JP2011208434A - 柱・梁接合部構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉄骨柱のフランジにH形断面の鉄骨梁を接合し、鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨って水平ハンチを接合した柱・梁接合部において、鉄骨梁のウェブにリブを接合してウェブのせん断座屈を抑制する場合に、ウェブの、特に鉄骨柱のフランジから距離を置いた区間におけるせん断座屈の発生を抑制する。
【解決手段】水平ハンチ3の、鉄骨梁2中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、鉄骨梁2のウェブ2bの両側面に柱側縦リブ4を接合し、柱側縦リブ4の、鉄骨梁2中間部寄りに中間部側縦リブ5を接合する。
【選択図】図1
【解決手段】水平ハンチ3の、鉄骨梁2中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、鉄骨梁2のウェブ2bの両側面に柱側縦リブ4を接合し、柱側縦リブ4の、鉄骨梁2中間部寄りに中間部側縦リブ5を接合する。
【選択図】図1
Description
本発明は鉄骨柱のフランジにH形断面の鉄骨梁の端部を接合し、鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨って水平ハンチを接合した柱・梁接合部構造に関するものである。
H形断面の鉄骨梁(H形鋼)を鉄骨柱に接合する場合、梁ウェブの幅厚比(d/tw(d:ウェブ高さ、tw:ウェブ厚さ))のランクをFA、またはFB(490N級鋼材ではFA:51以下、FB:55以下)クラスに設定し、早期脆性破壊防止を目的とした梁端フランジを拡幅した形状(水平ハンチ付き)の鉄骨梁が使用されることが多い。
一方、鉄骨梁の成の寸法に関しては鉄骨梁に取り合う設備から決められることから、梁ウェブの厚さが必要寸法より過剰気味であることがあるため、梁ウェブの幅厚比(d/tw)を大きくし、ランクFC、またはFD(490N級鋼材ではFC:61以下、FD:61超え)を採用することが考えられる。
しかしながら、梁ウェブの幅厚比(d/tw)をFC、またはFDランクにすると、従来の鉄骨梁(FA、またはFBランク)との比較で、変形能力及び最大耐力が小さくなるため、梁ウェブの幅厚比(d/tw)をFC、またはFDランクにした場合には鉄骨梁の変形能力と最大耐力を向上させることが必要になる。
鉄骨梁の変形能力と最大耐力を向上させることは例えば鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨って水平ハンチを接合する、あるいは形成することによって可能になるが(特許文献1参照)、フランジの曲げ剛性が上がる関係で、相対的にウェブに変形が集中し易くなるため、ウェブにおけるせん断座屈の問題が生ずる。
ウェブにおけるせん断座屈はその発生が想定される区間(領域)にウェブの剛性を増すための補強リブをウェブに溶接することにより抑制することができると考えられる(特許文献2参照)。このようにウェブにリブを溶接することで、水平ハンチの形成位置付近での局部座屈耐力が上がるため、見かけ上、水平ハンチが鉄骨梁の中間部側まで延長されたような効果が表れ、ウェブの耐力と変形能力が向上することが見込まれる。
但し、ウェブの幅厚比(d/tw)を大きくすれば、ウェブが降伏した後に座屈(せん断座屈)が発生し易くなり、地震時の繰り返し変形を受けることによりウェブの耐力が急激に低下することが予測されるため、ウェブのせん断座屈に起因する耐力低下を補うための対策が新たに必要になる。
本発明は上記背景より、鉄骨梁のウェブにリブを溶接(接合)してウェブのせん断座屈を抑制する場合に、ウェブの、特に鉄骨柱のフランジから距離を置いた区間におけるせん断座屈を抑制することが可能な柱・梁接合部構造を提案するものである。
