JP6668704B2 - 多層構造フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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ところで、フィルムの分野では、用途に応じた特性を持たせるために、異なるフィルム同士を積層して使用する場合が多い。例えば、ポリオレフィンフィルムは、非常に柔軟であるが、耐熱性が不満足であるために、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム或いは6−ナイロン等のポリアミドフィルムと積層されて使用されることがある。このような多層構造フィルムの製造には、ポリオレフィンフィルムは他の樹脂フィルムとの接着性に乏しいため、一般的に、特許文献1に提案されているように有機溶剤型接着剤のウレタン系接着剤等のドライラミネート用接着剤が使用される。
この結果、揮発性有機化合物(VOC)、必要に応じて行われる燃焼処理後の二酸化炭素ガスの排出による温暖化といった環境負荷の増大を招くことになる。
また、このような多層構造フィルムは、ラミネート後、接着剤の硬化を促進するため加熱保管庫にてエージングが行われるが、この際、巻皺不良が発生する場合も有る。
一方、前述した接着剤レスサーマルラミネーションによりポリオレフィン基材フィルム上に他の樹脂フィルムを積層して得られる多層構造フィルムは、製造時に揮発性有機化合物(VOC)が発生することがなく、環境負荷がないとともに省エネ性に優れ、また、接着剤由来の物質が水等によって溶出することもない。さらに、前述したラミネート後のエージングによる巻皺不良の発生もない。しかしながら、積層時の接着剤レスサーマルラミネーションによって巻き取り方向と直交する幅方向の端部にカールが発生する場合がある。このため、接着剤レスサーマルラミネーションにより得られた多層構造フィルムをロールで巻き取るときに支障を来し、また、多層構造フィルムについて行われる後加工、例えばスリット加工や製袋加工等を行うことが困難となる。
(1)前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層は、官能基が導入された水不溶性物質により形成されており、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっていること、
(2)第1の樹脂フィルムがポリアミド樹脂により形成されており、第2の樹脂フィルムがポリエステル樹脂により形成されていること、
(3)前記ポリオレフィン基材フィルムが、エチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂により形成されていること、
(4)前記ポリオレフィン基材フィルムの厚みに対して、前記積層フィルムの厚みが10〜100%の範囲にあること、
が望ましい。
ドライプロセスにより形成された改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる少なくとも第1の樹脂フィルムと第2の樹脂のフィルムとが無溶剤型接着剤層を介して積層された積層フィルムとを用意する工程;
前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と前記積層フィルムの第1の樹脂フィルムとを接着剤レスサーマルラミネーションにより接着する接着剤レス接合工程;
を含むことを特徴とする多層構造フィルムの製造方法が提供される。
(1)第1の樹脂フィルムとしてポリアミド樹脂フィルムを使用し、第2の樹脂フィルムとしてポリエステル樹脂フィルムを使用すること、
(2)前記ポリアミド樹脂フィルムは表面処理されておらず、前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と第1の樹脂フィルムの表面とを、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着すること、
(3)前記ポリオレフィン基材フィルムとして、エチレン系樹脂フィルムまたはプロピレン系樹脂フィルムを使用すること、
が好適である。
また、本発明の多層構造フィルムの製造方法によれば、揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素ガスによる温暖化への環境負荷が低減され、且つ接着剤レスサーマルラミネーションによるカール変形等を抑制した多層構造フィルムを製造することができる。
図1を参照して、全体として20で示す本発明の多層構造フィルムは、ポリオレフィン基材フィルム1に積層フィルム10が接着剤レスサーマルラミネーションにより接着された構造を有している。
一方、積層フィルム10は、ポリオレフィンとは異なる他の樹脂により形成された少なくとも第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7とが無溶剤型接着剤層9を介して積層された構造を有している。さらに、他の樹脂フィルムを用いる場合は、同様に無溶剤型接着剤層9を介して積層すれば良い。
