JP6984378B2 - タイヤ製造方法 - Google Patents

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本発明は、タイヤの製造方法に関する。詳細には、本発明は、加硫ゴムからなるトレッドを備えたタイヤの製造方法に関する。
タイヤが装着された車両が路面を走行するとき、タイヤの外表面をなすトレッドが路面と接触する。トレッドは加硫ゴムからなる。路面に対する加硫ゴムの摩擦性能は、タイヤのグリップ性能等に影響する。
加硫ゴムの摩擦性能に関し、ヒステリシス摩擦、粘着摩擦及びアンカー摩擦の寄与が知られている。ヒステリシス摩擦は、加硫ゴムの周期的な変形及び復元に伴って生じるエネルギー損失として定義される。粘着摩擦とは、加硫ゴムと路面との付着及び剪断により生じる摩擦である。アンカー摩擦は、路面の凹凸に対する引っかかりにより生じる摩擦である。車両が走行する路面(以下、実路面と称する)における加硫ゴムの摩擦性能には、ヒステリシス摩擦及び粘着摩擦による寄与が大きいと考えられている。
ヒステリシス摩擦の寄与を評価する方法としては、例えば、加硫ゴムの損失正接(tanδ)を指標とする方法が提案されている。しかし、この損失正接(tanδ)による摩擦性能の評価結果は、必ずしも、実路面における評価結果と相関するものではなかった。
通常、実路面には、大小様々な凹凸が多数形成されている。多数の凹凸を有する実路面との接触により、走行中のタイヤ表面に粘着物質が生成する場合がある。粘着摩擦の寄与を評価するためには、粘着物質の影響を考慮する必要がある。具体的には、タイヤ表面の粘着物質は粘着摩擦を増大させ、タイヤのグリップ性能向上に寄与しうる。しかし、過剰な粘着物質は滑りの原因となり、グリップ性能の低下をもたらす場合がある。グリップ性能に優れたタイヤを製造する上で、走行中に発生する粘着物質の影響を考慮した加硫ゴムの配合設計は必須である。
特開2016−170138号公報には、特定構造の試験装置を用いて、ゴム表面に生成する粘着物質の体積と、単位面積当たりの粘着力とを測定して、タイヤの摩擦性能を評価する技術が開示されている。
特開2016−170138号公報
実車走行条件で発生する粘着物質はごく微量である。微量の粘着物質による影響を精度良くかつ簡便に評価して、トレッドをなす加硫ゴムの配合設計をおこない、グリップ性能に優れたタイヤを製造する方法は、未だ提案されていない。
本発明の目的は、グリップ性能に優れたタイヤを効率良く製造するための方法を提供することにある。
本発明に係るタイヤ製造方法は、
(1)擬似路面と、面積が既知の摩擦面を有するゴム片とを準備し、この摩擦面における単位面積当たりの粘着物質量の基準を設定する準備工程、
(2)このゴム片の摩擦面を擬似路面に押し当てながら相対移動させて摩擦処理することにより、この摩擦面に粘着物質を生成させる処理工程、
(3)処理工程を経たゴム片を溶媒に浸漬して、この溶媒中に粘着物質を溶出させる溶出工程、
(4)この溶媒への浸漬前後で測定したゴム片の質量変化から、この摩擦面における単位面積当たりの粘着物質量を算出する測定工程、
(5)準備工程で設定した基準と、測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量とを対比する評価工程
及び
(6)測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量が、準備工程で設定した基準を満たす場合に、このゴム片と同じ配合のゴム組成物を用いて、トレッド用ゴムシートを作製する作製工程
を含んでいる。
好ましくは、この処理工程の摩擦処理において、ゴム片に0.2MPa以上0.9MPa以下の圧力で荷重する。好ましくは、この処理工程の摩擦処理におけるゴム片の移動速度は、擬似路面に対して100km/hr以下である。
好ましくは、この溶媒は、トルエン又はテトラヒドロフランである。好ましくは、この摩擦処理終了後、1時間以内に、ゴム片を溶媒に浸漬する。
本発明に係る製造方法によれば、ゴム表面に発生する単位面積当たりの粘着物質量(質量)を指標とすることにより、特殊な試験装置又は設備を要することなく、摩擦性能に優れた加硫ゴムの配合設計をおこなうことが可能である。これにより、グリップ性能に優れたタイヤを効率良く製造することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ製造方法が示されたフローチャートである。 図2は、図1の処理工程を説明するための概念図である。 図3は、図1の製造方法で得られるタイヤが示された断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ製造方法が示されたフローチャートである。図示される通り、この製造方法は、準備工程、処理工程、溶出工程、測定工程、評価工程及び作製工程を含んでいる。この製造方法では、評価工程において、作製工程に進むか否かが判定される。この製造方法では、評価工程で作製工程に進むと判定されるまで、準備工程以降の工程が繰り返される。