請求項1に記載の発明の柱・梁接合部構造は、鉄骨柱のフランジにH形断面の鉄骨梁の端部を接合し、鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨って水平ハンチを接合した接合部において、
前記水平ハンチにおける前記鉄骨梁中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、前記鉄骨梁のウェブの両側面に柱側縦リブが接合され、この柱側縦リブの、前記鉄骨梁中間部寄りに中間部側縦リブが接合されていることを構成要件とする。
前記水平ハンチにおける前記鉄骨梁中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、前記鉄骨梁のウェブの両側面に柱側縦リブが接合され、この柱側縦リブの、前記鉄骨梁中間部寄りに中間部側縦リブが接合されていることを構成要件とする。
図1に示すように鉄骨柱のフランジに鉄骨梁の端部が直接、突き合わせられた形で溶接、もしくは接合金物等を介してボルト接合されるような場合には、水平ハンチは鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨った状態で双方に溶接等により接合される。図2に示すように鉄骨柱のフランジに、鉄骨梁の端部に相当する、H形鋼等、H形断面のブラケットが溶接等によって接合される場合には、そのブラケットの上下のフランジが水平ハンチになる(水平ハンチを兼用する)が、この場合はブラケットに鉄骨梁の本体部分が突き合わせられる形で溶接等によって接合される。
図2は特に、水平ハンチを有するブラケットが鉄骨梁の端部材としてフランジ2aとウェブ2bを有し、このブラケットの端部に鉄骨梁本体の端部が突き合わせられた場合の例を示している。この例では、ブラケットと鉄骨梁本体の双方のフランジとウェブに跨る継手プレート(スプライスプレート)をフランジの上下面とウェブの両面に重ね、継手プレートを貫通するボルトによってブラケットと鉄骨梁本体を接合している。
図1、図2より、鉄骨梁の端部は鉄骨柱のフランジに直接、接合される場合(図1)とブラケットを介して間接的に接合される場合(図2)があるため、請求項1における「鉄骨梁の端部を接合」の「接合」には直接と間接がある。いずれの場合も、水平ハンチは鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨って双方に接合される。
「水平ハンチにおける鉄骨梁中間部寄りの端部」とは、図1、図2において水平ハンチの、鉄骨柱と反対側の端部を指し、この水平ハンチの鉄骨梁側の端部から距離を置いた位置の、鉄骨梁のウェブに柱側縦リブが接合され、その位置から更に鉄骨梁の中間部側へ寄った位置に中間部側縦リブが接合される。図1、図2では鉄骨梁のウェブに2枚の柱側縦リブと1枚の中間部側縦リブを接合した場合を示しているが、柱側縦リブと中間部側縦リブは1枚の場合と複数枚の場合がある。
水平ハンチにおける鉄骨梁中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、鉄骨梁ウェブの両側面に柱側縦リブが接合されることで、柱側縦リブが水平ハンチから鉄骨梁中間部寄りの箇所(区間)でのウェブの曲げ剛性とせん断剛性を確保するため、ウェブのせん断座屈が抑制される。
柱側縦リブと中間部側縦リブは例えばプレートやフラットバーから構成される場合には、図1、図2に示すようにウェブに垂直な状態で1枚、もしくは複数枚のプレート等が鉄骨梁のウェブに溶接等によって接合され、プレート等以外の溝形鋼、もしくは山形鋼等から構成される場合には、形鋼自体が複数枚のプレートから構成されることと同様の形態を有するため、図17以降に示すように鉄骨梁のウェブには少なくとも1箇所、接合されれば足りる。
