JP2017094591A - 多層構造フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】接着剤レスサーマルラミネーションによりポリオレフィン基材フィルム上に他の樹脂フィルムが積層された多層構造を有しており、揮発性有機化合物(VOC)、必要に応じて行われる燃焼処理後の二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷が低減され、カール変形が有効に抑制された多層構造フィルムを提供する。【解決手段】改質表面層3を有するポリオレフィン基材フィルム1と、前記ポリオレフィン基材フィルム1とは異なる少なくとも第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7とを含む積層フィルム10とからなり、ポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3に第1の樹脂フィルム5が直接接着され、第1の樹脂フィルム5上に第2の樹脂フィルム7が無溶剤型接着剤層を介して積層されていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、多層構造フィルム及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、ポリオレフィン基材フィルム上に、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる他の樹脂フィルムが積層されている多層構造フィルム及びその製造方法に関する。
ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムに代表されるポリオレフィンフィルムは、非常に安価であり、種々の用途に適用されており、特に包装用のフィルムとして広く使用されている。
ところで、フィルムの分野では、用途に応じた特性を持たせるために、異なるフィルム同士を積層して使用する場合が多い。例えば、ポリオレフィンフィルムは、非常に柔軟であるが、耐熱性が不満足であるために、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム或いは6−ナイロン等のポリアミドフィルムと積層されて使用されることがある。このような多層構造フィルムの製造には、ポリオレフィンフィルムは他の樹脂フィルムとの接着性に乏しいため、一般的に、特許文献1に提案されているように有機溶剤型接着剤のウレタン系接着剤等のドライラミネート用接着剤が使用される。
また、上記のような接着剤を使用せずに、ポリオレフィンフィルムを他の樹脂フィルムに熱接着させる接着剤レスサーマルラミネーション技術が開発されてきており、例えば、特許文献2〜5には、このような接着剤レスサーマルラミネーションにより、ポリオレフィンフィルムと他の樹脂フィルム(例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム)とが積層された多層構造フィルムが提案されている。
即ち、これらの特許文献2〜5で提案されている多層構造フィルムは、ポリオレフィンフィルム及び他の樹脂フィルムの表面を、大気圧プラズマ処理或いはコロナ処理を行って表面を改質しておき、これにより改質された表面同士を、加熱接着することにより製造されるものである。
特開2004−50530号公報 特許第5216926号 特許第5554996号 特許第5568284号 特許第5455539号
そして、特許文献1等で提案される有機溶剤型接着剤のウレタン系接着剤等のドライラミネート用接着剤を使用した多層構造フィルムは、その製造工程において、樹脂フィルムに有機溶剤型接着剤を塗布後に乾燥して他の樹脂フィルムとラミネートする。
この結果、揮発性有機化合物(VOC)、必要に応じて行われる燃焼処理後の二酸化炭素ガスの排出による温暖化といった環境負荷の増大を招くことになる。
また、このような多層構造フィルムは、ラミネート後、接着剤の硬化を促進するため加熱保管庫にてエージングが行われるが、この際、巻皺不良が発生する場合も有る。
一方、前述した接着剤レスサーマルラミネーションによりポリオレフィン基材フィルム上に他の樹脂フィルムを積層して得られる多層構造フィルムは、製造時に揮発性有機化合物(VOC)が発生することがなく、環境負荷がないとともに省エネ性に優れ、また、接着剤由来の物質が水等によって溶出することもない。さらに、前述したラミネート後のエージングによる巻皺不良の発生もない。しかしながら、積層時の接着剤レスサーマルラミネーションによって巻き取り方向と直交する幅方向の端部にカールが発生する場合がある。このため、接着剤レスサーマルラミネーションにより得られた多層構造フィルムをロールで巻き取るときに支障を来し、また、多層構造フィルムについて行われる後加工、例えばスリット加工や製袋加工等を行うことが困難となる。
従って、本発明の目的は、ポリオレフィン基材フィルム上に、他の樹脂フィルムが無溶剤型接着剤層を介して積層された積層フィルムを、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着された多層構造を有しており、揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷を低減し、且つ接着剤レスサーマルラミネーションによるカール変形等が有効に抑制された多層構造フィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、ポリオレフィン基材フィルムのドライプロセスにより改質された表面に、少なくとも2種の他の樹脂フィルムを用い、無溶剤型接着剤層を介して積層した積層フィルムを、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着したときには、ポリオレフィン基材フィルムの特性改善(例えば耐熱性)が第1のフィルムの積層によりなされ、第2の樹脂フィルムの積層により、接着剤レスサーマルラミネーションにより由来するカールの発生が有効に抑制され、また、ポリオレフィン基材フィルムと積層フィルムを接着剤レスサーマルラミネーション、少なくとも2種の他の樹脂フィルムを、無溶剤型接着剤層を介在させて積層することにより、揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷を低減するという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる少なくとも第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを含む積層フィルムとからなり、前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層に第1の樹脂フィルムが直接接着され、第1の樹脂フィルム上に第2の樹脂フィルムが無溶剤型接着剤層を介して積層されていることを特徴とする多層構造フィルムが提供される。
