JP5583737B2 - 空気入りタイヤの試験方法 - Google Patents
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内圧が充填された供試タイヤを、高温雰囲気下に保持する熱劣化処理ステップと、
この熱劣化処理が施され且つ内圧が充填された上記供試タイヤを、オゾン雰囲気下に保持するオゾン劣化処理ステップと、
このオゾン劣化処理が施された上記供試タイヤを、台上試験装置により、試験内圧が充填され且つ試験荷重が負荷された状態で回転させる走行ステップとを含んでおり、
上記オゾン劣化処理ステップと走行ステップとが、その順に、1回以上繰り返される。
図1には、耐久性の評価対象となりうる空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面に垂直な方向が周方向である。図1に示された空気入りタイヤ2は、一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。図1には主要部材のみが示されている。このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10及びベルト12を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着されうる。
上記タイヤ2は耐久性評価のための走行試験に供せられる。この走行試験に先立って、供試タイヤ2には、外部クラックの発生を促進するための劣化処理が施される。この劣化処理は、供試タイヤ2の特性を、市場において表面劣化したタイヤの特性に、短期間で近づけるためのものである。この走行前の処理工程は、供試タイヤ2を加熱することによる熱劣化処理のステップ、及び、供試タイヤ2をオゾン雰囲気下に保持することによるオゾン劣化処理のステップを含む。以下、単に「劣化処理」という場合には、上記熱劣化処理及びオゾン劣化処理のいずれをも含むものとする。この前処理工程により、特に、タイヤ2のトレッド4等の表面が劣化させられる。この表面の劣化により、前述したタイヤ2のトレッドグルーブクラック等の表面クラックの発生が促進されうる。上記熱劣化処理のステップ及びオゾン劣化処理のステップが終了すると、次に走行試験が行われる。その後、後述するように、オゾン劣化処理と走行試験とがその順に、少なくとも1回繰り返して実施される。ドラム走行試験において損傷が効果的に進むのはタイヤの表面付近であるため、この繰り返しが大変有効である。
図2が参照されつつ、以下に、上記タイヤ2の表面損傷、特にTGCに対する耐久性能を評価するための試験方法(以下、評価方法ともいう)が説明される。図2には、本実施形態に係る評価方法の実行に用いられる試験装置32が示されている。この試験装置32は、タイヤ2の走行試験を行うための装置である。この試験装置32は、供試タイヤ2が装着される試験用の規定リム34、このリム34を支持する支持装置36、及び、供試タイヤ2を回転駆動する駆動ドラム38を備えている。
走行試験には、上記試験装置32が用いられる。この走行試験は台上試験とも呼ばれる。この走行試験は、上記劣化処理が施されたタイヤ2に対して行われる。この試験は、タイヤ2の走行ステップである。タイヤ2が装着された試験用のリム34は、支持装置36の回転軸40に取り付けられる。タイヤ2に所定の試験内圧が充填された上で、走行試験が開始される。タイヤ2は、支持装置36により、駆動ドラム38の外周面に、所定の試験荷重で押圧される。タイヤ2は、この状態で、後述する所定速度(走行試験速度)で走行させられる。走行の終了後、このタイヤ2の損傷状態が確認される。
