JP5601273B2 - 酸化物単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
ガーネット単結晶には、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)結晶等があるが、YAG結晶は固体レーザー用材料として、GGG結晶は光アイソレーター用の希土類−鉄−ガーネット(RIG)膜育成用の基板として用いられている。
Cz法育成の原料融液内には、大きく分けて2種類の対流が発生している。一つは、融液内の温度差に起因する自然対流である。自然対流は、坩堝底外周部から坩堝壁に沿って上昇し、融液表面に到達した後に融液表面中心部に向かって流れ、中心部で坩堝底に向かって沈み込む。もう一つは、育成中の結晶の回転に起因し、融液に対し相対的に回転する成長界面がこれに触れる融液に与える遠心力によって生じる強制対流である。強制対流は、坩堝底中心部から育成中の結晶成長界面に向かって流れ、成長界面から坩堝外周部に向かう流れである。つまり、強制対流は、自然対流とは逆方向の流れである。
材料融液の自然対流は、融液の粘性や量、周囲の保温構造などによって変化し、強制対流は結晶の回転数によって変化するため、通常は、直胴部育成中に結晶の回転数を徐々に増加して強制対流を増加させ、自然対流と釣り合わせることで固液界面をフラットにしている。しかし、この操作は熟練した作業者でないと、固液界面がフラットになっていることを確認することができない。
ガーネット結晶のCz法においては、融液内対流が自然対流優勢の下で育成すると成長界面が融液に対して凸となり、成長界面にファセットと呼ばれる原子オーダーで平滑な面が発達する。ファセット面における成長メカニズムはファセットを形成していない部分(オフファセット部)における成長メカニズムと異なるために、ファセット成長部とオフファセット成長部とでは原子の取り込み方が異なり、極僅かであるが結晶組成に差を生じる。結晶組成が異なると格子定数にも差が生じ、ファセット部とオフファセット部の境界で歪が発生する。この歪が発生した部分は、光学用途として用いることが出来ない。
しかし、成長界面形状がフラットとなると結晶形状は捩れ易くなり、安定して結晶形状を制御するのが困難となる。結晶育成が進行し、坩堝内融液の残量が減少してくると、融液内温度差が減少し自然対流が弱くなるのに対して、結晶回転による強制対流は強くなるために、成長界面はフラットから凹に変化してしまい、益々、結晶形状の制御が困難となる。従って、従来は、結晶形状の捩れが発生する前に育成を終了していたために、投入原料量に対して得られる育成結晶の重量が制限されてしまい長尺結晶を育成するのは困難であった。
肩部育成中に、結晶の界面反転を確認した後、回転速度(ω)を下記式(1)で示される範囲内に低下させることを特徴とする酸化物単結晶の製造方法が提供される。
ω0×(L/L0) > ω > ω0×(L/L0)1/4・・・ (1)
(式中、ωは界面反転後の結晶の回転速度、ω0は初期回転速度、L0は初期融液深さ、Lは育成中の融液深さである)
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、結晶の界面反転は、成長結晶の結晶径の増大とともに回転速度を大きくすることによって誘起させることを特徴とする酸化物単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、界面反転時の成長結晶の結晶径は、直胴径の60%以上であることを特徴とする酸化物単結晶の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、成長結晶の結晶径は、直胴径が50〜90mmであることを特徴とする酸化物単結晶の製造方法が提供される。
本発明において、酸化物単結晶は、酸化物の種類によって制限されるわけではないが、ガーネット結晶、特に光学製品として用いられるイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)結晶、ネオジム・ガリウム・ガーネット(NGG)結晶、ガドリニウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネット(GSGG)結晶、テルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)結晶等のガーネット結晶が挙げられる。このようなガーネット結晶には、ドーパントが添加されないアンドープ結晶だけでなく、Ca、Zr、Mg等のドーパントを添加した結晶も含まれる。
本発明のガーネット単結晶の育成方法において、用いる引き上げ法としては、特に限定されるものではなく、例えば高周波加熱方式であるチョクラルスキー法等の公知の方法及び育成炉を用いることが出来る。
