましい。ドープされたタングステン原子及び/又はモリブデン原子の量でいうと3原子%以下であることが好ましく、1〜2原子%であることがより好ましい。
本発明の製造方法では、バナジウム化合物を過酸化水素水に添加するのと同じ段階でタングステン化合物又はモリブデン化合物を添加することができるため、バナジウム化合物に対するタングステン化合物又はモリブデン化合物の比率を正確にコントロールすることができる。そのため、容易かつ的確に相転移温度をコントロールでき、所望の相転移温度を有するサーモクロミック材料を細かく作り分けて製造することができる。
本発明に用いるタングステン化合物としては特に限定されないが、ペンタエトキシタングステンなどのタングステンアルコキシド、三酸化タングステン、二酸化タングステンなどの酸化物、水酸化タングステン(タングステン酸)、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム水和物、五塩化タングステンや六塩化タングステンなどのタングステン塩などが挙げられる。本発明に用いるモリブデン化合物としては特に限定されないが、ペンタエトキシモリブデンなどのモリブデンアルコキシド、三酸化モリブデン、二酸化モリブデンなどの酸化物、ヘプタモリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン酸塩、水酸化モリブデン(モリブデン酸)、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム水和物、六塩化モリブデンなどのモリブデン塩などが挙げられる。
サーモクロミックフィルムとする場合、本発明の二酸化バナジウム微粒子の含有量は、フィルムの厚さ、用いる樹脂等の種類、フィルムの用途等によって異なり、特に制限されないが、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.01〜0.1質量部である。含有量が多すぎると、フィルムの可視光透過を低下させる原因となることがあり、少なすぎると十分なサーモクロミック効果を得られないことがある。
必要に応じ、可塑剤、滑剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、熱安定剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、および/または表面改質剤等を配合することもできる。
さらに、フィルムの片面または両面に樹脂層を設けて多層フィルムとすることができる。サーモクロミック材料はどの層に入れてもかまわない。多層フィルムは常法により、例えば、ドライラミネーション、ヒートラミネーション、インフレーション共押し出しにより作製することが出来る。また、樹脂にサーモクロミック材料を添加し塗工することも出来る。塗工方法として、ブレードコーティング、グラビアコーティング、ロッドコーティング、ナイフコーティング、リバースロールコーティング、キスコティング、スプレーコティング、オフセットグラビアコーティング、ディップコート、バーコート、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、エアナイフコーティング、マイヤーバーコーティング、およびスプレーコーティング等を用いることができる。
(1)粉末X線回折(XRD)
粉末X線回折装置(商品名:RAD−2、製造元:株式会社リガク、光源:銅 Kα)を用い、各スペクトルにおいて2θ=5〜60°の範囲を走査間隔0.01°、走査速度4°/min.の条件で試料を測定した。得られたXRDパターンを既知の単斜晶系二酸化バナジウム結晶のプロファイルと対比して同定した。また、(011)面に帰属される2θ=27.8°付近の(又は面間隔d=3.20付近の)X線ピーク強度を、劣化確認試験後のルチル型二酸化バナジウムの残存率の評価に用いた。二酸化バナジウムの残存率(%)は、劣化確認試験前のX線ピーク強度:If(cps)に対する、劣化試験後のX線ピーク強度Ii(cps)の比率とし、前記式(1)により求めた。なお、劣化確認試験は0.2gの微粒子を100gの蒸留水中に入れて行った。
走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:JSM−6390LA、製造元:日本電子株式会社)を用い、二酸化バナジウムの粒径・形状観察を行った。試料は全て真空蒸着装置(商品名:JFC−1600、製造元:日本電子株式会社)にて白金の蒸着(条件:白金ターゲット・試料間距離45mm、蒸着電流10mA、蒸着時間60秒)を行った。粒径の見積もりは高真空モード、加速電圧5〜15kV、観察倍率は5万倍にて任意の粒子50個について短径を測長し平均値を算出した。
(3)メジアン径
粒度分布測定(商品名:ナノトラックUPA、製造元:日機装株式会社)を用い、動的散乱法による粒度分布測定を行った。水50mLをマグネティックスターラーを用い攪拌しながらVO2またはWドープVO2粉末を0.05g分散させ測定サンプルとした。測定サンプルは長時間おくと沈殿を起こしてしまうため、粉末を分散させた後はすみやかに測定を行った。
35%過酸化水素水500mlにバナジウムトリイソプロポキシドオキシド25gを添加し、30℃で攪拌し、バナジウム含有溶液を得た。このバナジウム溶液を攪拌しながらpH1.8に調整し、35℃で15時間静置したところ、バナジウム酸化物が析出した。この析出物をSEM観察した。その結果、析出物は多孔質状の構造を有することが認められた。
