JP3901092B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、半導体素子の製造に用いられるチョクラルスキー法(以下、CZ法ということがある)によるシリコン単結晶の製造方法および半導体素子を製造した際に高歩留まりが得られるシリコン単結晶ウエーハに関するものである。より詳しくは直径200mm以上の大直径シリコン単結晶であっても、シリコン単結晶成長時に導入されるグローンイン欠陥(以下、成長欠陥と言うことがある)が少なく、かつシリコン単結晶中の格子間酸素濃度を低く制御することにより極めて高品質のシリコンウエーハを、高生産性で得るための製造方法および高品質、大口径シリコンウエーハに関するものである。
背景技術
半導体素子の製造に用いられるシリコン単結晶の製造は、石英ルツボ内の融液から単結晶を成長させつつ引上げるCZ法が広く実施されている。CZ法では不活性ガス雰囲気下で石英ルツボ内のシリコン融液に種結晶を浸し、該石英ルツボおよび種結晶を回転させながら引上げることにより所定のシリコン単結晶を育成するものである。
近年、半導体素子の高集積化とそれに伴う微細化の進展によりシリコン単結晶ウエーハに対する要求も厳しさを増している。特に最近ではデバイスプロセスにおける結晶のグローンイン欠陥の影響が指摘され、種々の改善方法が提案されている。
一般的にシリコン単結晶には原子空孔(Vacancy)と格子間シリコン原子(Interstitial Si)という内部的(Intrinsic)な2種類の点欠陥が存在し、結晶成長後の履歴によって観察可能な2次的な欠陥へと成長する。原子空孔起因のグローンイン欠陥としては評価方法により、FPD(Flow Pattern Defect)、COP(Crystal Originated Particle)、LSTD(Laser Scattering Tomography Defect)等の名称で呼ばれており、その実態は空孔の凝集体である八面体のボイド状欠陥と言われている(Analysis of side−wall structure of grown−in twin−type octahedral defects in Czochralski silicon,Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)p−p.1667−1670)。
一方格子間原子起因の欠陥は格子間シリコンの凝集体として形成され、転位クラスター、LEP(Large Etch Pit)等の名称で呼ばれている(Evaluation of microdefects in as−groun silicon crystals,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.262(1992)p−p.51−56)。
この八面体空洞欠陥は半導体素子のゲート酸化膜耐圧(GOI:Gate Oxide Integrity)等の特性に影響を及ぼし、また転位クラスターは接合リーク等の特性に悪影響がある。
これらの成長欠陥は成長界面における結晶の温度勾配とシリコン単結晶の成長速度により欠陥の導入量(The mechanism of swirl defects formation in silicon,Journal of Crystal growth,1982,p−p625−643)が決まることが示されている。これらを利用した低欠陥シリコン単結晶の製造方法について、例えば特開平6−56588号公報ではシリコン単結晶の成長速度を低めることを開示しており、特開平7−257991号公報ではシリコン単結晶の固相/液相における境界領域の温度勾配にほぼ比例する単結晶の最大引き上げ速度を超えない速度で引き上げることが開示されている。さらに結晶成長中の温度勾配(G)と成長速度(V)に着目した改善CZ法(日本結晶成長学会誌vol.25,No.5,1998)などが報告されている。
さらに欠陥別にみると、八面体空洞欠陥の制御には種々方法が提案されているが、大きく分けて次の2種類である。結晶の熱履歴を制御(徐冷)することによる欠陥密度低減(例えば特願平7−143391号公報)と結晶の温度勾配と引上げ速度の制御によるVacancyの制御(例えば特開平7−257991号公報、前出)である。さらに転位クラスターについても結晶の温度勾配と引上げ速度による制御も提案(例えば特開平8−330316号公報)されている。
しかしながらここで開示されている例えば、特開平8−330316号公報に示されているような方法によれば、OSF(Oxidation induced Stacking Faults:酸化誘起積層欠陥と呼ばれ、結晶をウエーハに加工した時に表面にリング状に発生する)が結晶中心で消滅した低速育成ウエーハであり、生産性の大幅な低下および大幅なコストアップが避けられない技術である。
