JP4201215B2 - 単結晶の育成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電子機器等に用いられる単結晶の育成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原料融液に種結晶を接触させ、種結晶を徐々に引き上げながら単結晶を育成する方法では、従来転位を結晶表面に抜くために固液界面形状を融液側に凸の状態にすることが有効であるため、肩部育成時の回転速度は、直胴部の直前まで固液界面形状の反転が起こらない回転速度条件で育成を行っている(B.Cockayne and J.M.Roslington:J.Mater.Sci.8(1973)601、実験物理学講座13、試料の作成と加工:共立出版(1981)381)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法では、固液界面形状が反転せずに、融液側に凸の状態で結晶が育成される。融液側に凸の状態で育成された結晶では、室温まで冷却することによって、残留歪によって結晶表面に引っ張りの応力が発生する。また、直胴部になってから固液界面が反転すると、反転時に起こるメルトバックする領域が増大し、そこに発生する格子欠陥等により歪が導入される。これらが残留歪となり、熱膨張に異方性がある、へき開性がある等の特徴を有する脆弱な結晶では、育成の冷却中や冷却終了後に、結晶肩部付近に割れが発生する問題がある。
本発明は、割れ発生の少ない単結晶の育成方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、るつぼ内の原料を加熱して融液とし、その融液に種結晶の下端を接触させ、種結晶を引き上げながら単結晶を育成する単結晶の育成において、種結晶から目標径まで結晶径を広げていく過程である肩部形成の育成条件について検討した。その結果、肩部形成時の回転速度を、肩部育成中に固液界面形状が融液側に凸の状態から、フラットあるいは結晶側に凸の状態に反転する条件に設定して結晶育成を行うことによって、上記目的を達成できることを見いだすことによって、本発明はなされたものである。
本発明は、特にセリウム付活珪酸ガドリニウム単結晶等の酸化物単結晶の育成に有効である。
【0005】
【作用】
るつぼ内の原料を加熱して融液とし、その融液に種結晶の下端を接触させ、種結晶を引き上げながら単結晶を育成する単結晶の育成において、肩部形成中に固液界面形状を反転させることによって、割れが防止できる原因は次のように考えられる。
【0006】
単結晶引き上げ時の固液界面形状が融液側に凸になる結晶においては、回転速度と結晶径、すなわち、周速度によってその固液界面形状が変化する。るつぼ内の融液表面には、るつぼを加熱していることにより、外側(るつぼ壁)から中心付近へ流れる自然対流があるが、結晶の回転によって固液界面から外側方向へ流れる強制対流が大きくなる。結晶径が大きくなるにつれてこの強制対流が大きくなり、ある位置で強制対流の方が自然対流よりも優勢になり、固液界面形状が急激にフラットになる反転が起こる。この際、固液界面の融液側に凸に結晶化した部分が、再び融けるメルトバックという現象が起きる。この固液界面の反転は、結晶の回転速度が大きいほど、また融液の径方向の温度勾配が小さいほど、より小さい径で発生する。
【0007】
従来方法の育成条件では、肩部で固液界面形状が反転せずに、融液側に凸の状態で結晶が育成される。融液側に凸の状態で育成された結晶では、室温まで冷却することによって、残留歪によって結晶表面に引っ張りの応力が発生する。また、直胴部になってから固液界面が反転すると、反転前に育成された結晶部分で残留歪が発生するだけでなく、反転時に起こるメルトバックする領域が増大し、そこに発生する格子欠陥等により歪が導入される。これが残留歪となり、熱膨張に異方性がある、へき開性がある等の特徴を有する脆弱な結晶では、育成の冷却中や冷却終了後に、結晶肩部付近に割れが発生する問題がある。
【0008】
そこで、本発明の方法により、肩部形成時の回転速度を大きくし、融液の温度勾配も小さくすることによって、できるだけ小さい結晶径で固液界面を反転させることができる。それによって、固液界面が融液側に凸の状態で育成された領域が小さくなり、かつ反転時にメルトバックする領域も小さくなることによって、残留歪が低減され、割れを防止することができる。固液界面の反転後は、直胴部に入るまで、結晶径を大きくしていくのに伴って回転速度を下げていき、固液界面形状の変化(徐々に結晶側に凸になっていく変化)を防止する。
【0009】
本発明は、特にセリウム付活珪酸ガドリニウム単結晶等の酸化物単結晶の育成に有効である。
【0010】
【実施例】
実施例1
セリウム付活珪酸ガドリニウム単結晶を育成した例を説明する。
高周波誘導加熱によりるつぼを加熱し原料を融液とし、種結晶の下端を接触させ、1〜5mm/時間で引き上げながら成長させた。種結晶は、種付け前から40rpmで回転させ、融液の温度を調整することにより、30〜50mm引き上げる間に結晶径をφ50mmまで広げて、肩部を形成した。その間、結晶径が約φ40mmの時に固液界面の反転が起こり、形状が融液側に凸の状態からフラットに変化した。その後、φ50mmまで結晶径を広げる間に、回転速度を30rpmまで下げた。その後、自動直径制御に入り、直胴部を約180mm引き上げた後、結晶を切り離し、約50時間かけて冷却を行った。
【0011】
実施例2
セリウム付活珪酸ガドリニウム単結晶を育成した例を説明する。
高周波誘導加熱によりるつぼを加熱し原料を融液とし、種結晶の下端を接触させ、1〜5mm/時間で引き上げながら成長させた。種結晶は、種付け前から50rpmで回転させ、融液の温度を調整することにより、30〜50mm引き上げる間に結晶径をφ50mmまで広げて、肩部を形成した。その間、結晶径が約φ25mmの時に固液界面の反転が起こり、形状が融液側に凸の状態からフラットに変化した。その後、φ50mmまで結晶径を広げる間に、回転速度を30rpmまで下げた。その後、自動直径制御に入り、直胴部を約180mm引き上げた後、結晶を切り離し、約50時間かけて冷却を行った。
