JP6852452B2 - タイヤ表面のクラック評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ表面のクラック評価方法に関する。詳細には、本発明は、市場でのクラック発生状態を再現して評価する方法に関する。
車両に装着されて長期間使用されたタイヤの表面に、大小のクラックが発生する場合がある。クラックの発生は、市場でのクレーム対象の一つである。タイヤの品質向上及びクレーム低減のために、タイヤ表面のクラック発生状態を評価する方法が求められている。
例えば、基準となる標準タイヤを装着した車両と、評価対象のタイヤを装着した車両とを同時に走行させて、それぞれのタイヤ表面のクラック発生状態を比較する実車走行試験がある。この実車走行試験には、非常に長期間を要する。市場でのクラック発生状態を短期間で評価するために、種々の評価方法が検討されている。
市場でのクラック発生の要因として、例えば、熱、酸素、オゾン、紫外線、繰り返し変形等が挙げられる。特開2006−337100号公報に記載された評価方法は、高濃度酸素を含む高温高湿雰囲気下でタイヤの劣化を促進する工程を含んでいる。特開2013−124952号公報では、タイヤのゴム部材を加熱して硬化させた後に、走行試験をおこなう評価方法が提案されている。特開2006−084290号公報及び特開2012−207983号公報には、荷重を負荷した状態でタイヤを走行させながら、オゾン劣化を促進させる工程を含む評価方法が開示されている。
特開2006−337100号公報 特開2013−124952号公報 特開2006−084290号公報 特開2012−207983号公報
市場でのクレーム対象であるクラックの主たる発生要因の一つは、タイヤ表面をなす加硫ゴムのオゾン劣化である。オゾン劣化抑制のために、タイヤ製造時の加硫ゴムに、老化防止剤が配合される場合がある。
タイヤ製造時に、加硫ゴムに配合された老化防止剤は、この加硫ゴムからなるゴム部材の内部を移行して、このタイヤ表面に析出する。析出した老化防止剤は、このタイヤ表面を覆う被膜を形成する。析出物の被膜は、タイヤ表面の加硫ゴムがオゾンと直接接触することを防ぐ。これにより、加硫ゴムの劣化が抑制される。
タイヤ表面に析出した老化防止剤は、オゾンとの接触により消費される。タイヤ表面に析出した老化防止剤は、熱、紫外線等によっても消費される。タイヤ表面に析出した老化防止剤の量が、消費によって減少すると、濃度勾配により、ゴム部材の内部から新たに老化防止剤が析出する。タイヤ表面及びその近傍にある加硫ゴム中の老化防止剤の量は、このタイヤが市場で長期間使用されることにより減少する。使用による老化防止剤量の減少を考慮しない評価方法では、市場評価と相関する評価結果が得られない。
特開2006−337100号公報、特開2013−124952号公報及び特開2006−084290号公報に記載の評価方法は、クラック発生に及ぼす老化防止剤の影響を考慮していない。特開2012−207983号公報に記載の評価方法は、走行試験中にタイヤ表面に滲出する滲出物を拭き取る工程を含むが、加硫ゴム中の老化防止剤濃度を測定していない。これらの評価方法では、加硫ゴム中に残存する老化防止剤量の相違に起因する誤差を避けることができない。これらの評価方法によって、クラック発生に関する市場評価と高い相関性を有する評価結果を得ることは、容易ではない。
長期使用による老化防止剤量の変動を考慮して、タイヤ表面に発生するクラックを評価する評価方法は、未だ提案されていない。本発明の目的は、市場でのクラック発生状態を、実験室内で効率的に再現して、市場評価と相関する評価結果を得ることができる評価方法の提供にある。
本発明者等は、複数の供試タイヤのうち少なくとも1本について、そのタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度が予め設定した濃度範囲となるように劣化処理したタイヤに、オゾンを吹き付けることによって、そのタイヤ表面に、市場でのクラック発生状態の優劣の違いを再現できることを見いだすことにより、本発明の完成に至ったものである。
本発明に係るタイヤ表面のクラック評価方法は、
(1)タイヤを劣化処理するための処理条件を決定する第一工程、
(2)この第一工程で決定した劣化処理条件で、複数の供試タイヤを劣化処理する第二工程、
(3)この第二工程を経た複数の供試タイヤに繰り返し歪みを付加しながら、それぞれの供試タイヤの表面にオゾン含有気体を吹き付ける第三工程
及び
(4)この第三工程を経た複数の供試タイヤの表面を観察して、クラック発生状態を評価する第四工程
を有している。好ましくは、この第一工程で決定する処理条件は、これら複数の供試タイヤのうち少なくとも1本のタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を、予め設定した濃度範囲とすることができる条件である。好ましくは、この第一工程、第二工程及び第三工程は、それぞれの供試タイヤの表面に析出する析出物を、有機溶媒又は水を用いて除去する除去工程をさらに含む。
好ましくは、この第一工程で決定する処理条件は、これら複数の供試タイヤのうち少なくとも1本のタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を、0.10質量%以上0.20質量%以下にすることができる条件である。
