JP3960811B2 - 木材用塗料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然原料であるリグノフェノール誘導体を使用した木材用の塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、塗装業界においては、環境汚染物質に対する規制などの動向を受け、地球環境に優しい塗料が求められている。また、住宅・家具業界では、ホルマリン、トルエン、キシレン、イソシアネート、フタル酸エステルなどの環境ホルモンによるアレルギーや化学物質過敏症などのいわゆるシックハウス症候群が社会問題になっていることに鑑み、植物から採取した天然原料を主体とする自然塗料が使用されつつある。
【0003】
この自然塗料は、環境汚染物質を含まないので、シックハウス症候群の発症を抑えることができるといった大きな利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、自然塗料は、乾燥硬化が遅いといった問題がある。従って、木質建材を工場で塗装する場合には、ライン塗装に対応することができず、大規模な乾燥室を必要とするといった問題がある。
また、現場で塗装する場合には、長時間濡れた状態にある塗膜にゴミが付着しやすいといった問題がある。
【0005】
また、この自然塗料は、耐汚染性、耐水性、耐熱水性、耐候性および耐摩耗性などに欠け、耐久性に乏しい。そのため、定期的なメンテナンスが必要であったり、ワックスがけした場合には、再塗装ができないといった問題もある。従って、外装材用の塗料としては勿論のこと、内装材用としても水回りに使用するものには適さない。また、床材に塗装した場合、塗膜が柔らかいので擦り傷がつきやすい。その上、天然原料を使用しているので価格が高いといった欠点がある。
【0006】
こうしたことから、自然塗料は、きわめて社会的要請が強いにも関わらず、使用実績は少なく、今後の改良が強く望まれてきた。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、乾燥時間が短く、耐久性に優れ、廉価である天然原料を使用した木材用塗料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の木材用塗料は、少なくとも、リグノフェノール誘導体と溶剤とを混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有することを特徴とする。
【0009】
リグノフェノール誘導体とは、天然原料であるリグニンをフェノール誘導体で誘導体化したものであり、クレゾール、キシレノール、ジメチルフェノール、プロピルフェノールなどによる誘導体があるが、リグノクレゾールが最も一般的である。
また、溶剤(有機溶剤)は、溶解性パラメーターが10前後であるアセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、ジオキサン、セロソルブなどが適当である。
【0010】
また、請求項2に記載の木材用塗料は、少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤および造膜性樹脂を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を70〜10重量%含有することを特徴とする。
【0011】
造膜性とは、木材の表面に膜を形成する性質を言うものである。リグノフェノール誘導体に造膜性を付与するためには、天然樹脂やその加工樹脂などを配合する必要がある。
造膜性樹脂としては、リグノフェノール誘導体の溶解性パラメーターは10前後であるため、これに相溶する天然樹脂およびその加工樹脂の溶解性パラメーターが9.4〜10.6のものの内、生分解性があり、塗料適性があるものが好ましい。従って、ロジン、マレイン化ロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジンおよびそれらのエステル、乾性油脂肪酸変性アルキッド樹脂、エポキシ樹脂脂肪酸エステル、ウレタン化油、トール油ピッチ、カシューナッツオイルが適当である。
【0012】
また、造膜性樹脂の配合量は、70〜10重量%、好ましくは50〜25重量%が望ましい。配合量が10%以下では造膜性に劣ると共に光沢が少なく、70%以上ではリグノフェノール誘導体の特長が減退してくるからである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の木材用塗料は、少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤、造膜性樹脂および撥水性材料を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を70〜10重量%含有することを特徴とする。