柱側縦リブと中間部側縦リブは水平断面上、鉄骨梁のウェブに交差する方向の板要素を有すれば、ウェブに垂直な方向の反力成分を持つため、図21、図22に示すように必ずしもウェブに垂直な状態で接合される必要はない。また柱側縦リブと中間部側縦リブは鉄骨梁のウェブとフランジとに跨って双方に接合されれば、ウェブから伝達される応力をフランジに伝達可能であるため、図23に示すように必ずしもウェブの全成に亘って接合されている必要もない。
柱側縦リブの、鉄骨梁中間部寄りに中間部側縦リブが接合されることで、鉄骨梁の中間部寄りの区間におけるウェブの曲げ剛性とせん断剛性が確保されるため、鉄骨梁の終局モードでのウェブのせん断座屈が抑制される。鉄骨梁の、鉄骨柱側の端部寄りの区間である水平ハンチ寄りの区間での局部座屈耐力は柱側縦リブの接合によって向上しているから、鉄骨梁の終局モードは水平ハンチ寄りの区間(柱側縦リブ接合位置)より鉄骨梁の中間部側へ寄った位置に局部座屈の形で表れる傾向がある。
柱側縦リブ接合位置より鉄骨梁中間部側へ寄った区間に局部座屈が表れようとすることで、見かけ上、ウェブは水平ハンチが柱側縦リブの位置にまで延長しているような変形性状を示すため、実際に水平ハンチを延長させなくても、柱側縦リブ接合位置付近におけるウェブの耐力と変形能力を向上させることが可能になる。
また中間部側縦リブが不在の場合、柱側縦リブの接合位置における耐力と剛性の向上の結果として、鉄骨梁の中間部寄りの区間での耐力と剛性が相対的に低下する傾向になるため、ウェブは柱側縦リブ接合位置より鉄骨梁の中間部側へ寄った区間において繰り返しのせん断力を受けることで、せん断座屈を起こし易くなる。
このことの確認のために、図4−(a)、(b)に示すように水平ハンチ寄りの区間に2枚の柱側縦リブ4、4(リブA、B)を接合した鉄骨梁ウェブ(FDランク)の中間部寄りの位置に、図4−(c)に示すようにその位置でのウェブの面外拘束用の縦リブ(中間部側縦リブ5)を接合した試験体に、鉄骨梁の中間部寄りの端部から図5−(a)に示すような鉛直荷重Pを加えたときの荷重−変形曲線を図5−(b)に、鉄骨梁の変形モードを図6に示す。
図5−(b)から、柱側縦リブの接合の結果としてその接合位置より鉄骨梁の中間部寄りでの変形能力が上がり、耐力も向上することが分かるが、ウェブにせん断座屈が発生した後に座屈の進展により荷重が低下する現象(せん断座屈波の反転)も見られる。ウェブにおける座屈の進展によりウェブには図7に示すような、柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5の隅角部間を結ぶ方向を向く斜張力場が形成されるが、この斜張力がウェブにおける成方向の座屈を引き起こすと考えられるから、荷重低下の現象は斜張力の水平とのなす角度が小さい(斜張力の作用方向が水平に近い)ことに起因して発生するものと考えられる。
そこで、図4−(c)、図7に示す面外拘束用の縦リブC(中間部側縦リブ5)の位置を鉄骨梁の端部(柱側縦リブ4)側へ寄せ、斜張力の水平とのなす角度を大きくすれば、斜張力の作用方向に直交する方向に生じようとするウェブでの座屈の発生方向が成方向(鉛直方向)より水平方向を向き易くなり、座屈に対してウェブが抵抗すべき面内力を鉄骨梁のフランジが面内力として負担し易い状態になるため、座屈の進展による荷重低下を制御することができるものと考えられる。図4−(c)、図7の例では斜張力の水平とのなす角度が45°未満であるから、一応の目安としてはこの角度が45°以上であれば、ウェブでの荷重低下の現象を緩和することができるものと考えられる。
具体的には斜張力の方向は鉄骨梁の中間部側に位置する柱側縦リブ4の上端部、もしくは下端部と、その柱側縦リブに隣接する面外拘束用縦リブ(中間部側縦リブ5)の下端部、もしくは上端部を結ぶ方向であるから、梁中間部側に位置する柱側縦リブ4の上端部、もしくは下端部と、その柱側縦リブに隣接する中間部側縦リブ5の下端部、もしくは上端部を結ぶ直線と水平とのなす角度を45°以上にすることで(請求項2)、荷重低下の現象を制御し、緩和することができるものと考えられる。