【0012】
比較例1
セリウム付活珪酸ガドリニウム単結晶(Ce:Gd2SiO5)を育成した例を説明する。原料として、Gd2O3 約3260g、SiO2 約540g、CeO2約10gをφ100mmのIrるつぼ中に採り、φ50×180mmの結晶をチョクラルスキ−法で育成した。
高周波誘導加熱によりるつぼを加熱し原料を融液とし、種結晶の下端を接触させ、1〜5mm/時間で引き上げながら成長させた。種結晶は、種付け前から20rpmで回転させた。融液の温度を調整することにより、30〜50mm引き上げる間に結晶径をφ50mmまで広げて、肩部を形成した。その間、固液界面形状の反転は起こらなかった。そして、回転速度は20rpmのままで自動直径制御に入り、約180mm平行部を引き上げた後、結晶を切り離し、約50時間かけて冷却を行った。直胴部の育成中にも固液界面の反転は起こらず、育成結晶のテ−ル形状は融液側(下)に凸の状態であった。
【0013】
比較例2
セリウム付活珪酸ガドリニウム単結晶を育成した例を説明する。
高周波誘導加熱によりるつぼを加熱し原料を融液とし、種結晶の下端を接触させ、1〜5mm/時間で引き上げながら成長させた。種結晶は、種付け前から30rpmで回転させた。融液の温度を調整することにより、30〜50mm引き上げる間に結晶径をφ50mmまで広げて、肩部を形成した。その間、固液界面形状の反転は起こらなかった。そして、回転速度は30rpmのままで自動直径制御に入り、約180mm平行部を引き上げた後、結晶を切り離し、約50時間かけて冷却を行った。自動直径制御に入った直後に(直胴部の最上部で)固液界面の反転が起こったために、育成結晶のテ−ル形状はフラットであり、反転が起こったと思われる位置には、多数のボイドが見られた。
【0014】
実施例1、2、比較例1、2での割れの発生の割合を次ぎに示す。
【0015】
以上のように、従来法において肩部で固液界面形状が反転しなかった結晶では、ほぼ100%割れが発生した。しかし、本方法において、肩部の回転速度を大きくして肩部育成中に固液界面形状を反転させた結晶では、割れがほとんど発生しなくなった。そして、固液界面の反転位置をより小さい結晶径にすることによって、完全に割れを防止できる傾向が得られた。
【0016】
【発明の効果】
本発明の育成方法により、特に、熱膨張に異方性がある、へき開性がある等の特徴を有する脆弱な結晶について、残留歪等による冷却中及び冷却終了後の肩部付近での割れ発生を防止することができる。また、割れが発生しにくい結晶においても、本発明により内部残留歪が低減できることは、結晶の品質向上に有効である。
Claims (1)
- るつぼ内の原料を加熱して融液とし、その融液に種結晶の下端を接触させ、種結晶を引き上げながら単結晶を育成する単結晶の育成方法において、種結晶から目標径まで結晶径を広げていく過程である肩部育成中に、結晶の固液界面形状を融液側に凸の状態から、フラットな状態または結晶側に凸の状態に反転させるまで種結晶の回転速度を大きく一定とし、固液界面の反転後に種結晶の回転速度を小さく一定とすることを特徴とする単結晶の育成方法。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
JP23692094A JP4201215B2 (ja) | 1994-09-30 | 1994-09-30 | 単結晶の育成方法 |
US08/413,288 US5690731A (en) | 1994-03-30 | 1995-03-30 | Method of growing single crystal |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23692094A JP4201215B2 (ja) | 1994-09-30 | 1994-09-30 | 単結晶の育成方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH08104594A JPH08104594A (ja) | 1996-04-23 |
JP4201215B2 true JP4201215B2 (ja) | 2008-12-24 |
Family
ID=17007713
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP23692094A Expired - Lifetime JP4201215B2 (ja) | 1994-03-30 | 1994-09-30 | 単結晶の育成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP4201215B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
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JP4844429B2 (ja) * | 2007-02-26 | 2011-12-28 | 日立化成工業株式会社 | サファイア単結晶の製造方法 |
JP5601273B2 (ja) * | 2011-04-20 | 2014-10-08 | 住友金属鉱山株式会社 | 酸化物単結晶の製造方法 |
-
1994
- 1994-09-30 JP JP23692094A patent/JP4201215B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
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