好ましくは、この第一工程及び第二工程における劣化処理は、湿熱劣化処理である。好ましくは、その処理条件は、湿度60%以上、温度60℃以上90℃以下である。好ましくは、この湿熱劣化処理の処理時間は、5週間以上8週間以下である。
好ましくは、この第一工程、第二工程及び第三工程における除去工程の頻度は、1週間に1回以上である。好ましくは、この除去工程において、水を用いてタイヤ表面の析出物を除去する場合、この水は界面活性剤を含んでいる。
好ましくは、この第三工程において、それぞれの供試タイヤの表面までの距離5cm以内の位置から、その表面に対して垂直方向に、オゾン含有気体を吹き付ける。好ましくは、このオゾン含有気体のオゾン濃度は、10pphm以上60pphm以下である。好ましくは、それぞれの供試タイヤに吹き付けるオゾン含有気体の流量は、毎時100L以上500L以下である。
好ましくは、この第三工程において、複数の供試タイヤを、それぞれ、毎時20km以下の走行速度で走行させることにより、これらの供試タイヤに繰り返し歪みを付加する。好ましくは、この第三工程は、それぞれの供試タイヤの走行距離1000km毎に、少なくとも1回の除去工程を含んでいる。
本発明に係る評価方法は、複数の供試タイヤのうち少なくとも1本について、そのタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を、予め設定した濃度範囲に調整する工程を含んでいる。加硫ゴム中の老化防止剤がこの濃度範囲に調整されたタイヤに、繰り返し歪みを付加しながらオゾン含有気体を吹き付けることにより発生しうるクラックの状態は、市場でのクラック発生状態を反映する。この評価方法によって得られる評価結果は、クラック発生に関する市場評価とよく相関する。
図1は、本発明の一実施形態に係る評価方法を示すフローチャートである。 図2は、図1の第一工程を示すフローチャートである。 図3は、図1の第三工程を説明するための概念図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。本発明に係る評価方法は、この実施形態の説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜変更されて実施されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係る評価方法が示されたフローチャートである。図示される通り、この実施形態に係る評価方法は、劣化処理条件を決定する第一工程と、供試タイヤを湿熱劣化処理する第二工程と、供試タイヤをオゾン劣化処理する第三工程と、供試タイヤ表面を観察する第四工程とを有している。
この実施形態に係る評価方法の評価対象は、空気入りタイヤである。空気入りタイヤは、トレッド及びサイドウォールを備えている。このトレッド及びサイドウォールの材質は、老化防止剤を含む加硫ゴムである。トレッド及びサイドウォールが、この空気入りタイヤのタイヤ表面を構成する。以下、この実施形態に係る評価方法について、空気入りタイヤを評価対象として説明するが、本発明の目的が達成される限り、空気入りタイヤ以外のタイヤを評価対象とすることも可能である。
第一工程は、後述する第二工程で評価対象である供試タイヤを劣化処理するための処理条件を決定するための工程である。本発明に係る評価方法では、タイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を指標として、劣化処理条件を決定する。具体的には、予め、劣化処理後のタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤の濃度範囲を設定し、この濃度範囲となる処理条件を決定する。設定される老化防止剤の濃度範囲は、供試タイヤの種類等に応じて適宜選択される。この実施形態に係る評価方法では、複数の供試タイヤのうち少なくとも1本のタイヤについて、そのタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を0.10質量%以上0.20質量%以下にすることができる劣化処理条件を決定する。より短い処理時間で、この濃度範囲にすることができる劣化処理条件が好ましい。これにより、評価対象である供試タイヤの表面に、市場でのクラック発生状態の優劣の違いを早期に再現することができる。以下、0.10質量%以上0.20質量%以下の濃度範囲を用いて、第一工程から第四工程までが説明されるが、本発明の技術的範囲がこの濃度範囲に限定されるものではない。
なお、本発明において、タイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を測定する方法は、特に限定されない。例えば、JIS K6229「ゴム−溶剤抽出物の求め方(定量)」やJIS K6241「ゴム−ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)による老化防止剤の同定」に記載の方法に準じた測定方法が適宜選択されて用いられる。