本発明の多層構造フィルムにおいては、
(1)前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層は、官能基が導入された水不溶性物質により形成されており、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっていること、
(2)第1の樹脂フィルムがポリアミド樹脂により形成されており、第2の樹脂フィルムがポリエステル樹脂により形成されていること、
(3)前記ポリオレフィン基材フィルムが、エチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂により形成されていること、
(4)前記ポリオレフィン基材フィルムの厚みに対して、前記積層フィルムの厚みが10〜100%の範囲にあること、
が望ましい。
本発明によれば、また、
ドライプロセスにより形成された改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる少なくとも第1の樹脂フィルムと第2の樹脂のフィルムとが無溶剤型接着剤層を介して積層された積層フィルムとを用意する工程;
前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と前記積層フィルムの第1の樹脂フィルムとを接着剤レスサーマルラミネーションにより接着する接着剤レス接合工程;
を含むことを特徴とする多層構造フィルムの製造方法が提供される。
本発明の多層構造フィルムの製造方法においては、
(1)第1の樹脂フィルムとしてポリアミド樹脂フィルムを使用し、第2の樹脂フィルムとしてポリエステル樹脂フィルムを使用すること、
(2)前記ポリアミド樹脂フィルムは表面処理されておらず、前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と第1の樹脂フィルムの表面とを、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着すること、
(3)前記ポリオレフィン基材フィルムとして、エチレン系樹脂フィルムまたはプロピレン系樹脂フィルムを使用すること、
が好適である。
本発明の多層構造フィルムは、改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルム上に、前記ポリオレフィン基材フィルムと異なる少なくとも2種の他の樹脂フィルムを無溶剤型接着剤層を介して積層した積層フィルムを、接着剤レスサーマルラミネーションによって直接接着した多層構造を有している。このため、揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷が低減され、且つ接着剤レスサーマルラミネーションによるカール変形等を抑制し、ロール巻取り、スリット加工、製袋等の工程を効率的に行うことができる。
また、本発明の多層構造フィルムの製造方法によれば、揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷が低減され、且つ接着剤レスサーマルラミネーションによるカール変形等を抑制した多層構造フィルムを製造することができる。
本発明の多層構造フィルムの層構造を示す図。 多層構造フィルムのサーマルラミネーション直後のカール径の測定方法を示す図。 図1のポリオレフィン基材フィルムが有する改質表面層の構造を説明するための図。 本発明のポリオレフィン(直鎖状低密度ポリエチレン)フィルムを溶剤払拭し、それぞれナイロンフィルムと熱接着したときのSP値と接着強度を示す線図。(実験例1) 本発明のポリオレフィン(直鎖状低密度ポリエチレン)フィルムを溶剤払拭し、それぞれPETフィルムと熱接着したときのSP値と接着強度を示す線図。(実験例2) 本発明のポリオレフィン(ポリプロピレン)フィルムを溶剤払拭し、それぞれナイロンフィルムと熱接着したときのSP値と接着強度を示す線図。(実験例3) 本発明のポリオレフィン(ポリプロピレン)フィルムを溶剤払拭し、それぞれPETフィルムと熱接着したときのSP値と接着強度を示す線図。(実験例4)
<多層構造フィルムの層構造>
図1を参照して、全体として20で示す本発明の多層構造フィルムは、ポリオレフィン基材フィルム1に積層フィルム10が接着剤レスサーマルラミネーションにより接着された構造を有している。
ポリオレフィン基材フィルム1の表面には、後述するドライプロセスにより形成された改質表面処理層3が形成されており、かかる改質表面層3により、接着剤レスサーマルラミネーションによる積層フィルム10の積層が可能となっている。
一方、積層フィルム10は、ポリオレフィンとは異なる他の樹脂により形成された少なくとも第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7とが無溶剤型接着剤層9を介して積層された構造を有している。さらに、他の樹脂フィルムを用いる場合は、同様に無溶剤型接着剤層9を介して積層すれば良い。
即ち、図1から理解されるように、本発明の多層構造フィルム20では、第1の樹脂フィルム5がポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3に接着剤レスサーマルラミネーションにより接着された構造を有しているため、この改質表面層3と第1の樹脂フィルム5との間に接着剤層は存在しておらず、両者は直接接着された構造を有している。
本発明の多層構造フィルム20では、後述するように、第1の樹脂フィルム5に第2の樹脂フィルム7が無溶剤型接着剤層9を介して積層されている状態で、第1の樹脂フィルム5を改質表面層3に接着剤レスサーマルラミネーションにより接着するという手段が採用される。この結果、揮発性有機化合物(VOC)、必要に応じて行われる燃焼処理後の二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷が低減され、接着剤レスサーマルラミネーションによるカール変形が有効に抑制される。