また、本発明の接着剤レスサーマルラミネーション直後の多層構造フィルム20のカール変形の抑制は、図2に示すように多層構造フィルムから切り出した一定寸法のフィルム片のカール径を測定することにより確認でき、カール径が大きいほどカール変形が有効に抑制されていることを示す(後述する実施例2、比較例1を参照)。
本発明において、前述した改質表面層3が形成されるポリオレフィンフィルム1は、それ自体公知のオレフィン系樹脂から形成されていてよく、例えば、以下のものを例示することができる。
エチレン系樹脂:例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及びエチレンを主体とするエチレンと他のオレフィンとの共重合体等、プロピレン系樹脂:例えば、ポリプロピレン、及びプロピレンを主体とするプロピレンと他のオレフィンとの共重合体等のランダム或いはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などが挙げられる。
また、このポリオレフィンフィルム1は、単層構造、或いは多層構造を有していてもよい。
前述したポリオレフィン基材フィルム1は、図1に示されているように、改質表面層3を有しており、かかる改質表面層3の存在により、接着剤を使用することなく、接着剤レスサーマルラミネーションにより、積層フィルム10の第1の樹脂フィルム5と熱接着することが可能となる。
例えば、代表的なポリオレフィンフィルムである直鎖状低密度ポリエチレン(LL)フィルム及びポリプロピレン(PP)フィルムにおいて、ポリオレフィンとは異なる種類の第1の樹脂フィルム5に対して強固な接着強度が発現するような改質表面層3が形成されているとき、この改質表面層3について溶剤払拭試験を行い、それぞれ用いた溶剤のSP値と接着強度とをプロットすると、図4〜図7に示されるような曲線が得られる。(具体的な試験方法は後述する実験例参照)
このことから、高い接着強度が得られる改質表面層3は、水素結合により、第1の樹脂フィルム5と強固に接合することが理解され、さらに、この改質表面層3は、このような水素結合の形成に必須の官能基、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の含酸素官能基や、アミノ基、アミド基、イミド基等の含窒素官能基を、多く含んでいると推定される。
実際、材料破壊が生じるほど強く接合されたポリオレフィン基材フィルム1と第1の樹脂フィルム5との接着界面に水滴を付着させてT型剥離強度を測定すると、両フィルムは、速やかに剥離してしまうことが確認されている。かかる事実は、両フィルムの接合が水素結合によるものであり、水の存在が、このような水素結合を破壊していることを示している。
従って、SP値の最も高い溶剤である水で払拭処理したときに最も高い接着強度を示すことは、かかる払拭処理により、改質表面層3を形成している成分は除去されず、この改質表面層3は、基本的に水不溶性物質により形成されていることが判る。そして、SP値の低下に伴い、濡れ張力が低下し、且つ接着強度の低下がもたらされることから、本質的に水不溶性の物質に官能基が導入されていると同時に、改質表面層3の表層部分には、図3に示されているように、官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質3aが多く分布しており、それよりも深い位置では、官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質3bが多く分布しており、さらに、その下の深部では、官能基数が少ない高分子の水不溶性物質3cが多く分布していることが判る。
即ち、SP値の大きな溶剤、例えばエタノール(SP値=12.7(MPa)1/2)で払拭処理を行ったときは、官能基数が最も多い低分子の水不溶性物質3aが僅かに除去される程度であるため、払拭処理後の濡れ張力は、水による払拭処理後の濡れ張力に近く、接着強度の低下も僅かである。しかるに、SP値の小さな溶剤、例えばn−ヘキサン(SP値=7.3(MPa)1/2)で払拭処理を行ったときは、官能基数が最も多い低分子の水不溶性物質3a、官能基数が中程度の中分子の水不溶性物質3bの一部、或いは殆どが除去され、濡れ張力は、水による払拭処理後の濡れ張力に対して極めて小さくなり、同時に、第1の樹脂フィルム5との接着力も近く大きく低下してしまう。
このような官能基の傾斜分布構造を有する改質表面層3が形成されているポリオレフィン基材フィルム1では、特に優れた熱接着性が付与され、接着剤レスサーマルラミネーションにより、第1の樹脂フィルム5を材料破壊が生じるほどに強い接着強度で積層することが可能となる。即ち、改質表面処理層3の深い位置に官能基が導入された大きな分子サイズの水不溶性物質3b、3cが形成されているため、これらがしっかりとフィルム1の内部に存在するポリオレフィンに接合しており、この結果として、極めて高い熱接着性が発現しているものと考えられる。例えば、表面部分の官能基数が多く導入された低分子の水不溶性物質3aのみでは、このような高い熱接着性は発現しない。官能基が導入されている表面層と官能基が導入されていない下層部分とが明確に区画されてしまうため、両者の間で剥離を生じ易くなってしまい、大きな接着強度を発現することができなくなってしまうのである。
