JP2005047957A - スタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】マイグレーションの発生を抑制し、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させることができ、さらに加硫前後の基本物性(粘度、硬度、引張特性等)にも劣らないスタッドレスタイヤ用ゴム組成物および該組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤの提供。
【解決手段】ブタジエンゴムを20〜60質量%含有し、天然ゴムを40〜80質量%含有するスタッドレスタイヤ用ゴムと、回収ゴムと、を含有し、
該回収ゴムが、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物から特定の方法で回収される重量平均分子量が2000〜100000のゴムであり、
該回収ゴムの含有量が、該スタッドレスタイヤ用ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ブタジエンゴムを20〜60質量%含有し、天然ゴムを40〜80質量%含有するスタッドレスタイヤ用ゴムと、回収ゴムと、を含有し、
該回収ゴムが、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物から特定の方法で回収される重量平均分子量が2000〜100000のゴムであり、
該回収ゴムの含有量が、該スタッドレスタイヤ用ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤに関し、より詳しくは、加硫ゴム組成物から回収される回収ゴムを配合してなるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物および該ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
スパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーン装着は粉塵発生という環境問題をひき起すため、これらに代る氷雪路上走行用タイヤとしてスタッドレスタイヤが開発されてきた。一般に、凍結路面では一般路面での摩擦係数の1/10程度まで低下して滑りやすくなっているため、スタッドレスタイヤではタイヤの摩擦力を高くするように、材料面および設計面から工夫がなされている。
材料面の工夫としては、一般的に、オイルを配合することによって低温でも硬くなりにくい低温特性に優れた加硫ゴム組成物を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該加硫ゴム組成物は、時間の経過とともに(経時で)オイル量が減少するマイグレーションが発生するため長期使用後の硬度が高くなり、氷上性能(氷雪路上性能、氷上制動性能)が低下するという問題を有しており、また、該加硫ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤでは、氷上性能が不十分である問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭60−31546号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、マイグレーションの発生を抑制し、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させることができ、さらに加硫前後の基本物性(粘度、硬度、引張特性等)にも劣らないスタッドレスタイヤ用ゴム組成物および該組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オイルの代替物として、本出願人により提案されている特開2002−265664号公報に記載されたゴム成形品からの材料回収方法により回収される回収ゴムを配合してなるゴム組成物が、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させることのできることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記(1)に示すスタッドレスタイヤ用ゴム組成物および下記(2)に示すスタッドレスタイヤを提供するものである。
【0006】
(1)ブタジエンゴムを20〜60質量%含有し、天然ゴムを40〜80質量%含有するスタッドレスタイヤ用ゴムと、回収ゴムと、を含有し、
該回収ゴムが、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物を、220〜400℃の温度に加熱し、次いで、加熱後の該加硫ゴム組成物を有機溶媒で抽出することで溶媒抽出分と抽出残物とに分離し、さらに、分離した該溶媒抽出分から該有機溶媒を除去(留去)することにより回収される重量平均分子量が2000〜100000のゴムであり、
該回収ゴムの含有量が、該スタッドレスタイヤ用ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物(第1の態様)。
【0007】
(2)上記(1)に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤ(第2の態様)。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明の第1の態様に係るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物(以下、単に「本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物」という場合がある。)は、後述するスタッドレスタイヤ用ゴム100質量部と、回収ゴム1〜30質量部と、を含有するスタッドレスタイヤ用ゴム組成物である。
次に、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を構成するスタッドレスタイヤ用ゴムおよび回収ゴムについて詳述する。
【0009】
<スタッドレスタイヤ用ゴム>
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に用いるスタッドレスタイヤ用ゴムは、該スタッドレスタイヤ用ゴムの総質量に対して、ブタジエンゴム(BR)を20〜60質量%含有し、天然ゴム(NR)を40〜80質量%含有する混合ゴムであれば特に限定されず、ブタジエンゴムを30〜50質量%含有し、天然ゴムを50〜70質量%含有する混合ゴムであることが好ましい。