図2は、この実施形態に係る評価方法の第一工程が示されたフローチャートである。第一工程では、初めに、評価対象の空気入りタイヤと同じ種類の空気入りタイヤが準備される。この空気入りタイヤは、未使用タイヤである。本願明細書において、第一工程のために準備された空気入りタイヤを「サンプルタイヤ」と称する場合がある。評価対象である供試タイヤの種類が複数ある場合、任意の選択された1種類について、サンプルタイヤが準備される。第一工程において、2個以上のサンプルタイヤを使用する場合がある。この実施形態では、準備された1又は2以上のサンプルタイヤが、それぞれ、正規リムに組み込まれ、正規内圧になるように空気が充填される。本発明の目的が達成される限り、サンプルタイヤが正規リムに組み込まれない状態で、第一工程が実施されてもよい。
この実施形態の第一工程では、次に、サンプルタイヤの劣化処理条件が仮決めされる。仮決めされた劣化処理条件に従って、温度及び湿度が調整された試験室が準備される。この試験室内に、正規リムに組み込まれ空気が充填された1又は2以上のサンプルタイヤが、一定時間静置される。他の実施形態の第一工程において、正規リムに組み込まれていないサンプルタイヤが、試験室内に静置されてもよい。
試験室内に静置されたサンプルタイヤは、この試験室内の温度及び湿度の影響により劣化する。この実施形態における劣化処理は、所謂湿熱劣化処理である。この実施形態では、サンプルタイヤを試験室内に静置する時間が、劣化処理時間である。
劣化処理時間の経過に伴って、サンプルタイヤの表面に、析出物が析出する。この析出物の主成分は、このタイヤ表面をなす加硫ゴムに配合された老化防止剤である。この析出物には、タイヤ製造時に加硫ゴムに配合された可塑剤やワックスが含まれる場合がある。
本発明に係る評価方法の第一工程は、タイヤ表面に析出した析出物を、有機溶媒又は水を用いて除去する除去工程を含んでいる。この除去工程によって、老化防止剤等を含む析出物が除去されたタイヤの表面には、濃度勾配により、その内部からさらに老化防止剤等が析出する。この除去工程により、タイヤ表面をなす加硫ゴム中の、老化防止剤濃度の減少が促進される。
仮決めされた劣化処理条件に従って、除去工程が実施され、劣化処理時間が経過した後、試験室内からサンプルタイヤが取り出される。続いて、取り出されたサンプルタイヤのタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度が測定され、その測定値が判定される。得られた測定値が、0.10質量%以上0.20質量%以下の場合、この仮決めされた劣化処理条件が、後述する第二工程での劣化処理条件として、決定される。得られた測定値が、0.10質量%未満又は0.20質量%より大きい場合、新たな劣化処理条件が仮決めされ、別途準備された新たなサンプルタイヤが、新たに仮決めされた劣化処理条件に従って劣化処理された後、老化防止剤濃度が測定される。
この実施形態において、タイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度は、試験室内の温度及び湿度並びに劣化処理時間によって変動する。この老化防止剤濃度は、劣化処理中におこなう除去工程の頻度や、使用する有機溶媒の種類等によっても変動する。この実施形態では、第一工程において、種々異なる劣化処理条件で1又は2以上のサンプルタイヤを劣化処理した後、タイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を測定する工程を繰り返す。そして、測定した老化防止剤濃度が、最も短い時間で、0.10質量%以上0.20質量%以下となる条件を、後述する第二工程での劣化処理条件として決定する。
この第一工程において、好ましくは、同じ処理条件で2以上のサンプルタイヤを劣化処理する。この場合、市場評価との相関性向上の観点から、少なくとも1本のサンプルタイヤについて測定した老化防止剤濃度が、0.10質量%以上0.20質量%以下となる処理条件を、後述する第二工程での劣化処理条件として決定することがより好ましい。
第二工程は、第一工程で決定した処理条件で、評価対象である供試タイヤを劣化処理する工程である。
この実施形態に係る評価方法の第二工程では、供試タイヤとして、第一工程で使用したサンプルタイヤと同じ種類の空気入りタイヤが準備される。この空気入りタイヤは、未使用タイヤである。第二工程において、複数の供試タイヤが使用される。この実施形態の第二工程では、準備された複数の供試タイヤは、それぞれ、正規リムに組み込まれ、正規内圧になるように空気が充填される。本発明の目的が達成される限り、複数の供試タイヤが正規リムに組み込まれない状態で、第二工程が実施されてもよい。
次に、この第二工程では、第一工程で決定した処理条件の温度及び湿度に調整された試験室が準備される。この試験室内に、正規リムに組み込まれ空気が充填された複数の供試タイヤが、第一工程で決定した劣化処理時間が経過するまで、静置される。他の実施形態の第二工程において、正規リムに組み込まれていない複数の供試タイヤが、試験室内に静置されてもよい。
本発明に係る評価方法の第二工程は、タイヤ表面に析出した析出物を、有機溶媒又は水を用いて除去する除去工程を含んでいる。この第二工程において、好ましくは、試験室内に静置された複数の供試タイヤに対して、第一工程で決定した処理条件と同じ条件で、除去工程がおこなわれる。
