JP6610417B2 - CaMgZr置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(SGGG)単結晶の育成方法 - Google Patents

CaMgZr置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(SGGG)単結晶の育成方法 Download PDF

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Description

本発明は、CaMgZr置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(SGGG)単結晶育成方法に係り、特に、育成されたSGGG単結晶の直胴部全体に亘ってクラック発生のないSGGG単結晶育成方法に関するものである。
光アイソレータは、磁界を印加することにより入射光の偏光面を回転させるファラデー回転子を有しており、近年、光アイソレータは、光通信の分野だけでなくファイバーレーザー加工機にも使用されるようになってきている。
このような光アイソレータに使用されるファラデー回転子の材料として、CaMgZr置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(Substituted Gd3Ga512:SGGG)単結晶を非磁性ガーネット単結晶基板(種結晶用基板)とし、この非磁性ガーネット単結晶基板上に液相エピタキシャル(Liquid Phase Epitaxy;LPE)成長させて得られる希土類鉄ガーネット(RIG:Rare-earth iron garnet)等の酸化物ガーネット単結晶膜が知られている(特許文献1〜2、非特許文献1参照)。
尚、上記CaMgZr置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(SGGG)単結晶は、(Gd3-xCax)(Ga5-x-2yMgyZrx+y)O12、(Gd,Ca)3(Ga,Mg,Zr)512、(Gd,Ca,Ga,Mg,Zr)812等の組成式で表されている。
そして、非磁性ガーネット単結晶基板は、従来、以下のようにして製造されている。
まず、結晶育成炉内に配置された坩堝内に、予め混合したGd23、Ga23、MgO、ZrO2、CaCO3を所定量仕込み、育成炉で加熱溶融させて原料融液を得た後、坩堝内の原料融液に種結晶を接触させ、該種結晶を回転させながら種結晶を徐々に引上げるチョクラルスキー(CZ)法よって肩部と直胴部を有するSGGG単結晶インゴットを育成する(特許文献3参照)。
次いで、内周刃切断機等の装置によりSGGG単結晶インゴットの肩部を切断して直胴部を得、この直胴部を円筒状に研削し、かつ、内周刃切断機またはワイヤーソー等で所望の厚さのウェハーに切断した後、このウェハーを所望の条件で研磨加工して上記非磁性ガーネット単結晶基板を製造している。
ところで、チョクラルスキー(CZ)法等の回転引上げ法によるSGGG単結晶インゴットの育成においては、製品として使用する結晶の直胴部を育成する前段階として、結晶径を種結晶から次第に大きくする結晶肩部の育成を行う。結晶肩部の育成においては、融液の温度差により発生する融液の「自然対流」を使い、安定した結晶成長を行うために種結晶を比較的ゆっくり回転させる。この状態での結晶肩部の固液界面形状は融液の「自然対流」を反映して凸形状(すなわち、坩堝底部側へ向けた凸形状)になっており、更に、結晶肩部の中央部にはコアと称する部分ができる。コアは、コア周辺部分と格子定数がわずかに異なることから、コアとコア周辺との間に歪が発生し、コアが存在するSGGG単結晶基板(非磁性ガーネット単結晶基板)を用いてRIG単結晶膜をLPE育成すると、RIG単結晶膜に割れが発生するため、このままでは種結晶用基板(非磁性ガーネット単結晶基板)として使用することができない。
そこで、回転引上げ法によりSGGG単結晶インゴットを育成する場合は、結晶径を大きくした段階で、結晶の回転速度を急激に上昇させ、融液中に「強制対流」を発生させて上記「自然対流」と競合状態を作り、上述した結晶肩部の凸形状部を溶かし、固液界面形状をほぼ平坦な状態にしてから、非磁性ガーネット単結晶基板(種結晶用基板)として使用可能な直胴部の育成を行っている。尚、結晶の回転速度を急激に上昇させて固液界面形状をほぼ平坦な状態にする一連の操作を「界面反転操作」と呼び、「界面反転操作」により結晶肩部の固液界面形状が平坦になることを「界面反転」と呼んでいる。