この点についてさらに詳しく述べると、従来成長速度が0.5mm/min以上ではOSFが消滅しなかった従来技術を基に、結晶が冷却されにくい炉内構造を採って温度勾配を小さくしたことにより結晶軸方向の温度勾配の中心と周辺の差を無くすか、または結晶周辺の温度勾配の方を小さくする(すなわち結晶周辺からの冷却を減らし、その影響で必然的に軸方向温度勾配も小さくなったためさらに低速の成長速度となる)方法により達成したものである。従って、このような方法では、すなわち従来技術でOSFリング領域が中心で消滅する0.5mm/minよりさらに低速で引き上げる必要があり、大幅なコストアップが避けられなかった。特に、最近の直径200mm以上の高品質ウエーハが主流となっている現在においては、引上げ速度を上げて結晶を量産する方法が求められている。
一方ウエーハ全面の八面体空洞欠陥をより高速成長で減らす方法として特開平7−257991号公報に開示された方法では、固液界面における結晶軸方向温度勾配を上げることにより、OSF発生領域を結晶中心で消滅させ、結晶引上げ速度の高速化が図られているが、結晶の結晶周辺からの冷却をできるだけ大きくとることにより達成しており、周辺の温度勾配は中心に比べ非常に大きくなり、転位クラスターが発生していたことは容易に推定できる。
以上述べてきたように、従来の技術では八面体空洞欠陥と転位クラスターの両方を無くした結晶を製造するには、結晶引上げ速度を0.5mm/minより低速にした非常に生産性が低く、製造コストが高い方法しかなく、商用で実用生産できるものではなかった。特に、大直径結晶を量産するに当たり、その生産性の低さが問題となっている。
さらに、このような製造方法ではシリコン単結晶の周囲に配置する整流筒を利用した場合に単結晶の成長軸に垂直な平面で均一な温度勾配にする必要があるために整流筒と融液表面までの距離をある程度広くする必要があり、不活性ガスが融液表面近傍に達しないので、不活性ガスによる融液表面からの酸素原子の蒸発効果が極めて低下し、製造したシリコン単結晶中の格子間酸素濃度が高くなってしまう。また、該整流筒を用いない場合においても同様に融液表面からの酸素原子の蒸発による効果が期待できないために低い格子間酸素濃度のシリコン単結晶が得られないという問題がある。
また、このような格子間酸素濃度の高いシリコン単結晶より製造されたシリコンウエーハを、例えば酸化雰囲気中で1150℃の高温下で2時間程度の熱処理を施すと酸化熱処理により誘起される欠陥としてOSFが形成される場合がある。素子作製領域にOSFが形成された場合には電気的にリークなどの重大な特性不良を生ずることとなる。
さらに成長条件を調整することにより、例えば特開平11−79889号公報には空孔の凝集体である八面体のボイド状欠陥の発生がなくかつ格子間シリコンの凝集体として形成される転位クラスター状の欠陥もない高品質なシリコンウエーハが開示されているが、各々の欠陥がフリーな領域においても格子間酸素の析出熱処理として乾燥酸素雰囲気中で800℃・4時間+1000℃・16時間の熱処理を施した場合にはウエーハ面内に析出特性が極めて異なる領域が存在する。格子間酸素の析出特性については半導体素子の製造工程中に形成されるBMD(Bulk Micro Defect)密度と係わりがありBMDは重金属不純物のゲッタリング源となったり、不均一に形成された場合にはウエーハの反りやスリップの原因にもなるのでシリコンウエーハの重要な品質特性であることは云うまでもない。
以上のように成長欠陥の極めて少ないシリコン単結晶を製造する場合には結晶成長速度を低めるので工業的には効率の悪いものとなってしまうのみならず、品質面においてはかかるシリコン単結晶より製造したウエーハではOSFの発生やウエーハ面内の格子間酸素濃度の析出により形成されるBMD密度が不均一であり、ウエーハの反りや熱歪みによるスリップ転位が発生する場合があり問題であった。
発明の開示
本発明は、上記した従来技術の種々の問題点に鑑みなされたもので、成長欠陥である八面体空洞欠陥と転位クラスターの両方を実質上排除した直径200mm以上のシリコン単結晶を従来より高速にて育成することを目的としている。さらに結晶中の格子間酸素濃度を低く制御することにより、シリコン単結晶中の格子間酸素原子の析出量を低く抑え、ウエーハ面内のBMDの均一性を向上させた極めて高品質なシリコン単結晶を工業的に安価に高生産性、高歩留りを維持しながら低コストで製造することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するためになされたもので、本発明に係るシリコン単結晶ウエーハは、チョクラルスキー法で育成されたシリコン単結晶ウエーハにおいて、抵抗調節用ドープ剤以外はドープしないで、0.5mm/min以上の成長速度で成長した単結晶から作製した直径200mm以上のウエーハであって、グローンイン欠陥として原子空孔起因の八面体空洞欠陥も格子間シリコン起因の転位クラスターも存在しないことを特徴としている。
このように、抵抗調節用ドープ剤以外はドープしない通常のCZ法では不可能とされていた0.5mm/min以上の成長速度で無欠陥シリコン単結晶を育成したことにより、原子空孔起因の八面体空洞欠陥も格子間シリコン起因の転位クラスターも存在しないで、デバイス特性に影響を及ぼすような欠陥の存在しない大直径で実質的な無欠陥シリコン単結晶ウエーハを低コストで提供することができる。