例えば、目的の結晶組成により所定割合に調合した酸化物原料をイリジウム製坩堝に入れ、ガーネット単結晶では、1700〜1900℃に加熱して溶融し融液を得る。この融液に種結晶を接蝕させ、所定の結晶回転数で回転させながら、所定の速度で引き上げる。
単結晶の育成は、種結晶を融液に接触させ、上記のようにネック部を形成してから、回転数や引き上げ速度を調整して肩部を形成し、引き続き直胴部を形成する。このとき、放射温度計などを用いて単結晶と原料融液との界面近傍における融液表面の温度を測定することが好ましい。
種結晶を融液に接触させ引き上げていくと、原料融液は、結晶成長に伴って減少し、ルツボ内におけるその深さは浅くなり、このような原料融液の深さの変化に応じて、融液対流の発生原因も変わる。例えば、結晶成長初期において、原料融液が深いときは、ルツボやシードの回転等による強制対流が主であるが、原料融液が少なくなり、浅くなると、前記強制対流の影響は弱くなり、ヒータ加熱による自然対流が主となる。
一般に、引き上げられた単結晶は、種結晶から形成された結晶成長の起点であるネック部、ネック部から結晶直径を増加させながら直胴部に到る肩部、及び所定の結晶直径で成長される直胴部からなるが、肩部においては、種結晶からの結晶成長の距離(以下、成長距離と呼称することがある。)にともない結晶直径が徐々に増加するため、直胴部とは異なる内部応力が発生するためである。これにより、肩部や肩部と直胴部の境界部分に結晶欠陥が導入されたり、肩部形状による内部歪みが原因で成長した結晶にクラックと呼ばれるヒビが入ったり、ときには結晶が割れてしまったりする等の不具合が発生していた。
一般的に、SiやGaAS、GaP等の半導体結晶のCz育成においては、このような坩堝回転が実施されているが、GGGをはじめとするガーネット結晶等の酸化物結晶のCz育成においては、育成に伴って坩堝が変形して行くために坩堝回転を行うことはできない。
まず、育成開始時は低回転速度で育成を行い、結晶径の増大と供に回転速度も大きくすることによって界面反転を誘起する。回転速度や引き上げ速度は、特に制限されるわけではないが、回転速度は、20rpm(毎分20回転)以下とし、15〜20rpmとすることが好ましい。この界面反転は、肩部育成中、直胴部形成前に誘起させることが望ましい。
このときの成長結晶の結晶径は、育成目標とする直胴径の60%以上であることが好ましい。また、例えばガーネット結晶では、結晶径が50mm〜90mmで、坩堝径が100mm〜200mmの場合は、融液中の温度勾配は2℃/cm以下、初期融液深さは85mm以上の条件とすることが好ましい。
図1は、GGG単結晶育成における融液深さと結晶回転速度との関係を示したグラフである。これは、育成プログラムにおける入力値であり、融液深さは、坩堝内にチャージした原料重量から育成中に連続的に測定している育成結晶重量の測定値を引いて坩堝内に残っている融液の重量を求め、その残融液量と坩堝内形状の断面積から深さを計算したものである。
本発明では、種々の条件で融液深さと結晶回転速度との関係を検討した結果、図1の■、◆でプロットした要領で結晶回転数を変化させることで、結晶の成長界面はほぼフラットに維持する事ができ、成長界面にファセットが出現することなく高品質結晶を安定して得ることができた。界面反転後は、育成結晶の形状を保つために、融液深さの低減に伴って回転速度を小さくしてゆく。本発明における結晶回転速度は、融液深さとの関係が、次の式(1)で示される範囲となる。これは、GGG単結晶だけでなく、GSGG単結晶をはじめとするガーネット結晶全ての育成に適用することが確認されている。
ω0×(L/L0) > ω > ω0×(L/L0)1/4・・・ (1)
(式中、ωは界面反転後の結晶の回転速度、ω0は初期回転速度、L0は初期融液深さ、Lは育成中の融液深さである)
本発明によれば、得られる単結晶中には捩れは見られず、クラックもなく、光学的な歪も観察されないような優れた特性を有する育成結晶となる。また、育成された酸化物単結晶は、結晶性や均一性が高いので、ウエハーをスライスし、ポリッシュ研磨すれば、電子部品や光学用部品の材料とすることができる。ガーネット結晶からはファラデー回転効果を有する磁性ガーネット膜が得られ、この効果を利用した光アイソレータ、光サーキュレータ又は光スイッチ等にファラデー回転子として用いることができる。
サイズφ150mm×150mmHのIr製坩堝を用いて、Cz法で直胴部φ3inのGGG単結晶育成を行った。種結晶はφ7mmのGGG単結晶を用いた。育成炉は高周波誘導加熱式の単結晶育成炉を用いた。
純度4NのGd2O3とGa2O3を秤量、混合した後に、坩堝内にチャージして育成原料とした。原料チャージ後、加熱、昇温し原料を融解させた。原料融液の温度を調節し、種結晶を融液に浸して回転させながら引き上げることで結晶育成を開始した。育成開始時の結晶回転速度は15r.p.m.とした。育成中は、結晶形状の自動制御を行うために引き上げ軸に取り付けた重量センサーで結晶重量をモニターしている。
