JP6627457B2 - 包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン基材フィルムと、ポリオレフィン基材フィルムとは異なる他の樹脂フィルムとを含む多層フィルムから形成された包装体に関する。
ポリオレフィンフィルムは、安価であり、特に包装用フィルムに広く使用されている。そして、包装用フィルムの分野では、用途に応じた特性を持たせるために、異なるフィルム同士を積層して使用することが多い。ポリオレフィンフィルムの場合は、非常に柔軟であるが耐熱性が不満足であるため、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム或いは6−ナイロン等のポリアミドフィルム等と積層されて使用されることがある。
このような積層フィルムのポリオレフィン等のヒートシール性樹脂層が内面になるように、端部同士を合掌シール(背張りシール)して包装体としたピロー包装袋(特許文献1)や、最内面及び最外面をポリオレフィンとした、例えば0.3〜0.4mmの厚みの多層シートを用い、その端部同士を重ね合わせてヒートシールし、内面の端面露出部をポリオレフィン樹脂で、ヒートシール時に被覆したラミネートチューブが提案されている。
しかしながら、特許文献1等に示されるピロー包装袋は、合掌シール部の外側へのはみ出しにより外観が損なわれ、また、印刷適性の低下、合掌シール部の折り曲げによる積層フィルムの剥離の発生、密封シール時の合掌シール部の段差による漏洩のリスクが高いといった問題がある。
さらに、前述した多層シートから成るラミネートチューブは、チューブの剛性が高くなり、内容物の残量が少なくなった際の絞り出しが困難になるといった問題がある。
一方、接着剤を使用せずに、ポリオレフィンフィルムを他の樹脂フィルムに熱接着させる接着剤レスサーマルラミネーション技術が開発されてきており、例えば、特許文献2〜5には、このような接着剤レスサーマルラミネーションにより、ポリオレフィンフィルムと他の樹脂フィルム(例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム)とが積層された多層構造フィルムが提案されている。
これらの特許文献2〜5で提案されている多層構造フィルムは、ポリオレフィンフィルム及び他の樹脂フィルムの表面を、大気圧プラズマ処理或いはコロナ処理を行って表面を改質しておき、これにより改質された表面同士を、熱接着することにより製造されるものである。
しかしながら、このような多層フィルムを用い、端部同士をヒートシールしてもオーバーラップ接合部を形成することは不可能である。また、ポリオレフィンフィルムと他の樹脂フィルムをヒートシールして、オーバーラップ接合する際のヒートシール性樹脂層のポリオレフィンフィルムの表面特性などについて提案はなされていない。
特開2006−176128号公報 特許第5216926号公報 特許第5554996号公報 特許第5568284号公報 特許第5455539号公報
本発明の目的は、ポリオレフィンフィルム及び他の樹脂フィルムから成る多層フィルムの端部同士を、オーバーラップ接合して包装体とする際に、ポリオレフィンフィルムと他の樹脂フィルムとのヒートシールを可能とし、前記した多層フィルムから成るピロー包装袋、積層シートから成るラミネートチューブ等の包装体における問題を解決する包装体を提供することである。
本発明によれば、多層フィルムの端部同士が重ねられたオーバーラップ接合部を側面に有する包装体において、前記多層フィルムは、最内層のポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる他の樹脂フィルムとを含む積層構造を有し、前記ポリオレフィン基材フィルムに改質表面層が形成され、前記オーバーラップ接合部は、該ポリオレフィン基材フィルムの該改質表面層と前記他の樹脂フィルムの表面とのヒートシール部であることを特徴とする包装体が提供される。
本発明の包装体においては、
(1)前記オーバーラップ接合部の内側端部が、外面側に折り返し重ね合わせた折り返し部を有し、該折り返し部に前記ポリオレフィン基材フィルム同士の副ヒートシール部が形成されていること、
(2)前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層は、官能基が導入された水不溶性物質により形成されており、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し、且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっていること、
(3)前記他の樹脂フィルムがポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂により形成されていること、
(4)前記ポリオレフィン基材フィルムが、エチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂により形成されていること、
が好ましい。
本発明の包装体によれば、ポリオレフィンフィルム及び他の樹脂フィルムから成る多層構造フィルムを丸め、端部同士をオーバーラップ接合して包装体とする際に、ポリオレフィンフィルムと他の樹脂フィルムとのヒートシールが可能になる。