【0014】
撥水性材料としては、蝋やワックスが適当であり、その配合量は5重量%以下が適当である。なお、この撥水性材料は、塗膜に撥水効果を持たせると共に、光沢を与え、塗肌を調整するはたらきをするものが好ましい。
【0015】
また、請求項4に記載の木材用塗料は、少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤、造膜性樹脂、撥水性材料および顔料を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を70〜10重量%含有することを特徴とする。
着色剤としては無機顔料や染料が好ましい。
【0016】
またさらに、請求項5に記載の木材用塗料は、少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤、造膜性樹脂、撥水性材料、着色剤および研磨性材料を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を70〜10重量%含有することを特徴とする。
研磨性材料としては、タルク、ケイ酸、白亜、珪藻土、クレー、石膏が適当である。
【0017】
本発明の請求項1に記載の木材用塗料によれば、少なくとも、リグノフェノール誘導体と溶剤とを混合してなり、リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有しているので、従来の自然塗料と比較して乾燥時間が短く、耐久性に優れ、廉価でもある。
【0018】
この木材用塗料に使用するリグノフェノール誘導体は、森林資源のリグノセルロース複合体構造成分であるリグニンフェノール誘導体で誘導化されたリグノフェノールを応用したものである(リグノフェノールついては、特開平9−278904号、特開2000−72888、特開2001−261839等に詳細に記載されている)。
【0019】
当該リグノフェノール誘導体は、再利用する原料を任意の長さの分子に変換して資源を循環すると共に、セルロースと複合して安定な三次元構造を形成するものであり、本発明では、紫外線吸収能を有し、木質感に富む新しい循環型材料として、従来に存在しない、全く新しい塗料形成要素としての利用を図ったものである。
【0020】
このリグノフェノール誘導体は、木質繊維質との複合構造(IPN)を形成し易く、紫外線吸収性や疎水性(耐水性)にも優れる。従って、木材の木目に浸透して接着するので、乾燥時間が短いと共に、塗料自体および木材の耐久性を高めることができる。また、溶剤を混合しているので、乾燥時間をさらに短くすることができる。さらに、価格も従来の自然塗料と比較して安価である。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、70〜10重量%の造膜性樹脂を混合しているので、木材の表面に塗膜を形成することができる。従って、塗料および木材の耐久性をさらに向上させることができる。
【0022】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の作用効果に加えて、撥水性材料を混合しているので、撥水効果によって耐水性を高め、さらに耐久性を向上させることができる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加えて、着色剤を混合しているので、適宜の色に着色することができる。
【0024】
またさらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の記載の発明の作用効果に加えて、研磨性材料を混合しているので、研磨性を高めて塗装作業性をさらに向上させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係る木材用塗料は、少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤、造膜性樹脂、撥水性材料、着色剤および研磨性材料を混合してなる。
このリグノフェノール誘導体は、クレゾールにより誘導体化されたリグノクレゾールが適当であり、20〜40重量%含有するのが好ましい。
【0026】
ちなみに、リグノフェノール誘導体は、テレピン油、シトラール、エタノール、イソパラフィン、ラベンダー油などには溶解し難いので、これらを混合材料として使用するのは好ましくない。また、大豆油、亜麻仁油等の植物油やセラック、ダンマー、コーパルのような天然樹脂とも相溶しないので、これら材料も混合材料として好ましくない。
【0027】
また、造膜性樹脂としては、ロジンやマレイン化ロジンのエステルが適当であり、配合量は50〜25重量%が好ましい。これにより、造膜効果と光沢性に優れ、リグノフェノール誘導体の特長を減退させることなく維持できる塗料とすることができる。