準備工程は、擬似路面と、面積が既知の摩擦面を有するゴム片とを準備し、この摩擦面における単位面積当たりの粘着物質量の基準を設定する工程である。この実施形態では、ウェット状態のアスファルト路面である擬似路面と、加硫ゴムからなるゴム片とが準備される。このゴム片は、平面視長方形の板状(長さL[cm]、幅W[cm]、厚みd[mm])である。ゴム片の下面が、面積S(=L×W)[cm]の摩擦面である。摩擦面における単位面積当たりの粘着物質量の基準は、要望するタイヤ性能を考慮して設定される。この実施形態では、ウェット条件での優れた摩擦性能及び良好なウェットグリップ性能が得られる基準として、0.1〜5.0[mg/cm]に設定される。
処理工程は、準備したゴム片の摩擦面を擬似路面に押し当てながら相対移動させて摩擦処理することにより、この摩擦面に粘着物質を生成させる工程である。図2は、この実施形態の処理工程を説明するための概略図である。この図2において、紙面上下方向が鉛直方向であり、紙面左右方向が水平方向である。
処理工程では、先ず、擬似路面106上にゴム片102を載置して、この擬似路面106と、ゴム片102の摩擦面104とを接触させる。続いて、このゴム片102に荷重(0.24MPa)を負荷して、摩擦面104を擬似路面106に押し当てる。ゴム片102に荷重する方向が、図2に矢印Fとして示されている。荷重により摩擦面104を擬似路面106に押し当てながら、ゴム片102を、図2に矢印Gとして示された方向に、移動速度5km/時で移動させる。この実施形態では、長さ1mの擬似路面を5回移動させることにより、摩擦面104を摩擦処理する。この摩擦処理により、摩擦面104に粘着物質が生成する。
溶出工程は、処理工程を経たゴム片102を溶媒に浸漬して、摩擦面104に生成した粘着物質を溶媒中に溶出させる工程である。この実施形態では、摩擦処理終了後、30分以内に、ゴム片102をテトラヒドロフラン中に浸漬させる。摩擦面104に生成した粘着物質は、テトラヒドロフランに溶解する。ゴム片102を、25℃で24時間テトラヒドロフランに浸漬することにより、粘着物質がテトラヒドロフラン中に溶出して、ゴム片102の質量が減少する。
測定工程は、溶媒への浸漬前後で測定したゴム片102の質量変化から、摩擦面104における単位面積当たりの粘着物質量を算出する工程である。溶媒浸漬前のゴム片102の質量Ma[mg]は、摩擦処理後、溶出工程前に測定される。溶媒浸漬後のゴム片102の質量Mb[mg]は、溶媒から採取したゴム片102を25℃で24時間乾燥させた後に測定される。通常、溶媒浸漬後のゴム片102の質量Mbは、溶媒浸漬前の質量Maより小さい。本願明細書では、溶媒浸漬によるゴム片102の減量分(Ma−Mb)を、このゴム片102の摩擦面104に生成した粘着物質量と定義する。この減量分(Ma−Mb)を摩擦面104の面積S[cm]で除すことにより摩擦面104における単位面積当たりの粘着物質量(Ma−Mb)/S[mg/cm]が算出される。
評価工程は、準備工程で設定した基準と、測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量とを対比して、後述する作製工程に進むか否かを判定する工程である。この実施形態において、準備工程で設定した基準は0.1〜5.0[mg/cm]である。測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量(Ma−Mb)/S[mg/cm]が、0.1〜5.0[mg/cm]の場合、作製工程に進むと判定する。単位面積当たりの粘着物質量(Ma−Mb)/S[mg/cm]が0.1[mg/cm]未満又は5.0[mg/cm]を超える場合、作製工程には進まず、再度、準備工程において、異なる配合の加硫ゴムからなるゴム片を準備し、処理工程、溶出工程、測定工程及び評価工程を実施する。
作製工程は、測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量(Ma−Mb)/S[mg/cm]が準備工程で設定した基準を満たす場合に、ゴム片102と同じ配合のゴム組成物を用いて、トレッド用ゴムシートを作製する工程である。具体的には、基準を満たすゴム片102と同じ配合で、未加硫のゴム組成物を調製し、このゴム組成物をトレッドの形状に押出加工してゴムシートを得る工程である。このゴムシートからなるトレッドを他のタイヤ部材と組み合わせることによりタイヤが製造される。
この製造方法では、タイヤの製造に使用する装置及び設備に特に制限はない。従来から使用されている装置及び設備が、この製造方法においても使用される。例えば、既知のタイヤ成形機上で、トレッド用ゴムシートと他のタイヤ部材とを貼り合わせることにより、ローカバー(未加硫タイヤ)が得られる。このローカバーが、モールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。そのキャビティ面に凸凹模様を有するモールドが用いられることにより、タイヤに凹凸模様が形成される。
