JP5559073B2 - せん断変形型弾塑性ダンパー - Google Patents

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本発明は構造物の内部、あるいは外部において地震や風荷重等により水平力を負担するときに、相対変位を生じ得る構造部材間に跨る形で設置され、主にせん断力を受けることでせん断変形し、降伏するせん断変形型弾塑性ダンパーに関するものである。
板状の本体が面内方向にせん断力を受けて主にせん断変形し、せん断力の作用方向に垂直な方向の中間部が降伏するせん断変形型の弾塑性ダンパーはせん断力の作用方向に垂直な方向の両側部分において互いに分離している構造部材に接合されることで、構造部材間に跨って設置される。弾塑性ダンパーはこの設置状態で構造部材間の相対変位に伴って面内方向の水平力をせん断力として受けることで、せん断変形し、せん断降伏することにより、あるいは曲げ降伏することにより振動エネルギを吸収する(特許文献1〜3参照)。
特許文献1、2の弾塑性ダンパーはせん断変形する領域に六角形状、もしくはそれに近似した形状の孔(開口)が形成されていることで、孔以外の領域がせん断力を受けたときの曲げモーメント分布に対応した形状になるため、せん断力の作用方向に垂直な方向の全高に亘り、曲げモーメントによって一様に降伏することができる利点を持っている。いずれのダンパーも降伏領域に孔が形成されていることで、せん断力より曲げモーメントで曲げ降伏する傾向が強い。
但し、降伏領域に孔を形成した場合には、孔の形成がない場合より降伏強度が低下しているため、孔がない場合より小さい力で塑性化し易い状態にあるため、孔がない場合程度の降伏後の変形能力を期待することができない。このため、ダンパーに比較的大きい変形能力が要求されるような場合には、降伏領域の降伏強度を高める必要があるが、強度を高めるには使用鋼材量を増加させることが必要になるため、製作コストが上昇する。コストの上昇はせん断変形し、降伏する領域に対してフライス盤等による孔明け加工を要することも影響する。
一方、特許文献3のように曲げモーメントよりせん断力で降伏する傾向の強いせん断降伏型のダンパーは曲げ降伏型のダンパーより例えば開口がない分、降伏強度を高くすることができるため、接合部を除くダンパー部のみに着目すれば、使用鋼材量を増すことなく、比較的大きい変形能力を持たせることが可能である。
特開平1−190880号公報(第1図〜第6図) 特開平1−203543号公報(第1図、第6図、第9図、第10図) 特開2000−73495公報(段落0009〜0011、図1、図6)
しかしながら、せん断降伏する領域が単なる板状であるダンパーでは、構造部材への取付部(接合部)間の領域がせん断変形しようとするとき、降伏強度が高いために、接合部における曲げモーメントも接合部間の距離に比例して大きくなる。この関係で、これらの力を構造部材に伝達する上で、取付ボルトの本数を増す必要が生ずるため、接合部の領域を拡大させる結果になる等、ダンパー全体としての使用鋼材量が増すことになる。
本発明は上記背景より、塑性変形部のせん断変形が調整可能で、塑性変形能力が高く、また接合部含め、小型化した形態のせん断変形型弾塑性ダンパーを提案するものである。
請求項1に記載の発明のせん断変形型弾塑性ダンパーは、互いに分離した構造部材間に跨って設置され、面内方向のせん断力を受けてせん断変形する板状の弾塑性ダンパーであり、
板状の本体の中心部、もしくはその付近に位置し、前記せん断力を負担してせん断降伏し得る塑性変形部と、前記せん断力の作用方向に垂直な方向の、前記塑性変形部の両側に位置し、前記各構造部材に接合される接合部の3部分を備え、
前記塑性変形部の前記せん断力作用方向外側に、前記せん断力作用方向に平行に前記本体の端部にまで連続する横スリットが形成され、この横スリットの前記塑性変形部寄りの端部から連続し、少なくとも前記いずれかの接合部側へかけて縦スリットが形成され、前記両接合部において前記せん断力を受けたときに前記塑性変形部がせん断変形することを構成要件とする。
「本体の中心部」とは、本体の全体(立面)をせん断力作用方向とそれに垂直な方向の二方向に見たとき、せん断力作用方向の中間部の区間と、せん断力作用方向に垂直な方向の中間部の区間で二方向に区画された、ある面積を持った領域を指す。この本体全体を二方向に見たときの中心部の領域が「塑性変形部2」であり、図面ではハッチングで示している。せん断力作用方向は図1−(a)に矢印で示す方向(X方向)を指す。せん断力作用方向に垂直な方向はY方向になる。せん断力作用方向は弾塑性ダンパーが分離した構造部材間に跨設された状態で、構造部材間に相対変形が生じたときに、弾塑性ダンパーに本体面内のせん断力が作用する方向を指す。
「塑性変形部2のせん断力作用方向外側」とは、「塑性変形部2」から見たときに、せん断力作用方向(X方向)の両側(両外側)の領域を指す。この「塑性変形部2」に関し、せん断力作用方向両側の領域に、せん断力作用方向の横スリット4が形成され、その「塑性変形部2」寄りの端部から、せん断力作用方向に垂直な方向(Y方向)を向く縦スリット5が形成される。
縦スリット5は横スリット4の塑性変形部2寄りの端部から連続し、少なくともいずれかの接合部3(側部32)側へかけて形成される。「少なくともいずれかの(接合部)」とは、図1、図2に示すように横スリット4の塑性変形部2寄りの端部から両側の接合部3、3側へかけて形成される場合と、図7に示すようにいずれか一方の接合部3側へかけて形成される場合を含む趣旨である。
塑性変形部2のせん断力作用方向外側に、せん断力作用方向に横スリット4が形成されていることで、弾塑性ダンパーの本体1Aは図1−(a)を簡素化した形の(c)に示すように横スリット4(切り込み)の上下部分を除外して見れば、H形を寝かせた形に近い立面形状をし、寝かせたH形の中心部であるウェブに相当する部分が塑性変形部2に該当し、両側のフランジに相当する部分が接合部3、3に該当する。
弾塑性ダンパー1はせん断力作用方向に垂直な方向の両側に位置する接合部3、3において、互いに分離している構造部材10、10に接合されることで、両構造部材10、10間に、構造部材10を含む構面内で相対変位が生じたときに面内方向のせん断力を負担する。「構造部材10を含む構面内」とは、例えば図8−(a)に示すように柱・梁のフレーム内において、柱から、梁を構成する、構造部材10である梁部材(ブラケット)が張り出しているような場合に、この梁部材と柱・梁のフレームを含む構面の面内(フレームの面内)を指す。
弾塑性ダンパー1がせん断力を負担するとき、両側の接合部3、3間にせん断力作用方向に横スリット4が形成されていることで、接合部3、3間にせん断力作用方向に相対変形が生じ易くなり、接合部3、3間に相対変形が生じにくいことによる初期剛性の高さが緩和(調整)されているため、塑性変形部2に変形(せん断変形)が集中し易くなっている。
図8−(a)に示すように弾塑性ダンパー1が互いに分離した梁部材等、水平部材間に設置(跨設)される場合のように、せん断力の作用方向(X方向)が鉛直方向かそれに近い方向であるとすれば、弾塑性ダンパー1は図1−(a)に示すH形の姿勢にある本体1Aを寝かせた状態で使用されることになる。図8−(b)に示すように弾塑性ダンパー1が互いに分離した間柱等、鉛直部材間に設置(跨設)される場合のように、せん断力の作用方向(X方向)が水平方向かそれに近い方向であるとすれば、弾塑性ダンパー1は本体1AをH形の姿勢の状態にしたまま使用されることになる。
いずれの場合も、弾塑性ダンパー1の本体1Aは横スリット4(切り込み)を有するH形状をするから、塑性変形部2を挟んだ両側の接合部3、3間が互いに平行な状態を維持したまま、せん断力作用方向に相対変形しようとする傾向が強まり、その結果として塑性変形部2がせん断変形しようとする。
弾塑性ダンパー1の本体1AがH形に近い立面形状をすることで、接合部3は塑性変形部2から、せん断力作用方向に垂直な方向に連続する中心部31と、この中心部31からせん断力作用方向両側に連続し、縦スリット5、またはその延長線、あるいは後述の縦補剛材6によって中心部31から区画される側部32、32の3領域に更に区分(細分化)される。