【0028】
撥水性材料は、蝋やワックスを使用し、5重量%以下の配合が適している。これにより、撥水効果に優れ、光沢があり、塗膜の表面(塗肌)が滑らかに整えられた塗料とすることができる。
【0029】
着色剤としては、無機顔料を混合している。なお、着色剤と共に(あるいはそれとは別に)、種々の添加剤を配合することもできる。この添加剤としては、消泡剤、レベリング剤、沈殿防止剤、湿潤剤、ドライヤー、抗菌剤、防かび剤、木材保存剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などが挙げられる。
【0030】
また、研磨性材料として、タルクやケイ酸を使用している。当該研磨性材料を混合することによって、下塗塗料の研磨性を高めることができる。
【0031】
このような材料を配合した本実施形態に係る木材用塗料は、乾燥が早く、塗膜性能、仕上がり美観に優れ、従来の自然塗料に比べ経済的にも有利である。すなわち、主要成分であるリグノフェノール誘導体が木材内部に充分に浸透し、細胞壁との間でIPN構造を形成するため、塗膜の付着硬化が優れ、木材の目割れも防ぐ。
【0032】
また、この木材用塗料は、リグニンの紫外線吸収性により、耐候性に優れると共に、化学物質を主体とした塗料に見られるような環境汚染物質並びに環境ホルモンを含まないので、シックハウス症候群などの心配がない。
さらに、塗装した木材を廃棄および焼却しても環境ホルモンを大気中や土壌に残留させることがない。また、木目が鮮明で塗りむらのない美しい仕上がりが得られ、耐水性、耐熱水性、耐汚染性、耐候性、耐摩耗性、耐割れ性に優れ、また、他種の塗料との上塗り付着性も良好である。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を3つの実施例により説明し、それらと従来技術に係る自然塗料(3つの比較例)とを比較するための性能試験を行った。なお、本実施例において、「%」は重量%を示し、「部」は重量部を示す。
【0034】
(実施例1)
リグノクレゾール(リグノフェノール誘導体)40部を、アセトン(溶剤)30部、メチルエチルケトン(溶剤)30部、染料(着色剤)0.2部に溶解し、塗膜調整用シリコン0.01部を加え、十分に混合してカラークリヤー塗料とした。これは、浸透型塗料でオイルフィニッシュ(オーブンポア仕上げ)として用いた。
【0035】
(実施例2)
まず、リグノクレゾール(リグノフェノール誘導体)20部を、アセトン(溶剤)50部に常温でよく攪拌しながら溶解した。次に、マレイン化ロジンエステル粉末(造膜性樹脂)20部を前記溶液に少しずつ攪拌しながら加え溶解した。さらに、カルナバ蝋(撥水性材料)1部とメチルイソブチルカルビノール(溶剤)3部を混合溶解した溶液を加え、さらにトール油変性中油型アルキッド樹脂60%メチルエチルケトン溶液(造膜性樹脂)6部、オクチル酸石鹸ドライヤー液(乾燥促進剤)0.5部を追加し、よく混合し、淡黄褐色の上塗クリヤー塗料とした。
【0036】
(実施例3)
リグノクレゾール(リグノフェノール誘導体)30部を、アセトン(溶剤)40部に溶解し、これにエポキシ樹脂脂肪酸エステルカルビトール50%溶液(造膜性樹脂)27部、オクチル酸石鹸ドライヤー液(乾燥促進剤)1部、沈殿防止剤2部を混合し、上塗クリヤー塗料とした。
【0037】
(比較例1)
下記の原料を混合し、自然塗料クリヤーを作成し、供試した。
ロジン変性大豆油脂肪酸グリセリンエステル 80%
コーパル樹脂 4%
カルナバ蝋 1%
蜜蝋 0.5%
テレピン油 9%
α−ピネン 4.5%
オクチル酸石鹸ドライヤー液 1%
比重:0.89、粘度(フォードカップ):24秒
【0038】
(比較例2)
市販のA社自然塗料木工用クリヤーを用いた。
比重:0.86、粘度(フォードカップ):19秒、固形分51%
【0039】
(比較例3)
市販のB社自然塗料木工用クリヤーを用いた。
比重:0.85、粘度(フォードカップ):18.5秒、固形分53%
【0040】
[性能試験の内容]
ラジアータパインLVL合板に各塗料を3回塗布し、乾燥後、次の試験を行った。
1.硬化乾燥時間(JIS K5400準拠):ガラス板にアプリケーターにて4ミル(100ミクロンの厚み)に塗布した後、指で押さえて粘着がなくなる迄の時間を計測した。
2.塗膜硬さ(JIS K5400準拠):乾燥4日目および10日目に、鉛筆引っ掻き試験により硬さを測定した。塗膜破壊または塗膜削りかすの有無により判定した。
3.湿熱試験(JAS 特殊合板準拠):塗装面に沸騰水をこぼし、さらに沸騰水を入れたアルミ鍋を20分間置き、白化、光沢・色彩の変化、シミの有無などの塗膜外観の変化を調べた。
4.粘着性試験:塗装試験片を40℃・95%RH恒温恒湿槽で2時間加湿し、2cm×2cmの濾紙を置き、予め40℃に加熱しておいた500gの鉄製ブロックを載せて、更に30分放置し、濾紙の塗装面への付着状況をチェックした。