この実施形態に係る評価方法の第一工程で決定する処理条件は、複数の供試タイヤのうち少なくとも1本について、そのタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を、0.10質量%以上0.20質量%以下の濃度範囲にすることができる条件である。この実施形態において、長期使用によりその表面にクラックを発生しうるタイヤが、供試タイヤとしてこの第二工程を経た場合、この供試タイヤの表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度は、0.10質量%以上0.20質量%以下の濃度範囲にあると考えられる。一方、長期使用によるクラックの発生が認められないタイヤが供試タイヤとされた場合、その表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度は、第二工程を経ても、0.20質量%以下までは減少しないと予想される。
第三工程は、第二工程を経た複数の供試タイヤに、繰り返し歪みを付加しながら、それぞれの供試タイヤの表面にオゾン含有気体を吹き付ける工程である。換言すれば、この第三工程は、複数の供試タイヤの表面をなす加硫ゴムをオゾン劣化する工程である。
図3は、複数の供試タイヤの1本について、この実施形態に係る評価方法の第三工程を説明するための概念図である。この実施形態では、初めに、第二工程を経た供試タイヤ2が、既知のドラム試験機(図示されず)に装着される。ドラム試験機は、回転ドラム6を備えている。この実施形態の第三工程では、供試タイヤ2のトレッド4を、回転ドラム6の外周面8に接触させて、供試タイヤ2に荷重を負荷する。荷重の負荷により、供試タイヤ2のトレッド4が変形する。その後、供試タイヤ2に荷重を負荷した状態で、回転ドラム6を回転させる。回転ドラム6の回転により、これと接する供試タイヤ2が、回転ドラム6の外周面8の上を走行する。この走行により、供試タイヤ2に、繰り返し歪みが付加される。
回転ドラム6の回転により供試タイヤ2が走行を開始すると同時に、オゾン発生装置(図示されず)の吹き出し口10から、この供試タイヤ2のトレッド4の表面にオゾン含有気体を吹き付ける。図3において、トレッド4に対してオゾン含有気体を吹き付ける方向が、矢印Gとして示されている。図示される通り、この実施形態では、トレッド4の表面に対して、垂直方向からオゾン含有気体が吹き付けられる。なお、本発明に係る評価方法において、オゾン発生装置の種類や構成は特に限定されず、既知の装置が適宜選択されうる。
前述した通り、この実施形態では、第三工程において、供試タイヤ2のトレッド4に繰り返し歪みを付加しながら、このトレッド4の表面に、オゾン含有気体を吹き付ける。トレッド4は、供試タイヤ2の表面の一部を構成する。換言すれば、この実施形態の第三工程は、タイヤ表面の一部であるトレッド4をなす加硫ゴムをオゾン劣化する工程である。
第二工程を経た供試タイヤ2のトレッド4をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度が、0.10質量%以上0.20質量%以下である場合、第三工程でのオゾン劣化処理により、トレッド4の表面にクラックが形成される。このクラック発生状態は、市場でのクラック発生状態を反映するものである。
他の実施形態に係る評価方法では、第三工程において、供試タイヤ2の表面の一部を構成するサイドウォールに、繰り返し歪みを付加しながら、このサイドウォールに対してオゾン含有気体を吹き付ける。この実施形態では、供試タイヤ2のサイドウォールをなす加硫ゴムがオゾン劣化され、サイドウォールの表面に、市場でのクラック発生状態が再現される。
好ましくは、この第三工程は、タイヤ表面に析出した析出物を、有機溶媒又は水を用いて除去する除去工程を含んでいる。第三工程において、供試タイヤ2の表面から析出物が除去されることにより、この供試タイヤ2に吹き付けられたオゾン含有気体が、タイヤ表面と直接接触する。これにより、タイヤ表面をなす加硫ゴムのオゾン劣化が促進され、このタイヤ表面に、市場でのクラック発生状態を再現するまでの時間を短縮することができる。評価に要する時間及びコスト低減の観点から、第一工程で決定した処理条件と同じ条件で、第三工程の除去工程をおこなうことが好ましい。
第四工程は、第三工程を経た複数の供試タイヤの表面を観察して、クラック発生状態を評価する工程である。
本発明の目的が達成される限り、タイヤ表面を観察する方法は特に限定されず、クラック発生状態に応じて、肉眼による目視、拡大鏡、光学顕微鏡等の手段が適宜選択されて用いられる。また、観察したクラック発生状態を評価する方法として、例えば、JIS K6259「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に記載された方法が用いられ得る。JIS K6259によれば、タイヤ表面に発生した亀裂の数、長さ、深さ等に基づいたランク付けによってクラックの発生状態が評価される。
以上説明した通り、本発明に係る評価方法は、複数の供試タイヤのうち少なくとも1本のタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を、予め設定した濃度範囲になるように低減する工程を有している。この工程を経て、老化防止剤濃度が所定濃度に低減された少なくとも1本のタイヤ表面には、比較的早期に、市場でのクラック発生状態が再現される。本発明に係る評価方法によって得られる評価結果は、タイヤ表面のクラック発生状態に関する市場評価とよく相関する。