得られたバナジウム酸化物を、スターミルラボスターミニ(アシザワファインテック株式会社製)を用いて粉砕し、水素気流中にて330℃で2時間加熱し、還元処理をした。還元処理後の粉末についてXRD測定を行った。その結果、得られた粉末は、ほぼすべてVO2(B)であることが確認された。
還元処理後のVO2(B)粉末を、真空条件下にて500℃で約3時間加熱した。真空加熱後の粉末についてXRD測定を行ったところ、ルチル型の二酸化バナジウムであることが確認された(図1)。得られたルチル型二酸化バナジウム微粒子をSEM観察した(図2)。SEM画像より求めた一次粒子の短径の平均が約260nmであった。また動的光散乱法のより求めたメジアン径は338nmであった。また、示差走査熱量測定(DSC)より求めた相転移温度は68℃であった。
バナジウム酸化物を析出させる際の析出温度を、35℃から25℃に変更した以外は実施例1と同様にして、ルチル型二酸化バナジウム微粒子を得た。実施例1同様、バナジウム酸化物(析出物)は多孔質状の構造を有しており、真空加熱後のSEM画像より求めた一次粒子の短径の平均は約220nm、また動的光散乱法のより求めたメジアン径は286nmであった。またXRD測定の結果、ルチル型二酸化バナジウムであることが確認された。
還元処理を、300℃〜370℃の温度範囲で変え、また2〜9時間の範囲で変えて加熱を行った以外は、実施例1と同様にして、ルチル型二酸化バナジウム微粒子を得た。この際、還元処理時の温度が330〜350℃前後であって、加熱時間が2〜4時間の場合が、最も効率よく二酸化バナジウムを得られることがわかった。
還元処理を、340℃、4時間で行い、真空加熱処理を350℃又は500℃、1時間で行った以外は、実施例1と同様にして、ルチル型二酸化バナジウム微粒子を得た。真空加熱処理の前後で、それぞれXRD測定を実施例1と同様に行った。結果を図3(a)〜(c)に示す。図3から、二酸化バナジウムの結晶形は、真空加熱処理前の段階(すなわち還元処理後の段階)では、ほぼ全てVO2(B)であるが(図3(a))、500℃で1時間真空加熱することで、ほぼ全てがルチル型へと移行することがわかる(図3(c))。350℃で1時間の真空加熱処理を行った場合は、わずかにルチル型への変化が見られた(図3(b))。
35%過酸化水素水100gに五酸化二バナジウム3.9gを添加し、30℃で攪拌し、バナジウム含有溶液を得た。このバナジウム溶液を攪拌しながらpH1.4に調整し30℃で15時間攪拌したところ、バナジウム酸化物が析出した。これを水素気流中にて330℃で2時間加熱し還元処理をした。還元処理後の粉末についてXRD測定を行ったところ、ほぼすべてVO2(B)であることが確認された。
還元処理後のVO2(B)粉末を、真空条件下にて500℃で約3時間加熱した。また得られた粉末のXRD測定を行ったところ、ルチル型二酸化バナジウムであることが確認された。得られたルチル型二酸化バナジウム微粒子をSEM観察した(図4)。SEM画像より求めた一次粒子の短径の平均が約100nm、また動的光散乱法のより求めた149nmであった。
35%過酸化水素水500gにバナジウムトリイソプロポキシドオキシドを25gとタングステンペンタエトキシド2.2gを添加、30℃で攪拌しバナジウム含有溶液を得た。このバナジウム溶液を攪拌しながらpH1.8に調整し30℃で15時間攪拌したところ、析出物が得られた。これを水素気流中にて340℃で4時間加熱し還元処理をした。還元処理後の粉末についてXRD測定を行ったところ、VO2(B)であることが確認された。
還元処理後の粉末を、真空条件下にて500℃で約3時間加熱した。真空加熱後の粉末のSEM画像より求めた一次粒子の短径の平均は110nm、また動的光散乱法のより求めたメジアン径は148nmであった。またXRD測定を行ったところ、ルチル型二酸化バナジウムであることが確認された。DSCより求めた相転移温度は37℃であった。ドープされたタングステンの量は1.35atm%であった(ICPにて測定)。
35%過酸化水素水500gに五酸化二バナジウムを9.8gとタングステン酸アンモニウム5水和物1.5gを添加、30℃で攪拌しバナジウム・タングステン含有溶液を得た。このバナジウム・タングステン溶液を攪拌しながら30℃で48時間攪拌したところ、析出物が得られた。これを水素気流中にて340℃で2時間加熱し還元処理をした。引き続き窒素気流中にて500℃で約2時間加熱した。加熱後の粉末のSEM画像より求めた一次粒子の短径の平均は約110nm、また動的光散乱法のより求めたメジアン径は144nmであった。またXRD測定を行ったところ、ルチル型の二酸化バナジウムであることが確認された。DSCより求めた相転移温度は36℃であった。ドープされたタングステンの量は1.39atm%であった(ICPにて測定)。
35%過酸化水素水500gにバナジウムトリイソプロポキシドオキシドを25gとモリブデンペンタエトキシド1.7gを添加、30℃で攪拌しバナジウム含有溶液を得た。このバナジウム溶液を攪拌しながらpH1.7に調整し30℃で15時間攪拌したところ、析出物が得られた。これを水素気流中にて340℃で4時間加熱し還元処理をした。
還元処理後の粉末を、真空条件下にて500℃で約3時間加熱した。真空加熱後の粉末のSEM画像より求めた1次粒子の短径の平均値は約180nm、また動的光散乱法のより求めたメジアン径は223nmであった。またXRD測定を行ったところ、ルチル型の二酸化バナジウムあることが確認された。DSCより求めた相転移温度は57℃であった。ドープされたタングステンの量は1.30atm%であった(ICPにて測定)。
比較例として、下記の製法によりシリカ微粒子に二酸化バナジウムを担持させたサーモクロミック材料を得た。