実施例1としての乗用車用ラジアルタイヤに対し、前述した熱劣化処理及びオゾン劣化処理が施された。この実施例1のタイヤのサイズは195/65R15である。劣化処理の要領は前述したとおりである。この実施例1のタイヤに対する熱劣化処理の条件(保持温度、タイヤ内圧、保持時間)、及び、オゾン劣化処理の条件(保持温度、タイヤ内圧、オゾン濃度、保持時間)は表1に示される。表には、オゾンがO3 と表示されている。これら劣化処理が終了した実施例1のタイヤに対し、前述した走行試験が行われた。試験用リムは、規定の15x6Jである。走行試験条件(試験荷重、タイヤ内圧、走行速度、雰囲気温度、走行距離)は表1に示される。ここで、試験荷重である規格に規定された最大内圧時の最大荷重の例えば150%は、8.15kNとなる。走行試験が終了した実施例1のタイヤに、上記オゾン劣化処理及び走行試験が、その順に、2回繰り返して実施された。繰り返されたオゾン劣化処理の処理条件、及び、繰り返された走行試験の試験条件は、表1に記載された条件と同じである。この繰り返しのオゾン劣化処理及び走行試験が終了した実施例1のタイヤに対し、その損傷が、目視検査及び寸法検査によって確認された。確認された損傷の種類が表1に示される。また、損傷(クラック)の長さが、指標によって表1に示される。この指標とは、基準となるTGC対策済みのサンプルタイヤに発生した亀裂の長さを1としたときの、供試タイヤ(ここでは実施例1)に発生した亀裂の長さの逆数×100である。従って、指数が100に近いほど、上記対策済みサンプルタイヤに近いということになる。すなわち、指数が100に近いほど、タイヤの劣化は無いか又は軽いものであり、市場の再現ができていないと判断できる。調査によれば、市場においてTGCが発生したタイヤの亀裂長の逆数×100(指数)は、80以下である。また、上記亀裂の長さとは、1mm以上である複数のクラックの長さの合計をいう。
実施例2から9としての各タイヤに対し、前述した熱劣化処理、オゾン劣化処理及び走行試験が実施された。この走行試験後には、オゾン劣化処理及び走行試験がその順に繰り返し実施された。熱劣化処理の条件、オゾン劣化処理の条件、走行試験の条件、並びに、上記オゾン劣化処理及び走行試験の繰り返し回数は表1及び表2に示されるとおりである。その他の試験要領、タイヤのサイズ、及び、損傷の確認検査要領は、前述した実施例1におけると同じである。各実施例についての損傷の種類、及び、クラックの長さ(指標)は表1及び表2に示される。
比較例1としてのタイヤに対し、前述した熱劣化処理、オゾン劣化処理及び走行試験が実施された。この比較例1に対しては、オゾン劣化処理及び走行試験の繰り返し実施は行われなかった。熱劣化処理の条件、オゾン劣化処理の条件及び走行試験の条件は表3に示されるとおりである。その他の試験要領、タイヤのサイズ、及び、損傷の確認検査要領は、前述した実施例1におけると同じである。損傷の種類、及び、クラックの長さ(指標)は表3に示される。
比較例2としてのタイヤに対し、前述した熱劣化処理及び走行試験が実施された。この比較例2に対しては、オゾン劣化処理は実施されなかった。オゾン劣化処理及び走行試験の繰り返し実施も行われなかった。熱劣化処理の条件及び走行試験の条件は表3に示されるとおりである。その他の試験要領、タイヤのサイズ、及び、損傷の確認検査要領は、前述した実施例1におけると同じである。損傷の種類、及び、クラックの長さ(指標)は表3に示される。
比較例3としてのタイヤに対し、前述したオゾン劣化処理及び走行試験が実施された。この比較例3に対しては、熱劣化処理は実施されなかった。オゾン劣化処理及び走行試験の繰り返し実施も行われなかった。オゾン劣化処理の条件及び走行試験の条件は表3に示されるとおりである。その他の試験要領、タイヤのサイズ、及び、損傷の確認検査要領は、前述した実施例1におけると同じである。損傷の種類、及び、クラックの長さ(指標)は表3に示される。
比較例4としてのタイヤに対しては、前述した走行試験のみが実施された。この比較例4に対しては、熱劣化処理及びオゾン劣化処理ともに実施されなかった。オゾン劣化処理及び走行試験の繰り返し実施も行われなかった。走行試験の条件は表3に示されるとおりである。その他の試験要領、タイヤのサイズ、及び、損傷の確認検査要領は、前述した実施例1におけると同じである。損傷の種類、及び、クラックの長さ(指標)は表3に示される。
