JP5618136B2 - 樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、水蒸気処理した植物原料を用いた樹脂組成物及び成形体に関するものである。
従来、化学製品には石油などの化石資源を原料としていたが、近年、カーボンニュートラルの概念導入によりバイオマスブラスチックの需要が高まっている。そこで、包装資材、家電製品の部材、自動車用部材など、身の回りのプラスチック製品を植物由来樹脂(バイオプラスチック)に置き換える動きが活発化している。
前記植物由来樹脂の具体例としては、ジャガイモやサトウキビやトウモロコシ等の糖質を醗酵させて得られた乳酸をモノマーとし、これを用いて化学重合を行い作製したポリ乳酸:PLA(PolyLactic Acid)や、澱粉を主成分としたエステル化澱粉、微生物が体内に生産するポリエステルである微生物産生樹脂:PHA(PolyHydoroxy Alkanoate)、醗酵法で得られる1,3−プロパンジオールと石油由来のテレフタル酸とを原料とするPTT(Poly Trimethylene Telephtalate)等が挙げられる。
また、PBS(Poly Butylene Succinate)は、現在は石油由来の原料が用いられているが、今後においては、植物由来樹脂として作製する研究が開発されており、主原料の一つであるコハク酸を植物由来で作製する技術についての開発がなされている。
これらの植物由来原料を用いた樹脂は、電気/電子関係用部品、OA関連用部品または自動車部品に加え、便座・台所・風呂場まわり等のサニタリー分野、雑貨、建築資材などの幅広い分野に導入されている。特に、電気/電子関係用部品、OA関連用部品または自動車部品用途では、安全上の問題から耐熱性、難燃性が要求される。また、サニタリー分野では使われている製品において細菌や黴(かび)が繁殖すると、人体に悪影響を及ぼすことが指摘されており、抗菌性を付与することが好ましい。
上記植物由来樹脂はいずれも熱可塑性である(非特許文献1参照)。これら熱可塑性樹脂を電気/電子関係用部品、OA関連用部品または自動車部品として用いるには高強度、耐熱性、難燃性が求められる。しかし上記植物由来樹脂はガラス転移温度が低いため、耐熱性、難燃性の面で課題が多くあった。
また、電気/電子関係用部品、OA関連用部品または自動車部品を製造する手法として、圧縮成形、押出し成形、射出成形が挙げられる。特に射出成形は生産性に優れた成形手法であり、成形体を大量に製造するのに適している。
植物由来の耐熱性樹脂材料の原料としてリグニンが注目されており、生分解性樹脂材料にリグニンを添加させた複合材料が知られている。特許第4384949号公報では、セルロースとリグニン及び乳酸系樹脂からなる成形体が開示されている。また、特開2008−37022号公報では、リグノセルロース系樹脂組成物に生分解性樹脂を混練した樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらの複合材料では熱可塑性樹脂が複合されていることから、耐熱性が未だ十分ではなく、実用上問題を生じることがあった。
特許第4384949号公報 特開2008−37022号公報
土肥義治(編) 生分解性高分子材料、工業調査会 1990年発行
本発明は、環境負荷低減化の観点から、植物由来の木質系材料を利用した成形用の樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とする。特に植物由来であるリグニンを主原料とし、耐熱性に優れ、なおかつ難燃性、抗菌性を付与した成形体を提供することにある。
本発明は以下の通りである。
(1)(A)水不溶物と硬化剤を含み、前記(A)水不溶物の含有量が30〜95質量%である、樹脂組成物であって、前記(A)水不溶物が、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうち、水蒸気処理により生成した水溶性可溶物を取り除いた、リグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものであり、樹脂組成物中には前記水溶性可溶物を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