そして、この場合、シリコン単結晶ウエーハの格子間酸素濃度を6×1017から10×1017atoms/cmとすることが好ましい。
10×1017atoms/cm(ASTM’79)を越えると、例えばウエーハに熱処理を施した時に、BMDが不均一に形成されてウエーハの反りや熱歪みによるスリップ転位が発生する恐れがあるからである。また、6×1017atoms/cm以上とすれば、適量のBMDの発生が確保され、デバイス工程における重金属のゲッタリング源として適正な量となる。
そして、本発明に係るシリコン単結晶の製造方法は、チョクラルスキー法で直径200mm以上のシリコン単結晶を引上げる方法において、結晶引上げ速度を0.5mm/min以上とし、結晶中心における結晶軸方向の温度勾配を八面体空洞欠陥が発生しないような十分高いものとし、結晶周辺20mmにおける結晶軸方向の温度勾配を転位クラスターが発生しないような十分低いものとして引上げることを特徴とし、この場合、前記結晶軸方向の温度勾配は単結晶引上げ装置の炉内構造によって達成されるのが好ましい。
このように、結晶中心の軸方向温度勾配と結晶周辺の軸方向温度勾配を欠陥を発生させない範囲に制御して引き上げれば、従来窒素ドープする方法でしか出来なかった0.5mm/min以上の高速で大直径の実質的に無欠陥シリコン単結晶を育成することができ、無欠陥ウエーハを高生産性と高歩留りで製造することができる。
上記製造方法において、炉内構造は、少なくとも育成する単結晶を囲繞する円筒状整流筒を具備し、該整流筒の上端はチャンバの水冷部分に固定され、下方の先端にはシリコン融液と対向するように断熱材または反射材を設け、該断熱材または反射材と融液表面との間隔を40〜70mmに設定可能としたものとすることができる。
炉内構造をこのように構成すれば、前記単結晶の固液界面における結晶中心および結晶周辺の温度勾配を適切な範囲に制御することができ、直径の大きな例えば、200mm以上の結晶であっても、0.5mm/min以上の高速でかつ無欠陥単結晶の育成が可能となる。
また、上記製造方法において、チョクラルスキー法によって結晶を育成するに際し、固液界面付近に3000G以上の磁場を印加することが好ましく、印加する磁場を、水平磁場あるいはカスプ磁場とすることができる。
このように、固液界面付近に3000G以上の水平磁場あるいはカスプ磁場を印加してメルトの対流を制御すれば、より一層安定した結晶の温度勾配が得られ、結晶品質が均一化し、歩留りの向上につながる。
このようにして、本発明の方法によって作製された大口径シリコンウエーハは、原子空孔起因の八面体空洞欠陥も格子間シリコン起因の転位クラスターも存在しないで、デバイス特性に影響を及ぼすような欠陥の存在しない実質的な無欠陥シリコンウエーハである。また、結晶中の格子間酸素濃度を低値に制御した高品質シリコンウエーハである。
以上説明したように本発明によれば、育成する単結晶を取り囲む円筒下端に断熱材または反射材を設けた整流筒をシリコン融液直上に設置し、結晶軸方向の結晶中心温度勾配と周辺温度勾配を適切な値に制御することにより、従来法に比べて高速成長が可能となり、大直径のシリコン単結晶ウエーハであっても、極めて高生産性、高歩留り、低コストで、ボイド型欠陥もOSFも転位クラスターも排除した実質的に無欠陥シリコン単結晶ウエーハを製造することが可能となる。
また、シリコン単結晶ウエーハの格子間酸素濃度を6×1017から10×1017atoms/cm(ASTM’79)として、半導体素子作製時の熱処理工程中にOSFの発生がなく、かつウエーハ面内で格子間酸素原子の析出による不均一な微小酸素析出物(BMD)分布を改善した高品質、大口径シリコン単結晶ウエーハを低コストで作製することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明につき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。説明に先立ち各用語につき予め解説しておく。
1)FPD(Flow Pattern Defect)とは、成長後のシリコン単結晶棒からウェーハを切り出し、表面の歪み層を弗酸と硝酸の混合液でエッチングして取り除いた後、KCrと弗酸と水の混合液で表面を無攪拌でエッチング(Seccoエッチング)することによりピットおよびさざ波模様が生じる。このさざ波模様をFPDと称し、ウェーハ面内のFPD密度が高いほど酸化膜耐圧の不良が増える(特開平4−192345号公報参照)。
2)SEPD(Secco Etch Pit Defect)とは、FPDと同一のSeccoエッチングを施した時に、流れ模様(flow pattern)を伴うものをFPDと呼び、流れ模様を伴わないものをSEPDと呼ぶ。この中で10μm以上の大きいSEPD(LSEPD)は転位クラスターに起因すると考えられ、デバイスに転位クラスターが存在する場合、この転位を通じて電流がリークし、P−Nジャンクションとしての機能を果たさなくなる。
