JP5611529B2 - 表面改質フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、シンジオタクティックプロピレン重合体からなる表面改質フィルムならびにシンジオタクティックプロピレン重合体およびプロピレン・α-オレフィン共重合体を含
むプロピレン系重合体組成物からなる表面改質フィルムに関する。
ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)は、化学的に不活性であり、成形の容易性、さらに廃棄後の焼却処理も比較的容易であるなどの点から、フィルムとして広く使用されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂は、カルボキシル基などの化学的に反応性の高い官能基を有さないことから、他のフィルムとの接着性やオーバーコートなどの二次加工性に劣るという問題がある。
このような問題を解消するために、コロナ放電処理やプラズマ処理などによる表面改質が行われている。
表面改質効果を十分に有するポリオレフィンフィルムを提供する技術として、特許文献1では、アイソタクティックポリプロピレンからなるフィルム表面をコロナ処理する技術が報告されているが、アイソタクティック構造を持つため結晶性があり、酸素存在下でラジカルを発生させると、分子鎖間の結合の一部または全部が切れてしまい、機械特性の低下や着色、さらには低分子量成分が発生してしまい、濡れ性の指標である表面張力は向上するものの、低分子量成分が塗料および接着剤との接着の脆弱層となるため接着性が低下し、接着ムラなどを起こすという問題があった。さらに、重量減少も発生し、製品の重量が軽くなるという問題もあった。
特開2002−105224号公報
本発明は、表面改質を施しても重量減少が少なく、機械物性の低下も小さく、親水性および接着性に優れ、また透明性にも優れた表面改質フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のシンジオタクティックプロピレン重合体からなる表面改質フィルム、または、特定のシンジオタクティックプロピレン重合体およびプロピレン・α-オレフィン共重合体を含むプロピレン系重合体
組成物からなる表面改質フィルムが、重量減少が少なく、機械物性の低下も小さく、親水性および接着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明には以下の事項が含まれる。
〔1〕シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜10重量部と、
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜90重量部(ただし、(A)と(B)
との合計を100重量部とする。)と
を含むプロピレン系重合体組成物からなる表面改質フィルムであって、
該表面改質フィルムの表面張力が30mN/m以上であり、
該表面改質フィルムの表面改質前後の重量減少率が2%以下であり、
該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)が下記要件(a)を充足し、該プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)が下記要件(b)を充足することを特徴とする表面
改質フィルム。
(a):13C-NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分
率)が85%以上であり、DSCより求められる融点(Tm)が145℃以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90モル%(ただし、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)を超える量で含有する。
(b):プロピレンから導かれる構成単位を55〜90モル%の量で含有し、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モ
ル%(ただし、プロピレンから導かれる構成単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計を100モル%とする。)の量で含有し、JIS K 6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが
0.01〜100g/10分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
(b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率)が60%以上である。
(b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)と前記MFR(g/10分、230℃、2.16kg荷重)とが下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
〔2〕前記プロピレン系重合体組成物の(1)JIS K 7196に準拠して測定した針進入温度が100〜175℃であることを特徴とする〔1〕に記載の表面改質フィルム。
〔3〕前記プロピレン系重合体組成物の(1)JIS K 7196に準拠して測定した針進入温度が100〜175℃であり、(2)JIS K 6301に準拠して測定した引張弾性率が10〜2000MPaの範囲にあり、(3)1mm厚プレスシートの内部ヘイズ値が30%以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の表面改質フィルム。
〔4〕前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dL/gの範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)により求めた融解熱量(ΔH)が40mJ/mg以上であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の表面改質フィルム。
〔5〕前記プロピレン・α-オレフィン重合体(B)のゲルパーミエーションクロマト
グラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の表面改質フィルム。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の表面改質フィルムを用いて得られた包装用フィルム。
〔7〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の表面改質フィルムを最外層に有することを特徴とする、押出ラミネートフィルムまたはシート。
〔8〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の表面改質フィルムを用いて得られた金属蒸着フィルム。
〔9〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の表面改質フィルムを用いて得られたドライラミネートフィルム。
〔10〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の表面改質フィルムを表面に接着した成形体。
〔11〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の表面改質フィルムを少なくとも一層含むことを特徴とする積層体。
〔12〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の表面改質フィルムを少なくとも一層含むことを特徴とする、積層フィルムまたはシート。
本発明の表面改質フィルムは、表面改質による重量減少を抑制でき、機械物性の低下も抑制でき、かつ、フィルム表面に親水基を多く付与することができるため、親水性および接着性に優れ、また透明性にも優れる。
本発明の表面改質フィルムは、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜10重量部と、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜90重量部(ただし、(
A)と(B)との合計を100重量部とする。)とを含むプロピレン系重合体組成物からなり、該表面改質フィルムの表面張力が30mN/m以上であり、該表面改質フィルムの表面改質前後の重量減少率が2%以下であり、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)が下記要件(a)を充足し、該プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)が下記
要件(b)を充足することを特徴としている。
(a):13C-NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分
率)が85%以上であり、DSCより求められる融点(Tm)が145℃以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90モル%(ただし、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)を超える量で含有する。