結晶径がφ70mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、成長界面の反転が起こったことを確認できた。その後、結晶径がφ75mmまでは、結晶の回転速度を15r.p.m.に保った。結晶径がφ75mmを超えた時点で、図1のように、結晶回転速度を融液深さの変化15×(L/L0)(結晶回転速度変化開始時の融液深さ:L0、育成中の融液深さ:L)に従って低下させて行き、直胴部直径φ80mm、直胴部長さ100mmの単結晶を育成した。結晶を融液から切り離した後に、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出した。
得られた結晶の形状には捩れは見られず、クラックの発生も無かった。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後は結晶離し時までフラットな界面で成長していることが判った。
結晶の直胴部からφ3in、厚さ1mmのサンプルを切り出し、サンプルの両端面を鏡面研磨後に偏光観察を行ったところ、光学的な歪は観察されず、光学用結晶として十分な結晶性であることが確認出来た。加えて、同サンプルの中心部1点と外周部4点の格子定数測定を行ったところ、平均値12.4Åに対して、最大値と最小値の差は0.0003Åと非常に均一性の高い結晶が得られたことが判った。この結果を表1に示す。
実施例1と同様の原料、種結晶、坩堝、育成装置を用いてφ3inのGGG育成を行った。
結晶径がφ70mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、成長界面の反転が起こったことを確認できた。その後、結晶径がφ75mmまでは、結晶の回転速度を15r.p.m.に保った。結晶径がφ75mmを超えた時点で、図1のように、結晶回転速度を融液深さの変化15×(L/L0)1/4に従って低下させて行き、直胴部直径φ80mm、直胴部長さ100mmの単結晶を育成した。結晶を融液から切り離した後に、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出した。
得られた結晶の形状には捩れは見られず、クラックの発生も無かった。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後は結晶離し時までほぼフラットな界面で成長していることが判った。
結晶の直胴部からφ3in、厚さ1mmのサンプルを切り出し、サンプルの両端面を鏡面研磨後に偏光観察を行ったところ、光学的な歪は観察されず、光学用結晶として十分な結晶性であることが確認出来た。加えて、同サンプルの中心部1点と外周部4点の格子定数測定を行ったところ、平均値12.4Åに対して、最大値と最小値の差は0.0005Åと非常に均一性の高い結晶が得られたことが判った。この結果を表1に示す。
サイズφ100mm×100mmHのIr製坩堝を用いて、Cz法で直胴部φ2inのGSGG単結晶育成を行った。種結晶はφ7mmのGSGG単結晶を用いた。育成炉は高周波誘導加熱式の単結晶育成炉を用いた。
純度4NのGd2O3、Sc2O3とGa2O3を秤量、混合した後に、坩堝内にチャージして育成原料とした。原料チャージ後、加熱、昇温し原料を融解させた。原料融液の温度を調節し、種結晶を融液に浸して回転させながら引き上げることで結晶育成を開始した。育成開始時の結晶回転速度は15r.p.m.とした。育成中は、結晶形状の自動制御を行うために引き上げ軸に取り付けた重量センサーで結晶重量をモニターしている。
結晶径がφ45mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、成長界面の反転が起こったことを確認できた。その後、結晶径がφ50mmまでは、結晶の回転速度を15r.p.m.に保った。結晶径がφ50mmを超えた時点で、結晶回転速度を融液深さの変化15×(L/L0)(結晶回転速度変化開始時の融液深さ:L0、育成中の融液深さ:L)に従って低下させて行き、直胴部直径φ55mm、直胴部長さ80mmの単結晶を育成した。結晶を融液から切り離した後に、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出した。
得られた結晶の形状には捩れは見られず、クラックの発生も無かった。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後は結晶離し時までフラットな界面で成長していることが判った。
結晶の直胴部からφ2in、厚さ1mmのサンプルを切り出し、サンプルの両端面を鏡面研磨後に偏光観察を行ったところ、光学的な歪は観察されず、光学用結晶として十分な結晶性であることが確認出来た。加えて、同サンプルの中心部1点と外周部4点の格子定数測定を行ったところ、平均値12.6Åに対して、最大値と最小値の差は0.0002Åと非常に均一性の高い結晶が得られたことが判った。この結果を表1に示す。
