JP5588608B2 - 有機無機複合材料とその成形体、光学部品およびレンズ - Google Patents
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Description
特許文献2には、無機微粒子と化学結合を形成しうる官能基を有する熱可塑性樹脂と無機微粒子の有機無機複合材料の記載があり、高い屈折率と透明性を両立している。しかしながら耐熱性や高いアッベ数との両立の観点では、必ずしも実用上十分な技術ではなかった。
[2] 前記無機微粒子と結合しうる官能基が、
[3] 前記無機微粒子と結合しうる官能基が、−COOH、−SO3H、−PO(OH)2、またはこれらの塩から選ばれる基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の有機無機複合材料。
[4] 前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5万以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[5] 前記無機微粒子の平均1次粒子径が1〜15nmであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[6] 前記無機微粒子が酸化ジルコニウム、酸化亜鉛または酸化チタンを含有する微粒子であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[7] 有機無機複合材料に対して、前記無機微粒子を10質量%以上含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[8] 波長589nmにおいて、厚み1mm換算で50%以上の光線透過率を有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[9] 波長589nmにおける屈折率が1.55以上であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[10] アッベ数が40以上であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする成形体。
[12] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする光学部品。
[13] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とするレンズ。
本発明の有機無機複合材料は、無機微粒子と、前記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位の両方を含む熱可塑性樹脂とを含む有機無機複合材料である。
本発明の有機無機複合材料に用いられる熱可塑性樹脂は、下記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位の両方を含む共重合体である。以下に一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位について説明する。
より好ましくは、R1〜R4のうち少なくとも2つが互いに結合してアルキリデン基、mで表される繰り返し単位構造以外の構造である単環またはmで表される繰り返し単位構造以外の構造である多環を形成している態様である。
前記R1〜R4のうち少なくとも2つが互いに結合してアルキリデン基や単環または多環を形成している態様としては、例えば、R1とR2が互いに結合してアルキリデン基や単環または多環を形成している場合や、R2とR3が互いに結合して単環または多環を形成している場合や、R3とR4が互いに結合してアルキリデン基や単環または多環を形成している場合等が挙げられる。前記アルキリデン基の構造としては特に制限はなく、前記単環または多環の構造としては特に制限はないが、mで表される繰り返し単位構造以外であることが好ましい。
一般式(1)としてさらに好ましくは、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは、−COOR5または−OCOR5で表される置換基を表し、R5は置換または無置換のアルキル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、mは0または1を表す場合である。
前記R1〜R5における前記置換または無置換のアリール基は、炭素数6〜30が好ましく、より好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、1−ナフチル基を挙げることができる。ここでいうアリール基の中には、ヘテロアリール基も含まれる。前記アルキル基の置換基、前記アリール基の置換基としては、これらのアルキル基およびアリール基を挙げることができ、その他に、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)などを挙げることができる。
前記mは、0または1であることが好ましい。
より好ましくは、R11〜R14のうち少なくとも2つが互いに結合してアルキリデン基、nで表される繰り返し単位構造以外の構造である単環またはnで表される繰り返し単位構造以外の構造である多環を形成している態様である。