本発明に係る評価方法において、老化防止剤を含む加硫ゴムの製造方法は特に限定されず、既知のタイヤ製造方法が用いられる。例えば、所定量の老化防止剤と基材ゴムとをオープンロール、バンバリーミキサー等を用いて混練して未加硫ゴムとし、この未加硫ゴムをトレッド等の形状に合わせて押出加工した後、他のタイヤ部材と併せて加硫機中で加熱加圧することにより製造される。
タイヤ表面をなす加硫ゴムに用いられる基材ゴムとして、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム(ABS)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等が挙げられる。
本発明に係る評価方法において、老化防止剤の種類は特に限定されない。通常、タイヤ表面をなす加硫ゴムに配合される老化防止剤として、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤等が例示される。
アミン系老化防止剤の具体例として、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(CD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)等のジフェニルアミン系老化防止剤、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤、N−フェニル−1−ナフチルアミン(PAN)、N−フェニル−2−ナフチルアミン(PBN)等のナフチルアミン系老化防止剤が挙げられる。
フェノール系老化防止剤の具体例として、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DTBMP)、スチレン化フェノール(SP)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMBP)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBETB)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(TBMTBP)等が挙げられる。
タイヤ製造時に、タイヤ表面をなす加硫ゴムに配合される老化防止剤の量は、耐オゾン性の観点から、100質量部の基材ゴムに対し、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。コスト上の観点から好ましい老化防止剤の配合量は、15質量部以下である。加硫ゴムに、2種以上の老化防止剤が配合されてもよい。この場合、2種以上の老化防止剤の総質量が、老化防止剤の配合量とされる。本発明の目的が阻害されない限り、タイヤ表面をなす加硫ゴムが、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、ワックス、充填剤、酸化亜鉛等の既知の配合剤をさらに含んでもよい。
前述した通り、本発明に係る評価方法の第一工程では、劣化処理後の加硫ゴム中の老化防止剤濃度(以下、「残量R」と称する場合がある)を、より短い処理時間で、予め設定した濃度範囲にすることができる処理条件が決定される。第三工程におけるオゾン劣化促進の観点から、残量Rは、0.20質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。クラック発生状態の評価精度向上の観点から、残量Rは、0.10質量%以上が好ましく、0.11質量%以上がより好ましい。
残量Rを予め設定した濃度範囲にまで低減できる限り、複数の供試タイヤを劣化処理する方法は、特に限定されず、湿熱劣化処理、乾熱劣化処理、紫外線劣化処理、オゾン劣化処理等既知の方法が適宜用いられる。タイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度の減少速度の観点から、湿熱劣化処理が好ましい。2種以上の劣化処理方法が併用されてもよい。
複数の供試タイヤを湿熱劣化処理する場合、加硫ゴムの劣化促進の観点から、好ましい処理温度は60℃以上であり、より好ましくは65℃以上であり、特に好ましくは70℃以上である。加硫ゴム自体の変形を抑制する観点から、好ましい処理温度は90℃以下であり、より好ましくは85℃以下である。加硫ゴムの劣化促進及び老化防止剤濃度調整の観点から、好ましい処理湿度は60%以上であり、より好ましくは90%以上である。なお、本願明細書における湿度は、相対湿度である。
加硫ゴムの変形抑制及び過剰な劣化抑制の観点から、劣化処理時間は8週間以下が好ましく、7週間以下がより好ましい。劣化促進及び老化防止剤濃度調整の観点から、好ましい劣化処理時間は、5週間以上である。好ましくは第一工程において、5週間以上8週間以下の劣化処理時間で、残量Rが前述した濃度範囲となる劣化処理方法及び処理条件が選択される。
本発明に係る評価方法の第三工程では、タイヤ表面をなす加硫ゴムのオゾン劣化を促進して、早期に、市場でのクラック発生状態を再現するために、複数の供試タイヤに繰り返し歪みが付加される。複数の供試タイヤに繰り返し歪みを付加する方法として、前述のドラム試験機上を使用する方法の他に、例えば、供試タイヤを実車両に装着して走行させる方法や、供試タイヤを装着した実車両に断続的に荷重を負荷する方法が例示される。作業効率上及び評価精度向上の観点から、ドラム試験機を用いる方法が好ましい。