このような観点から、雰囲気中の酸素濃度は比較的小さく設定しておくことが好ましく、さらに、処理時間は比較的短時間とし、印加する高周波電界も過度に大きくしないように設定することが好ましい。具体的な処理条件は、用いるポリオレフィン基材フィルム1の種類ごとに、予めラボ実験を行って、溶剤払拭性と接着強度に一定、或いはほぼ一定の変化が得られるように設定すればよい。
ポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3には、積層フィルム10が接着剤レスサーマルラミネーションにより積層されるが、この積層フィルム10は、ポリオレフィンとは異なる樹脂から形成されている第1の樹脂フィルム5と第2の樹脂フィルム7とが無溶剤型接着剤層9を介して積層された層構造を有している。即ち、図1から理解されるように、第1の樹脂フィルム5が改質表面3に直接接着するように、積層フィルム10はポリオレフィン基材フィルム1に熱接着によって積層される。
エチレン・ビニル系共重合体:例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体など、スチレン系樹脂:例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体など、ビニル系樹脂:例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル系樹脂:例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなど、ポリアミド樹脂:例えば、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12など、ポリエステル樹脂:例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステルなど、ポリカーボネート樹脂、生分解性樹脂:例えば、ポリ乳酸などが挙げられる。
例えば、第1の樹脂フィルム5としてポリアミド樹脂やポリエステル樹脂等の耐熱性樹脂のフィルムを使用する場合には、その厚みは、通常10〜25μm程度でよく、さらに第2の樹脂フィルム7の厚みは、カール変形の抑制という観点から、通常、10〜25μm程度でよい。
また、上記印刷は、多層構造フィルム20を用いて包装袋とした後、印刷を行っても良い。(特許第551744号公報、同5517447号公報参照)
尚、印刷手段としては、グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等、公知の印刷方法を採用することができる。
前述した多層構造を有する本発明の多層構造フィルム20は、予め作成された積層フィルム10の第1の樹脂フィルム5と、ポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3とを接着剤レスサーマルラミネーションにより接着させることにより製造される。即ち、前述した説明から理解されるように、第2の樹脂フィルム7が無溶剤型接着剤層9を介して第1の樹脂フィルム5上に積層されている状態で、第1の樹脂フィルム5をポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3に、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着させる。
例えば、第2の樹脂フィルム7が積層されていない状態で、第1の樹脂フィルム5をポリオレフィン基材フィルム1の改質表面層3に熱接着させるという手段を採用すると、ポリオレフィン基材フィルム1と第1の樹脂フィルム5との伸びの違いにより、カール変形が大きく、得られたフィルムをロールで巻き取ることも困難となってしまう。この結果、その後の後加工、例えばスリット加工、製袋加工等が困難となってしまう。
しかるに、第2の樹脂フィルム7が積層されている状態で、接着剤レスサーマルラミネーションを行えば、第2の樹脂フィルム7の存在により、前述した伸びの違いがフィルム間に存在してもカールの発生が有効に抑制され、ロール巻取りを有効に行うことができ、後加工も容易に行うことが可能となる。
特にポリエステルフィルムやポリアミドフィルムが第1の樹脂フィルム或いは第2の樹脂フィルムとして積層されている多層構造フィルムは、耐熱性が大きく向上しており、耐熱性が要求される用途、例えば、レトルト殺菌に供される内容物を収容する包装袋として好適に使用することができる。
本発明で用いるポリオレフィン基材フィルムの改質表面層における溶剤払拭性と接着強度の変化を、次の実験例にて説明する。
1.大気圧プラズマ処理を行ったポリオレフィンフィルムの濡れ張力
後述する実験例で表面処理を行い、SP値の異なる各溶剤で室温払拭処理したポリオレフィンフィルム:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルムの濡れ張力を表1に示す。