そして、上記SGGG単結晶基板の格子定数は12.4950Å〜12.4990Åの範囲に入っている必要があり、この範囲から外れたSGGG単結晶基板を用いてRIG単結晶膜をLPE育成すると歩留りの悪化を招くことが分かっている。また、LPE育成の経済性を考慮すると直径3インチ以上のウェハー(すなわち直径3インチ以上のSGGG単結晶基板)が必要となり、SGGG単結晶インゴットの育成後における加工を考慮すると直胴径80mm以上のSGGG単結晶インゴットが必要になる。更に、チョクラルスキー(CZ)法等による1回の育成で直径3インチ以上のウェハー(SGGG単結晶基板)がなるべく多く取れるようにSGGG単結晶インゴットの直胴長は長いほど良い。
ここで、上記組成式(Gd,Ca,Ga,Mg,Zr)812で示される8個の金属元素と12個の酸素原子で構成されるSGGG単結晶は一致溶融結晶でなく、各元素はわずかながら偏析を示す。このため、初期原料(上述の予め混合して構成されたGd23、Ga23、MgO、ZrO2、CaCO3から成る原料)でSGGG単結晶を育成し、その後の育成で初期組成と同一組成の原料を坩堝に追加チャージして育成すると、格子定数が育成毎にずれてしまい、SGGG単結晶の育成を重ねるに従い、SGGG単結晶基板の格子定数は所望の数値範囲(12.4950Å〜12.4990Å)に入らなくなる。
これを改善する方法として、初期原料で育成された1回目のSGGG単結晶について、ICPや蛍光X線による元素分析を行ってその結晶組成を推定し、2回目の結晶育成では、推定された組成を追加チャージして育成を行う。更に、このようにして育成されたSGGG単結晶の格子定数と初期結晶(初期原料で育成された1回目のSGGG単結晶)の格子定数のずれが最小になるように2回目の結晶育成における追加チャージ組成を修正し、経験的に最適な追加チャージ組成を見出して2回目以降の結晶育成がなされている。
しかし、この方法を用いて結晶直胴部の直径が80mm以上、結晶直胴部の長さが95mm以上のSGGG単結晶を回転引上げ法により育成した場合、結晶育成の回数が増えるにつれて、結晶育成終了後の結晶冷却中に育成された結晶直胴部にクラックが入って割れてしまい、歩留り悪化を引き起こす問題が存在した。
特開2003−238294号公報 特開2003−238295号公報 特開2005−029400号公報
D. Mateika, R. Laurien, Ch. Rusche,J. Crystal Growth 56 (1982) 677
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、結晶育成終了後の結晶冷却中において、育成された結晶直胴部にクラックの発生が起こらないSGGG単結晶育成方法を提供することにある。
そこで、上記課題を解決する追加チャージの新たな方策を見出すため、本発明者が鋭意検討した結果、上記組成式(Gd,Ca,Ga,Mg,Zr)812で示されるSGGG単結晶における8個の金属元素中、Gd元素とCa元素の合計個数を所定の数値範囲に管理することで解決されることが見出され、更に、上述した「界面反転操作」直前の結晶肩部中央に存在するコアの状態を適正にすることでより完全に解決できることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されたものである。
すなわち、本発明は
界面反転操作を伴う回転引上げ法により組成式(Gd,Ca,Ga,Mg,Zr)812で示されるCaMgZr置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(SGGG)単結晶を育成する方法において、
上記組成式における8個の金属元素中、Gd元素とCa元素の合計個数が3.06個以上、3.08個以下の範囲に設定されるように原料融液の組成を調製し、かつ、界面反転操作直前の結晶肩部の中央に存在するコアが結晶肩部の中央から結晶肩部の半径方向31%以内の領域に形成されると共に、結晶直胴部の直径が80mm以上、結晶直胴部の長さが95mm以上となるように育成することを特徴とするものである。