この製造方法で得られるタイヤの用途及び形状は、特に限定されず、ない。図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法で得られるタイヤ2が示された断面図である。この図において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図3において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。なお、図3において、各構成部材はその断面の輪郭のみが示されている。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、ベルト12、バンド14及びインナーライナー16を備えている。このタイヤ2は、乗用車に装着される空気入りタイヤである。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、トレッド面20を備えている。トレッド面20には、溝22が刻まれている。このトレッド4は、測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量が、準備工程で設定した基準を満たす配合の加硫ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。それぞれのビード8は、サイドウォール6の半径方向内側に位置している。ビード8は、コア24と、このコア24から半径方向外向きに延びるエイペックス26とを備えている。カーカス10は、カーカスプライ28からなる。カーカスプライ28は、両ビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ28は、コア24の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている
ベルト12は、トレッド4の半径方向内側に位置しカーカス10と積層されている。このベルト12は、内側層12a及び外側層12bからなる。バンド14は、ベルト12の半径方向外側に積層されている。図示されていないが、このバンド14は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンド14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。インナーライナー16は、カーカス10の半径方向内側に位置してカーカス10の内面に接合されている。
この実施形態の準備工程では、ウェット条件での摩擦性能に基づいて、単位面積当たりの粘着物質量の基準が設定されている。測定工程で算出する単位面積当たりの粘着物質量がこの基準を満たすゴム片102と同じ配合の加硫ゴムからなるトレッド4は、ウェット条件での摩擦性能に優れる。このトレッド4を備えたタイヤ2では、優れたウェットグリップ性能が発揮される。この実施形態に係る製造方法では、測定工程で得られる単位面積当たりの粘着物質量が、準備工程で設定した基準を満たすゴム片の配合を、トレッド用ゴムシートの配合に適用することにより、良好なウェットグリップ性能を有するタイヤを、効率的に製造することができる。
本発明に係る製造方法によれば、準備工程において、要望するタイヤ性能に基づいて単位面積当たりの粘着物質量の基準を設定し、測定工程において、溶媒浸漬前後の質量変化を測定するという簡便な方法により、走行中に発生する粘着物質の影響を考慮したトレッド用ゴムシートの配合を選択することができる。例えば、準備工程において、ドライ条件での摩擦性能に基づいた基準を設定し、ドライ状態の擬似路面を用いることにより、ドライグリップ性能に優れたタイヤ製造のためのゴム配合を、効率的に選択することができる。本発明に係る製造方法では、粘着物質による影響を考慮した加硫ゴムの配合設計のために、特殊な試験装置又は設備を要しない。本発明に係る製造方法によれば、諸条件下でのグリップ性能に優れたタイヤを効率良く製造することが可能である。
本発明に係る製造方法において、ゴム片102を準備する方法は特に限定されない。例えば、基材ゴムと、通常タイヤ分野で使用される各種添加剤とを、所定の配合に従ってオープンロール、バンバリーミキサー等に投入して混練することによりゴム組成物を調製し、このゴム組成物を所定の形状の金型中で加熱及び加圧して、加硫ゴムからなるゴムシートを作製し、このゴムシートを切削加工してゴム片102を準備してもよい。また、調製したゴム組成物をトレッドの形状に合わせて押出加工した後、他のタイヤ部材と併せて加硫機中で加熱及び加圧することによりタイヤを製造し、このタイヤのトレッド表面を適宜切り出すことにより、ゴム片102を準備してもよい。
ゴム片102をなす加硫ゴムに配合される基材ゴム及び各種添加剤の種類は、特に限定されない。好ましい基材ゴムとして、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エポキシ化天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム等が例示される。二種以上の基剤ゴムを併用してもよい。基材ゴムとともに配合される添加剤の例として、カーボンブラック、シリカ等の充填剤、シランカップリング剤、オイル、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、加工助剤、樹脂、加硫剤、加硫促進剤及び加硫促進助剤が挙げられる。本発明の効果が阻害されない限り、本願明細書にて明示されない他の添加剤を使用することも可能である。