また、上記スタッドレスタイヤ用ゴムは、ブタジエンゴムおよび天然ゴム以外に、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム、多硫化ゴム等の他のゴムを本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0010】
<回収ゴム>
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に用いる回収ゴムは、上述したように本出願人により提案されている特開2002−265664号公報に記載されたゴム成形品からの材料回収方法により回収される液状のゴムであって、具体的には、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物を、220〜400℃の温度に加熱し、次いで、加熱後の該加硫ゴム組成物を有機溶媒で抽出することで溶媒抽出分と抽出残物とに分離し、さらに、分離した該溶媒抽出分から該有機溶媒を除去することにより回収される重量平均分子量が2000〜100000のゴムである。
ここで、220〜400℃の温度に加熱する工程を(1)熱処理工程とし、加熱後の加硫ゴム組成物を有機溶媒で抽出することで溶媒抽出分と抽出残物とに分離する工程を(2)有機溶媒抽出工程とし、分離した溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する工程を(3)ゴム回収工程として、それぞれ以下に詳述する。
【0011】
(1)熱処理工程
熱処理工程とは、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物を、220〜400℃の温度に加熱する工程であり、加熱により可塑化してもよい。
【0012】
本発明において上記熱処理工程に供される上記加硫ゴム組成物は、上述したように、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物を一部または全部を加硫したものであれば特に限定されず、天然ゴムおよびイソプレンゴム以外の原料ゴムや充填剤(補強剤)、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、有機系活性剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等の各種添加剤を配合するゴム組成物から形成されていてもよい。
【0013】
天然ゴムおよびイソプレンゴム以外の原料ゴムとしては、具体的には、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム、多硫化ゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
充填剤(補強剤)としては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、けいそう土などのシリカ類;カーボンブラック、ホワイトカーボン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、トリメリット酸エステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
軟化剤としては、具体的には、例えば、プロセスオイル、石油樹脂、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、脂肪酸エステル等の合成可塑剤、植物油、液状ゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
有機系活性剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
加硫剤としては、具体的には、例えば、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTT)などの有機含硫黄化合物;ジクミルペルオキシドなどの有機過酸化物;亜鉛華、マグネシアなどの金属酸化物;キノンジオキシム等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)などのチアゾール類;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)などのスルフェンアミド類;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド・アンモニア類;ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
このような加硫ゴム組成物としては、具体的には、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナーなどの自動車用ゴム部品;ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキンなどのゴム製品;精錬屑、加工屑などの成形屑ゴム;等が挙げられる。これらは、必ずしも使用されたものでなくてもよいが、ゴム廃材であることがコストおよびリサイクルの観点から望ましい。
これらのうち、タイヤおよび/または成形屑ゴムを用いることが、天然ゴムおよびイソプレンゴムを高純度で回収することができるゴム廃材である理由から好ましい。また、ブチルゴム原料の自動車用ゴム部品廃材を用いることも好ましい。
また、このような加硫ゴム組成物は、熱処理効率および抽出効率を向上させる理由から、切断などにより細分化して用いることが好ましい。
【0023】
上記熱処理工程における、上記加硫ゴム組成物を220〜400℃の温度に加熱する際の加熱は、加熱装置(例えば、電熱炉、オーブン、管状炉等)を用いて行うことができる。
また、上記加熱は、空気下、窒素ガス中等の不活性雰囲気下のいずれで行ってもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
また、上記加熱の条件としては、加熱原料である加硫ゴム組成物、加熱環境等によっても異なるが、220〜400℃、好ましくは250〜350℃、より好ましくは280〜300℃の温度範囲で行われる。また、加熱時間は、10〜30分程度であればよく、15〜20分程度であることが好ましい。
【0024】
(2)有機溶媒抽出工程