塑性変形部2を挟んで、せん断力作用方向に垂直な方向(Y方向)の両側に位置する接合部3、3はそれぞれの側部32、32においてその両者間に形成される横スリット4によって明確に分離する。接合部3は構造部材10には主にボルト接合、もしくは溶接により接合されるが、ボルト接合される場合には、図示するように接合部3にボルト15が挿通する挿通孔3aが形成される。
横スリット4の塑性変形部2寄りの端部からは縦スリット5が少なくともいずれか一方の接合部3へかけ、連続して形成されていることで、接合部3の中心部31と側部32、32の各領域は縦スリット5を挟んで明確に区分される。この縦スリット5の形成によって接合部3の中心部31と側部32間は図1−(a)のせん断変形状態を示す図1−(d)に示すように互いに接近し、あるいは遠ざかる相対変形が生じ易くなっているため、塑性変形部2のせん断変形は一層、発生し易くなり、塑性変形部2の変形能力が高まる。
すなわち、横スリット4と、その塑性変形部2寄りの端部から連続する縦スリット5の形成によって本体1Aのせん断変形時の初期剛性が緩和、あるいは低減され、同時に塑性化後の変形能力が向上し、純粋にせん断変形により塑性変形部2を降伏させ、履歴エネルギ吸収能力を発揮させることが可能になる。
なお、図1−(d)に示すように縦スリット5の接合部3寄りの端部の内、塑性変形部2側の内周面は塑性変形部2がせん断変形し、接合部3の中心部31と側部32との間に相対変形が生じるときに、例えば方形状の塑性変形部2は平行四辺形状に変形しようとすることで、周方向に伸長し、収縮しようとするため、矩形状であれば、亀裂が生ずる可能性がある。
このことから、縦スリット5の接合部3寄りの端部の内、中心部31寄り(側部32の反対側)の内周面は図示するように曲面を有する湾曲した形状に形成されることが適切である。縦スリット5の接合部3寄りの端部の内、接合部3の側部32寄りの内周面は方形状の塑性変形部2が平行四辺形状に変形しようとするときにも、図1−(d)に示すように伸長し、収縮することがないか、少ないため、必ずしも湾曲した形状に形成される必要はない。
上記のように横スリット4と縦スリット5の形成によって塑性変形部2の変形能力が向上し、エネルギ吸収能力が向上しながらも、その能力を発揮させる上で、塑性変形部2の領域自体(区画)の立面形状が方形状であるか否か、制約されることがないため、塑性変形部2は単純な場合、方形状の立面形状に形成されていればよいことになる。この結果、塑性変形部2の設計とその周囲に配置される接合部3(中心部31と側部32)の設計(形状選択)上の自由度が増し、任意の形状(形態)に形成可能になる。
上記のように塑性変形部2を純粋にせん断変形により降伏させながらも、塑性変形部2の塑性変形能力を高める上で、塑性変形部2に対する孔明け加工の必要がないため、加工コストの上昇は生じず、孔明けが不要であることで、降伏強度を高めるための鋼材を付加する必要もない。
塑性変形部2に発生させようとする面内のせん断変形を確実(明確)に生じさせる上では、塑性変形部2を極力、面内で曲げ降伏させないことが必要になる。曲げ降伏応力度は曲げモーメントの作用方向の曲げ剛性(断面二次モーメント)に支配されるため、例えば塑性変形部2に、塑性変形部2の曲げ剛性を高めるリブ(縦補剛材6)を突設(形成)すれば(請求項2)、塑性変形部2の曲げ剛性を上昇させ、せん断降伏に先行して曲げ降伏が発生しない性能を本体1A(塑性変形部2)に与えることができる。縦補剛材6は塑性変形部2の縦スリット5寄りの位置(縦スリット5の塑性変形部2側)に、本体1Aの面外方向に突設される(請求項2)。
縦補剛材6は塑性変形部2に作用するせん断力に対して塑性変形部2を曲げ降伏させないように曲げ変形に対して補剛する働きをするから、図1−(a)に示すように縦補剛材6の中心(軸)が縦スリット5に平行な状態で、本体1Aの表面に突設されることが適切であるが、必ずしも縦スリット5に平行である必要はない。
塑性変形部2の縦スリット5寄りの部分は縦スリット5の存在により、接合部3の中心部31より変形量が大きくなり易く、中心部31より先行して降伏することが想定されるため、図1−(a)、(d)に示すように縦補剛材6は塑性変形部2の縦スリット5寄りの部分に配置されることが合理的である。また塑性変形部2内に、あるいは塑性変形部2から接合部3へ移行する境界に、せん断力作用方向に断面積の急変箇所を形成しないために、縦補剛材6は塑性変形部2から接合部3(中心部31)側へかけて(跨って)突設されることが望ましい。
塑性変形部2への縦補剛材6の突設により曲げ降伏よりせん断降伏が生じ易くなるが、同時にせん断力の作用に伴って塑性変形部2に生ずる斜張力の作用によりせん断座屈が生ずる可能性があり、せん断座屈の発生によりせん断降伏によるエネルギ吸収効果が低下する可能性がある。このせん断座屈に対しては図2−(a)、(b)に示すように塑性変形部2に、斜張力に抵抗可能な座屈補剛材7を突設(形成)することで(請求項3)、発生を抑制、あるいは防止することが可能になる。
斜張力は塑性変形部2の領域内にせん断力作用方向(X方向)に対して45度等、交差する方向に生ずるため、座屈補剛材7は塑性変形部2の領域内に、斜張力の作用方向に交差する方向に配置されればよいことになる。図2−(a)は縦補剛材6、6間に、縦補剛材6に垂直に(X方向に)配置した場合、図2−(b)は縦補剛材6、6間に、縦補剛材6に平行に(Y方向に)配置した場合である。
弾塑性ダンパー本体1Aの接合部3、3間に作用するせん断力によって生ずる塑性変形部2のせん断変形が進行すると、図1−(d)に示すように横スリット4を挟んでY方向に対向する(隣接する)接合部3、3の側部32、32が互いに平行移動しようとしながら、塑性変形部2のY方向に平行な外形線が傾斜しようとするため、X方向に対向する側部32と塑性変形部2との間の距離(縦スリット5の幅)がY方向に変化し、縦スリット5の幅が縮小しようとする。
側部32と塑性変形部2は両者間の距離(縦スリット5の幅)がなくなるまでは、互いに接近可能であるから、塑性変形部2の塑性変形が進行することが可能である。しかしながら、側部32と塑性変形部2が接触するまで塑性変形部2がせん断変形した状況では、弾塑性ダンパー1のせん断抵抗力が失われ、弾塑性ダンパー1と構造部材10との間でのせん断力の伝達が行われない状態になる可能性がある。
そこで、塑性変形部2がせん断変形し、エネルギ吸収能力を発揮した後にも弾塑性ダンパー1にせん断抵抗力を持続させるには、X方向に対向する側部32と塑性変形部2が接触するまで塑性変形部2がせん断変形する以前に、塑性変形部2のせん断変形が進行しないよう、せん断変形に対する制限機能が付加されることが望ましい。すなわち、側部32と塑性変形部2が互いに接触しないよう、両接合部3、3(両側部32、32)間のせん断変形量が制限され、側部32と塑性変形部2との間の距離(縦スリット5の幅)が保たれることが適切である。
側部32、32間のせん断変形量が制限され、側部32と塑性変形部2との間の距離(縦スリット5の幅)が保たれることで、塑性変形部2(弾塑性ダンパー1)のせん断抵抗力が維持されるため、弾塑性ダンパー1と構造部材10との間でのせん断力の伝達が行われ、構造部材10のせん断抵抗力を発揮させることが可能になる。
両接合部3、3(両側部32、32)間のせん断変形量を制限するための一手段として、縦スリット5幅の縮小に伴い、側部32と塑性変形部2との間の距離(縦スリット5の幅)が一定以下になろうとするときに、それ以上の変形を制限する何らかのストッパを接合部3に、あるいは側部32と塑性変形部2との間に配置すること(請求項4)が考えられる。
一例として、縦スリット5の塑性変形部2側に、縦スリット5に沿って縦リブ8を突設すると共に、横スリット4の接合部3側に、横スリット4を挟んだ両接合部3、3間のせん断変形時に塑性変形部2側の端部が縦リブ8に直接、もしくは間接的に接触可能な横リブ9を突設すること(請求項4)が考えられる。この場合、「縦リブ8」と「横リブ9」の組み合わせが前記した「ストッパ」に該当する。