本発明に係る製造方法において、ゴム片102をなす加硫ゴムの配合は特に限定されず、測定工程において得られる単位面積当たりの粘着物質量が、準備工程で設定した基準を満たすように、適宜変更される。
例えば、準備工程において、配合の異なる加硫ゴムからなる複数のゴム片を準備してもよい。それぞれのゴム片について、処理工程、溶出工程、測定工程及び評価工程を実施し、測定工程で得られる単位面積当たりの粘着物質量が、準備工程で設定した基準を満たすゴム片を選択して作製工程に進むことにより、グリップ性能に優れたタイヤをより効率的に製造することができる。
ゴム片102の形状及びサイズは特に限定されない。好ましくは、ゴム片102は、所定の厚みを有する板状又はシート状である。ゴム片102が板状又はシート状の場合、その上面又は下面が摩擦面104とされる。好ましくは、摩擦面104は、略平面である。
処理工程における摩擦処理の有効性及び作業性の観点から、ゴム片102の厚みは、4mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、6mm以上が特に好ましい。製造されるタイヤのトレッドの厚みを考慮して、ゴム片102の厚みは20mm以下が好ましい。
擬似路面106は、その表面に、ゴム片102の摩擦面104を摩擦処理するための多数の微細な凹凸を有している。擬似路面106の材質として、例えば、各種アスファルト、コンクリート、砥石等が挙げられる。擬似路面106が、実路面であってもよい。本発明に係る製造方法において、擬似路面106の状態は特に限定されず、要望するタイヤ性能に応じて、ドライ路面、ウェット路面、雪上路面、氷上路面等適宜選択される。
本発明に係る製造方法では、擬似路面106として、既知の摩擦試験装置を使用することも可能である。本発明の目的が達成される限り、摩擦試験装置の種類は特に限定されない。摩擦試験装置の具体例としては、HENTSCHEL社製のPortable friction tester(以下、PFT装置と称する)が挙げられる。このPFT装置が備える擬似路面106は、ウェット路面の湿潤状態、ドライ路面の乾燥状態を含む種々の路面状態106を再現できるように構成されている。さらに、このPFT装置は、ゴム片102に所定の荷重をかけて、摩擦面104を擬似路面106に押しあてながら所定の移動速度で移動させて摩擦処理する機能を有している。
処理工程における摩擦処理条件は、特に限定されず、ゴム片102の形状及びこのゴム片102をなす加硫ゴムの種類等に応じて適宜設定される。好ましくは、実車走行時のタイヤの摩擦状態を再現しうる摩擦処理条件が選択される。
摩擦面104に効率的に粘着物質を生成するとの観点から、好ましくは0.2MPa以上の圧力でゴム片102に荷重する。ゴム片102の変形又は破損防止の観点から、0.9MPa以下の圧力で荷重することが好ましい。
実車走行時との相関性の観点から、擬似路面106上でのゴム片102の移動速度は、100km/時以下が好ましく、80km/時以下がより好ましい。粘着物質生成量の観点から、好ましい移動速度は5km/時以上である。
処理工程において、ゴム片102を擬似路面106に押し当てながら、複数回移動させることにより、摩擦面104を摩擦処理してもよい。この移動回数は特に限定されず、荷重条件及び移動速度に応じて適宜設定されるが、粘着物質生成量の観点から、2回以上が好ましく、3回以上がより好ましい。ゴム片102の破損防止及び摩擦処理効率の観点から、移動回数は20回以下が好ましい。
処理工程を経た摩擦面106の表面に生成する粘着物質の詳細は明らかではないが、ゴム片102をなす加硫ゴムに配合された各種添加剤の一部もしくはその誘導体、又は摩擦処理による分解生成物が、摩擦面106に滲出して堆積した混合物と推測される。この粘着物質に含まれる低分子量成分は、経時的に、再結合又は再架橋して、溶媒への溶解度が低い又は不溶な物質に変化すると考えられる。粘着物質の変質を回避するとの観点から、ゴム片102を溶媒に浸漬する時期は、摩擦処理終了後1時間以内が好ましく、30分以内がより好ましい。理想的には、摩擦処理終了直後にゴム片102の質量を測定し、即時溶媒に浸漬する。
溶出工程で使用する溶媒の種類は特に限定されず、摩擦面104に生成した粘着物質を溶解しうる溶媒が適宜選択される。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素並びにこれらのハロゲン化物が挙げられる。テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物が使用されてもよい。溶解性及び安全性の観点から、トルエン及びテトラヒドロフランが好ましい。