また、本発明の接着剤レスサーマルラミネーション直後の多層構造フィルム20のカール変形の抑制は、図2に示すように多層構造フィルムから切り出した一定寸法のフィルム片のカール径を測定することにより確認でき、カール径が大きいほどカール変形が有効に抑制されていることを示す(後述する実施例2、比較例1を参照)。
<ポリオレフィンフィルム基材フィルム1>
本発明において、前述した改質表面層3が形成されるポリオレフィンフィルム1は、それ自体公知のオレフィン系樹脂から形成されていてよく、例えば、以下のものを例示することができる。
エチレン系樹脂:例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及びエチレンを主体とするエチレンと他のオレフィンとの共重合体等、プロピレン系樹脂:例えば、ポリプロピレン、及びプロピレンを主体とするプロピレンと他のオレフィンとの共重合体等のランダム或いはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などが挙げられる。
また、このポリオレフィンフィルム1は、単層構造、或いは多層構造を有していてもよい。
さらに、前述したポリオレフィン基材フィルム1は、それ自体公知の各種添加剤、例えば滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を含んでいてもよいが、一般的には、表面移行型(ブリーディング性)の有機系添加剤を含有していないことが望ましい。即ち、高分子系の添加剤は、一般的に表面移行性を有していないので許容できるが、表面移行性を有する有機系添加剤、具体的には、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミドに代表される有機系滑剤、グリセリンモノステアレート−ビスアミド等の有機系帯電防止剤、その他、フェノール系酸化防止剤等が配合されていると、これらが表面に多くブリーディングしてしまい、この結果、後述する接着剤レスサーマルラミネーション(熱接着)を効果的に行うことが困難となり、第1の樹脂フィルム5との接着強度の低下を生じるおそれがある。実際、後述する実験により、このような表面移行型の添加剤が添加されていない場合に、接着強度が向上することが確認されている。
本発明において、最も好ましいポリオレフィン基材フィルム1は、エチレン系樹脂或いはプロピレン系樹脂からなるものであり、特に、上記のような表面移行型有機系添加剤が配合されていないものである。
尚、ポリオレフィン基材フィルム1の厚みは特に制限されず、用途に応じて適宜の厚みを有していればよいが、一般に、ポリオレフィンに特有の柔軟性、可撓性等が要求される包装材の用途においては、改質表面層3の厚みを含めて、20〜150μm程度の厚みに設定される。
<改質表面層3>
前述したポリオレフィン基材フィルム1は、図1に示されているように、改質表面層3を有しており、かかる改質表面層3の存在により、接着剤を使用することなく、接着剤レスサーマルラミネーションにより、積層フィルム10の第1の樹脂フィルム5と熱接着することが可能となる。
このような改質表面層3は、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の含酸素官能基や、アミノ基、アミド基、イミド基等の含窒素官能基が導入された水不溶性物質(ポリオレフィン分子の分解等に由来する)から形成されているものであるが、接着剤レスサーマルラミネーションにより、特に高い接着強度が得られるものでは、図3に示されているように、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し、且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっているという傾斜分布構造を有している。
このような傾斜分布構造を有する改質表面層3は、特定の条件を満足する溶剤払拭性を有している。即ち、SP値が互いに異なる複数種の溶剤、具体的には、水(SP値=23.4(MPa)1/2)、エタノール(SP値=12.7(MPa)1/2)、アセトン(SP値=10.0(MPa)1/2)、酢酸エチル(SP値=9(MPa)1/2)、及びn−ヘキサン(SP値=7.3(MPa)1/2)を用い、これらの溶剤を脱脂綿に含ませて室温(25℃)で払拭処理してそれぞれ他の樹脂フィルムと熱接着したとき、これら溶剤のSP値が大から小となるにしたがって、接着強度(或いは濡れ張力)に一定、或いはほぼ一定の変化が観察される。
例えば、代表的なポリオレフィンフィルムである直鎖状低密度ポリエチレン(LL)フィルム及びポリプロピレン(PP)フィルムにおいて、ポリオレフィンとは異なる種類の第1の樹脂フィルム5に対して強固な接着強度が発現するような改質表面層3が形成されているとき、この改質表面層3について溶剤払拭試験を行い、それぞれ用いた溶剤のSP値と接着強度とをプロットすると、図4〜図7に示されるような曲線が得られる。(具体的な試験方法は後述する実験例参照)
このように、上記のような溶剤払拭性を有する改質表面層3について、後述する実験例の結果によると、上記の各溶剤で払拭処理した状態で、各接着剤レスにより一定の条件で第1の樹脂フィルム5(例えばポリエステルフィルム或いはポリアミドフィルム)を熱接着させたときの接着強度(T型剥離強度)を測定すると、水での払拭処理後で最も高い接着強度が得られ(例えば材料破壊を生じるほどの接着強度が得られる)、用いた溶剤のSP値の低下と共に、接着強度が低下していくことが判る。
このことから、高い接着強度が得られる改質表面層3は、水素結合により、第1の樹脂フィルム5と強固に接合することが理解され、さらに、この改質表面層3は、このような水素結合の形成に必須の官能基、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の含酸素官能基や、アミノ基、アミド基、イミド基等の含窒素官能基を、多く含んでいると推定される。
実際、材料破壊が生じるほど強く接合されたポリオレフィン基材フィルム1と第1の樹脂フィルム5との接着界面に水滴を付着させてT型剥離強度を測定すると、両フィルムは、速やかに剥離してしまうことが確認されている。かかる事実は、両フィルムの接合が水素結合によるものであり、水の存在が、このような水素結合を破壊していることを示している。