前記R11〜R14のうち少なくとも2つが互いに結合してアルキリデン基や単環または多環を形成している態様としては、例えば、R11とR12が互いに結合してアルキリデン基や単環または多環を形成している場合や、R12とR13が互いに結合して単環または多環を形成している場合や、R13とR14が互いに結合してアルキリデン基や単環または多環を形成している場合等が挙げられる。前記アルキリデン基の構造としては特に制限はなく、前記単環または多環の構造としては特に制限はないが、nで表される繰り返し単位構造以外であることが好ましい。
一般式(2)としてさらに好ましくは、R11〜R14はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、−COOR15または−OCOR15で表される置換基、あるいはL−Xで表される置換基を表し、R11〜R14の少なくともいずれか1つが−L−Xであり、前記R15は置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは無機微粒子と結合しうる官能基を表し、前記R11〜R14のうち少なくとも2つが互いに結合して−O−、−CO−またはその両方を含む環を形成していてもよく、nは0または1を表す場合である。
前記R11〜R15のアリール基は、炭素数6〜30が好ましく、より好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、1−ナフチル基を挙げることができる。ここでいうアリール基の中には、ヘテロアリール基も含まれる。前記アルキル基の置換基、前記アリール基の置換基としては、これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を挙げることができ、その他に、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)を挙げることができる。
また、前記nは、0または1であることが好ましい。
前記pは0〜3の整数を表し、好ましくは3である。
装置:HLC−8121GPC/HT (東ソー社)
カラム:TSKgel GMHHR-H(20)HT (7.8mm×300mm)2本
検出器:HLC−8221GPC/HT内臓RI検出器
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定流量:1mL/min
測定温度:145℃
試料注入量:500μL(0.2%溶液)
標準試料:単分散ポリスチレン×16(東ソー社)
本発明の有機無機複合材料には、本発明の熱可塑性樹脂以外の樹脂を含有させてもよい。
本発明の有機無機複合材料に用いられる無機微粒子としては特に制限はなく、例えば特開2002−241612号公報、特開2005−298717号、特開2006−70069号各公報等に記載の微粒子を用いることができる。
本発明で用いられる無機微粒子としては、具体的には、酸化物微粒子(酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化テルル、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ビスマス、酸化錫等)、複酸化物微粒子(ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、タンタル酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、錫酸バリウム、ジルコンなど)、IIb-VIb族半導体(Zn、Cdのカルコゲン(S、Se、Te)化物または酸化物)、硫化亜鉛微粒子等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも特に、金属酸化物微粒子が好ましく、中でも酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれるいずれか一つであることが好ましく、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛および酸化チタンからなる群より選ばれるいずれか一つであることがより好ましく、さらには可視域透明性が良好で光触媒活性の低い酸化ジルコニウム微粒子を用いることが特に好ましい。本発明では、屈折率や透明性や安定性の観点から、これらの無機物の複合物を用いてもよい。またこれらの微粒子は光触媒活性低減、吸水率低減など種々の目的から、異種元素をドーピングしたり、表面層をシリカ、アルミナ等異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面修飾したものであってもよい。
これらの水分を含有する反応系において合成した無機微粒子を応用する際に水分が悪影響を及ぼす場合がある。このような場合は無機微粒子合成後に他の適切な有機溶媒に置換することもできる。必要に応じて適切な分散剤を用いることで分散性を損なうことなく均一分散が可能である。
また、水中で加水分解させる方法以外の方法として、有機溶媒中や本発明における熱可塑性樹脂が溶解した有機溶媒中で無機微粒子を作製する方法を採用してもよい。
