JP2024041293A - タイヤ試験方法 - Google Patents

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Hirotaka Sarashi
渓太 黒田
Keita Kuroda
大輔 田子
Daisuke Tago
充 納家
Mitsuru Naya
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Abstract

【課題】評価にかかる時間と費用との削減を図りながら、タイヤの特性としてタイヤ痕を評価できる、タイヤ試験方法の提供。【解決手段】タイヤの試験方法は、走行試験装置の走行面上で供試タイヤを走行させ前記供試タイヤの温度を上げる工程S1と、熱を帯びた供試タイヤに転写紙を押し当て前記転写紙にタイヤ痕をつける工程S2とを含む。【選択図】図3

Description

本発明は、タイヤ試験方法に関する。詳細には、本発明は、タイヤ痕の評価に用いることができる、タイヤ試験方法に関する。
タイヤの表面はゴムからなる。ゴムは、補強剤、可塑剤、ワックス等の薬品を含む。ゴムに配合される薬品の中には、内部に留まっている薬品や、表面に析出する薬品がある。
タイヤの表面に析出する薬品の中には、タイヤの性能向上に貢献できる薬品がある。例えばワックスは、表面に析出して耐オゾンクラックの発生を抑制する。
タイヤの性能向上を図るために、表面に析出している薬品の状態を把握することは重要である。例えば、下記の特許文献1は、表面に析出しているワックスの炭素数分布をより正確に測定するためのゴム表面の検査方法を提案する。
特開2018-189421号公報
タイヤの外周面は路面と接触する。外周面に析出した薬品(以下、析出物)が路面に転写することが考えられる。
タイヤのゴムは、補強剤としてカーボンブラックを含む。カーボンブラックは黒い。表面に析出した薬品(以下、析出物)がカーボンブラックを含む場合、路面に転写した析出物によって黒いタイヤ痕が形成される。濃いタイヤ痕は路面を汚した印象を与える。タイヤ痕が淡くなるように対策が施される。
対策の有効性評価には通常、実際の車両を用いた評価(以下、実車評価)が行われる。しかし実車評価は、結果を得るために時間と費用とを費やす。実車評価の生産性はかなり低い。評価結果は、路面、天候、使用頻度等の環境の影響を受けやすい。実車評価では、再現性の高い結果を得ることが難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、評価にかかる時間と費用との削減を図りながら、タイヤの特性としてタイヤ痕を評価できる、タイヤ試験方法の提供にある。
本発明に係るタイヤの試験方法は、走行試験装置の走行面上で供試タイヤを走行させ前記供試タイヤの温度を上げる工程と、熱を帯びた供試タイヤを転写紙に押し当て前記転写紙にタイヤ痕をつける工程とを含む。
本発明によれば、評価にかかる時間と費用との削減を図りながら、タイヤの特性としてタイヤ痕を評価できる、タイヤ試験方法が得られる。
本発明の一実施形態に係るタイヤ試験方法で使用するタイヤの一例を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るタイヤ試験方法で使用する試験装置の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係るタイヤ試験方法のフローを示す図である。 付着工程を説明する図である。 濃いタイヤ痕の一例を示す図である。 淡いタイヤ痕の一例を示す図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本発明においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤ試験方法は、走行試験装置の走行面上で供試タイヤを走行させ前記供試タイヤの温度を上げる工程と、熱を帯びた供試タイヤを転写紙に押し当て前記転写紙にタイヤ痕をつける工程とを含む。
タイヤの試験方法をこのように整えることにより、昇温工程においてタイヤは熱を帯びる。熱を帯びた状態でしばらく保持されるので、タイヤのゴムに内在する薬品の析出が促される。付着工程では、熱を帯びたタイヤが転写紙に押し当てられる。タイヤを転写紙に押し当てる際、タイヤの表面に存在する析出物は、析出した状態を保持しているので、冷えたタイヤを転写紙に押し当てる場合に比べて、析出物が転写紙に付着しやすい。そのため、析出状態に応じたタイヤ痕が得られる。
この試験方法では、走行試験装置を用いて行われるので、車両は不要である。この試験方法は、路面、天候等の、環境の影響を受けにくい。この試験方法は、走行面上で走行するタイヤの速度、そしてタイヤが走行する時間等の走行条件を一致させて昇温工程を行うことができる。そのため、この試験方法は、再現性の高い結果を得ることができる。得られるタイヤ痕は、タイヤの特性として扱うことができる。