(2)(B)有機溶剤可溶物と、(C)有機溶剤不溶物と、硬化剤を含み、前記(B)有機溶剤可溶物の含有量が5〜80質量%であり、前記(C)有機溶剤不溶物の含有量が10〜90質量%である、樹脂組成物であって、前記(B)有機溶剤可溶物が、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうち、水蒸気処理により生成した水溶性可溶物を取り除いた、リグニンを含むセルロース繊維を主成分とする(A)水不溶物から有機溶剤により抽出して得た有機溶剤可溶リグニンを主成分とするものであり、前記(C)有機溶剤不溶物が、前記(A)水不溶物から前記(B)有機溶剤可溶物を除いた、有機溶剤に不溶な高分子リグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものであり、樹脂組成物中には前記水溶性可溶物を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
(3)(A)水不溶物と、(B)有機溶剤可溶物と、硬化剤とを含み、前記(A)水不溶物の含有量が10〜80質量%であり、前記(B)有機溶剤可溶物の含有量が10〜80質量%である、樹脂組成物であって、前記(A)水不溶物が、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうち、水蒸気処理により生成した水溶性可溶物を取り除いた、リグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものであり、前記(B)有機溶剤可溶物が、前記(A)水不溶物から有機溶剤により抽出して得た有機溶剤可溶リグニンを主成分とするものであり、樹脂組成物中には前記水溶性可溶物を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
(4)(A)水不溶物又は(C)有機溶剤不溶物のセルロース繊維の平均繊維長が0.01〜10mmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)(A)水不溶物、(B)有機溶剤可溶物、(C)有機溶剤不溶物のうちいずれかの硫黄原子含有率が2質量%以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)硬化剤がエポキシ樹脂である(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)硬化剤がイソシアネートである(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)硬化剤がアルデヒド又はホルムアルデヒドを生成するヘキサメチレンテトラミンである(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物
(9)(1)〜()のいずれかに記載の樹脂組成物を、圧縮、押出し、または、射出することにより成形してなる成形体。
本発明によれば、植物由来成分を主原料としたことにより、化石資源使用量の削減、及び二酸化炭素の排出量の低減効果が得られ、また、硬化剤を用いて硬化させることにより、高いガラス転移温度を有する樹脂組成物及び成形体を提供できた。
本発明によれば、前記効果に加え難燃性に優れた樹脂組成物(植物由来成形用樹脂)を提供できた。
本発明によれば、前記効果に加え抗菌効果を付与した樹脂組成物(植物由来成形用樹脂)を提供できた。
本発明によれば、植物原料から有効成分を取り出した後の廃棄物を大幅に低減でき、植物資源を有効に利用し、なおかつ強度に優れた樹脂組成物及び成形体を提供できた。
本発明における、水蒸気処理物、水溶性可溶物(水可溶物)、(A)水不溶物、(B)有機溶剤可溶物、(C)有機溶剤不溶物の概念を示す図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、(A)水不溶物と硬化剤を含み、前記(A)水不溶物の含有量が30〜95質量%である、樹脂組成物であって、前記(A)水不溶物が、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうち、水蒸気処理により生成した水溶性可溶物を取り除いた、リグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものであることを特徴とする。
植物は、一般的に、親水性の線状高分子の多糖類(セルロースとヘミセルロース)と疎水性の架橋構造リグニンの相互侵入網目(IPN)構造を形成している。前記(A)水不溶物は、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうちセルロース成分、ヘミセルロース成分及び水蒸気処理により生成した分解物等の水溶性可溶物を取り除いた水不溶物であり、ヒドロキシフェニルプロパン単位を基本単位とする架橋構造の高分子であるリグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものでもよい。なお、本発明において、主成分とは、通常、80質量%以上含むことを意味し、さらに90質量%以上含むことが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、(B)有機溶剤可溶物、あるいは、(C)有機溶剤不溶物を配合してもよい。また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じ、有機溶剤を配合してもよい。