3)LSTD(Laser Scattering Tomography Defect)とは、成長後のシリコン単結晶棒からウエーハを切り出し、表面の歪み層を弗酸と硝酸の混合液でエッチングして取り除いた後、ウエーハを劈開する。この劈開面より赤外光を入射し、ウエーハ表面から出た光を検出することでウエーハ内に存在する欠陥による散乱光を検出することができる。ここで観察される散乱体については学会等ですでに報告があり、酸素析出物とみなされている(J.J.A.P. Vol.32,P3679,1993参照)。また、最近の研究では、八面体のボイド(穴)であるという結果も報告されている。
4)COP(Crystal Originated Particle)とは、ウエーハの中心部の酸化膜耐圧を劣化させる原因となる欠陥で、SeccoエッチではFPDになる欠陥が、SC−1洗浄(NHOH:H:HO=1:1:10の混合液による洗浄)では選択エッチング液として働き、COPになる。このピットの直径は1μm以下で光散乱法で調べる。
5)L/D(Large Dislocation:格子間転位ループの略号)には、LSEPD、LFPD等があり、転位ループ起因と考えられている欠陥である。LSEPDは、上記したようにSEPDの中でも10μm以上の大きいものをいう。また、LFPDは、上記したFPDの中でも先端ピットの大きさが10μm以上の大きいものをいい、こちらも転位ループ起因と考えられている。
本発明の単結晶の育成に係わる低欠陥結晶を得るための重要な指標である結晶の固液界面直上の温度勾配Gと成長速度Vの比で種々な数値が開示されているが、その値はこれまでさまざまであり、統一性がない。例えば、特開平7−257991号公報では13×10cm/K、特開平8−330316号公報ではその値を融点から1300℃の温度勾配で0.22mm/℃・minとしている。これらの値は、結晶引上げ炉内で高精度の温度測定手段がないため正確な値が出せず、コンピューターによる熱シュミレーションによって行われているが、その実際の方法は千差万別で、境界条件や研究者によって異なる物性値の与え方によって結果は幾通りにも出てくるからである。従ってある特定の数値を規定しても、その数値自体の信頼性は非常に乏しいのである。
上記事情により本発明者等は、先ず界面付近の温度勾配に影響があると推定される数種類の炉内構造を用意し、それぞれの炉内構造で引上げ速度を引上げ長さに従って漸減する引上げを行ない、直径200mmの単結晶において実験的にOSFが結晶中心部で消滅する引上げ速度を求めた。この実験では、融液対流の影響を最小限にするため水平磁場を印加したMCZ法で引上げ、引上げ速度をV1,V2…Vnとした。さらに、それらの炉内構造で計算機による熱シュミレーションを行ない、結晶中心部での固液界面直上のシリコンの融点(1420℃)から1400℃の間の軸方向温度勾配を求めて、G1,G2…Gnとした。これらの結果からV/Gを求めると0.231mm/℃・minであった。しかし前述のように、この数値はあくまでも参考値であり、物理的真値とは言い難い。
上記計算において、Gと同時に結晶面内方向で10mmおきの各点でGの値を計算した。その結果、多少のバラツキはあるものの、Gの値を大きくするにつれて△G(結晶中心と周辺の軸方向温度勾配差)も大きくなり、逆に△Gを小さくしようとするとGも小さくなってしまうという結果であった。
このように、低欠陥ウエーハを高い生産性で作製するためには、結晶引上げ速度Vの高速化が不可欠であるが、通常チョクラルスキー法で引上げた結晶は融点からの冷却過程で結晶周辺から熱を放散することによって冷却されるので、欠陥をへらす方向すなわち結晶中心と周辺の軸方向温度勾配差(△G)をなくすことと、引上げ速度を上げることすなわち結晶中心部の軸方向温度勾配(G)を上げるということは一般的には相反する方向であり、特に結晶直径が大きい程、結晶内部の熱が外部へ放散され難くなるので、小口径の結晶に比べ、この傾向が顕著に表れるため、大口径のシリコン単結晶の育成においては、同時にこれを満足できる方法はなかった。
引上げた結晶については軸方向に切断し、厚さ2mmのサンプルをとり、無攪拌Secco−エッチング後の光学顕微鏡観察で八面体空洞欠陥をFPD、10μm以上のピットを転位クラスター(LEPD)として検出した。両欠陥の発生領域の間にはOSFリング域が存在するが、このOSFが存在している領域を1100℃・酸素と水蒸気の混合雰囲気中で60分酸化後、選択エッチング集光燈下で目視観察を行ない分布を検査した。その結果、これらの実験で引上げた結晶の中には、ある引上げ速度範囲内で引上げれば八面体空洞欠陥と転位クラスターの両方の欠陥とも見られない領域があることが確認された。FPD生成領域が中心で消滅した速度と転位クラスターが発生した速度の間の引上げ速度で引き上げれば八面体空洞欠陥も転位クラスターもない単結晶ウエーハの製造は可能であるが、引き上げ速度は0.42mm/minであった。これは引き上げ結晶の直径により異なるが、通常行われている直径200mmの引上げ速度0.6〜1.0mm/minに比べ大幅な生産性ダウンとなり、とても商用生産できるものではなかった。