実施例3と同様の原料、種結晶、坩堝、育成装置を用いてφ2inのGSGG育成を行った。
結晶径がφ45mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、成長界面の反転が起こったことを確認できた。その後、結晶径がφ50mmまでは、結晶の回転速度を15r.p.m.に保った。結晶径がφ50mを超えた時点で、結晶回転速度を融液深さの変化15×(L/L0)1/4に従って低下させて行き、直胴部直径φ55mm、直胴部長さ80mmの単結晶を育成した。結晶を融液から切り離した後に、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出した。
得られた結晶の形状には捩れは見られず、クラックの発生も無かった。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後は結晶離し時までほぼフラットな界面で成長していることが判った。
結晶の直胴部からφ2in、厚さ1mmのサンプルを切り出し、サンプルの両端面を鏡面研磨後に偏光観察を行ったところ、光学的な歪は観察されず、光学用結晶として十分な結晶性であることが確認出来た。加えて、同サンプルの中心部1点と外周部4点の格子定数測定を行ったところ、平均値12.6Åに対して、最大値と最小値の差は0.0003Åと非常に均一性の高い結晶が得られたことが判った。この結果を表1に示す。
実施例1と同様の原料、種結晶、坩堝、育成装置を用いてφ3inのGGG育成を行った。この際、結晶の回転速度は育成開始から終了まで15r.p.m.で一定とした。
結晶径がφ70mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、界面反転が発生したことが確認された。その後、図1のように、結晶回転速度を15.p.m.に保ったままで直胴部直径φ80mm、直胴長100mmの結晶育成を行った。結晶を融液から切り離し後、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出し評価した。
結晶にクラックは見られなかったが、直胴部を20mm程育成した時点から、結晶形状に螺旋階段状の捩れが見られた。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後はフラットな界面となったことが観察された。しかし、結晶成長が進行するに従って、界面形状は、フラットから凹へ変化して行った。成長界面形状が凹になった付近から結晶形状に捩れが発生していることが判った。
結晶形状が捩れているために、本結晶からφ3in基板を得られる部分は直胴部上部の20mm程度と非常に効率が悪く高コストな育成となった。この結果を表1に示す。
実施例1と同様の原料、種結晶、坩堝、育成装置を用いてφ3inのGGG育成を行った。この際、結晶の回転速度は育成開始時は、15r.p.m.で一定とした。
結晶径がφ70mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、界面反転が発生したことが確認された。その後、結晶径がφ75mmまでは、結晶の回転速度を15r.p.m.に保った。結晶径がφ75mmを超えた時点で、図1のように、結晶回転速度を融液深さの変化15×(L/L0)2に従って低下させて行き、直胴部直径φ80mm、直胴部長さ100mmの単結晶を育成した。結晶を融液から切り離した後に、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出した。
結晶にクラックは見られなかったが、切離し界面の形状は、融液側に15mm程度凸であった。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後はフラットな界面となったことが観察された。しかし、結晶成長が進行するに従って、界面形状は、フラットから凸へ変化して行ったことが判った。加えて、界面形状が融液側に対して5mm以上凸となった付近から、結晶中に歪が発生していることが観察された。
結晶内の歪が残留しているために、本結晶からφ3in基板を得られる部分は直胴部上部の30mm程度と非常に効率が悪く高コストな育成となった。この結果を表1に示す。
実施例3と同様の原料、種結晶、坩堝、育成装置を用いてφ2inのGSGG育成を行った。この際、結晶の回転速度は育成開始から終了まで15r.p.m.で一定とした。
結晶径がφ45mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、界面反転が発生したことが確認された。その後、結晶回転速度を15.p.m.に保ったままで直胴部直径φ55mm、直胴長80mmの結晶育成を行った。結晶を融液から切り離し後、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出し評価した。