このため、ピロー包装袋等においては、合掌シール部の外側へのはみ出しによる外観の損ない、印刷適性の低下、合掌シール部の折り曲げによる積層フィルムの剥離の発生、密封シール時の合掌シール部の段差による漏洩等が防止される。
また、ラミネートチューブ等においては、極薄ラミネートチューブとすることが可能になり、内容物の残量が少なくなった際の絞り出しが容易となる。
さらに、グラビア印刷を施した多層フィルムを用いることによって、ピロー包装袋、極薄ラミネートチューブに高級感を持たせることも可能となる。
本発明に使用される多層フィルムの層構造を示す図。(a)は概略斜視図である。(b)は、(a)のA部拡大図である。 本発明の第一の実施態様の包装体を示す図である。(a)は正面図である。(b)は、(a)のA−A断面図である。(c)は他の形態の包装体を示す概略平面図である。 本発明の第二の実施態様の包装体を示す図である。 ポリオレフィン(直鎖状低密度ポリエチレン)基材フィルムを溶剤払拭し、それぞれナイロンフィルムとヒートシールしたときのSP値と接着強度を示す線図(実験例1)。 ポリオレフィン(直鎖状低密度ポリエチレン)基材フィルムを溶剤払拭し、それぞれPETフィルムとヒートシールしたときのSP値と接着強度を示す線図(実験例2)。 ポリオレフィン(ポリプロピレン)基材フィルムを溶剤払拭し、それぞれナイロンフィルムとヒートシールしたときのSP値と接着強度を示す線図(実験例3)。 ポリオレフィン(ポリプロピレン)基材フィルムを溶剤払拭し、それぞれPETフィルムとヒートシールしたときのSP値と接着強度を示す線図(実験例4)。
<多層フィルム>
本発明は、多層フィルムを用いた包装体に関する。まず、図1を参照して、多層フィルムについて説明する。本発明に用いられる多層フィルム1は、ポリオレフィン基材フィルム3と、ポリオレフィン基材フィルム3とは異なる他の樹脂フィルム5とを含む積層構造を有しており、ポリオレフィン基材フィルム3の他の樹脂フィルム5とは反対側の面には、ドライプロセスにより改質表面層7が形成されている。このような構造の多層フィルムの端部同士を重ねて、一方の端部のポリオレフィン基材フィルムの改質表面層7と、他方の端部の他の樹脂層5とをヒートシールすると、強固な接着性を有するオーバーラップ接合部が形成されて、本発明の包装体が得られる。
多層フィルムの平均厚みは、60〜200μmが好ましい。このように、本発明で薄いフィルムを使用すると、最終成形品をラミネートチューブとしたときには、ラミネートチューブから内容物を小さな力で押し出すことができ、更に、ラミネートチューブを手で容易に引裂くこともできる。また、包装体におけるオーバーラップ接合部を後述する折り返し重ね合わせたタイプ(図3を参照)とする場合にあっては、後述するように多層フィルムを折り返したときの層間剥離や内容物の溶出を有効に抑制することもできる。
ポリオレフィン基材フィルム3;
多層フィルム1において使用されるポリオレフィン基材フィルム3は、それ自体公知のオレフィン系樹脂から形成されていてよい。公知のオレフィン系樹脂としては、例えば、以下のものを例示することができる。
低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを主体とするエチレンと他のオレフィンとの共重合体などのエチレン系樹脂;ポリプロピレン、プロピレンを主体とするプロピレンと他のオレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂;ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体など。
さらに、前述したポリオレフィン基材フィルム3は、それ自体公知の各種添加剤、例えば滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を含んでいてもよいが、一般的には、表面移行型(ブリーディング性)の有機系添加剤を含有していないことが望ましい。即ち、高分子系の添加剤は、一般的に表面移行性を有していないので許容できるが、表面移行性を有する有機系添加剤、具体的には、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミドに代表される有機系滑剤、グリセリンモノステアレート−ビスアミド等の有機系帯電防止剤、その他、フェノール系酸化防止剤などが配合されていると、これらが表面に多くブリーディングしてしまい、この結果、後述するヒートシールを効果的に行うことが困難となり、他の樹脂フィルム5との接着強度の低下を生じるおそれがある。実際、後述する実験により、このような表面移行型の添加剤が添加されていない場合に、接着強度が向上することが確認されている。
本発明において、最も好ましいポリオレフィン基材フィルム3は、エチレン系樹脂或いはプロピレン系樹脂からなるものであり、特に、前記のような表面移行型有機系添加剤が配合されていないものである。
尚、ポリオレフィン基材フィルム3の厚みは特に制限されず、用途に応じて適宜の厚みを有していればよいが、一般に、ポリオレフィンに特有の柔軟性、可撓性等が要求される包装材の用途においては、改質表面層7の厚みを含めて、20〜150μm程度の厚みに設定される。
改質表面層7;
前述したポリオレフィン基材フィルム3は、図1に示されているように、他の樹脂フィルム5とは反対側の面に改質表面層7を有しており、かかる改質表面層7の存在によりオーバーラップ接合部に、ポリオレフィン基材フィルム3と他の樹脂フィルム5とが接着剤を使用することなくヒートシールされたヒートシール部を設けることができる。