本発明の樹脂組成物において使用される(B)有機溶剤可溶物は(A)水不溶物から溶媒抽出により取り出した有機溶剤可溶成分であり、有機溶剤可溶リグニンを主成分とする。また、(A)水不溶物から(B)有機溶剤可溶物を除いた成分を(C)有機溶剤不溶物とする。(C)有機溶剤不溶物は有機溶剤に不溶な高分子リグニンを含むセルロース繊維を主成分とする。図1は、本発明における、水蒸気処理物、水溶性可溶物(水可溶物)、(A)水不溶物、(B)有機溶剤可溶物、(C)有機溶剤不溶物の概念を示す図である。
また、(B)有機溶剤可溶物は、有機溶剤可溶リグニンを主成分とするが、すべてが有機溶剤可溶リグニンであることが好ましい。
以下、本発明において、特に断りが無い限り、リグニンとは、高分子リグニンと有機溶剤可溶リグニンの両方を意味する。
植物原料からリグニン又は水蒸気処理物を取得する方法としては、水蒸気爆砕法が好ましい。水蒸気爆砕法は高温高圧の水蒸気による加水分解と、圧力を瞬時に開放することによる物理的破砕効果により、植物を短時間に破砕するものである。この方法は硫酸法、クラフト法など他の分離方法と比較し、硫酸、亜硫酸塩等を用いることなく、水のみを使用するので、クリーンな分離方法である。
水蒸気爆砕の条件は特に限定しないが、通常、植物原料を水蒸気爆砕装置用の耐圧容器に入れ、3〜4MPaの水蒸気を圧入し、1〜40分間放置した後、瞬時に圧力を開放することにより爆砕する。また、この条件は原料により大きく変化する
この方法では、触媒等を使用せず水を用いて処理することから、リグニン中に硫黄原子をほとんど含まない(A)水不溶物、(B)有機溶剤可溶物及び(C)有機溶剤不溶物が得られる。通常、(A)水不溶物、(B)有機溶剤可溶物及び(C)有機溶剤不溶物中の硫黄原子の含有率は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
本発明で用いる(B)有機溶剤可溶物の抽出に用いる有機溶剤は、1種又は2種以上複数の混合のアルコール溶剤、アルコールと水を混合した含水アルコール溶剤、そのほかの有機溶剤、または、水と混合した含水有機溶剤を使用することができる。水にはイオン交換水を使用することが好ましい。水との混合溶剤の含水率は0質量%〜70質量%が好ましい。また、用いる溶剤を選択することにより、得られる(B)有機溶剤可溶物の重量平均分子量を制御することが可能である。
(B)有機溶剤可溶物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算値において、100〜7000が好ましく、さらに200〜5000が好ましく、500〜4000であることが特に好ましい。(B)有機溶剤可溶物の重量平均分子量が7000を超えると有機溶剤への溶解性が低下する。重量平均分子量が100未満であると有機溶剤可溶リグニンの構造を活かした樹脂組成物を得ることができない。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用した。
本発明はリグニンを主原料とし、リグニンが有する複雑な化学構造を活かすことにある。植物からリグニンを取り出す際に、低分子量としてしまうと、複雑なポリフェノール構造を活かすことができず、高い耐熱性が得られない。また、リグニンが有するフェノール性水酸基及びアルコール性水酸基を利用し、硬化剤を用いて3次元架橋構造を形成することにある。これにより、高いガラス転移温度を有する樹脂材料及び成形体を得ることが可能となった。また、硫酸等を用いた処理方法により得たリグニンは水酸基がスルホン酸塩に置換されているため、硬化剤との相溶性が悪く、反応性が低下し、低剛直な骨格が得られにくい。
また、フェノール類は燃焼の際、黒鉛を形成し易いため難燃性に優れ、抗菌作用を有することが知られている。本発明は植物から得られたこの複雑な構造をそのまま活かし、樹脂原料とすることで、難燃性、抗菌性を有する樹脂組成物及び成形体を提供するものである。
リグニンの原料に特に制限は無い。例えば、スギ、竹、稲わら、麦わら、ひのき、アカシア、ヤナギ、ポプラ、バガス、とうもろこし、サトウキビ、米穀、ユーカリ、エリアンサスなどが挙げられる。
植物原料からリグニンを分離し取り出す方法としては、クラフト法、硫酸法、爆砕法などが挙げられる。現在多量に製造されているリグニンの多くは、紙やバイオエタノールの原料であるパルプ製造時に残渣として得られる。容易に入手可能なリグニンとしては、主に硫酸法により副生するリグニンスルホン酸塩があげられる。硫酸を用いて処理することから、リグニンスルホン酸塩は多くの硫黄原子を含んでいる。