結晶にクラックは見られなかったが、直胴部を20mm程育成した時点から、結晶形状に螺旋階段状の捩れが見られた。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後はフラットな界面となったことが観察された。しかし、結晶成長が進行するに従って、界面形状は、フラットから凹へ変化して行った。成長界面形状が凹になった付近から結晶形状に捩れが発生していることが判った。
結晶形状が捩れているために、本結晶からφ2in基板を得られる部分は直胴部上部の20mm程度と非常に効率が悪く高コストな育成となった。この結果を表1に示す。
実施例3と同様の原料、種結晶、坩堝、育成装置を用いてφ2inのGSGG育成を行った。この際、結晶の回転速度は育成開始時には15r.p.m.で一定とした。
結晶径がφ45mmに達した時に結晶重量の減少が見られ、界面反転が発生したことが確認された。その後、結晶径がφ50mまでは、結晶の回転速度を15r.p.m.に保った。結晶径がφ50mmを超えた時点で、結晶回転速度を融液深さの変化15×(L/L0)2に従って低下させて行き、直胴部直径φ55mm、直胴部長さ80mmの単結晶を育成した。結晶を融液から切り離した後に、室温まで徐冷し、育成炉から結晶を取り出した。
結晶にクラックは見られなかったが、切離し界面の形状は、融液側に12mm程度凸であった。結晶をヨウ化メチレンに浸し、偏光下で成長界面形状の観察を行ったところ、育成開始から界面反転発生時までは凸界面で成長し、界面反転発生後はフラットな界面となったことが観察された。しかし、結晶成長が進行するに従って、界面形状は、フラットから凸へ変化して行ったことが判った。加えて、界面形状が融液側に対して4mm以上凸となった付近から、結晶中に歪が発生していることが観察された。
結晶内の歪が残留しているために、本結晶からφ2in基板を得られる部分は直胴部上部の25mm程度と非常に効率が悪く高コストな育成となった。この結果を表1に示す。
表1に示した結果から、実施例1〜4では、結晶の界面反転を確認した後、回転速度(ω)を式(1)で示される範囲内に低下させて肩部を形成したので、結晶形状の捩れや割れを発生させること無く、歪が無い十分に大きいガーネット結晶を育成できている。
これに対して、比較例1、3では、結晶の界面反転を確認した後も、回転速度(ω)を変化させずに肩部を形成したので、結晶形状の捩れが発生し、十分に大きいガーネット結晶を育成することができず、比較例2、4では、結晶の界面反転を確認した後、回転速度(ω)を式(1)で示される範囲外に変化させて肩部を形成したので、結晶歪が発生し、十分に大きいガーネット結晶を育成できなかった。
Claims (5)
- 炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融した後、原料融液に種結晶を接触させて成長結晶を20rpm以下の初期回転速度(ω0)で回転させながら引き上げ、引き続き、成長結晶の結晶径を増大させ、結晶の界面反転を誘起した後、直胴部を育成する回転引き上げ法による酸化物単結晶の製造方法において、
肩部育成中に、結晶の界面反転を確認した後、回転速度(ω)を下記式(1)で示される範囲内に低下させることを特徴とする酸化物単結晶の製造方法。
ω0×(L/L0) > ω > ω0×(L/L0)1/4・・・ (1)
(式中、ωは界面反転後の結晶の回転速度、ω0は初期回転速度、L0は初期融液深さ、Lは育成中の融液深さである) - 酸化物単結晶は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)結晶、ネオジム・ガリウム・ガーネット(NGG)結晶、ガドリニウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネット(GSGG)結晶、又はテルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)結晶から選ばれるガーネット結晶であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶の製造方法。
- 結晶の界面反転は、成長結晶の結晶径の増大とともに回転速度を大きくすることによって誘起させることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶の製造方法。
- 界面反転時の成長結晶の結晶径は、直胴径の60%以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶の製造方法。
- 成長結晶の結晶径は、直胴径が50〜90mmであることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶の製造方法。
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