より具体的に説明すると、SP値とは、Hiderbrand溶解度パラメータ―と呼ばれる指数であり、凝集エネルギー密度の1/2乗値であり、物質の水素結合の程度を示し、水素結合の程度が大きいと大きな値を示し、水素結合の程度が小さいと小さな値を示し、物質同士の相溶性を評価するための尺度として広く利用されており、この差が小さいほど、両物質は高い親和性を示し、相溶性が高いことを意味している。
従って、SP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに最も高い接着強度を示すことは、かかる払拭処理により、改質表面層3を形成している成分は除去されず、この改質表面層3は、基本的に水不溶性物質により形成されていることが判る。そして、SP値の低下に伴い、濡れ張力が低下し、且つ接着強度の低下がもたらされることから、本質的に水不溶性の物質に官能基が導入されていると同時に、改質表面層3の表層部分には、図3に示されているように、官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質3aが多く分布しており、それよりも深い位置では、官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質3bが多く分布しており、さらに、その下の深部では、官能基数が少ない高分子の水不溶性物質3cが多く分布していることが判る。
即ち、SP値の大きな溶剤、例えばエタノール(SP値=12.7(MPa)1/2)で払拭処理を行ったときは、官能基数が最も多い低分子の水不溶性物質3aが僅かに除去される程度であるため、払拭処理後の濡れ張力は、水による払拭処理後の濡れ張力に近く、接着強度の低下も僅かである。しかるに、SP値の小さな溶剤、例えばn−ヘキサン(SP値=7.3(MPa)1/2)で払拭処理を行ったときは、官能基数が最も多い低分子の水不溶性物質3a、官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質3bの一部、或いは殆どが除去され、濡れ張力は、水による払拭処理後の濡れ張力に対して極めて小さくなり、同時に、第1の樹脂フィルム5との接着力も近く大きく低下してしまう。
このように、本発明のポリオレフィン基材フィルム1の表面に形成されている改質表面層3において、高い熱接着性を発現し得るものは、その改質表面層3の払拭に用いた溶剤のSP値と接着強度に一定、或いはほぼ一定の変化が観察され、図3に示されているように、官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質3aが表面に多く分布しており、その下に官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質3bが多く分布し、最深部には、官能基数が少ない高分子の水不溶性物質3cが分布しているという官能基の傾斜分布構造が生成している。
このような官能基の傾斜分布構造を有する改質表面層3が形成されているポリオレフィン基材フィルム1では、特に優れた熱接着性が付与され、接着剤レスサーマルラミネーションにより、第1の樹脂フィルム5を材料破壊が生じるほどに強い接着強度で積層することが可能となる。即ち、改質表面処理層3の深い位置に官能基が導入された大きな分子サイズの水不溶性物質3b、3cが形成されているため、これらがしっかりとフィルム1の内部に存在するポリオレフィンに接合しており、この結果として、極めて高い熱接着性が発現しているものと考えられる。例えば、表面部分の官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質3aのみでは、このような高い熱接着性は発現しない。官能基が導入されている表面層と官能基が導入されていない下層部分とが明確に区画されてしまうため、両者の間で剥離を生じ易くなってしまい、大きな接着強度を発現することができなくなってしまうのである。
尚、上記のような改質表面層3における官能基の傾斜分布構造は、ポリオレフィンの表面処理によって得られる特有の構造であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルやナイロン等では、前述した特定の条件を満足する溶剤払拭性が得られず、むしろ濡れ張力の大小に依存している。
本発明において、ポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3は、それ自体公知のドライプロセス、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン−紫外線照射、電子線(EB)照射等により形成することができるが、前述した特定の条件を満足する溶剤払拭性を有する改質表面層3を形成するためには、プラズマ処理やコロナ処理が好ましい。
例えば、大気圧プラズマ処理は、表面処理するポリオレフィン基材フィルム1を一対の電極間に配置し、所定の雰囲気中で高周波電界を印加するという公知の手段を採用することができ、また、雰囲気を形成するガスとしては、水素、アルゴン、窒素/水素混合ガス、窒素/二酸化炭素混合ガス、酸素、アルゴン/酸素混合ガス等、公知のプラズマ処理に使用されているものを使用できるが、分子鎖の破断が過度に生じないように、ポリオレフィン基材フィルム1を形成するオレフィン系樹脂の種類に応じて適宜の条件を設定すべきである。分子鎖の破断が過度に生じてしまうと、例えばSP値の高い溶剤(例えばエタノール)を用いての払拭により、濡れ張力の大きな低下を生じてしまい、図3に示されているような官能基の傾斜分布構造が形成されなくなってしまう。
このような観点から、雰囲気中の酸素濃度は比較的小さく設定しておくことが好ましく、さらに、処理時間は比較的短時間とし、印加する高周波電界も過度に大きくしないように設定することが好ましい。具体的な処理条件は、用いるポリオレフィン基材フィルム1の種類ごとに、予めラボ実験を行って、溶剤払拭性と接着強度に一定、或いはほぼ一定の変化が得られるように設定すればよい。
上記の表面処理によって形成される改質表面層3の厚みは、特に制限されるものではないが、図3に示すような官能基の傾斜分布構造をしっかりと形成するためには、0.5〜5nm程度の薄い厚みとするのがよい。