鉄骨梁中間部側の柱側縦リブの上端部、もしくは下端部と中間部側縦リブの下端部、もしくは上端部を結ぶ直線と水平とのなす角度が45°未満の場合、柱側縦リブから中間部側縦リブまでの区間においてウェブが斜張力に直交する方向の圧縮力を受けることで、その方向に座屈を生じ易く、その傾向は斜張力の作用方向が水平に近い程、高まる可能性がある。
ウェブに作用する圧縮力が鉛直方向に近い方向を向けば、ウェブの圧縮力が伝達される先である梁フランジには面外方向力が作用しようとする。このとき、梁フランジは厚さ方向の抵抗力でウェブの圧縮力に抵抗しようとするが、梁フランジの面外方向の剛性は小さいため、梁フランジによる抵抗力は期待し難い。
これに対し、鉄骨梁中間部側に位置する柱側縦リブの上端部、もしくは下端部と、それに隣接する中間部側縦リブの下端部、もしくは上端部を結ぶ直線と水平とのなす角度が45°以上(請求項2)であれば、梁フランジの面内抵抗力をウェブの圧縮力に対する抵抗要素として期待することができるため、ウェブにおける荷重低下の現象とせん断座屈の発生を抑制することができることになる。「鉄骨梁中間部側に位置する柱側縦リブ」は柱側縦リブが複数枚ある場合には、その内の鉄骨梁中間部寄りに位置する柱側縦リブを指す。
図3−(d)に示すように鉄骨梁2中間部寄りに位置する柱側縦リブ4の、鉄骨柱フランジ1a表面からの距離hrは例えば2枚の柱側縦リブ4、4の間隔を変えて鉄骨梁2の中間部側から鉛直荷重を加えたときの鉄骨梁2の変形の程度を調べることである程度、決めることができるから、解析結果に基づいて最適な距離hrを、数式を用いて規定することも可能である。
そこで、図9−(b)に示すように2枚の柱側縦リブ間に梁成の半分程度の間隔を確保した「間隔大」の条件と、(c)に示すように(b)の場合の半分程度乃至半分強の間隔を確保した「間隔中」の条件、及び更に(d)に示すように(c)の半分程度の間隔を確保した「間隔小」の条件のそれぞれの荷重−変形関係の曲線を図8に示す。図8には図9−(a)に示すように柱側縦リブを1枚のみ、接合した場合の結果も示してある。この解析で用いた試験体の例では2枚の柱側縦リブの内、鉄骨柱のフランジ表面から柱側に位置する縦リブまでの距離が梁成の1/3程度(水平ハンチ長さの1.5倍程度)になっている。
図8の結果から、柱側縦リブが1枚のみの場合(図9−(a))には、変形量が75mmを超えた(荷重が1250kNを超えた)当たりから変形の増加に伴い、荷重が低下する傾向を示すのに対し、2枚の柱側縦リブを接合した場合には、「間隔大」の場合以外(図9−(c)、(d))、変形の増加に拘らず荷重の低下がなく、荷重支持能力が持続することが分かる。また「間隔中」と「間隔小」を対比すれば、「間隔中」の場合(図9−(c))には変形の増加に伴い、一時的に荷重が低下するのに対し、「間隔小」の場合(図9−(d))には荷重の低下が全くなく、3通りの条件の中では最もよい結果を示していることが分かる。
このことから、「間隔小」の場合(図9−(d))である鉄骨柱のフランジ側面からその側に位置する柱側縦リブまでの距離を梁成の1/3程度にし、その柱側縦リブから鉄骨梁中間部寄りの柱側縦リブまでの距離を梁成の1/4〜1/3程度にした場合の例が最も耐力と変形能力が高いことが分かる。
図10−(a)には参考までにウェブ鋼板がFCランクの場合での柱側縦リブがある場合とない場合の荷重−変形関係を、図10−(b)にはウェブ鋼板がFDランクの場合での柱側縦リブがある場合とない場合の荷重−変形関係を示している。図10−(a)、(b)のいずれにもFAランクで柱側縦リブのない場合の荷重−変形曲線を重ね合わせてある。図10−(a)、(b)からは、FCランクとFDランクのいずれの場合も、柱側縦リブによる補強により変形の進行に伴って荷重の低下を招かないことが確認される。
図8の結果を踏まえ、図3−(a)〜(c)に示すように例えば2枚の柱側縦リブ4、4を鉄骨梁ウェブ2bの、水平ハンチ3の鉄骨梁2中間部側の端部から距離を置いた位置に接合した場合に、(d)に示す梁端フランジ(水平ハンチ部分)のみの全塑性曲げモーメントMpf、梁一般部(全断面有効)の全塑性曲げモーメントMp、鉄骨柱フランジから水平ハンチ端部までの距離h、1/2クリアスパン長さLを用い、柱側縦リブ4の鉄骨柱フランジ1aからの距離hrを規定すれば以下のようになる。