結晶成長速度を高めるためには、△Gを小さくかつGを大きくすることが必須要件であるが、本発明者等は実験に用いた上記G−△Gの関係から僅かに同じGで△Gが小さくなっている条件の結晶内温度分布の特徴を詳細に検討した。その結果、固液界面から50mm前後についてはヒータや融液からの輻射熱を結晶周辺に供給しつつ、かつ上方での結晶冷却能力の高い炉内構造でそのような傾向があることがわかった。
本発明者等は、さらに欠陥発生分布と結晶の温度分布との関係を詳細に検討した結果、周辺20mmより結晶周辺部については温度勾配に拘らず、八面体空洞欠陥および転位クラスター共に発生しにくいことがわかった。これは点欠陥の結晶表面での消滅とそれに伴う外方拡散により起こっていると推定される。しかもこの傾向は転位クラスターの方で傾向が強く、従って周辺20mmより外についてはかなり温度勾配を大きくしても無欠陥領域が得られ易いことがわかった。
本発明者等は上記温度分布の特徴をさらに際立たせる際に、結晶最周辺部の温度勾配は上げることが可能という知見を生かし、さらに種々の形状の結晶を取り囲む部品(例えば整流筒)、それらとメルトとのギャップ、冷却筒等で結晶温度分布を詳細に検討し、本発明を完成させた。
すなわち図2に示したように、結晶を取り囲む円筒形または下方に向かって縮径した整流筒4を配置し、その上方は水冷筒13に接続するなど、結晶からの輻射熱を上方に逃がす構造とし、それらの部品の下端と融液の間のギャップを40mmから70mmとすることにより目的の温度分布を得ることができた。このギャップを40mmより狭くすると△Gが十分に小さくならず、八面体空洞欠陥が中心で消滅する引上げ速度では、結晶のr/2付近に転位クラスターが発生し、逆にギャップが広すぎると引上げ速度が0.5mm/min以上では八面体空洞欠陥を消すことはできないので、上限を70mmにすることが好ましい。上記のような炉内構造と適切なギャップを組み合わせた結果、直径8インチ(200mm)の結晶でも、0.5mm/min以上の高速度で八面体空洞欠陥も転位クラスターも存在しない結晶を得た。さらに、直径が300mmの結晶の場合は、ギャップの上限を100mmとしても八面体空洞欠陥を消滅させることができる。
さらにメルト2とのギャップ直上に結晶と融液とに対向する断熱材もしくは反射材6、および/または融液とルツボ壁に対向する断熱材もしくは反射材5を配置することが好ましい。これにより固液界面近傍での周辺からの熱放散防止領域と上方での強力な冷却帯との間に温度分布の緩衝帯を形成するからである。その結果、さらに効率的に△Gが変わらずにGのみを上げることができた。
また、固液界面近傍に3000G以上の水平磁場を印加することが好ましい。通常引上げ速度を落とすと固液界面の形状が結晶中心で垂れ下がった形状となり、△Gが大きくなってしまうが、固液界面近傍に磁場をかけることにより、対流が抑えられ固化潜熱の影響できれいな上凸の形状のままに維持されるからである。この効果により、中心と周辺の温度勾配差△Gを小さくして行っても、結晶周辺の温度を中心より下げることができる。すなわちGを相対的に大きくしても△Gが抑えられることが判明した。この緩衝帯の付加や磁場を印加することにより、引上げ速度をさらに0.60mm/min以上に高速化することも可能であるし、炉内構造に他の品質項目(例えば酸素濃度制御性)や単結晶化の成功率改善のために修正できる操業条件の自由度が増し、実用ベースでの商用生産がより容易になる。尚、印加磁場をカスプ磁場とした場合は、1000G以上で上記と同様の効果を得ることができる。
以上説明した本発明の製造方法によって作製されたシリコン単結晶をスライスすることによって得られるウエーハは、大口径であり、抵抗調節用ドープ剤以外はドープしないで、0.5mm/min以上の成長速度で成長した単結晶から作製したウエーハであるので、低コストであると共に、原子空孔起因の八面体空洞欠陥と格子間シリコン起因の転位クラスターの密度が極めて低密度であり、実質的に無欠陥のシリコン単結晶ウエーハである。
次に、本発明における格子間酸素濃度の制御・低減効果について説明する。
図3は成長欠陥のない領域を含むシリコン単結晶の格子間酸素濃度が14.4×1017atoms/cm(ASTM’79)である比較的酸素濃度の高い結晶における欠陥分布について示したものである。結晶はボロンドープの比抵抗10Ω・cmに調整し、結晶の成長軸<100>の直径8インチ(200mm)シリコン単結晶を各種の欠陥領域が現れるように成長時に結晶成長速度を漸減させて育成した。
育成した直径8インチのシリコン単結晶のブロックを成長軸に平行に縦切りウエーハを採取し、格子間酸素濃度の析出熱処理として800℃・4時間+1000℃・16時間の熱処理を施し、ライフタイムのマッピング測定を行った。ライフタイムは、エネルギーの高いパルス光をウエーハに照射することにより発生した電子−正孔対が再結合することにより元の熱平衡状態に戻るまでの時間である。ウエーハ中にBMD等の欠陥が存在した場合には再結合中心として働くのでライフタイムの値が低下し、格子間酸素原子の析出により形成されたBMD分布が評価できる。