図1に示すように前記のように塑性変形部2にその曲げ剛性を高める縦補剛材6が突設(形成)されている場合には(請求項2)、縦リブ8は図3に示すように縦補剛材6のいずれかの面側に縦補剛材6に添って配置されるが、塑性変形部2に縦補剛材6が突設(形成)されていない場合には、塑性変形部2には縦リブ8が単独で突設される。
図3に示す例のように縦リブ8が縦補剛材6に添って突設(形成)される場合、縦リブ8が縦補剛材6に添ってそれに接合等されることで、縦補剛材6の板厚方向の曲げ変形を拘束する働きをする結果として、縦補剛材6の変形を抑制するため、縦リブ8は両接合部3、3間のせん断変形を制限する作用も果たす。この場合、縦リブ8は縦補剛材6に添って縦補剛材6に一体化していればよいため、縦リブ8が縦補剛材6の幅方向(厚さ方向)のいずれかの側に配置されるかは問われない。縦リブ8はまた、縦補剛材6との一体性を確保していればよいため、塑性変形部2、あるいは本体1Aの表面に突設されるか否かも問われない。
縦リブ8が縦補剛材6に添って配置される場合、縦リブ8が縦補剛材6の幅方向(厚さ方向)のいずれかの側に配置されるかが問われないことで、両接合部3、3間のせん断変形時には横リブ9は縦リブ8と縦補剛材6のいずれかに接触する。請求項4において「横リブ9が縦リブ8に直接、もしくは間接的に接触可能」とは、縦補剛材6がない場合に、横リブ9が縦リブ8に直接、接触し、縦補剛材6がある場合には、横リブ9が縦リブ8に直接、接触する場合と、縦補剛材6直接、接触することで、縦リブ8に間接的に接触する場合があることを述べている。
請求項4では図3に示すように縦スリット5の塑性変形部2側に、縦スリット5に沿って縦リブ8が突設されると共に、横スリット4の接合部側3に、両接合部3、3間のせん断変形時に塑性変形部2側の端部が縦リブ8に直接、もしくは間接的に接触可能な横リブ9が突設されていることで、接触時以降の横リブ9の縦補剛材6、もしくは縦リブ8に対する移動が制限される。この結果、縦リブ8、もしくは縦補剛材6に接触した横リブ9が突設されている側の接合部3の他方の接合部3に対する相対変形が制限されるため、両接合部3、3間のせん断変形量が制限される。
横リブ9は塑性変形部2側の端部において両接合部3、3間のせん断変形時に、縦リブ8、もしくは縦補剛材6(以下、縦リブ8等)に接触することで、両接合部3、3間のせん断変形を抑制して塑性変形部2のせん断変形を抑制し、接触時の縦リブ8等からの反力は軸方向に負担するから、横リブ9は横スリット4に平行に、本体1Aの表面に突設されることが適切であるが、必ずしも横スリット4に平行である必要はない。
両接合部3、3間にせん断変形が生じていない状態では、横スリット4に沿い、例えば横スリット4に平行に、あるいはそれに近い状態で接合部3に突設されている横リブ9の縦リブ8側の端部は図3−(a)に示すように縦リブ8等から距離を置いた状態に置かれる。図3−(a)では横スリット4を挟んでY方向両側の接合部3、3に横リブ9、9を突設しているが、横リブ9が横スリット4に関して上側の接合部3に突設されるか、下側の接合部3に突設されるかは問われない。同様に横リブ9が塑性変形部2を挟んでX方向両側に、Y方向の中心線に関して線対称に配置されるか、片側でよいかも問われない。
塑性変形部2を挟んだX方向両側の接合部3、3間に図3−(b)に示すようなせん断変形が生じたときには、両側の接合部3、3は塑性変形部2の中心に関して点対称の形で変形するから、例えば図3−(a)において横スリット4の上側の接合部3(側部32)に形成された横リブ9が塑性変形部2を挟んだX方向両側に突設されているとすれば、中心に関して右側の横リブ9が縦リブ8等に接触するから、横スリット4の下側の接合部3(側部32)には必ずしも横リブ9が形成される必要はない。
また横リブ9は塑性変形部2の片側、例えば図3−(a)において左側にのみ形成され、横スリット4を挟んでY方向両側の接合部3、3(側部32、32)に並列して突設されている場合には、両側の接合部3、3(側部32、32)間に図3−(b)に示すようなせん断変形が生じたときに、下側の横リブ9が縦リブ8等に接触するから、塑性変形部2を挟んで右側の側部32には必ずしも横リブ9が形成される必要はない。接合部3、3(側部32、32)間のせん断変形時にはいずれかの横リブ9が縦リブ8等に接触する状態に、突設されていればよいことになる。
請求項4の他、両接合部3、3間のせん断変形量を制限することは図5−(a)、(b)に示すように縦スリット5の対向する内周面間距離を縦スリット5の長さ方向に変化させ、横スリット4側から遠い側へかけて次第に小さくすることによっても可能である(請求項5)。「縦スリット5の対向する内周面間距離」は縦スリット5の幅である。「対向する内周面」とは、縦スリット5の全周の内、せん断力作用方向(X方向)に対向する内周面を指し、「内周面間距離」はせん断力作用方向(X方向)に対向する内周面間の距離を言う。
両接合部3、3(側部32、32)間にせん断変形が生ずるとき、塑性変形部2の上側の接合部3に着目すれば、塑性変形部2と側部32との間の縦スリット5の存在により、接合部3の中心部31に関して両側に位置する側部32、32の内、一方(図1−(d)の左側)の側部32は塑性変形部2(縦リブ8等)から遠ざかり、他方(図1−(d)の右側)の側部32が塑性変形部2(縦リブ8等)に接近しようとする。
図1−(d)は塑性変形部2を挟んで下側に位置する接合部3が上側に位置する接合部3に対して右側へせん断変形しているときの様子を示しているが、せん断変形はせん断力作用方向(X方向)の正負の向きに交互に生ずるため、次の場面では下側に位置する接合部3が上側に位置する接合部3に対して左側へせん断変形する。
このように両接合部3、3(側部32、32)間のせん断変形時に、塑性変形部2に接近しようとする側(図1−(d)(の上側)の右側)の側部32と塑性変形部2との間の縦スリット5の幅である対向する内周面間距離は図1−(d)に示すように縦スリット5の長さ方向には横スリット4に近い側で遠い側に比べて小さくなるため、横スリット4に近い側で内周面同士が互いに接触し易くなる。
塑性変形部2(縦リブ8等)から遠ざかろうとする側(図1−(d)(の上側)の左側)の側部32と塑性変形部2との間の縦スリット5の幅である対向する内周面間距離は図1−(d)に示すように縦スリット5の長さ方向には横スリット4に近い側で遠い側に比べて大きくなり、横スリット4から縦スリット5の端部までの区間で内周面間に距離が確保されているため、内周面同士は接触しない。
このことから、縦スリット5の対向する内周面間距離を横スリット4側から遠い側へかけて次第に小さくすることで、塑性変形部2に接近しようとする側(図1−(d)中、上側の右側)の側部32と塑性変形部2との間において、縦スリット5の対向する内周面同士が全長、あるいは少なくとも一定区間に亘って一様に接触する状態を得ることが可能になる。縦スリット5の対向する内周面同士が少なくとも一定区間に亘って一様に接触することで、その状態から更に縦スリット5の内周面間距離が縮小することはないため、内周面同士が接触した状態以降の塑性変形部2のせん断変形が阻止されるため、両接合部3、3間のせん断変形量(塑性変形部2のせん断変形量)が制限される。
この結果、塑性変形部2がせん断変形し、エネルギ吸収能力を発揮した後にも弾塑性ダンパー1にせん断抵抗力を持続させることが可能になり、弾塑性ダンパー1と構造部材10との間でのせん断力の伝達が行われ、構造部材10のせん断抵抗力を発揮させることが可能になる。
請求項4、もしくは請求項5によれば、接合部3、3間のせん断変形量が制限されることで、ある構面内、例えば柱・梁のフレーム内にせん断剛性の相違する複数個の弾塑性ダンパー1が配置される場合に、これら複数個の弾塑性ダンパー1をせん断剛性の小さい順に段階的に機能させることが可能になる。