第三工程において、ドラム試験機を用いてそれぞれの供試タイヤに繰り返し歪みを付加する場合、供試タイヤの走行速度は、毎時20km以下が好ましく、毎時18km以下がより好ましく、毎時16km以下が特に好ましい。これにより、タイヤ走行時に発生する気流が抑制され、走行中のタイヤ表面に、オゾン含有気体が効率よく吹き付けられる。オゾン劣化促進の観点から、好ましい供試タイヤの走行速度は、毎時5km以上である。本発明に係る評価方法において、供試タイヤの総走行距離及び総走行時間は、特に限定されず、タイヤ表面クラック発生状態を評価可能な距離及び時間が選択される。
ドラム試験機を用いる場合、それぞれの供試タイヤに繰り返し付加される歪みが、加硫ゴムのオゾン劣化促進に寄与する。それぞれの供試タイヤに付加される歪みの大きさは、その供試タイヤの内圧と供試タイヤへの負荷荷重とにより調整される。
加硫ゴムのオゾン劣化促進の観点から、それぞれの供試タイヤの内圧は、150kPa以上が好ましく、190kPa以上がより好ましい。加硫ゴムの過剰な劣化を抑制して、市場評価と相関する評価結果が得られるとの観点から、好ましい内圧は250kPa以下である。それぞれの供試タイヤに対する負荷荷重は、その供試タイヤのサイズに応じて適宜決定される。
本願明細書において、第三工程に使用するオゾン含有気体のオゾン濃度及び流量は、オゾン発生装置の吹き出し口において測定され、所定の濃度及び流量に調整される。
加硫ゴムのオゾン劣化促進の観点から、オゾン含有気体のオゾン濃度は10pphm以上が好ましく、15pphm以上がより好ましく、20pphm以上が特に好ましい。安全性及び市場評価との相関性向上の観点から、好ましいオゾン濃度は60pphm以下が好ましく、50pphm以下がより好ましい。
加硫ゴムのオゾン劣化促進の観点から、オゾン含有気体の流量は、毎時100L以上が好ましく、毎時150L以上がより好ましい。安全性及び市場評価との相関性向上の観点から、オゾン含有気体の流量は、毎時500L以下が好ましく、400L以下がより好ましい。
第三工程において、好ましくは、オゾン発生装置の吹き出し口から、タイヤ表面に対して垂直方向に、オゾン含有気体を吹き付ける。これにより、タイヤ表面をなす加硫ゴムのオゾン劣化が促進される。この観点から、より好ましくは、吹き出し口の先端から、タイヤ表面までの垂直距離が5cm以内となるように、吹き出し口の位置を調整して、タイヤ表面に対して垂直方向に、オゾン含有気体を吹き付ける。これにより、評価対象とするタイヤ表面以外のゴム部材のオゾン劣化や変形を抑制することができる。この観点から特に好ましいタイヤ表面までの距離は3cm以内である。
本発明に係る評価方法の第一工程、第二工程及び第三工程は、有機溶媒又は水を用いて、タイヤ表面に析出する析出物を除去する除去工程をさらに含む。除去工程は、タイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度の減少速度向上に寄与する。これにより、各工程における加硫ゴムの劣化及びオゾン劣化が促進される。
析出物の主成分はワックス及び老化防止剤である。析出物の除去効率向上の観点から、水を用いて、タイヤ表面に析出する析出物を除去する場合、析出物の除去効率向上の観点から、水に界面活性剤を配合することが好ましい。
本発明に係る評価方法の除去工程で使用する有機溶媒の具体例として、例えば、アセトン、ナフサ等が挙げられる。水に配合する界面活性剤の具体例として、花王株式会社製の商品名「ファミリーフレッシュ」が挙げられる。
本発明に係る評価方法において、第一工程、第二工程及び第三工程の各工程は、それぞれ、少なくとも1回の除去工程を含む。老化防止剤濃度の減少速度の観点から、除去工程の頻度は、各工程毎に1回以上が好ましく、2回以上がより好ましい。加硫ゴムの変形抑制の観点から、好ましい除去工程の頻度は、各工程毎に7回以下である。
第一工程、第二工程及び第三工程において、劣化処理又はオゾン劣化処理の処理時間が1週間を超える場合、除去工程の頻度は、1週間に1回以上が好ましく、2回以上がより好ましく、3回以上がさらに好ましい。加硫ゴムの変形抑制の観点から、好ましい除去頻度は、1週間に7回以下である。
第三工程において、それぞれの供試タイヤを走行させることにより、この供試タイヤに繰り返し歪みを付加する場合、好ましい除去工程の頻度は、走行距離1000km毎に少なくとも1回である。老化防止剤濃度の減少速度の観点から、除去工程の頻度は、走行距離1000km毎に2回以上がより好ましく、3回以上がさらに好ましい。加硫ゴムの変形抑制の観点から、好ましい除去工程の頻度は、走行距離1000km毎に4回以下である。
本願明細書において、タイヤの各部材の寸法及び角度は、タイヤが正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤに空気が充填された状態で測定される。本願明細書において正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
本願明細書において正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
本願明細書において正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
