JP5583470B2 - ポリオレフィン樹脂フィルム - Google Patents
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従来、化粧シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や塩化ビニルからなるフィルムが用いられていたが、近年、環境対応への要求や、コストダウンの要求等に応えるべく、ポリオレフィン樹脂からなるフィルムも用いられるようになってきている。
ここで、酸化防止剤としては、種々のものが知られており、ポリオレフィン樹脂に対する酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系の酸化防止剤が一般的に使用されている。
また、光安定剤は、ポリエチレンやポリプロピレンの耐候性を向上させるために配合される添加剤であり、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤が使用されている。
そして、特許文献1には、ヒンダードアミン系耐光剤とフェノール系酸化防止剤を併用した場合、黄色やピンク等に変色するとの問題が生じることがあるが、ヒンダードアミン系耐光剤として、アミノ基の水素原子がアルキル基で置換されたヒンダードアミン系耐光剤を用いることにより、変色の問題が解消されることが記載されている。
そこで、本発明者らは、その原因を解明するとともに上記課題を解決するための方策について鋭意検討を重ねた。
その上で、さらに本発明者らは、フェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とを含む樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂フィルムにおいて、ヒンダードアミン系光安定剤として、特定の構造を有するヒンダードアミン系光安定剤を特定量配合させることにより上述した変色の問題を解決することができ、加えて、ポリオレフィン樹脂フィルムの耐候性も向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方と、
フェノール系酸化防止剤と、
ヒンダードアミン系光安定剤と、
無機充填剤と
を含有する樹脂組成物からなり、
上記ヒンダードアミン系安定剤は、下記一般式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤であり、
上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%であり、
上記無機充填剤は、炭酸カルシウム及び/又は酸化チタン(TiO 2 )であり、上記無機充填剤の含有量は、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、50〜80重量%であり、
化粧シート、ステッカー又はマーキングシートに用いられ、厚さが0.04〜0.5mmであることを特徴とする。
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、
少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方と、
フェノール系酸化防止剤と、
特定の構造を有するヒンダードアミン系光安定剤(以下、光安定剤Aともいう)と
を含有する樹脂組成物からなり、
上記光安定剤Aは、下記一般式(1)又は(2)で表されるヒンダードアミン系光安定剤であり、
上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%である
ことを特徴とする。
上記の変色防止効果についてもう少し詳しく説明する。
例えば、フェノール系酸化防止剤が、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート〕、(別名:テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)である場合には、下記反応式(3)に示す化学反応が進行することにより、キノイド構造を有する化合物が生成される。そして、反応が進行することで、ポリオレフィン樹脂フィルムが変色(発色)すると考えられる。
なお、これらのヒンダードアミン系光安定剤は既に上市されており、その存在自体は公知であるものの、上述したように、フェノール系酸化防止剤と併用した際に、フェノール系酸化防止剤のキノイド化に起因する変色を好適に防止することができること、特に、NOxガスに暴露された際の変色を好適に防止することができることは一切知られておらず、アミノ基の水素原子がアルキル基で置換されたヒンダードアミン系光安定剤とフェノール系酸化防止剤とを併用した場合にNOxガスによる変色が生じるとの課題や、上述したような光安定剤Aとフェノール系酸化防止剤とを併用した際にNOxガスによる変色を防止することができるとの効果は、本発明者らによって初めて見出された知見である。
上記ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらのなかでは、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。高密度ポリエチレンは、耐候性及び引張強度に優れ、さらに高密度ポリエチレンからなるフィルムは、長尺の巻物にしても弛みがなく折り曲げ加工時に白化による外観不良が発生しにくいからである。
特に、樹脂成分がポリエチレンのみである場合は、高密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが望ましい。
また、高密度ポリエチレンは、加工時の耐熱性及び加工性に優れるため、カレンダー加工によりフィルムに成形するのに特に適している。
これらのなかでは、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂が望ましい。その理由は、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂は、単独重合ポリプロピレン樹脂やブロック共重合体ポリプロピレン樹脂に比べて、折り曲げ時に白化しにくいからである。
また、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物を用いる場合、ポリエチレンとポリプロピレンの合計量に対するポリプロピレンの含有量は、90重量%以下であることが望ましい。PPの含有量が多いと、厚さの薄いフィルムを成形した場合にその表面に凹凸が形成される(表面粗さが大きくなる)場合がある。
上記光安定剤Aの含有量が0.05重量%未満では、ポリオレフィン樹脂フィルムの耐候性が不充分であり、一方、5重量%を超えると、ポリオレフィン樹脂フィルムのNOxガスによる変色を防止することができなくなるからである。
上記無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン・酸化アンチモン・酸化ニッケル固溶体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらのなかでは、炭酸カルシウム及び/又は酸化チタンが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、炭酸カルシウムを含有することで、印刷時のインクの密着性や、裁断時の裁断性が向上する。
この理由は、カレンダー加工で成形するのに適しており、上記厚さのフィルムはカレンダー加工により、優れた表面平滑性及び高い厚み精度を有するフィルムとして成形するのに適しているからである。
上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、例えば、所定量の各原料を溶融混練して樹脂組成物とした後、これをカレンダー加工によってフィルムとすることによって製造することができる。
即ち、樹脂成分、フェノール系酸化防止剤及び光安定剤A、更には必要に応じて、無機充填剤や他の各種添加材を配合した後、これを連続混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等によって、通常、150〜200℃の温度で加熱混練して溶融し、樹脂組成物(混錬物)を調製する。続いて、この混練物を、ロール温度150〜220℃、好ましくは、160〜190℃のカレンダーロールに供給し圧延することより、所要厚さのフィルムをカレンダー加工によって得ることができる。