タイヤの内圧や、タイヤに付与する荷重等もコントロールできるので、表面への薬品の析出を促す条件を見極め、試験時間の短縮を図ることもできる。
この試験方法は、評価にかかる時間と費用との削減を図りながら、タイヤの特性としてタイヤ痕を評価できる。
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤ試験方法は、前記タイヤ痕の濃淡を評価する工程をさらに含む。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、例えば、タイヤに対して、タイヤ痕が淡くなるように対策を施した場合、その対策の有効性が容易にしかも正確に把握できる。
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤ試験方法において、前記走行試験装置がドラムを備え、前記ドラムの外周面が前記走行面であり、前記ドラムの外径が2000mm以下である。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、タイヤの温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる。
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤ試験方法において、前記走行面上を走行する供試タイヤの速度が80km/h以上120km/h以下である。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、タイヤの温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる。
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載のタイヤ試験方法において、前記供試タイヤの走行時間が1.0時間以上である。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、タイヤの温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる。
[構成6]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成5]のいずれかに記載のタイヤ試験方法において、前記供試タイヤを前記転写紙に押し当てる際の、前記供試タイヤの表面温度が、40℃以上である。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、タイヤの表面に析出した析出物の、転写紙への付着が効果的に促される。
[構成7]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成6]のいずれかに記載のタイヤ試験方法において、前記走行面上を走行する供試タイヤのスリップ角が0.5度以上1.5度以下である。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、タイヤの温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる。
[本発明の実施形態の詳細]
[供試タイヤ]
図1は、本発明のタイヤ試験方法で使用する供試タイヤ2(以下、タイヤ2)の一例を示す。図1に示されたタイヤ2は、乗用車用空気入りタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1においてタイヤ2はリムRに組まれている。
タイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、ベルト12及びインナーライナー14を備える。これらの要素のうち、トレッド4、サイドウォール6及びインナーライナー14はタイヤ2の表面を構成する。トレッド4及びサイドウォール6はタイヤ2の外面を構成し、インナーライナー14はタイヤ2の内面を構成する。
トレッド4はカーカス10の径方向外側に位置する。トレッド4の外周面が路面と接地する。トレッド4において路面と接地する部分はトレッド面4aとも呼ばれる。
トレッド4は、架橋したゴム組成物(以下、ゴムとも呼ばれる。)からなる。詳述しないが、トレッド4は、ゴム成分以外に、カーボンブラック、ワックス、可塑剤等の薬品を含有する。
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス10の軸方向外側に位置する。
サイドウォール6はゴムからなる。詳述しないが、サイドウォール6も、トレッド4と同様、ゴム成分以外に、カーボンブラック、ワックス、可塑剤等の薬品を含有する。サイドウォール6のゴムは、トレッド4のゴムとは異なる。