尚、官能基の導入は、前述した溶剤払拭試験により確認することができるが、X線光電子分光装置を用い、表面の元素組成を分析し、酸素や窒素等の官能基の形成に必要な原子の存在を確認することによっても可能である。
<積層フィルム10>
ポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3には、積層フィルム10が接着剤レスサーマルラミネーションにより積層されるが、この積層フィルム10は、ポリオレフィンとは異なる樹脂から形成されている第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7とが無溶剤型接着剤層9を介して積層された層構造を有している。即ち、図1から理解されるように、第1の樹脂フィルム5が改質表面3に直接接着するように、積層フィルム10はポリオレフィン基材フィルム1に熱接着によって積層される。
かかる積層フィルム10において、第1の樹脂フィルム5は、前述したポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3に熱接着が可能な樹脂により形成されている限り特に制限はないが、例えば、以下のような樹脂により形成されているフィルムが好適である。
エチレン・ビニル系共重合体:例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体など、スチレン系樹脂:例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体など、ビニル系樹脂:例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル系樹脂:例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなど、ポリアミド樹脂:例えば、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12など、ポリエステル樹脂:例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステルなど、ポリカーボネート樹脂、生分解性樹脂:例えば、ポリ乳酸などが挙げられる。
本発明においては、特にポリオレフィンフィルム1の耐熱性を補完するという観点から、前述した樹脂の中でも耐熱性に優れた樹脂、例えば、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂が好適であり、酸素バリア性を付与するという観点からは、エチレン・ビニルアルコール共重合体が好適であり、さらに、接着剤レスサーマルラミネーションによるポリオレフィン基材フィルム1(改質表面層3)に対する接着性という観点からは、ポリアミド樹脂が最も好適である。
また、積層フィルム10において、無溶剤型接着剤層9を介して第1の樹脂フィルム5上に積層される第2の樹脂フィルム7は、接着剤レスラミネーションに由来するカールの発生を抑制するフィルムであり、このような目的を達成できる限り、その材質は特に制限されないが、通常、ポリオレフィン基材フィルム1に比して伸びの小さい一軸、或いは二軸延伸フィルムが好適に使用される。例えば、前述したポリアミド樹脂やポリエステル樹脂から形成される延伸フィルムは、ポリオレフィン基材フィルム1に耐熱性を付与できるばかりか、カールの発生を有効に抑制できる点で最も好ましく、特にPET等のポリエステル樹脂は、透明性に優れ、印刷等による加飾の点で、第2の樹脂フィルム7として最適である。
さらに、本発明においては、前述したように、上記の第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7との間に介在する接着剤層9は、ドライラミネート用接着剤として無溶剤型のものを用いて形成される。このようにドライラミネート接着剤として有機溶剤型ではなく、無溶剤型のドライラミネート接着剤を使用することにより、乾燥工程を省略し、省エネルギー、省資源化を図り、しかも、残留溶剤による環境への悪影響を回避し、接着剤レスサーマルラミネーションによりポリオレフィン基材フィルム1(改質表面層3)と積層フィルム10(第1の樹脂フィルム5)とを接着することによる利点を最大限に活かすることができる。勿論、通常の有溶剤型のドライラミネート型接着剤を用いて接着剤層9を形成することもできるが、この場合には、カール変形を防止することはできるが、環境安定性の点では不満足となる。
上記の無溶剤型ドライラミネート接着剤は、例えば、2液のウレタン反応型接着剤であり、主剤のイソシアネートと硬化剤であるポリオールを混合したもので、有機溶剤型接着剤に比して低分子、低粘度であり、第1の樹脂フィルム5及び/又は第2の樹脂フィルム7の接着面に塗布し、両フィルムを貼り付けることにより、主剤と硬化剤とが架橋し、且つ高分子量化することにより、第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7とを強固に接着する。
前述した第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7から成る積層フィルム10の厚みは、特に制限されないが、一般的には、ポリオレフィン基材フィルム1が有する優れた可撓性や柔軟性が損なわれない範囲で、第1の樹脂フィルム5や第2の樹脂フィルム7に要求される特性が十分に発揮される厚みに設定される。例えば、この積層フィルム10の厚み(第1の樹脂フィルム5と無溶剤型接着剤層9と第2の樹脂フィルム7との合計厚み)は、前述したポリオレフィン基材1の厚みの10〜100%程度の厚みに設定されることが好ましい。
さらに、第1の樹脂フィルム5や第2の樹脂フィルム7の厚みは、積層フィルム10の厚みが上記範囲内となるとを条件として、これらフィルム5,7に要求される特性が十分に発揮される厚みに設定される。
例えば、第1の樹脂フィルム5としてポリアミド樹脂やポリエステル樹脂等の耐熱性樹脂のフィルムを使用する場合には、その厚みは、通常10〜25μm程度でよく、さらに第2の樹脂フィルム7の厚みは、カール変形の抑制という観点から、通常、10〜25μm程度でよい。
本発明においては、前述した積層フィルム10の外面(第2の樹脂フィルム7の外面)には、印刷により加飾性を高めることができるが、第2の樹脂フィルム7としてポリエステル樹脂等の透明性に優れた樹脂のフィルムを用いた場合には、第2の樹脂フィルム7側の表面或いは第2の樹脂フィルム7の内面に印刷を施すこともできる。この場合、用いるインキとしては、環境負荷を低減できるインキ(例えば水性インキ)が好適である。