尚、試験液は、和光純薬(株)製濡れ張力標準試験液を用い、濡れ張力の測定は、JIS K6768に準拠した。
表面処理を行い、改質表面層を形成したポリオレフィンフィルム:LLDPEフィルム、PPフィルムと、他の樹脂フィルム:延伸ポリエステル(PET)フィルム、延伸ナイロン(NY)フィルムから100mm幅×100mm長のフィルム片を切り出し、ポリオレフィンフィルムをSP値の異なる各溶剤を用いて室温払拭処理し、真空乾燥を行った。次いで、それぞれのポリオレフィンフィルムを、補強裏打ち積層材を介して40℃のラバー受台に乗せ、ポリオレフィンフィルムの改質表面層上に他の樹脂フィルムを載置し、下記条件で加熱盤にて熱接着した。
(1)補強裏打ち積層材
LLDPEフィルム:PETフィルム(12μ)/NYフィルム(15μ)/LLD
PE(50μ)
PPフィルム:PETフィルム(12μ)/アルミ箔(17μ)/PPフィルム
(70μ)
(2)熱接着条件
LLDPEフィルム:140℃、0.41MPa、10秒
PPフィルム:180℃、0.41MPa、10秒
3.接着強度の測定
それぞれの熱接着部から7mm幅×60mm長を切り出し、テンシロンを用い、JIS K6854−3に準拠して、T字剥離強度(Tピール強度)(速度100mm/分)を測定し、測定結果を15mm幅に換算して算出した。
ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、第1の樹脂フィルムとして厚み:12μの延伸ナイロン(NY)フィルムを用いた。
尚、上記のLLDPEフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
LLDPEフィルムを下記条件にて大気圧プラズマ処理を行い、LLDPEフィルムに改質表面層を形成した。
高周波電源周波数:30KHz
電極間距離:2.0mm
処理ガス:N2主体(CO2、H2微量添加)
放電エネルギー:100W・min/m2
一方、NYフィルムを、上記条件中、放電エネルギーを80W・min/m2として大気圧プラズマ処理を行い、LLDPEフィルムとの接着面を表面処理面とした。
尚、コロナ処理による表面処理面を有するNYフィルム、未表面処理面を有するNYフィルムは、フィルムメーカーからの購入品を供した。
次いで、このLLDPEフィルム及びNYフィルムを用いて、前記した熱接着法により熱接着し、接着強度を測定した。
これらの結果を表2、図4のグラフに示す。
さらに、第1の樹脂フィルムをナイロンフィルムとする場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理、或いは未表面処理のいずれでも良いことを示唆している。
実験例1において、他の樹脂フィルム(第1の樹脂フィルム)として厚み12μの延伸PETフィルムを用い、前述した条件中、放電エネルギーを65W・min/m2としてLLDPEフィルムとの接着面を表面処理面とした以外は、同様に熱接着を行い、接着強度を測定した。
尚、コロナ処理による表面処理面を有するPETフィルム、未表面処理面を有するPETフィルムは、フィルムメーカーからの購入品を接着強度測定に供した。
これらの結果を表3、図5のグラフに示す。
尚、NC−PETは、接着強度が小さく、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度の一定の変化が現れず、第1の樹脂フィルムがPETフィルム等のポリエステルフィルムの場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理が望ましいことを示唆している。
実験例1において、ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μのポリプロピレン(PP)フィルムを用いて大気圧プラズマ処理を行い、ポリプロピレンフィルムに改質表面層を形成した以外は、同様に熱接着を行い、接着強度を測定した。
尚、上記のPPフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
これらの結果を表4、図6のグラフに示す。
さらに、実験例1と同様に、第1の樹脂フィルムをナイロンフィルムとする場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理、或いは未表面処理のいずれでも良いことを示唆している。
実験例2において、ポリオレフィンフィルムとして、厚み:70μのポリプロピレン(PP)フィルムを用いて大気圧プラズマ処理を行い、ポリプロピレンフィルムに改質表面層を形成した以外は、同様に熱接着を行い、接着強度を測定した。
尚、上記のPPフィルムには、表面移行型の有機系添加剤から成る滑剤、帯電防止剤は添加されていない。
これらの結果を表5、図7のグラフに示す。
尚、NC−PETは、接着強度が小さく、改質表面層の溶剤払拭性と接着強度の一定の変化が現れず、実験例2と同様に、第1の樹脂フィルムがPETフィルム等のポリエステルフィルムの場合は、プラズマ処理またはコロナ処理の表面処理が望ましいことを示唆している。