ビード8はコア16とエイペックス18とを備える。図示されないが、コア16はスチール製のワイヤを含む。エイペックス18はコア16の径方向外側に位置する。エイペックス18は径方向外向きに先細りである。エイペックス18は硬質な架橋ゴムからなる。
カーカス10は一対のビード8の間を架け渡す。カーカス10はカーカスプライ20を備える。カーカスプライ20はビード8で折り返される。図示されないが、カーカスプライ20は並列した多数のカーカスコードを含む。
ベルト12は径方向においてトレッド4とカーカス10との間に位置する。ベルト12はベルトプライ22を備える。図示されないが、ベルトプライ22は並列した多数のベルトコードを含む。
このタイヤ2はトレッド4とベルト12との間にバンド(図示されず)を備えることができる。この場合、バンドは螺旋状に巻かれたバンドコードを含む。
インナーライナー14はカーカス10の内側に位置する。インナーライナー14は空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー14はタイヤ2の内圧を保持する。
[走行試験装置]
図2は、本発明のタイヤ試験方法で使用する走行試験装置32の一例を示す斜視図である。走行試験装置32は、ドラム34と支持部36とを備える。ドラム34及び支持部36は、架台38に設置される。この走行試験装置32はドラム試験機である。
ドラム34は、回転可能に架台38に支持される。ドラム34は、図示されない駆動手段により回転させられる。駆動手段としては、電動モーターが挙げられる。
この走行試験装置2では、ドラム34の外周面40をタイヤ2は走行する。ドラム34の外周面40は走行面RSである。
支持部36は、リム42と回転軸44とを備える。詳述しないが、リム42は試験用リムである。リム42は、正規リムと同様の仕様で構成される。
タイヤ2はリム42に組まれる。回転軸44はリム42を支持する。回転軸44は、軸受(図示されず)により回転可能に支持される。回転軸44の軸芯の向きはタイヤ2の回転軸の向きに一致する。
図示されないが、支持部36は、回転駆動機構及びブレーキ機構をさらに備える。支持部36は、回転軸44を回転自在にすること、ドラム34に依らず回転軸44を回転駆動すること、及び、回転軸44を拘束することができる。この試験装置32は、リム42に装着されたタイヤ2を加速すること、減速すること、そして、停止することができる。
支持部36には、流体圧シリンダーのような昇降装置(図示されず)が設けられる。この昇降装置によって、ドラム34に対するタイヤ2の位置が調整される。この調整により、タイヤ2はドラム34の外周面40に接触させられる。タイヤ2をドラム34の外周面40に押し当てることにより、所定の荷重がタイヤ2に付与される。この試験装置32では、支持部36の回転軸44は回転自在とし、所定の荷重をタイヤ2に付与した状態でドラム34が回転させられる。これにより、タイヤ2がドラム34の外周面40を走行する。なお、図示されないが、この支持部36には、回転軸44の、ドラム34の中心軸に対する角度を任意の角度で調整できる角度調整手段がさらに設けられる。詳述しないが、角度調整手段が回転軸44の向きを調整することで、タイヤ2のキャンバー角及びスリップ角が調整される。
[タイヤ試験方法]
図3は、本発明の一実施形態にかかるタイヤ試験方法のフローを示す。このタイヤ試験方法(以下、単に、試験方法とも呼ばれる。)は、タイヤ痕の評価に用いられる。
この試験方法は、タイヤ2の温度を上げる工程(以下、昇温工程S1とも呼ばれる。)と、転写紙にタイヤ痕をつける工程(以下、付着工程S2とも呼ばれる。)とを含む。
昇温工程S1は、前述の走行試験装置32において行われる。昇温工程S1ではまず、走行試験装置32にタイヤ2がセットされる。そのために、タイヤ2がリム42に組まれる。タイヤ2の内部に空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。
昇温工程S1におけるタイヤ2の内圧に特に制限はない。タイヤ2の内圧が正規内圧に調整されてもよく、正規内圧よりも低い圧力に調整されてもよく、正規内圧よりも高い圧力に調整されてもよい。
内圧調整後、リム42が回転軸44に取り付けられる。これにより、走行試験装置32にタイヤ2がセットされる。
回転軸44の向きを調整して、キャンバー角及びスリップ角が調整される。この試験方法では、キャンバー角は0度に設定される。スリップ角は0度以上2度以下の範囲で適宜調整される。
タイヤ2をドラム34に向けて動かし、ドラム34の外周面40、すなわち走行面RSに、タイヤ2が押し当てられる。これにより、タイヤ2に荷重が付与される。回転軸44の軸芯とドラム34との間の距離を調整して、タイヤ2に付与される荷重が調整される。
タイヤ2に付与する荷重に特に制限はない。タイヤ2に付与される荷重が正規荷重に調整されてもよく、正規荷重よりも低い荷重に調整されてもよく、正規荷重よりも高い荷重に調整されてもよい。