取りだした際、リグニン以外の例えばセルロースやヘミセルロースのような成分が、多少含まれていても良い。また、これらの(B)有機溶剤可溶物をアセチル化、メチル化、ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、硫化ナトリウムや硫化水素との反応等によって作製されたリグニン誘導体も含む。
本発明は(B)有機溶剤可溶物を得る際に残る(C)有機溶剤不溶物を有効に利用することにある。さらに、(B)有機溶剤可溶物と(C)有機溶剤不溶物を分離する前の(A)水不溶物をそのまま利用することで、製造工程を短縮できることにある。
本発明は(A)水不溶物と硬化剤を含む樹脂組成物であって、(A)水不溶物が30〜95質量%含むことを特徴とする樹脂組成物である。(A)水不溶物を、好ましくは40〜95質量%、また、さらに50〜90質量%含むことが好ましい。95質量%を超えると成形体の強度が低下するおそれがある。また、30質量%未満であると、化石資源使用量の削減効果、難燃性効果、抗菌性効果が得られないおそれがある。
本発明は(B)有機溶剤可溶物と(C)有機溶剤不溶物と硬化剤を含む樹脂組成物であって、(B)有機溶剤可溶物を5〜80質量%、前記(C)有機溶剤不溶物を10〜90質量%含むことを特徴とする樹脂組成物である。(B)有機溶剤可溶物を、好ましくは10〜80質量%、また、さらに20〜70質量%含むことが好ましい。また、(C)有機溶剤不溶物を、好ましくは20〜90質量%、また、さらに20〜80質量%含むことが好ましい。(B)有機溶剤可溶物が80質量%を超えると成形体の強度が劣化するおそれがある。また、5質量%未満であると、難燃性効果、抗菌性効果が得られないおそれがある。
本発明は(A)水不溶物と(B)有機溶剤可溶物と硬化剤を含む樹脂組成物であって、(A)水不溶物を10〜80質量%、前記(B)有機溶剤可溶物を10〜80質量%含むことを特徴とする樹脂組成物である。(A)水不溶物を、好ましくは20〜80質量%、また、さらに20〜70質量%含むことが好ましい。また、(B)有機溶剤可溶物を、好ましくは20〜80質量%、また、さらに20〜70質量%含むことが好ましい。(B)有機溶剤可溶物が80質量%を超えると成形体の強度が劣化するおそれがある。また、10質量%未満であると、難燃性効果、抗菌性効果が得られないおそれがある。
本発明は(A)水不溶物又は(C)有機溶剤不溶物を繊維形状とすることで、セルロース繊維強化樹脂組成物が得られ、強度に優れた樹脂組成物が得られる。セルロース繊維の平均繊維長は0.01〜10mmが好ましく、さらに0.05mm〜5mmが好ましく、0.1〜3mmであることが特に好ましい。樹脂組成物中の繊維の平均繊維長が0.01mm未満では機械的強度が低く、10mmを超えると成形しにくくなる。
なお、セルロース繊維の平均繊維長としては、例えば、試料(水不溶物又は有機溶剤不溶物)の一定量を採取して、カヤーニFS−200自動繊維長分布測定機(バルメット オートメーション社製)により繊維本数及び数平均繊維長を測定することができる。
本発明の樹脂組成物の構成の一つとしては、(A)水不溶物、(B)有機溶剤可溶物又は(C)有機溶剤不溶物と少なくとも1種の硬化剤とからなるものでもよい。さらに所望の各種添加剤成分、硬化促進剤、粘度調整剤、離型剤、可塑剤(鉱油、シリコンオイル等)、滑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、無機充填材、有機充填材などを配合することもできる。また、紙粉、木粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉等の粉末を添加しても良い。
(B)有機溶剤可溶物の抽出に用いられる有機溶剤、又は、本発明の樹脂組成物に含まれる有機溶剤としてはアルコール、トルエン、ベンゼン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランなどがあり、これらは二種類以上、混合して用いることができる。
アルコールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのモノオール系とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミンなどのポリオールが挙げられる。また、さらに好ましくは、天然物質から得られるアルコールであることが、環境負荷低減化の観点で好ましい。具体的には、天然物質から得たメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン、ヒドロキシメチルフルフラールなどが挙げられる。