このような改質表面層7は、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の含酸素官能基や、アミノ基、アミド基、イミド基等の含窒素官能基が導入された水不溶性物質(ポリオレフィン分子の分解等に由来する)から形成されているものであるが、ヒートシールにより特に高い接着強度が得られるものにおいては、図1(b)に示されているように、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっているという傾斜分布構造を有している。
このような傾斜分布構造を有する改質表面層7は、特定の条件を満足する溶剤払拭性を有している。即ち、SP値が互いに異なる複数種の溶剤、具体的には、水{SP値=23.4(MPa)1/2}、エタノール{SP値=12.7(MPa)1/2}、アセトン{SP値=10.0(MPa)1/2}、酢酸エチル{SP値=9(MPa)1/2}およびn−ヘキサン{SP値=7.3(MPa)1/2}を用い、これらの溶剤を脱脂綿に含ませて室温(25℃)でポリオレフィン基材フィルム3の表面を払拭処理し、それぞれ他の樹脂フィルムとヒートシールしたとき、これらの溶剤のSP値が大から小となるにしたがって、接着強度(或いは濡れ張力)に一定、或いはほぼ一定の変化が観察される。
例えば、代表的なポリオレフィンフィルムである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムおよびポリプロピレン(PP)フィルムにおいて、ポリオレフィンとは異なる種類の他の樹脂フィルム5に対して、ヒートシールによる強固な接着強度が発現するような改質表面層7が形成されているとき、この改質表面層7について溶剤払拭試験を行い、それぞれ用いた溶剤のSP値と接着強度とをプロットすると、図4〜図7に示されるような曲線が得られる(具体的な試験方法は後述する実験例参照)。
前記の溶剤払拭性を有する改質表面層7について、後述する実験例の結果を参照すると、前記の各溶剤で払拭処理した状態で、接着剤レスにより一定の条件で他の樹脂フィルム5(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム或いはナイロンフィルム)をヒートシールさせたときの各接着強度(T型剥離強度)は、水での払拭処理後に最も高く(例えば材料破壊を生じるほどの接着強度が得られる)、用いた溶剤のSP値の低下と共に、接着強度が低下していくことが判る。
このことから、高い接着強度が得られる改質表面層7は、水素結合により、他の樹脂フィルム5と強固に接合することが理解され、さらに、この改質表面層7は、このような水素結合の形成に必須な官能基、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の含酸素官能基や、アミノ基、アミド基、イミド基等の含窒素官能基を、多く含んでいると推定される。
実際、材料破壊が生じるほど強く接合されたポリオレフィン基材フィルム3と他の樹脂フィルム5との接着界面に水滴を付着させてT型剥離強度を測定すると、両フィルムは、速やかに剥離してしまうことが確認されている。かかる事実は、両フィルムの接合が水素結合によるものであり、水の存在が、このような水素結合を破壊していることを示している。
より具体的に説明すると、SP値とは、Hiderbrand溶解度パラメータ―と呼ばれる指数であり、凝集エネルギー密度の1/2乗値であり、物質の水素結合の程度を示し、水素結合の程度が大きいと大きな値を示し、水素結合の程度が小さいと小さな値を示し、物質同士の相溶性を評価するための尺度として広く利用されており、この差が小さいほど、両物質は高い親和性を示し、相溶性が高いことを意味している。
従って、SP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに最も高い接着強度を示すことから、かかる払拭処理により、改質表面層7を形成している成分は除去されず、この改質表面層7は、基本的に水不溶性物質により形成されていることが判る。そして、SP値の低下に伴い、濡れ張力が低下し、且つ接着強度の低下がもたらされることから、本質的に水不溶性の物質に官能基が導入されていると同時に、改質表面層7の表層部分には、図1(b)に示されているように、官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質7aが多く分布しており、それよりも深い位置では、官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質7bが多く分布しており、さらに、その下の深部では、官能基数が少ない高分子の水不溶性物質7cが多く分布していることが判る。
即ち、SP値の大きな溶剤、例えばエタノール{SP値=12.7(MPa)1/2}で払拭処理を行ったときは、官能基数が最も多い低分子の水不溶性物質7aが僅かに除去される程度であるため、払拭処理後の濡れ張力は、水による払拭処理後の濡れ張力に近く、接着強度の低下も僅かである。しかるに、SP値の小さな溶剤、例えばn−ヘキサン{SP値=7.3(MPa)1/2}で払拭処理を行ったときは、官能基数が最も多い低分子の水不溶性物質7aや官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質7bの一部或いは殆どが除去され、濡れ張力は、水による払拭処理後の濡れ張力に対して極めて小さくなり、同時に、他の樹脂フィルム5との接着力も大きく低下してしまう。