(b):プロピレンから導かれる構成単位を55〜90モル%の量で含有し、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モ
ル%(ただし、プロピレンから導かれる構成単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計を100モル%とする。)の量で含有し、JIS K 6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが
0.01〜100g/10分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
(b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率)が60%以上である。
(b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)と前記MFR(g/10分、230℃、2.16kg荷重)とが下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
以下、本発明の表面改質フィルムについて具体的に説明する。
[シンジオタクティックプロピレン重合体(A)]
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、ホモポリプロピレンであってもよいし、プロピレンおよび炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを
除く)のランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよいが、好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレンおよび炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレ
ンを除く)のランダム共重合体であり、より好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレンおよび炭素原子数2〜10のα-オレフィン(プロピレンを除く)のランダム共重
合体であり、特に好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレン、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα-オレフィンのランダム共重合体であり、最も好ましくは、耐熱性
などの点からホモポリプロピレンである。
ここで、プロピレン以外の炭素原子数2〜20のα-オレフィンとしては、エチレン、
1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン
、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンなどが挙げられる。
プロピレンから導かれる構成単位は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の合計100モル%中、90モル%を超える量、好ましくは91モル%以上含まれている。また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)がプロピレン・α-オ
レフィンランダム共重合体である場合には、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロ
ピレンを除く)から導かれる構成単位を通常0.3〜7モル%、好ましくは0.3〜6モル%、より好ましくは0.3〜5モル%の量で含有している。
前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、NMR法により測定したシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率、ペンタッドシンジオタクティシティー)が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは94%以上である。rrrr分率が上記の範囲にあると、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、成形性、耐熱性および透明性に優れ、結晶性ポリプロピレンとしての特性が良好なものとなる。なおrrrr分率の上限は特にはないが、通常は、例えば99%以下である。
また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)を用いることで、結晶化が抑制され、低結晶化および微細球晶化が起こるため、得られる本発明の表面改質フィルムは透明性の高いものとなる。さらに、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)から得られるフィルムは、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の立体構造の特徴から、コロナまたはプラズマによる表面処理を持続的に行うことによる低分子量成分の発生を抑制することができ、機械物性の低下も抑制でき、表面が高度に親水化された表面改質フィルムが得られる。例えば、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の代わりにアイソタクティックプロピレン重合体から得られるフィルムに表面張力が30mN/m以上になるよう表面改質を行った場合、低分子量成分の発生量が多く、表面改質後は重量が減少し、重量減少率は3%以上と高くなる。また、表面改質フィルム表面にも低分子量成分が残存し、接着の際に脆弱層となり接着性を低下させる。これに対し、本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、上記の特徴を有しているため、低分子量成分の発生が抑制され、表面改質後の重量減少も小さく、表面改質前後の重量減少率が2%以下、明確には1%以下である。したがって、本発明の表面改質フィルムは表面改質後、フィルム表面に残存する低分子量成分が低減され、十分な接着性を有する。本発明の表面改質フィルムの表面張力は30mN/m以上であるため、アイソタクティックプロピレン重合体で発生するような、低分子量成分による接着ムラなどを起こさない。
このシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)は、以下のようにして測定される。
rrrr分率は、13C-NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続し
てシンジオタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求められる。
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw…(1)
NMR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-500型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は10,000回以上とする。
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)を135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.1〜10dL/g、より好ましくは0.5〜10dL/g、さらに好ましくは0.5〜8dL/g、よりさらに好ましくは0.95〜8dL/g、特に好ましくは1〜8、さらに特に好ましくは1.4〜8dL/g、最も好ましくは1.4〜5dL/gである。極限粘度[η]値が上記の範囲にあると、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、良好な流動性を示すため、他の成分と配合しやすく、得られる表面改質フィルムは機械強度に優れたものとなる。
さらに、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)測定により得られる融点(Tm)は、145℃以上、好ましくは147℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは155℃以上であり、特に好ましくは156℃以上である。なお、Tmの上限は特にはないが、通常は、例えば170℃以下である。また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)測定により得られる融解熱量(ΔH)は、好ましくは40mJ/mg以上、より好ましく
は45mJ/mg以上、さらに好ましくは50mJ/mg以上、特に好ましくは52mJ/
mg以上、最も好ましくは55mJ/mg以上である。
示差走査熱量計(DSC)測定は、例えば、次のようにして行われる。試料5.00m
g程度を専用アルミパンに詰め、パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC
7を用い、30℃から200℃までを320℃/minで昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から30℃までを10℃/minで降温し、30℃でさらに5分間保持したのち、次いで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線から融点(Tm)および融解熱量(ΔH)を求める。なお、DSC測定時に、複数のピークが検出される場合は、最も高温側で検出されるピークを、融点(Tm)と定義する。
融点(Tm)および融解熱量(ΔH)が上記の範囲にあるシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、成形性、耐熱性および機械特性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好である。融点(Tm)が上記の範囲にあるシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、後述するシンジオタクティックプロピレン重合体(A)の製造方法において触媒系および重合条件を設定することにより製造される。
前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、架橋メタロセン化合物を重合触媒として使用した重合方法によって製造することができる。具体的には、国際公開第2006/123759号パンフレットに記載された方法により製造することができる。
また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下である。
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計100
重量部中、100〜10重量部、好ましくは100〜15重量部、特に好ましくは100〜20重量部含まれる。シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の含有量が上記の範囲にあると、耐熱性および機械強度の観点から好ましい。
[プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)]
本発明に係るプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)はプロピレンから導かれる構
成単位を55〜90モル%の量で含有し、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピ
レンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モル%の量で含有する。
具体的には、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)が(A)および(B)の合計100重量部中、50重量部以上含まれる場合、プロピレン・α-オレフィン共重合体
(B)はプロピレンから導かれる構成単位を55〜90モル%、好ましくは55〜85モル%、より好ましくは60〜85モル%、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピ
レンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モル%、好ましくは15〜45モル%、より好ましくは15〜40モル%含有する。一方、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の含有量が(A)および(B)の合計100重量部中、10重量部以上50重量部未満である場合、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)はプロピレンから導かれ
る構成単位を55〜90モル%、好ましくは65〜85モル%、より好ましくは70〜85モル%、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成
単位を10〜45モル%、好ましくは15〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%含有する。ただし、プロピレンから導かれる構成単位と、炭素原子数2〜20のα-オ
レフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計は100モル%である。
炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)としては、エチレン、3-メチル-1-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-
オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデ
センおよび1-エイコセンなどが挙げられる。このうち、エチレン、1-ブテン、1-ヘキ
セン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましく、エチレンがより好ましい。
上述したように、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)としては、プロピレン・
エチレン共重合体を用いるのが好ましいが、プロピレン・エチレン共重合体以外に、プロピレンから導かれる構成単位と、エチレンから導かれる構成単位と、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンの中から選ばれる少なくとも1種のモノマー(以下「HAOコモノマー」ともいう。)から導かれる構成単位とからなり、エチレンから導かれる構成単位の割合(モル%)がHAOコモノマーから導かれる構成単位の割合(モル%)よりも多いプロピレン・エチレン・HAO共重合体を用いてもよい。この場合、プロピレン・エチレン・HAO共重合体は、プロピレンから導かれる構成単位を好ましくは55〜85モル%、より好ましくは60〜85モル%、エチレンおよびHAOコモノマーから導かれる構成単位を好ましくは15〜45モル%、より好ましくは15〜40モル%含有する。なお、プロピレンから導かれる構成単位およびエチレンおよびHAOコモノマーから導かれる構成単位の合計は100モル%である。
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)を構成する成分が上記の範囲にあるとき、
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、耐熱性、透明性および耐衝撃性のバランスに
特に優れる。
本発明に係るプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、JIS K 6721に準
拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが0.01〜100g/分、好ま
しくは0.02〜100g/10分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
(b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr)が60%以上である。
(b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)と、JIS
K 6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFR(g/10分)とが下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
まず、要件(b−1)について以下に説明する。
(b−1):プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の13C−NMR法により測定
したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率、トライアッドシンジオタクティシティー)は60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。rr分率が上記の範囲にあると、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、シンジオ
タクティックプロピレン重合体(A)との相溶性が良好なものとなる。また、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)のrr分率が上記の範囲にあると、プロピレン系重合体
組成物を押出成形して得たフィルムにコロナまたはプラズマによる表面処理を持続的に行うことによる低分子量の発生を抑制でき、機械物性の低下も抑制でき、表面が高度に親水化された表面改質フィルムが得られる。なお、rr分率が上記の範囲より小さいプロピレン・α-オレフィン共重合体を用いたプロピレン系重合体組成物の表面張力を30mN/
m以上になるよう表面改質を行った場合、低分子量成分の発生量が多く、表面改質後は重量が減少し、重量減少率は3%以上と高くなる。また、表面改質フィルム表面にも低分子量成分が残存し、接着の際に脆弱層となり接着性を低下させる場合がある。これに対し、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、上記の特徴を有しているため、低分子量