例えば柱・梁のフレーム内に、せん断剛性の相違する複数個のせん断変形型の弾塑性ダンパーを配置したとしても、従来のように各弾塑性ダンパーのせん断変形量に制限がなければ、最初にせん断降伏した、せん断剛性の最も小さい弾塑性ダンパーが変形しきるまで変形しながらせん断力を負担するため、その弾塑性ダンパーよりせん断剛性の高い弾塑性ダンパーを降伏させることにはならない。結局、複数個の弾塑性ダンパーを一フレーム内に配置しても、これらを段階的に降伏させることはできない。
すなわち、従来の弾塑性ダンパーを一フレーム内に複数個、配置しても、全弾塑性ダンパーが機能する訳ではないため、複数個分のエネルギ吸収効果を期待することはできず、一フレーム単位では1個の弾塑性ダンパーを配置したことと違いがない。従って、例えばフレームの梁(梁部材)に弾塑性ダンパーを設置するとすれば、梁の中央部に1個の弾塑性ダンパーを設置することになる。
梁(梁部材)は現場での作業性の面より、柱間に亘る全長の内、予め柱(柱部材)に一体化させられる柱側の一部区間であるブラケットと、両ブラケット間に配置される中間区間である梁部材とに分割されることが多く、梁部材は現場でブラケットに接合される。この場合、弾塑性ダンパーは中間区間の梁部材に組み込まれることになるため、梁部材自体が2分割される必要があるが、梁部材と両側のブラケットとは双方のウェブ間及びフランジ間に跨る継手部材によって接合される。
これに対し、請求項4、5ではせん断変形量が制限されていることで、図9−(a)〜(c)に示すようにせん断剛性の相違する(せん断変形量が制限された)複数個の弾塑性ダンパーを一フレーム内に配置したとき、最もせん断剛性の小さい弾塑性ダンパーのせん断変形の変形量が制限された時点で、その弾塑性ダンパーはそれ以上の変形が進行しなくなるため、次にせん断剛性の小さい弾塑性ダンパーがせん断変形を開始し、降伏することになる。このようにせん断剛性の相違する複数個の弾塑性ダンパーが一フレーム内に設置されることで、せん断剛性の小さい順に段階的に機能することが可能になる。
このことから、請求項4、5では従来はエネルギ吸収効果を期待する上で、意味を持たなかった一フレーム内への複数個の弾塑性ダンパーの配置が意味を持つにようになり、複数個の配置により全弾塑性ダンパーを有効に機能させ、エネルギ効果を発揮させることが可能になる。
弾塑性ダンパー1は前記のように接合部3、3において構造部材10、10にボルト15等により接合されるが、弾塑性ダンパー1の面内方向の構造部材10、10間の相対変形時に弾塑性ダンパー1が面内せん断力を受けるよう、分離した構造部材10、10間に跨り、構造部材10、10の表面に重なった状態で接合される。このことから、弾塑性ダンパー1が構造部材10、10の表面に直接重なっている場合には、弾塑性ダンパー1の構造部材10、10への接合状態で構造部材10、10間に相対変形が生じたときに、接触面に摩擦力が作用するため、摩擦力が弾塑性ダンパー1と構造部材10間の相対変形を阻害する可能性がある。
弾塑性ダンパー1と構造部材10間の相対変形時、各接合部3はそれぞれが接合されている各構造部材10と共に挙動するから、構造部材10に直接接合されない塑性変形部2は両構造部材10、10に対して相対変形しようとすることでせん断変形するため、塑性変形部2が両構造部材10、10と接触した状態にあれば、塑性変形部2のせん断変形が阻害される可能性がある。例えば構造部材10が塑性変形部2と直接接触しない形状をしているか、接触しない切り欠きを有するような場合には、塑性変形部2と両構造部材10、10が非接触状態になるから、塑性変形部2のせん断変形が摩擦力によって阻害されることはない。
従って塑性変形部2が両構造部材10、10と接触状態になる場合に、塑性変形部2のせん断変形が阻害されないようにする上では、塑性変形部2と両構造部材10、10が非接触状態にすることが必要になる。そこで、接合部3の片面に、構造部材10との間に挟み込まれるフィラー33を付属させる、もしくは接着させれば(請求項6)、塑性変形部2と両構造部材10、10間に空隙が生まれ、両者を非接触状態にすることができるため、塑性変形部2のせん断変形を自由に生じさせることができ、せん断変形によるエネルギ吸収効果を向上させることが可能になる。「接合部3の片面にフィラー33が付属する」とは、フィラー33が仮接着等により接合部3の片面に仮止めされているようなことを言う。
フィラー33は塑性変形部2と両構造部材10、10間に空隙を形成する役目を持つため、弾塑性ダンパー1の全面を覆う面積を持つ必要はなく、少なくとも構造部材10に接合される接合部3の領域内に配置されれば足りる。
板状の本体が、せん断力によりせん断降伏し得る中心部の塑性変形部と、せん断力の作用方向に垂直な方向の、塑性変形部の両側に位置し、各構造部材に接合される接合部の3部分からなり、塑性変形部のせん断力作用方向外側にその方向に平行に本体の端部にまで連続する横スリットが形成され、この横スリットの塑性変形部寄りの端部から連続し、各接合部へかけて縦スリットが形成されているため、接合部間にせん断力作用方向に相対変形が生じ易くすることができる。この結果、接合部間に相対変形が生じにくいことによる初期剛性の高さを緩和(調整)することができ、塑性変形部に変形を集中させ易くすることができる。
特に横スリットの塑性変形部寄りの端部からは縦スリットが各接合部へかけ、連続して形成されていることで、接合部の中心部と側部の各領域は縦スリットを挟んで明確に区分され、縦スリットの形成によって接合部の中心部と側部間は互いに接近し、あるいは遠ざかる相対変形が生じ易くなっているため、塑性変形部のせん断変形は一層、発生し易くなり、塑性変形部の変形能力が高まる。
結果として、横スリットと、その塑性変形部寄りの端部から連続する縦スリットの形成によってせん断変形時の初期剛性が緩和、あるいは低減され、同時に塑性化後の変形能力が向上し、純粋にせん断変形により塑性変形部を降伏させ、履歴エネルギ吸収能力を発揮させることが可能である。
(a)は横スリットと縦スリットが入れられた本体に縦補剛材を突設した場合の弾塑性ダンパーの製作例を示したせん断変形前の立面図、(b)は塑性変形部がせん断力を受けるときに塑性変形部に生ずる曲げモーメントの分布状態を示した曲げモーメント図、(c)は弾塑性ダンパーの立面形状を簡素化して示した立面図、(d)は(a)の弾塑性ダンパーがせん断変形したときの様子を示した立面図である。 (a)は図1に示す弾塑性ダンパーの縦補剛材間に座屈補剛材を横向きに突設した場合の製作例を示した立面図、(b)は図1に示す弾塑性ダンパーの縦補剛材間に座屈補剛材を縦向きに突設した場合の製作例を示した立面図である。 (a)は図1に示す弾塑性ダンパーの本体に対し、縦リブと横リブを突設した場合の製作例を示した立面図、(b)は(a)の弾塑性ダンパーがせん断変形したときの様子を示した立面図である。 図3−(a)のx−x線断面図である。 (a)は図1に示す弾塑性ダンパーの本体における縦スリットの対向する内周面間距離を横スリット側から遠い側へかけて次第に小さくした場合の製作例を示した立面図、(b)は(a)の弾塑性ダンパーがせん断変形したときの様子を示した立面図である。 (a)はフィラーの形成例を示した立面図、(b)は(a)のフィラーを弾塑性ダンパーと構造部材との間に介在させたときの様子を示した立面図である。 横スリットの塑性変形部寄りの端部からいずれか一方の接合部側へかけて縦スリットを形成した場合の弾塑性ダンパーの製作例を示したせん断変形前の立面図である。 図1、図2に示す弾塑性ダンパーの構造部材への設置(接合)例を示した立面図であり、(a)は構造部材が分離した梁部材の場合、(b)は分離した間柱の場合、(c)はブレースと梁部材の場合である。 図3〜図5に示す弾塑性ダンパーの構造部材への設置(接合)例を示した立面図であり、(a)は構造部材が分離した梁部材の場合、(b)は分離した間柱の場合、(c)は分離した梁部材の場合である。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1−(a)は互いに分離した構造部材10、10間に跨って設置され、面内方向のせん断力を受けてせん断変形する、本体1Aが板状のせん断変形型弾塑性ダンパー(以下、ダンパー)1の製作例を、(d)は(a)に示すせん断変形前のダンパー1のせん断変形後の様子を示している。構造部材10、10は直接、力の伝達がされない状態に互いに分離していればよく、部位は問われない。具体的には分離した梁部材同士、柱部材同士、間柱同士の他、耐震壁やブレースと柱・梁のフレーム同士等がある。