梁端位置(水平ハンチ部分)での全塑性曲げモーメントがMpf(最大値)、鉄骨梁2中間部寄りの柱側縦リブ4位置での全塑性曲げモーメントをMpとし、鉄骨柱フランジ1aからの距離hrに応じ、鉄骨梁2の、ある断面での全塑性曲げモーメントMpが漸次減少していくと仮定すれば、ある断面での全塑性曲げモーメントMpは梁一般部の局部座屈耐力の上昇係数sを用いて、
s・Mp=Mpf×(L−hr)/Lと表すことができる。
s・Mp=Mpf×(L−hr)/Lと表すことができる。
局部座屈耐力の上昇係数sは鉄骨梁の鉄骨柱側端部に水平ハンチを形成(接合)する場合の鉄骨柱フランジからの、水平ハンチ端部までの距離を算出する際に用いられる係数であり、σyf:フランジの降伏強度、σyw:ウェブの降伏強度、E:ヤング係数、tf:フランジ厚さ、tw:ウェブ厚さ、b:梁のフランジ半幅、d:ウェブクリア高さとして、αf=E/σyf×(tf/b)2、αw=E/σyw×(2tw/d)2としたときに、1/s=0.4896/αf+0.046/αw+0.7606の関係を満たす値を指す(鋼構造論文集第5巻第20号(1998年12月)「水平ハンチ付はりと角形鋼管柱接合部の弾塑性挙動」)。
ここで、ある断面での全塑性曲げモーメントMpは漸次減少していくから、Mpは
s・Mp<Mpf×(L−hr)/Lの関係を満たすことになる(請求項3)。
s・Mp<Mpf×(L−hr)/Lの関係を満たすことになる(請求項3)。
この場合(請求項3)において、梁一般部における局部座屈耐力からの上昇係数(水平ハンチ及び縦リブによるウェブに対する拘束の影響の程度)をαとして加味すれば、以下のように柱側縦リブ4、4の内、鉄骨柱寄りに位置する柱側縦リブ4の、鉄骨柱フランジ1aからの距離(>h:鉄骨柱フランジ1a表面から水平ハンチ3端部までの距離)を規定することが可能になる。
耐力上昇係数αは柱側縦リブ4の接合によって梁の局部座屈耐力が梁一般部より上昇する割合を示す指標として位置付けられる。ここで、図11−(a)、(b)に示すような梁端部を模した解析モデルを想定し、図11の状態で梁端面(下端)を試験台に完全な固定状態で固定し、上端から軸方向圧縮力の作用方向に強制変位を与える解析を実施した。
図11−(a)は後述のp/bが1.0の場合、(b)は6.0の場合を示す。解析パラメータとして水平ハンチの梁中間部側の端部から鉄骨柱寄りの柱側縦リブ4までの距離pと梁ウェブの幅厚比を用い、梁ウェブがFCランクの場合とFDランクの場合の2種類の解析モデルで実施した(図12)。解析で用いた梁フランジの幅厚比は6.25としてある。
耐力上昇係数αはpが十分に大きく、局部座屈耐力に縦リブ(柱側縦リブ4)の影響がないと考えられるp/b=10を基準とした場合の最大耐力の比率としている。図12にαとp/bの関係を、図13−(a)〜(c)にウェブがFDランクの場合の座屈状況を示している。図13−(a)はp/bが1.0の場合、(b)は2.0の場合、(c)は6.0の場合である。
図12より、p/bを小さくする程、αが大きくなることが分かる。一方、αの値はp/bと幅厚比に関係があり、梁フランジの幅厚比が6.25の場合、今回の解析結果からはα=1.0〜1.24程度の値を取ることが判明した。
図14は柱側縦リブ4の鉄骨梁中間部寄りに中間部側縦リブ5を接合しない場合と接合した場合との対比のための検討に用いた試験体の例を示す。(a)は中間部側縦リブ5がない試験体、(b)、(c)は中間部側縦リブ5がある試験体であり、(b)と(c)は中間部側縦リブ5(縦リブC)と柱側縦リブ4(縦リブA)との間隔(Lw)を変えている。