成分の発生が抑制され、表面改質後の重量減少も小さく。表面改質前後の重量減少率が2%以下、明確には1%以下である。したがって、本発明の表面改質フィルムは、表面改質後、フィルム表面に残存する低分子量成分が低減され、十分な接着性を有する。また、本発明の表面改質フィルムの表面張力は30mN/m以上であるため、rr分率が上記の範囲より小さいプロピレン・α-オレフィン共重合体を用いたプロピレン系重合体組成物で
発生するような、低分子量成分による接着ムラなどを起こさない。
要件(b−1)を満たす重合体は、例えば、シンジオタクティックポリプロピレン(A)を製造可能な触媒の存在下でプロピレンとα−オレフィンとを共重合して得ることもできるし、後述する国際公開第2006/123759号パンフレットに記載された方法を用いて製造することもできる。
rr分率は、13C-NMRスペクトルにおけるPrr(プロピレン単位が3単位連続して
シンジオタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(2)により求められる。
rr分率(%)=100×Prr/Pw …(2)
ここで、mr由来の吸収(プロピレン単位が3単位のうち、少なくともシンジオタクテ
ィック結合およびアイソタクティック結合の両方に由来する吸収;Pmr(吸収強度)の決定に用いる)、rr由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収;Prr(吸収強度)の決定に用いる)またはmm由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してアイソタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収;Pmm(吸収強度)の決定に用いる)と、コモノマーに由来する吸収とが重なる場合には、コモノマー成分の寄与を差し引かずにそのまま算出する。
具体的には、特開2002-097325号公報の[0018]〜[0031]段落に
記載された「シンジオタクティシティパラメータ(SP値)」の求め方の記載のうち、[
0018]〜[0023]段落に記載された、第1領域、第2領域および第3領域のシグナ
ルの積算強度から上記式(2)を用いて計算することにより求める。
なお、本発明では、rr1値、具体的には、特開2002-097325号公報の[0018]〜[0031]段落に記載された「シンジオタクティシティパラメータ(SP値)」の求め方に従って求めた値が、60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。rr1値とは、前記rr値の計算において、mr由来の吸収、rr由来
の吸収またはmm由来の吸収と、コモノマーに由来する吸収とが重なる場合には、コモノマー成分の寄与を差し引いたものである。
rr値およびrr1値の測定において、13C−NMR測定は、例えば、次のようにして
行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-400型N
MR測定装置を用い、温度120℃、積算回数は8,000回以上の条件で13C-NMR測定を行う。
次に要件(b−2)について説明する。
(b−2):前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、135℃、デカリン
中で測定した極限粘度[η](dL/g)と、JIS K 6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFR(g/10分)とが下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
好ましくは下記の関係式を満たす。
1.80×MFR(-0.20)≦[η]≦2.50×MFR(-0.19)
上記の関係式を充足するプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、シンジオタク
ティックプロピレン重合体(A)との相溶性が良好なため好ましい。
上記式を満たすプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、例えばシンジオタクテ
ィックプロピレン重合体を製造可能な触媒を使用して、プロピレンとα−オレフィンとを共重合してもよいし、その他の触媒を用いて重合してもよい。このようにして得られたプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)はシンジオタクティックプロピレン重合体(A
)との相溶性が良好なものとなる。
要件(b−2)を満たすプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、従来のアイソ
タクティックプロピレン系共重合体と比べて、極限粘度[η]は同一であるが、MFR値が高い。
これは、「Macromolecules」1998年、第31巻、p.1335−1340に記載されるように、アイソタクティックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文では、Me=6900(g/mol)と報告されている)と、シンジオタクティックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文では、Me=2170(g/mol)と報告されている)との違いに起因すると考えられる。すなわち、[η]が同一の場合、シンジオタクティック構造を持つことによって、アイソタクティック構造を有する材料と比べて絡み合い点が多くなり、MFR値が高くなると考えられる。
以上のように、要件(b−1)および(b−2)のうち、いずれか一つ以上を満たすプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)は、アイソタクティック構造とは異なった立体規則性であるシンジオタクティック構造を有するものと考えられる。このためにプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は(A)成分と良好な相溶性を示すものと考えられる
なお、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の好ましい態様であるプロピレン・
エチレン共重合体やプロピレン・エチレン・HAO共重合体においては、上記要件(b−1)および(b−2)のいずれも満たすことが好ましい。
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の135℃、デカリン中で測定した極限粘
度[η]は、通常0.1〜10dL/g、好ましくは0.5〜10dL/g、より好ましくは0.5〜7.0dL/gである。
このプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、単一のガラス転移温度を有し、示
差走査熱量計(DSC)測定により得られるガラス転移温度(Tg)が、通常は0℃以下であることが好ましい。プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)のガラス転移温度(
Tg)が上記の範囲にあると、プロピレン系重合体組成物は耐寒性および低温特性に優れる。
示差走査熱量測定は、例えば次のようにして行われる。試料10.00mg程度を専用
アルミパンに詰め、セイコーインスツルメント社製DSCRDC220を用い、30℃から200℃までを200℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から−100℃までを10℃/分で降温し、−100℃でさらに5分間保持した後、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より前記ガラス転移温度(Tg)を求める。
また、このプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)のゲルパーミエーションクロマ
トクラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、架橋メタロセン化合物を重合触媒
として使用した重合方法によって製造することができる。具体的には、国際公開第2006/123759号パンフレットに記載された方法により製造することができる。
本発明で用いられるプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、シンジオタクティ
ックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計1
00重量部中、0〜90重量部、好ましくは0〜85重量部、より好ましくは0〜80重量部含まれる。プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量が上記の範囲にある
と、耐熱性および機械強度の観点から好ましい。
[アイソタクティックポリプロピレン]
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オ
レフィン共重合体(B)を含むプロピレン系重合体組成物には、必要に応じてアイソタクティックポリプロピレンが含まれてもよい。アイソタクティックポリプロピレンを含有することにより、得られる表面改質フィルムの機械強度を高くすることができる。