本発明で用いる硬化剤としてエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂にはビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールSグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールADグリシジルエーテル型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシがある。また、さらに天然由来物質から得られたエポキシ樹脂であることが環境負荷低減化の観点で好ましい。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸エステル類、エポキシ化アマニ油、ダイマー酸変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
本発明で用いる硬化剤としてイソシアネートが挙げられる。イソシアネートには、脂肪族系イソシアネート、脂環族系イソシアネートおよび芳香族系イソシアネートの他、それらの変性体が挙げられる。脂肪族系イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられ、脂環族系イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。芳香族系イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。イソシアネート変性体としては、例えば、ウレタンプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートビューレット、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー、イソホロンジイソシアネートトリマー等が挙げられる。
本発明で用いる硬化剤としてアルデヒド又はホルムアルデヒドを生成する化合物が挙げられる。アルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。また、ホルムアルデヒドを生成する化合物としてはヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。特にヘキサメチレンテトラミンが好ましい。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することもできる。また、硬化性、耐熱性の面からヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
本発明で用いる硬化剤としてアクリル樹脂が挙げられる。アクリル樹脂としてはアクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルから選ばれる一つ以上のモノマーを単独または共重合したものが使用できる。
本発明の樹脂組成物は硬化促進剤を含んでも良い。硬化促進剤としては、シクロアミジン化合物、キノン化合物、三級アミン類、有機ホスフィン類、金属塩類、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類などが挙げられる。
本発明の成形体の製造方法は特に限定しないが、前記の樹脂組成物を、圧縮、押出し、または、射出することにより成形し成形体を製造する。なお、その形状は特に限定されない。例えば、射出成形機により、本発明の樹脂組成物を、ノズル温度80〜200℃、射出圧力1〜30MPa、型締圧力1〜30MPa、金型温度50〜200℃、硬化時間1分〜30分の条件で射出、成形し、さらに100〜250℃で1〜8時間熱処理し、十分に硬化させる。
また、例えば、80〜250℃に加熱したコンプレッション成形機の金型へ、本発明の樹脂組成物を充填し、1〜30MPa、1分〜60分間加圧し、硬化、成形し、さらに100〜300℃で1〜8時間、熱硬化処理し、十分に硬化させる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔水蒸気処理〕
〔実施例1〕
植物原料として竹を使用した。適当な大きさにカットした竹材を水蒸気爆砕装置の3Lの耐圧容器に入れ、3.5MPaの水蒸気を圧入し、4分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物(水蒸気処理物)を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物(水蒸気処理物)を水により洗浄して水溶性成分を除去した。その後、真空乾燥機で残存水分を除去し、リグニンを含むセルロース繊維を90質量%含む、(A)水不溶物を得た。