図1−(a)等はダンパー1に作用するせん断力の作用方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)を上下に向けた状態で示しているが、構造部材10、10へのダンパー1の設置状態で水平方向にせん断力が作用するとは必ずしも限らず、図8−(a)、図9−(a)、(c)に示すように設置状態で鉛直方向に作用することもある。
例えば図8−(a)に示すように構造部材10が水平方向に隣接する柱11、11間に架設され、互いに分離した梁(梁部材)12、12である場合には、柱11と梁12からなるフレームの層間変形時に、構造部材10、10(梁(梁部材)12、12)間には鉛直方向に相対変形が生じ、せん断力の作用方向は鉛直方向になるから、ダンパー1は図1−(a)等の向きの状態から90度、回転させた状態で構造部材10、10間に設置される。
図8−(b)に示すように構造部材10が鉛直方向に隣接する梁12、12間に架設され、互いに分離した間柱13、13である場合には、フレームの層間変形時に構造部材10、10(間柱13、13)間に水平方向に相対変形が生じ、せん断力の作用方向は水平方向になるから、ダンパー1は図1−(a)等の向きのまま、構造部材10、10間に設置される。
図8−(c)は一方の構造部材10がブレース14で、他方の構造部材10がフレームを構成する梁12である場合のダンパー1の設置状態を示しているが、この場合、構造部材10、10間には水平方向に相対変形が生じるから、ダンパー1は図8−(b)の場合と同様、図1−(a)等の状態のまま、構造部材10、10間に設置される。ブレース14が柱11にダンパー1を介して接合される場合には、相対変形は鉛直方向になるから、ダンパー1は図8−(a)と同じ向きで使用される。
ダンパー1の本体1Aは図1−(a)等に示すように本体1Aの中心部、もしくはその付近に位置し、矢印で示すX方向のせん断力を負担してせん断降伏し得る塑性変形部2と、せん断力の作用方向に垂直な方向(Y方向)の、塑性変形2部の両側に位置し、各構造部材10に接合される接合部3、3の3部分を備える。図1−(a)、(d)中、本体1Aのハッチングを入れた領域が塑性変形部2を示している。図面では製作のし易さと構造部材10への接合のし易さから、本体1Aの外形を方形状に形成しているが、本体1Aの外形形状は任意であり、多角形状、楕円形状、円形状等にも形成される。
塑性変形部2のせん断力作用方向(X方向)外側に、せん断力作用方向(X方向)に平行に本体1Aの端部にまで連続する横スリット4が形成される。横スリット4はせん断力作用方向に垂直な方向(Y方向)には、塑性変形部2にせん断変形を生じさせる上で、塑性変形部2の中心部位置、あるいはその付近から形成され、原則としては塑性変形部2の(Y方向の)高さの範囲内に形成される。図7は塑性変形部2のY方向の境界位置に横スリット4を形成した場合を示している。
この横スリット4の塑性変形部2寄りの端部から連続し、少なくともいずれかの接合部3側へかけて縦スリット5が形成される。図1は縦スリット5を横スリット4の塑性変形部2寄りの端部から両接合部3、3へかけて、X方向の中心線に関して線対称に形成した場合の例を示しているが、この場合、縦スリット5は横スリット4の塑性変形部2側の端部から、せん断力作用方向に垂直な方向(Y方向)には、接合部3の中間部まで、Y方向両側の接合部3、3に対して均等な長さで形成される。
図7は縦スリット5を塑性変形部2寄りの端部からY方向の一方の接合部3側(図面での上側)へかけて形成した場合の例を示している。この場合、横スリット4の形成位置がY方向の中央に関して一方の接合部3側(下側)に寄る関係で、本体1Aの中央部に対した他方の接合部3側(上側)に寄った位置に塑性変形部2を配置している。図7においても、ハッチングを入れた領域が塑性変形部2を示している。
図1、図7のいずれの例においても、縦スリット5の長さ方向両端位置が、塑性変形部2に生ずるせん断変形を区画する基準の位置になり、縦スリット5の長さ方向両端位置を通る、X方向に平行な線に沿った領域で塑性変形部2にせん断変形が生じようとするため、縦スリット5の両端は塑性変形部2のY方向の境界位置に揃えられ、縦スリット5は塑性変形部2(Y方向の)高さの範囲に亘る長さを持つ。
図7の例では塑性変形部2が本体1Aの中央部に対した一方の接合部3側に寄った位置に配置されていることに伴い、Y方向両側の接合部3、3の形状が相違し、一方側(上側)の接合部3における後述の中心部31の高さが他方側(下側)の接合部3における中心部31の高さより小さく、一方側の接合部3における後述の側部32の高さが他方側の接合部3における側部32の高さより大きくなっている。
横スリット4の塑性変形部2寄りの端部に縦スリット5が形成されることで、接合部3は塑性変形部2から、図1−(a)に矢印で示すせん断力作用方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に連続する中心部31と、この中心部31からせん断力作用方向(X方向)両側に連続する側部32、32の3領域に更に区分(細分化)される。
Y方向両側の接合部3、3を区切る横スリット4と、各接合部3を中心部31と側部32、32に区切る縦スリット5の形成によってダンパー1は両接合部3、3においてX方向のせん断力を受けたときに塑性変形部2がせん断変形する。ダンパー1のせん断変形時、例えば方形状(長方形状)の塑性変形部2は図1−(d)に示すように平行四辺形状にせん断変形し、長方形の状態で縦向きの辺は変形後に斜辺になる。
ダンパー本体1Aを立面上、せん断力作用方向(X方向)とそれに垂直な方向(Y方向)の二方向に見たときの中心部の領域が塑性変形部2であり、塑性変形部2のせん断力作用方向(X方向)両側の領域が接合部3、3になる。塑性変形部2から見れば、ダンパー本体1Aは塑性変形部2を中心部としてせん断力作用方向(X方向)両側と、それに垂直な方向(Y方向)の両側に接合部3、3が存在する形をしている。
接合部3は構造部材10には主にボルト接合、もしくは溶接により接合されるが、図面ではボルト15により接合する場合を想定し、接合部3にボルト15が挿通する挿通孔3aを形成しているため、挿通孔3aが形成されている領域が接合部3に該当している。接合部3はY方向に中心部31と両側の側部32に区分されているため、挿通孔3aは中心部31と側部32に形成される。本体1Aの中心部である塑性変形部2に関しては、Y方向両側に接合部3の中心部31、31が位置し、この各中心部31に関し、X方向両側に側部32、32が位置する。
各接合部3の側部32はせん断力作用方向に垂直な方向(Y方向)には横スリット4を挟んで互いに隣接し、せん断力作用方向(X方向)には縦スリット5を挟んで塑性変形部2と隣接するため、塑性変形部2はせん断力作用方向に垂直な方向(Y方向)には接合部3の中心部31、31に挟まれ、せん断力作用方向(X方向)には接合部3の側部32、32に挟まれた形になっている。
図1−(a)に示す状態からダンパー1にX方向のせん断力が作用したとき、縦スリット5の存在によりY方向には、図1−(d)に示すように塑性変形部2と側部32との間に相対変形が生じ得る状態にあり、横スリット4の存在により横スリット4を挟んで隣接する側部32、32間にX方向に相対変形が生じ得る状態にある。
塑性変形部2と側部32との間に生じる相対変形は縦スリット5の、X方向に対向する内周面間距離の範囲で、対向する内周面同士が接触するまで可能であり、その相対変形が可能な範囲で、横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32間にもX方向に相対変形が生じる。