アイソタクティックポリプロピレンとしては、商業的に入手できるものなどを特に制限なく使用することができるが、13C−NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率が通常0.9以上、好ましくは0.95以上のポリプロピレンを使用することができる。
アイソタクティックポリプロピレンの具体例としては、プロピレン単独重合体あるいはプロピレンと炭素原子数が2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)との共重合体が挙げられる。炭素原子数が2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが挙げられる。なかでも、エチレンおよび炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位は、アイソタクティックポリプロピレン中に通常40モル%以下、好ましくは20モル%以下の割合で含まれる。
アイソタクティックポリプロピレンのASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は通常0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分の範囲である。
なお、このアイソタクティックポリプロピレンは、例えば(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体からなるチーグラー触媒系を用いて重合することにより製造することができる。またメタロセン触媒を用いても同様に製造することができる。
本発明で用いられるアイソタクティックポリプロピレンとしては、チーグラー触媒で製造されたポリプロピレン共重合体の中では、耐白化性および耐衝撃性のバランスに優れるプロピレン・エチレンランダム共重合体およびプロピレン・エチレンブロック共重合体が特に好ましい。
[その他の成分]
本発明に係るプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、有機過酸化物および酸化防止剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合してもよい。
[プロピレン系重合体組成物]
上述のようにして得られたプロピレン系重合体組成物は、成形性、耐熱性、透明性および柔軟性に優れ、さらに耐傷付き性に優れる。
ここで、成形性に優れるとは、射出、インフレーション、ブロー、押出またはプレス等の成形を行う場合、溶融状態から固化するまでの時間が短いことを示す。すなわち、成形性がよい場合、成形サイクル性、形状安定性および長期生産性などに優れる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物のJIS K7196に準拠して測定した針進
入温度(TMAにより求められる軟化点ともいう。)(以下「物性(1)」ともいう。)は好ましくは100〜175℃であり、より好ましくは105〜165℃、特に好ましくは110〜165℃である。シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の配合比を調節することにより、針進入温度が上記
範囲にあるプロピレン系重合体組成物を得ることができる。以下に針進入温度の測定方法を示す。
セイコー社製SS−120またはTA Instrument社製Q−400を用いて、昇温速度5℃/分の条件下で、1.8mmφの平面圧子を圧力2Kgf/cm2で1m
m厚プレスシート試験片に押し付け、TMA曲線から針進入温度(℃)を求めた。
物性(1)を満たすとき、本発明の表面改質フィルムは優れた耐熱性を有するので好ましい。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物のJIS K 6301に準拠して測定した引張弾性率(以下「物性(2)」ともいう。)は好ましくは10〜2000MPa、より好ましくは15〜1500MPa、特に好ましくは200〜1000MPaである。以下に引張弾性率の測定方法を示す。
JIS K 6301に準拠して、1mm厚プレスシートより、ダンベル状JIS3号試験片を打ち抜き、評価試料とした。測定には、例えば、インストロン社製引張試験機Inston1123を用いて、23℃で、スパン間:30mm、引張り速度30mm/minで測定し、3回の平均値をとった。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物の内部ヘイズ値(以下「物性(3)」は、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。以下に内部ヘイズの測定方法を示す。
1mm厚プレスシート試験片に成形し、該フィルムを日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-20D」にて測定し、2回の平均値をとった。
物性(1)、物性(2)および物性(3)を同時に満たすとき、本発明の表面改質フィルムは、優れた耐熱性および透明性を有するので、より好ましい。
なお、針進入温度、引張弾性率および内部ヘイズ値の測定で使用したプレスシート試験片は、プレス成形機にて200℃で5〜10分余熱後、10MPa加圧下で1〜2分で成形した後、10MPaの加圧下で20℃に冷却して得たものである。
上記のプロピレン系重合体組成物の場合、示差走査熱量計(DSC)により110℃における等温結晶化測定から求められる半結晶化時間(t1/2)(以下「物性(4)」とも
いう。)は通常1000sec以下、好ましくは500sec以下である。本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、特定のシンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)を含むことにより、t1/2が従来と比べて
飛躍的に向上しており、通常用いられるアイソタクティックポリプロピレンなどと同様の成形法で成形することができる。
なお、等温結晶化測定により求められる半結晶化時間(t1/2)とは、等温結晶化過程
でのDSC熱量曲線とベースラインとの間の面積を全熱量とした場合、50%熱量に到達した時間である(新高分子実験講座8高分子の物性(共立出版株式会社)参照)。半結晶
化時間(t1/2)測定は次のようにして行われる。すなわち、試料5.00mg程度を専用アルミパンに詰め、パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、3
0℃から200℃までを320℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から等温結晶化温度110℃までを320℃/分で降温し、110℃に温度を保持して得られたDSC曲線から得たものである。半結晶化時間(t1/2)は110℃の等温結晶化
過程開始時間(200℃から110℃に到達した時刻)をt=0として求めた。本発明で用いられるプロピレン系重合体組成物は上述したようにしてt1/2を求めることができる
が、110℃で結晶化しない場合は、便宜的に110℃以下の等温結晶化温度で測定を数点実施し、その外挿値より半結晶化時間(t1/2)を求める。
前述の物性(1)〜(3)に加えて、物性(4)を満たすとき、本発明の表面改質フィルムは、優れた耐熱性、透明性および成形性を有するので、特に好ましい。
〔表面改質フィルム〕
本発明の表面改質フィルムは、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)および必要に応じてアイソタクティックポリプロピ
レンまたは各種添加剤を含むプロピレン系重合体組成物を用いてフィルムを形成させた後、表面親水化処理することにより得られる。
上記フィルムは、本発明に係るプロピレン系重合体組成物を、押出成形、カレンダー成形およびプレス成形などにより、フィルム状に成形したものである。上記フィルムは単層フィルムであってもよいし、性質の異なる2種類以上のフィルムが積層した積層フィルムであってもよい。積層フィルムの場合、各層を形成するフィルムは、要求される性能に応じて種々の組み合わせで用いられる。
上記フィルムの表面処理方法としては、例えばラジカル発生を伴う公知の方法を制限なく用いることができる。具体的には、乾式処理方法として、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、電子線処理、放射線処理、粗面化処理、コロナ処理およびプラズマ処理などが挙げられる。また、湿式処理として、化学薬品処理、プライマー処理、ポリマーコーティング、電着、および触媒によるグラフトなどが挙げられる。なかでも、コロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、オゾン処理、化学薬品処理、プライマー処理、電着、および触媒によるグラフトが好ましく、より好ましくは酸素などのガスの存在下に、コロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、オゾン処理、プライマー処理および電着する方法が用いられる。