なお、前記セルロース繊維の平均繊維長を、カヤーニFS−200自動繊維長分布測定機(バルメット オートメーション社製)を用い、測定した結果、1mmであった。
〔硫黄原子の含有率測定〕
前記(A)水不溶物中の硫黄原子の含有率は燃焼分解−イオンクロマトグラフ法により定量した。装置は株式会社三菱化学アナリテック製自動試料燃焼装置(AQF−100)及び日本ダイオネクス株式会社製イオンクロマトグラフ(ICS−1600)を用いた。上記(A)水不溶物中の硫黄原子の含有率は0.1質量%であった。
〔樹脂組成物の作製〕
前記(A)水不溶物100gに硬化剤としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂20g(YDCN−700−10、東都化成株式会社製、エポキシ当量210g/eq.)、キュアゾール2PZ−CN1.2g(四国化成工業株式会社製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)を添加し、180℃の加熱ロールで3分混練した。得られた半硬化物を粉砕機により平均粒子径2mmの粒子(粉砕物)に粉砕し、(A)水不溶物を83質量%含む樹脂組成物を得た。
(成形体の作製)
上記樹脂組成物を熱硬化性用射出成形機により成形した。ノズル温度130℃、射出圧力13MPa、型締圧力14MPa、金型温度180℃、硬化時間3分で成形体を得た。さらに200℃で4時間処理し、十分に硬化させた。
(難燃性試験)
難燃性の評価としては、UL耐炎試験規格(UL94)に準じて行った。試験片として上記成形体を乾燥後、破砕して粉末を作製し、厚さ3mm、長さ130mm、幅13mmの型に充填し、180℃、2時間で加圧加熱成形させたものを使用した。水平燃焼試験にてHBレベル以上を難燃性ありとした。評価の結果、HBレベルを満たしていた。
(抗菌性試験)
JIS Z2801に準じて、黄色ぶどう球菌、大腸菌に対する抗菌性を評価した。試験片上に菌液(生菌数2.5〜10×10の5乗個/mL)0.4mLを播き、フィルムをかぶせ35℃±1℃、24時間培養した。試験片上の生菌数を測定するため、サンプリングし、サンプルを適宜希釈し、寒天平板培養にて35℃±1℃、48時間培養して生菌数を得た。
R=[Log(B/A)−log(C/A)]=[Log(B/C)]
R:抗菌活性値
A:無加工試験片における接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
抗菌活性値2以上を抗菌性ありとした。成形体の抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ3.0、2.4であった。
よって、得られた成形体は、難燃性、抗菌性ありであった。
(ガラス転移温度測定)
JIS K7244に準じて、粘弾性スペクトロメータ(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、EXSTARDMS6100)を用いて貯蔵弾性率及び損失正接を測定し(サンプルサイズ:長さ40mm、幅5mm、厚さ1mm、チャック間20mm、25℃〜350℃、昇温速度5℃/分、引張りモード、合成波(2Hz、1Hz、0.4Hz、0.2Hz、0.1Hz))、1Hz時の損失正接のピーク温度をガラス転移温度とした。成形体のガラス転移温度は165℃であった。
〔実施例2〕
実施例1で得た(A)水不溶物1000gにアセトン5Lを加え、20分攪拌した後、ろ過により(C)有機溶剤不溶物として有機溶剤に不溶な高分子リグニンを含むセルロース繊維を90質量%含む繊維物質を分離した。得られた濾液から抽出溶剤(アセトン)を除去し、(B)有機溶剤可溶物として有機溶剤可溶リグニンを300g得た。得られた(B)有機溶剤可溶物(有機溶剤可溶リグニン)は常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。なお、実施例1と同様にして、前記セルロース繊維の平均繊維長を測定した結果、1mmであった。
上記で得られた(B)有機溶剤可溶物(有機溶剤可溶リグニン)の水酸基当量は無水酢酸−ピリジン法により水酸基価、電位差滴定法により酸価を測定し求めた(下記の水酸基当量及びエポキシ当量の単位は、グラム/当量であって以下g/eq.で表わす。)。
アセトン抽出竹由来(B)有機溶剤可溶物の水酸基当量は140g/eq.であった。(B)有機溶剤可溶物のフェノール性水酸基とアルコール性水酸基のモル比(以下P/A比)を以下の方法で決定した。(B)有機溶剤可溶物2gのアセチル化処理を行い、未反応のアセチル化剤を留去し、乾燥させたものを、重クロロホルムに溶解させ、H−NMR(BRUKER社製、V400M、プロトン基本周波数400.13MHz)により測定した。アセチル基由来のプロトンの積分比(フェノール性水酸基に結合したアセチル基由来:2.2〜3.0ppm、アルコール性水酸基に結合したアセチル基由来:1.5〜2.2ppm)からモル比を決定したところ、P/A比は2.2/1.0であった。