本発明に係るSGGG単結晶育成方法によれば、原料の追加チャージを伴う回転引上げ法による連続育成を行っても、結晶育成終了後の結晶冷却中において育成された結晶直胴部にクラックの発生が起こらないため、SGGG単結晶を歩留り良く育成することが可能となる効果を有する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
坩堝内へ原料の追加チャージを伴う回転引上げ法によるSGGG単結晶の育成法において、育成回数が増加するに従い、結晶育成炉内における断熱材の劣化や坩堝形状の変形等が進むため、結晶育成毎の原料融解状態(炉状態)を初期の原料融解状態と同一に再現させることは基本的に困難で、Gaの蒸発量を結晶育成毎に許容範囲内で一致させることはできない。このため、組成式(Gd,Ca,Ga,Mg,Zr)812で示される各金属元素の偏析係数を一定にして追加チャージ組成を決定し、SGGG単結晶の育成を行ったとしても組成ずれは次第に大きくなる。特に、蒸発に伴うGa量の変動はSGGG単結晶における格子定数と一番高い相関を持つため、Ga量の変動はSGGG単結晶における格子定数の変動に直結する。尚、Ga量が変動すると、上記組成式で示されるSGGG単結晶の金属元素における8個を維持するように「Gd元素とCa元素の合計個数」が変動し、Ga量の変動分が補われている。
ところで、本発明者は、Ga量の変動分を補うように上記「Gd元素とCa元素の合計個数」が変動した場合、この変動量が大きいと、結晶育成終了後の結晶冷却中において結晶割れが起こることを発見している。
そして、格子定数が12.4950Å〜12.4990Åの範囲にあり、冷却中に割れることのないSGGG単結晶は、SGGG単結晶の単位当たりの上記「Gd元素とCa元素の合計個数」が3.06個以上、3.08個以下になっていることを本発明者は発見し、「Gd元素とCa元素の合計個数」が3.06個未満である場合、および、3.08個を超えた場合に結晶冷却中における結晶割れが発生することを本発明者は確認している。
このため、結晶冷却中における結晶割れの対策として、「Gd元素とCa元素の合計個数」が3.06個以上、3.08個以下になるよう追加チャージ中におけるGa23の量を調整し、SGGG単結晶の組成制御を行うことを要する。
また、SGGG単結晶の結晶冷却中における割れは、上述した「界面反転操作」直前の結晶肩部中央に存在するコアが結晶肩部の中央から結晶肩部の半径方向31%を越える領域に存在する場合、すなわち、「界面反転操作」直前の結晶肩部中央に存在するコアの大きさが結晶肩部の半径方向31%を越える大きさの場合に顕著に発生することも本発明者は発見しており、更に、結晶直胴部の直径が80mm以上で、結晶直胴部の長さが95mm以上のSGGG単結晶において顕著に発生することも確認している。尚、結晶肩部に存在するコアは、結晶のファセットが成長するために発生する領域で、結晶肩部の中央付近に現れる。
そして、上述したようにコアはその周辺部に較べて格子定数が大きいため周辺部とコアの境界で歪が発生する。結晶中央部におけるコア領域が大きい場合、上記歪を原因として結晶冷却中における結晶割れ発生の原因となる。
このため、SGGG単結晶育成では、上述したようにコア領域を「界面反転」という手法(界面反転操作)を用いて融液流を変え、固液界面を平坦にした後、結晶直胴部の育成を行っている。
そして、これ等の界面反転操作により結晶直胴部にコアが存在しなくなるため、SGGG単結晶の結晶直胴部をウェハー状に薄く切断した際、ウェハー面内における格子定数の分布を小さくすることが可能となる。尚、コアサイズを小さくするには結晶肩部の長さを短くすることが有効である。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
[実施例1]
組成式(Gd,Ca,Ga,Mg,Zr)812で示されるSGGG単結晶の「Gd元素とCa元素の合計個数」が3.06個以上、3.08個以下の範囲内に入るように原料の追加チャージ中におけるGa23の量を決定した。