荷重の調整が済むと、ドラム34を回転させてタイヤ2の走行が開始される。所定の速度でタイヤ2は走行させられる。所定時間経過後、ドラム34の回転を止めて、タイヤ2の走行が停止される。これにより、昇温工程S1は終了する。
昇温工程S1は、走行試験装置32の走行面RS上でタイヤ2を走行させ、タイヤ2の温度を上げる。タイヤ2は熱を帯び、熱を帯びた状態でしばらく保持される。これにより、タイヤ2のゴムに内在する薬品の析出が促される。昇温工程S1は、タイヤ2の温度を上げ、タイヤ2のゴムに内在する薬品の析出を促す。ゴムに内在する薬品に析出傾向にある薬品が含まれていれば、この薬品がタイヤ2の表面に析出する。
この試験方法では、昇温工程S1の後、付着工程S2が行われる。この付着工程S2では、昇温工程S1によってタイヤ2の表面に析出した薬品(以下、析出物とも呼ばれる。)の有無が確認される。
図4は、付着工程S2を説明する図である。付着工程S2では、析出物の有無を確認するために転写紙46が用いられる。転写紙46は、十分な広さを有するステージ48に置かれる。転写紙46が載置される面は、図4に示されるように平面であってもよく、前述のドラム34の外周面40のように湾曲した面であってもよい。
ステージ48に転写紙46をセットすると、転写紙46に向けてタイヤ2が動かされ、タイヤ2が転写紙46に押し当てられる。タイヤ2の表面に析出物があれば、この析出物が転写紙46に付着する。これにより、タイヤ痕が得られる。
付着工程S2は、タイヤ2を転写紙46に押し当てて転写紙46にタイヤ痕をつける。
タイヤ痕は、転写紙46に付着した析出物によって構成される。そのため、タイヤ痕を得ることで、析出物の有無が確認できる。
図4は、タイヤ2のトレッド4(具体的には、トレッド面4a)を転写紙46に押し当てる場合を示すが、トレッド4に転写紙46が押し当てられてもよい。タイヤ2のサイドウォール6を転写紙46に押し当てて、転写紙46にタイヤ痕がつけられてもよい。この場合は、サイドウォール6の表面に存在する析出物の基づくタイヤ痕が得られる。
付着工程S2では、タイヤ痕を得るために転写紙46が用いられるが、析出物を付着できるのであれば、この転写紙46に特に制限はない。この試験方法では、マイラー紙が転写紙46として好適に用いられる。
付着工程S2は、タイヤ2を転写紙46に押し当てる動作を伴う。そのため、付着工程S2は、好ましくは、装置を用いて行われる。この装置としては、転写紙46をセットするステージ48と、タイヤ2を支持しつつ、タイヤ2を転写紙46に向けて動かし、タイヤ2を転写紙46に押し当てることができる支持手段(図示されず)とを備える装置であればよく、この装置の構成に特に制限はない。
昇温工程S1を行ったタイヤ2に対してそのまま、付着工程S2を実施できることから、昇温工程S1で使用する走行試験装置32が、付着工程S2を行うための装置として用いられるのが好ましい。この場合、走行試験装置32の走行面RSに転写紙46がセットされる。そして、支持部36によってタイヤ2が転写紙46に向けて動かされ、転写紙46にタイヤ2が押し当てられる。
前述したように、昇温工程S1においてタイヤ2の温度が上げられる。これにより、タイヤ2は熱を帯びる。昇温工程S1に続いて行われる付着工程S2では、熱を帯びたタイヤ2が転写紙46に押し当てられる。タイヤ2を転写紙46に押し当てる際、タイヤ2の表面に存在する析出物は、析出した状態、言い換えれば、粘性を有した状態を保持しているので、冷えたタイヤ2に転写紙46を押し当てる場合に比べて、析出物が転写紙46に付着しやすい。そのため、析出状態に応じたタイヤ痕が得られる。
図5及び6は、付着工程S2で得られるタイヤ痕の例を示す。図5は、表面への薬品の析出量が多いタイヤのタイヤ痕である。図6は、表面への薬品の析出を抑える対策を施したタイヤのタイヤ痕である。後述するが、両タイヤのタイヤサイズは同じであり、そして、昇温工程S1における走行条件には同じ条件が設定されている。
図5及び6の対比から明らかなように、表面への薬品の析出量が多いタイヤでは濃いタイヤ痕が得られ、表面への薬品の析出を抑える対策が施され、表面への薬品の析出量が減少したタイヤでは淡いタイヤ痕が得られる。この試験方法によれば、析出状態に応じたタイヤ痕が得られるのは明らかである。
この試験方法では、走行試験装置32を用いて行われるので、車両は不要である。この試験方法は、路面、天候等の、環境の影響を受けにくい。この試験方法は、走行面RS上で走行するタイヤ2の速度、そしてタイヤ2が走行する時間等の走行条件を一致させて昇温工程S1を行うことができる。そのため、この試験方法は、再現性の高い結果を得ることができる。得られるタイヤ痕は、タイヤ2の特性として扱うことができる。
タイヤ2の内圧や、タイヤ2に付与する荷重等もコントロールできるので、表面への薬品の析出を促す条件を見極め、試験時間の短縮を図ることもできる。