コロナ処理による方法によれば、フィルム表面に選択的にラジカルが発生し、発生したラジカル部分と酸素との結合により極性の高いヒドロキシル基やカルボキシル基が生成する。処理時間および必要な電力については特に制限はないが、著しく大きな電力量で処理した場合、フィルム表面の劣化および粗さの増大を引き起こすことがあるため、大気圧、大気中でのコロナ放電電力量は、通常0.1〜10.0W/cm2、好ましくは0.1〜
5.0W/cm2である。
プラズマ処理による方法によっても、コロナ処理と同様に、フィルム表面に選択的にラジカルが発生し、発生したラジカル部分とプラズマ中の酸素ラジカルとの結合により、極性の高いヒドロキシル基およびカルボキシル基が生成する。処理時間および必要な電力については特に制限はないが、著しく大きな電力量で処理した場合、フィルム表面の劣化および粗さの増大を引き起こすことがあるため、プラズマ放電電力量は通常0.1〜50W/秒、好ましくは0.5〜40W/秒である。なお、プラズマ放電は通常、減圧下で行われる。
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン系重合体組成物は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の立体構造の特徴から、その三級炭素に発生したラジカルに酸素分子が反応して生成するパーオキシラジカルが、隣接する三級炭素に結合する水素原子を引き抜くβ水素脱離を起こしにくいため、上記の表面処理方法を行ってもラジカル発生後の分子量の低下が抑制され、機械特性の低下を抑制することができる。
上記のようにして得られた本発明の表面改質フィルムの表面張力は、30mN/m以上、好ましくは30〜85mN/m、より好ましくは30〜80mN/mである。また、表面改質前のフィルムの表面張力は、通常20〜60mN/m、好ましくは20〜60mN/mである。フィルムの表面張力は、表面処理前後の差が通常6mN/m以上、好ましくは10mN/m以上である。
さらに、本発明の表面改質フィルムの引張伸び(EBb)は、通常50〜3000%、好ましくは100〜2000%である。また、表面改質前のフィルムの引張伸び(EBa)は、通常60〜3500%、好ましくは120〜2300%である。また、表面改質前の引張伸び(EBa)と表面改質後の引張伸び(EBb)との関係は通常
EBb / EBa ≧ 0.85
好ましくは、
EBb / EBa ≧ 0.87
である。なお、EBb / EBaの上限は特にはないが、通常は、例えば2.0以下である。
例えば、アイソタクティックポリプロピレンからなるフィルムをコロナ処理やプラズマ処理によって表面改質したフィルムの表面張力は、32mN/m程度であり、表面処理前後の差が4mN/m程度である。また、アイソタクティックポリプロピレンからなるフィルムをコロナ処理やプラズマ処理によって表面改質したフィルムの引張伸びは、590%程度であり、表面改質前の引張伸び(EBa)と表面改質後の引張伸び(EBb)との関係(EBb / EBa)は0.8程度である。これは、表面処理によって分子鎖間の結合の一部または全部が切れてしまうことに起因する。
特定のシンジオタクティックプロピレン重合体からなる表面改質フィルム、または、特定のシンジオタクティックプロピレン重合体およびプロピレン・α-オレフィン共重合体
を含むプロピレン系重合体組成物からなる本発明の表面改質フィルムは、表面処理によっても分子鎖間の結合が切れにくく、むしろ結合の一部が架橋するために、従来のフィルムに比べ、表面処理による低分子量成分の発生を抑制し、表面改質前後の重量減少および機械特性の低下を抑制でき、かつ、フィルム表面に親水基を多く付与することができる。したがって、本発明の表面改質フィルムは、表面処理による表面改質前後の重量減少および機械特性の低下を抑制でき、かつ、親水性および接着性に優れる。
また、本発明の表面改質フィルムの50μm厚で測定した内部ヘイズ値は、通常0.1〜3.1%、好ましくは0.1〜2.6%である。また、表面改質前のフィルムの50μ厚で測定した内部ヘイズ値は、通常0.1〜3.0%、好ましくは0.1〜2.5%である。すなわち、本発明に係るプロピレン系重合体組成物からなる表面改質フィルムは透明性が高く、また、表面処理前後で内部ヘイズ値の変化が少ない。
例えば、アイソタクティックポリプロピレンからなるフィルムを表面改質したフィルムの50μm厚で測定した内部ヘイズ値は3.5%程度で、表面改質前の内部ヘイズ値3.1%に比べると、表面改質後のフィルムの透明性が低下する。すなわち、本発明の表面改質フィルムは、上記の特性に加え、従来のフィルムに比べ、表面処理しても透明性を維持
することがわかる。
〔用途〕
本発明の表面改質フィルムは、透明性に優れ、表面処理を施しても表面改質前後の重量減少および機械特性の低下が少なく、親水性や接着性に優れるため、接着用途をはじめ、様々な産業用途へ適用することができる。
具体的には、包装フィルム、押出ラミネートフィルム、押出ラミネートシート、金属蒸着フィルム、ドライラミネートフィルム、本発明の表面改質フィルムを表面に接着した種々の成形体、積層フィルムまたは積層シートなどの積層体などに好適に用いられる。
包装フィルムとしては、具体的には、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、シュリンクストレッチフィルム、食品真空包装用フィルム、食品包装用フィルム脱酸素剤封入用包装フィルム、レトルト食品用包装フィルムなどが挙げられる。
押出ラミネートフィルムまたはシートとしては、具体的には、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、シュリンクストレッチフィルム、アルミ箔とラミレート成形されたトレーやカップ、スチール箔とラミレート成形されたトレーやカップなどが挙げられる。
金属蒸着フィルムとしては、具体的には、スパッタフィルム、薄い金属箔(ホイル)と貼り合せた金属箔フィルム、アルミニウムなどの金属を蒸着した金属蒸着フィルム、チタン蒸着フィルムなどが挙げられる。
ドライラミネートフィルムとしては、具体的には、アルミ箔と接着剤により多層化されたトレー、カップまたはレトルトパウチ材、漬物または液体スープなどの水物を入れボイルする多層フィルム、スナック菓子用包装材料、透明レトルト包装材料などが挙げられる。
成形体としては、具体的には、ブロー成形容器、食品用容器、医薬品用容器、水道用パイプ、ガスパイプ、クレート類、工業部材、家庭用雑貨、容器、タンク類、電線防食被覆用材料、自動車用外装材、自動車用内装材、コンテナ、住宅建材、住宅内装材等が挙げられる。
積層フィルムまたはシートなどの積層体としては、具体的には、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、シュリンクストレッチフィルム、光ディスク用フィルム、複層テープ、光ファイバー用保護フィルム、光ファイバー用被覆材料、インクジェットフィルム、ノーカーボンフィルム、特殊フィルム、感熱記録フィルム、耐油フィルム、撥水フィルム、耐水フィルム、剥離フィルム、擬似接着フィルムなどが挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において各物性は以下のように測定した。
〔物性測定法〕
<極限粘度[η]>
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
<n-デカン可溶部量>
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)のサンプル5gにn−デカン200mlを加え、該重合体を145℃で30分間加熱溶解した。得られた溶液を約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(n−デカン不溶部)をろ別した。ろ液を約3倍量のアセトン中に入れ、n−デカン中に溶解していた成分を析出させた。析出物をアセトンからろ別し、その後乾燥した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n−デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n−デカン可溶部量(wt%)=[析出物重量/サンプル重量]×100
<分子量分布(Mw/Mn)>
分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6− HTを2本およびTSKgel GNH6− HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500μLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準
ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製
を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
<ポリマー中のエチレン、プロピレンおよびα-オレフィン含量>
エチレン、プロピレンおよびα-オレフィン含量の定量化は日本電子(株)製JNM
GX-400型NMR測定装置を用いて、下記のように測定した。試料0.35gをヘキ
サクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入して、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は8,000回以上とする。得られた13C-NMRスペクトルにより、エチレン、プロピレンおよびα-オレフィンの組成を定量化した。