5.退色試験:塗装試験片をスガ試験機(株)製退色試験機FM−2型で48時間照射し、ミノルタ(株)製色差計CR−310型にて色差を測定した。
6.促進耐候試験:スガ試験機(株)製デユウサイクルサンシャインウエザオメーターWELL−SUN−Dc−B型に100時間および200時間暴露した後、再び、光沢および色彩を測定した。ウエザオメーター暴露条件は、300〜400nm紫外線照度が48W/m3、ブラックパネル温度が63±3℃、降雨状態であった。
7.寒熱繰返し試験(JAS特殊合板):80℃で2時間加熱した後、−20℃で2時間冷却するのを1サイクルとして、1サイクルのみ行った。
8.外観評価試験 4人が美観を5点満点で官能評価した。
試験結果を、表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
なお、この表1の「促進耐候試験」において、「100時間」における「△」は「白化」を意味し、「×」は「割れと白化」を意味する。また、「200時間」における「△」は「やや白化」を意味し、「×」は「割れ」を意味する。
【0043】
この試験結果から、本実施例に係る木材用塗料は、従来技術に係る自然塗料と比較して、そのすべての試験項目において優れていることを確認することができた。
【0044】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の木材用塗料によれば、リグノフェノール誘導体と溶剤とを混合してなり、リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有しているので、従来の自然塗料と比較して乾燥時間が短く、耐久性に優れ、廉価でもある。
従って、工場でのライン塗装に対応することができると共に、現場での塗装においても塗膜にゴミが付着し難いなど、従来の自然塗料の持つ問題点を解決することができる。なお、自然塗料と同様に、環境汚染物質を含まないので、シックハウス症候群の発症を抑えることもできる。
【0045】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、70〜10重量%の造膜性樹脂を混合しているので、木材の表面に塗膜を形成することができる。従って、塗料および木材の耐久性をさらに向上させることができる。
【0046】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の作用効果に加えて、5重量%以下の撥水性材料を混合しているので、撥水効果によって耐水性を高め、さらに耐久性を向上させることができる。
【0047】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加えて、着色剤を混合しているので、適宜の色に着色することができる。
【0048】
またさらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の記載の発明の作用効果に加えて、研磨性材料を混合しているので、研磨性を高めて下塗としての塗装作業性をさらに向上させることができる。
Claims (5)
- 少なくとも、リグノフェノール誘導体と溶剤とを混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有することを特徴とする木材用塗料。
- 少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤および造膜性樹脂を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を70〜10重量%含有することを特徴とする木材用塗料。
- 少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤、造膜性樹脂および撥水性材料を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を70〜10重量%含有することを特徴とする木材用塗料。
- 少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤、造膜性樹脂、撥水性材料および着色剤を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を70〜10重量%含有することを特徴とする木材用塗料。
- 少なくとも、リグノフェノール誘導体、溶剤、造膜性樹脂、撥水性材料、着色剤および研磨性材料を混合してなり、前記リグノフェノール誘導体を5〜70重量%含有すると共に、前記造膜性樹脂を10〜70重量%含有することを特徴とする木材用塗料。
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