エタノール510ml、イオン交換水42ml、28%アンモニア水溶液5ml、およびテトラエトキシシラン42mlを混合し室温で72時間攪拌することによりシリカゲル微粒子分散液を得た。このシリカゲル微粒子分散液に1−ブタノール570mlを添加し、110℃で蒸留することにより溶媒置換を行なった。このシリカゲル微粒子分散液にバナジウムトリイソプロポキシドオキシド13.7gをイソプロパノール130mlに溶解したものを添加した。そして1時間攪拌後、溶媒を除去した。残渣を解砕後、400℃で2時間焼成し、引き続き水素気流中で450℃で2時間焼成することによりサーモクロミック材料を得た。
市販の二酸化バナジウム(株式会社高純度化学研究所製)を、下記の劣化確認実験に用いた。
35%過酸化水素水100gに五酸化二バナジウム2gを添加し20℃で攪拌し、バナジウム含有溶液を得た。このバナジウム溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウム0.5%溶液をpH2.0まで添加し、バナジウム酸化物を析出させた。そして1時間攪拌後溶媒を除去した。残渣を解砕後、400℃で2時間焼成し、引き続き水素気流中で450℃で2時間焼成することによりサーモクロミック材料を得た。なお、上記の方法で得られたものは、沈殿物の凝集性が高く粉砕しにくく、実際的な方法では粒子径を十分に小さくすることが難しかった。また、後述する耐劣化性にも劣っていた。
実施例1及び比較例1及び2で作製した二酸化バナジウム粉末0.2gを用いて、下記の二酸化バナジウム劣化確認試験を行った。
二酸化バナジウム粉末0.2g、及びイオン交換水100gを、容器の蓋にピンホールを開けたガラス製容器に入れ、蓋をした後、85℃の恒温装置にて100時間加熱した。二酸化バナジウムをろ別、乾燥後、XRD測定を行なった。結果を図6及び7に示す。
これに対し、図6、図7に示されるように、比較例では、時間の経過とともに二酸化バナジウムが減少し、その一方で二酸化バナジウムの酸化反応によってV6O13、V2O5が生成していることが確認された。
実施例1及び比較例1〜3で作製した二酸化バナジウムを試料として残存率、一次粒子の平均粒径、メジアン径をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
Claims (12)
- バナジウム化合物を過酸化水素水に含有させたバナジウム含有液を調製し、前記バナジウム含有液を0〜45℃の温度に調節してバナジウム酸化物を多孔質体として析出させ、該多孔質体を粉砕し、この粉砕されたバナジウム酸化物に還元処理及び加熱処理を施して得られたルチル型二酸化バナジウム結晶からなる微粒子であって、下記結晶性残存率が75%以上である二酸化バナジウム微粒子。
[結晶性残存率:ルチル型二酸化バナジウム結晶からなる微粒子の粉末X線回折における(011)面のピーク強度(Ii)に対する、当該微粒子を水中にいれ85℃で100時間加熱を行った後における前記(011)面のX線ピーク強度(If)の比率(If/Ii)の百分率。] - 一次粒子の短径の平均粒径が20〜400nmであることを特徴とする請求項1記載の二酸化バナジウム微粒子。
- メジアン径が50〜600nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化バナジウム微粒子。
- サーモクロミック材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子を含有するサーモクロミックフィルム。
- バナジウム化合物を過酸化水素水に含有させたバナジウム含有液を調製する工程、
前記バナジウム含有液を0〜45℃の温度に調節してバナジウム酸化物を多孔質体として析出させる工程、
前記バナジウム酸化物を還元処理する工程、
前記還元処理を施したバナジウム酸化物に加熱処理を施す工程、及び
前記バナジウム酸化物を多孔質体として析出させた後の所定の時期にこれを粉砕する工程
を有することを特徴とする二酸化バナジウム微粒子の製造方法。 - 前記バナジウム酸化物を析出させるとき、前記バナジウム含有液のpHを0.5〜2.5の範囲で調節することを特徴とする請求項6に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
- 前記バナジウム化合物がバナジウムアルコキシドあるいは五酸化二バナジウムであることを特徴とする請求項6又は7に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
- 前記過酸化水素水に、さらにタングステン化合物又はモリブデン化合物を含有させることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
- 前記過酸化水素水に含有させるタングステン化合物又はモリブデン化合物の量を、共存するバナジウム原子に対するタングステン原子及びモリブデン原子の総量で12原子%以下となる量にする請求項9に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
- 前記バナジウム酸化物の還元処理が、水素還元処理であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
- 前記加熱処理が、真空加熱処理もしくは不活性ガス雰囲気下での加熱処理であることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の二酸化バナジウム微粒子の製造方法。
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