<成分(A)の融点(Tm)および融解熱量(ΔH)>
パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20
ml/分)、約5mgの試料を200℃まで昇温、10分間保持した後、10℃/分で30℃まで冷却した。30℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点を、ピークの積算値から融解熱量を算出した。
なお、実施例に記載したプロピレン系重合体において2本のピークが観測された場合、低温側ピークをTm1、高温側ピークをTm2とする。
本願請求項1の(a)で規定するTmはTm2である。
<成分(B)のガラス点移転(Tg)および融点(Tm)>
セイコーインスツルメンツ社製DSCを用い、測定用アルミパンに約5mgの試料を詰めて、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温した吸熱曲線より求めた。
<立体規則性rrrr>
立体規則性(rrrr)は13C−NMRスペクトル測定から算出した。
<フィルムの膜厚>
マイクロメーターを用いて測定した。
<針進入温度(TMA測定による軟化温度)>
JIS K 7196に準拠し、1.0mm厚の試験片を用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kgf/cm2の圧力をかけ、TMA曲線より、軟化温度
(℃)を求めた。
なお、針進入温度の測定用試験片には、下記の方法で作製したプレスシートを用いた。
200℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaの圧力シート成形した。0.5〜3mm厚のシート(スペーサー形状; 240×240×2mm厚の
板に80×80×0.5〜3mm、4個取り)の場合、5分程度余熱し、10MPaで1
〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試験片を作製した。なお、熱板は5mm厚の真鍮板を用いた。
<引張弾性率および引張伸び>
前述のとおり、JIS K 6301に準拠して、フィルムよりJIS3号ダンベルを打ち抜き、評価用試験片に供した。23℃で、スパン間:30mm、引張り速度30mm/minで測定した。
<内部ヘイズ(%)>
本発明の表面改質フィルムの測定には、50μm厚フィルムを用いて日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−20D」にて測定した。
<表面張力>
JIS K6768−1995に準拠して、フィルムを測定した。
実施例1〜4および比較例1〜4で得られたフィルムに、下記条件でプラズマ処理を行って表面改質フィルムを得た。
<プラズマ放電処理>
プラズマ放電装置(東芝製:マイクロ発信器型式TMG132F、プラズマ発生形式TAW173B500、スリーフターブチューブ型式TMU298)を用いて、圧力0.7Torrで、酸素雰囲気下、プラズマ電力量1kWで1分間照射した。
<重量減少率>
プラズマ放電処理前後の重量を測定し、重量減少率(%)とした。
<インク塗布性>
表面改質フィルムを23℃の温度、相対湿度50%の雰囲気下で3日間保管した後、表面改質フィルムの改質処理面に印刷機「RI−III型印刷適性試験機」((株)明製作所製、商品名)に印刷インク「ベストSP(藍)」((株)T&K TOKA社製、商品
名)を1.5g/m2の厚さとなるように印刷し、24時間室温にて乾燥した。その後、
インクの塗布性を以下の評価基準で評価した。
○:良好(全くインクが剥離しない)
△:可 (剥離部分が10%未満であった)
×:不可(剥離部分が10%超であった)
〔触媒合成例〕
<合成例1>
ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジ
ルコニウムジクロリドは、特開2004-189666号公報の合成例3に記載された方
法で製造した。
<合成例2>
ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドは、特開2007−321102号公報の合成例3に記載された方法で製造した。
〔重合例〕
<重合例1>シンジオタクティックプロピレン重合体(A−1)の製造
十分に窒素置換した内容量500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、プロピレンを150リットル/時間、水素を0.3リットル/時間の量で流通させ、25℃で20分間保持させておいた。一方、十分に窒素置換した内容量30mlの枝付きフラスコにマグネティックスターラーを入れ、これにメチルアルミノキサンを5.00mmol含むトルエン溶液(Al=1.53mol/l)を3.26ml、次いでジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジ
ルコニウムジクロリドを5.0μmol含むトルエン溶液を5.0ml加え、20分間撹拌した。この溶液を、プロピレンおよび水素を流通させておいたガラス製オートクレーブのトルエンに加え、重合を開始した。プロピレンガスを150リットル/時間、水素を0.3リットル/時間の量で連続的に供給し、常圧下、25℃で45分間重合を行った後、少量のメタノールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、ポリマー5.77gが得られた。重合活性は1.25kg-PP/mmol-Zr・hrであり、得られたポリマーの極限粘度[η]は1.5dl/g、Tm1=152℃、Tm2=158℃であり、rrrr=94%であり、Mw/Mn=1.9であった。この操作を繰り返して、必要量のポリマーを得て実施例に使用した。
結果を表1に示す。
シンジオタクティックプロピレン重合体(A−2)
Total社製シンジオタクティックポリプロピレン(商品名:FINAPLAS1471、MFR=5.0g/10分)を比較例で用いた。
<重合例2>プロピレン・α-オレフィン共重合体(B−1)の製造
十分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1-ブテ
ン120gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温度を60℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.33MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.63MPaに調整した。次いで、ジ(p−クロ
ロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温60℃、系内圧力を0.63MPaにエチレンで保ちながら2
0分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2リットルのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは97gであり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.2(dL/g)であった。
結果を表1に示す。
<重合例3>プロピレン・α-オレフィン共重合体(C−1)の製造
十分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン300gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温度を40℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.8MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温40℃、系内圧力を0.8MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2リットルのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは41.4gであり
、極限粘度[η]は2.1dl/gであった。この操作を繰り返して、必要量のポリマーを得て比較例で用いた。
結果を表1に示す。
アイソタクティックプロピレン重合体(F−1)
(株)プライムポリマー製アイソタクティックポリプロピレン(商品名:F−107P、MFR=7.0g/10分)を比較例で用いた。
[実施例1]
重合例1で得られたシンジオタクティックポリプロピレン(A−1)80重量部と、重合例2で得られたプロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)20重量部に対して、トリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部配合する。その
後、(株)プラスチック工学研究所製二軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。得られた造粒ペレットをコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)に投入し、ダイス温度230℃、ロール温度30℃、巻き取り速度1.