有機溶媒抽出工程とは、上記(1)熱処理工程において加熱した加硫ゴム組成物を、有機溶媒で抽出することにより溶媒抽出(溶解)分と抽出残物(不溶分)とに分離する工程であって、実質的に分離されていればよく、溶媒抽出分が多少抽出残分に残っていてもよい。
具体的には、上記(1)熱処理工程において加熱した加硫ゴム組成物を、有機溶媒に浸漬させ、遠心分離、ろ過等の汎用の分離手段により、溶媒抽出分を抽出させて、抽出残物と分離する。この際、有機溶媒を加熱しても構わないが、作業コスト面から、室温(通常0〜40℃程度)の有機溶媒中に浸漬することが好ましい。浸漬時間は、6〜12時間であることが望ましく、通常8〜10時間である。
また、有機溶媒は固形の加硫ゴム組成物を充分浸漬し得る程度の量で用いることが好ましく、通常は1kgの加硫ゴム組成物を8〜10リットル程度の有機溶媒に浸漬させることが好ましい。
【0025】
上記有機溶媒は、飽和または不飽和の炭化水素を用いることができ、該炭化水素は芳香族、脂肪族、脂環族などに特に限定されない。その具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)、シクロヘキサン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、シクロヘキサン、トルエン、キシレンであることが、回収ゴムの溶解性、処理上の観点から好ましい。
【0026】
(3)ゴム回収工程
ゴム回収工程とは、上記(2)有機溶媒抽出工程において分離した溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する工程であって、蒸留、加熱乾燥等により実質的に有機溶媒が除去されていればよい。
【0027】
上記(1)〜(3)の工程によって加硫ゴム組成物から回収される回収ゴムは、重量平均分子量が2000〜100000の液状のゴムであって、その分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜5.0程度であることが好ましい。回収ゴムの重量平均分子量および分子量分布がこの範囲であれば、得られるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の加硫後の引張特性が良好となり、さらに硬度が大幅に変化しないため好ましい。なお、上記回収ゴムの重量平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で定法に従い測定することができる。
上記回収ゴムの重量平均分子量は、上記(1)熱処理工程の加熱条件、加熱原料である加硫ゴム組成物により適宜選択することが可能であり、例えば、イソプレンゴムからなる加硫成形品からは、220〜300℃での加熱により、重量平均分子量15000以上、好ましくは5万以上、より好ましくは7万以上の高分子量のゴムを回収することができる。特に、必要であれば、9万以上の高分子量のゴムを抽出回収することもできる。
また、上記回収ゴムは、加硫ゴム組成物に含まれている硫黄などの加硫剤を含有していても支障がない。
【0028】
本発明において、上記回収ゴムの含有量は、上記スタッドレスタイヤ用ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であって、3〜20質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
回収ゴムの含有量がこの範囲であれば、得られる本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物が、オイルを配合した従来公知のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物と同等程度の基本物性(粘度、硬度、引張特性等)を保持することができ、さらにマイグレーションの発生が抑制され、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させる理由から好ましい。
【0029】
また、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、上記スタッドレスタイヤ用ゴムおよび上記回収ゴム以外に、スタッドレスタイヤとして用いるために、上述した各種添加剤や、活性剤、軟化剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、気体封入熱可塑性樹脂、着色剤、顔料、難燃剤および離型剤などの各種配合剤(ゴム副資材)を配合していてもよい。
ここで、上記気体封入熱可塑性樹脂とは、熱により気化、分解または化学反応して気体を発生する液体または固体を封入した熱膨張性熱可塑性樹脂粒子を、ゴム加硫時の熱によって膨張せしめて中空状にしたものである。
【0030】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記スタッドレスタイヤ用ゴム、上記回収ゴム、および所望により配合される上記添加剤や配合剤を、公知のゴム用混練機械(例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機、二軸押出機、バンバリーミキサー等)を用いて混合することによって製造することができる。
【0031】
本発明の第2の態様に係るスタッドレスタイヤ(以下、単に「本発明のスタッドレスタイヤ」という場合がある。)は、上述した本発明の第1の態様に係るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤであって、トレッド以外の部材(例えば、ベルト、カーカス、ビードワイヤー等)は特に限定されない。
ここで、本発明のスタッドレスタイヤは、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物をトレッドのゴム組成物として有しているため、上述したように、オイルを配合した従来公知のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物をトレッドのゴム組成物として有するタイヤに比べ、マイグレーションの発生が抑制され、さらに氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上する効果を有している。
【0032】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(原料加硫ゴム組成物の調製)