これらの方法に用いられる溶媒としては、アセトン、2−ブタノン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、アニソール等が例として挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、また複数種を混合して使用してもよい。
溶液中で無機粒子を作製する場合、合成時の温度により無機粒子の特性、粒子サイズ、凝集状態等が異なり適切な条件を求めることが重要である。しかしながら、常圧下では溶液の沸点以上の温度で合成することは不可能である。特性上より高温での合成が必要な場合には、例えばオートクレーブのような高圧釜を用いて高圧下で合成することにより必要な特性を得ることもできる。
または、粒子の前駆体を液相で形成した後に無機塩で粒子の凝集を防ぎながら焼成により結晶化させる方法が特開2006−16236号公報に記載されている。
さらには分子ビームエピタキシー法やCVD法のような真空プロセスを用いた気相法で作製する方法など、例えば特開2006−70069号公報等に記載される各種一般的な微粒子合成法を挙げることができる。
無機微粒子の結晶化度は合成する条件により異なるが、いかなる結晶化度の無機粒子でも状況に応じて用いることができる。XRD装置で測定した場合明確なピークを有する結晶性のものであってもブロードなハローを持つアモルファスであっても構わない。一般に結晶化度の高い無機微粒子は低いものに比較して屈折率が高く、高屈折材料への応用には有利である。しかしながら、例えば酸化チタンのように光触媒活性が高い材料の場合、結晶化度を低くすることにより光触媒活性を抑制できることが知られている。無機微粒子の光触媒活性は、有機無機複合材料に光を照射した場合樹脂の分解という重大な問題を引き起こす場合がある。このような場合には、結晶化度の低い無機ナノ粒子を用いて光触媒活性を抑制することも可能である。
無機微粒子がコア−シェル構造を有する場合、コア部分とシェル部分の結晶化度は同一であっても全く異なっても構わない。これらの組み合わせは、コア部分とシェル部分の結晶構造、格子定数等で物理的に決定される場合もあるが、合成条件により意図的に作り分けることが可能な場合もある。それぞれの特性を活かしたコアとシェルの組み合わせが必要である。
ここで、上述の数平均1次粒子サイズとは例えば、X線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)で測定することができる。
本発明の有機無機複合材料には、上記の熱可塑性樹脂や無機微粒子以外に、均一分散性、成形時の流動性、離型性、耐候性等観点から適宜各種添加剤を配合してもよい。
これら添加剤の配合割合は目的に応じて異なるが、前記無機微粒子および熱可塑性樹脂の合計量に対して、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることが特に好ましい。
本発明では、後述するように水中またはアルコール溶媒中に分散された無機微粒子を熱可塑性樹脂と混合する際に、有機溶媒への抽出性または置換性を高める目的、熱可塑性樹脂への均一分散性を高める目的、微粒子の吸水性を下げる目的、あるいは耐候性を高める目的など種々目的に応じて、上記熱可塑性樹脂以外の分散剤を添加してもよい。該分散剤の重量平均分子量は50〜50,000であることが好ましく、より好ましくは100〜20,000、さらに好ましくは200〜10,000である。
これら分散剤の添加量の総量は無機微粒子に対して、質量換算で0.01〜2倍であることが好ましく、0.03〜1倍であることがより好ましく、0.05〜0.5倍であることが特に好ましい。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂のガラス転移温度が高い場合、組成物の成形が必ずしも容易ではないことがある。このため、本発明の組成物の成形温度を下げるために可塑剤を使用してもよい。可塑化剤を添加する場合の添加量は有機無機複合材料の総量の1〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。
本発明で使用する可塑剤は、樹脂との相溶性、耐候性、可塑化効果などを総合的に勘案して決定する必要があり、特開2007−238929号公報等に記載の種々公知のものから選択できる。
上記成分以外に、成形性を改良する目的で変性シリコーンオイル等の公知の離型剤を添加したり、耐光性や熱劣化を改良したりする目的で、ヒンダードフェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系等の公知の劣化防止剤を適宜添加してもよい。これらを配合する場合は、有機無機複合材料の全固形分に対して0.1〜5質量%程度とすることが好ましい。
本発明に用いられる無機微粒子は、側鎖に前記官能基を有する熱可塑性樹脂と化学結合して樹脂中に分散され、本発明の有機無機複合材料を得ることができる。
本発明に用いられる無機微粒子は粒子サイズが小さく、表面エネルギーが高いため、固体で単離すると再分散させることが難しい。よって、無機微粒子は溶液中に分散された状態で熱可塑性樹脂と混合し安定分散物とすることが好ましい。複合物の好ましい製造方法としては、(1)無機粒子を上記分散剤の存在下に表面処理を行い、表面処理された無機微粒子を有機溶媒中に抽出し、抽出した該無機微粒子を前記熱可塑性樹脂と均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合物を製造する方法、(2)無機微粒子と熱可塑性樹脂の両者を均一に分散あるいは溶解できる溶媒を用いて両者を均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合物を製造する方法が挙げられる。