溶出工程におけるゴム片102の浸漬条件は、ゴム片102の形状、ゴム片102をなす加硫ゴムの配合、摩擦処理条件等に応じて適宜調製される。粘着物質量の測定精度の観点から、浸漬時間は12時間以上が好ましく、24時間以上がより好ましい。作業効率の観点から、好ましい浸漬時間は48時間以下である。
粘着物質の溶出促進の観点から、浸漬温度は、20℃以上が好ましく、23℃以上がより好ましく、25℃以上が特に好ましい。浸漬温度の上限は、原則として、使用する溶媒の沸点であるが、ゴム片102の変質抑制及び粘着物質以外の溶出を回避する観点から、好ましい溶媒の温度は50℃以下である。
測定工程では、溶媒から取り出したゴム片102を所定の乾燥条件で乾燥した後、その質量を測定する。ゴム片102の乾燥方法は、特に限定されず、風乾、減圧乾燥、真空乾燥等既知の方法が適用されうる。ゴム片102の乾燥条件は、使用する溶媒の種類及び選択する乾燥方法に応じて適宜調製される。乾燥効率の観点から、好ましい乾燥温度は20℃以上である。ゴム片102の変質又は変形抑制の観点から、好ましい乾燥温度は、50℃以下である。乾燥効率の観点から、好ましい乾燥時間は12時間以上である。作業効率の観点から、好ましい乾燥時間は48時間以下である。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填され、タイヤ2に正規荷重が負荷された状態で測定される。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
以下、より詳細な具体例を挙げて本発明の効果を明らかにするが、この具体例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
[試験1]
試験1では、配合が異なる複数のゴム片と擬似路面とを準備し、図1のフローチャートの処理工程、溶出工程及び測定工程に従って、各ゴム片について、単位面積当たりの粘着物質量を算出した。
(ゴム片の作製)
下表1にAとして示された配合に従って、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を、容量1.7Lのバンバリーミキサー(神戸製鋼社製)に投入して、150℃で3分間、混練した。得られた混練物をバンバリーミキサーから取り出して、表1に示された量の硫黄及び加硫促進剤をそれぞれ添加した後、オープンロールを用いて、80℃で3分間混練することにより、未加硫のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を、金型に投入して170℃で12分間、プレス加硫することにより、加硫ゴムシートを得た。得られた加硫ゴムシートを切削加工して、平面視長方形の平板状のゴム片A1(長さ3[cm]、幅2[cm]、厚み[6mm])を作製した。ゴム片A1の下面を面積6[cm]の摩擦面とした。
ゴム組成物の配合を下表1のB−Dとして示されたものに変更した以外は、ゴム片A1と同様にして、ゴム片B1−D1を作製した。ゴム片B1−D1の形状及びサイズは全てゴム片A1と同じである。
Figure 0006984378
表1に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
SBR:日本ゼオン(株)製の変性スチレンブタジエンゴム(ビニル含量31質量%、スチレン含量41質量%、Mw:9.4万、Mn4.3万、Mw/Mn:2.2)
BR:宇部興産(株)製のブタジエンゴム、商品名「BR700」
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製の商品名「ショウブラックN330」(NSA:79m/g
シリカ:エボニックデグッサ社製のVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、商品名「Si266」
オイル:出光興産(株)製の商品名「ダイアナプロセスNH−70S」
ワックス:日本精蝋(株)製の商品名「オゾエース0355」
老化防止剤:住友化学(株)製のN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名「アンチゲン6C」
ステアリン酸:日本油脂社の商品名「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
レジン:アリゾナケミカル社製の商品名「SYLVARES SA85A」
硫黄:三新化学工業(株)製の5%オイル処理硫黄
加硫促進剤1:TBBS(NS):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のN,N’−ジフェニルグアニジン、商品名「ノクセラーD」
(粘着物質の生成)
HENTSCHEL社製のPortable friction testerを用いて、ゴム片A1−D1の摩擦面を摩擦処理して、各摩擦面に粘着物質を生成させた。処理条件は、下記の通りである。
路面状態:ウェット状態のアスファルト路面(長さ1m)
処理温度:23℃
荷重:0.24MPa
移動速度:5km/時
繰り返し回数:5回
(単位面積当たりの粘着物質量の算出)