図3から明らかなようにOSFが形成される領域では格子間酸素の析出が起こらないためにBMD密度が低くライフタイムは高い値を示す。また、成長欠陥のない領域において酸素析出したBMDが多いNv領域とBMDが少ないNi領域が存在することが明瞭に判る。これらから成長欠陥のない領域が得られるように結晶の成長速度を調整して製造しても、格子間酸素の析出特性としてBMDが発生し易いウエーハ、形成されないウエーハ、更にウエーハの中心部でBMDが低く周辺でBMDの形成が多いウエーハ等となってしまい、半導体素子の製造工程でウエーハに反り等の欠陥が生じる問題がある。
そこで本発明では図2に示したシリコン単結晶の製造装置を用いてシリコン単結晶の育成を行った。図2のように、単結晶の周囲に配置された整流筒4の外側と内側に断熱材6、5を付加した単結晶製造装置を用い、直径600mmの石英ルツボに多結晶シリコンを150kgチャージし抵抗加熱の黒鉛ヒーター9に通電し、多結晶シリコンを融解しシリコン融液を形成させた。比抵抗を10Ω・cmに調整し、方位<100>の種結晶をシリコン融液2に浸し絞り工程を経て直径200mmのシリコン単結晶3を育成した。
各種の欠陥が形成されるように結晶のトップ側より結晶成長速度を漸減させた。育成したシリコン単結晶から成長方向に平行に縦切りした短冊状のシリコン単結晶ウエーハを作製し、酸素析出熱処理として800℃・4時間+1000℃・16時間の熱処理を施しライフタイムのマッピング測定を行った。図4(a)に従来の整流筒内側に断熱材のない構造で育成したシリコン単結晶の成長方向の欠陥分布を、図4(b)には本発明の製造方法により育成したシリコン単結晶の成長方向の欠陥分布を示した。図4より本発明の方法によりOSFが収縮して結晶中心で消滅する結晶成長速度は、0.46より0.53mm/minと約10%上昇することが判る。これにより八面体空洞欠陥も格子間シリコン起因の転位クラスターも実質的に存在しない単結晶の生産性と歩留りが大幅に向上し、製造コストを低減することができることがわかる。
本引上げ方法により製造されたシリコン単結晶の格子間酸素濃度は低く制御され、結晶長さがトップから20cm〜120cmの範囲において9〜7.5×1017atoms/cm(ASTM’79)であった。
これは、整流筒の融液側下端に設けた内・外の断熱材と融液表面との間を不活性ガスが効果的に流れたために融液表面からの酸素原子の蒸発を促進させたことと、整流筒外側に設けた断熱材により融液表面を保温することにより融液対流を抑制したことが原因と推定される。これらは例えば使用する石英ルツボのサイズを変更した場合においても、整流筒内側の断熱材のサイズを適正化することにより育成する結晶の温度勾配を任意に設定することができる。また、整流筒外側の断熱材のサイズを適正にすることにより結晶中の格子間酸素濃度を制御することが可能となるので、無欠陥シリコン単結晶をルツボサイズによらずに容易に製造することができることを示している。
こうして、本発明では、シリコン単結晶ウエーハの格子間酸素濃度を6×1017から10×1017atoms/cm(ASTM’79)とすることが好ましい。
10×1017atoms/cmを越えると、例えばウエーハに熱処理を施した時に、BMDが不均一に形成されてウエーハの反りや熱歪みによるスリップ転位が発生する恐れがあるからである。また、6×1017atoms/cm以上とすれば、BMDの均一性が改善されると共に、デバイス工程における重金属のゲッタリング源として適正な量となる利点がある。
以下、本発明について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
まず、本発明で使用するCZ法による単結晶引上げ装置の構成例を図2により説明する。図2に示すように、この単結晶引上げ装置30は、引上げ室となる水冷チャンバ1と、チャンバ1中に設けられたルツボ11と、ルツボ11の周囲に配置されたヒータ9と、ルツボ11を回転させるルツボ保持軸15およびその回転機構(図示せず)と、シリコンの種結晶16を保持するシードチャック17と、シードチャック17を引上げるワイヤ18と、ワイヤ18を回転又は巻き取る巻取機構(図示せず)を備えて構成されている。ルツボ11は、その内側のシリコン融液(湯)2を収容する側には石英ルツボ7が設けられ、その外側には黒鉛ルツボ8が設けられている。また、ヒータ9の外側周囲には断熱材10が配置されている。
また、本発明の製造方法に関わる製造条件を設定するために、結晶3を取り囲む円筒形または下方に向かって縮径した整流筒4を配置し、その上方はチャンバの一部を構成する水冷筒13に接続させたり(水冷筒13を設けない場合もある)、または上方に向かって拡開し少なくとも内表面に反射率の高いモリブデン等の金属板を反射材として使用するかあるいは整流筒4の内側下端にシリコン融液と対向するように断熱材6を設けて結晶からの輻射熱を上方に逃がす構造とし、さらに整流筒4の外側下端にシリコン融液と対向するように断熱材5を設けて融液表面を保温するようにした。そしてこれら断熱材の下端と融液の間のギャップを40mmから70mmに調節可能とすることにより目的の結晶の温度分布を得ることができる。
さらに、引上げ室1の水平方向の外側に、磁石19を設置し、シリコン融液2に水平方向の磁場あるいはカスプ磁場を印加することによって、融液の対流を抑制し、単結晶の安定成長をはかるようにしている。