また、上記印刷は、多層構造フィルム20を用いて包装袋とした後、印刷を行っても良い。(特許第551744号公報、同5517447号公報参照)
尚、印刷手段としては、グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等、公知の印刷方法を採用することができる。
また、接着剤レスサーマルラミネーションによるポリオレフィン基材フィルム1と第1の樹脂フィルム5との接着性が損なわれず、しかも第2の樹脂フィルム7によるカール変形抑制効果が低下せず、且つ第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7とが無溶剤型接着剤層9を介して強固に接着できる限りにおいて、第1の樹脂フィルム5や第2の樹脂フィルム7は、それぞれ、多層構造を有していてもよく、例えば、アルミ蒸着膜、酸化アルミや酸化ケイ素等の金属酸化物の蒸着膜が形成されているものであってもよいし、かかる蒸着膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等によるオーバーコート層が設けられてガスバリア性が高められているものであってもよい。
<多層構造フィルム20の製造>
前述した多層構造を有する本発明の多層構造フィルム20は、予め作成された積層フィルム10の第1の樹脂フィルム5と、ポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3とを接着剤レスサーマルラミネーションにより接着させることにより製造される。即ち、前述した説明から理解されるように、第2の樹脂フィルム7が無溶剤型接着剤層9を介して第1の樹脂フィルム5上に積層されている状態で、第1の樹脂フィルム5をポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3に、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着させる。
例えば、第2の樹脂フィルム7が積層されていない状態で、第1の樹脂フィルム5をポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3に熱接着させるという手段を採用すると、ポリオレフィン基材フィルム1と第1の樹脂フィルム5との伸びの違いにより、カール変形が大きく、得られたフィルムをロールで巻き取ることも困難となってしまう。この結果、その後の後加工、例えばスリット加工、製袋加工等が困難となってしまう。
しかるに、第2の樹脂フィルム7が積層されている状態で、接着剤レスサーマルラミネーションを行えば、第2の樹脂フィルム7の存在により、前述した伸びの違いがフィルム間に存在してもカールの発生が有効に抑制され、ロール巻取りを有効に行うことができ、後加工も容易に行うことが可能となる。
ポリオレフィン基材フィルム1(改質表面層3)と第1の樹脂フィルム5との接着剤レスサーマルラミネーション(熱接着)は、ポリオレフィン基材フィルム1と積層フィルム10の第1の樹脂フィルム5を、前記ポリオレフィン基材フィルム1の樹脂の融点、或いは融点近傍の温度に加熱加圧接着後、冷却することにより行われる。
さらに、上記の接着剤レスのサーマルラミネーションにおいて、より高い接着強度を得るために、第1の樹脂フィルム5の表面を表面処理して濡れ張力を向上させておくとも可能である。このような表面処理手段としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線オゾン処理、EB照射処理等、種々の手段を採用することができるが、生産性やコスト等の観点から、プラズマ処理、コロナ処理が好適である。
尚、本発明においては、例えばPETフィルム等のポリエステルフィルムを第1の樹脂フィルム5として積層する場合には、材料破壊が生じるほど高い接着性を確保するためには、上記のような表面処理を行っておくことが望ましいが、注目すべきは、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルムを第1の樹脂フィルム5として積層する場合である。このようなポリアミドフィルムについては、驚くべきことに、表面処理を行っていない場合にも材料破壊が生じるほど、高い接着強度を得ることができる。
尚、本発明において、接着強度を測定する場合、その試験に供する試料のポリオレフィン基材フィルム1には、改質表面層3とは反対側の表面に、直鎖低密度ポリエチレンやポリオレフィン等の同種のオレフィン系樹脂のフィルムを熱接着により積層し、このポリオレフィン基材フィルム1を補強しておくことが必要であることを留意されたい。試料のポリオレフィン基材フィルム1は他の樹脂フィルム(PETフィルム等)に比して伸びが大きいため、そのままでは、正確な剥離強度を測定することができないからである。
上記のようにして得られる本発明の多層構造フィルム20は、揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷が低減され、ポリオレフィン基材フィルム1上に積層フィルム10(第1の樹脂フィルム5)が接着剤を使用しない接着剤レスサーマルラミネーションにより積層されていながら、カール変形が有効に抑制されている。このため、ロール巻取りや、スリット加工、製袋加工等の後加工を有効に行うことができ、接着剤レスサーマルラミネーションによる利点を最大限に活かして、ポリオレフィン基材フィルム1の特性を積層フィルム10により改善することができる。
特にポリエステルフィルムやポリアミドフィルムが第1の樹脂フィルム或いは第2の樹脂フィルムとして積層されている多層構造フィルムは、耐熱性が大きく向上しており、耐熱性が要求される用途、例えば、レトルト殺菌に供される内容物を収容する包装袋として好適に使用することができる。
<実施例1>
本発明で用いるポリオレフィン基材フィルムの改質表面層における溶剤払拭性と接着強度の変化を、次の実験例にて説明する。
1.大気圧プラズマ処理を行ったポリオレフィンフィルムの濡れ張力
後述する実験例で表面処理を行い、SP値の異なる各溶剤で室温払拭処理したポリオレフィンフィルム:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルムの濡れ張力を表1に示す。
尚、試験液は、和光純薬(株)製濡れ張力標準試験液を用い、濡れ張力の測定は、JIS K6768に準拠した。