ここで、カレンダー装置としては、3本型、4本L型、4本逆L型、4本Z型、6本型等、適宜のものを使用すればよい。
また、上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、カレンダー加工以外にも、例えば、押出成形等、公知の成形方法によっても製造することができる。
その理由は、フィルムの厚さが薄い場合、厚さの均一なフィルムを製造するに適しているからである。
また、カレンダー成形は、成形機の構造上、多くの色、サイズ、樹脂の種類に対応し易く、小ロットにも対応し易い点でも好適である。
このように、無機充填剤を多量に含有させる場合、例えば、押出成形によって成形すると、得られるフィルムの表面が荒れ、フィルムが裂け易くなるのに対し、カレンダー加工による成形ではこのような不都合が発生せず、表面の平滑なフィルムを製造することができるからである。
そして、このような無機充填剤を50〜80重量%含有する場合のカレンダー加工の優位性は、ポリオレフィン樹脂フィルムの厚さが40〜70μm程度と薄い場合に特に顕著に認められる。
上記表面処理としては、例えば、例えば、コロナ処理(コロナ放電処理)、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理(電子線放射処理)等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン系樹脂(融点:155℃、MFR(190℃、2160g):2.0g/10minのランダムポリプロピレン樹脂)100重量部、紫外線吸収剤として2(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(アデカ社製、アデカスタブLA−81)0.4重量部、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート〕0.1重量部、無機充填剤1として炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム(充填率60%のPEマスターバッチ):PEの含有量8重量部)20重量部、無機充填剤2としてチタン顔料(充填率80%のPEマスターバッチ:PEの含有量8重量部)40重量部を混合し、バンバリーミキサーを用いて、180℃で溶融混練した。なお、得られた混練物中に含まれるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との合計量は116重量部であり、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との合計量に対するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、0.34重量%である。
次に、得られた混錬物を、直径12インチ×30Lコモンヘッド型ミキシングロール(回転速度:18rpm)に供給し、ロール温度165〜190℃で圧延し、厚さ140μmのポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
なお、アデカスタブLA−81は、下記化学式(6)で表される化合物、(ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネートである。
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を0.1重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を0.7.重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を5.8重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
ポリオレフィン樹脂として、ポリプロピレン系樹脂に代えて、ポリエチレン系樹脂(融点:130℃、MFR(190℃、2160g):0.5g/10minの高密度ポリエチレン(HDPE))を使用した以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を0.05重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を6.0重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
ヒンダードアミン系光安定剤を、アデカスタブLA−81からアデカスタブLA−68(アデカ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
なお、アデカスタブLA−68は、下記化学式(7)で表される化合物である。
ヒンダードアミン系光安定剤を、アデカスタブLA−81からアデカスタブLA−67(アデカ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
なお、アデカスタブLA−67は、下記化学式(8)で表される化合物である。
ヒンダードアミン系光安定剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
実施例及び比較例で製造したポリオレフィン樹脂フィルムについて、下記の評価を行った。
実施例及び比較例で製造したポリオレフィン樹脂フィルムのNOxガスによる変色の度合を評価した。結果を表1に示した。
なお、本評価は、JIS L 0855(窒素酸化物に対する染色堅ろう度試験方法)を参考に下記の方法に行った。
また、評価サンプルとして、実施例及び比較例で製造したポリオレフィン樹脂フィルムをそれぞれ5×5cmに切断し、試験片とした。
(2)溶液Aの調製とは別に、85%リン酸を5g計量し、20gの蒸留水にて溶解し、溶液Bを調製した。
(3)実施例1〜5及び比較例1〜5の試験片を同時に収納できるサイズで、かつ、密閉できるサイズの容器を用意し、この容器内に各試験片を同一の高さで立てかけた。
(4)溶液A及びBを混合した混合溶液を上記容器内に載置し、容器を密閉した。
(5)48時間放置した。
(6)上記容器から試験片を取り出し、水洗後、乾燥させた。
(7)分光光度計(コニカミノルタホールディングス社製、SPECTROPHOTO METER CM−3600d)を用いて変色度合(ΔE)を測定した。
JIS A 1415に準拠した試験方法(光源としてサンシャインカーボン(WS形)を使用)で評価した。結果を表1に示した。
Claims (3)
- 少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方と、
フェノール系酸化防止剤と、
ヒンダードアミン系光安定剤と、
無機充填剤と
を含有する樹脂組成物からなり、
前記ヒンダードアミン系安定剤は、下記一般式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤であり、
前記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%であり、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム及び/又は酸化チタン(TiO 2 )であり、前記無機充填剤の含有量は、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、50〜80重量%であり、
化粧シート、ステッカー又はマーキングシートに用いられ、厚さが0.04〜0.5mmであることを特徴とするポリオレフィン樹脂フィルム。 - カレンダー加工により成形された請求項1に記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
- 前記ポリエチレンは、高密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
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