図14−(a)に示すように中間部側縦リブ5(縦リブC)を接合しなければ、せん断降伏後に座屈が発生し、せん断座屈発生後に地震等の繰り返しにより荷重が低下する恐れがある。そこで、せん断座屈による荷重低下を抑制するために、(b)、(c)に示すように中間部側縦リブ5(縦リブC)を接合することを想定する。ただし、中間部側縦リブ5(縦リブC)を単に設置しただけでは、せん断座屈後の荷重低下抑制にはならず、柱側縦リブ4(縦リブA)との間隔を検討する必要もある。以下では、リブ間隔(柱側縦リブ4(縦リブA)と中間部側縦リブ5(縦リブC)との間の距離(Lw))と、せん断座屈による荷重低下状況を検討するために図14−(c)に示す解析モデルを用いる。
解析はFDランクの梁ウェブの幅厚比を用い、リブ間隔(Lw)と梁ウェブ成(d)の比(Lw/d)を変化させて実施した。解析結果の荷重(せん断力)と変形(部材角)の関係を図15−(a)〜(e)に示す。座屈状況概要を図16に示す。(a)〜(e)はLw/dが各図に示す通りの値である場合の結果を示している。
図15より、Lw/dの値を小さくすると、繰り返しによる荷重(せん断力)の低下を抑えることが可能であることが分かる。特にLw/d≒1.0 とすることにより荷重低下が少なくなることが分かる。
以上のことから、柱側縦リブ4(縦リブA)に加え、中間部側縦リブ5(縦リブC)を設置し、リブ間隔(Lw)を適切な値に設定すれば、せん断座屈による座屈波形の傾きを制御することができ、せん断座屈後の荷重の低下抑制に有効であることが判明した。
ここで言う「リブ間隔(Lw)を適切な値に設定するための指標」として上記した耐力上昇係数(水平ハンチ及び柱側縦リブによるウェブに対する拘束の影響の程度)αを用いれば、請求項3(Mpf>L/(L−hr)×s×Mp)において、鉄骨柱フランジ表面から水平ハンチ端部までの距離をhとして、Mpf>L/(L−h)×α×s×Mpの関係を満たすことが鉄骨柱1寄りの柱側縦リブ4の位置を特定するための目安になる(請求項4)。
上記のようにα=1.0〜1.24程度の値であるから、Mpf>L/(L−h)×α×s×Mp≧L/(L−hr)×s×Mpである。
鉄骨柱のフランジにH形断面の鉄骨梁の端部を接合し、鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨って水平ハンチを接合した接合部において、水平ハンチにおける鉄骨梁中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、鉄骨梁ウェブの両側面に柱側縦リブを接合し、この柱側縦リブの、鉄骨梁中間部寄りに中間部側縦リブを接合することで、複数枚の柱側縦リブが水平ハンチから鉄骨梁中間部寄りの箇所(区間)でのウェブの曲げ剛性とせん断剛性を確保するため、ウェブのせん断座屈を抑制することができる。
また柱側縦リブの、鉄骨梁中間部寄りに中間部側縦リブが接合されることで、鉄骨梁の中間部寄りの区間におけるウェブの曲げ剛性とせん断剛性も確保されるため、鉄骨梁の終局モードでのウェブのせん断座屈が抑制される。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1−(a)は鉄骨柱1のフランジ1aにH形断面の鉄骨梁2の端部を接合し、鉄骨柱1のフランジ1aと鉄骨梁2のフランジ2aとに跨って水平ハンチ3を接合した接合部において、水平ハンチ3の、鉄骨梁2中間部寄りの端部から距離を置いた位置に複数枚の柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5が接合されている柱・梁接合部の具体例を示す。
図面では鉄骨柱1が角形鋼管柱である場合の例のみが示されているが、鉄骨柱1はH形断面、十字形断面の場合の他、円形鋼管柱の場合もある。鉄骨柱1が角形鋼管、もしくは円形鋼管である場合には内部にコンクリートが充填されることもある。
複数枚の柱側縦リブ4は水平ハンチ3の、鉄骨梁2中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、鉄骨梁2のウェブ2bの両側面に図1等に示すようにウェブ2bに垂直な状態で、または図21に示すように垂直な状態に対して角度が付いた状態で接合され、この柱側縦リブ4の、鉄骨梁2中間部寄りに中間部側縦リブ5が接合される。