下記表1に示す組成成分(質量部)で配合・混練してゴム組成物を調整した後に、180℃で10分間加熱して加硫し、回収ゴムの原料となる加硫ゴム組成物(原料加硫ゴム組成物)を調製した。
なお、下記表1中の組成成分としては、天然ゴムとしてはRSS3号を使用し、カーボンブラックとしてはショウワブラックS118(昭和キャボット社製)、亜鉛華としては酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)、ステアリン酸としてはビーズステアリン酸(日本油脂社製)、老化防止剤としてはサントフレックス6PPD(フレキシス社製)、硫黄としては油処理硫黄(軽井沢精錬所製)、加硫促進剤としてはノクセラーNS−P(大内新興化学工業社製)を使用した。
【0033】
【表1】
【0034】
上記原料加硫ゴム組成物を1cm角に切断し、電熱炉を用いて、窒素雰囲気下、280℃の温度で、15分間加熱して可塑化させた。可塑化させた原料加硫ゴム組成物500gをトルエン5リットル中に浸漬させ、8時間室温で静置させた後、遠心分離させ、トルエン抽出分と抽出残物とを分離させた。分離させたトルエン抽出分から減圧乾燥によりトルエンを留去させることで、褐色液状の回収ゴム(重量平均分子量:1.73×105、分子量分布:2.84)が得られた。
【0035】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
得られた回収ゴムを用いて、下記表2に示す組成成分(質量部)で配合・混練してゴム組成物を調製した後に、180℃で10分間加熱して加硫し、加硫ゴム組成物を調製した。
なお、下記表2中の組成成分としては、天然ゴムとしてはSTR−20(TEC BEE HANG社製)、ブタジエンゴムとしてはNipol BR1220(日本ゼオン社製)を使用し、カーボンブラックとしてはSAF シースト7HT(東海カーボン社製)、亜鉛華としては酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)、ステアリン酸としてはビーズステアリン酸(日本油脂社製)、老化防止剤としてはサントフレックス6PPD(フレキシス社製)、硫黄としては油処理硫黄(軽井沢精錬所製)、加硫促進剤としてはノクセラーCZ−G(大内新興化学工業社製)を使用し、オイルとしてはエキストラクト4号(昭和シェル石油社製)を使用した。
また、比較例2〜4において使用した液状ゴムとしては、市販品であるクラプレンLIR−50(クラレ社製)を使用した。
【0036】
実施例1〜3、比較例1〜4で得られた各ゴム組成物および加硫ゴム組成物の物性値を下記に示す方法に従って測定した。結果を下記表2に示す。
<ムーニー粘度>
得られた各ゴム組成物について、JIS K6300−1:2001 に記載の「ムーニー粘度試験」に準拠して、ムーニー粘度計(L形ローター)を使用し、予熱時間1分、ローターの回転時間4分、試験温度100℃の条件で、ムーニー粘度(M)を測定した。ここで、Mはムーニー単位を表す。
【0037】
<リュプケJIS硬度>
得られた各加硫ゴム組成物を、JIS K6253−1997 のP法に準拠して、マイナス20℃(−20℃)、0℃、20℃および60℃における硬度(HS)を測定した。また、耐熱老化(80℃×96間放置)後の20℃における硬度の測定も行った。
【0038】
<ブランク引張り試験>
得られた各加硫ゴム組成物を、JIS K6251−1993に準拠して、厚さ2mmのダンベル状試験片(ダンベル状3号形)に切り出し、50%モジュラス(M50)〔MPa〕、100%モジュラス(M100)〔MPa〕、200%モジュラス(M200)〔MPa〕、300%モジュラス(M300)〔MPa〕、400%モジュラス(M400)〔MPa〕、破断強度(TB)〔MPa〕、破断伸び(EB)〔%〕を測定した。
【0039】
<インサイドドラムテスト(氷上摩擦指数)>
得られた各加硫ゴム組成物について、直径10cm程度の円形コンパウンドを作製し加硫させた後、氷上摩擦係数を以下の方法で測定した。
インサイドドラム型氷上摩擦試験機を用い、設定温度−4.0℃、氷温−2.8℃、負荷加重5.5kgの条件下で、上記円形コンパウンドの氷上摩擦係数を測定した。なお、下記表2中の数値は、比較例1の氷上摩擦係数の値を100とした指数表示(氷上摩擦指数)とした。この値が大きい程耐摩耗性に優れ、氷上制動性が良好なことを示す。
【0040】
<耐マイグレーション>
得られた各加硫ゴム組成物から作製した直径45mm、厚さ6mmの加硫シート片(1)と、天然ゴム系(オイル分を含まない)加硫ゴム組成物から同様に作製した直径45mm、厚さ6mmの加硫シート片(2)とを重ね合わせ、これに40g/cm2の荷重をかけて、5週間室温(温度20±2℃、湿度65%の室内)放置した。放置前後の加硫ゴムシート片(2)の重量を測定し、その増加率を算出した。なお、下記表2中の数値は、比較例1の重量増加率を100とした指数表示とした。この値が小さいほどマイグレーションが抑制されていることを示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
上記表2に示す結果から、実施例1〜3で得られるゴム組成物および加硫ゴム組成物は、比較例1で得られるゴム組成物および加硫ゴム組成物と同等程度の基本物性(粘度、硬度、引張特性)を保持していることが分かり、またインサイドドラムテストの結果より、実施例1〜3の加硫ゴム組成物の氷上摩擦係数が、比較例1のゴム組成物のその値よりも大きくなっていることから、氷上制動性能に優れていることが分かり、さらに耐マイグレーションについても優れることが明らかとなった。
また、市販の液状ゴムを用いた比較例2〜4と比べても、コストを削減できることは勿論、氷上制動性能および耐マイグレーションに優れることが明らかとなった。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の第1の態様に係るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、オイルを配合した従来公知のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物と同等程度の基本物性(粘度、硬度、引張特性等)を保持し、さらにマイグレーションの発生を抑制し、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させることができるため有用である。また、このスタッドレスタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有する本発明の第2の態様に係るスタッドレスタイヤは、氷上摩擦係数が大きいことから、氷雪路上性能、特に氷上制動性能が優れるため有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤに関し、より詳しくは、加硫ゴム組成物から回収される回収ゴムを配合してなるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物および該ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
スパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーン装着は粉塵発生という環境問題をひき起すため、これらに代る氷雪路上走行用タイヤとしてスタッドレスタイヤが開発されてきた。一般に、凍結路面では一般路面での摩擦係数の1/10程度まで低下して滑りやすくなっているため、スタッドレスタイヤではタイヤの摩擦力を高くするように、材料面および設計面から工夫がなされている。
材料面の工夫としては、一般的に、オイルを配合することによって低温でも硬くなりにくい低温特性に優れた加硫ゴム組成物を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該加硫ゴム組成物は、時間の経過とともに(経時で)オイル量が減少するマイグレーションが発生するため長期使用後の硬度が高くなり、氷上性能(氷雪路上性能、氷上制動性能)が低下するという問題を有しており、また、該加硫ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤでは、氷上性能が不十分である問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭60−31546号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、マイグレーションの発生を抑制し、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させることができ、さらに加硫前後の基本物性(粘度、硬度、引張特性等)にも劣らないスタッドレスタイヤ用ゴム組成物および該組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オイルの代替物として、本出願人により提案されている特開2002−265664号公報に記載されたゴム成形品からの材料回収方法により回収される回収ゴムを配合してなるゴム組成物が、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させることのできることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記(1)に示すスタッドレスタイヤ用ゴム組成物および下記(2)に示すスタッドレスタイヤを提供するものである。
【0006】
(1)ブタジエンゴムを20〜60質量%含有し、天然ゴムを40〜80質量%含有するスタッドレスタイヤ用ゴムと、回収ゴムと、を含有し、
該回収ゴムが、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物を、220〜400℃の温度に加熱し、次いで、加熱後の該加硫ゴム組成物を有機溶媒で抽出することで溶媒抽出分と抽出残物とに分離し、さらに、分離した該溶媒抽出分から該有機溶媒を除去(留去)することにより回収される重量平均分子量が2000〜100000のゴムであり、
該回収ゴムの含有量が、該スタッドレスタイヤ用ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物(第1の態様)。
【0007】
(2)上記(1)に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤ(第2の態様)。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明の第1の態様に係るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物(以下、単に「本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物」という場合がある。)は、後述するスタッドレスタイヤ用ゴム100質量部と、回収ゴム1〜30質量部と、を含有するスタッドレスタイヤ用ゴム組成物である。
次に、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を構成するスタッドレスタイヤ用ゴムおよび回収ゴムについて詳述する。
【0009】
<スタッドレスタイヤ用ゴム>
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に用いるスタッドレスタイヤ用ゴムは、該スタッドレスタイヤ用ゴムの総質量に対して、ブタジエンゴム(BR)を20〜60質量%含有し、天然ゴム(NR)を40〜80質量%含有する混合ゴムであれば特に限定されず、ブタジエンゴムを30〜50質量%含有し、天然ゴムを50〜70質量%含有する混合ゴムであることが好ましい。
また、上記スタッドレスタイヤ用ゴムは、ブタジエンゴムおよび天然ゴム以外に、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム、多硫化ゴム等の他のゴムを本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0010】
<回収ゴム>
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に用いる回収ゴムは、上述したように本出願人により提案されている特開2002−265664号公報に記載されたゴム成形品からの材料回収方法により回収される液状のゴムであって、具体的には、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物を、220〜400℃の温度に加熱し、次いで、加熱後の該加硫ゴム組成物を有機溶媒で抽出することで溶媒抽出分と抽出残物とに分離し、さらに、分離した該溶媒抽出分から該有機溶媒を除去することにより回収される重量平均分子量が2000〜100000のゴムである。