(有機溶剤可溶リグニンの溶剤溶解性)
溶剤溶解性としては、前記有機溶剤可溶リグニン1gを、有機溶剤10mlに加えて評価した。常温(25℃)で容易に溶解した場合は○、50〜70℃で溶解した場合は△、加熱しても溶解しなかった場合を×として、評価した。溶剤群1としてアセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、溶剤群2としてメタノール、エタノール、メチルエチルケトンとして溶解性を評価した結果、溶剤群1ではいずれも○、溶剤群2ではいずれも△の判定であった。
元素分析法によって測定された上記(B)有機溶剤可溶物(有機溶剤可溶リグニン)中の硫黄原子の含有率は0.1質量%であった。さらに示差屈折計を備えたゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて有機溶剤可溶リグニンの分子量を測定した。多分散度の小さいポリスチレンを標準試料として用い、移動相をテトラヒドロフランとして使用し、カラムとして株式会社日立ハイテクノロジーズ製ゲルパックGL−A120SとGL−A170Sとを直列に接続して分子量測定を行った。その重量平均分子量は2400であった。また、(C)有機溶剤不溶物中の硫黄原子の含有率は0.1質量%であった。
〔樹脂組成物の作製〕
前記(B)有機溶剤可溶物(有機溶剤可溶リグニン)100g、前記(C)有機溶剤不溶物(繊維物質)100gに、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社)35g、硬化促進剤としてジラウリン酸ジブチルすず(IV)(和光純薬工業株式会社)2gを加え、70℃加熱ロールで2分混練した。得られた半硬化物を粉砕機により平均粒子径1mmの粒子(粉砕物)に粉砕し、(B)有機溶剤可溶物を42質量%、(C)有機溶剤不溶物を42質量%含む樹脂組成物を得た。
〔成形体の作製〕
180℃に加熱したコンプレッション成形機の金型へ前記に得られた樹脂組成物を充填し、15MPa、5分加圧し、硬化させ、成形体を得た。さらに200℃で4時間硬化処理し、十分に硬化させた。実施例1と同様にして成形体の難燃性を評価した結果HBレベルを満たしていた。また、抗菌性を評価した結果、成形体の抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ3.7、2.8であった。よって、得られた成形体は、難燃性、抗菌性ありであった。また、ガラス転移温度は220℃であった。
〔実施例3〕
〔樹脂組成物の作製〕
実施例1記載の(A)水不溶物50g、実施例2記載の(B)有機溶剤可溶物100g、ヘキサメチレンテトラミンを10g、硬化促進剤として酸化マグネシウムを1g、離型剤としてステアリン酸0.05gを添加し、90℃、加熱ロールで5分混練した。得られた半硬化物を粉砕機により平均粒子径2mmの粒子(粉砕物)に粉砕し、(A)水不溶物を31質量%、(B)有機溶剤可溶物を62質量%含む樹脂組成物を得た。
〔成形体の作製〕
実施例1と同様の条件で成形を行った結果、良好な成形体を得た。実施例1と同様にして成形体の難燃性を評価した結果HBレベルを満たしていた。また、抗菌性を評価した結果、成形体の抗菌活性値は大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、それぞれ5.3、4.5であった。よって、得られた成形体は、難燃性、抗菌性ありであった。ガラス転移温度は180℃であった。
〔比較例1〕
(B)有機溶剤可溶物(有機溶剤可溶リグニン)リグニンの代わりにリグニンスルホン酸塩(バニレックスN、日本製紙株式会社製)を用いた。元素分析によって測定された上記リグニンスルホン酸塩中の硫黄原子の含有率は3質量%であった。重量平均分子量を株式会社島津製作所製高速液体クロマトグラフィー(C−R4A)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。移動相をDMF+LiBr(0.06mol/L)+リン酸(0.06mol/L)として使用し、カラムとして株式会社日立ハイテクノロジーズ製ゲルパックGL−S300MDT−5を2つ直列に接続して分子量測定を行った。その重量平均分子量は11000であった。