Y方向に隣接する側部32、32間に生ずるX方向の相対変形に伴い、図1−(d)に示すようにX方向に対向する側部32と塑性変形部2との間の距離(縦スリット5の幅)が縮小しようとするため、Y方向に隣接する側部32、32間のX方向の相対変形は理論上、このX方向に対向する側部32と塑性変形部2との間(縦スリット5)の対向する内周面同士が互いに接触するまで可能である。よって縦スリット5のX方向に対向する内周面同士が接触した時点で、塑性変形部2と側部32との間に生じる相対変形が止まり、それ以上の変形が制限されるため、隣接する側部32、32間のX方向の相対変形も制限される。
結局、X方向に対向する塑性変形部2と側部32との間に生じるX方向の相対変形、並びに隣接する側部32、32間に生じるX方向の相対変形は縦スリット5のX方向に対向する内周面同士が接触するまで増大し得るが、縦スリット5の内周面同士が接触した時点で、相対変形が停止することになる。塑性変形部2と側部32との間に生じる相対変形と、隣接する側部32、32間に生じる相対変形はダンパー1全体のせん断変形でもある。
図1−(a)に示す平常状態から、ダンパー1がX方向の矢印で示す向きにせん断力を受け、せん断変形を起こしたときの様子を(d)に示す。(d)に示すようにダンパー1のせん断変形に伴い、塑性変形部2に関して下側(上側)の接合部3が上側(下側)の接合部3に対して矢印で示す向き(矢印の先端側)に相対変形する。
このとき、接合部3の、せん断力が作用する向き(矢印の先端側)に位置する側部32と塑性変形部2との間の縦スリット5の対向する内周面間距離は拡大するが、接合部3の、せん断力が作用する向きと逆側(矢印の根本側)に位置する側部32と塑性変形部2との間の縦スリット5の対向する内周面間距離は縮小する。
ここで、接合部3の、せん断力が作用する向き(矢印の先端側)に位置する側部32は図1−(d)では塑性変形部2に関して上側の左側に位置する側部32と、下側の右側に位置する側部32を指し、接合部3の、せん断力が作用する向きと逆側(矢印の根本側)に位置する側部32は塑性変形部2に関して上側の右側に位置する側部32と、下側の左側に位置する側部32を指す。
図1−(d)に示す変形状態をより詳しく言えば、塑性変形部2が図1−(d)に示すようにせん断変形するとき、塑性変形部2を区画する線になる縦スリット5の塑性変形部2側の内周面は(a)に示す変形前の、Y方向に平行(X方向に垂直)な状態から傾斜する。
一方、その塑性変形部2側の内周面に対向する側部32側の内周面は塑性変形部2のせん断変形後も変形前の状態(角度)を維持しながら、横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32間にX方向に相対変形が生ずる。この側部32、32間のX方向の相対変形はほぼ、互いに平行なまま、逆向きに移動(平行移動)するように生ずる。この側部32、32間のX方向の相対変形時に相対的に塑性変形部2側へ接近する側の側部32(上側の右側に位置する側部32と、下側の左側に位置する側部32)の内周面が横スリット4側で塑性変形部2側の内周面に接近する。
従って縦スリット5の全長の内、Y方向に隣接する側部32、32間の相対変形時に相対的に塑性変形部2側へ接近する側の側部32の内周面が横スリット4寄りで塑性変形部2側の内周面に接触し易いから、例えば図1−(a)に示すように縦スリット5の対向する内周面が互いに平行で、Y方向に平行である場合には、塑性変形部2側へ接近する側の側部32の内周面の内、図1−(d)に示すように横スリット4寄りの部分(区間)が他の部分に先行して塑性変形部2側の内周面に接触しようとする。
ダンパー1のせん断変形時に、縦スリット5の対向する内周面間距離が縮小する側に位置する側部32と塑性変形部2との間では、縦スリット5の対向する内周面の内、側部32の内周面は塑性変形部2のせん断変形時にも傾斜しないにも拘らず、塑性変形部2の内周面は前記のように傾斜するため、塑性変形部2の内周面と側部32の内周面との間の距離が縮まろうとする。
このようにダンパー1のせん断変形時には実質的に塑性変形部2がせん断変形し、その外形線の内、Y方向に平行な辺が傾斜することから、縦スリット5の端部(横スリット4の反対側の端部)に変形が集中し、端部の内周面に応力が集中することになる。
特に塑性変形部2のせん断変形により縦スリット5の端部の内、塑性変形部2側の内周面に変形が集中するため、その部分への応力集中による亀裂、破断を回避する目的で、図面では縦スリット5の端部の塑性変形部2側の内周面を湾曲させ、立面上は曲線状に形成している。縦スリット5の端部を湾曲させる場合の湾曲形状は問われず、立面上は円弧状、楕円弧状、円形状等に形成される。
図1−(a)はまた、塑性変形部2の面内のせん断変形を生じさせ易くする目的で、塑性変形部2の縦スリット5寄りの位置に、本体1Aの表面に、塑性変形部2の曲げ剛性を高める縦補剛材6を突設した場合の製作例も示している。「塑性変形部2の縦スリット5寄りの位置」は「縦スリット5の塑性変形部2側へ寄った位置」とも言い換えられる。塑性変形部2の表面への縦補剛材6の突設により塑性変形部2を含む本体1Aの面内の曲げモーメントに対する曲げ剛性が高まるため、塑性変形部2を面内での曲げ降伏をせん断降伏に先行させない状態が得られる。
図1−(a)では縦補剛材6が板状であることから、縦スリット5に平行に縦補剛材6を突設しているが、塑性変形部2のX方向を向く中心線に関して均等に効果を発揮させる上では、縦補剛材6が板状であるか否かに関係なく、縦補剛材6の中心線が縦スリット5に平行であればよい。
ダンパー1に作用するせん断力により本体1A、特に塑性変形部2に生ずる曲げモーメントは図1−(b)に示すようにY方向に関してX方向両側に三角形状に分布するため、本体1A面内のX方向の曲げ剛性(断面二次モーメント)を上昇させながら、せん断降伏を阻害しない形状になるように、縦補剛材6が配置されることが合理的である。図面では本体1Aの片面に関して板状の縦補剛材6をY方向に向けて本体1Aに溶接等により接合しているが、縦補剛材6の形態と向きは任意である。
縦補剛材6がない状態の塑性変形部2のせん断変形とせん断降伏はせん断剛性の低下する縦スリット5、5側で生じ易いから、縦補剛材6の付加によって塑性変形部2のせん断剛性を補う上では、縦補剛材6は塑性変形部2の縦スリット5、5寄りに配置されることが望ましい。縦補剛材6はまた、本体1Aの表面に突設されることで、塑性変形部2に限らず、本体1A全体の曲げ剛性とせん断剛性を高める働きもするため、図面では縦補剛材6を塑性変形部2から接合部3(中心部31)側へかけて突設している。
図2−(a)、(b)はダンパー1へのせん断力の作用に伴って塑性変形部2にせん断力の作用方向に対し、45度等、交差した方向に生ずる斜張力に抵抗可能な座屈補剛材7を塑性変形部2に突設した場合の例を示している。(a)はせん断力作用方向(X方向)に平行に板状の座屈補剛材7を突設した場合、(b)はせん断力作用方向に垂直な方向(Y方向)に平行に板状の座屈補剛材7を突設した場合である。座屈補剛材7の材軸が斜張力の作用方向に交差する方向を向いていれば、座屈補剛材7は斜張力に抵抗可能であるため、座屈補剛材7の形態と材軸の向き及び数は任意である。
図3−(a)は縦スリット5の塑性変形部2側に、縦スリット5に沿って縦リブ8を突設すると共に、横スリット4の接合部3側に、横スリット4を挟んだ両接合部3、3間のせん断変形時に塑性変形部2側の端部が前記縦リブ8に直接、もしくは間接的に接触可能な横リブ9を突設した合の例を示している。この例では両接合部3、3間のせん断変形時に横リブ9を縦リブ8に直接、もしくは間接的に接触させることで、そのせん断変形の進行を阻止する働きを横リブ9と縦リブ8に持たせている。
図3ではY方向両側の接合部3、3の中心部31、31と塑性変形部2に亘って本体1Aに突設されている縦補剛材6の少なくとも片面に添わせるように縦リブ8を突設した場合の例を示しているが、縦リブ8は縦補剛材6とは独立して突設されることもあるため、図3中の縦補剛材6は不在の場合もある。縦補剛材6の少なくとも片面に縦リブ8が添設された図3の例では、縦リブ8は縦補剛材6の曲げ変形を拘束し、その変形を抑制する役目も果たす。図3−(b)は(a)に示すダンパー1の塑性変形部2がせん断変形したときの様子を示している。図4は図3−(a)のx−x線の断面を示し、縦補剛材6と縦リブ8の関係を示している。