次に、上記の単結晶引上げ装置30による単結晶育成方法について説明する。
まず、ルツボ8内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420℃)以上に加熱して融解する。次に、ワイヤ18を巻き出すことにより融液2の表面略中心部に種結晶16の先端を接触又は浸漬させる。その後、ルツボ保持軸15を適宜の方向に回転させるとともに、ワイヤ18を回転させながら巻き取り種結晶17を引上げることにより、単結晶育成が開始される。以後、引上げ速度と温度を適切に調節することにより略円柱形状の単結晶棒3を得ることができる。
この場合、本発明では、結晶内の温度勾配を制御するために、図2に示したように、前記整流筒4の下端内側に設けた断熱材または反射材6あるいは整流筒4の下端外側に設けた断熱材または反射材5とシリコン融液2の湯面との隙間の間隔を調整する。さらに、必要に応じてこの整流筒4の上部に結晶を冷却する水冷筒13を設けて、これに上部より冷却ガスを下流して結晶を冷却できるものとしてもよい。
結晶中の酸素濃度を所望の値以下となるようにするには、前記断熱材付き整流筒を設けると共に、引上げ中にルツボ回転数、結晶回転数、導入ガス流量、雰囲気圧力、印加磁場の強度や方向を制御することによって微調整することができる。例えば、ルツボ回転数を低く、ガス流量を多く、圧力を低く、磁場を強くすることによって、酸素を所望の値以下に低減化させることができる。
次に、得られたシリコン単結晶棒を、例えばスライス、面取り、研削、エッチング、鏡面仕上げ研磨することによって、本発明のウエーハに加工することができる。もちろん、ウエーハ加工方法はこれに限定されるものではなく、通常用いられている方法であれば、いずれの方法であってもよい。
以下、本発明の具体的な実施の形態を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示したシリコン単結晶製造装置を用いてシリコン単結晶の育成を行った。該結晶育成装置内の炉内部材は、例えばFEMAGと呼ばれる総合伝熱解析ソフト(F.Dupret,P.Nicodeme,Y.Ryckmans,P.Wouters,and M.J.Crochet,Int.J.Heat Mass Transfer,33,1849(1990))を使用して、結晶成長速度が0.5mm/min以上で八面体空洞欠陥が形成されないようにする目的で、成長中の結晶中心部の温度勾配が23.2℃/cm、結晶周辺部の温度勾配が22.91℃/cmの値となるように単結晶の周囲に配置された整流筒4の下端の外側に断熱材5と内側に断熱材6をシリコン融液表面との間隔が55mmとなるように付加した(ただし図2の水冷筒13は設けていない)単結晶製造装置を設計・製作した。直径600mmの石英ルツボに多結晶シリコンを150kgチャージし抵抗加熱の黒鉛ヒータ9に通電し、多結晶シリコンを融解しシリコン融液2を形成させた。ボロンを添加して比抵抗を10Ω・cmに調整し、シリコン融液表面に4000Gの水平磁場を印加して、方位<100>の種結晶を該シリコン融液に浸し絞り工程を経て直径200mmのシリコン単結晶を育成した。各種の欠陥が形成されるように結晶のトップ側より結晶成長速度を漸減させた。
育成したシリコン単結晶から成長方向に平行に縦切りした短冊状のシリコン単結晶ウエーハを作製した。八面体空洞欠陥と格子間シリコンに起因する転位クラスターの形成状況を調べるために化学研磨により切断時の歪みを除去したウエーハをエッチング槽内でSecco液を用い無攪拌で30分間選択エッチングを行った。その光学顕微鏡によりさざなみ模様を伴ったフローパターン(FPD)の密度を測定した。また、酸化誘起積層欠陥を調査するために該シリコン単結晶ブロックの隣合わせより切り出したウエーハに湿式酸化雰囲気で1150℃・100分の熱処理を施しOSFの発生分布を調べた。
図1に結晶成長方向のフローパターン、転位クラスター、OSFの形成状況の結果を示した。図1よりOSFの発生域は、U字型に形成されており単結晶の成長速度が0.514mm/minにて結晶中心部で消滅した。八面体空洞欠陥であるフローパターンは前記OSFの内側のより高速側で形成され、転位クラスターは結晶成長速度が0.498mm/minより低速で育成した領域に形成された。
以上から成長速度を0.50〜0.51mm/minに制御することにより八面体空洞欠陥も転位クラスターも発生しないシリコン単結晶が工業的に安価に製造することが可能である。
(実施例2)
図2に示したシリコン単結晶の製造装置を用いてシリコン単結晶の育成を行った。実施例1に比較してさらに高速で八面体空洞欠陥が形成されないようにする目的で、図2のように単結晶の周囲に配置された整流筒4の上にチャンバの一部を炉内に突き出すようにした水冷筒13を付加し、また整流筒4の下端の外側に断熱材5と内側に断熱材6をシリコン融液表面との間隔が60mmとなるように付加した単結晶製造装置を設計・製作した。総合伝熱解析により該結晶育成装置で成長中の結晶温度勾配を計算すると、中心部で28.4℃/cm、結晶周辺部で29.9℃/cmと計算された。上記以外の育成条件は実施例1と同様にし、各種の欠陥が形成されるように結晶のトップ側より結晶成長速度を漸減させて直径200mmのシリコン単結晶を育成した。