ここで、220〜400℃の温度に加熱する工程を(1)熱処理工程とし、加熱後の加硫ゴム組成物を有機溶媒で抽出することで溶媒抽出分と抽出残物とに分離する工程を(2)有機溶媒抽出工程とし、分離した溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する工程を(3)ゴム回収工程として、それぞれ以下に詳述する。
【0011】
(1)熱処理工程
熱処理工程とは、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物を、220〜400℃の温度に加熱する工程であり、加熱により可塑化してもよい。
【0012】
本発明において上記熱処理工程に供される上記加硫ゴム組成物は、上述したように、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物を一部または全部を加硫したものであれば特に限定されず、天然ゴムおよびイソプレンゴム以外の原料ゴムや充填剤(補強剤)、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、有機系活性剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等の各種添加剤を配合するゴム組成物から形成されていてもよい。
【0013】
天然ゴムおよびイソプレンゴム以外の原料ゴムとしては、具体的には、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム、多硫化ゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
充填剤(補強剤)としては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、けいそう土などのシリカ類;カーボンブラック、ホワイトカーボン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、トリメリット酸エステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
軟化剤としては、具体的には、例えば、プロセスオイル、石油樹脂、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、脂肪酸エステル等の合成可塑剤、植物油、液状ゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
有機系活性剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
加硫剤としては、具体的には、例えば、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTT)などの有機含硫黄化合物;ジクミルペルオキシドなどの有機過酸化物;亜鉛華、マグネシアなどの金属酸化物;キノンジオキシム等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)などのチアゾール類;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)などのスルフェンアミド類;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド・アンモニア類;ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
このような加硫ゴム組成物としては、具体的には、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナーなどの自動車用ゴム部品;ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキンなどのゴム製品;精錬屑、加工屑などの成形屑ゴム;等が挙げられる。これらは、必ずしも使用されたものでなくてもよいが、ゴム廃材であることがコストおよびリサイクルの観点から望ましい。
これらのうち、タイヤおよび/または成形屑ゴムを用いることが、天然ゴムおよびイソプレンゴムを高純度で回収することができるゴム廃材である理由から好ましい。また、ブチルゴム原料の自動車用ゴム部品廃材を用いることも好ましい。
また、このような加硫ゴム組成物は、熱処理効率および抽出効率を向上させる理由から、切断などにより細分化して用いることが好ましい。
【0023】
上記熱処理工程における、上記加硫ゴム組成物を220〜400℃の温度に加熱する際の加熱は、加熱装置(例えば、電熱炉、オーブン、管状炉等)を用いて行うことができる。
また、上記加熱は、空気下、窒素ガス中等の不活性雰囲気下のいずれで行ってもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
また、上記加熱の条件としては、加熱原料である加硫ゴム組成物、加熱環境等によっても異なるが、220〜400℃、好ましくは250〜350℃、より好ましくは280〜300℃の温度範囲で行われる。また、加熱時間は、10〜30分程度であればよく、15〜20分程度であることが好ましい。
【0024】
(2)有機溶媒抽出工程
有機溶媒抽出工程とは、上記(1)熱処理工程において加熱した加硫ゴム組成物を、有機溶媒で抽出することにより溶媒抽出(溶解)分と抽出残物(不溶分)とに分離する工程であって、実質的に分離されていればよく、溶媒抽出分が多少抽出残分に残っていてもよい。
具体的には、上記(1)熱処理工程において加熱した加硫ゴム組成物を、有機溶媒に浸漬させ、遠心分離、ろ過等の汎用の分離手段により、溶媒抽出分を抽出させて、抽出残物と分離する。この際、有機溶媒を加熱しても構わないが、作業コスト面から、室温(通常0〜40℃程度)の有機溶媒中に浸漬することが好ましい。浸漬時間は、6〜12時間であることが望ましく、通常8〜10時間である。
また、有機溶媒は固形の加硫ゴム組成物を充分浸漬し得る程度の量で用いることが好ましく、通常は1kgの加硫ゴム組成物を8〜10リットル程度の有機溶媒に浸漬させることが好ましい。
【0025】
上記有機溶媒は、飽和または不飽和の炭化水素を用いることができ、該炭化水素は芳香族、脂肪族、脂環族などに特に限定されない。その具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)、シクロヘキサン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、シクロヘキサン、トルエン、キシレンであることが、回収ゴムの溶解性、処理上の観点から好ましい。