実験例1において、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)基材フィルムと異なる第1の樹脂(ナイロン)フィルム(15μ)(大気圧プラズマ処理)/無溶剤型ウレタン系接着剤/第2の樹脂(PET)フィルム(12μ)(大気圧プラズマ処理)から成る積層フィルムを用いた以外は、同様にLLDPEフィルムの大気圧プラズマ処理を行って改質表面層を形成し、LLDPEフィルムの改質表面層に第1の樹脂フィルムが直接接着されるように熱接着して多層構造フィルムとした。
次いで、この多層構造フィルムから切り出し寸法:100mm幅×100mm長のフィルム片を切り出し、カール径を測定した。
測定の結果、そのカール径は30mmであった。
実施例2において、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE))基材フィルムと異なるフィルムとして単層のナイロンフィルム(15μ)(大気圧プラズマ処理)を用いた以外は、同様にLLDPEフィルムの大気圧プラズマ処理を行って改質表面層を形成し、LLDPEフィルムの改質表面層にナイロンフィルムを熱接着して多層構造フィルムとした。
次いで、同様にカール径を測定した結果、そのカール径は10mmであった。
一方、比較例1の多層構造フィルムのカール変形が抑制されていないことが判る。
3:改質表面層
5:第1の樹脂フィルム
7:第2の樹脂フィルム
9:接着剤層
10:積層フィルム
20:多層構造フィルム
Claims (8)
- 改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる少なくとも第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを含む積層フィルムとからなり、前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層に第1の樹脂フィルムが直接接着され、第1の樹脂フィルム上に第2の樹脂フィルムが無溶剤型接着剤層を介して積層されており、
前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層は、官能基が導入された水不溶性物質により形成されており、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっており、払拭処理後に前記第1の樹脂フィルムを熱接着させて接着強度を測定すると、用いた溶剤のSP値の低下と共に接着強度が低下していき、ヘキサンによる払拭処理後の濡れ張力が、エタノールによる払拭処理後の濡れ張力を下回ることを特徴とする多層構造フィルム。 - 第1の樹脂フィルムがポリアミド樹脂により形成されており、第2の樹脂フィルムがポリエステル樹脂により形成されている請求項1に記載の多層構造フィルム。
- 前記ポリオレフィン基材フィルムが、エチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂により形成されている請求項1又は2に記載の多層構造フィルム。
- 前記ポリオレフィン基材フィルムの厚みに対して、前記積層フィルムの厚みが10〜100%の範囲にある請求項1〜3の何れかに記載の多層構造フィルム。
- ドライプロセスにより形成された改質表面層を有するポリオレフィン基材フィルムと、前記ポリオレフィン基材フィルムとは異なる少なくとも第1の樹脂フィルムと第2の樹脂のフィルムとが無溶剤型接着剤層を介して積層された積層フィルムとを用意する工程;
前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と前記積層フィルムの第1の樹脂フィルムとを接着剤レスサーマルラミネーションにより接着する接着剤レス接合工程;
を含み、
前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層は、官能基が導入された水不溶性物質により形成されており、表層部から深部にいくにしたがい、水不溶性物質の分子に導入された官能基の数が漸次減少し且つ官能基が導入されている水不溶性物質の分子の大きさが漸次大きくなっており、払拭処理後に前記第1の樹脂フィルムを熱接着させて接着強度を測定すると、用いた溶剤のSP値の低下と共に接着強度が低下していき、ヘキサンによる払拭処理後の濡れ張力が、エタノールによる払拭処理後の濡れ張力を下回ることを特徴とする多層構造フィルムの製造方法。 - 第1の樹脂フィルムとしてポリアミド樹脂フィルムを使用し、第2の樹脂フィルムとしてポリエステル樹脂フィルムを使用する請求項5に記載の多層構造フィルムの製造方法。
- 前記ポリアミド樹脂フィルムは表面処理されておらず、前記ポリオレフィン基材フィルムの改質表面層と第1の樹脂フィルムの表面とを、接着剤レスサーマルラミネーションにより接着する請求項6に記載の多層構造フィルムの製造方法。
- 前記ポリオレフィン基材フィルムとして、エチレン系樹脂フィルムまたはプロピレン系樹脂フィルムを使用する請求項5〜7の何れかに記載の多層構造フィルムの製造方法。
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