2.接着剤レスによるサーマルラミネーション(熱接着)
表面処理を行い、改質表面層を形成したポリオレフィンフィルム:LLDPEフィルム、PPフィルムと、他の樹脂フィルム:延伸ポリエステル(PET)フィルム、延伸ナイロン(NY)フィルムから100mm幅×100mm長のフィルム片を切り出し、ポリオレフィンフィルムをSP値の異なる各溶剤を用いて室温払拭処理し、真空乾燥を行った。次いで、それぞれのポリオレフィンフィルムを、補強裏打ち積層材を介して40℃のラバー受台に乗せ、ポリオレフィンフィルムの改質表面層上に他の樹脂フィルムを載置し、下記条件で加熱盤にて熱接着した。
(1)補強裏打ち積層材
LLDPEフィルム:PETフィルム(12μ)/NYフィルム(15μ)/LLD
PE(50μ)
PPフィルム:PETフィルム(12μ)/アルミ箔(17μ)/PPフィルム
(70μ)
(2)熱接着条件
LLDPEフィルム:140℃、0.41MPa、10秒
PPフィルム:180℃、0.41MPa、10秒
3.接着強度の測定
それぞれの熱接着部から7mm幅×60mm長を切り出し、テンシロンを用い、JIS K6854−3に準拠して、T字剥離強度(Tピール強度)(速度100mm/分)を測定し、測定結果を15mm幅に換算して算出した。
[実験例1]
ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、第1の樹脂フィルムとして厚み:12μの延伸ナイロン(NY)フィルムを用いた。
尚、上記のLLDPEフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
LLDPEフィルムを下記条件にて大気圧プラズマ処理を行い、LLDPEフィルムに改質表面層を形成した。
高周波電源周波数:30KHz
電極間距離:2.0mm
処理ガス:N主体(CO、H微量添加)
放電エネルギー:100W・min/m
一方、NYフィルムを、上記条件中、放電エネルギーを80W・min/mとして大気圧プラズマ処理を行い、LLDPEフィルムとの接着面を表面処理面とした。
尚、コロナ処理による表面処理面を有するNYフィルム、未表面処理面を有するNYフィルムは、フィルムメーカーからの購入品を供した。
次いで、このLLDPEフィルム及びNYフィルムを用いて、前記した熱接着法により熱接着し、接着強度を測定した。
これらの結果を表2、図4のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムと、他の樹脂フィルムのP−NY、C−NY,NC−NYとの接着強度において、P−NYとは全ての払拭処理領域で、また、C−NYとはSP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに、いずれも5N/15mmで破断して接着性が良好であることが示された。また、C−NY、NC−NYとは、SP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
さらに、第1の樹脂フィルムをナイロンフィルムとする場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理、或いは未表面処理のいずれでも良いことを示唆している。
[実験例2]
実験例1において、他の樹脂フィルム(第1の樹脂フィルム)として厚み12μの延伸PETフィルムを用い、前述した条件中、放電エネルギーを65W・min/m2としてLLDPEフィルムとの接着面を表面処理面とした以外は、同様に熱接着を行い、接着強度を測定した。
尚、コロナ処理による表面処理面を有するPETフィルム、未表面処理面を有するPETフィルムは、フィルムメーカーからの購入品を接着強度測定に供した。
これらの結果を表3、図5のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムと、第1の樹脂フィルムのP−PET、C−PET、NC−PETとの接着強度において、SP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
尚、NC−PETは、接着強度が小さく、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度の一定の変化が現れず、第1の樹脂フィルムがPETフィルム等のポリエステルフィルムの場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理が望ましいことを示唆している。
[実験例3]
実験例1において、ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μのポリプロピレン(PP)フィルムを用いて大気圧プラズマ処理を行い、ポリプロピレンフィルムに改質表面層を形成した以外は、同様に熱接着を行い、接着強度を測定した。
尚、上記のPPフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
これらの結果を表4、図6のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理したポリプロピレン(PP)フィルムと、第1の樹脂フィルムのP−NY、C−NY、NC−NYとの接着強度において、広い払拭処理領域で、いずれも5N/15mmで破断して接着性が良好であることが示された。また、C−NY、NC−NYとは、SP値の最も高い溶剤で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
さらに、実験例1と同様に、第1の樹脂フィルムをナイロンフィルムとする場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理、或いは未表面処理のいずれでも良いことを示唆している。
[実験例4]
実験例2において、ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μのポリプロピレン(PP)フィルムを用いて大気圧プラズマ処理を行い、ポリプロピレンフィルムに改質表面層を形成した以外は、同様に熱接着を行い、接着強度を測定した。
尚、上記のPPフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
これらの結果を表5、図7のグラフに示す。