比較例5としてのタイヤに対し、前述した熱劣化処理、オゾン劣化処理及び走行試験が実施された。この比較例5に対しては、オゾン劣化処理及び走行試験の繰り返し実施は行われなかった。熱劣化処理の条件、オゾン劣化処理の条件及び走行試験の条件は表3に示されるとおりである。熱劣化処理の条件は実施例1のそれと同じである。オゾン劣化処理の条件は、その保持時間を除いて実施例1のそれと同じである。オゾン劣化処理における保持時間は、9.0日間であり、実施例1の3.0日間の3倍である。実施例1では、オゾン劣化処理が2回繰り返される。従って、比較例5の保持時間は、実施例1の累積保持時間と実質的に同じとなる。走行試験の条件は、その走行距離を除いて実施例1のそれと同じである。走行距離は、3000kmであり、実施例1の1000kmの3倍である。実施例1では、走行試験が2回繰り返される。従って、比較例5の走行距離は、実施例1の累積走行距離と実質的に同じとなる。その他の試験要領、タイヤのサイズ、及び、損傷の確認検査要領は、前述した実施例1におけると同じである。損傷の種類、及び、クラックの長さ(指標)が表3に示される。
損傷形態の評価の基準は、市場におけるタイヤのTGCのみの再現がなされているか否かである。TGC以外の損傷が発生すれば、TGC再現のために走行試験を継続することが不可能になることがある。亀裂長さの評価の基準は、前述した、市場においてTGCが発生したタイヤの指数の範囲、すなわち、80以下である。指数が80以下の例については、市場におけるTGCが再現されていると判断しうる。表1及び表2に示されるように、実施例1から9の全てに、TGCのみが発生している。亀裂長さの指数は、実施例1から9の全てについて80以下である。一方、表3に示されるように、比較例1及び5では、TGCの亀裂長さの評価基準を大きく超えている。また、比較例2では、SWC(サイドウォール表面のクラック)のみが発生している。比較例3では、TGCに加えてSWCが発生している。比較例4では、ビード部の内部のゴム層が剥離することによってその表面部分が膨出する、という損傷であるビードルースのみが発生しているものがある。このように、比較例1から5のいずれも、市場におけるTGCが再現されていないと判断しうる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・カーカス
12・・・ベルト
14・・・コア
16・・・ビードエイペックス
18・・・トレッド面
20・・・溝
22・・・カーカスプライ
32・・・試験装置
34・・・リム
36・・・支持装置
38・・・駆動ドラム
40・・・(支持装置の)回転軸
Claims (5)
- 内圧が充填された供試タイヤを、高温雰囲気下に保持する熱劣化処理ステップと、
この熱劣化処理が施され且つ内圧が充填された上記供試タイヤを、オゾン雰囲気下に保持するオゾン劣化処理ステップと、
このオゾン劣化処理が施された上記供試タイヤを、台上試験装置により、試験内圧が充填され且つ試験荷重が負荷された状態で回転させる走行ステップとを含んでおり、
上記オゾン劣化処理ステップと走行ステップとが、その順に、1回以上繰り返される空気入りタイヤの試験方法。 - 上記オゾン劣化処理ステップにおいて、供試タイヤの保持温度が16℃以上24℃以下であり、供試タイヤの保持時間が2.0日以上4.0日以下であり、オゾンの濃度が30pphm以上70pphm以下である請求項1に記載の空気入りタイヤの試験方法。
- 上記熱劣化処理ステップにおいて、供試タイヤの保持温度が65℃以上95℃以下であり、供試タイヤの保持時間が2.0日以上4.0日以下である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの試験方法。
- 上記走行ステップにおいて、供試タイヤに負荷される試験荷重が、規格荷重の130%以上170%以下であり、供試タイヤの走行速度が85km/h以上115km/h以下であり、供試タイヤの走行距離が800km以上1200km以下である請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤの試験方法。
- 上記オゾン劣化処理ステップと走行ステップとの繰り返し回数が、3回以下である請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤの試験方法。
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