この試験方法は、評価にかかる時間と費用との削減を図りながら、タイヤ2の特性としてタイヤ痕を評価できる。
前述したように、この試験方法は、タイヤ2の特性としてタイヤ痕を評価できる。特に、図5及び6に示されているように、対比が可能なタイヤ痕が得られる。そのため、例えば、転写紙46につけたタイヤ痕を画像データとして読み取り、ある一定の閾値で画像処理を行い二値化することで、タイヤ痕の濃淡の程度を数値で表すことができる。この場合、この数値を比較することで、タイヤ痕の濃淡からタイヤの特性を容易に把握できる。
つまり、この試験方法は、タイヤ痕の濃淡を評価する工程(以下、評価工程S3)をさらに含むことができる。これにより、例えば、タイヤ2に対して、タイヤ痕が淡くなるように対策を施した場合、その対策の有効性が容易にしかも正確に把握できる。この観点から、この試験方法は評価工程S3をさらに含むのが好ましい。この場合、この評価工程S3において、転写紙46につけたタイヤ痕を画像データとして読み取り、ある一定の閾値で画像処理を行い二値化することで、タイヤ痕の濃淡の程度が数値で表されるのがより好ましい。
この試験方法では、走行試験装置32としてドラム試験機が用いられるが、この走行試験装置32がフラットベルト試験機であってもよい。対比が可能なタイヤ痕が得られる観点から、走行試験装置32はドラム試験機であるのが好ましい。
前述したように、走行試験装置32はドラム34を備え、ドラム34の外周面40が走行面RSである。タイヤ2の温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる観点から、ドラム34の外径は2000mm以下であるのが好ましく、1700mm以下であるのがより好ましく、1300mm以下であるのがさらに好ましい。走行試験装置32への負荷を適切にコントロールできる観点から、ドラム34の外径は1000mm以上であるのが好ましく、1100mm以上であるのがより好ましい。特に好ましいドラム34の外径は1200mmである。
この試験方法では、昇温工程S1において走行面RS上で走行するタイヤ2の速度は80km/h以上120km/h以下であるのが好ましい。これにより、タイヤ2の温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる。この観点から、タイヤ2の速度は90km/h以上110km/h以下であるのがより好ましい。さらに好ましくは、タイヤ2の速度は100km/hである。
この試験方法では、昇温工程S1におけるタイヤ2の走行時間は1.0時間以上であるのが好ましい。これにより、タイヤ2の温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる。この観点から、走行時間は1.5時間以上であるのがより好ましい。評価にかかる時間と費用との削減の観点から、走行時間は4.0時間以下であるのが好ましく、3.5時間以下であるのがより好ましい。なお、走行時間は、設定された速度でタイヤ2の速度を保持している時間によって表される。
この試験方法では、タイヤ2を転写紙46に押し当てる際の、タイヤ2の表面温度は40℃以上であるのが好ましい。これにより、タイヤ2の表面に析出した析出物の、転写紙46への付着が効果的に促される。この観点から、表面温度は45℃以上であるのがより好ましい。析出物の粘性が適切に維持され、鮮明なタイヤ痕が得られる観点から、表面温度は60℃以下であるのが好ましい。
前述したように、この試験方法では、トレッド4が転写紙46に押し当てられる。そのため、タイヤ2を転写紙46に押し当てる際の、タイヤ2の表面温度はトレッド面4aの温度で表される。転写紙46にサイドウォール6が押し当てられる場合は、表面温度はサイドウォール6の外面の温度で表される。
前述したように、この試験方法では、タイヤ2のスリップ角は0度以上2度以下の範囲で適宜調整される。タイヤ2の温度を効果的に上げることができ、ゴムに内在する薬品の析出を促すことができる観点から、スリップ角は0.5度以上1.5度以下であるのが好ましい。より好ましくは、スリップ角は1.0度である。
以上説明したように、本発明によれば、評価にかかる時間と費用との削減を図りながら、タイヤの特性としてタイヤ痕を評価できる、タイヤ試験方法が得られる。
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
供試タイヤとして、図1に示された基本構成を備えた次のタイヤA及びBを準備した。
タイヤA=表面への薬品の析出量が多いタイヤ
タイヤB=表面への薬品の析出を抑える対策を施したタイヤ
タイヤA及びBのタイヤサイズは、265/65R18であった。
走行試験装置としてドラム試験機を用いて、以下に示す条件で供試タイヤを走行させ供試タイヤの温度を上げた。タイヤが熱を帯びていることを確認した後、ドラム上で、転写紙(マイラー紙)に供試タイヤを押し当てた。そして、転写紙にタイヤ痕が付くかどうかを確認した。