縦リブ8は両接合部3、3間のせん断変形による縦スリット5の内周面間距離(縦スリット5の幅)の変化時に横リブ9が直接、もしくは間接的に接触し得る位置に配置され、本体1A等に溶接等により固定される。縦リブ8が縦補剛材6に添設された図3の例では、縦リブ8は縦補剛材6の厚さ方向の少なくとも縦スリット5側に添えられるように配置される。この場合、縦リブ8は縦補剛材6には溶接、ボルト、接着等により接合されていればよく、必ずしも本体1Aに溶接等される必要はない。但し、縦リブ8は縦補剛材6に対する補剛と共に、本体1Aに対する補剛効果も持つため、本体1Aにも溶接等により接合されていることが適切である。
縦リブ8は横リブ9が直接、もしくは間接的に接触することで、両接合部3、3間のせん断変形の進行を阻止する働きをするが、図3の例では、縦リブ8が縦補剛材6に添い、重なるように、または重なって縦補剛材6に接合されることで、縦補剛材6の板厚を増し、縦補剛材6の変形を抑制する結果としても、両接合部3、3間のせん断変形を制限する。図面では板状である縦補剛材6の形態に対応し、板状の縦リブ8を使用しているが、縦リブ8の形態も任意である。
図3の例では、縦リブ8は縦補剛材6の少なくとも縦スリット5側に配置されるから、縦補剛材6は図3、図4に示すように縦スリット5より塑性変形部2側へ寄った位置に配置される。それに伴い、縦補剛材6と縦スリット5間の空間を利用し、縦補剛材6の縦スリット5側に縦リブ8を配置し、縦スリット5と縦補剛材6との間の隙間に縦リブ8を納めている。縦リブ8は縦補剛材6に関して縦スリット5の反対側にも配置されることがあり、その場合、横リブ9は縦リブ8には縦補剛材6を介して間接的に接触することになる。いずれの場合も、縦リブ8は縦補剛材6に重なる区間の曲げ剛性を高める働きをし、縦補剛材6の変形を抑制する。
前記のように横リブ9は横スリット4の接合部3側に、両接合部3、3間のせん断変形時に縦リブ8側の端部が縦リブ8に、もしくは縦補剛材6に接触可能に突設される。図3−(a)では横リブ9が板状であることから、横リブ9を横スリット4に平行に突設しているが、横リブ9はその長さ方向(軸方向)に、縦リブ8に接触したときの反力を受けることから、長さ方向が反力の作用方向、またはそれに近い方向を向いていればよいため、必ずしも横スリット4に平行である必要はない。
横リブ9は図3−(b)に示すように上側(下側)の接合部3の内、塑性変形部2を挟んで両側に位置する側部32と、横スリット4を挟んでY方向に隣接する下側(上側)の接合部3の側部32との間の相対変形時に、縦スリット5側の端部が縦リブ8に接触することで、横スリット4を挟んだ両側部32、32間の相対変形を制限する。
また横スリット4を挟んだ両側部32、32間のX方向の相対変形(せん断変形)は正負の向きに交互に生ずるから、横リブ9は横スリット4を挟んだ一方側(上側、もしくは下側)の接合部3の両側の側部32、32に突設されていればよく、必ずしも図3に示すように横スリット4を挟んだ両側の接合部3、3の各側部32に突設されている必要はない。
同様の理由から、塑性変形部2(中心部31)を挟んで両側に位置する側部32、32の内、片側で横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32の双方に横リブ9、9が突設されていれば、横スリット4を挟んだ両側部32、32間のX方向正負の相対変形時に各横リブ9が交互に縦リブ8に接触する状態が得られるため、横リブ9は少なくともX方向片側で、横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32に突設されていればよい。
図3−(a)に示す状態から(b)に示すように横スリット4を挟んだ側部32、32間の相対変形が生じ、塑性変形部2がせん断変形したときには、相対的に上側の接合部3に対して矢印の側へ相対変形した下側の接合部3の側部32、32の内、相対変形時に縦リブ8、もしくは縦補剛材6に接近する側である左側の側部32に突設されている横リブ9の縦リブ8側の端部が縦リブ8、もしくは縦補剛材6に接触する。また上側の接合部3の側部32、32の内、相対変形時に縦リブ8、もしくは縦補剛材6に接近する側である右側の側部32に突設されている横リブ9の縦リブ8側の端部が縦リブ8、もしくは縦補剛材6に接触する。
前記のように縦スリット5のX方向に対向する内周面が互いに平行で、Y方向に平行である場合、縦スリット5内周面の全長の内、横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32間の相対変形時には、図3−(a)、図3−(b)に示すように相対的に塑性変形部2側へ接近する側の側部32の内周面が横スリット4寄りで塑性変形部2側の内周面に接触しようとするため、横リブ9は横スリット4に近い側に位置する程、縦リブ8、もしくは縦補剛材6に接触し易い。この関係で、図3−(a)では横リブ9を横スリット4に近い側に配置している。
縦スリット5内周面の全長の内、Y方向に隣接する側部32、32間の相対変形時に相対的に塑性変形部2側へ接近する側の側部32の内周面が横スリット4側で塑性変形部2側の内周面に接触しようとする関係から、横リブ9の横スリット4からの距離を調整することで、横リブ9の縦リブ8、もしくは縦補剛材6への接触の時期を自由に制御することが可能である。
図面ではまた、横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32間の相対変形時に、縦スリット5の対向する内周面同士が接触する以前に横リブ9が縦リブ8、もしくは縦補剛材6に接触するよう、図3、図4に示すように横リブ9の縦リブ8側の先端部を側部32から縦リブ8側へ突出させている。
図5−(a)は縦スリット5の幅である対向する内周面間距離が横スリット4側から遠い側へかけて次第に小さくなるように、縦スリット5(内周面)の形状を形成した場合の例を示す。前記したように塑性変形部2が図5−(b)に示すようにせん断変形するとき、塑性変形部2を区画する線になる縦スリット5の塑性変形部2側の内周面は変形前のY方向に平行な状態から傾斜する。
一方、縦スリット5の塑性変形部2側の内周面に対向する側部32側の内周面は塑性変形部2のせん断変形後も変形前の状態(角度)を維持しながら、すなわちY方向に平行なまま、横スリット4を挟んだ側部32、32間には相対変形が生ずる。この側部32、32間の相対変形時に相対的に塑性変形部2側へ接近する側の側部32の内周面が横スリット4側で塑性変形部2側の内周面に接近する。具体的には横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32の内、一方(上左と下右)の側部32の縦スリット5の内周面は塑性変形部2側の内周面から遠ざかり、他方(上右と下左)の側部32の内周面は塑性変形部2側の内周面に接近する。
このため、縦スリット5の対向する内周面間距離が横スリット4側から遠い側へかけて次第に小さくなる関係にあれば、塑性変形部2のせん断変形時(側部32、32間の相対変形時)に図5−(b)に示すように縦スリット5の側部32側の内周面が全長に亘って一様に塑性変形部2側の内周面に接触する状態を得ることができる。
前記のように横スリット4を挟んでY方向に隣接する側部32、32間の相対変形時には、接合部3の、せん断力が作用する向きと逆側(矢印の根本側)に位置する側部32と塑性変形部2との間の縦スリット5の対向する内周面間距離が縮小するから、図5−(b)に示すように塑性変形部2に関して上側の右側に位置する側部32、及び下側の左側に位置する側部32の各内周面と、それにX方向に対向する塑性変形部2側の内周面同士が互いに接触した状態になる。