以下、具体的な実験例を示して、本発明の効果を明らかにするが、この実験例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。なお、この実験例における加硫ゴム中の老化防止剤濃度の測定方法は、以下の通りである。
[老化防止剤濃度の測定方法]
各タイヤ表面から、試験片(10mm×10mm×2mm)を採取して、それぞれ約2mm角に切断した後、市販の粉砕機を用いて冷凍粉砕した。得られた粉砕物の質量M(g)を測定後、全量をアセトンに投入した。室温下、60分間静置後に、アセトン中に抽出された老化防止剤の量m(g)を、ガスクロマトグラフィー・質量分析法(GC/MS法)で測定した。老化防止剤の量mを粉砕物の質量Mで除すことにより、老化防止剤濃度(質量%)を算出した。
以下に説明する評価方法は、タイプ1及びタイプ2の2種類のタイヤ(タイヤサイズ:155/65R14 75S)について、タイヤ表面のクラック発生状態を評価対象としている。タイプ1は、市場においてクラック発生によるクレームがない種類のタイヤであり、タイプ2は、市場においてクラック発生によるクレームがある種類のタイヤである。タイプ1及びタイプ2のタイヤは、いずれも、同量の老化防止剤を含む加硫ゴムから製造されたタイヤ表面を備えている。
[実験例1]
実験例1では、第一工程及び第二工程でおこなう劣化処理条件を変更して、各タイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度に対する効果を検討した。劣化処理方法は、湿熱劣化処理である。予め設定した老化防止剤濃度は、0.10質量%以上0.20質量%以下である。
準備段階として、タイプ1及びタイプ2の未使用タイヤ(各10本)を準備した。その後、正規リムに組み込んで空気を充填し内圧190kPaに調整した状態で、表1−3に(a)−(j)として示されている温度(℃)及び湿度(%)に調整した試験室内に、タイプ1及びタイプ2のタイヤ各1本ずつを静置して、湿熱劣化処理をおこなった。
処理条件(a)−(h)では、湿熱劣化処理中、除去工程として、1週間毎に1回、ファミリーフレッシュ(花王株式会社製)を含ませた布で、各タイヤの表面を拭いながら、流水で洗浄した。処理条件(i)では、除去工程において、有機溶媒を使用しなかった。処理条件(j)では、劣化処理中に除去工程を実施しなかった。
各処理条件において、湿熱劣化処理中は、1週間毎に1回、各タイヤ表面から試験片を採取して、加硫ゴム中の老化防止剤濃度を測定した。得られた測定値が0.20質量%以下となった時点で、タイヤを試験室から取り出すものとし、各タイヤを試験室内に静置後、取り出すまでの時間が、処理時間(週)として、表1−3に示されている。なお、試験室内の静置時間が8週間を超えた場合、タイヤの種類によらず、加硫ゴムの変形等が観察されたため、劣化処理時間は最大8週間とした。各処理時間経過後に測定された老化防止剤濃度(質量%)が、残量Rとして、表1−3に示されている。
Figure 0006852452
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表1−3に示される通り、湿度60%以上かつ温度60℃以上90℃以下で湿熱劣化し、さらに有機溶媒又は水を用いた除去工程をおこなった処理条件(b)−(d)では、市場でクラック発生が認められたタイプ2のタイヤの残量Rが、0.10質量%以上0.20質量%以下となった。一方、市場でクラック発生が認められなかったタイプ1のタイヤでは、処理条件(b)−(d)でも、残量Rが0.20質量%を超えていた。また、上記(b)−(d)以外の処理条件では、タイプ1及びタイプ2ともに、残量Rが0.10質量%以上0.20質量%以下とはならず、その差は小さかった。
[実験例2]
実験例2では、劣化処理後のタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を変更して、第三工程でのオゾン劣化処理をおこなうことにより、各タイヤ表面のクラック発生状態と、市場評価との相関性を比較した。
準備段階として、タイプ1及びタイプ2の未使用タイヤ(各12本)を準備し、それぞれ、正規リムに組み込んで空気を充填し、内圧190kPaに調整した。その後、処理条件をそれぞれ変更して、各タイヤの湿熱劣化処理をおこなった。劣化処理後の各タイヤのトレッドから試験片を採取して、加硫ゴム中の老化防止剤濃度を測定した結果が、残量Rとして、表4−5に示されている。湿熱劣化処理後、後述する走行試験に供する前に、各タイヤの内圧を再度190kPaに調整した。
(試験1)
同一条件で湿熱劣化処理したのタイプ1のタイヤ(残量R:0.50質量%)及びタイプ2のタイヤ(残量R:0.40質量%)を、ドラム試験機(中田造機社製、回転ドラムの直径:1707.6m)に装着して、室温下、走行速度20km/時で走行させることにより、走行試験を実施した。負荷荷重Lは、JATMA Year Bookに掲載された最大荷重Fに基づいて、下記式により設定した。
L(単位:kN)=F(単位:Kg)×0.9×1.47×0.872×9.80665