有機溶媒中に抽出された無機微粒子と熱可塑性樹脂を混合する際に、可塑化剤、離型剤、あるいは別種のポリマー等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。
本発明の有機無機複合材料を成形することにより、本発明の成形体を製造することができる。本発明の成形体は、有機無機複合材料の説明の欄で前記した屈折率と光学特性を示すものが有用である。
本発明の成形体は、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れた成形体である。本発明の光学部品は、このような成形体からなるものである。本発明の光学部品の種類は、特に制限されない。特に、有機無機複合材料の優れた光学特性を利用した光学部品、特に光を透過する光学部品(いわゆるパッシブ光学部品)として好適に利用することができる。かかる光学部品を備えた光学機能装置としては、例えば、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。
本発明の有機無機複合材料を用いた光学部品は、特にレンズ基材に好適である。本発明の有機無機複合材料を用いて製造されたレンズ基材は、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れている。また、有機無機複合材料を構成するモノマーの種類や分散させる無機微粒子の量を適宜調節することにより、レンズ基材の屈折率を任意に調節することが可能である。
本発明における「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、レンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。ただし、これらの膜や枠などは、本発明でいうレンズ基材に付加される部材であり、本発明でいうレンズ基材そのものとは区別される。
本実施例において、各分析および評価方法は、下記の手段でおこなった。
リガク(株)製「RINT1500」(X線源:銅Kα線、波長1.5418Å)を用いて、23℃で測定した。
日立製作所(株)社製「H−9000UHR型透過型電子顕微鏡」(加速電圧200kV、観察時の真空度約7.6×10-9Pa)にて行った。
測定する樹脂を成形して厚さ1.0mmの小片を作製し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置「UV−3100」((株)島津製作所製)で測定した。
アッベ屈折計(アタゴ社製「DR−M4」)にて波長589nmの光について行った。
分子量は、以下のような条件でGPC測定を行うことにより求めたポリスチレン換算で表した重量平均分子量として求めた。
装置:HLC−8121GPC/HT (東ソー社)
カラム:TSKgel GMHHR-H(20)HT (7.8mm×300mm)2本
検出器:HLC−8221GPC/HT内臓RI検出器
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定流量:1mL/min
測定温度:145℃
試料注入量:500μL(0.2%溶液)
標準試料:単分散ポリスチレン×16(東ソー社)
示差走査熱量計(DSC6200、セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、窒素中、昇温温度10℃/分の条件で各試料において、ガラス転移温度(以下、Tgとも言う)を測定した。本明細書で規定されるTgは該測定に準じた値である。
(1)酸化ジルコニウム水分散物の調製
50g/Lの濃度のオキシ塩化ジルコニウム溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水和ジルコニウム懸濁液を得た。この懸濁液をろ過した後、イオン交換水で洗浄し、水和ジルコニウムケーキを得た。このケーキを、イオン交換水を溶媒として酸化ジルコニウム換算で濃度15質量%に調整して、オートクレーブに入れ、圧力150気圧、150℃で24時間水熱処理して酸化ジルコニウム微粒子懸濁液を得た。TEMより数平均粒子サイズが5nmの酸化ジルコニウム微粒子の生成を確認した。
前記(1)で調製した酸化ジルコニウム分散物(15質量%水分散物)500gに15gのp−n−プロピル安息香酸と1000gの酢酸ブチルを加え約1000g以下になるまで減圧濃縮して溶媒置換を行った後、酢酸ブチルの添加で濃度調整をすることで6.7質量%の酸化ジルコニウム酢酸ブチル分散物(2)を得た。
既報に従い、特開2003−73564号公報記載のポリマーAおよび、特開2007−238929号公報記載のポリマーC、国際公開WO2005−73310号公報に樹脂(2)として記載のポリマーDを合成した。
[材料組成物の調整並びに透明成形体の作製]
(1)有機無機複合材料の調整