摩擦処理したゴム片A1−D1の質量[mg]をそれぞれ測定し、摩擦処理終了から50分後に、各ゴム片を500mlのテトラヒドロフラン(和光純薬製)に浸漬した。25℃で24時間経過後、テトラヒドロフランからゴム片A1−D1を取り出し、25℃で24時間乾燥させた。乾燥後の各ゴム片の質量[mg]を測定し、溶媒浸漬前後の質量の差を摩擦面の面積で除すことにより、単位面積当たりの粘着物質量[mg/cm]を算出した。算出した値が、表2にMVとして示されている。
[試験2]
[試験1]で前述した配合A−Dのゴム組成物を調整し、それぞれ、トレッドの形状に合わせて押出加工した後、他のタイヤ部材と組み合わせて183℃で10分間プレス加硫することにより、試作タイヤA2−D2(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。得られた試作タイヤA2−D2の外表面からそれぞれ試験片を採取し、HENTSCHEL社製のPortable friction tester(PFT装置)を使用して動摩擦係数を測定した。測定条件は、下記の通りである。各試験片について連続10回測定をおこなって平均値を算出した。得られた結果が、表2に摩擦係数(Wet−μ)として示されている。数値が大きいほうが、評価が高い。
路面状態:ウェット状態
処理温度:23℃
荷重:0.24MPa
移動速度:5km/時
[試験3]
[試験2]と同様にして、試作タイヤA3−D3(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。得られた試作タイヤA3−D3をそれぞれ試験車両(国産FF2000cc)に装着して、アスファルト路面のテストコースを、ウェット条件下、速度80km/時で走行させ、ドライバーの官能評価によりグリップ性能を評価した。評価は10点満点とし、6点以上をGood、6点未満をBadと判定した。得られた結果が、表2にウェットグリップ性能として示されている。
Figure 0006984378
表2に示されるように、[試験1]で算出した単位面積当たりの粘着物質量MVは、[試験2]の摩擦係数及び[試験3]のグリップ性能と高い精度で相関した。この試験結果は、本発明に係る製造方法において、測定工程で得られる単位面積当たりの粘着物質量が、準備工程で設定した基準を満たすゴム片の配合を、トレッド用ゴムシートの配合に適用することで、グリップ性能に優れたタイヤが得られることを示している。この試験結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された方法は、加硫ゴムからなるトレッドを有する種々のタイヤの製造に適用されうる。
102・・・ゴム片
104・・・摩擦面
106・・・擬似路面
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・カーカス
12・・・ベルト
12a・・・内側層
12b・・・外側層
14・・・バンド
16・・・インナーライナー
20・・・トレッド面
22・・・溝
24・・・コア
26・・・エイペックス
28・・・カーカスプライ

Claims (5)

  1. 擬似路面と、面積が既知の摩擦面を有するゴム片とを準備し、この摩擦面における単位面積当たりの粘着物質量の基準を設定する準備工程と、
    上記ゴム片の摩擦面を上記擬似路面に押し当てながら相対移動させて摩擦処理することにより、この摩擦面に粘着物質を生成させる処理工程と、
    上記処理工程を経たゴム片を溶媒に浸漬して、この溶媒中に上記粘着物質を溶出させる溶出工程と、
    上記溶媒への浸漬前後で測定したゴム片の質量変化から、上記摩擦面における単位面積当たりの粘着物質量を算出する測定工程と、
    上記準備工程で設定した基準と、上記測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量とを対比する評価工程と、
    上記測定工程で算出した単位面積当たりの粘着物質量が、上記準備工程で設定した基準を満たす場合に、このゴム片と同じ配合のゴム組成物を用いて、トレッド用ゴムシートを作製する作製工程と、を含んでいるタイヤ製造方法。
  2. 上記処理工程の摩擦処理において、上記ゴム片に、0.2MPa以上0.9MPa以下の圧力で荷重する請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記処理工程の摩擦処理において、上記ゴム片の移動速度が、上記擬似路面に対して、100km/hr以下である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 上記溶媒が、トルエン又はテトラヒドロフランである請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 上記ゴム片を、上記摩擦処理終了後、1時間以内に、上記溶媒に浸漬する請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
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