ダンパー1のせん断変形は正負の向きに交互に生ずるから、図5−(b)と逆向きにせん断変形が生じたときには、塑性変形部2に関して上側の左側に位置する側部32、及び下側の右側に位置する側部32の各内周面と、それにX方向に対向する塑性変形部2側の内周面同士が互いに接触した状態になる。
図6−(a)はダンパー1の接合部3の片面に、構造部材10との間に挟み込まれるフィラー33を付属させた、もしくは接着させた場合のフィラー33の形成例を、(b)はフィラー33とダンパー1とが重なった状態での両者の位置関係と、構造部材10との関係を示す。フィラー33は塑性変形部2と構造部材10との間に空隙を形成する役目を果たせればよいため、少なくとも構造部材10に接合される接合部3の範囲内に配置されればよい。図面ではフィラー33をダンパー1の各接合部3の形に対応した形に形成し、1枚のダンパー1に付き、2枚のフィラー33、33を使用しているが、フィラー33の形状と枚数は図示する例には限られない。
フィラー33は接合部3のボルト15での構造部材10への接合状態で、塑性変形部2が構造部材10の表面から浮いた状態になり、両者が非接触状態に保たれる形状であればよい。図示するように1枚のフィラー33が各接合部3の全面に重なる大きさと形状を有する場合には、接合部3の挿通孔3aに対応した位置に、挿通孔3aを挿通するボルト15が挿通する挿通孔33aが形成される。
前記の通り、図8−(a)は図1、もしくは図2に示すダンパー1をその向きから90度、回転させた状態で互いに分離した、構造部材10としての梁(梁部材)12、12間に跨設した場合の例を示している。柱11と梁12からなるフレームの層間変形時には、梁(梁部材)12、12のウェブ間に(フレームの構面内で)せん断変形が生じようとするため、ダンパー1はフレームの構面内方向に面内方向を向けた状態で、例えば両梁(梁部材)12、12のウェブに重なってボルト15等により接合される。図面では構造部材10(梁12のウェブ等)の片面にダンパー1を重ねて接合している様子を示しているが、ダンパー1は構造部材10(梁12のウェブ等)の両面に重なって接合されることもある。
図8−(b)は図1、もしくは図2に示すダンパー1をその向きのまま、互いに分離した、構造部材10としての間柱13、13間に跨設した場合の例を示している。この場合、フレームの層間変形時には、間柱13、13のウェブ間に(フレームの構面内で)せん断変形が生じようとするため、ダンパー1は図8−(a)と同様にフレームの構面内方向に面内方向を向けた状態で、例えば両間柱13、13のウェブに重なってボルト15等により接合される。
図8−(c)は図1、もしくは図2に示すダンパー1をその向きのまま、互いに分離した、構造部材10としてのブレース14と、構造部材10としてのフレームを構成する梁12との間に跨設した場合の例を示している。この場合、フレームの層間変形時には、図8−(b)と同様、ブレース14と梁12との間にフレームの構面内でせん断変形が生じようとするため、ダンパー1はフレームの構面内方向に面内方向を向けた状態で、ブレース14と梁12との間に跨って双方に直接、もしくは間接的に接合される。図面ではブレース14と梁12からそれぞれガセットプレート18、18を突設し、両ガセットプレート18、18にダンパー1をボルト15により接合している。
図9−(a)〜(c)は図3〜図5に示す、塑性変形部2のせん断変形を制限する機能を有するダンパー1の柱・梁のフレーム内への設置例を示す。せん断変形制限機能付きのダンパー1は一構面(一フレーム)内に複数個、設置されたときに、せん断剛性の小さい順に段階的にせん断降伏していくことが可能であるから、図9では一構面(一フレーム)内にせん断剛性(せん断降伏強度)の異なる複数個のダンパー1を設置している。
図9−(a)はフレームを構成する柱(柱部材)11、11から梁12を構成する、構造部材10としてのブラケット16、16を突設し、両ブラケット16、16間に構造部材10としての梁部材12を架設し、ブラケット16と梁部材12のウェブ間にダンパー1を跨設した場合の例を示している。ブラケット16と梁部材12のフランジ間には継手部材17を跨設している。
図9−(b)はフレームを構成する梁(梁部材)12、12から間柱13を構成する、構造部材10としてのブラケット16、16を突設し、両ブラケット16、16間に構造部材10としての間柱13の部材を架設し、ブラケット16と間柱13の部材のウェブ間にダンパー1を跨設した場合の例を示している。ブラケット16と間柱13の部材のフランジ間には継手部材17を跨設している。図8−(b)、図9−(b)に示す間柱13は図8−(c)に示すブレース14と同様、フレーム内では耐震要素として機能するが、間柱13の幅(成)が拡大すれば、間柱13は耐震壁に相当する。
図9−(c)は図8−(a)と同様に、フレームを構成する柱(柱部材)11、11から梁12を構成する、構造部材10としての梁部材12、12を片持ち梁状態で、互いに分離した状態で突設し、分離した梁部材12、12のウェブ間にダンパー1を跨設した場合の例を示している。梁部材12、12のフランジ間には継手部材17を跨設している。
1……せん断変形型弾塑性ダンパー、1A……本体、
2……塑性変形部、
3……接合部、31……中心部、32……側部、3a……挿通孔、
33……フィラー、33a……挿通孔、
4……横スリット、5……縦スリット、
6……縦補剛材、7……座屈補剛材、
8……縦リブ、9……横リブ、
10……構造部材、11……柱(柱部材)、12……梁(梁部材)、
13……間柱、14……ブレース、
15……ボルト、16……ブラケット、
17……継手部材、18……ガセットプレート。

Claims (6)

  1. 互いに分離した構造部材間に跨って設置され、面内方向のせん断力を受けてせん断変形する板状の弾塑性ダンパーであり、
    板状の本体の中心部、もしくはその付近に位置し、前記せん断力を負担してせん断降伏し得る塑性変形部と、前記せん断力の作用方向に垂直な方向の、前記塑性変形部の両側に位置し、前記各構造部材に接合される接合部の3部分を備え、
    前記塑性変形部の前記せん断力作用方向外側に、前記せん断力作用方向に平行に前記本体の端部にまで連続する横スリットが形成され、この横スリットの前記塑性変形部寄りの端部から連続し、少なくとも前記いずれかの接合部側へかけて縦スリットが形成され、前記両接合部において前記せん断力を受けたときに前記塑性変形部がせん断変形することを特徴とするせん断変形型弾塑性ダンパー。
  2. 前記塑性変形部の前記縦スリット寄りの位置に、前記塑性変形部の曲げ剛性を高める縦補剛材が突設されていることを特徴とする請求項1に記載のせん断変形型弾塑性ダンパー。
  3. 前記せん断力の作用に伴って前記塑性変形部に生ずる斜張力に抵抗可能な座屈補剛材が前記塑性変形部に突設されていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載のせん断変形型弾塑性ダンパー。
  4. 前記縦スリットの前記塑性変形部側に、前記縦スリットに沿って縦リブが突設されると共に、前記横スリットの前記接合部側に、前記横スリットを挟んだ両接合部間のせん断変形時に前記塑性変形部側の端部が前記縦リブに直接、もしくは間接的に接触可能な横リブが突設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のせん断変形型弾塑性ダンパー。
  5. 前記縦スリットの対向する内周面間距離は前記横スリット側から遠い側へかけて次第に小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のせん断変形型弾塑性ダンパー。
  6. 前記接合部の片面に、前記構造部材との間に挟み込まれるフィラーが付属している、もしくは接着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のせん断変形型弾塑性ダンパー。
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