【0026】
(3)ゴム回収工程
ゴム回収工程とは、上記(2)有機溶媒抽出工程において分離した溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する工程であって、蒸留、加熱乾燥等により実質的に有機溶媒が除去されていればよい。
【0027】
上記(1)〜(3)の工程によって加硫ゴム組成物から回収される回収ゴムは、重量平均分子量が2000〜100000の液状のゴムであって、その分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜5.0程度であることが好ましい。回収ゴムの重量平均分子量および分子量分布がこの範囲であれば、得られるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の加硫後の引張特性が良好となり、さらに硬度が大幅に変化しないため好ましい。なお、上記回収ゴムの重量平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で定法に従い測定することができる。
上記回収ゴムの重量平均分子量は、上記(1)熱処理工程の加熱条件、加熱原料である加硫ゴム組成物により適宜選択することが可能であり、例えば、イソプレンゴムからなる加硫成形品からは、220〜300℃での加熱により、重量平均分子量15000以上、好ましくは5万以上、より好ましくは7万以上の高分子量のゴムを回収することができる。特に、必要であれば、9万以上の高分子量のゴムを抽出回収することもできる。
また、上記回収ゴムは、加硫ゴム組成物に含まれている硫黄などの加硫剤を含有していても支障がない。
【0028】
本発明において、上記回収ゴムの含有量は、上記スタッドレスタイヤ用ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であって、3〜20質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
回収ゴムの含有量がこの範囲であれば、得られる本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物が、オイルを配合した従来公知のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物と同等程度の基本物性(粘度、硬度、引張特性等)を保持することができ、さらにマイグレーションの発生が抑制され、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させる理由から好ましい。
【0029】
また、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、上記スタッドレスタイヤ用ゴムおよび上記回収ゴム以外に、スタッドレスタイヤとして用いるために、上述した各種添加剤や、活性剤、軟化剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、気体封入熱可塑性樹脂、着色剤、顔料、難燃剤および離型剤などの各種配合剤(ゴム副資材)を配合していてもよい。
ここで、上記気体封入熱可塑性樹脂とは、熱により気化、分解または化学反応して気体を発生する液体または固体を封入した熱膨張性熱可塑性樹脂粒子を、ゴム加硫時の熱によって膨張せしめて中空状にしたものである。
【0030】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記スタッドレスタイヤ用ゴム、上記回収ゴム、および所望により配合される上記添加剤や配合剤を、公知のゴム用混練機械(例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機、二軸押出機、バンバリーミキサー等)を用いて混合することによって製造することができる。
【0031】
本発明の第2の態様に係るスタッドレスタイヤ(以下、単に「本発明のスタッドレスタイヤ」という場合がある。)は、上述した本発明の第1の態様に係るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤであって、トレッド以外の部材(例えば、ベルト、カーカス、ビードワイヤー等)は特に限定されない。
ここで、本発明のスタッドレスタイヤは、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物をトレッドのゴム組成物として有しているため、上述したように、オイルを配合した従来公知のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物をトレッドのゴム組成物として有するタイヤに比べ、マイグレーションの発生が抑制され、さらに氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上する効果を有している。
【0032】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(原料加硫ゴム組成物の調製)
下記表1に示す組成成分(質量部)で配合・混練してゴム組成物を調整した後に、180℃で10分間加熱して加硫し、回収ゴムの原料となる加硫ゴム組成物(原料加硫ゴム組成物)を調製した。
なお、下記表1中の組成成分としては、天然ゴムとしてはRSS3号を使用し、カーボンブラックとしてはショウワブラックS118(昭和キャボット社製)、亜鉛華としては酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)、ステアリン酸としてはビーズステアリン酸(日本油脂社製)、老化防止剤としてはサントフレックス6PPD(フレキシス社製)、硫黄としては油処理硫黄(軽井沢精錬所製)、加硫促進剤としてはノクセラーNS−P(大内新興化学工業社製)を使用した。
【0033】
【表1】
【0034】
上記原料加硫ゴム組成物を1cm角に切断し、電熱炉を用いて、窒素雰囲気下、280℃の温度で、15分間加熱して可塑化させた。可塑化させた原料加硫ゴム組成物500gをトルエン5リットル中に浸漬させ、8時間室温で静置させた後、遠心分離させ、トルエン抽出分と抽出残物とを分離させた。分離させたトルエン抽出分から減圧乾燥によりトルエンを留去させることで、褐色液状の回収ゴム(重量平均分子量:1.73×105、分子量分布:2.84)が得られた。