このように、ポリオレフィン基材フィルム3の表面に形成されている改質表面層7において、高いヒートシール性を発現し得るものは、その改質表面層7の払拭に用いた溶剤のSP値と接着強度に一定、或いはほぼ一定の変化が観察され、図1(b)に示されているように、官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質7aが表面に多く分布しており、その下に官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質7bが多く分布し、最深部には、官能基数が少ない高分子の水不溶性物質7cが分布しているという官能基の傾斜分布構造が生成している。
このような官能基の傾斜分布構造を有する改質表面層7が形成されているポリオレフィン基材フィルム3では、特に優れたヒートシール性が付与され、ヒートシールにより、他の樹脂フィルム5と材料破壊が生じるほどに強い強度で接着することが可能となる。即ち、改質表面層7の深い位置に官能基が導入された大きな分子サイズの水不溶性物質7b、7cが形成されているため、これらがしっかりとポリオレフィン基材フィルム3の内部に存在するポリオレフィンに接合しており、この結果として、極めて高いヒートシール性が発現しているものと考えられる。例えば、表面部分の官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質7aのみでは、このような高いヒートシール性は発現しない。官能基が導入されている表面層と官能基が導入されていない下層部分とが明確に区画されてしまうため、両者の間で剥離を生じ易くなってしまい、大きな接着強度を発現することができなくなってしまうのである。
尚、前記のような改質表面層7における官能基の傾斜分布構造は、ポリオレフィンの表面処理によって得られる特有の構造であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルやナイロン等では、前述した特定の条件を満足する溶剤払拭性が得られず、むしろ濡れ張力の大小に依存している。
本発明において、ポリオレフィン基材フィルム3の改質表面層7は、それ自体公知のドライプロセス、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン−紫外線照射、電子線(EB)照射等により形成することができるが、前述した特定の条件を満足する溶剤払拭性を有する改質表面層7を形成するためには、プラズマ処理やコロナ処理が好ましい。
例えば、大気圧プラズマ処理は、表面処理するポリオレフィン基材フィルム3を一対の電極間に配置し、所定の雰囲気中で高周波電界を印加するという公知の手段を採用することができ、また、雰囲気を形成するガスとしては、水素、アルゴン、窒素/水素混合ガス、窒素/炭酸混合ガス、酸素、アルゴン/酸素混合ガスなど、公知のプラズマ処理に使用されているものを使用できるが、分子鎖の破断が過度に生じないように、ポリオレフィン基材フィルム3を形成するオレフィン系樹脂の種類に応じて適宜の条件を設定すべきである。分子鎖の破断が過度に生じてしまうと、SP値の高い溶剤(例えばエタノール)を用いての払拭により、濡れ張力の大きな低下を生じてしまい、図1(b)に示されているような官能基の傾斜分布構造が形成されなくなってしまう。
このような観点から、雰囲気中の酸素濃度は比較的小さく設定しておくことが好ましく、さらに、処理時間は比較的短時間とし、印加する高周波電界も過度に大きくしないように設定することが好ましい。具体的な処理条件は、ポリオレフィン基材フィルム3の種類ごとに、予めラボ実験を行って、溶剤払拭性と接着強度に一定、或いはほぼ一定の変化が得られるように設定すればよい。
前記の表面処理によって形成される改質表面層7の厚みは、特に制限されるものではないが、図1(b)に示すような官能基の傾斜分布構造をしっかりと形成するためには、0.5〜5nm程度の薄い厚みとするのがよい。
尚、官能基の導入は、前述した溶剤払拭試験により確認することができるが、X線光電子分光装置を用い、表面の元素組成を分析し、酸素や窒素等の官能基の形成に必要な原子の存在を確認することによっても可能である。
また、図1では、改質表面層7がポリオレフィン基材フィルム3の全面に形成された状態が示されているが、改質表面層7は、ポリオレフィン基材フィルム3のうち、オーバーラップ接合部のヒートシールによって、他の樹脂層5と接着する部分に存在していればよい。
他の樹脂フィルム5;
多層フィルムにおいて、ポリオレフィン基材フィルム3の改質表面層7とは反対側の面上には、他の樹脂フィルム5が積層されているが、この他の樹脂フィルム5は、ポリオレフィンとは異なる樹脂からなる。
かかる他の樹脂フィルム5としては、ポリオレフィン基材フィルム3の改質表面層7にヒートシールが可能な樹脂により形成されているものである限り特に制限はないが、例えば、以下のような樹脂により形成されているフィルムが好適である。
エチレン・ビニル系共重合体、例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体等;
スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等;
ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体等;
ポリアクリル系樹脂、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等;
ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびこれらの共重合ポリエステル等;
ポリカーボネート樹脂;
ポリフエニレンオキサイド樹脂;
生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸等;
前述した樹脂の中では、ポリオレフィン基材フィルム3の耐熱性を補完するという観点からは、耐熱性に優れた樹脂、例えば、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂が好適である。酸素バリア性を付与するという観点からは、エチレン・ビニルアルコール共重合体が好適である。ヒートシールによるポリオレフィン基材フィルム3(改質表面層7)に対するヒートシール性という観点からは、ポリアミド樹脂が最も好適である。
他の樹脂フィルム5の厚みは、特に制限されないが、一般的には、ポリオレフィン基材フィルム3が有する優れた可撓性や柔軟性が損なわれない範囲で、他の樹脂フィルム5に要求される特性が十分に発揮されるような厚みに設定される。例えば、この他の樹脂フィルム5の厚みは、前述したポリオレフィン基材フィルム3の厚みの10〜100%程度に設定されることが好ましい。
他の樹脂フィルム5の外面(ポリオレフィン基材フィルム3とは反対側の外面)には、加飾性を高めるために、印刷を施すこともできる。印刷手段としては、グラビア印刷、インクジェット印刷など、公知の印刷方法を採用することができるが、印刷物に高級感を付与する観点から、グラビア印刷が好ましい。用いるインキとしては、水性インキを用いることが環境に対する悪影響を回避する上で好適である。
また、ヒートシールによるポリオレフィン基材フィルムの改質表面層との接着性が損なわれない限り、他の樹脂フィルム5は多層構造を有していてもよく、例えば、前述の樹脂を2種以上組み合わせたものであってもよいし、アルミ蒸着膜、酸化アルミや酸化ケイ素等の金属酸化物の蒸着膜が形成されているものであってもよいし、かかる蒸着膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などによるオーバーコート層が設けられてガスバリア性が高められているものであってもよい。
さらにまた、ヒートシールによるポリオレフィン基材フィルムの改質表面層7との接着強度を上げるために、他の樹脂フィルム5を表面処理して濡れ張力を向上させておくことも可能である。このような表面処理手段としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射、EB照射等、種々の手段を採用することができるが、生産性やコスト等の観点から、コロナ処理、紫外線処理及びEB処理が好適である。プラズマ処理による他の樹脂フィルム5の表面処理も接着強度の向上には有効であるが、他の手段にも同等の接着向上効果が発現するからである。
本発明においては、例えばPETフィルム等のポリエステルフィルムを他の樹脂フィルム5とする場合、材料破壊が生じるほど高い接着性を確保するためには、前記のような表面処理を行っておくことが望ましいが、注目すべきは、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルムを他の樹脂フィルム5とする場合である。このようなポリアミドフィルムについては、驚くべきことに、表面処理を行っていない場合にも材料破壊が生じるほど、高い接着強度を得ることができる。
尚、ポリオレフィン基材フィルムと他の樹脂フィルムとの接着強度を測定する場合、その試験に供する試料のポリオレフィンフィルムには、改質表面層とは反対側の表面に、直鎖低密度ポリエチレンやポリオレフィン等の同種のオレフィン系樹脂のフィルムをヒートシールにより積層し、このポリオレフィンフィルムを補強しておくことが必要であることに留意されたい。試料のポリオレフィンフィルムは他の樹脂フィルム(PETフィルムなど)に比して伸びが大きいため、そのままでは、正確な剥離強度を測定することができないからである。
多層フィルム1の製造;
前述した構造を有する多層フィルム1は、ポリオレフィン基材フィルム3の改質表面層7とは反対側の面と、他の樹脂フィルム5とを接着させることにより製造される。接着は、それ自体公知のドライラミネート用接着剤、例えばポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤により行ってもよいが、環境への配慮および省エネを徹底する観点から、接着剤レスサーマルラミネーションにより行うことが好ましい。
<包装体>
本発明の包装体は、多層フィルムを、内面側にポリオレフィン基材フィルムが位置し、外面側に他の樹脂層が位置するようにして丸め、左右の端部同士を重ね合わせてヒートシールをしてオーバーラップ接合部を形成する。その後、上下の開口部を適宜シールし、或いはキャップや注出具等を取り付けて、ピロー包装袋やラミネートチューブ等の包装体とする。そして、本発明の包装体は、オーバーラップ接合部が、ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と他の樹脂フィルムとがヒートシールされたヒートシール部から成る点に重要な特徴を有する。以下、本発明の包装体の実施態様を具体的に説明する。