以下、実施例1と同様に処理して各種欠陥の発生状況を調べた。
図1に結晶成長方向のフローパターン、転位クラスター、OSFの形成状況の結果を示した。図1よりOSF域はU字型に形成されており単結晶の成長速度が0.623mm/minにて結晶中心部で消滅した。八面体空洞欠陥であるフローパターンは前記OSF域の内側のより高速側で形成され、転位クラスターは結晶成長速度が0.603mm/minより低速で育成した領域に形成された。以上から成長速度を0.61〜0.62mm/minに制御することにより八面体空洞欠陥も転位クラスターも発生しないシリコン単結晶が工業的に安価に製造することが可能である。
(実施例3、比較例)
本発明の製造方法によるシリコン単結晶中の格子間酸素濃度の低減化効果について図5に示した。
シリコン単結晶の製造方法は実施例1に示した通り単結晶の周囲に配置された整流筒4の外側に断熱材5と内側に断熱材6をシリコン融液表面との間隔が55mmとなるように付加した本発明の構造と、比較のために整流筒内側の断熱材6のない構造のものを用いた。直径600mmの石英ルツボに多結晶シリコンを150kgチャージし抵抗加熱の黒鉛ヒータ9に通電し、多結晶シリコンを融解しシリコン融液2を形成させた。比抵抗を10Ω・cmに調整し、シリコン融液表面に4000Gの水平磁場を印加して、方位<100>の種結晶を該シリコン融液に浸し絞り工程を経て直径200mmのシリコン単結晶を育成した。
育成したシリコン単結晶より成長方向の任意の位置から成長軸に垂直に厚さ約2mmのウエーハを採取し、その両面を化学研磨し鏡面ウエーハを作製し、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)にて格子間酸素濃度を測定した。図5より本発明の方法により製造されたシリコン単結晶の格子間酸素濃度は低く制御されたことが判る。
(実施例4)
本発明の製造方法により製造されたシリコン単結晶の成長欠陥のない領域のBMDの均一性について図6に示した。格子間酸素濃度の析出熱処理として800℃・4時間+1000℃・16時間の熱処理を施した成長方向に縦切りしたウエーハのライフタイムによる測定結果を示す図である。図6より成長欠陥を含まない領域においてライフタイム低下度合いは軽微である。したがって形成されるBMDの不均一性がより一層改善されるので、半導体素子作製工程中の熱処理においても不均一なBMD分布が形成されず、反りやスリップ転位発生の危険性がなく安定的な製造が可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上記実施形態においては、直径8インチ(200mm)のシリコン単結晶を育成する場合につき例を挙げて説明したが、本発明はこれには限定されず、断熱材付き整流筒を用いて結晶軸方向の結晶中心温度勾配と周辺温度勾配を適切な値に制御しながら成長速度を0.5mm/min以上として結晶全面が実質的に無欠陥領域となるように引上げるのであれば、直径10〜16インチ(250〜400mm)あるいはそれ以上のシリコン単結晶にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例における結晶成長速度と結晶成長方向の成長欠陥を含まない領域を含む欠陥分布との関係を示す結果図である。
図2は、本発明で使用したCZ法による単結晶引上げ装置の概略説明図である。
図3は、成長欠陥が極めて少ない領域を有する高酸素濃度のシリコン単結晶の成長方向の欠陥分布を示す説明図である。
図4は、結晶成長速度と結晶成長方向の成長欠陥を含まない領域を含む欠陥分布との関係を示す説明図である。
(a)従来法、 (b)本発明の方法。
図5は、結晶中格子間酸素濃度の成長方向の分布を示す結果図である。
図6は、本発明による成長欠陥を含まない領域を含む欠陥分布を示した説明図である。

Claims (1)

  1. チョクラルスキー法で直径200mm以上のシリコン単結晶を引上げる方法において、結晶引上げ速度を0.5mm/min以上とし、単結晶引上げ装置の炉内構造によって、結晶中心における結晶軸方向の温度勾配を八面体空洞欠陥が発生しないような十分高いものとし、結晶周辺20mmにおける結晶軸方向の温度勾配を転位クラスターが発生しないような十分低いものとして引上げるとき、前記炉内構造を、少なくとも育成する単結晶を囲繞する円筒状整流筒を具備し、該整流筒の上端はチャンバの水冷部分に固定され、下方の先端にはシリコン融液と対向するように断熱材または反射材を設け、該断熱材または反射材と融液表面との間隔を40〜70mmに設定可能としたものとし、かつ、前記チョクラルスキー法によって結晶を育成するに際し、固液界面付近に3000G以上の水平磁場あるいはカスプ磁場を印加することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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