0m/minで成形を行い、48μm厚フィルムを得て、プラズマ放電処理を行った。
結果を表2に示す。
[実施例2]
重合例1で得られたシンジオタクティックポリプロピレン(A−1)50重量部と、重合例2で得られたプロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)50重量部に対して、トリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部配合する。その
後、(株)プラスチック工学研究所製二軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。得られた造粒ペレットをコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)に投入し、ダイス温度230℃、ロール温度30℃、巻き取り速度1.
0m/minで成形を行い、52μm厚フィルムを得て、プラズマ放電処理を行った。
結果を表2に示す。
[実施例3]
重合例1で得られたシンジオタクティックポリプロピレン(A−1)20重量部と、重合例2で得られたプロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)80重量部に対して、
トリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部配合する。その
後、(株)プラスチック工学研究所製二軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。得られた造粒ペレットをコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)に投入し、ダイス温度230℃、ロール温度30℃、巻き取り速度1.
0m/minで成形を行い、51μm厚フィルムを得て、プラズマ放電処理を行った。
結果を表2に示す。
[実施例4]
重合例1で得られたシンジオタクティックポリプロピレン(A−1)100重量部に対して、トリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部配合する
。その後、(株)プラスチック工学研究所製二軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。得られた造粒ペレットをコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)に投入し、ダイス温度230℃、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い、55μm厚フィルムを得て、プラズマ放電処理を行っ
た。
結果を表2に示す。
[比較例1]
シンジオタクティックポリプロピレン(A−2)100重量部に対して、トリ(2,4
−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部配合する。その後、(株)プラスチック工学研究所製二軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。得られた造粒ペレットをコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)に投入し、ダイス温度230℃、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/min
で成形を行い、51μm厚フィルムを得て、プラズマ放電処理を行った。
結果を表2に示す。
[比較例2]
(株)プライムポリマー製アイソタクティックポリプロピレン(商品名:F−107P、MFR=7.0g/10分)(F−1)100重量部に対して、トリ(2,4−ジ−t
−ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部配合する。その後、(株)プラスチック工学研究所製二軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。得られた造粒ペレットをコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)に投入し、ダイス温度230℃、ロール温度80℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を
行い、53μm厚フィルムを得て、プラズマ放電処理を行った。
結果を表2に示す。
[比較例3]
(株)プライムポリマー製アイソタクティックポリプロピレン(商品名:F−107P
、MFR=7.0g/10分)(F−1)20重量部と、重合例3で得られたプロピレン・α−オレフィン共重合体(C−1)80重量部に対して、トリ(2,4−ジ−t−ブチ
ルフェニル)フォスフェートを0.2重量部配合する。その後、(株)プラスチック工学研究所製二軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。得られた造粒ペレットをコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)に投入し、ダイス温度230℃、ロール温度80℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い、
52μm厚フィルムを得て、プラズマ放電処理を行った。
結果を表2に示す。
Figure 0005611529
Figure 0005611529

Claims (12)

  1. シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜10重量部と、
    プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜90重量部(ただし、(A)と(B)との合計を100重量部とする。)と
    を含むプロピレン系重合体組成物からなる表面改質フィルムであって、
    該表面改質フィルムの表面張力が30mN/m以上であり、
    該表面改質フィルムの表面改質前後の重量減少率が2%以下であり、
    該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)が下記要件(a)を充足し、該プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)が下記要件(b)を充足することを特徴とする表面改質フィルム。
    (a):13C-NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上であり、DSCより求められる融点(Tm)が150℃以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であり、プロピレンから導かれる構成単位を90モル%(ただし、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)を超える量で含有する。
    (b):プロピレンから導かれる構成単位を55〜90モル%の量で含有し、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モル%(ただし、プロピレンから導かれる構成単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計を100モル%とする。)の量で含有し、JIS K 6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが0.01〜100g/10分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
    (b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率)が60%以上である。
    (b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)と前記MFR(g/10分、230℃、2.16kg荷重)とが下記の関係式を満たす。
    1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
  2. 前記プロピレン系重合体組成物の
    (1)JIS K 7196に準拠して測定した針進入温度が100〜175℃であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質フィルム。
  3. 前記プロピレン系重合体組成物の
    (1)JIS K 7196に準拠して測定した針進入温度が100〜175℃であり、
    (2)JIS K 6301に準拠して測定した引張弾性率が10〜2000MPaの範囲にあり、
    (3)1mm厚プレスシートの内部ヘイズ値が30%以下である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の表面改質フィルム。
  4. 前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dL/gの範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)により求めた融解熱量(ΔH)が40mJ/mg以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質フィルム。
  5. 前記プロピレン・α-オレフィン重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフ
    ィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面改質フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質フィルムを用いて得られた包装用フィルム。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質フィルムを最外層に有することを特徴とする、押出ラミネートフィルムまたはシート。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質フィルムを用いて得られた金属蒸着フィルム。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質フィルムを用いて得られたドライラミネートフィルム。
  10. 請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質フィルムを表面に接着した成形体。
  11. 請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質フィルムを少なくとも一層含むことを特徴とする積層体。
  12. 請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質フィルムを少なくとも一層含むことを特徴とする、積層フィルムまたはシート。
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