図1は水平ハンチ3が鉄骨梁2端部のフランジ2aと鉄骨柱1のフランジ1aとに跨って双方に接合されるプレートからなる場合に、柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5を鉄骨梁2のウェブ2bとフランジ2aに溶接により接合した場合の例を示す。図面では柱側縦リブ4が2枚の場合で、中間部側縦リブ5が1枚の場合のみを示しているが、柱側縦リブ4が3枚以上で、中間部縦リブ5が2枚以上の場合もある。
図2は水平ハンチ3が、フランジの幅が軸方向に変化するH形断面の鋼材(組立H形鋼)のフランジである場合において、柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5を鉄骨梁2のウェブ2bにのみ接合し、フランジ2aに接合していない場合の例を示す。この例では柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5をウェブ2bにのみ接合することで、溶接する場合にフランジ2aとの溶接の必要がないことで、フランジ2aへの溶接熱の影響を与えずに済む利点がある。
図2のように柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5を鉄骨梁2のフランジ2aに接合しないことはまた、鉄骨梁2が組立型のH形鋼である場合に、ウェブ2bとフランジ2aとの間に隅肉溶接(溶接金属)による余盛り(のど厚)がある場合に、その余盛りとの干渉を回避する意味もある。
図17〜図20は柱側縦リブ4の構成材として溝形鋼を用いることで、2枚の(並列する)柱側縦リブ4、4を形成した場合の例を示す。図17、図19は溝形鋼のウェブを鉄骨梁2のウェブ2bに重ねて溶接、もしくはボルト接合により接合した場合の例を、図18、図20は溝形鋼のウェブを鉄骨梁2のウェブ2bと平行な状態に対向させ、溝形鋼のフランジにおいて鉄骨梁2のウェブ2bに溶接により接合した場合の例を示す。
これらの例では柱側縦リブ4を構成する鋼材がウェブを有する形状をすることで、プレートを鉄骨梁2のウェブ2bに接合する場合と異なり、鉄骨梁2のウェブ2bに対する補剛効果が高いと考えられる。
例えば図17、図19の例では柱側縦リブ4を構成する溝形鋼のウェブが鉄骨梁2のウェブ2bに重なることで、ウェブ2bの板厚を増すことになるため、ウェブ2bの座屈に対する安定性が向上すると考えられる。図18、図20の例では溝形鋼が鉄骨梁2のウェブ2bと共に、あるいはウェブ2bを挟んで箱形に閉じた断面を形成することで、ウェブ2bに曲げ剛性を付与する働きを発揮し得るため、ウェブ2bの曲げを伴うせん断座屈に対する安定性が向上すると考えられる。
図19、図20は溝形鋼の軸方向両端と鉄骨梁2のフランジ2aとの間に空隙を確保することで、溝形鋼を鉄骨梁2のウェブ2bにのみ接合した場合の例を示している。これらの場合、溝形鋼の端部がフランジ2aに接触しないことで、溝形鋼を溶接によって接合する場合に、フランジ2aに溶接熱が伝達されることがなくなるか、低減されるため、溶接熱による歪みと残留応力の発生がなくなる利点がある。また鉄骨梁2のウェブ2bとフランジ2aに跨って溶接金属による余盛りが存在している場合に、その余盛り部分を回避して溝形鋼(柱側縦リブ4)をウェブ2bに接合することができる利点もある。
図21、図22は柱側縦リブ4の構成材として山形鋼を用いることで、鉄骨梁2のウェブ2bと共に、三角形状に閉じた断面形状の柱側縦リブ4、4を形成した場合の例を示す。図21は山形鋼の軸方向端部を鉄骨梁2のフランジ2aに接触させた(突き合わせた)場合の例を、図22は軸方向端部と鉄骨梁2のフランジ2aとの間に空隙を確保した場合の例を示している。