第一の実施態様;
本発明の第一の実施態様の包装体について説明する。図2は、本実施態様の包装体を模式的に示す図であり、(a)は包装体の正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。(c)は、他の形態の包装体の例を示す。図2(a)および(b)において、本実施態様の包装体は10で表され、ピロー包装袋の形態を呈している。この包装体10は、内面側にポリオレフィン基材フィルム11、外面側に他の樹脂フィルム12が位置し、多層フィルムを丸め、左右の端部同士を重ね合わせてヒートシールすることにより、オーバーラップ接合部13が形成される。そして、このオーバーラップ接合部13では、一方の端部の他の樹脂フィルム12上に、他方の端部のポリオレフィン基材フィルム11の改質表面層14が直接ヒートシールされてヒートシール部15を形成している。
また、本実施態様の包装体10は、上下の開口をヒートシールしたピロー包装袋であり、このようなピロー包装袋は、天シール部20、地シール部21がヒートシールされる。この場合、前述したように、従来のピロー包装袋は、側面の外側にはみ出した合掌シール部と、天シール部20、地シール部21とが重なる部分に段差による空隙が生じる場合がある。この段差は、ヒートシール時に溶融したポリオレフィン樹脂により埋められるが、漏洩リスクを完全に回避することはできない。
しかしながら、本実施態様の包装体10によれば、オーバーラップ接合部13は多層フィルムの端部同士を合掌シール(背張りシール)しないため、合掌シール部の外側へのはみ出しによる外観の損ない、印刷適性の低下、合掌シール部の折り曲げによる積層フィルムの剥離の発生、段差が小さくなることより密封シール時の合掌シール部による漏洩等を防止することができる。
また、ヒートシール条件も緩和することができる。
オーバーラップ接合部13の幅W1は、5〜10mmが好ましい。オーバーラップ接合部13の幅が狭すぎると、接着強度の低下による漏洩リスクが高くなったり、ズレを考慮するとオーバーラップ接合部13の形成が困難となる。一方、広すぎると使用材料の無駄となる。
前述した本実施態様の包装体10は、図2(c)に示されるように、上側にヒートシール等によりノズル部材16を取り付け、下側の地シール部21をヒートシールしてラミネートチューブ18とすることができる。
尚、包装体10のピロー包装袋やラミネートチューブ等を形成する際、ヒートシールは、オーバーラップ接合部13を形成するために行うヒートシールと同様の方法及び条件で行えばよい。
また、本発明の包装体は、前述したピロー包装袋やラミネートチューブ等に限定されず、他の形態の包装体であっても良い。
第二の実施態様;
次に、本発明の第二の実施態様の包装体について説明する。図3は、本実施態様の包装体を模式的に表した図であり、前述した第一の実施形態の包装体におけるオーバーラップ部の他の形態を示す。
本実施態様の包装体30におけるオーバーラップ接合部31には、多層フィルムの一方の端部(この図では左側端部)を外面側に折り返し重ね合わせた折り返し部32が形成されており、この折り返し部32の上に、他方の端部(この図では右側端部)が平らな状態でヒートシールされている。
このように、本実施態様の包装体30では、折り返し部32を覆うようにして他方の端部がヒートシールされており、この結果、オーバーラップ接合部31には、ポリオレフィン基材フィルム34の改質表面層35と他の樹脂フィルム33の表面とのヒートシール部36、及び折り返し部32の部位に、ポリオレフィン基材フィルム34同士の副ヒートシール部37が形成される。
尚、図3においては、改質表面層35がポリオレフィン基材フィルム34の全面に形成された状態が示され、折り返し部32の部位に、ポリオレフィン基材フィルム34の改質表面層35同士の副ヒートシール部37が形成されている。しかしながら、改質表面層35をポリオレフィン基材フィルム34のうち、オーバーラップ接合部31の他の樹脂フィルム33とヒートシールする部分(ヒートシール部36)のみに形成し、折り返し部32の部位に、改質表面層35が形成されていないポリオレフィン基材フィルム34同士の副ヒートシール部37を形成しても良い。
そして、このように包装体30のオーバーラップ接合部31を、ヒートシール部36、副ヒートシール部37とすることにより、内面側の端部の端面露出がなくなり、内容物との接触を防止することができる。このため、多層フィルムの端面に接触すると層間剥離を引き起こしやすい染毛剤や香辛料等の内容物に、或いは内容物の溶出の抑制に好適に利用される。
オーバーラップ接合部31の幅W2としては、5〜15mmが好ましい。このオーバーラップ接合部31の幅が狭すぎると、接着強度が不十分となる虞があり、広すぎると、ラミネートチューブの内容量が少なくなり、経済的でない。
折り返し部32の幅W2´は、ヒートシール部と副ヒートシール部の大きさのバランスの観点から、オーバーラップ接合部31の幅よりも狭いことを条件として、2〜7mmが好ましい。
尚、本実施態様の包装体30において、ヒートシール部36、副ヒートシール部37を形成する際のヒートシールの方法は、折り返し部32を形成する以外は、前述した第一の実施態様で説明した通りである。