走行条件
走行試験装置:ドラム試験機(ドラムB)
雰囲気温度:35±5℃
内圧:230kPa
荷重:8.4kN
スリップ角:1°
速度:100km/h
走行時間:1.5時間
タイヤA及びBともに、転写紙にタイヤ痕がついた。前述の図5がタイヤAのタイヤ痕であり、図6がタイヤBのタイヤ痕である。図5及び6の対比から明らかなように、表面への薬品の析出量が多いタイヤAでは濃いタイヤ痕が得られ、表面への薬品の析出を抑える対策が施され、表面への薬品の析出量が減少したタイヤBでは淡いタイヤ痕が得られた。この試験方法によれば、析出状態に応じたタイヤ痕が得られるのは明らかである。
[比較例1]
供試タイヤを走行させることなく、そのまま供試タイヤを転写紙に押し当て、転写紙にタイヤ痕が付くかどうかを確認した。しかしタイヤA及びBともに、転写紙にタイヤ痕はつかなかった。実施例1と比較例1との対比から、タイヤ痕に関する試験方法として本発明が有効であることは明らかである。
[実験例1-5]
供試タイヤとしてタイヤAを用いて走行試験装置及びスリップ角の影響を確認した。走行時間を3.0時間とし、走行試験装置及びスリップ角を下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様の条件で供試タイヤを走行させ供試タイヤの温度を上げた。
実験例1では、走行試験装置としてフラットベルト試験機が使用された。このことが、表の「タイプ」の欄に「FB」で示されている。
実験例2-5では、走行試験装置として、ドラムのドラム径が1100~1700mmの範囲にあるドラム試験機が使用された。
実施例2-3では、実施例1で使用したドラム試験機のドラム径の0.7倍のドラム径を有するドラム試験機が使用された。このことが、表の「タイプ」の欄に「ドラムA」で示されている。
実験例4-5では、走行試験装置として、実施例1で使用したドラム試験機が使用された。このことが、表の「タイプ」の欄に「ドラムB」で示されている。
表の「SA」の欄には、設定したスリップ角が示されている。
走行試験が終了後、タイヤが熱を帯びていることを確認した後、ドラム上で、転写紙(マイラー紙)に供試タイヤを押し当て、転写紙にタイヤ痕をつけた。その結果が、下記の表1及び2の「タイヤ痕」の欄に示されている。
実験例1と実験例3及び5との対比から、走行試験装置としてはフラットベルト試験機よりもドラム試験機の方が好ましいことが確認できる。
実験例3と5との対比から、ドラム試験機としてはドラムAよりもドラム径が小さいドラムBの方が好ましいことが確認できる。
実験例2と3との対比及び実験例4と5との対比から、スリップ角は0.0度よりも1.0度の方が好ましいことが確認できる。
実験例1-5の中でも、特に、実験例5の条件がタイヤ痕を得るための条件として有効であることが確認できる。
以上の評価結果から、本発明の試験方法は、再現性の高い結果を得ることができ、得られるタイヤ痕は、タイヤ2の特性として扱うことができることは明らかである。つまり、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された、タイヤ痕の評価が可能な試験方法は種々のタイヤにも適用できる。
2・・・供試タイヤ(タイヤ)
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・カーカス
12・・・ベルト
14・・・インナーライナー
32・・・試験装置
34・・・ドラム
40・・・ドラム34の外周面
46・・・転写紙

Claims (7)

  1. 走行試験装置の走行面上で供試タイヤを走行させ前記供試タイヤの温度を上げる工程と、
    熱を帯びた供試タイヤを転写紙に押し当て前記転写紙にタイヤ痕をつける工程と
    を含む、
    タイヤ試験方法。
  2. 前記タイヤ痕の濃淡を評価する工程をさらに含む、
    請求項1に記載のタイヤ試験方法。
  3. 前記走行試験装置がドラムを備え、
    前記ドラムの外周面が前記走行面であり、
    前記ドラムの外径が2000mm以下である、
    請求項1又は2に記載のタイヤ試験方法。
  4. 前記走行面上を走行する供試タイヤの速度が80km/h以上120km/h以下である、
    請求項1又は2に記載のタイヤ試験方法。
  5. 前記供試タイヤの走行時間が1.0時間以上である、
    請求項4に記載のタイヤ試験方法。
  6. 前記供試タイヤを前記転写紙に押し当てる際の、前記供試タイヤの表面温度が、40℃以上である、
    請求項1又は2に記載のタイヤ試験方法。
  7. 前記走行面上を走行する供試タイヤのスリップ角が0.5度以上1.5度以下である、
    請求項1又は2に記載のタイヤ試験方法。
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