図21、図22のいずれも山形鋼が鉄骨梁2のウェブ2bと共に、あるいはウェブ2bを挟んで箱形に閉じた断面を形成することで、ウェブ2bに曲げ剛性を付与する働きを発揮し得るため、図18、図20の例と同じこと(ウェブ2bの曲げを伴うせん断座屈に対する安定性が向上すること)が言える。図22は山形鋼の端部がフランジ2aと距離を置くことで、図20と同じこと(溶接熱による歪みと残留応力の発生がなくなること)が言える。
柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5は鉄骨梁2のウェブ2bの面に垂直な方向等、交差する方向に補強のための板要素を持てばよいため、形鋼には図17〜図20の例の他、T形鋼、ハット形鋼、フラットバー等の鋼材も使用される。
図23は柱側縦リブ4、及び中間部側縦リブ5の構成材としてプレートを用いた場合の例を示しているが、ここではプレートの高さを上下のフランジ2a、2a間に跨がらない大きさに抑えることで、上部フランジ2a側と下部フランジ2aとに分離させて柱側縦リブ4をウェブ2bに溶接した場合の例を示している。
この場合、柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5が上下のフランジ2a、2a毎に分離し、フランジ2a、2a間に跨がらないながらも、ウェブ2bと一方のフランジ2aとの間に跨ることで、ウェブ2bが座屈しようとするときにウェブ2bが負担する圧縮力を一方のフランジ2aに伝達することが可能になっている。このため、柱側縦リブ4と中間部側縦リブ5の構成材としての鋼材使用量を低減しながらも、ウェブ2bにおける座屈の発生を抑制することが可能である。
1……鉄骨柱、1a……フランジ、
2……鉄骨梁、2a……フランジ、2b……ウェブ、
3……水平ハンチ、
4……柱側縦リブ、5……中間部側縦リブ。
2……鉄骨梁、2a……フランジ、2b……ウェブ、
3……水平ハンチ、
4……柱側縦リブ、5……中間部側縦リブ。
Claims (4)
- 鉄骨柱のフランジにH形断面の鉄骨梁の端部を接合し、鉄骨柱のフランジと鉄骨梁のフランジとに跨って水平ハンチを接合した接合部において、
前記水平ハンチにおける前記鉄骨梁中間部寄りの端部から距離を置いた位置の、前記鉄骨梁のウェブの両側面に柱側縦リブが接合され、この柱側縦リブの、前記鉄骨梁中間部寄りに中間部側縦リブが接合されていることを特徴とする柱・梁接合部構造。 - 前記鉄骨梁の中間部側に位置する前記柱側縦リブの上端部、もしくは下端部と、その柱側縦リブに隣接する前記中間部側縦リブの下端部、もしくは上端部を結ぶ直線と水平とのなす角度は45°以上であることを特徴とする請求項1に記載の柱・梁接合部構造。
- 前記鉄骨梁の中間部側に位置する柱側縦リブの、前記鉄骨柱フランジ表面からの距離hrは、
梁端フランジ(水平ハンチ部分)のみの全塑性曲げモーメントをMpf、
梁一般部(全断面有効)の全塑性曲げモーメントをMp、
梁一般部の局部座屈耐力の上昇係数をs、
1/2クリアスパン長さをLとしたとき、
Mpf>L/(L−hr)×s×Mpの関係を満たしていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の柱・梁接合部構造。 - 前記鉄骨柱フランジ表面から前記水平ハンチ端部までの距離をh、
梁一般部における局部座屈耐力からの上昇係数(水平ハンチ及び柱側縦リブによるウェブに対する拘束の影響の程度)をαとしたとき、
前記鉄骨柱寄りの柱側縦リブの位置は、
Mpf>L/(L−h)×α×s×Mpの関係を満たしていることを特徴とする請求項3に記載の柱・梁接合部構造。
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- 2010-03-30 JP JP2010077321A patent/JP2011208434A/ja active Pending
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