前記リグニンスルホン酸塩200gにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂150g(YDCN−700−10、東都化成株式会社製、エポキシ当量210g/eq.)、キュアゾール2PZ−CN2g(四国化成工業株式会社製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)を添加し、加熱ロール(温度180℃)で3分混練した。その結果、リグニンスルホン酸とエポキシ樹脂が相分離し、均一な樹脂組成物が得られなかった。
〔比較例2〕
リグニンスルホン酸塩400gに硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社)70g、硬化促進剤としてジラウリン酸ジブチルすず(IV)(和光純薬工業株式会社)4gを加え、70℃加熱ロールで2分混練した。その結果、リグニンスルホン酸とイソシアネートが相分離し、均一な樹脂組成物が得られなかった。
〔比較例3〕
リグニンスルホン酸塩400gに硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを40g、硬化促進剤として酸化マグネシウムを2g、離型剤としてステアリン酸0.5gを添加し、90℃、加熱ロールで5分混練した。リグニンスルホン酸塩とヘキサメチレンテトラミンは反応性が悪く、良好な樹脂組成物が得られなかった。

Claims (9)

  1. (A)水不溶物と硬化剤を含み、前記(A)水不溶物の含有量が30〜95質量%である、樹脂組成物であって、前記(A)水不溶物が、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうち、水蒸気処理により生成した水溶性可溶物を取り除いた、リグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものであり、樹脂組成物中には前記水溶性可溶物を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
  2. (B)有機溶剤可溶物と、(C)有機溶剤不溶物と、硬化剤を含み、前記(B)有機溶剤可溶物の含有量が5〜80質量%であり、前記(C)有機溶剤不溶物の含有量が10〜90質量%である、樹脂組成物であって、前記(B)有機溶剤可溶物が、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうち、水蒸気処理により生成した水溶性可溶物を取り除いた、リグニンを含むセルロース繊維を主成分とする(A)水不溶物から有機溶剤により抽出して得た有機溶剤可溶リグニンを主成分とするものであり、前記(C)有機溶剤不溶物が、前記(A)水不溶物から前記(B)有機溶剤可溶物を除いた、有機溶剤に不溶な高分子リグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものであり、樹脂組成物中には前記水溶性可溶物を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
  3. (A)水不溶物と、(B)有機溶剤可溶物と、硬化剤とを含み、前記(A)水不溶物の含有量が10〜80質量%であり、前記(B)有機溶剤可溶物の含有量が10〜80質量%である、樹脂組成物であって、前記(A)水不溶物が、植物原料を水蒸気処理した水蒸気処理物のうち、水蒸気処理により生成した水溶性可溶物を取り除いた、リグニンを含むセルロース繊維を主成分とするものであり、前記(B)有機溶剤可溶物が、前記(A)水不溶物から有機溶剤により抽出して得た有機溶剤可溶リグニンを主成分とするものであり、樹脂組成物中には前記水溶性可溶物を含まないことを特徴とする樹脂組成物。
  4. (A)水不溶物又は(C)有機溶剤不溶物のセルロース繊維の平均繊維長が0.01〜10mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. (A)水不溶物、(B)有機溶剤可溶物、(C)有機溶剤不溶物のうちいずれかの硫黄原子含有率が2質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 硬化剤がエポキシ樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 硬化剤がイソシアネートである請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 硬化剤がアルデヒド又はホルムアルデヒドを生成するヘキサメチレンテトラミンである請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物を、圧縮、押出し、または、射出することにより成形してなる成形体。
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