走行試験中、オゾン発生装置(荏原実業社製)を使用して、各タイヤのトレッドに対して垂直方向から、オゾン含有気体(オゾン濃度50pphm)を、流量500L/時で吹き付けた。オゾン濃度及び流量は、吹き出し口における測定値である。オゾン発生装置の吹き出し口から、トレッドまでの距離は、5cmであった。総走行距離は、5000kmであり、走行距離1000km毎にドラム試験機を停止して、前述のファミリーフレッシュを含ませた布で、各タイヤの表面を拭いながら、流水で洗浄した。
走行試験及びオゾン含有気体の吹き付けを開始してから、5000km走行後に、ドラム試験機から各タイヤを取り外し、JIS K 6259−2004に記載された方法に準拠して、トレッドのクラック発生状態を観察した。下記基準に基づいて格付けした結果が、クラック度合として、下表4に示されている。
1:肉眼では見えないが、10倍の拡大鏡では確認できるもの。
2:肉眼で確認できるもの。
3:亀裂(クラック)が深くて比較的大きいもの(1mm未満)。
4:亀裂(クラック)が深くて大きいもの(1mm以上3mm未満)。
5:3mm以上の亀裂(クラック)または切断を起こしそうなもの。
(試験2)−(試験8)
処理条件を変更して残量Rをそれぞれ下表4−5に示すものとした他は、(試験1)と同様にして、(試験2)−(試験8)をおこなった。(試験2)−(試験8)について得られたクラック度合が下表4−5に示されている。
[市場評価との相関性]
市場でクラック発生が認められないタイプ1のタイヤと、市場でクラック発生が認められたタイプ2のタイヤとについて、得られたクラック度合を比較することにより、市場評価との相関性を評価した。タイプ1とタイプ2との差が大きい場合(差2.1以上)を「A」とし、その差が小さい場合(差1.6以上2.1未満)を「B」とし、ほとんど差が見られない場合(差1.6未満)を「C」とした。格付けされたクラック度合が数値範囲として示されている場合、その数値範囲の中点を求めて、タイプ1とタイプ2との差の大小を判定した。A、B、Cの順に、市場評価との相関が低い。この結果が、下表4−5に示されている。
Figure 0006852452
Figure 0006852452
表4−5に示される通り、タイプ2のタイヤについて、湿熱劣化処理後の残量Rを予め設定した濃度範囲である0.10質量%以上0.20質量%以下に調整した(試験2)−(試験4)では、市場評価との相関が高い評価が得られた。この結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された方法は、タイヤ以外の種々のゴム成形品の評価方法としても適用されうる。
2・・・タイヤ
4・・・トレッド(タイヤ表面)
6・・・回転ドラム
8・・・ドラム外周面
10・・・吹き出し口

Claims (10)

  1. タイヤを劣化処理するための処理条件を決定する第一工程と、
    上記第一工程で決定した処理条件で、複数の供試タイヤを劣化処理する第二工程と、
    上記第二工程を経た複数の供試タイヤを、それぞれ、毎時20km以下の走行速度で走行させることにより、これらの供試タイヤに繰り返し歪みを付加しながら、それぞれの供試タイヤの表面にオゾン含有気体を吹き付ける第三工程と、
    上記第三工程を経た複数の供試タイヤの表面を観察して、クラック発生状態を評価する第四工程とを有しており、
    上記第一工程で決定する処理条件が、上記複数の供試タイヤのうち少なくとも1本のタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を、予め設定した濃度範囲とすることができる条件であり、
    上記第一工程、第二工程及び第三工程が、上記それぞれの供試タイヤの表面に析出する析出物を、有機溶媒又は水を用いて除去する除去工程をさらに含むタイヤ表面のクラック評価方法。
  2. 上記第一工程で決定する処理条件が、上記複数の供試タイヤのうち少なくとも1本のタイヤ表面をなす加硫ゴム中の老化防止剤濃度を、0.10質量%以上0.20質量%以下にすることができる条件である請求項1に記載の評価方法。
  3. 上記第一工程及び第二工程における劣化処理が、湿熱劣化処理であって、その処理条件が、湿度60%以上、温度60℃以上90℃以下である請求項1又は2に記載の評価方法。
  4. 上記湿熱劣化処理の処理時間が、5週間以上8週間以下である請求項3に記載の評価方法。
  5. 上記第一工程、第二工程及び第三工程における除去工程の頻度が、1週間に1回以上である請求項1から4の何れかに記載の評価方法。
  6. 上記除去工程において、水を用いて上記タイヤ表面の析出物を除去する場合、この水が界面活性剤を含んでいる請求項1から5の何れかに記載の評価方法。
  7. 上記第三工程において、上記それぞれの供試タイヤの表面までの距離5cm以内の位置から、その表面に対して垂直方向に、オゾン含有気体を吹き付ける請求項1から6の何れかに記載の評価方法。
  8. 上記オゾン含有気体のオゾン濃度が、10pphm以上60pphm以下である請求項1から7の何れかに記載の評価方法。
  9. 上記それぞれの供試タイヤに吹き付けるオゾン含有気体の流量が、毎時100L以上500L以下である請求項1から8の何れかに記載の評価方法。
  10. 上記第三工程が、上記それぞれの供試タイヤの走行距離1000km毎に、少なくとも1回の除去工程を含む請求項1から9の何れかに記載の評価方法。
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