前記で調製した酸化ジルコニウム微粒子酢酸ブチル分散物(2)にZrO2微粒子が固形分の30質量%になる様に熱可塑性樹脂P−1を混合した。この際、P−1はクロロベンゼンとTHFの9:1混合溶媒の2%溶液としておき、ここに酸化ジルコニウム分散液を滴下して加える方法で混合した。混合後、80℃、1時間加熱し、溶媒を濃縮留去した後、固形物を140℃、3時間以上、溶媒が1質量%以下になるまで真空乾燥することでP−1の有機無機複合材料を白色粉末状で得た。得られた有機無機複合材料のTgは、もとのP−1のTgよりも高かった。該白色粉末を、金型に入れ加熱圧縮成形し(温度;340℃、圧力;13.7MPa、時間2分)、厚さ1mmの透明成形体を得た。得られた成形体の光線透過率測定および屈折率測定を行った。結果を下記表1に示す。また、以下の基準で判定した金型からの離型性、金型残りも良好であった。結果を下記表1にあわせて記載した。
加熱成形後、ステンレスでできた金型から成型体を外す際のボタンの取れやすさを以下の基準で官能評価した。
○:自然に金型からボタンが取れる。
△:少し力を入れると金型からボタンが取れる。
×:かなり力を入れないと金型からボタンが取れない。
加熱成型後、ステンレスでできた金型から成型体を外す際の金型残りを以下の基準で評価した。
○:金型残りが無い
△:金型残りが少ない
×:金型残りが多い
実施例1と同様の方法で、P−4、P−6、P−8および比較ポリマーA、ポリマーB、ポリマーCの有機無機複合材料の調整を行った。
本発明の熱可塑性樹脂P−4、P−6、P−8を用いた実施例2〜4では、特に問題なく厚さ1mmの透明成形体まで得ることができた。得られた成形体の光線透過率測定および屈折率測定を行った。結果を下記表1に示す。
比較ポリマーAを用いた比較例1の場合、酸化ジルコニウム分散液を滴下している際、一部沈殿物が生成したため、さらにジクロロベンゼンで2倍に希釈して調整し白色粉末までは得られたが、加熱圧縮成形体は白濁しており、かつ脆く、屈折率の測定はできなかった。
比較ポリマーBおよびDをそれぞれ用いた比較例2および4の場合、酸化ジルコニウム分散液を滴下後の混合液は良好な透明性を示し問題なく白色粉末までは得られたが、加熱圧縮成形体は白濁しており、かつ脆く、屈折率の測定はできなかった。
比較ポリマーCを用いた比較例3の場合、酸化ジルコニウム分散液を滴下後の混合液は良好な透明性を示したが、140℃の乾燥で若干融着し、細かな粉末ではなく白色塊状物となってしまった。得られた塊状物を粉砕後、加熱圧縮成形を200℃で実施した結果、厚さ1mmの透明成形体を得た。得られた成形体の光線透過率測定および屈折率測定を行った。比較例3について、成形性評価結果とともにこれらの測定結果を下記表1に示す。
また、本発明の有機無機複合組成を用いて、凹レンズ、凸レンズ等の金型形状に合わせて生産性よく正確にレンズ形状を形成できることを確認した。
Claims (12)
- 無機微粒子および熱可塑性樹脂を少なくとも含有する有機無機複合材料であって、該熱可塑性樹脂が下記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位の両方を含み、
前記無機微粒子の数平均1次粒子サイズが1〜15nmであり、
前記熱可塑性樹脂に含まれる一般式(2)で表される繰り返し単位の割合が0.1〜20mol%であり、
前記有機無機複合材料に含まれる無機微粒子の含有量が10〜80質量%であることを特徴とする有機無機複合材料。
- 前記無機微粒子と結合しうる官能基が、−COOH、−SO3H、−PO(OH)2、またはこれらの塩から選ばれる基であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合材料。
- 前記一般式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアリール基、−COOR5または−OCOR5で表される置換基であり、R5は、無置換のアルキル基、無置換のアリール基であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機無機複合材料。
- 前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5万以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- 前記無機微粒子が酸化ジルコニウム、酸化亜鉛または酸化チタンを含有する微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- 波長589nmにおいて、厚み1mm換算で50%以上の光線透過率を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- 波長589nmにおける屈折率が1.55以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- アッベ数が40以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする成形体。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする光学部品。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とするレンズ。
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