【0035】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
得られた回収ゴムを用いて、下記表2に示す組成成分(質量部)で配合・混練してゴム組成物を調製した後に、180℃で10分間加熱して加硫し、加硫ゴム組成物を調製した。
なお、下記表2中の組成成分としては、天然ゴムとしてはSTR−20(TEC BEE HANG社製)、ブタジエンゴムとしてはNipol BR1220(日本ゼオン社製)を使用し、カーボンブラックとしてはSAF シースト7HT(東海カーボン社製)、亜鉛華としては酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)、ステアリン酸としてはビーズステアリン酸(日本油脂社製)、老化防止剤としてはサントフレックス6PPD(フレキシス社製)、硫黄としては油処理硫黄(軽井沢精錬所製)、加硫促進剤としてはノクセラーCZ−G(大内新興化学工業社製)を使用し、オイルとしてはエキストラクト4号(昭和シェル石油社製)を使用した。
また、比較例2〜4において使用した液状ゴムとしては、市販品であるクラプレンLIR−50(クラレ社製)を使用した。
【0036】
実施例1〜3、比較例1〜4で得られた各ゴム組成物および加硫ゴム組成物の物性値を下記に示す方法に従って測定した。結果を下記表2に示す。
<ムーニー粘度>
得られた各ゴム組成物について、JIS K6300−1:2001 に記載の「ムーニー粘度試験」に準拠して、ムーニー粘度計(L形ローター)を使用し、予熱時間1分、ローターの回転時間4分、試験温度100℃の条件で、ムーニー粘度(M)を測定した。ここで、Mはムーニー単位を表す。
【0037】
<リュプケJIS硬度>
得られた各加硫ゴム組成物を、JIS K6253−1997 のP法に準拠して、マイナス20℃(−20℃)、0℃、20℃および60℃における硬度(HS)を測定した。また、耐熱老化(80℃×96間放置)後の20℃における硬度の測定も行った。
【0038】
<ブランク引張り試験>
得られた各加硫ゴム組成物を、JIS K6251−1993に準拠して、厚さ2mmのダンベル状試験片(ダンベル状3号形)に切り出し、50%モジュラス(M50)〔MPa〕、100%モジュラス(M100)〔MPa〕、200%モジュラス(M200)〔MPa〕、300%モジュラス(M300)〔MPa〕、400%モジュラス(M400)〔MPa〕、破断強度(TB)〔MPa〕、破断伸び(EB)〔%〕を測定した。
【0039】
<インサイドドラムテスト(氷上摩擦指数)>
得られた各加硫ゴム組成物について、直径10cm程度の円形コンパウンドを作製し加硫させた後、氷上摩擦係数を以下の方法で測定した。
インサイドドラム型氷上摩擦試験機を用い、設定温度−4.0℃、氷温−2.8℃、負荷加重5.5kgの条件下で、上記円形コンパウンドの氷上摩擦係数を測定した。なお、下記表2中の数値は、比較例1の氷上摩擦係数の値を100とした指数表示(氷上摩擦指数)とした。この値が大きい程耐摩耗性に優れ、氷上制動性が良好なことを示す。
【0040】
<耐マイグレーション>
得られた各加硫ゴム組成物から作製した直径45mm、厚さ6mmの加硫シート片(1)と、天然ゴム系(オイル分を含まない)加硫ゴム組成物から同様に作製した直径45mm、厚さ6mmの加硫シート片(2)とを重ね合わせ、これに40g/cm2の荷重をかけて、5週間室温(温度20±2℃、湿度65%の室内)放置した。放置前後の加硫ゴムシート片(2)の重量を測定し、その増加率を算出した。なお、下記表2中の数値は、比較例1の重量増加率を100とした指数表示とした。この値が小さいほどマイグレーションが抑制されていることを示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
上記表2に示す結果から、実施例1〜3で得られるゴム組成物および加硫ゴム組成物は、比較例1で得られるゴム組成物および加硫ゴム組成物と同等程度の基本物性(粘度、硬度、引張特性)を保持していることが分かり、またインサイドドラムテストの結果より、実施例1〜3の加硫ゴム組成物の氷上摩擦係数が、比較例1のゴム組成物のその値よりも大きくなっていることから、氷上制動性能に優れていることが分かり、さらに耐マイグレーションについても優れることが明らかとなった。
また、市販の液状ゴムを用いた比較例2〜4と比べても、コストを削減できることは勿論、氷上制動性能および耐マイグレーションに優れることが明らかとなった。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の第1の態様に係るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、オイルを配合した従来公知のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物と同等程度の基本物性(粘度、硬度、引張特性等)を保持し、さらにマイグレーションの発生を抑制し、タイヤの氷雪路上の摩擦力を高くして氷雪路上性能、特に氷上制動性能を向上させることができるため有用である。また、このスタッドレスタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有する本発明の第2の態様に係るスタッドレスタイヤは、氷上摩擦係数が大きいことから、氷雪路上性能、特に氷上制動性能が優れるため有用である。
Claims (2)
- ブタジエンゴムを20〜60質量%含有し、天然ゴムを40〜80質量%含有するスタッドレスタイヤ用ゴムと、回収ゴムと、を含有し、
該回収ゴムが、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを40〜100質量%含有するゴム組成物の一部または全部を加硫させてなる加硫ゴム組成物を、220〜400℃の温度に加熱し、次いで、加熱後の該加硫ゴム組成物を有機溶媒で抽出することで溶媒抽出分と抽出残物とに分離し、さらに、分離した該溶媒抽出分から該有機溶媒を除去することにより回収される重量平均分子量が2000〜100000のゴムであり、
該回収ゴムの含有量が、該スタッドレスタイヤ用ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。 - 請求項1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
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