本発明の包装体に用いるポリオレフィン基材フィルムの改質表面層における溶剤払拭性と接着強度の変化を、次の実験例にて説明する。
1.大気圧プラズマ処理を行ったポリオレフィンフィルムの濡れ張力
後述する実験例で表面処理を行い、SP値の異なる各溶剤で室温払拭処理したポリオレフィンフィルム:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルムの濡れ張力を表1に示す。
尚、試験液は、和光純薬(株)製濡れ張力標準試験液を用い、濡れ張力の測定は、JIS K6768に準拠した。
2.ヒートシール
表面処理を行い、改質表面層を形成したポリオレフィンフィルム:LLDPEフィルム、PPフィルムと、他の樹脂フィルム:延伸ポリエステル(PET)フィルム、延伸ナイロン(NY)フィルムから100mm幅×100mm長のフィルム片を切り出し、ポリオレフィンフィルムをSP値の異なる各溶剤を用いて室温払拭処理し、真空乾燥を行った。次いで、それぞれのポリオレフィンフィルムを、補強裏打ち積層材を介して40℃のラバー受台に乗せ、ポリオレフィンフィルムの改質表面層上に他の樹脂フィルムを載置し、下記条件で加熱盤にてヒートシールした。
(1)補強裏打ち積層材
LLDPEフィルム:
PETフィルム(12μ)/NYフィルム(15μ)/LLDPE(50μ)
PPフィルム:
PETフィルム(12μ)/アルミ箔(17μ)/PPフィルム(70μ)
(2)ヒートシール条件
LLDPEフィルム:140℃、0.41MPa、10秒
PPフィルム:180℃、0.41MPa、10秒
3.接着強度の測定
それぞれのヒートシール部から7mm幅×60mm長を切り出し、テンシロンを用い、JIS K6854−3に準拠して、T字剥離強度(Tピール強度)(速度100mm/分)を測定し、測定結果を15mm幅に換算して算出した。
[実験例1]
ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、他の樹脂フィルムとして厚み:12μの延伸ナイロン(NY)フィルムを用いた。尚、前記のLLDPEフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
LLDPEフィルムを下記条件にて大気圧プラズマ処理を行い、LLDPEフィルムに改質表面層を形成した。
高周波電源周波数:30KHz
電極間距離:2.0mm
処理ガス:N主体(CO、H微量添加)
放電エネルギー:100W・min/m
一方、NYフィルムを、前記条件中、放電エネルギーを80W・min/mとして大気圧プラズマ処理を行い、LLDPEフィルムとの接着面を表面処理面とした。尚、コロナ処理による表面処理面を有するNYフィルム、未表面処理面を有するNYフィルムは、フィルムメーカーからの購入品を供した。
次いで、このLLDPEフィルム及びNYフィルムを用いて、前記したヒートシールを行い、接着強度を測定した。
これらの結果を表2、図4のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムと、他の樹脂フィルムのP−NY、C−NY,NC−NYとの接着強度において、P−NYとは全ての払拭処理領域で、また、C−NYとはSP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに、いずれも5N/15mmで破断して接着性が良好であることが示された。また、C−NY、NC−NYとは、SP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
さらに、他の樹脂フィルムをナイロンフィルムとする場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理、或いは未表面処理のいずれでも良いことを示唆している。
[実験例2]
実験例1において、他の樹脂フィルムとして厚み12μの延伸PETフィルムを用い、前述した条件中、放電エネルギーを65W・min/m2としてLLDPEフィルムとの接着面を表面処理面とした以外は、同様にヒートシールを行い、接着強度を測定した。尚、コロナ処理による表面処理面を有するPETフィルム、未表面処理面を有するPETフィルムは、フィルムメーカーからの購入品を接着強度測定に供した。
これらの結果を表3、図5のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムと、他の樹脂フィルムのP−PET、C−PET、NC−PETとの接着強度において、SP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
尚、NC−PETは、接着強度が小さく、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度の一定の変化が現れず、他の樹脂フィルムがPETフィルム等のポリエステルフィルムの場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理が望ましいことを示唆している。
[実験例3]
実験例1において、ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μのポリプロピレン(PP)フィルムを用いて大気圧プラズマ処理を行い、ポリプロピレンフィルムに改質表面層を形成した以外は、同様にヒートシールを行い、接着強度を測定した。尚、前記のPPフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