本実験例によれば、SP値の異なる各溶剤で払拭処理したポリプロピレン(PP)フィルムと、第1の樹脂フィルムのP−PET、C−PET、NC−PETとの接着強度において、一部の払拭処理領域で、P−PET、C−PETとはいずれも3N/15mmで破断して接着性が良好であることが示された。また、P−PET、C−PETとは、SP値の高い溶剤で払拭処理したときに最も高い接着強度を示し、SP値の最も低いヘキサンで払拭処理したときに低い接着強度を示しており、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度にほぼ一定の変化が現れている。
尚、NC−PETは、接着強度が小さく、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度の一定の変化が現れず、実験例2と同様に、第1の樹脂フィルムがPETフィルム等のポリエステルフィルムの場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理が望ましいことを示唆している。
前述した実施例により、本発明のポリオレフィンフィルムの改質表面層は、溶剤払拭性と接着強度に一定、或いはほぼ一定の変化が観察されたことにより、官能基が導入された水不溶性物質により形成され、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し、且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっている分布構造を有することが判る。
<実施例2>
実験例1において、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)基材フィルムと異なる第1の樹脂(ナイロン)フィルム(15μ)(大気圧プラズマ処理)/無溶剤型ウレタン系接着剤/第2の樹脂(PET)フィルム(12μ)(大気圧プラズマ処理)から成る積層フィルムを用いた以外は、同様にLLDPEフィルムの大気圧プラズマ処理を行って改質表面層を形成し、LLDPEフィルムの改質表面層に第1の樹脂フィルムが直接接着されるように熱接着して多層構造フィルムとした。
次いで、この多層構造フィルムから切り出し寸法:100mm幅×100mm長のフィルム片を切り出し、カール径を測定した。
測定の結果、そのカール径は30mmであった。
<比較例1>
実施例2において、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE))基材フィルムと異なるフィルムとして単層のナイロンフィルム(15μ)(大気圧プラズマ処理)を用いた以外は、同様にLLDPEフィルムの大気圧プラズマ処理を行って改質表面層を形成し、LLDPEフィルムの改質表面層にナイロンフィルムを熱接着して多層構造フィルムとした。
次いで、同様にカール径を測定した結果、そのカール径は10mmであった。
この結果、実施例2の本発明の多層構造フィルムのカール変形が抑制されていることが判る。
一方、比較例1の多層構造フィルムのカール変形が抑制されていないことが判る。
1:ポリオレフィン基材フィルム
3:改質表面層
5:第1の樹脂フィルム
7:第2の樹脂フィルム
9:接着剤層
10:積層フィルム
20:多層構造フィルム

Claims (9)

  1. 改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる少なくとも第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを含む積層フィルムとからなり、前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層に第1の樹脂フィルムが直接接着され、第1の樹脂フィルム上に第2の樹脂フィルムが無溶剤型接着剤層を介して積層されていることを特徴とする多層構造フィルム。
  2. 前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層は、官能基が導入された水不溶性物質により形成されており、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっている請求項1に記載の多層構造フィルム。
  3. 第1の樹脂フィルムがポリアミド樹脂により形成されており、第2の樹脂フィルムがポリエステル樹脂により形成されている請求項1または2に記載の多層構造フィルム。
  4. 前記ポリオレフィン基材フィルムが、エチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂により形成されている請求項1〜3の何れかに記載の多層構造フィルム。
  5. 前記ポリオレフィン基材フィルムの厚みに対して、前記積層フィルムの厚みが10〜100%の範囲にある請求項1〜4の何れかに記載の多層構造フィルム。
  6. ドライプロセスにより形成された改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる少なくとも第1の樹脂フィルムと第2の樹脂のフィルムとが無溶剤型接着剤層を介して積層された積層フィルムとを用意する工程;
    前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と前記積層フィルムの第1の樹脂フィルムとを接着剤レスサーマルラミネーションにより接着する接着剤レス接合工程;
    を含むことを特徴とする多層構造フィルムの製造方法。
  7. 第1の樹脂フィルムとしてポリアミド樹脂フィルムを使用し、第2の樹脂フィルムとしてポリエステル樹脂フィルムを使用する請求項6に記載の多層構造フィルムの製造方法。
  8. 前記ポリアミド樹脂フィルムは表面処理されておらず、前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と第1の樹脂フィルムの表面とを、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着する請求項7に記載の多層構造フィルムの製造方法。
  9. 前記ポリオレフィン基材フィルムとして、エチレン系樹脂フィルムまたはプロピレン系樹脂フィルムを使用する請求項6〜8の何れかに記載の多層構造フィルムの製造方法。
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