そして、チョクラルスキー(CZ)法にて、結晶肩部の長さが75mm、結晶直胴部の直径が80.5mm、結晶直胴部の長さが95mmとなるようにSGGG単結晶を育成し、かつ、上記追加チャージを繰り返しながら連続9回の単結晶育成を行った。
得られたSGGG単結晶の界面反転直前部分をウェハーにし、X線トポグラフィーで観察してウェハー内のコアサイズを測定したところウェハー半径の30%であった。
更に、得られたSGGG単結晶の結晶直胴部における冷却中の結晶割れを調べたところ、育成1回目から7回目までは割れなく育成できたが、育成8回目と9回目において冷却割れが発生した。
そして、育成1回目から9回目で製造されたSGGG単結晶の育成終了間際における結晶直胴部を切断して厚さ0.6mm程度の3インチウェハーを求め、かつ、蛍光X線で組成分析を実施したところ「Gd元素とCa元素の合計個数」が表1に示す結果になった。
Figure 0006610417
[実施例2]
実施例1と同様、SGGG単結晶の「Gd元素とCa元素の合計個数」が3.06個以上、3.08個以下の範囲内に入るように原料の追加チャージ中におけるGa23の量を決定した。
そして、結晶肩部の長さが75mm、結晶直胴部の直径が80.5mm、結晶直胴部の長さが95mmとなるようにSGGG単結晶を育成し、かつ、上記追加チャージを繰り返しながら連続9回の単結晶育成を行った。
得られたSGGG単結晶の界面反転直前部分をウェハーにし、X線トポグラフィーで観察してウェハー内のコアサイズを測定したところウェハー半径の30%であった。
更に、得られたSGGG単結晶の結晶直胴部における冷却中の結晶割れを調べたところ、育成1回目から6回目までは割れなく育成できたが、育成7回目から9回目において冷却割れが発生した。
そして、育成1回目から9回目で製造されたSGGG単結晶の育成終了間際における結晶直胴部を切断して厚さ0.6mm程度の3インチウェハーを求め、かつ、蛍光X線で組成分析を実施したところ「Gd元素とCa元素の合計個数」が表2に示す結果になった。
Figure 0006610417
[実施例3]
実施例1と同様、SGGG単結晶の「Gd元素とCa元素の合計個数」が3.06個以上、3.08個以下の範囲内に入るように原料の追加チャージ中におけるGa23の量を決定した。
そして、結晶肩部の長さが80mm、結晶直胴部の直径が80.5mm、結晶直胴部の長さが95mmとなるようにSGGG単結晶を育成し、かつ、上記追加チャージを繰り返しながら連続9回の単結晶育成を行った。
得られたSGGG単結晶の界面反転直前部分をウェハーにし、X線トポグラフィーで観察してウェハー内のコアサイズを測定したところウェハー半径の31%であった。
そして、育成1回目から7回目までは割れなく育成できた。
尚、育成7回目の育成終了間際における結晶直胴部から求められた3インチウェハーの分析結果から「Gd元素とCa元素の合計個数」が3.08個であったので、育成8回目の追加チャージで酸化ガリウム量を増やしてSGGG単結晶の育成を行ったところ、育成9回目まで冷却割れが発生しなかった。
これらの結果を表3に示す。
Figure 0006610417
本発明によれば、原料の追加チャージを伴う回転引上げ法によるSGGG単結晶の連続育成を行っても、結晶育成終了後の結晶冷却中において育成されたSGGG単結晶の結晶直胴部にクラック発生が起こらない。このため、SGGG単結晶を加工してLPE育成用基板として適用される産業上の利用可能性を有している。

Claims (1)

  1. 界面反転操作を伴う回転引上げ法により組成式(Gd,Ca,Ga,Mg,Zr)812で示されるCaMgZr置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(SGGG)単結晶を育成する方法において、
    上記組成式における8個の金属元素中、Gd元素とCa元素の合計個数が3.06個以上、3.08個以下の範囲に設定されるように原料融液の組成を調製し、かつ、界面反転操作直前の結晶肩部の中央に存在するコアが結晶肩部の中央から結晶肩部の半径方向31%以内の領域に形成されると共に、結晶直胴部の直径が80mm以上、結晶直胴部の長さが95mm以上となるように育成することを特徴とするSGGG単結晶の育成方法。
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