これらの結果を表4、図6のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理したポリプロピレン(PP)フィルムと、他の樹脂フィルムのP−NY、C−NY、NC−NYとの接着強度において、広い払拭処理領域で、いずれも5N/15mmで破断して接着性が良好であることが示された。また、C−NY、NC−NYとは、SP値の最も高い溶剤で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
さらに、実験例1と同様に、他の樹脂フィルムをナイロンフィルムとする場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理、或いは未表面処理のいずれでも良いことを示唆している。
[実験例4]
実験例2において、ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μのポリプロピレン(PP)フィルムを用いて大気圧プラズマ処理を行い、ポリプロピレンフィルムに改質表面層を形成した以外は、同様にヒートシールを行い、接着強度を測定した。尚、前記のPPフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
これらの結果を表5、図7のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理したポリプロピレン(PP)フィルムと、他の樹脂フィルムのP−PET、C−PET、NC−PETとの接着強度において、一部の払拭処理領域で、P−PET、C−PETとはいずれも3N/15mmで破断して接着性が良好であることが示された。また、P−PET、C−PETとは、SP値の高い溶剤で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
尚、NC−PETは、接着強度が小さく、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度の一定の変化が現れず、実験例2と同様に、他の樹脂フィルムがPETフィルム等のポリエステルフィルムの場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理が望ましいことを示唆している。
前述した実施例により、本発明の包装体に用いる多層フィルムにおけるポリオレフィンフィルムの改質表面層は、溶剤払拭性と接着強度に一定、或いはほぼ一定の変化が観察されたことにより、官能基が導入された水不溶性物質により形成され、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し、且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっている分布構造を有することが判る。
1 多層フィルム、3 ポリオレフィン基材フィルム、5 他の樹脂フィルム、7 改質表面層、7a 低分子の水不溶性物質、7b 中分子の水不溶性物質、7c 高分子の水不溶性物質、10 包装体(ピロー包装袋)、13 オーバーラップ接合部、15 ヒートシール部、18 ラミネートチューブ、30 包装体、31 オーバーラップ接合部、32 折り返し部、36 ヒートシール部、37副ヒートシール部

Claims (4)

  1. 多層フィルムの端部同士が重ねられたオーバーラップ接合部を側面に有する包装体において、
    前記多層フィルムは、最内層のポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる他の樹脂フィルムとを含む積層構造を有し、
    前記ポリオレフィン基材フィルムに改質表面層が形成され、
    前記オーバーラップ接合部は、該ポリオレフィン基材フィルムの該改質表面層と前記他の樹脂フィルムの表面とのヒートシール部であり、
    前記オーバーラップ接合部の内側端部が、外面側に折り返し重ね合わせた折り返し部を有し、該折り返し部に前記ポリオレフィン基材フィルム同士の副ヒートシール部が形成されていることを特徴とする包装体。
  2. 前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層は、官能基が導入された水不溶性物質により形成されており、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し、且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっている、請求項記載の包装体。
  3. 前記他の樹脂フィルムがポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂により形成されている、請求項1または2記載の包装体。
  4. 前記ポリオレフィン基材フィルムが、エチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂により形成されている、請求項1〜の何れかに記載の包装体。
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